• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08K
管理番号 1124277
異議申立番号 異議2003-73285  
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-03-10 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-25 
確定日 2005-07-19 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3444752号「樹脂用配合剤、その製法及びそれを用いたオレフィン系樹脂組成物」の請求項1ないし8に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3444752号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 【I】手続きの経緯
特許第3444752号の請求項1〜8に係る発明は、平成9年5月21日に出願され、平成15年6月27日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、山林己美子(以下「特許異議申立人」という。)より、請求項1〜8に係る特許に対して特許異議の申立てがなされ、平成16年10月20日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成16年12月20日に特許異議意見書が提出され、平成17年1月12日付けで特許権者に対して審尋がなされ、その指定期間内である平成17年3月18日に回答書が提出され、再度、平成17年5月18日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成17年6月1日に特許異議意見書と共に訂正請求書が提出されたものである。

【II】訂正の適否について
1.訂正の内容
(訂正事項A-a)
特許請求の範囲の請求項1〜3,5〜8を削除する。
(訂正事項A-b)
特許請求の範囲の請求項4の「【請求項4】酸化物基準でSiO2 /Al2 O3 =2乃至3.4の範囲のモル比を有し且つ粒子表面にギザギザ形状を有する球状のPc型ゼオライトを、ゼオライト中のナトリウム分の少なくとも一部が除去され且つ酸化物基準でモル比がSiO2 /Al2 O3 =2.1乃至3.3となる条件下に酸処理する工程と、酸処理物を焼成する工程との組み合わせにより、前記ゼオライトを非晶質化することを特徴とする非晶質定形粒子の製造法。」を、
「【請求項1】ケイ酸ナトリウムまたは活性ケイ酸ゲルとアルミン酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムとを、下記モル比、
Na2 O/SiO2 =0.2乃至8
SiO2 /Al2 O3 =2乃至4.0
H2 O/Na2 O =20乃至200
を満足するように混合し、80℃以上の温度で反応を行ってアルミノケイ酸アルカリのゲルを形成し、且つ該アルミノケイ酸アルカリのゲルを80℃以上の温度に保持したまま激しく攪拌することにより、SiO2 /Al2 O3 =2乃至3.4の範囲のモル比を有し且つ粒子表面にギザギザ形状を有する球状のPc型ゼオライトを合成し、
前記ゼオライト中のナトリウム分の少なくとも一部が除去され且つ酸化物基準でモル比がSiO2 /Al2 O3 =2.1乃至3.3となる条件下に酸処理する工程と、酸処理物を焼成する工程との組み合わせにより、前記ゼオライトを非晶質化することを特徴とする非晶質定形粒子からなる樹脂用配合剤の製造法。」と訂正する。
(訂正事項B-a)
特許明細書の発明の名称を「樹脂用配合剤の製造法」と訂正する。
(訂正事項B-b)
特許明細書の段落【0008】中の「耐摩耗性が比較的大きく」を「摩耗性が比較的大きく」と訂正する。
(訂正事項B-c)
特許明細書の段落【0011】中の「耐摩耗性が低いレベルに」を「摩耗性が低いレベルに」と訂正する。
(訂正事項B-d)
特許明細書の段落【0012】の記載を「従って、本発明の目的は、上記要請を満足する定形粒子状の樹脂用配合剤の製造法を提供するにある。」と訂正する。
(訂正事項B-e,B-f)
特許明細書の段落【0013】及び【0014】の記載を削除する。
(訂正事項B-g)
特許明細書の段落【0015】の記載を「【課題を解決するための手段】
本発明によれば、ケイ酸ナトリウムまたは活性ケイ酸ゲルとアルミン酸ナトリウムと水酸化ナトリウムとを、下記モル比:
Na2 O/SiO2 =0.2乃至8
SiO2 /Al2 O3 =2乃至4.0
H2 O/Na2 O =20乃至200
を満足するように混合し、80℃以上の温度で反応を行ってアルミノケイ酸アルカリのゲルを形成し、且つ該アルミノケイ酸アルカリのゲルを80℃以上の温度に保持したまま激しく攪拌することにより、SiO2 /Al2 O3 =2乃至3.4の範囲のモル比を有し且つ粒子表面にギザギザ形状を有する球状のPc型ゼオライトを合成し、
前記ゼオライト中のナトリウム分の少なくとも一部が除去され且つ酸化物基準でモル比がSiO2 /Al2 O3 =2.1乃至3.3となる条件下に酸処理する工程と、酸処理物を焼成する工程との組み合わせにより、前記ゼオライトを非晶質化することを特徴とする非晶質定形粒子からなる樹脂用配合剤の製造法が提供される。」と訂正する。
(訂正事項B-h)
特許明細書の段落【0016】の記載を「本発明において、上記の樹脂配合剤は、例えばオレフィン系樹脂100重量部に、0.01乃至10重量部の量で配合される。」と訂正する。
(訂正事項B-i)
特許明細書の段落【0017】の記載を「本発明においてはまた、メタロセン触媒を用いて得られたオレフィン系樹脂を含有する樹脂100重量部に、上記の樹脂配合剤を0.01乃至10重量部及びレーザー散乱回折法で測定して、0.2乃至10μmの粒径を有するリチウムアルミニウム複合水酸化物炭酸塩0.01乃至10重量部を含有させてなる樹脂組成物を農業用フィルムとして使用することができる。」と訂正する。
(訂正事項B-j)
特許明細書の段落【0018】の記載を削除する。
(訂正事項B-k)
特許明細書の段落【0019】中の「本発明の配合剤は」を「本発明によって製造される配合剤は」と訂正する。
(訂正事項B-l)
特許明細書の段落【0020】中の「本発明の樹脂用配合剤は」を「本発明によって製造される樹脂用配合剤は」と訂正する。
(訂正事項B-m)
特許明細書の段落【0024】の記載を「SiO2 /Al2 O3 のモル比が2乃至3.4の低モル比であるPc型ゼオライトの合成では、Pc型以外にA型やX型のゼオライトが混在しやすいが(後述の比較例参照)、本発明者らは、今回、SiO2 /Al2 O3 のモル比が低い場合には、ケイ酸ソーダ液とアルミン酸ソーダ液の反応を80℃以上で行い、生成したアルミノケイ酸ゲルを80℃以上の温度で連続且つ激しく攪拌することが、A型やX型のゼオライトの副生を抑制するのに有効であることを見いだした。この点について説明すると、Pc型ゼオライトとして、シリカ/アルミナモル比の小さいものを選択すると共に、このゼオライトを、軽度の酸処理、即ち非晶質化の程度が未だ不完全な酸処理に付すると共に、この酸処理物を更に焼成に付することにより、非晶質化の程度が完全なものとなるのである。」と訂正する。
(訂正事項B-n)
特許明細書の段落【0028】中の「本発明の非晶質定形粒子は」を「本発明によって製造される非晶質定形粒子(樹脂用配合剤)は」と訂正する。
(訂正事項B-o)
特許明細書の段落【0031】中の「[非晶質定形粒子の製造]」を「[非晶質定形粒子(樹脂用配合剤)の製造]」と訂正する。
(訂正事項B-p)
特許明細書の段落【0032】中の「SiO2 /Al2 O3 2乃至3.7 2.5乃至3.1」を「SiO2 /Al2 O3 2乃至4.0 2.5乃至3.1」と訂正し、同段落中の「防止するためには」を「防止するために」と訂正する。
(訂正事項B-q)
特許明細書の段落【0049】中の「本発明の非晶質定形粒子は、従来非晶質シリカアルミナ系定形粒子が使用されている用途に全て使用できるが」を「上記のようにして製造される非晶質定形粒子からなる樹脂用配合剤は」と訂正する。
(訂正事項B-r)
特許明細書の段落【0076】中の「本発明のオレフィン系樹脂組成物」を「本発明の樹脂用配合剤が配合されたオレフィン系樹脂組成物」と訂正する。
(訂正事項B-s)
特許明細書の段落【0079】中の「本発明の樹脂組成物」を「本発明の樹脂用配合剤が配合された樹脂組成物」と訂正する。
(訂正事項B-t)
特許明細書の段落【0081】中の「本発明の非晶質定形粒子は」を「本発明の非晶質定形粒子(樹脂用配合剤)は」と訂正する。
(訂正事項B-u)
特許明細書の段落【0093】の記載を「またPc型ゼオライトの調製モル組成(アルミノケイ酸ナトリウムゲルの組成)を下記条件として同様にして本発明による非晶質シリカアルミナ球状粒子(430℃焼成品)を得、試料No.1-5とした。なお、試料No.1-5の酸処理条件における上記硫酸量は、0.88Lであった。」と訂正する。
(訂正事項B-v)
特許明細書の段落【0122】の記載を「【発明の効果】本発明の製造法によれば、水性分散体のPHが6乃至10、特に6乃至9の範囲にあり、平衡水分吸湿量(RH90%)が10%以下という低吸湿性であって且つ粒子表面の形状がギザギザ状である非晶質シリカアルミナ球状粒子から成る樹脂用配合剤を得ることができ、この樹脂用配合剤をポリオレフィン系樹脂フイルムに使用することにより、発泡フクレも無く、透明性、AB性に優れたフイルムが得られる。」と訂正する。
(訂正事項B-w)
特許明細書の段落【0123】中の「複合水酸化物粒子を併用することにより」を、「複合水酸化物粒子を上記の樹脂用配合剤と併用することにより」と訂正する。
(訂正事項B-x)
特許明細書の段落【0124】の記載を「更にまた本発明の製造法によって得られる樹脂用配合剤は、水性分散体のPHが6乃至9の範囲にあることに関連して、特にメタロセン触媒を用いて製造されたオレフィン系樹脂フイルムに適用した場合においても、発泡フクレや微細な気泡も無く、AB性、透明性、スクラッチ性等も極めて良好で、且つピンク着色(ピンキング)等の着色障害も起こさない良好な樹脂フィルムが得られる。」と訂正する。
(訂正事項B-y)
特許明細書の段落【0001】の記載を「【発明の属する技術分野】
本発明は、オレフィン系樹脂等に対して配合される樹脂用配合剤の製造法に関するもので、より詳細には、形成されるフィルムのアンチブロッキング性、安定性、耐磨耗性、諸物性等に優れている樹脂用配合剤の製造法に関する。」と訂正する。
(訂正事項B-z)
特許明細書の段落【0114】中の「発砲」を「発泡」と訂正する。

2.訂正の適否
訂正事項A-aは、請求項の削除であるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
訂正事項A-bにおいて、特許明細書の段落【0024】、【0032】、【0033】及び【0118】の記載に基づいてPc型ゼオライトを限定し、また、訂正前の請求項1等の記載に基づいて、「非晶質定形粒子」を「非晶質定形粒子からなる樹脂用配合剤」と限定する訂正は、願書に添付された明細書に記載された範囲内において、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、請求項4の番号を繰り上げて請求項1とする訂正は、願書に添付された明細書に記載された範囲内において、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項B-aの発明の名称の訂正は、特許請求の範囲の記載と発明の名称を整合させるためのものであるから、願書に添付された明細書に記載された範囲内において、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
特許明細書の段落【0008】,【0011】中の「耐摩耗性」は「摩耗性」の誤記であることは明らかであるから、訂正事項B-b,B-cは、願書に添付された明細書に記載された範囲内において、誤記の訂正を目的とするものである。
訂正事項B-d〜B-o,B-q〜B-t,B-yの訂正は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載を整合させるためのものであるから、願書に添付された明細書に記載された範囲内において、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
特許明細書の段落【0118】の実施例4においてSiO2/Al2O3のモル比が4.0となっていることから、SiO2/Al2O3 の上限は3.7ではなく4.0であることは明らかであるから、訂正事項B-pにおいて、SiO2/Al2O3 の上限を3.7から4.0とすることは、願書に添付された明細書に記載された範囲内において、誤記の訂正を目的とするものである。また、訂正事項B-pにおいて、「防止するためには」を「防止するために」とする訂正は、特許請求の範囲の記載との整合を図るためのものであるから、願書に添付された明細書に記載された範囲内において、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
特許明細書の段落【0093】の「実施例1における」「それぞれ」の記載は不適当であるから、その記載を削除する訂正は明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、「Pc型ゼオライトの調製モル組成」が何を意味するのかを明りょうにするために「Pc型ゼオライトの調製モル組成(アルミノケイ酸ナトリウムゲルの組成)」とする訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであるから、訂正事項B-uは、願書に添付された明細書に記載された範囲内において、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項B-vにおいて「本発明によれば」を「本発明の製造法によれば」と訂正し、「樹脂用配合剤をポリオレフィン系フィルムに」を「樹脂用配合剤を得ることができ、この樹脂用配合剤をポリオレフィン系フィルムに」とする訂正は、特許請求の範囲の記載と整合を図るためのものであるから、願書に添付された明細書に記載された範囲内において、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、特許明細書の段落【0122】中の「発砲」は「発泡」の誤記であることは明らかであるから、「発泡」とする訂正は、願書に添付された明細書に記載された範囲内において、誤記の訂正を目的とするものである。
訂正事項B-wにおいて、「更にまた水性分散体」を「更にまた本発明の製造法によって得られる樹脂用配合剤は、水性分散体」とする訂正、及び、「フィルムにおいても」を「フィルムに適用した場合においても」とする訂正は、特許請求の範囲の記載と整合を図るためのものであるから、願書に添付された明細書に記載された範囲内において、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、特許明細書の段落【0124】中の「発砲」は「発泡」の誤記であることは明らかであるから、「発泡」とする訂正は、願書に添付された明細書に記載された範囲内において、誤記の訂正を目的とするものである。
特許明細書の段落【0114】中の「発砲」は「発泡」の誤記であることは明らかであるから、訂正事項B-zは、願書に添付された明細書に記載された範囲内において、誤記の訂正を目的とするものである。
そして、訂正事項A-a〜B-zは、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第第2項から第3項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。

【III】本件発明
上記の結果、訂正後の本件の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、訂正明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】ケイ酸ナトリウムまたは活性ケイ酸ゲルとアルミン酸ナトリウムと水酸化ナトリウムとを、下記モル比:
Na2 O/SiO2 =0.2乃至8
SiO2 /Al2 O3 =2乃至4.0
H2 O/Na2 O =20乃至200
を満足するように混合し、80℃以上の温度で反応を行ってアルミノケイ酸アルカリのゲルを形成し、且つ該アルミノケイ酸アルカリのゲルを80℃以上の温度に保持したまま激しく攪拌することにより、SiO2 /Al2 O3 =2乃至3.4の範囲のモル比を有し且つ粒子表面にギザギザ形状を有する球状のPc型ゼオライトを合成し、
前記ゼオライト中のナトリウム分の少なくとも一部が除去され且つ酸化物基準でモル比がSiO2 /Al2 O3 =2.1乃至3.3となる条件下に酸処理する工程と、酸処理物を焼成する工程との組み合わせにより、前記ゼオライトを非晶質化することを特徴とする非晶質定形粒子からなる樹脂用配合剤の製造法。」

【IV】特許異議申立ての概要
特許異議申立人は、甲第1〜2号証を提出し、訂正前の請求項1〜8に係る特許は下記の理由により取り消されるべきである旨を主張している。
(理由1)訂正前の請求項1〜3,5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、訂正前の請求項1〜3,5に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。
(理由2)訂正前の請求項1〜8に係る発明は、甲第1〜2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1〜8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

【V】判断
1.平成16年10月20日付け取消理由について
上記取消理由の概要は、訂正前の請求項1〜5に係る発明は、下記の刊行物1〜2に記載された発明に基づいて、訂正前の請求項6〜7に係る発明は下記の刊行物1〜4に記載された発明に基づいて、訂正前の請求項8に係る発明は下記の刊行物1〜5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1〜8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである、というものである。
<記>
刊行物1:特開平4-220447号公報(特許異議申立人提出の甲第1号証)
刊行物2:特開昭63-256512号公報(特許異議申立人提出の甲第2号証)
刊行物3:特開平7-300548号公報
刊行物4:特開平8-90732号公報
刊行物5:特開平7-300313号公報

2.刊行物に記載された事項
(刊行物1)
ア.「【請求項1】Al2 O3 :SiO2 のモル比が1:1.8乃至1:5.5の範囲にある非晶質シリカ-アルミナ系粒子において前駆体粒子が球状乃至明確な立方体および角のとれた立方体形状の定形ゼオライトであって、該シリカ-アルミナ系粒子が前駆体粒子の形状を有し、コールターカウンター法による平均粒径が0.2乃至8μmで、且つ関係湿度(RH)が90%、室温及び48時間の条件で13%以下の吸湿量と1.47乃至1.60の屈折率とを有することを特徴とする非晶質シリカ・アルミナ系粒子からなる結晶化核剤。」
イ.「【請求項3】前記非晶質シリカ-アルミナ系粒子は、前駆体粒子がP型ゼオライトであって、
下記式
mMO・nNa2 O・pSiO2 ・Al2 O3 ・qH2 O
式中、Mは2価金属の1種又は2種以上から成る金属であり、m+nは1.1±0.2の数であって、m:nの比は10:0乃至1:9の範囲内にあり、pは4±1.5の数であり、qは0.5以下の数である化学組成を有する請求項第1項記載の結晶化核剤。
【請求項4】 前記請求項第1項記載の結晶化核剤と有機結晶化促進を添加して成る結晶性熱可塑性樹脂組成物。」
ウ.「【0016】本発明のこのような粒子は、例えば後述する実施例に記載するとおり、結晶P型ゼオライト粒子を2価の金属イオンでイオン交換処理し、ついで焼成する方法、または結晶A型ゼオライト粒子等を酸処理する方法によって得ることができる。」
エ.「【0019】また、非晶質シリカ-アルミナ系粒子は、比表面積が大きく吸湿性が大きい活性粒子であるが、本発明に用いる非晶質シリカ-アルミナ系粒子は、比表面積50m2 /g以下で、関係湿度(RH)が90%、室温及び48時間の条件で13%以下の吸湿量と、特定の表面活性を有することが特徴である。このことは、前述した粒子の形状特性から溶融状態の樹脂中への分散を良くし、且つ低吸湿性であることから成形時の成形樹脂に生じてくる発泡の発生を防止し、成形物の透明度を高め且つ強度を高めるものである。」
オ.「【0022】したがって、本発明の粒子屈折率が各種の樹脂の屈折率に近似することから、透明性等に優れた成形品、例えばポリプロピレン,ポリエチレン,ポリエステルフィルムを与えることになる。又、この非晶質シリカ-アルミナ粒子はフィルムの粘着防止剤としての効果、すべり性向上を示すことはもちろんである。」
カ.「【0026】
【発明の好適態様】前駆体ゼオライト
ゼオライトの一次粒子は、明確な形状、例えば球状乃至立方体であり、好ましくは球状である。このようなゼオライトには各種あり、例えばP型ゼオライト、・・・等を挙げることができる。これらのゼオライトは、ナトリウム型、カリウム型、カルシウム型、マグネシウム型、亜鉛型或いはこれらの組み合わせであってもよい。A、X及びY型ゼオライトは立方体ゼオライトの代表であり、P型ゼオライト及びソーダライトは球状ゼオライトの代表例であり、アナルサイムは、それらの中間に位置する多面体(24面体)の例である。」
キ.「【0028】非晶質シリカ-アルミナ系粒子
本発明のシリカ-アルミナ系粒子は、X線回折的に実質上に非晶質であり、且つ一定の定形性を有した粒子である。粒子の形態は、前駆体である上記ゼオライト粒子の外観形状がそのまま維持されているものである。したがって、非晶質シリカ-アルミナ系粒子の形状は立方体、球状であるが、前述したように特に球状であることが望ましい。このようなものとしては特に、イオン交換型の非晶質シリカ-アルミナ球状粒子では、その骨格がほぼ完全に残り、各粒子の各々が真球に近い明確な球状であり、粒子表面を凹凸状に形状することができる。」
ク.「【0034】以上の構成を備えたシリカ-アルミナ系粒子の具体的なものとしては、イオン交換し焼成したもの或いは酸処理したものなどが挙げられ、以下これについて説明する。
(1)イオン交換に基づく非晶質シリカ-アルミナ系粒子は、P型ゼオライトが主に使用され、P型ゼオライトは、ケイ酸ナトリウムまたは活性ケイ酸ゲル,シリカゾル、メタカオリン、アルミン酸ナトリウム、アルミナゾル及び水酸化ナトリウムを下記条件を満足するように混合してアルミノケイ酸アルカリのゲルを生成させ、このゲルを均質化した後、80乃至200℃の温度で常圧もしくは水熱条件下で結晶化を行うことにより製造される。生成したゼオライトは、水洗し、更に所定の粒度への分級操作を行った後、次のイオン交換処理を行う。
【0035】配合条件
原料P型ゼオライトの化学組成の一例を示すと次の通りである。
成 分 比 モ ル 比 好適モル比
Na2 O/SiO2 0.2〜8 0.5〜2.0
SiO2 /Al2 O3 3〜20 4〜10
H2 O/Na2 O 20〜200 30〜100
前駆体P型ゼオライトの化学組成の一例を示すと次の通りである。
【0036】
kNa2 O・pSiO2 ・Al2 O3 ・qH2 O
式中、kは0.7乃至1.3の数であり、pは1.8乃至5.5の数特に、2.5乃至5.5であり、qは2乃至6以下、特に3乃至5以下の数である。イオン交換に用いる2価金属としては、周期律表第II族金属、Ca,Mg,Zn,Ba又はSrが、白色性の点で有利に使用されるが、それ以外に、K,NH4 ,Cu,Sn,Fe,Ni,Cr等の他の金属を用いることがてきる。イオン交換に際しては、これらの金属の水溶性塩、例えば塩化物、硝酸塩、硫酸塩等の水溶液を使用し、金属塩溶液とP型ゼオライトとを接触させることにより行われる。」
ケ.「【0040】このような非晶質シリカアルミナ球状粒子は、各粒子の各々が真球に近い明確な球状であって、粒子表面が梨子状となっているとともに、好適には一次粒系(電子顕微鏡写真法による粒径)が0.2〜8μm以下、特に0.3乃至5μmの範囲にして用いることができる。
【0041】また、粒子表面には梨子状の凹凸が生じ、その凹凸の程度は、式 B=(Δt)/rl・100
式中、Δtは前記粒子の電子顕微鏡写真の輪郭におけるギザギザ状凹凸の径方向の山と谷との間の深さを表わし、rlは前述した意味を有する、で定義される凹凸度(B)が1乃至1.0%、特に1.5乃至5%の範囲内にある。即ちこの凹凸度(B)は粒子表面の梨子状の度合を示す指数である。」
コ.「【0063】
【実験例】実験例1
下記方法で合成したP型ゼオライトを用いて以下に本発明によるカルシウム型非晶質シリカアルミナ粒子を調製し、その結果を「表1」に示した。
【0064】P型ゼオライトの合成
市販試薬の水ガラス(3号ケイ酸ソーダSiO2 27wt%,Na2 O9.0wt%)、アルミナ酸ナトリウム(Al2 O2 22.5wt%,Na2 O15.5wt%)、カセイソーダを用いて下記モル比で全体が16kgになるように希ケイ酸ソーダ液と希アルミニウム酸ナトリウム液を調製した。
【0065】Na2 O/SiO2 =0.8
SiO2 /Al2 O2 =8.0
H2 O/Na2 O =70
【0066】次に内容積約25リットルのステンレス製容器中で希ケイ酸ソーダ液8.2kgと希アルミン酸ナトリウム7.8kgを撹拌下ゆっくり混合し、全体が均一なアルミノケイ酸アルカリゲルとした。次いでこのアルミノケイ酸アルカリゲルを激しく撹拌しながら90℃まで昇温させ、その温度で48時間処理をして結晶化させた。
【0067】 次いで濾過、水洗して固形分濃度39%のP型ゼオライトケーキ約1.8kgを得た。次にこのケーキを濃度20%になるように水を加え十分に分散させた後、小型液体サイクロンで数回分級をし本発明に用いる前駆体スラリーを得た。
【0068】尚この前駆体の80℃乾燥物(試料1-0)の電子顕微鏡写真を「図3」にX線回折図を「図1」(B)に示した。
【0069】非晶質シリカアルミナ粒子の調製
上記原料スラリーを1リットルのビーカーに500gづつ分取し純水200mlを加えスターラーで撹拌しながら水浴中で40℃に加温する。次いでP型ゼオライト中に含まれるNa2 O分の1.5倍モルの塩化カルシウム,塩化マグネシウム;1.0倍モルの塩化亜鉛、塩化バリウム(和光純薬製試薬1級)を加え1時間撹拌処理する。以後真空濾過による母液を分離し、十分水洗した後、80℃で24時間乾燥し、小型サンプルミルで粉砕した後小型電気炉で400℃の温度で2時間焼成し、それぞれ試料1-1乃至1-4を調製した。試料1-1について
「図1」(A)にX線回折図、「図2」に電子顕微鏡写真を示した。」
サ.また、表1には、試料番号1-0として、結晶形がPc型ゼオライトであり、SiO2が52.6wt%、Al2O3が23.4wt%であるゼオライトが記載されている。

(刊行物2)
ア.「或る場合にはP型ゼオライトの非晶質化を、酸処理と熱処理との組み合わせで行うことが好ましい。即ち、P型ゼオライトを酸処理することにより、P型ゼオライト中のアルカリ金属分(ソーダ分)の少なくとも一部或いは更にアルミナ分の一部を除去することが可能となり、これにより最終無機充填剤のアルカリ度を減少させ、充填剤のpH(懸濁pH)を任意の範囲に調節することが可能となる。しかも、極めて意義深いことには、P型ゼオライトの酸処理を行った後、熱処理すると、酸処理していないP型ゼオライトを熱処理する場合に比して、非晶質化するに必要な熱処理温度を著しく低下させることができ、熱処理条件を緩和し、そのコストを低減させることが可能となる。」(2頁右下欄下から3行〜3頁左上欄12行)

(刊行物3)
ア.「従来、・・・ラップフィルム、シュリンクフィルム、・・・農業用フィルム、・・・等のさまざまなフィルム用途には軟質ポリ塩化ビニル(以下、軟質PVCと略する)が・・・幅広く使用されてきた。」「(段落【0002】)
イ.「このため最近では、上記軟質PVCの代替としてポリオレフィン系樹脂を用いたフィルムの開発が積極的に行われている。」(段落【0003】)ウ. 「メタロセン触媒により得られるポリエチレン・・・」(段落【0034】)

(刊行物4)
ア.「・・・農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム。」(請求項1)
イ.「メタロセン触媒法による低密度ポリエチレン」(段落【0008】)

(刊行物5)
ア.「請求項1記載のリチウムアルミニウム複合水酸化物塩から成り且つフィルム厚が15乃至30μmの熱可塑性樹脂フィルムに使用されるアンチブロッキング剤。」(請求項15)

3.特許法第29条第2項違反について
刊行物1には、3号ケイ酸ソーダ、アルミナ酸ナトリウム及びカセイソーダを用いて、下記モル比
Na2 O/SiO2 =0.8
SiO2 /Al2 O2 =8.0
H2 O/Na2 O =70
となるように希ケイ酸ソーダ液と希アルミニウム酸ナトリウム液を調製し、希ケイ酸ソーダ液と希アルミニウム酸ナトリウム液を撹拌下ゆっくり混合し、アルミノケイ酸アルカリゲルとし、次いで該アルミノケイ酸ゲルを激しく撹拌しながら90℃まで昇温させ、その温度で結晶化させてP型ゼオライト前駆体を得て、2価金属イオンでイオン交換した後焼成することにより、前記ゼオライトを非晶質化する非晶質シリカアルミナ粒子の製造法が記載され(摘示記載コ)、当該P型ゼオライトの結晶形はPc型ゼオライトでありSiO2を52.6wt%、Al2O3を23.4wt%含有していること(摘示記載サ)、P型ゼオライトは球状であること(摘示記載カ)、P型ゼオライトをイオン交換後焼成することにより製造した非晶質シリカアルミナ粒子は、球状であり表面が梨子状のギザギザ状凹凸であること(摘示記載ク,ケ)、非晶質シリカアルミナ粒子の形態は、前駆体であるゼオライトの外観形状がそのまま維持されていること(摘示記載キ)、及び、非晶質シリカアルミナ粒子は樹脂に添加して用いられること(摘示記載イ,オ)が記載されている。
刊行物1に記載された「アルミナ酸ナトリウム」とは通常用いられる技術用語ではないし、刊行物1の段落【0034】にはアルミノケイ酸アルカリのゲルを生成させるための原料として「アルミン酸ナトリウム」が記載されているので、刊行物1に記載された「アルミナ酸ナトリウム」は「アルミン酸ナトリウム」の誤記であると認められ、また、刊行物1の段落【0035】にはアルミノケイ酸アルカリのゲルを生成させる際の配合条件として「SiO2 /Al2 O3 」と記載され、その他の段落【0036】等においても「Al2 O3 」と記載されていることから、刊行物1に記載された「SiO2 /Al2 O2=8.0」は、「SiO2 /Al2 O3=8.0」の誤記であると認められる。
すると、刊行物1には、「3号ケイ酸ソーダ、アルミン酸ナトリウム及びカセイソーダを用いて、下記モル比
Na2 O/SiO2 =0.8
SiO2 /Al2 O3=8.0
H2 O/Na2 O =70
を満足するように撹拌下ゆっくり混合し、アルミノケイ酸アルカリゲルとし、次いで該アルミノケイ酸ゲルを激しく撹拌しながら90℃まで昇温させその温度で結晶化させて、SiO2を52.6wt%、Al2O3を23.4wt%含有する球状のPc型ゼオライト前駆体を得て、2価金属イオンでイオン交換した後焼成することにより、前記ゼオライトを非晶質化する、ゼオライトの外見形状をそのまま維持し球状で表面がギザギザ状凹凸非晶質シリカアルミナ粒子である樹脂用添加剤の製造法」が記載されている。
そこで、本件発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された発明の「3号ケイ酸ソーダ」「カセイソーダ」「樹脂用添加剤」は、本件発明の「ケイ酸ナトリウム」「水酸化ナトリウム」「樹脂用配合剤」に相当し、また、両発明において「Na2 O/SiO2 」「H2 O/Na2 O」の数値及びアルミノケイ酸アルカリのゲルを激しく攪拌する時の温度は重複している。
したがって、両発明は、「ケイ酸ナトリウムまたは活性ケイ酸ゲルとアルミン酸ナトリウムと水酸化ナトリウムとを、下記モル比:
Na2 O/SiO2 =0.2乃至8
H2 O/Na2 O =20乃至200
を満足するように混合し、アルミノケイ酸アルカリのゲルを形成し、且つ該アルミノケイ酸アルカリのゲルを80℃以上の温度に保持したまま激しく撹拌することにより、球状のPc型ゼオライトを合成し、
前記ゼオライトを焼成する工程を用いて、前記ゼオライトを非晶質化することを特徴とする非晶質定形粒子からなる樹脂用配合剤の製造法」である点で一致し、下記の点で相違している。
(相違点1)本件発明はアルミノケイ酸アルカリのゲルを形成するときの反応温度が80℃以上であるのに対し、刊行物1には特に温度についての記載はない点。
(相違点2)本件発明はケイ酸ナトリウムとアルミン酸ナトリウムと水酸化ナトリウムを混合する際のモル比がSiO2 /Al2 O3 =2乃至4.0であるのに対して、刊行物1に記載された発明は8.0である点。
(相違点3)本件発明はPc型ゼオライトのSiO2 /Al2 O3 =2乃至3.4であるのに対し、刊行物1に記載された発明のPc型ゼオライトのSiO2:52.6wt%、Al2O3:23.4wt%を、モル比に換算するとSiO2 /Al2 O3=3.8となる点。
(相違点4)本件発明はゼオライト中のナトリウム分の少なくとも一部が除去され且つ酸化物基準でモル比がSiO2 /Al2 O3 =2.1乃至3.3となる条件下に酸処理する工程と、酸処理物を焼成する工程とを組み合わせてなるのに対して、刊行物1に記載された発明はイオン交換後焼成している点。
(相違点5)本件発明の球状のPc型ゼオライトは粒子表面にギザギザ形状を有するのに対し、刊行物1には、Pc型ゼオライトの外見形状をそのまま維持した球状の非晶質シリカアルミナ粒子の表面はギザギザ状凹凸であることは記載されているが、Pc型ゼオライト粒子自体の表面がギザギザ形状であるとは直接は記載されていない点。
まず、相違点1について検討すると、刊行物1にはゲル形成時の反応を加熱下に行うことは記載も示唆もされておらず、刊行物2あるいは刊行物3〜5にもゲル形成時の温度については記載も示唆もない。
そして、本件訂正明細書の段落【0024】に記載されるように、本件発明は、ゲル形成時の温度を80℃以上とし、かつ、当該ゲルを80℃以上に保持したまま激しく攪拌することにより、A型ゼオライトやX型ゼオライトの副生を防止することができるのであり、このことは本件訂正明細書の実施例と比較例及び平成17年6月1日提出の特許異議意見書を見ても明らかである。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明は、刊行物1〜5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由、証拠及び取消理由によっては、本件発明についての特許を取り消すことができない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
樹脂用配合剤の製造法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】ケイ酸ナトリウムまたは活性ケイ酸ゲルとアルミン酸ナトリウムと水酸化ナトリウムとを、下記モル比:
Na2O/SiO2=0.2乃至8
SiO2/Al2O3=2乃至4.0
H2O/Na2O=20乃至200
を満足するように混合し、80℃以上の温度で反応を行ってアルミノケイ酸アルカリのゲルを形成し、且つ該アルミノケイ酸アルカリのゲルを80℃以上の温度に保持したまま激しく攪拌することにより、SiO2/Al2O3=2乃至3.4の範囲のモル比を有し且つ粒子表面にギザギザ形状を有する球状のPc型ゼオライトを合成し、
前記ゼオライト中のナトリウム分の少なくとも一部が除去され且つ酸化物基準でモル比がSiO2/Al2O3=2.1乃至3.3となる条件下に酸処理する工程と、酸処理物を焼成する工程との組み合わせにより、前記ゼオライトを非晶質化することを特徴とする非晶質定形粒子からなる樹脂用配合剤の製造法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、オレフィン系樹脂等に対して配合される樹脂用配合剤の製造法に関するもので、より詳細には、形成されるフィルムのアンチブロッキング性、安定性、耐磨耗性、諸物性等に優れている樹脂用配合剤の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系共重合体のごときオレフィン系樹脂は、成形性に優れ、衛生的特性、機械的特性、透明性等に優れており、廃棄処理も容易であることから、フィルムの形で、包装材料、農業用フィルム等の各種用途に広く使用されている。
【0003】
これらのフィルム、特に延伸フィルムを取り扱う際、フィルム面同士が密着して剥離しにくくなる所謂ブロッキングが生じ、これを防止するためにアンチブロッキング剤を配合することが広く行われており、このようなアンチブロッキング剤としては、各種無機粒子、例えば非晶質シリカ、アルミナ、シリカアルミナ、ゼオライト、各種クレイ等が知られている。
【0004】
本出願人の出願にかかる特公昭61-36866号公報には、Al2O3:SiO2のモル比が1:1.8乃至1:5の範囲にある組成を有する一辺の長さが5ミクロン以下の立方体粒子から成るアルミナ-シリカ系樹脂配合剤が記載されている。
【0005】
また、特公平5-42367号公報には、真円度及びギザギザ度が特定の範囲にある非晶質シリカ乃至シリカアルミナ粒子が記載され、この粒子は、P型ゼオライトに特有のX線回折像と明確な球状形状及びギザギザ状の表面とを有するゼオライト粒子を合成し、これを酸処理することにより製造することが記載されている。
【0006】
更に、特公平6-17217号公報には、P型ゼオライトをアルカリ土類金属等でイオン交換し次いで焼成することにより非晶質化したシリカ-アルミナ系球状粒子が記載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記の提案にかかるシリカ乃至シリカ-アルミナ系の定形粒子は、オレフィン系樹脂に対する配合、分散が容易であり、アンチブロッキング性能に優れているという利点を与えるが、吸湿性、耐磨耗性、及び安定性の組み合わせにおいては、未だ十分満足すべきものではない。
【0008】
第1の提案に見られる立方体粒子形状のものは、配合フィルム同士がこすれたときの磨耗性が比較的大きく、特に吸湿性の減少を目的として高温で焼成したものではその傾向が特に大きい。
【0009】
第2の提案に見られる球状粒子は、未だ吸湿量が大きく、樹脂に配合し、加工する際、発泡する傾向が大きく、また製造する際、P型ゼオライト中のシリカ分が反応媒体中に溶出して、目的物の歩留まりが低いという不利益がある。
【0010】
第3の提案に見られる球状粒子は、目的物の歩留まりが大きいこと及び吸湿傾向が比較的少ないことでは満足しうるものではあるが、アルカリ性が強いため、樹脂に配合したときの安定性に問題があり、樹脂用配合剤を分解したり、或いは着色を生じることが問題である。
【0011】
このように、アンチブロッキング剤等の樹脂用配合剤としては、その分散性のために、球状等の定形粒子であることは当然必要なことであるが、それと同時にpHが中性付近であって、樹脂組成物の安定性に優れていること、配合樹脂フィルムの磨耗性が低いレベルに抑制されていること、吸湿傾向が少なくて、樹脂の発泡が抑制されていることが同時に要求される。
【0012】
従って、本発明の目的は、上記要請を満足する定形粒子状の樹脂用配合剤の製造法を提供するにある。
【0013】
(削除)
【0014】
(削除)
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、ケイ酸ナトリウムまたは活性ケイ酸ゲルとアルミン酸ナトリウムと水酸化ナトリウムとを、下記モル比:
Na2O/SiO2=0.2乃至8
SiO2/Al2O3=2乃至4.0
H2O/Na2O=20乃至200
を満足するように混合し、80℃以上の温度で反応を行ってアルミノケイ酸アルカリのゲルを形成し、且つ該アルミノケイ酸アルカリのゲルを80℃以上の温度に保持したまま激しく攪拌することにより、SiO2/Al2O3=2乃至3.4の範囲のモル比を有し且つ粒子表面にギザギザ形状を有する球状のPc型ゼオライトを合成し、
前記ゼオライト中のナトリウム分の少なくとも一部が除去され且つ酸化物基準でモル比がSiO2/Al2O3=2.1乃至3.3となる条件下に酸処理する工程と、酸処理物を焼成する工程との組み合わせにより、前記ゼオライトを非晶質化することを特徴とする非晶質定形粒子からなる樹脂用配合剤の製造法が提供される。
【0016】
本発明において、上記の樹脂配合剤は、例えばオレフィン系樹脂100重量部に、0.01乃至10重量部の量で配合される。
【0017】
本発明においてはまた、メタロセン触媒を用いて得られたオレフィン系樹脂を含有する樹脂100重量部に、上記の樹脂配合剤を0.01乃至10重量部及びレーザー散乱回折法で測定して、0.2乃至10μmの粒径を有するリチウムアルミニウム複合水酸化物炭酸塩0.01乃至10重量部を含有させてなる樹脂組成物を農業用フィルムとして使用することができる。
【0018】
(削除)
【0019】
本発明によって製造される配合剤は、オレフィン系樹脂一般に広く適用できるが、特にメタロセン触媒を用いて得られるオレフィン系樹脂、最も好適にはエチレン-α-オレフィン共重合体に適用した場合に著しい効果が達成される。
【0020】
【発明の実施形態】
本発明によって製造される樹脂用配合剤は、Pc型ゼオライトに特有の粒子形状を有する非晶質定形粒子でありながら、酸化物基準のモル比がSiO2/Al2O3=2.1乃至3.3の範囲にあること、即ちシリカ成分に対するアルミナ成分の含有量が比較的大きいことが顕著な特徴である。
【0021】
即ち、シリカ成分は酸性であり、アルミナ成分は塩基性であるが、本発明においてはSiO2/Al2O3のモル比を上記の特定の範囲に保つことにより、水性分散体のPHを6乃至10の範囲にすることができ、樹脂、特にメタロセン触媒を使用して合成した樹脂のフィルムに使用する場合は、PHを6乃至9、特に6.5乃至8の中性近傍に維持したものを合成することも可能となり、配合剤が酸性側或いはアルカリ性側に偏ることの不利益を解消することもできる。
【0022】
また、シリカアルミナ系粒子、特にゼオライトの酸処理によるシリカアルミナ系粒子では、アルミナ成分の含有量が低くなるほど、平衡水分吸湿量(RH90%)が増大する傾向があるが、本発明では、SiO2/Al2O3のモル比を前述した特定の範囲に制御したことにより、この平衡水分吸湿量(RH90%)を10%以下に抑制し、樹脂配合時の発泡等の問題を解消できるものである。
【0023】
従来Pc型ゼオライトの酸処理により製造された非晶質シリカ乃至シリカアルミナは、前述した特公平5-42367号(特開昭63-182212号公報)に見られるとおり、SiO260〜99.99%、Al2O30〜25%、Na2O0〜12%の重量組成を有するものであり、SiO2/Al2O3のモル比は4.08以上に相当するものであった。また、その実施例によると、原料となるPc型ゼオライトとしては、SiO2/Al2O3のモル比が3.78〜7のものが使用されていた。これは、SiO2/Al2O3のモル比が高いほど、Pc型ゼオライトが生成しやすいこと、更にゼオライトの酸処理工程においても、Pc型ゼオライトの形状を保持しやすいことの理由によるものである。
【0024】
SiO2/Al2O3のモル比が2乃至3.4の低モル比であるPc型ゼオライトの合成では、Pc型以外にA型やX型のゼオライトが混在しやすいが(後述の比較例参照)、本発明者らは、今回、SiO2/Al2O3のモル比が低い場合には、ケイ酸ソーダ液とアルミン酸ソーダ液の反応を80℃以上で行い、生成したアルミノケイ酸ゲルを80℃以上の温度で連続且つ激しく撹拌することが、A型やX型のゼオライトの副生を抑制するのに有効であることを見いだした。この点について説明すると、Pc型ゼオライトとして、シリカ/アルミナモル比の小さいものを選択すると共に、このゼオライトを、軽度の酸処理、即ち非晶質化の程度が未だ不完全な酸処理に付すると共に、この酸処理物を更に焼成に付することにより、非晶質化の程度が完全なものとなるのである。
【0025】
即ち、従来のPc型ゼオライトの酸処理では、ゼオライト中のアルミナ分をかなり除去しないと、非晶質が達成できなかったが、本発明では、SiO2/Al2O3のモル比をほとんど変化させることなく非晶質化が可能であるため、粒子中の構造が緻密であって、嵩密度が0.5乃至1.2g/mlの高い範囲にあり、また吸湿傾向も至って少なく、更にpHも中性付近にあり、製造上も収率が高く、粒子の崩壊や粒子同士の凝集がなく、粒子の定形性や粒子サイズの均一性等に優れているという利点を与える。
【0026】
本発明の樹脂用配合剤は、Pc型ゼオライトに特有の粒子形状を有すると共に、平均粒径が0.3乃至10μmの範囲にあるべきである。即ち、粒径が上記範囲よりも小さいと、粒子同士の凝集が生じたり、粒子の定形性が失われるので好ましくなく、一方上記範囲よりも大きいと、Pc型以外の形状のものが混入する(原料ゼオライトに起因する)ので好ましくない。
【0027】
[非晶質定形粒子]
図1は、本発明によるPc型ゼオライト球状粒子(試料No.1-1)の粒子構造を表す走査型電子顕微鏡写真であり、図2は、本発明による低吸湿性の非晶質シリカアルミナ球状粒子(試料No.1-3)の粒子製造を表す走査型電子顕微鏡写真図である。また、図3は、後述の実施例1で得られた本発明によるPc型ゼオライト及びその酸処理物に関する試料No.1-1、No.1-2、No.1-3のX線回折図であり、図4は、比較例1で得られたPc型ゼオライト及びその酸処理物に関する試料No.H-1、No.H-2、No.H-3のX線回折図である。
【0028】
上記図1乃至4から、本発明によって製造される非晶質定形粒子(樹脂用配合剤)は、Pc型ゼオライトの粒子形状及び粒径を実質上そのまま維持しながら、非晶質化されていることが理解される。
【0029】
本発明の非晶質定形粒子は、平均粒径が0.3乃至10μmの範囲にあるが、粒径の分布は非常にシャープである。粒度分布は、一般にコールターカウンターによる体積基準の粒径分布として求められ、その表現には種々の形式があるが、一般には大粒径側からの積算値25%に対応する粒径(D25)と積算値75%に対応する粒径(D75)との比で表わすことができる。本発明に用いる細孔制御非晶質シリカ系定形粒子のD25/D75の値は一般に1.7以下である。図9及び図10は、本発明の非晶質定形粒子の数例の粒度分布曲線を示す。
【0030】
本発明の非晶質定形粒子は、BET法比表面積が10乃至50m2/gの範囲に抑制されていることも特徴である。即ち、この比表面積を50m2/g以下に抑制することによって、嵩密度を前述した大きな範囲として、樹脂等への配合作業性や樹脂等への分散性を向上させ、輸送及び貯蔵をコンパクトな形で行うことができる。更に、非晶質定形粒子がともすれば有しやすい吸湿傾向を抑制し、樹脂に配合する前に吸湿するのを防止し、配合時乃至成形時に発泡するのを防止することができる。
【0031】
[非晶質定形粒子(樹脂用配合剤)の製造]
本発明では、原料Pc型ゼオライトとして、SiO2/Al2O3のモル比が2乃至3.4の低モル比のものを合成する。好適なPc型ゼオライトは次の組成を有する。
SiO2 50乃至40重量%
Al2O3 23乃至35重量%
Na2O 15乃至19重量%
【0032】
このPc型ゼオライトは、ケイ酸ナトリウムまたは活性ケイ酸ゲル、アルミン酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムを、下記条件、

を満足するように混合してアルミノケイ酸アルカリのゲルを形成させる。A型ゼオライトや、X型ゼオライトの副生を防止するために、常圧若しくは水熱条件下で、反応を80℃以上の高温、特に80乃至200℃の温度で、しかも激しく撹拌して均質な条件下に結晶化させることが重要である。これにより、純粋なPc型ゼオライトを合成する。生成するゼオライトは、水洗し、所望により、所定粒度への分級操作を行った後、次の酸処理を行う。
【0033】
本発明では、上記の方法で得られる球状のPc型ゼオライトを、ゼオライト中のナトリウム分の少なくとも一部が除去される条件下に酸処理する工程と、酸処理物を焼成する工程との組み合わせにより、前記ゼオライトを非晶質化する。
【0034】
用いる酸は、無機酸でも有機酸でも格別の制限なしに使用されるが、経済的には、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の酸が使用される。これらの酸は、稀釈水溶液の形で結晶性ゼオライトとの中和反応に用いる。
【0035】
この酸処理は、非晶質化が部分的に生じるが、完全な非晶質化が生じるほど過酷でない方がよく、特にアルミナ分が溶出するような過酷な酸処理条件は避けるべきである。Pc型ゼオライトのX線回折図における最大ピークの高さをH、酸処理物の同じピークの高さをhとして、h/Hの比が0.01乃至0.35、好ましくは0.05乃至0.25、特に好ましくは0.05乃至0.18となるように酸処理を行う。結晶ゼオライトの水性スラリーに酸を添加すると、酸の添加につれてpHは当然酸性側に移行するが、添加終了後、液のpHは再びアルカリ側に移行し、一定のpH値に飽和する傾向がある。この飽和するpH、即ち安定時pHが1.5乃至6、特に2乃至4の範囲となるように中和を行うことが、ゼオライト中の溶出量を最低限にしながら、粒子形状を損なうことなく、ゼオライトを非晶質化するために好ましい。
【0036】
酸処理によりアルカリ分の少なくとも一部を溶出除去して得られるアルミナ-シリカ粒子は、濾過し、必要により水洗し、乾燥し、以下の焼成処理を行って非晶質定形粒子とする。
【0037】
上記のようにして得られる非晶質定形粒子を、一般に、300乃至1300℃の温度で焼成して、非晶質化の促進と内部の細孔の収縮とを行わせることができる。即ち、酸処理のみでは、非晶質化の程度が不十分である場合にも、この焼成により非晶質化が一層進行して、完全に非晶質化されたものを得ることができる。従って、この焼成の具体的条件は、非晶質化が完全に進み、且つ非晶質定形粒子が前述した物性を有するようなものである。勿論この焼成条件は粒子形状の破損を招くものであってはならない。
【0038】
一般的にいって、焼成温度が高くなるほど非晶質化が進み、焼成温度が高くなるほど、また同じ温度では焼成時間が長くなるほど、細孔の収縮の程度は大きくなる。また、同じ粒子径の粒子同士でも、焼成温度を変えることにより、粒子の屈折率を調整することもできる。例えば、後述する実施例3の粒子を焼成した場合の屈折率は、550℃で30分の焼成物で1.481、700℃で30分の焼成物で1.485、800℃で30分の焼成物で1.489、900℃で30分の焼成物で1.50となる。更に焼成温度を上げることにより、屈折率を1.5以上に上げることができる。かくして、酸処理物の非晶質化の程度から、また酸処理物が有する比表面積及び細孔容積と、所望とする平衡水分吸湿量(RH90%)、屈折率との兼ね合いで焼成条件を決定すればよい。
【0039】
焼成は、回転式、固定床式、移動床式或いは流動床式の焼成炉を用いて行うことができ、熱源として燃焼ガス、赤外線、電熱等を利用して、内熱或いは外熱により行うことができる。焼成時間は、一般に0.1乃至3時間程度が適当である。
【0040】
また、一般に必要でないが所望により、焼成に先立って、酸処理物に、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Ti、Zr、Al及びZnから成る群より選択された金属成分の少なくとも1種を添着させて、形成される非晶質定形粒子の表面改質等を行うこともできる。また、この表面改質によって、本発明品の屈折率を1.46から1.55まで調節することができ、樹脂の屈折率に合わせて、配合することが可能となる。
【0041】
アルカリ金属分、アルカリ土類金属分或いはその他の金属成分は、吸湿性を損なわない範囲の量で用いるべきであり、一般に酸処理した定形粒子に対して、酸化物基準で15重量%以下、特に0.5乃至10重量%の量で用いるのがよい。
【0042】
アルカリ金属、アルカリ土類金属、Ti、Zr、Al或いはZn成分としては、酸化物、水酸化物、水溶性塩類等が使用され、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硝酸チタン、塩化チタン、塩化ジルコニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、亜鉛華、硝酸亜鉛等が挙げられる。水溶性塩類を使用した場合、残留するアニオンを水洗除去することが好ましい。アルカリ金属或いはアルカリ土類金属の水酸化物が特に好適である。たとえば、本発明の20%スラリー品に、固形分に対して3乃至10%(Al2O3)換算の硫酸アルミ(Al2O38.18%、SO318.8%)を添加し、撹拌する。その後、12.5%のアンモニア水を滴下して、pHを7程度まであげてから、10時間撹拌し、濾過水洗した。その乾燥ケーキを550℃乃至700℃に焼成してアルミニウム添着非晶質シリカアルミナ球状粒子を製造して屈折率を1.48以上に調整することもできる。
【0043】
本発明に用いる非晶質定形粒子は、その表面を無機酸化物、例えば酸化チタン、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、;シラン系、チタニウム系或いはジルコニウム系のカップリング剤で被覆し或いは表面処理しておくことができる。また、この粒子は、金属石鹸、樹脂酸石鹸、各種樹脂乃至ワックス類、シラン系乃至チタン系カップリング剤、各種金属の酸化物もしくは水酸化物やシリカコーティング等を所望により施すことができる。また、本発明の非晶質シリカアルミナ球状粒子に該粒子よりも微細な不定形シリカ(シリカゾル、ヒュームドシリカ、湿式法シリカ等)を該粒子に対して0.2重量%以上、好ましくは0.3乃至5重量%で配合し、非晶質シリカアルミナ球状粒子の分散性を向上させることもできる。
【0044】
シラン系カップリング剤としては、次のものを挙げることができる。
γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、などのアミノ系シラン。
【0045】
γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、などのメタクリロキシ系シラン。
ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、などのビニル系シラン。
β-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、などのエポキシ系シラン。
【0046】
γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、などのメルカプト系シラン。
γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、などのクロロプロピル系シラン。
【0047】
また、チタネート系カップリング剤としては、次のものを挙げることができる。
イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジ-トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタイノルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N-アミノエチル-アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート、ポリジイソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ポリジノルマルブチルチタネート。
【0048】
これらの表面処理剤は、その種類によっても相違するが、一般に非晶質定形粒子当たり、0.1乃至10重量%の量で用いるのが好ましい。
【0049】
[用途]
上記のようにして製造される非晶質定形粒子からなる樹脂用配合剤は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂或いは各種ゴム配合用の配合剤として特に有用である。更に、触媒担体、化粧品用基材、塗料用つや消し剤、トナー添加剤、研磨材等にも使用できる。
【0050】
即ち、この非晶質定形粒子は、高湿度における平衡水分率が低い範囲に抑制されることにより、低吸水性で発泡等の不都合がなく、またpHが中性乃至中性付近であり、しかも他の添加剤との間にも吸着による発色や添加剤の性能低下等の不都合がなく、優れた樹脂フィルム用の配合剤、特にアンチブロッキング剤となりうるものである。
【0051】
アンチブロッキング剤として配合する熱可塑性樹脂としては、オレフィン系樹脂が好適なものであり、特に低-、中-或いは高-密度のポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、あるいはこれらのエチレン乃至α-オレフィンとの共重合体であるポリプロピレン系重合体、線状低密度ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリブテン-1、エチレン-ブテン-1共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン-1共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)、エチレン-アクリル酸エステル共重合体等が挙げられ、これらは単独でも或いは2種以上のブレンド物の形でも使用できる。
【0052】
これらのオレフィン重合体は、ハロゲン含有遷移金属化合物と有機アルミニウム化合物とからなる所謂チーグラー系触媒を用いて製造されたものでも、所謂メタロセン系触媒、即ちチタン或いはジルコニウム等の遷移金属のシクロペンタジエニル骨格含有錯体と有機アルミノキサン化合物とから成る触媒を用いて製造されたものでもよい。
【0053】
メタロセン系触媒を用いて製造したオレフィン系樹脂は、機械的強度、透明性、ヒートシール強度、耐抽出性等に優れており、包装材料として優れている。本発明の非晶質定形粒子は、メタロセン触媒を用いて製造したオレフィン系樹脂フィルムのアンチブロッキング剤として特に有用であり、従来のアンチブロッキング剤に見られた着色傾向を解消することができる。また、メタロセン触媒を使用して製造した樹脂のフィルムに対して、本発明の非晶質シリカアルミナ球状粒子を使用する場合、該粒子の水性分散体のpHは6乃至9であることが好ましく、特に6.5乃至8であることが好ましい。
【0054】
本発明の樹脂用配合剤は、上記オレフィン重合体の内でも、エチレンと炭素数3乃至18のα-オレフィン、例えばプロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、4メチルペンテン-1、ヘプテン-1、オクテン-1、デセン-1等とを、遷移金属系触媒、特にメタロセン系触媒の存在下に重合させて得られる線状低密度ポリエチレン(LLDPE)の樹脂配合剤として有用である。また、上記LLDPEの成形性を改善するために、LLDPEに低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレンをブレンドして、フィルム等を成形することも知られているが、この樹脂組成物に対しても、本発明の樹脂配合剤を使用できる。
【0055】
本発明の樹脂用配合剤は、改質されたプロピレン系重合体組成物に対するアンチブロッキング剤としても有用である。即ち、結晶性プロピレン系重合体の耐衝撃性や柔軟性を改善するために、エチレン-αオレフィン共重合体エラストマー、特にメタロセン系触媒を用いて得られたエチレン-αオレフィン共重合体を、ホモポリプロピレン、エチレンプロピレンランダム共重合体、エチレンプロピレンブロック共重合体等の結晶性プロピレン系重合体にブレンドすることが行われているが、本発明の樹脂用配合剤は、このプロピレン系重合体組成物のアンチブロッキング剤としても有用である。
【0056】
本発明のオレフィン系樹脂組成物において、非晶質定形粒子を、上記オレフィン系樹脂100重量部当たり、0.01乃至50重量部の量で用いるのがよい。特にAB剤としてポリエチレンフィルムでは0.1乃至3重量部、ポリプロピレンフィルムでは0.01乃至0.3重量部、またマスターバッチとしては1乃至50重量部の量で用いられる。定形粒子の配合量が、上記範囲よりも少ないと、フィルムのブロッキングを防止し、フィルムのハンドリングを向上させることが困難となる傾向があり、一方上記範囲を上回っても配合量の増大に伴う格別の利点がなく、表面の摩擦傾向が増大するので好ましくない。
【0057】
上記オレフィン系樹脂組成物には、必要により、酸化防止剤、熱安定剤、耐光安定剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、中和剤(ハロゲンキャッチャー)、核剤、熱線吸収剤等が配合されるが、本発明の樹脂用配合剤は、中性であると共に、これらの他の樹脂配合剤に対して不活性であり、これらを分解したり或いは着色する傾向がなく、他の樹脂配合剤の性能を阻害したり、樹脂の特性を劣化させることがない。
【0058】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレイト(チバガイギー社製、Irganox3114)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(チバガイギー社製、Irganox1076)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、テトラキス〔メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン(チバガイギー社製、Irganox1010)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナミド)(チバガイギー社製、Irganox1098)、トリエチレングリコール-ビス〔3-(3’-t-ブチル-5’-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウムとPEワックスとの混合物(重量比1:1)等があげられる。
【0059】
フェノール系酸化防止剤の添加量が0.01乃至0.3重量部で用いるのがよく、これ未満であれば酸化防止効果が発現されず、また、0.3重量部を越えると長期保管中の黄変が促進されたりフィルム表面へのブリードにより透明性を損なったり、あるいはブロッキング性が悪化する傾向がある。
【0060】
また、リン系酸化防止剤としては、例えば、トリメチルホスフアイト、トリ-n-ブチルホスフアイト、トリデシルホスフアイト、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフアイト、トリノニルホスフアイト、トリセチルホスフアイト、ジラウリル水素ホスフアイト、トリシクロヘキシルホスフアイト、トリフェニルホスフアイト、トリベンジルホスフアイト、トリクレジルホスフアイト、トリ-p-ノニルフェニルホスフアイト、ジフェニルデシルホスフアイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスフアイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフアイト、トリス(4-α-メチルベンジルフェニル)ホスフアイト、トリス(オクチルチオエチル)ホスフアイト、トリス(オクチルチオプロピル)ホスフアイト、トリス(クレジルチオプロピル)ホスフアイト、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)ホスフアイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスフアイト、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル-ジトリデシル)ホスフアイト、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ジトリデシルホスフアイト-5-t-ブチルフェニル)ブタン、ビス(2-クロロプロピル)ペンタエリスリトールジホスフアイト、ビスフェニルペンタエリストールジホスフアイト、ビスステアリルペンタエリスリトールジホスフアイト、トリラウリルトリチオホスフアイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスフアイト等があげられる。
【0061】
リン系酸化防止剤(c)の添加量が0.01乃至0.2重量部であるのが好ましく、これ未満であれば酸化防止効果や黄変防止効果が発現されず、また0.3重量部を越えると、ブラックスペックや金属に対する腐食の懸念が増大する傾向がある。
【0062】
熱安定剤としては、ホスファイト、ホスホナイトおよびホスホン酸誘導体等が使用される。
ここでホスファイトとしては様々なものが挙げられ、例えばトリフェニルホスファイト;ジフェニルホスファイト;ジデシルフェニルホスファイト;トリデシルホスファイト;トリオクチルホスファイト;トリドデシルホスファイト;トリオクタデシルホスファイト;トリノニルフェニルホスファイト;トリドデシルトリチオホスファイト;ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト;4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト;トリス(2,4ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト;ビス(2,4ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどの他、炭素数12〜15のアルキル基を有する4,4’-イソプロピリデンジフェニルテトラアルキルジホスファイトなどを挙げることができる。
【0063】
また、ホスホナイトとしては例えばテトラキス(2,4-ジアルキルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイトなどを挙げることができる。なおここでアルキル基は炭素数1〜30のものである。これらの中でも特にテトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイトが好ましい。
【0064】
さらに、ホスホン酸誘導体として4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルベンジルホスホン酸;O-エチル-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルベンジル)ホスホン酸;O-(2-エチルヘキシル)-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルベンジル)ホスホン酸;O-エチル-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルベンジル)ホスホン酸;O-エチル-(4-ヒドロキシ-3,5-t-ブチルベンジル)ホスホン酸のカルシウム塩などを挙げることができる。
【0065】
上記熱安定剤は、樹脂100重量部に対して0.01〜1.0重量部の割合で配合するのがよい。
【0066】
耐光安定剤としては、紫外線吸収剤や、紫外線安定剤が使用され、前者の例として、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、例えば、
2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール 既存化学物質No(5)-544、
2-〔2-ヒドロキシ-3,5-ビス(a,a-ジメチルベンジル)フェニル〕-2H-ベンゾトリアゾール 既存化学物質No(5)-5459、
2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール 既存化学物質No(5)-3580、
2-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール 既存化学物質No(5)-545、
2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール 既存化学物質No(5)-3605、
2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール 既存化学物質No(5)-3604;
オキザリックアッシドアニリド系紫外線吸収剤、例えば
2-エトキシ-2’-エチルオキザリックアシッドビスアニリド 既存化学物質No(3)-2830、
2-エトキシ-5-t-ブチル-2’-エチルオキザリックアシッドビスアニリド 既存化学物質No(3)-2800、
等が挙げられる。
【0067】
また、紫外線安定剤としては、ヒンダードアミン系のもの、例えば
コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物 既存化学物質No(7)-2132、ポリ〔〔6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル〕〔(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔〔2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ〕〕 既存化学物質No(7)-2170、
2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル) 既存化学物質No(5)-5413、
等が挙げられる。
【0068】
これらの耐光安定剤は、樹脂100重量部当たり0.01乃至1重量部の量で用いるのがよい。
【0069】
樹脂組成物の加工性を向上させるための滑剤としては、ポリオレフィンフィルムに使用されるもの全てが適用可能である。すなわち、滑剤は(イ)流動、天然または合成パラフィン、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、塩素化ポリエチレンワックス等の炭化水素系のもの、(ロ)ステアリン酸、ラウリン酸等の脂肪酸系のもの、(ハ)パルミチン酸アミド、エシル酸アミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ベヘニン酸アミド、N-ステアリル酪酸アミド、N-ステアリルカプリル酸アミド、N-ステアリルラウリン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-ステアリルベヘニン酸アミド、N-オレイルオレイン酸アミド、N-オレイルベヘニン酸アミド、N-ブチルエルカ酸アミド、N-オクチルエルカ酸アミド、N-ラウリルエルカ酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミドなど、(ニ)ブチルステアレート、硬化ヒマシ油、エチレングリコールモノステアレート等のエステル系のもの、(ホ)セチルアルコール、ステアリルアルコール等のアルコール系のもの、(ヘ)ステアリン酸鉛、ステアリン酸カルシウム等の金属石ケンおよび(ト)それらの混合系が一般に用いられるが、特に脂肪酸モノアミド系またはビスアミド系が好ましい。
【0070】
滑剤、特に脂肪酸アミド系滑剤は、樹脂100重量部当たり0.01乃至0.3重量部の量で用いることが望ましい。上記範囲を下回ると滑り性が付与されず、上記範囲を上回るとフィルム表面へのブリードにより白化し、透明性が失われる傾向がある。
【0071】
樹脂に帯電防止性を付与するために、帯電防止剤を配合することができ、帯電防止剤としては、(イ)第一級アミン塩、第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、ピリジン誘導体等のカチオン系のもの、(ロ)硫酸化油、石ケン、硫酸化エステル油、硫酸化アミド油、オレフィンの硫酸エステル塩類、脂肪アルコール硫酸エステル塩、アルキル硫酸エルテル塩、脂肪酸エチルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、コハク酸エステルスルホン酸塩、リン酸エステル塩等のアニオン系のもの、(ハ)多価アルコールの部分的脂肪酸エステル、脂肪アルコールのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、脂肪アミノまたは脂肪酸アミドのエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、アルキルナフトールのエチレンオキサイド付加物、多価アルコールの部分的脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール等の非イオン系のもの、(ニ)カルボン酸誘導体、イミダゾリン誘導体等の両性系のものが一般に使用可能であるが、特に非イオン系、中でもポリオキシエチレンアルキルアミンやポリオキシエチレンアルキルアミドないしそれらの脂肪酸エステル、グリセリンの脂肪酸エステル等が好ましい。
【0072】
農業用フィルム等の透明性と防曇性とを要求される用途には、防曇剤を配合することができ、このような防曇剤としては、ステアリン酸モノグリセライド、オレイン酸モノグリセライド、ポリグリセリンオレイン酸エステル、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート及びソルビタンモノオレートなどが挙げられる。
【0073】
オレフィン系樹脂中に含まれる触媒残渣中のハロゲン原子を捕捉するための中和剤として、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、脂肪酸カルシウム、脂肪酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、リチウムアルミニウム水酸化物炭酸塩等が挙げられ、中でもリチウムアルミニウム水酸化物炭酸塩は六角板状の微細粒子であることから、樹脂中での分散性に優れ、ハロゲン原子の優れた捕捉剤として使用される。なおこのリチウムアルミニウム水酸化物炭酸塩の例は、特開平7-300313号公報に記載されている。
【0074】
このような中和剤は、樹脂100重量部当たり、0.1乃至10重量部の量で使用するのがよい。
【0075】
樹脂の結晶化を促進するための造核剤としては、アルミニウム-p-第三ブチルベンゾエート、ジベンジリデンソルビトール、ビス(4-第三ブチルフェニル)ホスフェートナトリウム塩、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ第三ブチルフェニル)ホスフェートナトリウム塩、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ第三ブチルフェニル)ホスフェートカルシウム塩、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ第三ブチルフェニル)ホスフェート塩基性アルミニウム塩などがあげられる。
【0076】
本発明の樹脂用配合剤が配合されたオレフィン系樹脂組成物において、シリカアルミナ系樹脂用配合剤は、触媒担体等の形で予め重合系に配合しておくこともできるし、また、オレフィン系樹脂に配合することもできる。配合は、メルトブレンドで行うこともできるし、ドライブレンドで行ってもよい。これら何れの場合にも、本発明の樹脂用配合剤を、所謂マスターバッチの形で配合することができる。樹脂との混練は、ロール、バンバリーミキサー、押出機等を用いて行うことができる。
【0077】
フィルムへの成形は、それ自体公知の手段、例えばT-ダイ法、インフレーション製膜法等により行うことができる。フィルムは、未延伸フィルムでもよく、また、一軸延伸或いは二軸延伸を行って配向フィルムとしてもよい。本発明によれば、用いる樹脂用配合剤が粒径分布がシャープでしかも定形の形状を有するため、フィルムがかなり薄い場合にも、ハンドリング性に優れており、単層フィルム或いは積層フィルムの形で種々の用途、特に包装用フィルムとして使用できる。フィルムの厚みは特に制限を受けないが、20乃至100μmの範囲が適当である。
【0078】
本発明のオレフィン系樹脂組成物は、農業用フィルムとしても使用できる。農業用フィルムのオレフィン系樹脂としては、前述した線状低密度ポリエチレンや、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂が適当である。この用途において、非晶質定形粒子を樹脂100重量部当たり0.01乃至10重量部の量で配合するのがよく、熱線吸収剤(赤外線吸収剤)、即ち保温剤を樹脂100重量部当たり0.01乃至10重量部含有させるのがよい。保温剤としては、レーザー散乱回折法で測定して、0.2乃至10μmの粒径を有するリチウムアルミニウム複合水酸化物炭酸塩が適している。適当なリチウムアルミニウム複合水酸化物炭酸塩の例は、特開平7-300313号公報に記載されている。この農業用フィルムの組成物には、樹脂100重量部当たり、前述した防曇剤を0.01乃至5重量部の量で配合することができる。
【0079】
なお、本発明の樹脂用配合剤が配合された樹脂組成物には、必要に応じてカオリン、タルク、酸白、セリサイト、ゼオライト、Ca,Zn等でイオン変質したゼオライト、セピオライト、ウォラストナイト、ネフェリンシナイト、ハイドロタルサイト、ドーソナイト、ドロマイト、シリカ、炭カル、ケイ酸カルシウム、マイカ、石英、塩基性炭酸マグネシウム(軽質又は重質)等を無機充填剤として樹脂組成物100重量部当たり0.01乃至10重量部配合することもできる。上記無機充填剤の粒径は、0.1乃至10μmであることが好ましい。
【0080】
勿論、本発明の樹脂用配合剤は、アンチブロッキング剤として、それ自体公知の他の樹脂フィルムにも配合することができ、例えばナイロン6、ナイロン6-6、ナイロン6-10、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリスチレン等や、これらのポリマーアロイに配合することもできる。配合量は、オレフィン系樹脂の場合に準じる。他の樹脂用配合剤についても同様である。
【0081】
また、本発明の非晶質定形粒子(樹脂用配合剤)は、充填剤として、上記熱可塑性樹脂や、各種ゴム、或いは熱硬化性樹脂に配合することができる。
【0082】
ゴム用のエラストマー重合体としては、例えばニトリル-ブタジエンゴム(NBR),スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IIB)、ブチルゴム、天然ゴム、エチレン-プロピレンゴム(EPR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、ポリウレタン、シリコーンゴム、アクリルゴム等;熱可塑性エラストマー、例えばスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、水素化スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、水素化スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体等が挙げられる。
【0083】
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、フラン-ホルムアルデヒド樹脂、キシレン-ホルムアルデヒド樹脂、ケトン-ホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、トリアリルシアヌレート樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、シリコーン樹脂、或いはこれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0084】
充填剤としての用途の場合、上記熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂或いはエラストマー100重量部当たり、2乃至130重量部、特に5乃至100重量部の量で配合することができる。
【0085】
更に、本発明の非晶質定形粒子を配合する塗料としては、前記熱硬化性樹脂の少なくとも1種から成る塗料や、熱可塑性樹脂塗料、例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-マレイン酸共重合体、塩化ビニル-マレイン酸-酢酸ビニル共重合体、アクリル重合体、飽和ポリエステル樹脂等を挙げることができる。これらの樹脂塗料は単独でも2種以上の組合せでも使用される。
【0086】
塗料用配合剤としての用途では、塗料中の樹脂固形分100重量部当たり、2乃至130重量部、特に10乃至100重量部の量で配合するのがよく、これにより塗膜に艶消し効果を付与したり、絶縁性を向上させたりすることができる。
【0087】
【実施例】
本発明を次の例で更に詳しく説明する。
【0088】
(実施例1)
ケイ酸ソーダのカレットを溶解したケイ酸ソーダ溶液(SiO2が22wt%、Na2Oが7.2%)とアルミン酸ソーダ(Al2O3が25.3wt%、Na2Oが19.1wt%)及び苛性ソーダを用いて、本発明による低SiO2/Al2O3組成比からなるギザギザ状の表面を有する球状のPc型ゼオライトとその酸処理物による本発明による低吸湿性の非晶質シリカアルミナ球状粒子の製法及びその性状について以下に説明する。
【0089】
上記3種類の原料を用いて、下記モル組成の条件下に10Lステンレス製容器中で反応液の総量が5Lになるようにアルミン酸ソーダ液を90℃に加熱・撹拌し、これに75℃に加熱したケイ酸ソーダ液を12分(80℃以上を保つ)かけて混合し、全体が均一なゲル状の下記のモル組成のアルミノケイ酸ナトリウムを生成させた。
Na2O/SiO2=1.0
SiO2/Al2O3=3.0
H2O/Na2O=70
【0090】
次いでこのゲルを激しく攪拌しながら95℃の加温下に、約12時間かけて本発明によるPc型ゼオライト球状粒子にした後、濾過、洗浄、乾燥させて得たケーキをサンプルミルとジェットミルを用いて粉砕させて試料No.1-1のPc型ゼオライトの球状粒子とした。なお試料No.1-1の収率は99%であった。
【0091】
(非晶質化)
次いで上記乾燥前のPc型ゼオライトケーキの一部を用いて固形分濃度25%の水性スラリー5Lを調製し、攪拌下に濃度14%の硫酸を約1.4Lを徐々に注加し、約1時間攪拌処理をした後、濾過、水洗、110℃で乾燥、サンプルミル粉砕させて酸処理物の試料No.1-2を得た。この試料No.1-2を温度450℃で焼成した後、ジェットミルで粉砕して本発明による非晶質シリカアルミナ球状粒子の試料No.1-3を得た。試料No.1-1、No.1-3の走査型電子顕微鏡写真及びX線回折図をそれぞれ図1、図2、図3に示した。なお図3には試料No.1-2のX線回折図も示した。
【0092】
次いで酸処理条件として14%硫酸量を1.1Lとした以外は上記試料No.1-2と同様にして本発明による非晶質シリカアルミナ球状粒子(430℃焼成品)を調製し、試料No.1-4とした。
【0093】
またPc型ゼオライトの調製モル組成(アルミノケイ酸ナトリウムゲルの組成)を下記条件として同様にして本発明による非晶質シリカアルミナ球状粒子(430℃焼成品)を得、試料No.1-5とした。なお、試料No.1-5の酸処理条件における上記硫酸量は、0.88Lであった。
【0094】
Na2O/SiO2=1.7
SiO2/Al2O3=2.5
H2O/Na2O=43
なお、試料No.1-5の酸処理前のPc型ゼオライトのSiO2/Al2O3のモル比は2.26であった。
【0095】
(比較例1)
実施例1において、ケイ酸ソーダ溶液、アルミン酸ソーダ及び苛性ソーダを用いて、下記モル組成の条件でギザギザ状の表面を有するPc型ゼオライト球状粒子(試料No.H-1)を調製した以外は実施例1と同様にして酸処理(14%硫酸、1.4L)して得られた110℃乾燥物(試料No.H-2)及びその450℃焼成物(試料No.H-3)を得、そのX線回折図を図4に示した。なお試料No.H-1の収率は89%であった。
【0096】
Na2O/SiO2=0.7
SiO2/Al2O3=6.0
H2O/Na2O=60
【0097】
なお本発明に用いた樹脂充填剤粒子に関する物性等の測定は下記の方法により行ない、その結果を表1に示した。
【0098】
1.粒径
走査型電子顕微鏡写真(日立S-570)で得られた写真像から、代表的な粒子を50ヶ選んで、スケールを用いて粒子像の直径を測定し粒子径とした。
2.比表面積
カルロエルバ社製Sorptomatic Series 1800を使用し、BET法により測定した。
3.嵩密度
JIS K-6220.6.8に準拠して測定した。
4.吸湿量
試料約1gを予め重量を測定した40×40mmの秤量ビンに入れ、150℃の電気高温乾燥機で約3時間乾燥後デシケーター中に放冷する。次いで試料の重さを精秤し、予め硫酸で関係湿度90%に調製したデシケーター中に入れ72時間後の重量を測定し求めた。
5.吸油量
JIS K-6220.6.21に準拠して求めた。
6.pH
JIS K-5101.26に準拠して5%水性分散体のpHを求めた。
7.屈折率
予めアッベ屈折計を用いて、屈折率既知の溶媒(α-ブロムナフタレン、ケロシン)を調製する。次いでLarsenの油浸法に従って、試料粉末数mgをスライドガラスの上に採り、屈折率既知の溶媒を1滴加えて、カバーガラスをかけ、溶媒を十分浸漬させた後、光学顕微鏡でベッケ線の移動を観察し求める。
8.X線回折
理学(株)製のガイガーフレックスRAD-1Bシステムを用いて下記の条件で測定した。
【0099】
ターゲット Cu
フィルター Ni
電圧 35kv
電流 15mA
カウントフルスケール 8000c/s
走査速度 2deg/min
タイムコンスタント 1sec
スリット DS1deg RS0.3mm SS1deg
照射 6deg
【0100】
(実施例2)
実施例1で得られた本発明による低吸湿性非晶質シリカアルミナ球状粒子(試料No.1-3)を配合させたポリエチレン、ポリプロピレン、特にハロゲン残留触残渣含有ポリプロピレン、メタロセン触媒を使用して製造した直鎖状低密度ポリエチレン及びエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)等の樹脂フィルムについて、透明性、AB性、スクラッチ性、ピンキング性、耐黄変性及び保温性とを評価した。
【0101】
(試験方法)
9.ブロッキング性
2枚のフィルムを重ね、200g/cm2荷重をかけ40℃で24時間放置後、フィルムのはがれ易さを○印:抵抗無くはがれる、△印:はがれにくい、×印:極めてはがれにくいものとして評価する。
10.ヘーズ
JIS K-6714に基づいて日本電色(株)製オートマチックデジタルヘーズメーターNDH-20Dにより測定する。
11.スクラッチ性
成膜5時間後のフィルム2枚を重ね指でこすった時の傷つきの程度を○印:ほとんど傷がつかない、△印:少し傷がつく、×印:傷がつくものとして評価する。
12.透明性
日本電色工業製、1001DP色差計を用い、試料シートの白色光透過率を測定した。
13.耐黄化性
上記成形シートを85℃、90%RHの恒温糟に入れ24時間放置した。この成形シートの表面色相を日本電色工業製の色差計Model1100Pにより測定し、N値(黄色度)を求めた。N値が小さいほど黄化性に優れている。
14.分散性
上記成形シートにつき、肉眼で分散性を評価した。
15.保温性
得られた試料フィルムで直径20cmの半円筒の長さ1mのトンネル枠を地面上に設置し、トンネル枠内の中央部の夜間(午前3時)における温度を測定し、保温剤未配合のフィルムによる同様のトンネル枠内の温度を基準に、両者の温度差(ΔT)を測定して保温効果を評価した。なお本発明においては、このΔT値が大きい程、保温性が高いものといえる。
【0102】
(2-1:ポリエチレン樹脂による評価)
メタロセン触媒を用いて製造されたメルトフローレートが2.6g/10分、密度が0.911kg/cm3のエチレンヘキセン-1共重合体100重量部に水澤化学工業社製リチウムアルミニウム水酸化物炭酸塩の300℃焼成品(商品名:ミズカラック、平均粒径2.8μm)を20重量部と本発明の試料No.1-3を0.5重量部、イルガノックス1035を0.01重量部とを配合し、210℃の温度で混練造粒させたマスターバッチと前記共重合体とを75:25の割合で混合しこの100重量部にイルガノックスB-225を0.2部を添加し、押出機で180℃の温度でペレット化し、次いでこのペレットを用いてインフレーション成形を行い厚さ40μmのフィルムを得た。
【0103】
フィルム評価の結果、ヘイズが2.8%、AB性が○印で、スクラッチ性が○印で良好であり、耐黄化性試験において黄色度(N値)が12であり、耐黄化性にも優れ、保温性(℃)も1.6の値を示し、保温性にも優れた樹脂組成物であった。尚、試料1-3無添加のフィルムのヘーズ(%)は1.9であった。
【0104】
(2-2:ポリプロピレン樹脂による評価)
ポリプロピレンフィルム樹脂粉末(三井石油化学工業製ハイポールF657P)100重量部に対して2.6ジターシャリーブチルパラグレゾール0.15部、ステアリン酸カルシウム0.1部、本発明の試料No.1-3を0.09部を各々加え、スーパーミキサーで1分間混合後、一軸押し出し機を用いて混練温度230℃で溶融混合してペレタイズした。このペレットをTダイ成形により原反フィルムを作成し、次いで二軸延伸成形機を用いて縦方向に5倍、更に横方向の10倍に延伸し厚さ30μmの二軸延伸フィルムを得た。
【0105】
その結果、ヘーズが2.3(%)、AB性とスクラッチ性ともいずれも良好な○印であり、耐黄化性にも別段異常がなかった。なお試料1-3無添加のフィルムのヘーズ(%)は1.8であった。
【0106】
また特にハロゲン残留触媒残渣を含むポリプロピレン樹脂100重量部に水澤化学工業製ミズカラック0.2部、本発明の試料No.1-3を0.08部、エルカ酸アミド0.1部とを配合させた樹脂組成物を用いて260℃でペレットにし、この試料ペレットを厚さ1mm、縦、横、100mm×100mmのステンレス鋼板製の金枠に入れ、写真用厚手のフェロタイプ板と2mm厚のアルミニウム板の重ね合わせではさみ、230℃で30分間プレスした後、30℃±5℃の冷却プレスに移し、成形投影面当たり約50kg/cm2の圧力下で冷却し、金型が40℃以下になった後、厚さ1mmのポリプロピレンシートを得た。
【0107】
その結果、耐黄化試験において黄色度(N値)が12であり、耐黄化性に優れており、また黙視観察によるシートの分散性も極めて良好であった。
【0108】
(2-3:エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)による評価)
酢酸ビニル含有量15%、MI=1.5のEVA樹脂100重量部にベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤0.1重量部、ヒンダードアミン系の抗酸化剤0.1重量部、保温剤のミズカラック4重量部、本発明の試料1-3の0.5重量部からなる樹脂組成物をヘンシェルミキサーで攪拌混練し、得られた混練物を2軸押出機を用いて温度150℃でペレットにし、次いでインフレーション成型を行ない、幅30cm、厚さ100μmのフィルムを得、このフィルムを用いて保温性、AB性、透明性を評価した。
【0109】
その結果、保温性(℃)も1.7の値で優れており、AB性も良好であり、また黙視観察による透明性も良好であった。
【0110】
(比較例2)
比較例1で得られたPHが9.6で、吸湿量(%)が13.7である試料H-3なる非晶質シリカアルミナ球状粒子をAB剤として用いたオレフィン樹脂組成物のフィルム評価について説明する。
【0111】
(2H-1:ポリエチレン樹脂による比較評価)
実施例2のメタロセン触媒によるポリエチレン樹脂のフィルム評価(2-1)において、AB剤である本発明による試料1-3の代りに試料H-3とした以外は、実施例2のフィルム評価(2-1)と同様にして評価した。
【0112】
その結果、フィルムに極薄いピンク着色(ピンキング)が生じており、耐黄化性試験の黄色度(N値)も13.9であった。またフィルムには発砲フクレや微細な気泡があり、評価(2-1)のフィルムに比較して黙視による透明性も低いものであった。
【0113】
(比較例3)
比較例2のフィルム比較評価(2H-1)の試料H-3の代りに特公平06-17217号公報に記載するCaイオン交換-Pc型ゼオライト(Ig-loss(%):4.9、吸湿量(%):5.2、PH:10.5)の非晶質球状粒子をAB剤として用いた以外は、比較例2と同様にして行なったポリエチレン樹脂組成物のフィルム評価について説明する。
【0114】
その結果、発泡フクレや微細な気泡も無く、且つAB性、透明性、耐黄化性、スクラッチ性等も極めて良好であったが、得られたフィルムはかなりのピンク着色(ピンキング)を呈していた。
【0115】
【表1】

【0116】
(実施例3)
実施例1と同様の原料を用いて、2Lステンレス製容器中で反応液の総量が1.75kgになるように、アルミン酸ソーダ液を90℃に加熱・攪拌し、これに80℃に加熱したケイ酸ソーダ液を約4分かけて混合し、全体が均一なゲル状の下記のモル組成のアルミノケイ酸ナトリウムを生成させた。
Na2O/SiO2=1.71
SiO2/Al2O3=2.52
H2O/Na2O=44
次いでこのゲルを激しく攪拌しながら90℃の加熱下に、約6時間反応させた後、ろ過、水洗、乾燥させて本発明によるPc型ゼオライト球状粒子(試料No.1-7)を得た。尚、このSiO2/Al2O3モル比は2.25であった。
【0117】
(非晶質化)
次いで上記乾燥前のPc型ゼオライトケーキの一部を用いて固形分濃度15%の水性スラリー154gを調整した。このスラリーに濃度6.2%の硫酸約70mlを約3時間かけて注加し、1時間攪拌処理した。その後ろ過、水洗、110℃で乾燥、乳鉢粉砕して酸処理物試料No.1-8を得た。この試料を550℃で1時間焼成し本発明の非晶質シリカアルミナ球状粒子試料No.1-9を得た。試料No.1-7、試料No.1-9の走査型電子顕微鏡写真をそれぞれ図5,図6に示した。また図7に試料No.1-7、試料No.1-8、試料No.1-9のX線回折図も示した。また、試料No.1-7、試料No.1-9の物性値、組成を表2に示す。
【表2】

【0118】
(実施例4)
実施例1と同様の原料を用いて、下記モル組成の条件下に10Lステンレス製容器中で反応液の総量が5kgになるようにアルミン酸ソーダ液を90℃に加熱・撹拌し、これに75℃に加熱したケイ酸ソーダ液を12分(80℃以上を保つ)かけて混合し、全体が均一なゲル状の下記のモル組成のアルミノケイ酸ナトリウムを生成させた。
Na2O/SiO2=0.85
SiO2/Al2O3=4.00
H2O/Na2O=70
次いでこのゲルを激しく攪拌しながら95℃の加熱下に、約20時間かけて反応した後、ろ過、水洗、乾燥させて得たケーキをサンプルミルを用いて粉砕させて試料No.1-10のPc型ゼオライト球状粒子とした。尚、この試料のSiO2/Al2O3モル比は3.19であった。
【0119】
(非晶質化)
次いで上記乾燥前のPc型ゼオライトケーキの一部を用いて固形分濃度25%の水性スラリーに濃度14%の硫酸約1.4Lを約3時間かけて注加し、1時間攪拌処理した。その後ろ過、水洗、110℃で乾燥、サンプルミル粉砕し、酸処理物の試料No.1-11を得た。この試料を550℃で1時間焼成し本発明の非晶質シリカアルミナ球状粒子試料No.1-12を得た。試料No.1-10、試料No.1-11、試料No.1-12の物性値、組成を表3に示す。
【表3】

【0120】
(比較例4)
実施例1と同様の原料を用いて、2Lステンレス製容器中で反応液の総量が1.75kgになるように、アルミン酸ソーダ液を70℃に加熱・攪拌し、これに68℃に加熱したケイ酸ソーダ液を約4分かけて混合し、全体が均一なゲル状の下記のモル組成のアルミノケイ酸ナトリウムを生成させた。
Na2O/SiO2=1.71
SiO2/Al2O3=2.52
H2O/Na2O=44
次いでこのゲルを激しく攪拌しながら70℃の加熱下に、1時間熟成し、その後90℃まで昇温し、約6時間反応させた後、ろ過、水洗、乾燥して得られた試料はPc型のゼオライトではなく、Pc型のゼオライトとX型ゼオライトの混合物が得られた。
【0121】
(比較例5)
実施例1と同様の原料を用いて、2Lステンレス製容器中で反応液の総量が1.75kgになるように、アルミン酸ソーダ液を47℃に加熱・攪拌し、これに50℃に加熱したケイ酸ソーダ液を約4分かけて混合し、全体が均一なゲル状の下記のモル組成のアルミノケイ酸ナトリウムを生成させた。
Na2O/SiO2=1.71
SiO2/Al2O3=2.52
H2O/Na2O=44
次いでこのゲルを激しく攪拌しながら50℃の加熱下に、1時間熟成し、その後90℃まで昇温し、約4時間反応させた後、ろ過、水洗、乾燥して得られた試料はPc型のゼオライトではなく、Pc型のゼオライト、X型ゼオライト及びA型ゼオライトの混合物が得られた。この混合物のX線回折図を図8に示す。
【0122】
【発明の効果】
本発明の製造法によれば、水性分散体のPHが6乃至10、特に6乃至9の範囲にあり、平衡水分吸湿量(RH90%)が10%以下という低吸湿性であって且つ粒子表面の形状がギザギザ状である非晶質シリカアルミナ球状粒子から成る樹脂用配合剤を得ることができ、この樹脂用配合剤をポリオレフィン系樹脂フィルムに使用することにより、発泡フクレも無く、透明性、AB性に優れたフィルムが得られる。
【0123】
またハロゲン残留触媒残渣を含むポリエチ、ポリプロ等のオレフィン樹脂フィルムに中和剤及び保温剤機能を有するリチウムアルミニウム複合水酸化物粒子を上記の樹脂用配合剤と併用することにより、耐黄化性等の熱安定性を向上させ、且つ透明性、保温性、AB性に優れた樹脂フィルムが得られる。
【0124】
更にまた本発明の製造法によって得られる樹脂用配合剤は、水性分散体のPHが6乃至9の範囲にあることに関連して、特にメタロセン触媒を用いて製造されたオレフィン系樹脂フィルムに適用した場合においても、発泡フクレや微細な気泡も無く、AB性、透明性、スクラッチ性等も極めて良好で、且つピンク着色(ピンキング)等の着色障害も起こさない良好な樹脂フィルムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明によるPc型ゼオライト球状粒子(試料No.1-1)の粒子構造を表す走査型電子顕微鏡写真図である。
【図2】
本発明による低吸湿性の非晶質シリカアルミナ球状粒子(試料No.1-3)の粒子構造を表す走査型電子顕微鏡写真図である。
【図3】
実施例1で得られた本発明によるPc型ゼオライト及びその酸処理物に関する試料No.1-1、No.1-2、No.1-3のX線回折図である。
【図4】
比較例1で得られたPc型ゼオライト及びその酸処理物に関する試料No.H01、No.H-2、No.H-3のX線回折図である。
【図5】
本発明によるPc型ゼオライト球状粒子(試料No.1-7)の粒子構造を表す走査型電子顕微鏡写真図である。
【図6】
本発明による非晶質シリカアルミナ球状粒子(試料No.1-9)の粒子構造を表す走査型電子顕微鏡写真図である。
【図7】
実施例3で得られた本発明によるPc型ゼオライト及びその酸処理物に関する試料No.1-7、No.1-8、No.1-9のX線回折図である。
【図8】
比較例5で得られたPc型ゼオライト、X型ゼオライト及びA型ゼオライトの混合物のX線回折図である。
【図9】
本発明の非晶質定形粒子の体積基準粒度分布曲線を示す図である。
【図10】
本発明の他の非晶質定形粒子の体積基準粒度分布曲線を示す図である。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-06-30 
出願番号 特願平9-146039
審決分類 P 1 651・ 121- YA (C08K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 森川 聡  
特許庁審判長 一色 由美子
特許庁審判官 船岡 嘉彦
藤原 浩子
登録日 2003-06-27 
登録番号 特許第3444752号(P3444752)
権利者 水澤化学工業株式会社
発明の名称 樹脂用配合剤の製造法  
代理人 奥貫 佐知子  
代理人 奥貫 佐知子  
代理人 小野 尚純  
代理人 小野 尚純  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ