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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23F
管理番号 1124158
審判番号 不服2003-5887  
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-11-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-04-09 
確定日 2005-10-07 
事件の表示 平成11年特許願第126921号「機能性コーヒー」拒絶査定不服審判事件〔平成12年11月21日出願公開、特開2000-316478〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯・本件発明

本件出願は、平成11年5月7日の特許出願であって、その請求項1に係る発明は、明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下、「本件発明1」という。)
「【請求項1】可溶性コーヒー粉末1重量部に対し5重量部以下の水溶性の難消化性デキストリンを混合した機能性コーヒー。」

2.引用例記載事項

これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本件の出願日前に頒布された刊行物(1)特開平05-255404号公報、(2)特開平02-255043号公報(以下、「引用例1乃至2」という。)には、以下の事項が記載されている。
引用例1には、(a)「【請求項1】・・・(F)馬鈴薯澱粉に塩酸を添加して加熱処理して得た焙焼デキストリンを、α-アミラーゼとグルコアミラーゼで加水分解した後、生成したグルコースの1/2以上を分離除去することにより得られたものであることを特徴とする、難消化性デキストリン。・・・【請求項12】上記食品が菓子、ベーカリー製品、冷菓、スナック、飲料、ヨーグルトである請求項11に記載の食品。」(特許請求の範囲)が記載され、(b)「・・・このなかでも水溶性食物繊維は強い生理機能を有することにより、機能性食品及び飼料素材として注目されている。例えば強い粘性は糖の拡散を阻害し、糖吸収に遅延を生じさせて血糖上昇抑制が起こり、その結果としてインシュリンの節約効果をもたらすといわれ・・・」(段落【0014】〜段落【0015】)と、(c)「・・・次に本発明の難消化性デキストリンの生理作用を検討するために、後記する実施例2〜実施例4の試料を用いた。実験例8〜実験例14ではこの試料をそれぞれ試料A、B、Cと記載する。」(段落【0136】)と、「【実験例13】(インシュリン)ラット36匹をもちいた実験結果では、・・・試料B、Cによりグルコース負荷後の血糖値ならびにインスリン分泌の上昇は有意に抑制されることが判明した。【実験例14】健常人男子成人6名を24時間絶食させた後、50gグルコース、50gグルコースと20gの試料B、または試料Cをそれぞれ経口投与し、30分後に血糖値とインシュリン分泌を測定した。・・・表19により試料B、Cともにグルコース負荷後のインシュリン分泌の上昇を抑制することが判明した。」(段落【0164】〜段落【0167】)と、(d)「・・・また本発明の難消化性デキストリンは殆ど全ての食品に使用することができる。この食品とは、ヒトの食品、動物園及び家畜飼料、ペットフードなどを総称するものである。澱粉を原料とした水溶性の難消化性デキストリンであって食物繊維を含有し、低カロリー増量剤としても食品に使用できることから、用途としては従来デキストリンやマルトデキストリンが使用できる食品の全てが包含される。即ち、コーヒー、紅茶、コーラ、ジュース等の液体及び粉末の飲料類・・・にも効果的に使用できる。」(段落【0196】)と記載され、(e)食品例1として紅茶抽出液に対して難消化性デキストリンを配合した紅茶が示され(段落【0218】)ており、引用例2には、(f)「1.乾燥した植物体と水溶性の植物繊維を配合したことを特徴とするティーバック。2.乾燥した植物体が、紅茶、日本茶、コーヒー、ほうじ茶または玄米茶である特許請求の範囲第1項のティーバック。・・・」(特許請求の範囲)が記載され、(g)「また、水溶性食物繊維としては難消化性デキストリン等の天然植物繊維、あるいは合成ポリデキストロース等の合成植物繊維を用いることが出来る。すなわち、例えば乾燥した植物体と植物繊維を、好ましくは混合比(重量比)2:1〜1:10で配合し・・・」(公報第2頁左上欄下から2行〜右上欄第3行)と、(h)「・・・紅茶等を飲用することにより、不足しがちな植物繊維を容易に摂取することができる。・・・余分の水分を含まないため保管に関して重量も軽く、経時変化も少ないものである。このため、手軽に食物繊維を摂取するために適したものと言える。」(公報第2頁左下欄第7〜14行)と記載されている。

3.対比・判断

本件発明1は、難消化性デキストリンの混合量を可溶性コーヒー粉末1重量部に対して5重量部以下とすることにより、コーヒーの風味が損なわれないようにし、1回の飲用により難消化性デキストリンを多量に摂取することができるとともに、食後等の飲用を習慣付けて長期間にわたって難消化性デキストリンを摂取し続けることができるようにしたものである。
これに対して、上記引用例1には、上記記載事項(a)乃至(e)等から、「水溶性の難消化性デキストリンをコーヒー、紅茶等の可溶性飲料粉末に配合した機能性飲料。」が記載されているといえる。
本件発明1と上記引用例1に記載された発明(以下、「引用例発明」という。)とを対比すると、両者は、「可溶性飲料粉末に対し水溶性の難消化性デキストリンを配合した機能性飲料。」である点で一致し、前者が、(1)飲料をコーヒーと特定し、(2)難消化性デキストリンの混合量を可溶性コーヒー粉末1重量部に対し5重量部以下としているのに対して、後者にはこれらの点が特定されていない点で相違する。
そこで、これらの相違点について検討する。

相違点(1)
引用例には、実施例ではなく例示であるものの、コーヒーに水溶性の難消化性デキストリンを混合することが明記されており、この点は実質的な相違点ではない。
また、仮にこの点を実質的な相違点とした場合であっても、飲料として、紅茶や、コーヒーが風味や香りが良く、習慣性があることは周知のことであるから、継続的に植物繊維を摂取するための飲料として、引用例1に例示もされているコーヒーを選択することに格別の困難性は認められず、コーヒーを選択することのより当業者が予期し得ない効果を奏するものでもない。

相違点(2)
可溶性コーヒー粉末に対する水溶性の難消化性デキストリンの配合割合は、コーヒーの本来の風味、香りを大きく損なうことがなく、コーヒーとして飲用できる程度の範囲内で、当業者が適宜最適化し得ることであるから、可溶性コーヒー粉末1重量部に対し水溶性難消化性デキストリン5重量部以下とすることは、当業者が適宜なし得ることであり、それにより、当業者が予期し得ない効果を奏するものでもない。

そして、本件の出願前に、各種食品に、血糖値の上昇を抑制する作用を有する水溶性難消化性デキストリンを配合することは周知のことであったし(必要なら、上記記載事項(c)参照。)、引用例2には、上記記載事項(h)のとおり、コーヒー等の乾燥した植物体と難消化性デキストリン等の水溶性食物繊維を配合したものが、経時変化も少ないことが記載されているから、本件発明1の、血糖値上昇を抑制する、保存安定性が良いという効果も、当業者が予期し得る効果にすぎない。

したがって、本件発明1は、上記引用例1乃至2に記載された発明に基づ
いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

審判請求人は、審判請求書において、引用例には、水溶性難消化性デキストリンを添加する食品を列記し、その列記された食品の1つとしてコーヒーが例示されているに過ぎず、食品に難消化性デキストリンが多量に含まれていても容易に飲用することを可能にするため、嗜好品としてのコーヒーを選択することは全く記載されていない旨主張しているが、嗜好性飲料としてコーヒー、紅茶は代表的な飲料であり、引用例1乃至2には何れもコーヒー、紅茶が併記され、紅茶の具体的実施例も挙げられているから、請求人の主張は採用できない。

4. むすび

以上のとおり、本件請求項1に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された上記の引用刊行物1乃至2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-07-27 
結審通知日 2005-08-02 
審決日 2005-08-17 
出願番号 特願平11-126921
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A23F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内田 淳子  
特許庁審判長 河野 直樹
特許庁審判官 長井 啓子
鵜飼 健
発明の名称 機能性コーヒー  
代理人 間宮 武雄  

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