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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1124193
審判番号 不服2001-21213  
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-05-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-11-28 
確定日 2005-10-06 
事件の表示 平成 4年特許願第314172号「パチンコ機」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年 5月17日出願公開、特開平 6-134112〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】出願の経緯及び出願の発明
本願は、平成4年10月28日の出願であって、平成13年10月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年11月28日付けで手続き補正がなされたものであって、その請求項1に係る発明は、明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの、
「発光素子によって電気的に表示される複数の図柄の変動表示が可能な第1の表示体と、表面に表示する複数の図柄の一部が前記第1の表示体で隠れるように傾斜させるとともに前記第1の表示体よりも部分的に前方側へ突出させる構造とし駆動手段によって回転駆動して前記複数の図柄の変動表示が可能な円盤状の第2の表示体とを有する図柄表示装置と、
前記両表示体が特定した図柄の組合わせの判定結果に基づいて開閉制御される入賞口を有する入賞装置とを備えたことを特徴とするパチンコ機。」(以下、「本願発明」という。)
にあるものと認められる。

【2】刊行物記載の事項
刊行物1:特開平1-303171号公報
刊行物2:特開平2-174875号公報
刊行物3:特開昭63-288179号公報

1.刊行物1について
原審における平成13年7月12日付けの拒絶理由通知書で引用し、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物1(特開平1-303171号公報)には、パチンコ遊技機に関して、以下の事項が記載されている。
「パチンコ遊技機10は、前面枠11と、該前面枠11に着脱自在に装着された遊技盤1とを含む。遊技盤1には、セーフ孔2a、2b、入賞玉によって後述の可変表示装置50を可変表示できる条件の定められた入賞領域3aないし3c、複数のヤクモノ(通称チューリップ)4a、4b、およびアウト玉入口5が形成されている。」(第3頁右下欄第2〜9行)
「遊技盤1のほぼ中央部には、可変入賞球・可変表示装置30が配設されている。可変入賞球・可変表示装置30は、後述の第3図ないし第5図を参照して説明する可変入賞球装置40および可変表示装置50が取付板31に一体的に装着されて構成されている。可変表示装置50は、機械的可変表示部材の一例の回転ドラム表示機構50Aおよび電気的可変表示部材の一例のセグメント表示器50Bを含んで構成されている。そして、可変表示装置50は、入賞領域3a〜3cへの入賞玉に応じて回転ドラム表示機構50Aおよびセグメント表示器50Bの可変表示を開始し、遊技者の停止指令操作または可変表示開始から一定時間後において、可変表示を停止する。このときの回転ドラム表示機構50Aの表示状態とセグメント表示器50Bの表示状態との組合わせが所定の状態になったとき、可変入賞球装置40を開成駆動できるように定められた特定遊技状態になったことが判断される。」(第3頁右下欄第19行〜第4頁左上欄第17行)
「可変入賞球装置40は枠部材42の前面(すなわち開口部32に関連する部分)に回動自在に装着された開閉板41を含む。」(第5頁左下欄第1〜4行参照)
「可変表示装置50の詳細について説明する。可変表示装置50は、回転ドラム表示機構50Aおよびセグメント表示器50Bを含んでいる。回転ドラム表示機構50Aは、第5図に示されるような構成である。第5図を参照して、回転ドラム群51は、複数列の回転ドラム51a、51b、51cを含んでいる。各列の回転ドラム51a〜51cの外周上には、絵模様や記号や数字などの識別情報(たとえばベル、星、ヨットなどの絵模様または数字もしくはアルファベットなどの記号)が描かれている。各列の回転ドラム51a〜51c・・・・回転ドラムを駆動するためのモータ56が装着されている。」(第6頁右上欄第14行〜同頁左下欄第17行)
以上の記載から、刊行物1には、以下の発明が記載されているものと認められる。(以下「引用発明1」という。)
「パチンコ遊技機10の前面枠11に着脱自在に装着された遊技盤1のほぼ中央部に可変入賞球・可変表示装置30を備え、可変表示装置30は、モータで駆動する機械的可変表示部材の回転ドラム表示機構50Aおよび電気的可変表示部材のセグメント表示器50Bを備え、入賞領域3a〜3cへの入賞玉に応じて回転ドラム表示機構50Aおよびセグメント表示器50Bの可変表示を開始し、遊技者の停止指令操作、または可変表示開始から一定時間後に可変表示を停止し、このときの回転ドラム表示機構50Aの表示状態とセグメント表示器50Bの表示状態との組合わせが所定の状態になると特定遊技状態であると判断され、可変入賞球装置40の開閉板41を開成駆動するパチンコ遊技機10。」

2.刊行物2について
同じく、刊行物2(特開平2-174875号公報)には、弾球遊技機に関して、以下の事項が記載されている。
「遊技盤1上には、特賞領域の一例のセーフ孔2a〜2c、セーフ孔3、複数のヤクモノ(通称チューリップ)4aおよび4b、ならびに可変入賞球装置5が配設される。また、遊技盤1のほぼ中央部には、可変表示部材の一例の表示装置20が装着される。表示装置20は、後述の第3A図〜第3C図を参照して詳細に説明する回転ドラム表示器30を含む。」(第3頁右上欄第9〜16行)
「表示装置20は、表示枠21を含む。表示枠21には、回転ドラム表示器30の一部を外部から視認できるようにするための表示窓22が形成される。表示窓22の大きさは、横方向の長さが回転ドラム表示器30に含まれる複数(図示では3個)の回転ドラム31a〜31cを横方向に並べた幅よりもやや長く、縦方向長さが各回転ドラム31a〜31cの外周部分に形成されている識別情報を複数(図示では3個)だけ表示できる程度の長さに選ばれる。」(第4頁左下欄第4〜13行)
「さらに、表示窓22よりも上部の表示枠21には、必要に応じてセグメント表示器28が設けられる。セグメント表示器28は、回転ドラム表示器30の機械的な可変表示に合わせて電気的可変表示を行うことにより、最大価値を付与可能な表示状態の発生確率を低くするために用いられる。」(第4頁右下欄第15〜20行)
「回転ドラム表示器30のいずれかの組合わせ有効列上での組合わせが「AAA」であり、セグメント表示器28の識別情報が「7」であることが判断されると、ステップ45へ進む。ステップ45において、第1の価値として最大価値を付与するための処理、たとえば開閉駆動回路47を駆動させてソレノイド15aを30秒だけ付勢することによって、プレート5aが30秒だけ開成される。」(第11頁左上欄第15行〜同頁右上欄第2行)

3.刊行物3について
同じく、刊行物3(特開昭63-288179号公報)には、弾球遊技機に関して、以下の事項が記載されている。
「遊技盤1のほぼ中央部には、表示窓が形成されていて、この表示窓に可変表示装置500が配設される。この可変表示装置500は、飾り枠501に電気的可変表示器の一例のセグメント表示器502を形成するとともに、可変表示部材の一例の回転ドラム機構(後述の第4図に示す)50を形成して構成される。そして、可変表示装置500は、前記入賞領域3a、3bへの入賞玉に応じてセグメント表示器502および回転ドラム機構50の可変表示を開始し、遊技者の停止指令または可変表示開始から一定時間後においてその可変表示を停止する。このときのセグメント表示器502の表示状態および回転ドラム機構50の表示状態の組合わせが所定の状態になったとき、前記可変入賞球装置30を開成駆動可能に定められた特定の遊技状態になったことが判断される。」(第2頁左下欄第17行〜同頁右下欄第12行)

【3】対比・判断
1.本願発明について
(ア)本願発明と引用発明1との対比
本願発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「モータ」、「回転ドラム表示機構」、「可変表示装置」、「開閉板」、「可変入賞球装置」、「パチンコ遊技機」が、本願発明の「駆動手段」、「第2の表示体」、「図柄表示装置」、「入賞口」、「入賞装置」、「パチンコ機」にそれぞれ相当し、また、引用発明1の「セグメント表示器」は、通常発光素子によって電気的に複数の図柄である複数の数字を変動表示することから、本願発明の「第1の表示体」に相当するものと認められる。
してみると、本願発明と引用発明1とは、
「発光素子によって電気的に表示される複数の図柄の変動表示が可能な第1の表示体と、駆動手段によって回転駆動して前記複数の図柄の変動表示が可能な第2の表示体とを有する図柄表示装置と、
前記両表示体が特定した図柄の組合わせの判定結果に基づいて開閉制御される入賞口を有する入賞装置とを備えたパチンコ機。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
第2の表示体が、本願発明では円盤状であるのに対し、引用発明1の表示体は回転ドラム状であって円盤状ではない点。
<相違点2>
第2の表示体が、本願発明では表面に表示する複数の図柄の一部が第1の表示体で隠れるように傾斜させるとともに第1の表示体よりも部分的に前方へ突出させる構造としたのに対し、引用発明1にはこの構成が記載されていない点。

2.相違点についての検討
<相違点1>について
パチンコ機において、複数の図柄を回転駆動する可変表示体に、円盤状の表示体を用いた点について、この出願の出願前において頒布された刊行物である特開平2-264683号公報に、パチンコ遊技機の遊技盤に、複数の図柄が付された複数の回転表示盤を設け、モータで回転駆動させて所定条件で大入賞口を開放させるようにした点が記載され(「第2頁左上欄第6〜16行」、「第4頁左上欄第1〜5行」参照)、また同じく、特開平2-268784号公報に、複数の回転表示盤をモータにより回転及び停止し、大当たり表示であるか判別して大入賞口を開放することが記載されているから(「第2頁左上欄第8行〜同頁右上欄第6行」参照)、パチンコ機に回転駆動する円盤状の表示体を用いることは、当該技術分野においては周知技術である。
そうすると、引用発明1の回転ドラム表示機構に代えて上記周知技術の円盤状の表示体を採用し相違点1に係る構成とすることは、格別の技術的困難性が生じることでもなく、当業者が容易に想到できたものである。
<相違点2>について
円盤状の第2の表示体を、表面に表示する複数の図柄の一部が電気的に表示される第1の表示体で隠れるように傾斜させた点について、この出願の出願前において頒布された刊行物である特開平2-289281号公報に、遊技機において複数のシンボルを周面に連設した各回転体を、奥行が小さくなるように斜めに重畳して配置したと記載され(「第3頁左上欄第1〜同頁左下欄第2行」及び第1、2図参照)、また、実願平2-122739号(実開平4-77980号)のマイクロフィルム)に、複数種類のマークが描かれている複数枚の円板を、奥行きが小さくなるように軸方向に近接して重ね合わせて配置したと記載されており(「第3頁第15行〜第5頁第12行」及び第1〜3図参照)、ともに隣接する円盤状の表示体の図柄の一部が隠れるように配置されているから、円盤状の表示体の表面に表示された複数の図柄の一部を、隣接する他の円盤状の表示体で隠れるように斜めに配置することは、当該技術分野においては周知技術である。
但し、円盤状の表示体に隣接する表示体が円盤状であることで、電気的表示を行う第1の表示体とは異なるが、上記周知技術はいずれも、奥行きが小さくなるように互いの表示体の一部を重ねて配置するものであるから、円盤状の表示体を配置する際に、隣接する表示体が通常パチンコ機で広く使用される電気的表示のもの(上記刊行物1〜3の「セグメント表示器」を参照)においても、上記周知技術と同様、奥行きを小さくするために、図柄の一部が隠れるように傾斜して配置することは、当業者が適宜になし得ることである。
また、円盤状の第2の表示体を電気的に表示される第1の表示体よりも部分的に前方側に突出させる構造とした点について、その技術的意義が明細書に記載がなく必ずしも明らかではないが、円盤状の表示体を傾斜配置する際、例えば、上記刊行物の特開平2-289281号公報のように、本体内部では奥行きの小さい配置が要求される事を考慮すれば、本願発明においても同様に、円盤状の表示体を電気的に表示する表示体よりも前方側に突出させて内部の奥行きの小さい配置にすることは、当業者であれば当然に採用し得る設計変更にしかすぎないことである。
そうすると、引用発明1の回転ドラムに上記周知技術を適用し、相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できたものである。

3.作用効果・判断
そして、本願発明によって奏する効果も、刊行物1記載の発明及び上記周知技術から予測できる範囲のものであって、格別なものとは認められないから、本願発明は刊行物1記載の発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものといわざるを得ない。

【4】むすび
したがって、本願発明は、刊行物1記載の発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-07-29 
結審通知日 2005-08-02 
審決日 2005-08-25 
出願番号 特願平4-314172
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神 悦彦  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 川島 陵司
辻野 安人
発明の名称 パチンコ機  
代理人 岡田 英彦  
代理人 中村 敦子  

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