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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G08B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G08B
管理番号 1124091
審判番号 不服2003-15022  
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-07-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-08-05 
確定日 2005-10-05 
事件の表示 平成 6年特許願第325068号「現在位置通報装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 7月12日出願公開、特開平 8-180286〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成6年12月27日の出願であって、平成15年6月16日付けで手続補正がなされたところ、同年7月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月5日に審判請求がなされるとともに、同年9月4日に手続補正がなされたものである。

第2.平成15年9月4日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成15年9月4日付け手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の請求項1に記載された発明
平成15年9月4日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、本願明細書における特許請求の範囲の請求項1は、

「外部からの位置情報を受信して現在位置情報を取得する位置情報取得手段と、
通報先電話番号を入力する通報先電話番号入力手段と、
この通報先電話番号入力手段によって入力された通報先電話番号を記憶する通報先電話番号記憶手段と、
装置を識別する識別情報を記憶する識別情報記憶手段と、
氏名、性別、年齢、住所、血液型、既往症等の本人データを記憶する本人データ記憶手段と、
生体情報を計測する生体情報計測手段と、
前記計測された生体情報を記憶する生体情報記憶手段と、
前記識別情報記憶手段によって記憶された識別情報、及び、前記通報先電話番号記憶手段によって記憶された通報先電話番号を無線基地局に送信する送信手段と、
公衆電話回線を介して前記通報先電話番号の加入者端末装置との間に回線が接続されたあとに、前記現在位置情報と前記識別情報と前記本人データと前記生体情報とを前記通報先電話番号の加入者端末装置へ通報する通報手段と、
を備えることを特徴とする現在位置通報装置。」
と補正された。

上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定する事項である「位置情報取得手段」について「外部からの位置情報を受信して」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第3項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第4項において準用する同法第126条第3項の規定に適合するか)について以下検討する。

2.引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用した特開平5-205174号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の記載がある。
ア.「現在位置通信装置(1)は、外部および内部から得られる測位情報から現在位置を測定する測定、制御演算装置(2)を設け、得られた現在位置情報を各種通信網などから最適な通信網を自動選択し、これらを経由して外部のコントロールセンターなどに通信する双方向性通信機能を有した通信装置(3)からなる現在位置通信装置。」(【請求項1】)

イ.「【第1実施例】以下、本発明の実施例について説明する。図1において、現在位置通信装置(1)は、測定、制御演算装置(2)と通信装置(3)からなり、外部および内部測位情報から現在位置を演算し、結果を警備保障会社のコントロールセンターへ双方向通信するものである。外部測位情報としてGPS衛星のうち4個の衛星を使用し、L1帯の1.6GHZ、無料解放しているC/Aコードを使い3次元測位である単独測位方法によって現在位置を求める。」(第4欄第6〜14行)

ウ.「この中で制御部(26)については、新たに無線機能、モデム機能、パケット交換機能、秘話機能、緊急時の通話発信番号機能、個別識別番号機能、セルフ、リモート起動機能、オートコール機能を設ける。・・・これらモデム機能とパケット交換機能を合せ持っているのが移動体通信網の中のテレターミナル・システムであるが、本発明は、テレターミナル・システムの持つ双方向性に優れたデータ伝送の特徴と既存の携帯電話網のネットワーク性を融合したものである。通話発信番号機能とは、一般の電話と同じように不特定多数への通話を目的としていないので、音声による通話に必要な部品、表示部、ダイヤル番号ボタンなどは必要がなく、緊急時の警備保障会社への通話番号だけを記憶している。個別識別番号機能とは、各々の現在位置通信装置(1)に設けられた番号であり、警備保障会社のコントロールセンターでは、この番号で各個人の付帯情報を同時に検索することができる。」(第6欄第25行〜第7欄第1行)

エ.上記イ.より、測定、制御演算装置(2)は、外部からの位置情報を受信して現在位置情報を取得する測位手段を備えている。

オ.上記ウ.より、現在位置通信装置(1)は、通話発信電話番号を記憶する通話発信番号記憶手段と、装置を識別する個別識別番号を記憶する個別識別番号記憶手段を備えているといえる。

これらの記載及び図面を参照すると、引用例1には次の発明が記載されている。(以下、「引用発明」という。)

「外部からの位置情報を受信して現在位置情報を取得する測位手段と、
通話発信番号を記憶する通話発信番号記憶手段と、
装置を識別する個別識別番号を記憶する個別識別番号記憶手段と、
携帯電話網を介して、前記現在位置情報と前記個別識別番号とを前記通話発信番号の警備保障会社へ通報する通信装置と、
を備えることを特徴とする現在位置通信装置。」

(2)同じく原査定の拒絶の理由に引用した特開平6-119578号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の記載がある。
ア.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車事故が発生したときに警察署又は消防署などに自動的に通報するシステムに関する。」

イ.「【0008】この問題を解決するために、自動車事故を検出するセンサを自動車に取り付けておき、事故が発生した際には自動車電話を利用して事故の発生を自動的に通報するシステムが提案されている(特開昭56ー147530号)。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上述した従来のシステムでは、事故の発生したことは自動的に通報されるが、事故の発生場所については、事故発生地点が属する無線基地局のカバーするゾーンの情報が通報されるだけであるから、事故発生地点を特定し又は狭い地域に限定することができない。」

ウ.「【0012】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明に係るシステムは、上述の課題を解決するため、図1に示すように、自動車に搭載した電話機11と、前記自動車の障害を検知するセンサ15と、前記自動車の位置を検知する電子地図装置12と、を有し、前記自動車に事故が発生して前記センサ15からの信号が出力された場合に、自動車事故が発生した旨及び当該自動車の位置を、前記電話機11によって予め設定されたダイヤル先に通報する。
【0013】
【作用】センサ15からの信号によって事故の発生が検知される。事故の発生が検知されると、電話機11によって110番などが自動的に発呼され、回線が接続されると、事故が発生した旨及び自動車の位置が通報される。」

3.対比
本願補正発明と上記引用発明とを対比すると、その作用・機能からみて、後者における「測位手段」が前者の「位置情報取得手段」に相当し、以下同様に、「通話発信番号」が「通報先電話番号」に、「個別識別番号」が「識別情報」に、「携帯電話網」が「公衆電話回線」に、「警備保障会社」が「加入者端末装置」に、「現在位置通信装置」が「現在位置通報装置」にそれぞれ相当する。
また、後者の「通信装置」と前者の「送信手段」及び「通報手段」とは、公衆電話回線を介して現在位置情報と識別情報とを通報先電話番号の加入者端末装置に通報する通信手段である点で共通する。
したがって、両者は、

「外部からの位置情報を受信して現在位置情報を取得する位置情報取得手段と、
通報先電話番号を記憶する通報先電話番号記憶手段と、
装置を識別する識別情報を記憶する識別情報記憶手段と、
公衆電話回線を介して、前記現在位置情報と前記識別情報とを前記通報先電話番号の加入者端末装置に通報する通信手段と、
を備えることを特徴とする現在位置通報装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願補正発明が、通報先電話番号を入力する「通報先電話番号入力手段」を備えており、通報先電話番号記憶手段は、この通報先電話番号入力手段によって入力された通報先電話番号を記憶するのに対し、引用発明は、かかる通報先電話番号入力手段を備えていない点。
[相違点2]
本願補正発明が、氏名、性別、年齢、住所、血液型、既往症等の本人データを記憶する「本人データ記憶手段」と、生体情報を計測する「生体情報計測手段」と、計測された生体情報を記憶する「生体情報記憶手段」とを備え、通信手段によって現在位置情報、識別情報とともにこれらの情報を通報先電話番号の加入者端末装置に通報するものであるのに対し、引用発明は、かかる情報を記憶する手段や計測する手段を備えておらず、したがって、通報先電話番号の加入者端末装置にこれらの情報を通報するものではない点。
[相違点3]
通信手段に関して、本願補正発明においては、識別情報及び通報先電話番号を無線基地局に送信する「送信手段」と、公衆電話回線を介して通報先電話番号の加入者端末装置との間に回線が接続されたあとに通報先電話番号の加入者端末装置へ通報する「通報手段」とから構成されるものであるのに対し、引用発明においては、かかる送信手段と通報手段とを備えるものとされておらず、引用例1には、識別情報及び通報先電話番号を無線基地局に送信する点ついてに明記されていない点。

4.判断
(1)[相違点1]について
緊急通報装置において、緊急連絡先の電話番号を入力する手段を備えたことは、例えば、特開昭63-48948号公報、特開昭59-198056号公報に記載されているように周知技術であり、引用発明は、緊急時の警備保障会社への通話番号を記憶する記憶手段を有しており、上記周知技術のような緊急連絡先の電話番号を入力する手段を設け、入力した電話番号を記憶手段に記憶する構成とすることは当業者が適宜なし得ることである。

(2)[相違点2]について
緊急通報装置において、必要な情報を緊急信号と共に通報することは周知技術であって、どのような情報を必要な情報とするかは当業者が適宜選択し得るものと認められるところ、生体情報を計測する手段を備え、計測した生体情報を通報することは、例えば、実願平4-64485号(実開平6-30886号)のマイクロフィルムや特開平5-161610号公報に記載されており、また、本人の氏名、住所、血液型等のデータを通報することは、登録実用新案第3004804号公報に記載されている。
そして、引用発明において、上記周知技術を加味して、氏名、性別、年齢、住所、血液型、既往症等の本人データを記憶する本人データ記憶手段と、生体情報を計測する生体情報計測手段と、計測された生体情報を記憶する生体情報記憶手段とを備え、通報先電話番号の加入者端末装置にこれらの情報を通報する構成とすることは当業者が普通になし得る程度のことである。

(3)[相違点3]について
携帯電話や自動車電話の分野において、無線基地局を介して相手先の電話番号を発呼して、回線を接続することは、例えば、引用例2に記載されるように普通に行われている事項である。
そして、引用発明の通信手段は、通報先電話番号の加入者端末装置への通報に携帯電話網を利用するものであって、これを識別情報及び通報先電話番号を無線基地局に送信する送信手段と、公衆電話回線を介して通報先電話番号の加入者端末装置との間に回線が接続されたあとに通報先電話番号の加入者端末装置へ通報する通報手段とからなるものとすることは、当該技術分野において普通に行われている事項にすぎず格別のものは見あたらない。

(4)また、本願補正発明を全体として検討しても、引用例1、2に記載された発明及び周知技術から予測される以上の格別の効果を奏するものとも認められない。

したがって、本願補正発明は、引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第4項において準用する同法第126条第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項の規定で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成15年9月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年6月16日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「現在位置情報を取得する位置情報取得手段と、
通報先電話番号を入力する通報先電話番号入力手段と、
この通報先電話番号入力手段によって入力された通報先電話番号を記憶する通報先電話番号記憶手段と、
装置を識別する識別情報を記憶する識別情報記憶手段と、
氏名、性別、年齢、住所、血液型、既往症等の本人データを記憶する本人データ記憶手段と、
生体情報を計測する生体情報計測手段と、
前記計測された生体情報を記憶する生体情報記憶手段と、
前記識別情報記憶手段によって記憶された識別情報、及び、前記通報先電話番号記憶手段によって記憶された通報先電話番号を無線基地局に送信する送信手段と、
公衆電話回線を介して前記通報先電話番号の加入者端末装置との間に回線が接続されたあとに、前記現在位置情報と前記識別情報と前記本人データと前記生体情報とを前記通報先電話番号の加入者端末装置へ通報する通報手段と、
を備えることを特徴とする現在位置通報装置。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用した引用例、及びその記載事項は前記「第2.2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記「第2.」で検討した本願補正発明から「位置情報取得手段」の限定事項である「外部からの位置情報を受信して」を省いたものである。

そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2.4.」に記載したとおり、引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-07-26 
結審通知日 2005-08-02 
審決日 2005-08-15 
出願番号 特願平6-325068
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G08B)
P 1 8・ 121- Z (G08B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森林 克郎  
特許庁審判長 田良島 潔
特許庁審判官 丸山 英行
佐々木 芳枝
発明の名称 現在位置通報装置  

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