ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C08L |
---|---|
管理番号 | 1124301 |
異議申立番号 | 異議2003-72896 |
総通号数 | 71 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1999-07-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-12-01 |
確定日 | 2005-07-20 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3412534号「ゴム組成物」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3412534号の請求項1、3、4に係る特許を取り消す。 同請求項2に係る特許を維持する。 |
理由 |
(1)手続の経緯 本件特許3412534号の発明は、平成10年10月28日(特許法第41条に基づく優先権主張平成9年11月11日)に出願され、平成15年3月28日にその特許権の設定登録がなされ、その後、旭化成ケミカルズ株式会社及び日本ゼオン株式会社より特許異議の申立てがなされ、それに基づく取消理由通知がなされ、それに対して、その指定期間内である平成17年1月25日に特許異議意見書及び訂正請求書が提出され、さらに、特許権者及び上記特許異議申立人2名に審尋がなされ、それに対して、特許権者及び上記特許異議申立人2名から、それぞれ回答書が提出されたものである。 (2)訂正の適否についての判断 ア、訂正の内容 訂正事項a:特許請求の範囲の訂正 a-1、請求項1の 「【請求項1】ジエン系ゴムをゴム成分の主成分として含有するゴム組成物において、 (1)ジエン系ゴムの1成分として、下記(a)〜(d)に示す特性を有するスチレン-ブタジエン共重合体をあらかじめ伸展油を用いて油展したものを、ゴム成分中に30〜100重量%含有し、 (a)スチレン含量が5〜45重量%であること、 (b)ブタジエン部分のミクロ構造の1,2-結合含量が20〜80%であること、 (c)ガラス転移温度が-55℃〜-20℃であること、 (d)スチレン単位中の、1個の単連鎖が全結合スチレンの40重量%以上で、かつ8個以上連なったスチレン長連鎖が全結合スチレンの10重量%以下であること、また、 (2)前記スチレン-ブタジエン共重合体をあらかじめ油展するために用いる伸展油の含量(油展量)が、スチレン-ブタジエン共重合体100重量部に対し20〜50重量部であり、さらに、 (3)全ゴム成分中の全伸展油の含量が、全ゴム成分100重量部に対し10〜50重量部であることを特徴とするゴム組成物。」を、 「【請求項1】ジエン系ゴムをゴム成分の主成分として含有するゴム組成物において、 (1)ジエン系ゴムの1成分として、下記(a)〜(d)に示す特性を有するスチレン-ブタジエン共重合体をあらかじめ伸展油を用いて油展したものを、ゴム成分中に30〜100重量%含有し、 (a)スチレン含量が5〜45重量%であること、 (b)ブタジエン部分のミクロ構造の1,2-結合含量が20〜80%であること、 (c)ガラス転移温度が-55℃〜-20℃であること、 (d)スチレン単位中の、1個の単連鎖が全結合スチレンの40重量%以上で、かつ8個以上連なったスチレン長連鎖が全結合スチレンの10重量%以下であること、また、 (2)前記スチレン-ブタジエン共重合体をあらかじめ油展するために用いる伸展油の含量(油展量)が、スチレン-ブタジエン共重合体100重量部に対し20〜50重量部であり、 (3)全ゴム成分中の全伸展油の含量が、全ゴム成分100重量部に対し10〜50重量部であること、さらに、 (4)充填剤として、全ゴム成分100重量部に対し30〜100重量部のシリカを含有するとともに、シリカ100重量部に対し5〜20重量部のシランカップリング剤を含有することを特徴とするゴム組成物。」と訂正する。(なお、()に数字は、明細書では○に数字である。) a-2、請求項2の 「【請求項2】前記スチレン-ブタジエン共重合体が、さらに下記特性(e)を有するものであることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。 (e)その重合体末端が、ハロゲン含有ケイ素化合物、アルコキシシラン化合物及びアルコキシサルファイド化合物からなる群から選ばれる1以上の多官能性カップリング剤で変性されていること。」を、 「【請求項2】前記スチレン-ブタジエン共重合体が、さらに下記特性(e)を有するものであることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。 (e)その重合体末端が、メチルトリフェノキシシラン及びアルコキシシランサルファイド化合物からなる群から選ばれる1以上の多官能性カップリング剤で変性されていること。」と訂正する。 a-3、請求項4を削除する。、 a-4、請求項5の 「【請求項5】前記ゴム組成物が、タイヤトレッド用の加硫ゴムに用いられるものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物。」を、 「【請求項4】前記ゴム組成物が、タイヤトレッド用の加硫ゴムに用いられるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。」と訂正する。 訂正事項b:発明の詳細な説明の訂正 b-1、特許明細書の段落【0008】中の 「(2)前記スチレン-ブタジエン共重合体をあらかじめ油展するために用いる伸展油の含量(油展量)が、スチレン-ブタジエン共重合体100重量部に対し20〜50重量部であり、さらに、 (3)全ゴム成分中の全伸展油の含量が、全ゴム成分100重量部に対し10〜50重量部であることを特徴とするゴム組成物。」を、 「(2)前記スチレン-ブタジエン共重合体をあらかじめ油展するために用いる伸展油の含量(油展量)が、スチレン-ブタジエン共重合体100重量部に対し20〜50重量部であり、 (3)全ゴム成分中の全伸展油の含量が、全ゴム成分100重量部に対し10〜50重量部であること、さらに、 (4)充填剤として、全ゴム成分100重量部に対し30〜100重量部のシリカを含有するとともに、シリカ100重量部に対し5〜20重量部のシランカップリング剤を含有することを特徴とするゴム組成物。」と訂正する。(ただし、()の数字は、明細書では○の中に数字である。) b-2、特許明細書の段落【0009】の 「[2]前記スチレン-ブタジエン共重合体が、さらに下記特性(e)を有するものであることを特徴とする[1]に記載のゴム組成物。 (e)その重合体末端が、ハロゲン含有ケイ素化合物、アルコキシシラン化合物及びアルコキシサルファイド化合物からなる群から選ばれる1以上の多官能性カップリング剤で変性されていること。」を、 「[2]前記スチレン-ブタジエン共重合体が、さらに下記特性(e)を有するものであることを特徴とする[1]に記載のゴム組成物。 (e)その重合体末端が、メチルトリフェノキシシラン及びアルコキシシランサルファイド化合物からなる群から選ばれる1以上の多官能性カップリング剤で変性されていること。」と訂正する。 b-3、特許明細書の段落【0011】の 「[4] 前記ゴム組成物が、充填剤として、全ゴム成分100重量部に対し2〜100重量部のカーボンブラック及び/又は全ゴム成分100重量部に対し30〜100重量部のシリカを含有するとともに、シリカを含有する場合、シリカ100重量部に対し5〜20重量部のシランカップリング剤を含有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のゴム組成物。」を削除する。 b-4、特許明細書の段落【0012】の 「[5] 前記ゴム組成物が、タイヤトレッド用の加硫ゴムに用いられるものであることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載のゴム組成物。」を、 「[4] 前記ゴム組成物が、タイヤトレッド用の加硫ゴムに用いられるものであることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のゴム組成物。」と訂正する。 b-5、特許明細書の段落【0019】中の 「このような分岐構造を導入する具体的な方法としては、1)の多官能性カップリング剤によって変性する場合、回分重合法や連続重合法によって得られるリチウム活性末端を有する活性重合体を、四塩化ケイ素等のハロゲン含有ケイ素化合物、アルコキシシラン化合物、アルコキシシランサルファイド化合物、ポリエポキシ化合物、尿素化合物、アミド化合物、イミド化合物、チオカルボニル化合物、ラクタム化合物、エステル化合物及びケトン化合物からなる群から選ばれる1以上の多官能性カップリング剤と反応させる方法を挙げる事ができる。」を、 「このような分岐構造を導入する具体的な方法としては、1)の多官能性カップリング剤によって変性する場合、回分重合法や連続重合法によって得られるリチウム活性末端を有する活性重合体を、メチルトリフェノキシシラン、アルコキシシランサルファイド化合物、尿素化合物、アミド化合物、イミド化合物、チオカルボニル化合物、ラクタム化合物及びケトン化合物からなる群から選ばれる1以上の多官能性カップリング剤と反応させる方法を挙げる事ができる。」に、 「このような多官能性カップリング剤の中でも、低コスト及び反応の安定性の理由から四塩化ケイ素等のハロゲン含有ケイ素化合物、アルコキシシラン化合物、アルコキシシランサルファイド化合物が好ましい。」を、 「このような多官能性カップリング剤の中でも、低コスト及び反応の安定性の理由からメチルトリフェノキシシラン、アルコキシシランサルファイド化合物が好ましい。」に、それぞれ訂正する。 b-6、特許明細書の段落【0038】中の 「[実施例1〜9、比較例1〜10]」を、 「[実施例1〜8、比較例1〜10]」と訂正する。 b-7、特許明細書の段落【0042】中の、 「表3中、配合No.Yにおけるアロマチックオイルは、全ゴム成分100に対して37.5配合されることが示されているが、後述する表5中の実施例9の配合(配合No.Y)の場合、アロマチックオイルは全ゴム成分100に対して37.5ではなく、11.25だけ配合される。実施例9の場合、伸展油の合計は全ゴム成分100に対して37.5配合されるのではあるが、実施例9に用いられる共重合体Fはスチレン-ブタジエン共重合体100に対してあらかじめナフテン系伸展油37.5を用いて油展していたので(実施例9の場合全ゴム成分100のうちスチレン-ブタジエン共重合体は70配合されるのでナフテン系伸展油は全ゴム成分100に対して26.25配合されることになる)、結局、実施例9においては、アロマチックオイル(11.25)とナフテン系伸展油(26.25)との合計としての伸展油が、全ゴム成分100に対して37.5配合されることになる。」を、 「表3中、配合No.Yにおけるアロマチックオイルは、全ゴム成分100に対して37.5配合されることが示されているが、後述する表5中の実施例8の配合(配合No.Y)の場合、アロマチックオイルは全ゴム成分100に対して37.5ではなく、11.25だけ配合される。実施例8の場合、伸展油の合計は全ゴム成分100に対して37.5配合されるのではあるが、実施例8に用いられる共重合体Fはスチレン-ブタジエン共重合体100に対してあらかじめナフテン系伸展油37.5を用いて油展していたので(実施例8の場合全ゴム成分100のうちスチレン-ブタジエン共重合体は70配合されるのでナフテン系伸展油は全ゴム成分100に対して26.25配合されることになる)、結局、実施例8においては、アロマチックオイル(11.25)とナフテン系伸展油(26.25)との合計としての伸展油が、全ゴム成分100に対して37.5配合されることになる。」と訂正する。 b-8、特許明細書の段落【0043】の【表4】中の実施例No.1の項を削除し、実施例No.2〜5を、それぞれ実施例No.1〜4と訂正する。 b-9、特許明細書の段落【0044】の【表6】中の実施例No.6〜9を、それぞれ実施例No.5〜8と訂正する。 b-10、特許明細書の段落【0047】中の 「それぞれ本発明のゴム組成物におけるスチレン-ブタジエン共重合体の特性(a)〜(d)を満たしていない。」を、 「それぞれ本発明のゴム組成物におけるスチレン-ブタジエン共重合体の特性(a)〜(d)を満たしていない。なお、比較例1においては充填剤としてシラン及びシランカップリング剤を配合していない点においても本発明のゴム組成物が満たすべき要件を満たしていない。」と訂正する。 b-11、特許明細書の段落【0049】の 「その結果、表6〜7に示す比較例1〜10の加硫ゴムは、加硫ゴムの各物性において、低転がり抵抗性、高耐ウエットスキッド性及び耐摩耗性のバランスから分かるように、表4〜5に示す実施例1〜9の加硫ゴムと比較して劣っている事は明らかである。」を、 「その結果、表6〜7に示す比較例1〜10の加硫ゴムは、加硫ゴムの各物性において、低転がり抵抗性、高耐ウエットスキッド性及び耐摩耗性のバランスから分かるように、表4〜5に示す実施例1〜8の加硫ゴムと比較して劣っている事は明らかである。」と訂正する。 イ、訂正の適否 訂正事項aは、特許請求の範囲に関する訂正であり、訂正事項a-1は、請求項1において、訂正前の請求項4に記載のシリカ充填剤に関する事項を限定したものであるから、特許請求の範囲を減縮するものであり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正と認められる。 訂正事項a-2は、請求項2において、多官能カップリング剤を、段落【0019】及び実施例の記載に基づいて、メチルトリフェノキシシラン及びアルコキシシランサルファイド化合物に限定するものあるから、特許請求の範囲を減縮するものであり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。 訂正事項a-3及びa-4は、請求項4を削除し、それに基づいて、請求項5が請求項4となり、引用項を1〜3とするものであるから、特許請求の範囲を減縮するとともに、明りょうでない記載の釈明をするものであり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。 上記訂正事項bは、発明の詳細な説明における訂正であり、その訂正事項b-1〜b-11は、特許請求の範囲の訂正である訂正事項aに伴い、特許請求の範囲との整合性をはかるための、明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認められ、上記訂正事項aと同様に、願書に添付した明細書の範囲内の訂正と認められる。 また、上記訂正事項a及びbは、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び第3項で準用する特許法第126条第2項〜第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 (3)特許異議の申立てについての判断 ア、特許異議申立て理由の概要 特許異議申立人旭化成ケミカルズ株式会社は、甲第1号証(特開平7-292161号公報)及び甲第2号証(特開昭61-255908号公報)を提出し、訂正前の請求項1〜5に係る発明は、甲第1及び2号証に記載された発明であるか、あるいは、甲第1及び2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第1項第3号、あるいは、同条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、本件特許は取り消されるべき旨主張している。 特許異議申立人日本ゼオン株式会社は、甲第1号証(特開昭61-255908号公報)、甲第2号証(特開昭60-212413号公報)、甲第3号証(特開昭61-268710号公報)、甲第4号証(特開平7-188468号公報)及び甲第5号証(「内燃機関」第33巻第7号、1994年7月、第26〜32頁)を提出し、訂正前の請求項1〜5に係る発明は、甲第1及び2号証に記載された発明であるか、あるいは、甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は特許法第29条第1項第3号、あるいは、同条第2項の規定に違反してされたものであって、本件特許は取り消されるべき旨主張している。 イ、訂正明細書の請求項1〜4に係る発明 訂正明細書の請求項1〜4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」〜「本件発明4」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。 「【請求項1】ジエン系ゴムをゴム成分の主成分として含有するゴム組成物において、 (1)ジエン系ゴムの1成分として、下記(a)〜(d)に示す特性を有するスチレン-ブタジエン共重合体をあらかじめ伸展油を用いて油展したものを、ゴム成分中に30〜100重量%含有し、 (a)スチレン含量が5〜45重量%であること、 (b)ブタジエン部分のミクロ構造の1,2-結合含量が20〜80%であること、 (c)ガラス転移温度が-55℃〜-20℃であること、 (d)スチレン単位中の、1個の単連鎖が全結合スチレンの40重量%以上で、かつ8個以上連なったスチレン長連鎖が全結合スチレンの10重量%以下であること、また、 (2)前記スチレン-ブタジエン共重合体をあらかじめ油展するために用いる伸展油の含量(油展量)が、スチレン-ブタジエン共重合体100重量部に対し20〜50重量部であり、 (3)全ゴム成分中の全伸展油の含量が、全ゴム成分100重量部に対し10〜50重量部であること、さらに、 (4)充填剤として、全ゴム成分100重量部に対し30〜100重量部のシリカを含有するとともに、シリカ100重量部に対し5〜20重量部のシランカップリング剤を含有することを特徴とするゴム組成物。 【請求項2】前記スチレン-ブタジエン共重合体が、さらに下記特性(e)を有するものであることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。 (e)その重合体末端が、メチルフェノキシシラン及びアルコキシシランサルファイド化合物からなる群から選ばれる1以上の多官能性カップリング剤で変性されていること。 【請求項3】前記スチレン-ブタジエン共重合体が、さらに下記特性(f)を有するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のゴム組成物。 (f)分子量分布が、1.5〜3.0であること。 【請求項4】前記ゴム組成物が、タイヤトレッド用の加硫ゴムに用いられるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。」(なお、()に数字は、明細書では○に数字である。) ウ、引用した刊行物等に記載された事項 当審における取消理由通知に引用した刊行物等は次のとおりである。 刊行物1:特開平7-292161号公報 (特許異議申立人旭化成ケミカルズ株式会社提出甲第1号証) 刊行物2:特開昭61-255908号公報 (同甲第2号証、特許異議申立人日本ゼオン株式会社提出甲第1号証) 刊行物3:特開昭60-212413号公報 (特許異議申立人日本ゼオン株式会社提出甲第2号証) 刊行物4:特開昭61-268710号公報 (同甲第3号証) 刊行物5:特開平7-188468号公報 (同甲第4号証) 刊行物6:「内燃機関」第33巻、第7号、1994年7月発行、第26〜32頁 (同甲第5号証) 上記の刊行物1〜6には次のとおりの記載が認められる。 a、刊行物1について 「【請求項1】 (A)下記(a)〜(d)の条件を満たす有機リチウム系化合物を開始剤とする溶液重合法によって得られたスチレンーブタジエン共重合体ゴムを原料ゴムとして100重量部、 (a)結合スチレン/結合ブタジエンの重量比率が23/77〜50/50 (b)ブタジエン部分のミクロ構造の1,2結合量/1,4結合量のモル比率が25/75〜57/43 (c)ガラス転移温度が-50〜-10℃ (d)ムーニー粘度(ML1+4,100℃)が80〜200である、 (B)補強性シリカ充填材を10〜100重量部 (C)補強性カーボンブラックを10〜100重量部 (D)補強性シリカ充填材と補強性カーボンブラックの合計量が60〜150重量部 (E)有機シランカップリング剤を0.1〜20重量部 (F)ゴム用伸展油を20〜100重量部 (G)加硫剤を1〜10重量部 を含有するタイヤトレッド用ゴム組成物。」(特許請求の範囲請求項1) 「【請求項3】 (A-1)下記(a)〜(d)の条件を満たす有機リチウム系化合物を開始剤とする溶液重合法によって得られたスチレンーブタジエン共重合体ゴムが原料ゴムの30〜95重量%であり (a)結合スチレン/結合ブタジエンの重量比率が23/77〜50/50 (b)ブタジエン部分のミクロ構造の1,2結合量/1,4結合量のモル比率が25/75〜57/43 (c)ガラス転移温度が-50〜-10℃ (d)ムーニー粘度(ML1+4,100℃)が80〜200である、 (A-2)ポリブタジエンゴムまたは結合スチレン/結合ブタジエンの重量比率が2/98〜10/90であるスチレン-ブタジエン共重合体ゴムであってガラス転移温度が-110〜-80℃であるジエン系重合体ゴムが原料ゴムの5〜70重量%であり(A-1)と(A-2)を合わせた原料ゴム全体の結合スチレン/結合ブタジエンの重量比率が20/80〜45/55である原料ゴム100重量部 (B)補強性シリカ充填材を10〜100重量部 (C)補強性カーボンブラックを10〜100重量部 (D)補強性シリカ充填材と補強性カーボンブラックの合計量が60〜150重量部 (E)有機シランカップリング剤を0.1〜20重量部 (F)ゴム用伸展油を20〜100重量部 (G)加硫剤を1〜10重量部 を含有するタイヤトレッド用ゴム組成物。」(同請求項3) 「【発明が解決しようとする課題】本発明は、シリカ充填剤を使用するタイヤトレッド用ゴム組成物において、良好な転がり抵抗性能、良好な耐摩耗性、良好なウェットスキッド抵抗性能、良好な加工性をもたらす原料ゴムおよびゴム組成物を提供することを課題とするものである。」(段落【0010】) 「上記の結合スチレン/結合ブタジエンの重量比率の範囲であればスチレンは共重合体の分子鎖中に、ランダム、ブロックあるいは一部ブロックなどいずれの連鎖形態で結合しているものでも用いることが可能であるが、スチレンが連なったブロックスチレンを多く含まないものが、組成物の転がり抵抗性の点で好ましく、オスミウム酸による分解法またはオゾン分解法で測定されたスチレンのブロック率が結合スチレン量の10重量%以下であることが好ましい。さらにオゾン分解法で測定された単離スチレンの量が結合スチレン量の50重量%以上であることが、組成物のウェットスキッド抵抗性能の点で好ましく、オゾン分解法で測定された単離スチレンの量が結合スチレン量の40重量%以下ではウェットスキッド抵抗性能が劣る。」(段落【0016】) 「本発明のスチレンーブタジエン共重合体ゴムの分子量分布(重量平均分子量(Mw)と、数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn))は1.05〜4.0の範囲が好ましい。」(段落【0027】) 「本発明のスチレンーブタジエン共重合体ゴムは、一般のゴムにおいて行われているようにスチレンーブタジエン共重合体ゴム100重量部に対しゴム用伸展油を5〜100重量部添加し油展ゴムとして実用に供することが可能であり、加工性を向上するために油展ゴムとするのが好ましい。」(段落【0028】) 「この重合体溶液に連続的に酸化防止剤を添加後、溶媒を除去し目的とする分岐成分を有するスチレンーブタジエン共重合体ゴムを得た。さらにこの重合体溶液にアロマチック油(ジャパンエナジ-(株)製X-140)を、重合体100重量部当たり37.5重量部添加し油展ゴム(試料1)を得た。」(段落【0045】) 「試料1を、分析した結果、結合スチレン量が35%、結合ブタジエン量が65%、赤外分光光度計を用いた測定結果よりハンプトン法に準じて計算して求めたブタジエン部分のミクロ構造は、1,2結合量が33%、シス-1,4結合量が28%、トランス-1,4結合量が39%、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)は145、ガラス転移温度が-33℃、THFを溶媒としたGPC測定(ポンプ:島津製作所LC-5A、カラム:HSG-40、50、60各1本、検出器:RI)による分子量分布は、重量平均分子量(Mw)が49.7万、数平均分子量(Mn)が18.7万、分子量分布(Mw/Mn)は2.66であり、GPC曲線の形状はモノモーダルであった。」(段落【0046】) b、刊行物2について 「2)スチレンとブタジエンを有機リチウム触媒を用いて炭化水素溶媒中で共重合させ、ムーニー粘度(ML1+4-I)が20〜60のランダムスチレン-ブタジエン共重合体とし、これを3官能以上のケイ素カップリング剤によってカップリングした、 (i)結合スチレン量が15〜35重量% (ii)ブタジエン部分のビニル結合が20〜40% (iii)カップリング後のムーニー粘度(ML1+4-C)が80〜140で、カップリング前のムーニー粘度(ML1+4-I)とカップリング後のムーニー粘度(ML1+4-C)との比(ML1+4-C/ML1+4-I)が2〜4 (iv)GPCによる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比であらわされる分子量分布(Mw/Mn)が2.2〜4であり、分子量分布がモノモーダルであり、 (v)オゾン分解物のGPCによって分析される単離スチレンが全結合スチレンの40重量%以上、長鎖ブロックスチレンが全結合スチレンの5重量%以下 であるスチレン-ブタジエン共重合ゴムを30〜100重量部、他の合成ゴム又は天然ゴムのうち1種又は2種以上のゴムを70〜0重量部、ゴム成分100重量部当たり、カーボンブラック20〜120重量部、プロセス油5〜100重量部および加硫剤を含むことを特徴とするゴム組成物。」(特許請求の範囲請求項2) 「本発明の共重合ゴムはこの方法によって分析された単離スチレン、すなわちスチレン単位の連鎖が1のスチレンが全結合スチレンの40重量%以上、好ましくは50重量%以上であり、長鎖ブロックスチレン、すなわちスチレン単位の連鎖が8以上のスチレンが全結合スチレンの5重量%以下、好ましくは2.5重量%以下である。」(第4頁左上欄15行〜同右上欄2行) 「また、アロマチック又はナフテニック伸展油でで油展され、ムーニー粘度が30〜60の油展ポリマーとすることもできる。」(第5頁右上欄18〜20行) 「得られた重合体溶液は、酸化防止剤として2,6-ジターシャリーブチル-p-クレゾールを添加後、アロマチックオイルを、37.5phr添加し、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い110℃熱ロールで乾燥することにより油展重合体を得た。」(第6頁右下欄19行〜第7頁左上欄3行) c、刊行物3について 「少なくとも一種のルイス塩基を含有した炭化水素溶媒中で有機リチウム化合物を重合開始剤として、スチレンとブタジエンとを共重合し、次いで少なくとも3個の反応性部位を有する多官能性カップリング剤を添加してなるムーニー粘度(ML1+4,100℃)が40ないし150、結合スチレンが28ないし55重量%、ブタジエン部分のビニル結合含有量が16%以上でかつ40%未満、分子量分布がbi-modalであるスチレン-ブタジエン共重合体ゴムであって、分子量分布がbi-modalである共重合体ゴムの重量平均分子量(Mw-bi)が、有機リチウム化合物を用いて前記共重合体ゴムと同様の条件下で共重合し、実質的に同一の構造因子を有し、かつ同一ムーニー粘度の分子量分布がmono-modalである共重合体ゴムの重量平均分子量(Mw-mono)との間にMw-bi/Mw-mono≧1.3の関係を有し、かつスチレンモノマーが1個のスチレン単連鎖が全結合スチレンの50重量%以上であり、スチレンモノマーが8個以上連なったスチレン長連鎖が全結合スチレンの5.0重量%以下であることを特徴とする高スチレン含量のランダムスチレン-ブタジエン共重合体ゴム。」(特許請求の範囲) 「本発明の目的は耐摩耗性を損うことなく、優れたウエットスキッド抵抗性、剛性と硬度の温度依存性、反発弾性、耐発熱性を有し、かつ優れた加工性を有する高スチレン含量のランダムスチレン-ブタジエン共重合体ゴムを提供することにある。」(第2頁左下欄10〜15行) 「本発明の共重合体ゴムは、溶液状態でプロセス油と混合し、混合後溶媒を除去せしめて油展ゴムとして使用しても良い。」(第6頁左上欄4〜6行) d、刊行物4 「2)少なくとも一種のルイス塩基を含有した炭化水素溶媒中で有機リチウム化合物を重合開始剤として、スチレンとブタジエンとを共重合し、次いで少なくとも3個の反応性部位を有する多官能性カップリング剤を添加してなるムーニー粘度(ML1+4,100℃)が30ないし150、重量平均分子量(MW)と数平均分子量(MN)との比MW/MNが1.3ないし3.0,ブタジエン部のビニル結合含有量16%ないし48%、結合スチレン10重量%ないし45重量%、多官能性カップリング剤にて結合された分岐状成分が40重量%以上であるスチレン-ブタジエン共重合体であって、スチレンモノマーが1個のスチレン単連鎖が全結合スチレン65重量%以上、スチレンモノマーが8個以上連なったスチレン長連鎖が全結合スチレンの5.0重量%以下であり、かつ差動走査熱量計(DSC)によって分析される吸熱曲線におけるガラス転移温度域での変曲点間の温度差が15℃以上であることを特徴とする分岐状ランダムスチレン-ブタジエン共重合体を少なくとも30重量%含有する原料ゴムに、該原料ゴム100重量部に対してゴム用プロセス油5〜60重量部、カーボンブラック30〜100重量部を配合してなるゴム組成物。」(特許請求の範囲請求項2) 「本発明の共重合体は溶液状態でプロセス油と混合し、混合後溶媒を除去せしめて油展ゴムとして使用しても良い。」(第5頁左下欄17〜19行) e、刊行物5(省略) f、刊行物6 刊行物6は、「タイヤ用ゴム」についての論文であり、第28頁には、図-3において、「エネルギロス(tanδ)と温度と周波数の関係」、図-4には、「省燃費タイヤ用ゴムの設計コンセプト」、図-5には、「ミクロ構造とTgの関係およびゴム特性への影響」について記載され、60℃でのエネルギロスを小さくすることが低転がり抵抗となり、省エネルギーとなること、また、0℃でのエネルギロスを大きくすることが高ウエットスキッド抵抗となり、安全性が確保されることが記載されている。 エ、対比・判断 a、本件発明1、3及び4について 本件発明1と刊行物1に記載された発明とを対比すると、両者は、ジエン系ゴムをゴム成分の主成分として含有するゴム組成物において、ジエン系ゴムの1成分として、下記(a)〜(c)に示す特性を有するスチレン-ブタジエン共重合体を、ゴム成分中に100重量%含有し、 (a)スチレン含量が23〜45重量%であること、 (b)ブタジエン部分のミクロ構造の1,2-結合含量が25〜57%であること、 (c)ガラス転移温度が-50℃〜-20℃であること、 また、スチレン-ブタジエン共重合体100重量部に対する伸展油の含量(油展量)、及び、全ゴム成分100重量部に対する全伸展油の含量において重複し、充填剤として、全ゴム成分100重量部に対するシリカ及びシリカ100重量部に対するシランカップリング剤の含量がそれそれ重複するゴム組成物である点で一致し、以下の点で相違するものと認める。 相違点1:本件発明1では、スチレン-ブタジエン共重合体の特性として、(d)スチレン単位中の、1個の単連鎖が全結合スチレンの40重量%以上で、かつ8個以上連なったスチレン長連鎖が全結合スチレンの10重量%以下であるとするのに対し、刊行物1では、スチレン単位中の、1個の単連鎖が全結合スチレンの50重量%以上で、かつスチレン長連鎖に相当するブロックスチレンを全結合スチレンの10重量%以下としている点。 相違点2:本件発明1では、スチレン-ブタジエン共重合体をあらかじめ伸展油を用いて油展しておくとするのに対し、刊行物1では、あらかじめ伸展油を用いて油展するとしていない点。 そこで、上記相違点1及び2について検討する。 まず、相違点1について、刊行物1に記載のブロックスチレンが本件発明1の8個以上連なった長連鎖を示唆するものであるかどうかを検討すると、刊行物1と同一の出願人による刊行物2では、「長鎖ブロックスチレン、すなわちスチレン単位の連鎖が8以上のスチレン」との記載があり、刊行物1におけるブロックスチレンというのは、スチレン単位の連鎖が8個以上連なった長連鎖のスチレンを十分に示唆するものといえる。 また、刊行物3及び4でもスチレンモノマーが8個以上連なったスチレン長連鎖を全結合スチレンの5.0重量%以下とすることが記載されており、刊行物1のブロックスチレンとして、スチレン単位の連鎖が8個以上連なったスチレン長連鎖とすることは当業者であれば容易になし得たところであって、そのことによる作用効果も予測し得ることに過ぎない。 次に、相違点2について検討すると、刊行物1においても、油展ゴムが好ましいとすることが記載され、その実施例でも、油展重合体とすることが記載されているのであるから、実質的な相違点とはいえず、また、刊行物2〜4でも油展ゴムとすることが記載されるとおり、あらかじめゴムに伸展油を油展することは通常の技術であるから、そのことによる作用効果も格別とすることはできない。 したがって、本件発明1は、上記刊行物1〜4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 本件発明3は、本件発明1を引用し、分子量分布を特定のものとするものであるが、上記刊行物1〜4でも重複するものが記載されているところから、本件発明1における上記理由と同様に、上記刊行物1〜4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 本件発明4は、本件発明1を引用し、タイヤトレッド用の加硫ゴムに用いられるものであるが、刊行物1にも、タイヤトレッド用とすること、加硫ゴムとすることが記載されているから、本件発明1と同様の理由により、上記刊行物1〜4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 b、本件発明2について 本件発明2は、本件発明1を引用し、その重合体末端が、メチルトリフェノキシシラン及びアルコキシシランサルファイド化合物からなる群から選ばれる1以上の多官能性カップリング剤で変性されているものであるが、刊行物1〜6のいずれにも、多官能性カップリング剤として本件発明2で特定されるものの記載はなく、また、示唆も認められないものであるから、本件発明2は、刊行物1〜6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 (4)むすび 以上のとおりであるから、本件発明1、3及び4は、刊行物1〜4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明1、3及び4についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 また、本件発明2についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 ゴム組成物 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】ジエン系ゴムをゴム成分の主成分として含有するゴム組成物において、 ▲1▼ジエン系ゴムの1成分として、下記(a)〜(d)に示す特性を有するスチレン-ブタジエン共重合体をあらかじめ伸展油を用いて油展したものを、ゴム成分中に30〜100重量%含有し、 (a)スチレン含量が5〜45重量%であること、 (b)ブタジエン部分のミクロ構造の1,2-結合含量が20〜80%であること、 (c)ガラス転移温度が-55℃〜-20℃であること、 (d)スチレン単位中の、1個の単連鎖が全結合スチレンの40重量%以上で、かつ8個以上連なったスチレン長連鎖が全結合スチレンの10重量%以下であること、また、 ▲2▼前記スチレン-ブタジエン共重合体をあらかじめ油展するために用いる伸展油の含量(油展量)が、スチレン-ブタジエン共重合体100重量部に対し20〜50重量部であり、 ▲3▼全ゴム成分中の全伸展油の含量が、全ゴム成分100重量部に対し10〜50重量部であること、さらに、 ▲4▼充填剤として、全ゴム成分100重量部に対し30〜100重量部のシリカを含有するとともに、シリカ100重量部に対し5〜20重量部のシランカップリング剤を含有することを特徴とするゴム組成物。 【請求項2】前記スチレン-ブタジエン共重合体が、さらに下記特性(e)を有するものであることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。 (e)その重合体末端が、メチルトリフェノキシシラン及びアルコキシシランサルファイド化合物からなる群から選ばれる1以上の多官能性カップリング剤で変性されていること。 【請求項3】前記スチレン-ブタジエン共重合体が、さらに下記特性(f)を有するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のゴム組成物。 (f)分子量分布が、1.5〜3.0であること。 【請求項4】前記ゴム組成物が、タイヤトレッド用の加硫ゴムに用いられるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、ゴム組成物に関する。さらに詳しくは、ジエン系ゴムをゴム成分の主成分として含有するゴム組成物であって、そのジエン系ゴムの1成分として、特定のスチレン-ブタジエン共重合体をあらかじめ特定量の伸展油を用いて油展したものを特定量含有し、低転がり抵抗性、高耐ウエットスキッド性及び耐摩耗性のいずれにも優れた、特にタイヤトレッド用の加硫ゴムに好適に用いられるゴム組成物に関する。 【0002】 【従来の技術】 近年、自動車に対する低燃費化の要請に伴って、タイヤの転がり抵抗を低減するタイヤ用ゴム材料が望まれている。このタイヤの転がり抵抗を低減するためには、加硫ゴムの低周波数でのエネルギーロスを小さくすればよい。すなわち、走行中の自動車のタイヤ温度は50℃〜70℃となるが、その際、タイヤ(トレッドゴム)が受ける外力の周波数(車速とタイヤの直径から決まる)は数10Hzであり、この温度及びこの低周波数条件でのエネルギーロスを小さくするほど燃費が良好なタイヤとなる。このように「加硫ゴムの低周波数でのエネルギーロス」という概念は、タイヤの実際の使用条件における燃費性に関する加硫ゴムの評価指標となるものであるが、他方、実際の走行によることなく、その実走行条件をラボで再現した場合の燃費性に関する加硫ゴムの評価指標(ラボ指標)として、「60℃におけるtanδ(tanδはエネルギーロスを示す)」があり、この「60℃におけるtanδ」を小さくするほど燃費が良好なタイヤとなる。 【0003】 一方、自動車の走行安定性の向上という要請があり、この要請に伴い、タイヤの湿潤路面での摩擦抵抗(ウエットグリップ)や、タイヤの乾燥路面での摩擦抵抗(ドライグリップ)を増加させるタイヤ用ゴム材料が強く望まれている。このタイヤの路面(特に湿潤路面)での摩擦抵抗を増加させるためには、加硫ゴムの高周波数でのエネルギーロスを大きくすればよい。すなわち、自動車がブレーキをかけた場合、自動車のタイヤ温度は50℃〜70℃となるが、その際、タイヤ(トレッドゴム)は路面の目に見えない凹凸により高周波数(数万〜数10万Hz)で外力を受けることになり、この温度及びこの高周波数条件でのエネルギーロスを大きくするほど路面での摩擦抵抗が大きい(グリップ力に優れた)タイヤとなる。このように「加硫ゴムの高周波数でのエネルギーロス」という概念は、タイヤの実際の使用条件におけるグリップ力に関する加硫ゴムの評価指標となるものであるが、この高周波数の条件では、これほどの高周波数で測定する試験機が入手困難であるため、そのままではグリップ力に関する加硫ゴムのラボ指標に置き換えることはできない。そこで、周波数を温度に換算し(周波数を下げてその分だけ温度を下げるという条件で)、すなわち「0℃におけるtanδ」を測定することによりグリップ力に関する加硫ゴムのラボ指標としている。この「0℃におけるtanδ」を大きくするほどグリップ力に優れたタイヤとなる。 【0004】 上記の事から分かるように、低転がり抵抗(低燃費化)と湿潤路面での高摩擦抵抗(走行安定性の向上)とは二律背反の関係にあり、これらの物性を両立させる事は困難であった。これまでに、これらの物性を両立させるため種々のゴム材料についての提案がなされている。例えば、リチウムアミド開始剤を用い、共役ジオレフィンと芳香族ビニル化合物とを共重合させて得られる共重合体(特開平6-279,515号公報)、有機リチウム開始剤を用いて得られる重合体末端を変性又はカップリングしたスチレン-ブタジエン共重合体(特開平1-22,940号公報)及びスチレン-ブタジエンゴムとビニルポリブタジエンとを含むゴム組成物(特開平9-183,868号公報)等がある。しかしながら、これらのゴム材料は、前記両物性の最近の要求値を十分に満足し得るものではなかった。 【0005】 さらに、低燃費化(燃費性の改良)に関しては、上記低転がり抵抗の要請とともに、タイヤの軽量化の要請も強く、それに伴って、摩耗特性の優れた加硫ゴムの出現が望まれている。すなわち、低燃費化(燃費性の改良)を実現するための方法には、▲1▼前述のように、トレッドに使用されるゴム自身のエネルギーロス(60℃におけるtanδ)を小さくすること、及び▲2▼タイヤを薄肉化してタイヤを減量化すること、の2つがあり、このうち▲2▼のタイヤの減量化(薄肉化)は、必然的にトレッド部の薄型化を伴うため、タイヤライフの短期化を避けるためには、摩耗特性を改良した加硫ゴムの出現が望まれている。しかしながら、上述のように、タイヤ用ゴム材料として、低転がり抵抗(低転がり抵抗性)と湿潤路面での高摩擦抵抗(高耐ウエットスキッド性)との両物性を備えたものを実現する事でさえ困難である上に、さらに、改良された摩耗特性(耐摩耗性)をも兼ね備えたゴム材料を実現する事はきわめて困難であるという問題があった。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】 本発明は、上述の問題に鑑みなされたものであり、低転がり抵抗性、高耐ウエットスキッド性及び耐摩耗性のいずれにも優れ、特に高性能タイヤ用及び低燃費のタイヤトレッド用の加硫ゴムに好適に用いられるゴム組成物を提供する事を目的とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するため本発明者等は、鋭意研究した結果、ジエン系ゴムの1成分として特定のスチレン-ブタジエン共重合体をあらかじめ特定量の伸展油を用いて油展したものを特定量含有させることによって、低転がり抵抗性、高耐ウエットスキッド性及び耐摩耗性のいずれにも優れたゴム組成物を得ることが出来ることを知見し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の構成を有している。 【0008】 [1]ジエン系ゴムをゴム成分の主成分として含有するゴム組成物において、 ▲1▼ジエン系ゴムの1成分として、下記(a)〜(d)に示す特性を有するスチレン-ブタジエン共重合体をあらかじめ伸展油を用いて油展したものを、ゴム成分中に30〜100重量%含有し、 (a)スチレン含量が5〜45重量%であること、 (b)ブタジエン部分のミクロ構造の1,2-結合含量が20〜80%であること、 (c)ガラス転移温度が-55℃〜-20℃であること、 (d)スチレン単位中の、1個の単連鎖が全結合スチレンの40重量%以上で、かつ8個以上連なったスチレン長連鎖が全結合スチレンの10重量%以下であること、また、 ▲2▼前記スチレン-ブタジエン共重合体をあらかじめ油展するために用いる伸展油の含量(油展量)が、スチレン-ブタジエン共重合体100重量部に対し20〜50重量部であり、 ▲3▼全ゴム成分中の全伸展油の含量が、全ゴム成分100重量部に対し10〜50重量部であること、さらに、 ▲4▼充填剤として、全ゴム成分100重量部に対し30〜100重量部のシリカを含有するとともに、シリカ100重量部に対し5〜20重量部のシランカップリング剤を含有することを特徴とするゴム組成物。 【0009】 [2]前記スチレン-ブタジエン共重合体が、さらに下記特性(e)を有するものであることを特徴とする[1]に記載のゴム組成物。 (e)その重合体末端が、メチルトリフェノキシシラン及びアルコキシシランサルファイド化合物からなる群から選ばれる1以上の多官能性カップリング剤で変性されていること。 【0010】 [3]前記スチレン-ブタジエン共重合体が、さらに下記特性(f)を有するものであることを特徴とする[1]又は[2]に記載のゴム組成物。 (f)分子量分布が、1.5〜3.0であること。 【0011】 【0012】 [4]前記ゴム組成物が、タイヤトレッド用の加硫ゴムに用いられるものであることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のゴム組成物。 【0013】 【発明の実施の形態】 以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。 (I)ゴム組成物 本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴムをゴム成分の主成分として含有し、このジエン系ゴムの1成分として特定のスチレン-ブタジエン共重合体をあらかじめ伸展油を用いて油展したものを、特定の配合量で含有する。 1.ゴム成分 (1)ジエン系ゴム 本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴムをゴム成分の主成分として含有し、このジエン系ゴムの1成分としてスチレン-ブタジエン共重合体を含有する。 ▲1▼スチレン-ブタジエン共重合体 (i)特性 本発明に用いられるスチレン-ブタジエン共重合体は、下記特性(a)〜(d)を、また必要に応じ、好ましくは特性(e)〜(g)を有する。 【0014】 本発明に用いられる,下記特性(a)〜(d)を、また必要に応じ、好ましくは特性(e)〜(g)を有するスチレン-ブタジエン共重合体は、リチウム系開始剤によって、スチレンとブタジエンとを共重合して得られるものが好ましい。スチレンとブタジエンとの共重合の際に用いる開始剤としては特に制限はないが、低コスト及び重合の安定性等からリチウム系開始剤を用いるのが好ましい。このリチウム系開始剤としては、有機リチウム化合物が好ましい。有機リチウム化合物としては、例えばn-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム等のアルキルリチウム;1,4-ジリチウムブタン等のアルキレンジリチウム;フェニルリチウム、スチルベンリチウム、ジイソプロペニルベンゼンリチウム、ブチルリチウム等のアルキルリチウムとジビニルベンゼン等の反応物等の芳香族炭化水素リチウム;リチウムナフタリン等の多核炭化水素リチウム;アミノリチウム、トリブチルスズリチウム等を挙げることができる。 この重合開始剤のほかに、必要に応じて、共重合時のスチレンランダム化剤として、また重合体におけるブタジエン単位のミクロ構造の調節剤として、エーテル化合物又は第3級アミン等を用いることができる。このエーテル化合物又は第3級アミン等としては、例えば、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチルアミン、ピリジン、N-メチルモルホリン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、ジピペリジノエタン等を挙げる事ができる。また、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、リノレイン酸カリウム、安息香酸カリウム、フタール酸カリウム、テトラデシルベンゼンスルホン酸カリウム等の活性剤を用いることもできる。 重合溶媒としては、例えばn-ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン等を用いる事ができる。 重合方式としては、バッチ重合方式、連続重合方式のいずれをも用いる事ができる。 重合温度としては、通常0℃〜130℃、好ましくは10℃〜100℃の範囲、重合時間としては、通常5分〜24時間、好ましくは10分〜10時間の範囲から適宜選択する事ができる。 重合溶媒中の単量体濃度(単量体の合計量/(単量体の合計量+重合溶媒))は、通常5〜50重量%、好ましくは、10〜35重量%の範囲から適宜選択する事ができる。 なお、スチレン-ブタジエン共重合体を製造するに際しては、リチウム触媒が失活するのを防止するため、ハロゲン化合物、酸素、水及び炭酸ガス等の失活作用のある化合物が重合系内に混入することを極力防止する事が好ましい。 【0015】 (a)スチレン含量に関する特性 本発明に用いられるスチレン-ブタジエン共重合体のスチレン含量は、5〜45重量%(特性(a))、好ましくは、15〜45重量%(特性(a’))である。5重量%未満であると、耐摩耗性が不充分となり、45重量%を超えると、50〜80℃の範囲のヒステリシスロス(エネルギーロス(60℃におけるtanδ)と相関する燃費性を示す概念)が大きくなる。このスチレン含量は、共重合体を調製する際、スチレンとブタジエンとの配合比を変えることによって調節することができる。 【0016】 (b)ブタジエン部分のミクロ構造の1,2-結合含量に関する特性 本発明に用いられるスチレン-ブタジエン共重合体のブタジエン部分のミクロ構造の1,2-結合含量は、20〜80%(特性(b))、好ましくは、25〜70%(特性(b’))、さらに好ましくは30〜70%(特性(b”))である。20%未満であると、耐ウエットスキッド性(ウエットグリップ性)が、また、80%を超えると耐摩耗性がそれぞれ不充分となる。このミクロ構造の1,2-結合含量は、前記ミクロ構造調節剤としてのエーテル化合物や第三級アミン等の極性化合物を加える事により調節する事ができる。 【0017】 (c)ガラス転移温度に関する特性 本発明に用いられるスチレン-ブタジエン共重合体のガラス転移温度は、-55℃〜-20℃(特性(c))、好ましくは-45℃〜-30℃(特性(c’))である。-55℃未満であると耐ウエットスキッド性(ウエットグリップ性)が、また-20℃を超えると燃費性がそれぞれ不充分となる。このガラス転移温度は、スチレン含量やブタジエン部分のミクロ構造の1,2-結合(ビニル)含量によって調節する事ができる。ここで、ガラス転移温度と、スチレン含量及びブタジエン部分のミクロ構造とは、スチレン含量及びブタジエン部分のミクロ構造の1,2-結合(ビニル)含量を増加するとガラス転移温度も増大するという関係にある。具体的には、通常、スチレン含量を1重量%増加するとガラス転移温度は約1℃、1,2-結合(ビニル)含量を2%増加するとガラス転移温度は約1℃それぞれ増大する。調節方法としては、スチレン含量の場合、例えば、重合時におけるスチレンの仕込み量を制御する方法を挙げる事ができ、また1,2-結合(ビニル)含量の場合、例えば、重合時における前記エーテル化合物や第三級アミン等の極性化合物の添加量を制御する(極性化合物の添加量を増加すると1,2-結合(ビニル)含量は増加する)方法を挙げる事ができる。なお。この極性化合物はスチレンのランダマイザーともなる。 【0018】 (d)スチレン単位中における単連鎖、長連鎖の含有割合に関する特性 本発明に用いられるスチレン-ブタジエン共重合体のスチレン単位中における単連鎖、長連鎖の含有割合は、スチレン単位中の、1個の単連鎖が全結合スチレンの40重量%以上、かつ8個以上連なったスチレン長連鎖が全結合スチレンの10重量%以下(特性(d))であり、好ましくは、1個の単連鎖が40〜80重量%、かつ長連鎖が5重量%以下(特性(d’))である。1個の単連鎖が全結合スチレンの40重量%未満であるか、又は8個以上連なったスチレン長連鎖が全結合スチレンの10重量%を超えると、それぞれ低転がり抵抗性が不充分となる。このスチレン単位中における単連鎖、長連鎖の含有割合は、例えば1)重合温度を制御する方法、2)ブタジエンを連続的に導入する方法等によって調節することができる。すなわち、リチウム系開始剤を用いた場合のスチレンとブタジエンとの重合(反応)速度は異なり、またその重合速度は重合温度やモノマー濃度の影響を受けるため、単純な反応を行うと、重合温度が高まる重合後半において、その温度の影響及びスチレンモノマーの濃度が高い事によりスチレンが多く反応して、スチレンの長連鎖が多く発生し、長連鎖の含有割合が増大してしまう。そこで、スチレンの長連鎖を減らして適切なスチレン単位中における単連鎖、長連鎖の含有割合とするための方法として、前記のように、1)重合温度を、スチレン及びブタジエンの反応速度が同値となるところで制御する方法や、2)反応前のブタジエン仕込み量を減らした状態で反応を開始することにより、重合初期のスチレン取り込み量を上げ、次に、減量したブタジエンを連続的に導入する方法等によって、適切なスチレン連鎖長を保持する(適切な単連鎖、長連鎖の含有割合を保持する)ように調節する事ができる。 【0019】 (e)重合体末端の多官能性カップリング剤による変性に関する特性 本発明に用いられるスチレン-ブタジエン共重合体は、必要に応じ、分岐構造を導入したものであってもよい。分岐構造が導入された共重合体としては、例えば、1)その重合体末端が1以上の多官能性カップリング剤によって変性されているもの(特性(e))、及び2)少量の分岐剤の存在下で重合したものを挙げる事ができる。このような分岐構造を導入する具体的な方法としては、1)の多官能性カップリング剤によって変性する場合、回分重合法や連続重合法によって得られるリチウム活性末端を有する活性重合体を、メチルトリフェノキシシラン、アルコキシシランサルファイド化合物、尿素化合物、アミド化合物、イミド化合物、チオカルボニル化合物、ラクタム化合物及びケトン化合物からなる群から選ばれる1以上の多官能性カップリング剤と反応させる方法を挙げる事ができる。このような多官能性カップリング剤の中でも、低コスト及び反応の安定性の理由からメチルトリフェノキシシラン、アルコキシシランサルファイド化合物が好ましい。また、2)の少量の分岐剤の存在下で重合する場合は、少量のジビニルベンゼン等の分岐剤の存在下で重合する方法を挙げる事ができる。上述のように共重合体に分岐構造を導入すると、ポリマー同士の絡まりが解かれ易くなるため加工性が向上する(配合ムーニー粘度(ML1+4、100℃)が小さくなる)が、導入量が多すぎると、ゲル化が起こり加工性が不充分となる。このため、その導入量は、加工性を向上させるために十分な量であって、かつ燃費性、耐摩耗性及び低転がり抵抗性等を損なわない量の範囲とする事が好ましい。例えば、0〜10%とする事が好ましい。 【0020】 (f)分子量分布に関する特性 本発明に用いられるスチレン-ブタジエン共重合体の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)としては、特に制限はないが、1.5〜3.0(特性(f))が好ましく、1.5〜2.5(特性(f’))がさらに好ましく、1.5〜2.1(特性(f”))が最も好ましい。1.5未満であると、ロール加工性、押し出し性が不充分となる場合があり、3.0を超えると、転がり性が不充分となる場合がある。この分子量分布は、重合温度を調整することによって、及び/又は1,2-ブタジエン、1,2-イソプレン等のアレン化合物の連鎖移動剤を用いる事によって調節する事ができる。 【0021】 (g)ムーニー粘度に関する特性 本発明に用いられるスチレン-ブタジエン共重合体の油展ムーニー粘度(OE-ML1+4、100℃)についても特に制限はないが、20〜100(特性(g))が好ましく、30〜80(特性(g’))がさらに好ましい。20未満であると、破壊強度が不充分となる場合があり、100を超えると、ロール作業性、押し出し性が不充分となる場合がある。このムーニー粘度は、分子量分布や重量平均分子量を制御する事によって調節することができる。 【0022】 (ii)配合量 本発明に用いられるスチレン-ブタジエン共重合体は、後述するあらかじめ伸展油を用いて油展したものとして、全ゴム成分中に30〜100重量%、好ましくは50〜100重量%含有される。30重量%未満であると、高耐ウエットスキッド性、低転がり抵抗性が不充分となる。 【0023】 ▲2▼スチレン-ブタジエン共重合体以外のジエン系ゴム 本発明においては、ゴム成分の主成分であるジエン系ゴムとして、上記スチレン-ブタジエン共重合体の他に、上記スチレン-ブタジエン共重合体以外のジエン系ゴムを用いる事もできる。このようなジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、高シス1,4結合-ポリブタジエンゴム等を挙げる事ができる。このスチレン-ブタジエン共重合体以外のジエン系ゴムの配合量としては、例えばゴム成分中に、0〜70重量%含有させる事ができる。 【0024】 (2)ジエン系ゴム以外のゴム成分 本発明に用いられるゴム成分として、上記ジエン系ゴム以外のゴム成分を含有させる事もできる。このジエン系ゴム以外のゴム成分としては、例えば、エチレン-プロピレンゴム、シリコーンゴム、フッ化ビニリデンゴム等を挙げる事ができる。このジエン系ゴム以外のゴム成分の配合量としては、例えば全ゴム成分中に、0〜30重量%含有させることができる。 【0025】 2.伸展油 本発明に用いられる上記スチレン-ブタジエン共重合体は、あらかじめ伸展油によって油展されていることが必要である。このようにあらかじめ伸展油によって油展することにより、配合時に油を混練りした配合ゴムと比較して、ゴム成分中の伸展油及び後述する充填剤の分散性を向上させる事ができる。 【0026】 (1)種類 本発明に用いられる伸展油としては、通常のゴム用伸展油であれば特に制限はないが、例えば、ナフテン系、パラフィン系、芳香族油系等を挙げる事ができる。中でもが芳香族油系好ましい。また、ナフテン系、又はパラフィン系のゴム用伸展油を併用する事もできる。伸展油としてゴム用伸展油を用いる場合、ASTM02501で示される粘度比重恒数が、0.900〜1.100のものが好ましく、0.920〜0.990のものがさらに好ましい。油展の方法としては、特に制限はないが、例えば、重合終了後、伸展油を加え、常法により脱溶媒及び乾燥する方法等を挙げる事ができる。 【0027】 (2)含量 ▲1▼スチレン-ブタジエン共重合をあらかじめ油展するために用いる伸展油の共重合体に対する含量(油展量) 前記スチレン-ブタジエン共重合体をあらかじめ油展するために用いられる伸展油の含量(油展量)は、スチレン-ブタジエン共重合体100重量部に対し、20〜50重量部、好ましくは30〜40重量部である。20重量部未満であると、低転がり抵抗性が不充分となり、50重量部を超えると、配合ゴムの全油量の下限界が高めに制限されるため配合の自由度が減少する。 【0028】 ▲2▼全伸展油の全ゴム成分に対する含量 本発明においては、上記伸展油をスチレン-ブタジエン共重合体の油展用に用いる場合の他に、別途配合する事もできる。例えば、カーボンマスターバッチ(CMB)を調製するに際し、油展したスチレン-ブタジエン共重合体にさらに充填剤と伸展油とを加えて混練りする場合、またこのCMBと、他のジエンゴムや配合剤等とを混練りしてタイヤを製造する場合等を挙げる事ができる。この場合の全伸展油の含量(油展用及び配合用の合計量)は、全ゴム成分100重量部に対し、10〜50重量部である。10重量部未満であると加工性と低燃費性とを両立させる事が困難であり、50重量部を越えると低燃費性が不充分となる。 【0029】 3.ゴム成分及び伸展油以外の配合成分 本発明のゴム組成物においては、上記ゴム成分及び別途配合用伸展油の他に、充填剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤等の成分を配合する事ができる。 (1)充填剤 本発明に用いられる充填剤としては、例えばカーボンブラック、シリカ、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等を挙げる事ができる。カーボンブラックを用いる場合、その配合量は、全ゴム成分100重量部に対し、2〜100重量部が好ましく、10〜60重量部がさらに好ましい。2重量部未満であると、耐候性、電気伝導性が不充分となる場合があり、100重量部を超えると、反撥弾性、低転がり抵抗性が不充分となる場合がある。シリカを用いる場合、その配合量は、全ゴム成分100重量部に対し、30〜100重量部が好ましく、35〜70重量部がさらに好ましい。30重量部未満であると、ウエットスキッド性が不充分となる場合があり、100重量部を超えると、低転がり抵抗性が不充分となる場合がある。なお、充填剤等として、シリカを配合する場合、シリカ100重量部に対し、5〜20重量部のシランカップリング剤を含有させる事が好ましい。また、カーボンブラックとシリカとを併用してもよい。この場合のカーボンブラック及びシリカの配合量は、全ゴム成分100重量部に対し、その合計量として30〜100重量部含有させる事が好ましい。 【0030】 (2)加硫剤 本発明に用いられる加硫剤としては、例えば、イオウ;ジ-t-ブチルパーオキサイド等のパーオキサイド類;テトラメチルチウラムジサルファイド等のイオウ供与物質等を挙げる事ができる。中でも耐久性の理由からイオウが好ましい。加硫剤の配合量としては、全ゴム成分100重量部に対し、0.5〜5重量部が好ましい。 【0031】 (3)加硫促進剤 本発明に用いられる加硫促進剤としては、例えば、ジフェニルグァニジン、N-テトラ-ブチル-2-ベンゾチアゾルスルフェンアミド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾルスルフェンアミド等を挙げる事ができる。加硫促進剤の配合量としては、全ゴム成分100重量部に対し、1〜5重量部が好ましい。 【0032】 (4)老化防止剤 本発明に用いられる老化防止剤としては、例えば、N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン等を挙げる事ができる。老化防止剤の配合量としては、全ゴム成分100重量部に対し、1〜10重量部が好ましい。 【0033】 (5)その他の配合剤 本発明に用いられるその他の配合剤としては、ステアリン酸、亜鉛華、ワックス等の加工助剤や粘着付与剤等を挙げる事ができる。 【0034】 (II)ゴム組成物の製造方法 本発明のゴム組成物を製造する方法としては特に制限はないが、例えば、あらかじめ油展したスチレン-ブタジエン共重合体と、必要に応じて用いられる、別途配合用の伸展油、充填剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤等の配合成分とを、インターナルミキサー、オープンロール等のゴム用の混練り機を用いて混練りする方法を挙げる事ができる。得られた加硫可能な本発明のゴム組成物を成形した後130℃〜200℃の温度で加硫することによって、加硫ゴムを得ることができる。 【0035】 (III)加硫ゴム 本発明のゴム組成物から得られる加硫ゴムは、極めて優れた高耐ウエットスキッド性及び低転がり抵抗性を示すので、タイヤ、特に高性能タイヤ及びタイヤトレッドの用途に好適に用いる事ができる。また、その他のタイヤの用途や、汎用の加硫ゴムの用途にも用いる事ができ、工業的意義は極めて大なるものがある。 【0036】 【実施例】 以下、実施例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。 実施例中のスチレン-ブタジエン共重合体の各特性に関する測定は、以下の方法に拠った。 スチレン含量(%) 赤外吸収スペクトル法により検量線を作成して求めた。 ブタジエン部の1,2-結合含量(%) 赤外吸収スペクトル法(モレロ法)によって求めた。 ガラス転移温度(℃) セイコー電子工業社製の示差走査熱量計(DSC)を用いて、昇温速度10℃/分で測定し、外挿開始温度をガラス転移温度とした。 重量平均分子量、数平均分子量、分子量分布 GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)を用いて、ポリスチレン換算で求めた。 スチレンの連鎖分布(%) ブタジエン単位の二重結合を全てオゾン開裂して得た分解物をGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)によって分析した(高分子学会予稿集第9巻第9号第2,055頁)。 ムーニー粘度(OE-ML1+4、100℃) JIS K6300に準拠し、予熱1分、ローター作動時間4分、温度100℃で測定した。 【0037】 実施例中の、ゴム組成物を加硫して得られる加硫ゴムの試験片の各物性に関する測定は、以下の方法に拠った。 tanδ 60℃におけるtanδは、米国レオメトリックス社製の動的アナライザー(RDA)を用い、動歪み1%、周波数10Hz、60℃の条件で測定した。数値が小さいほど、転がり抵抗が小さく(低転がり抵抗性)、良好であることを示す。0℃におけるtanδは、同じ機器を用い、動歪み0.5%、周波数10Hz、0℃の条件で測定した。数値が大きいほど、ウエットスキッド性が大きく(高耐ウエットスキッド性)、良好であることを示す。 ランボーン摩耗指数(耐摩耗性) ランボーン型摩耗試験機を用い、室温で測定した。指数はスリップ率が60%での摩耗量を示す。この指数が大きいほど、耐摩耗性が良好である事を示す。 硬度 JIS硬度計(A)タイプを用い、25℃の温度で測定した。 なお、硬度を測定したのは、例えばタイヤトレッド等は硬すぎても柔らかすぎても実用上問題があるからであり、また、硬度が大きく異なる場合、60℃におけるtanδ、0℃におけるtanδによって燃費性及びウエットグリップ性を比較する事が困難となるからである。 【0038】 [実施例1〜8、比較例1〜10] 共重合体の調製及び伸展油による油展 表1及び表2に示す共重合体A〜Mは、以下の方法で調製した。 共重合体A、F 窒素で置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応容器に、スチレン175g、1,2-ブタジエンを150ppm含んだ1,3-ブタジエン325g、シクロヘキサン2500g、テトラヒドロフラン8.75g、及びドデシルベンゼンスルホン酸カリウム0.068gを仕込んだ。反応容器内容物の温度を15℃に調整した後に、n-ブチルリチウム3.91mmolを添加して重合を開始した。重合転化率が100%に達した後、メチルトリフェノキシシラン3.51mmolを加えて、15分間変性反応を行うことで、共重合体A、Fを得た。 共重合体B 十分に窒素で置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応容器に、スチレン110g、1,3-ブタジエン385g、シクロヘキサン3025g、テトラヒドロフラン36gを仕込んだ。反応容器内容物の温度を35℃に調整した後に、n-ブチルリチウム4.15mmolを添加して重合を開始した。5分後から5g/分の流量で、55gの1,3-ブタジエンを連続的に導入し、重合転化率が100%に達した後、四塩化ケイ素0.55mmolを加えて、15分間変性反応を行うことで、共重合体Bを得た。 共重合体C 共重合体Bの調製において、スチレンの仕込み量を165gに、1,3-ブタジエンの仕込み量を332gに、テトラヒドロフランの仕込み量を9gにそれぞれ変えたこと以外は共重合体Bの調製と同様にして共重合体Cを調製した。 共重合体D 十分に窒素で置換された、攪拌機及びジャケットの付いた内容積20リットルのオートクレーブ反応容器に、スチレン6g/分、1,2-ブタジエンを100ppm含んだ1,3-ブタジエン24g/分、シクロヘキサン150g/分、テトラヒドロフラン4.17g/分、n-ブチルリチウム0.196mmol/分を連続的にチャージし、反応容器の温度は70℃でコントロールした。1基目の反応容器の頂部出口にて、四塩化ケイ素を0.06mmol/分で連続的に添加し、これを上記反応容器に連結した2基目の反応容器に導入して変性反応を行うことで、共重合体Dを得た。 共重合体E 共重合体Dの調製において、スチレンのチャージ量を10.5g/分に、1,2-ブタジエンを100ppm含んだ1,3-ブタジエンのチャージ量を19.5g/分に、テトラヒドロフランのチャージ量を0.97g/分に、n-ブチルリチウムの添加量を0.144mmol/分にそれぞれ変えたこと,及び四塩化ケイ素の代わりにメチルトリフェノキシシランを0.052g/分用いたこと以外は共重合体Dの調製と同様にして共重合体Eを調製した。 共重合体G 共重合体Bの調製において、1,3-ブタジエンの仕込み量を357gに変えたこと、及び連続的に導入する1,3-ブタジエンの量を0gに変えたこと以外は共重合体Bの調製と同様にして共重合体Gを調製した。 共重合体H 共重合体Bの調製において、n-ブチルリチウムの添加量を3.82mmolに変えたこと以外は共重合体Bの調製と同様にして共重合体Hを調製した。 共重合体I 共重合体Dの調製において、1,2-ブタジエンを100ppm含んだ1,3-ブタジエン24g/分の代わりに、1,2-ブタジエンを130ppm含んだ1,3-ブタジエンを24g/分用いたこと以外は共重合体Dの調製と同様にして共重合体Iを調製した。 共重合体J 共重合体Bの調製において、スチレンの仕込み量を138gに、1,3-ブタジエンの仕込み量を358gに、テトラヒドロフランの仕込み量を7gにそれぞれ変えたこと以外は共重合体Bの調製と同様にして共重合体Jを調製した。 共重合体K 共重合体Bの調製において、スチレンの仕込み量を28gに、1,3-ブタジエンの仕込み量を468gに、テトラヒドロフランの仕込み量を135gにそれぞれ変えたこと以外は共重合体Bの調製と同様にして共重合体Kを調製した。 共重合体L 共重合体Bの調製において、スチレンの仕込み量を248gに、1,3-ブタジエンの仕込み量を248gに、テトラヒドロフランの仕込み量を1gにそれぞれ変えたこと以外は共重合体Bの調製と同様にして共重合体Lを調製した。 共重合体M 共重合体Bの調製において、スチレンの仕込み量を165gに、1,3-ブタジエンの仕込み量を330gに、テトラヒドロフランの仕込み量を115gにそれぞれ変えたこと以外は共重合体Bの調製と同様にして共重合体Mを調製した。 なお、共重合体Fは、重合終了後、ナフテン系伸展油(富士興産社製;フッコールFLEX#1060N)を油展量(伸展油の含量)37.5phr(parts per hundred parts of rubber:全ゴム成分100重量部当たりの重量部)で加える事によって油展した。共重合体Hは芳香族系伸展油(富士興産社製;フッコールアロマックス#3)を用い油展量15phrで同様にして油展した。共重合体Iは油展しなかった。共重合体F、H及びI以外は、芳香族系伸展油(富士興産社製;フッコールアロマックス#3)を用い油展量37.5phrで同様にして油展した。これらの得られたスチレン-ブタジエン共重合体のうち、共重合体A〜Fは、本発明に用いられるスチレン-ブタジエン共重合体であり、共重合体G〜Mは、比較のためのスチレン-ブタジエン共重合体である。 【0039】 【表1】 【0040】 【表2】 【0041】 ゴム組成物、加硫ゴムの調製 上記で得られたスチレン-ブタジエン共重合体A〜Mを用い、表3に示す配合処方で、バンバリーミキサー(神戸製鋼社製BR型バンバリー)を用いて、スタート温度70℃、60rpm、3分間の条件で加硫系以外の配合剤を混練りし、次に、スタート温度70℃、50rpm、1分間の条件で加硫剤を混練りし、配合物(ゴム組成物)を得た。 その後、加硫プレスを用い、160℃、20分の加硫条件でモールドを使用して加硫し、試験片を得た。この試験片を用いて加硫ゴムの物性を測定した結果を表4〜6に示す。 【0042】 【表3】 *1)ゴム成分は、スチレン-ブタジエン共重合体、天然ゴム、高シスブタジエンゴム等配合する全ゴム成分を示す。油展重合体の場合は、油分を除いた重合体部分のみを示す。なお、そのゴム配合処方は表4〜5に示す。 *2)三菱化学社製、ダイヤブラックN339 *3)日本シリカ社製、ニプシルAQ *4)デグッサ社製、Si69 *5)富士興産社製、フッコール・アロマックス#3 表3中、配合No.Yにおけるアロマチックオイルは、全ゴム成分100に対して37.5配合されることが示されているが、後述する表5中の実施例8の配合(配合No.Y)の場合、アロマチックオイルは全ゴム成分100に対して37.5ではなく、11.25だけ配合される。実施例8の場合、伸展油の合計は全ゴム成分100に対して37.5配合されるのではあるが、実施例8に用いられる共重合体Fはスチレン-ブタジエン共重合体100に対してあらかじめナフテン系伸展油37.5を用いて油展していたので(実施例8の場合全ゴム成分100のうちスチレン-ブタジエン共重合体は70配合されるのでナフテン系伸展油は全ゴム成分100に対して26.25配合されることになる)、結局、実施例8においては、アロマチックオイル(11.25)とナフテン系伸展油(26.25)との合計としての伸展油が、全ゴム成分100に対して37.5配合されることになる。 *6)大内新興化学工業社製、ノクラック810NA *7)大内新興化学工業社製、ノクセラーCZ *8)大内新興化学工業社製、ノクセラーD 【0043】 【表4】 *1)油展重合体の場合は、油分を含んだ量を表示する(表6〜7も同じ)。 *2)日本合成ゴム社製、高シスブタジエンゴム(表6〜7も同じ)。 【0044】 【表5】 *1)油展重合体の場合は、油分を含んだ量を表示する(表6〜7も同じ)。 *2)日本合成ゴム社製、高シスブタジエンゴム(表6〜7も同じ)。 【0045】 【表6】 【0046】 【表7】 【0047】 表1〜7から分かるように、比較例1、4、及び7〜10のゴム組成物の場合、本発明のゴム組成物におけるスチレン-ブタジエン共重合体が満たすべき特性(a)〜(d)、すなわちスチレン含量(5〜45重量%)、ブタジエン部分の1,2-結合含量(20〜80%)、ガラス転移温度(-55℃〜-20℃)、スチレンの連鎖分布(単連鎖:40重量%以上、長連鎖:10重量%以下)を満たしていない。すなわち、表6〜7に示すように、比較例1及び7で用いた共重合体Gは、表2に示すようにスチレンの連鎖分布が、単連鎖:35.9重量%、長連鎖:13.1重量%であり、表6に示す比較例4で用いた共重合体Jは、表2に示すようにガラス転移温度が、-59℃であり、表7に示す比較例8で用いた共重合体Kは、表2に示すようにスチレン含量が4%で、かつブタジエン部分の1,2-結合含量が83%であり、表7に示す比較例9で用いた共重合体Lは、表2に示すようにスチレン含量が47%であり、表7に示す比較例10で用いた共重合体Mは、表2に示すようにガラス転移温度が-16℃であり、それぞれ本発明のゴム組成物におけるスチレン-ブタジエン共重合体の特性(a)〜(d)を満たしていない。なお、比較例1においては充填剤としてシラン及びシランカップリング剤を配合していない点においても本発明のゴム組成物が満たすべき要件を満たしていない。 【0048】 同様に、比較例2、3、5及び6のゴム組成物は、本発明のゴム組成物が満たすべき要件を満たしていない。すなわち、本発明のゴム組成物は、スチレン-ブタジエン共重合体をあらかじめ油展するために用いる伸展油の含量が、スチレン-ブタジエン共重合体100重量部に対し、20〜50重量部であるが、比較例2の場合、表6に示す比較例2で用いた共重合体Hは、表2に示すように,その油展量(伸展油の含量)が15重量部であり、この要件を満たさない。 また、本発明のゴム組成物は、上記特性を有するスチレン-ブタジエン共重合体をあらかじめ伸展油を用いて油展したものを、ゴム成分中に30〜100重量%含有するが、比較例3の場合、表6に示す比較例3で用いた共重合体Iは、表2に示すようにあらかじめ油展されおらず、この要件を満たさない。分子量分布も4.9と広い。また、本発明のゴム組成物は、スチレン-ブタジエン共重合体をあらかじめ伸展油を用いて油展したものを、ゴム成分中に30〜100重量%含有するが、表6に示すように、比較例5の場合、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムをゴム成分中に20重量%しか含有しておらず、この要件を満たさない。 さらに、本発明のゴム組成物は、ゴム成分中の全伸展油の含量が、全ゴム成分100重量部に対し10〜50重量部であるが、比較例6の場合、表7に示すように配合No.がZであり、表3に示すように全伸展油の含量が全ゴム成分100重量部に対し60重量部であり、この要件を満たさない。 【0049】 その結果、表6〜7に示す比較例1〜10の加硫ゴムは、加硫ゴムの各物性において、低転がり抵抗性、高耐ウエットスキッド性及び耐摩耗性のバランスから分かるように、表4〜5に示す実施例1〜8の加硫ゴムと比較して劣っている事は明らかである。 【0050】 【発明の効果】 以上説明したように、本発明によって、低転がり抵抗性、高耐ウエットスキッド性及び耐摩耗性のいずれにも優れ、高性能タイヤ用及び低燃費のタイヤトレッド用の加硫ゴムに特に好適に用いられるとともに、汎用の加硫ゴムにも好適に用いられるゴム組成物を提供する事が出来る。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2005-05-31 |
出願番号 | 特願平10-306869 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZD
(C08L)
|
最終処分 | 一部取消 |
前審関与審査官 | 中島 庸子 |
特許庁審判長 |
一色 由美子 |
特許庁審判官 |
船岡 嘉彦 佐野 整博 |
登録日 | 2003-03-28 |
登録番号 | 特許第3412534号(P3412534) |
権利者 | JSR株式会社 |
発明の名称 | ゴム組成物 |
代理人 | 渡邉 一平 |
代理人 | 酒井 正己 |
代理人 | 木川 幸治 |
代理人 | 渡邉 一平 |
代理人 | 木川 幸治 |
代理人 | 樋口 武 |
代理人 | 樋口 武 |
代理人 | 小松 純 |
代理人 | 加々美 紀雄 |