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審決分類 審判 一部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  G02B
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  G02B
審判 一部申し立て 2項進歩性  G02B
審判 一部申し立て ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正  G02B
管理番号 1124307
異議申立番号 異議2003-71919  
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-07-28 
確定日 2005-07-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3370667号「光学デバイス」の請求項1ないし8に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3370667号の請求項1、2、5に係る特許を取り消す。 同請求項3、4、6ないし8に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第3370667号の請求項1ないし8に係る発明についての出願は、1991年12月2日(パリ条約による優先権主張1990年12月20日、英国)を国際出願日とする出願であって、平成14年11月15日にその特許の設定登録がなされ、その後、平成15年7月28日に日本電信電話株式会社より特許異議の申立てがなされ、平成16年5月19日付で取消理由通知がなされ、同年11月16日に訂正請求がなされたものである。

2 訂正の適否についての判断
2.1 訂正事項
平成16年11月16日になされた訂正請求は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載事項を訂正することを求めるものであり、その内容には以下の(A)、(B)の訂正事項がある。
(A)請求項1を
「(a)多モード導波路と、
(b)前記多モード導波路の横断面の中心において、前記多モード導波路に接続された基本モード動作に適合した第1の結合導波路と、
(c)接続中心が前記多モード導波路の横断面上で互いに離間して配置されるように前記多モード導波路に接続された、各々が基本モード動作に適合した、少なくとも2つの第2の結合導波路と、
(d)少なくとも1つの結合導波路の基本モードだけを励起し、これによって前記多モード導波路の入力開口にわたって一定の位相の前記多モード導波路への入力を提供するように適合した放射源とを備え、
(e)前記結合導波路および前記多モード導波路が同じ組成材料の導波路コアを有し、かつ各々の結合導波路が前記多モード導波路に結合するように、前記多モード導波路コアが前記第1の結合導波路のコアから前記第2の結合導波路のコアまで延在していることと、
(f)前記結合導波路および前記多モード導波路の相対寸法および相対位置決めが、前記第1の結合導波路の同位相の対称基本モードとして伝搬する放射が前記多モード導波路の対称モードだけを励起し、かつ前記多モード導波路内でそのように励起されたモードが、前記多モード導波路内の放射経路に沿ったモード分散によって、前記第2の結合導波路の各々の基本モードだけを励起するようになっていることとを特徴とする光学デバイス。」
と訂正する。
(B)段落【0085】に記載の「(c)厚さ1.0μmのGaAs導波路コア層179(n=3.479)、」を、「(c)厚さ1.0μmのGaAs導波路コア層176(n=3.479)、」と訂正する。

2.2 訂正の適否についての判断
上記(A)の訂正事項は、請求項1に記載の「基本モードを励起する」を「基本モードだけを励起する」と訂正するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、上記(B)の訂正事項は、誤記の訂正を目的とするものである。
そして、上記(A)及び(B)の訂正事項は、新規事項の追加に該当するものではなく、また実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

2.3 むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3 特許異議の申立てについての判断
3.1 申立ての理由の概要及び取消理由通知
特許異議申立人日本電信電話株式会社は、訂正前の本件の請求項1〜8に係る発明につき、次の(ア)〜(オ)の理由により、特許を取り消すべきであると主張している。
(ア)請求項1に係る発明は、甲第1号証(Claude Rolland et al.,“Optimization of Strongly Guiding Semiconductor Rib Waveguide Y-Junctions”,IEEE Photonics Technology Letters,1990-6,Vol.2,No.6,p.404-406)に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(イ)請求項2、4、5、8に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証(米国特許第4087159号明細書)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
(ウ)請求項3に係る発明は、甲第2号証及び甲第3号証(特開昭62-63917号公報)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
(エ)請求項6に係る発明は、甲第1乃至3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
(オ)請求項7に係る発明は、甲第1号証及び甲第4号証(J. Katz et al.,“Diffraction coupled phase-locked semiconductor laser array”,Applied Physics Letters,1983-4-1,Vol.42,No.7,p.554-556)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

そして、当審において、上記異議の申立ての内容を含めて、概略以下の取消理由を通知した。
「本件特許第3370667号の請求項1乃至8に係る特許は、合議の結果、以下の理由によって取り消すべきものと認められます。これについて意見がありましたら、この通知の発送の日から3ヶ月以内に意見書の正本1通及びその副本2通を提出して下さい。
理 由
1)本件の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2)本件の請求項1〜8に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:Claude Rolland et al.,“Optimization of Strongly Guiding Semiconductor Rib Waveguide Y-Junctions”,IEEE Photonics Technology Letters,1990-6,Vol.2,No.6,p.404-406(甲第1号証)
刊行物2:米国特許第4087159号明細書(甲第2号証)
刊行物3:特開昭62-63917号公報(甲第3号証)
刊行物4:J. Katz et al.,“Diffraction coupled phased-locked semiconductor laser array”,Applied Physics Letters,1983-4-1,Vol.42,No.7,p.554-556(甲第4号証)」

3.2 請求項1ないし8に係る発明
請求項1ないし8に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】(a)多モード導波路と、
(b)前記多モード導波路の横断面の中心において、前記多モード導波路に接続された基本モード動作に適合した第1の結合導波路と、
(c)接続中心が前記多モード導波路の横断面上で互いに離間して配置されるように前記多モード導波路に接続された、各々が基本モード動作に適合した、少なくとも2つの第2の結合導波路と、
(d)少なくとも1つの結合導波路の基本モードだけを励起し、これによって前記多モード導波路の入力開口にわたって一定の位相の前記多モード導波路への入力を提供するように適合した放射源とを備え、
(e)前記結合導波路および前記多モード導波路が同じ組成材料の導波路コアを有し、かつ各々の結合導波路が前記多モード導波路に結合するように、前記多モード導波路コアが前記第1の結合導波路のコアから前記第2の結合導波路のコアまで延在していることと、
(f)前記結合導波路および前記多モード導波路の相対寸法および相対位置決めが、前記第1の結合導波路の同位相の対称基本モードとして伝搬する放射が前記多モード導波路の対称モードだけを励起し、かつ前記多モード導波路内でそのように励起されたモードが、前記多モード導波路内の放射経路に沿ったモード分散によって、前記第2の結合導波路の各々の基本モードをだけ励起するようになっていることとを特徴とする光学デバイス。」(以下、「本件発明1」という。)
「【請求項2】複数の出力導波路間で単一の波長源からの放射を分割する光学デバイスであって、
(a)前記デバイスは入力導波路に接続された幅2bの入力端部と前記出力導波路に接続された幅2Mbの出力端部とを有する多モード導波路を組み込み、
(b)前記入力導波路は前記多モード導波路の横断面の中心に接続され、かつ前記波長源からの放射を前記多モード導波路にリレーするように適合され、
(c)前記出力導波路は前記多モード導波路に前記多モード導波路の横断面上で離間した位置で接続され、かつ
(d)前記多モード導波路は前記出力導波路間で前記入力導波路から出てくる放射の強度を分割するように適合された光学デバイスにおいて、
(e)前記入力導波路および前記出力導波路は、それらが前記基本モードの伝搬だけを提供するように構成されるか、または動作中はそれぞれ前記波長源からのおよび前記多モード導波路からのそれらの入力励起が、前記放射の基本モードだけをそのなかに伝搬させるようなものであることから、基本動作モードに適合されていることと、
(f)前記多モード導波路は前記入力導波路と前記出力導波路との間に、4Mb2/λKに等しい光路長であり、式中λは前記多モード導波路内の波長源の放射波長でありかつKは出力導波路の数を示す光路長を提供することと、
(g)前記入力導波路、多モード導波路および出力導波路の相対寸法および相対位置決めは、前記入力導波路の同位相の対称基本モードとして伝搬する放射が前記多モード導波路の対称モードだけを励起し、かつ前記多モード導波路内でそのように励起されたモードが、前記多モード導波路内の放射経路に沿ったモード分散によって、各々の出力導波路の基本モードだけを励起するようになっていることとを特徴とする複数の出力導波路間の単一の波長源からの放射を分解する光学デバイス。」(以下、「本件発明2」という。)
「【請求項3】(a)前記デバイスはマッハツェンダー光干渉計として適合され、
(b)出力導波路の数Kは2個であり、
(c)前記出力導波路は前記多モード導波路を補助多モード導波路に接続し、かつそこから外側の1対の補助導波路の間にある中央補助導波路に接続し、
(d)他の出力導波路の光学位相に関して、1つの出力導波路の光学位相を変化させる手段が設けられ、かつ
(e)前記補助導波路は、前記出力導波路の同位相の放射が、少なくとも実質的には前記中央補助導波路に固定される強度を発生し、かつ前記出力導波路の相対的逆位相の放射が、前記外側の1対の補助導波路内で実質的に等しい強度を発生するように適合された請求の範囲第2項に記載の光学デバイス。」(以下、「本件発明3」という。)
「【請求項4】複数の出力導波路間で単一の波長源からの放射を分割する光学デバイスであって、
(a)前記デバイスは入力導波路に接続された幅2bの入力端と前記出力導波路に接続された幅2Mbの出力端とを有する多モード導波路を組み込み、
(b)前記入力導波路は前記多モード導波路の横断面の中心に接続され、かつ前記波長源からの放射を前記多モード導波路にリレーするように適合され、
(c)前記出力導波路は前記多モード導波路に前記多モード導波路の横断面上で離間した位置で接続され、かつ
(d)前記多モード導波路は前記出力導波路間で前記入力導波路から出てくる放射の強度を分割するように適合された光学デバイスにおいて、
(e)前記入力導波路および前記出力導波路は、それらが前記基本モードの伝搬だけを提供するように構成されるか、または動作中はそれぞれ前記波長源からのおよび前記多モード導波路からのそれらの入力励起が、前記放射の基本モードだけをそのなかに伝搬させるようなものであることから、基本動作モードに適合されていることと、
(f)前記出力導波路は導波路が行列で配列されているような二次元アレイであり、各列は前記多モード導波路の幅寸法内に延在しかつK個の出力導波路を含んでいることと、
(g)前記多モード導波路は2つの相互に直交した横断方向に多モードであり、かつ前記入力導波路と前記出力導波路との間で4Mb2/λKに等しい光路長であり、式中λは前記多モード導波路内の波長源の放射波長である光路長を有していることと、
(h)前記入力導波路、多モード導波路および出力導波路の相対寸法および相対位置決めは、前記入力導波路の同位相の対称基本モードとして伝搬する放射が前記多モード導波路の対称モードだけを励起し、かつ前記多モード導波路内でそのように励起されたモードが、前記多モード導波路内の放射経路に沿ったモード分散によって、各々の出力導波路の基本モードだけを励起するようになっていることとを特徴とする複数の出力導波路間の単一の波長源からの放射を分割する光学デバイス。」(以下、「本件発明4」という。)
「【請求項5】同じ単一の波長を有する2つの放射入力の強度を組み合わせて単一の出力を提供する光学デバイスであって、
(a)前記デバイスは入力導波路に接続された幅2bの入力端と出力導波路に接続された幅2Mbの出力端とを有する多モード導波路を組み込み、
(b)前記入力導波路は前記多モード導波路に前記多モード導波路の横断面上で離間した位置で接続され、かつ各々が1つまたは複数の波長源から前記多モード導波路に入力放射をリレーするように適合され、
(c)前記多モード導波路は前記入力導波路から出てくる放射の強度を前記出力導波路にリレーするように適合された光学デバイスにおいて、
(d)前記出力導波路は前記多モード導波路の横断面の中心に接続されていることと、
(e)前記多モード導波路は、前記入力導波路から出てくる放射の強度を前記出力導波路内において組み合わせるように適合されていることと、
(f)前記入力導波路および前記出力導波路は、それらが前記基本モードの伝搬だけを提供するように構成されるか、または動作中はそれぞれ前記波長源からのおよび前記多モード導波路からのそれらの入力励起が、前記放射の基本モードだけをそのなかに伝搬させるようなものであることから、基本動作モードに適合されていることと、
(g)前記多モード導波路は前記入力導波路と前記出力導波路との間に、2Mb2/λに等しい光路長であり、式中λは前記多モード導波路内の入力放射長である光路長を提供することと、
(h)前記入力導波路、多モード導波路および出力導波路の相対寸法および相対位置決めは、相互に同位相である前記入力導波路内で対称基本モードとして伝搬する入力放射が結合されて、前記出力導波路上に最大値が集中する単一の信号強度を発生しかつ前記多モード導波路内の放射経路に沿ったモード分散によって、その基本モードだけを励起するようになっていることとを特徴とする、同じ単一の波長を有する2つの放射入力の強度を組み合わせて単一の出力を提供する光学デバイス。」(以下、「本件発明5」という。)
「【請求項6】同じ単一の波長を有する3つ以上の放射入力の強度を組み合わせて単一の出力を提供する光学デバイスであって、
(a)前記デバイスは3つ以上の入力導波路に接続された幅2bの入力端と出力導波路に接続された幅2Mbの出力端とを有する多モード導波路を組み込み、
(b)前記入力導波路は前記多モード導波路に前記多モード導波路の横断面上で離間した位置で接続され、かつ各々が1つまたは複数の波長源から前記多モード導波路に入力放射をリレーするように適合され、
(c)前記多モード導波路は前記入力導波路から出てくる放射の強度を前記出力導波路にリレーするように適合されたデバイスにおいて、
(d)前記出力導波路は前記多モード導波路の横断面の中心に接続されていることと、
(e)前記多モード導波路は、前記入力導波路から出てくる放射の強度を前記出力導波路内において組み合わせるように適合されていることと、
(f)前記入力導波路および前記出力導波路は、それらが前記基本モードの伝搬だけを提供するように構成されるか、または動作中はそれぞれ前記波長源からのおよび前記多モード導波路からのそれらの入力励起が、前記放射の基本モードだけをそのなかに伝搬させるようなものであることから、基本動作モードに適合されていることと、
(g)前記多モード導波路は前記入力導波路と前記出力導波路との間に、4Mb2/λKに等しい光路長であり、式中λは前記多モード導波路内の波長源の放射波長であり、かつKは入力導波路の数を示す光路長を提供することと、
(h)前記デバイスは、相互に前記入力導波路内の放射成分の位相をシフトする位相シフト手段を含んでいることと、
(i)前記入力導波路、多モード導波路および出力導波路の寸法および位置決めは、他の導波路に対して適切な位相を各々が有する前記入力導波路内で対称基本モードとして伝搬する入力放射が結合されて、前記出力導波路上に最大値が集中する単一の信号強度を発生し、かつ前記多モード導波路内の放射経路に沿ったモード分散によって、その基本モードだけを励起するようになっていることとを特徴とする、同じ単一の波長を有する3つ以上の放射入力の強度を組み合わせて単一の出力を提供する光学デバイス。」(以下、「本件発明6」という。)
「【請求項7】反射手段によって定められたレーザ空洞と前記空洞内にレーザ放射を導く導波手段とを組み込んだレーザであって、
(a)前記導波手段は、第1の結合導波路をレーザ導波路のセットに接続しかつ前記第1の結合導波路から第1の多モード導波路に入力された放射強度を各々のレーザ導波路入力された成分に分割するように適合された第1の多モード導波路を含んでいることと、
(b)前記導波手段はまた前記レーザ導波路のセットを第2の結合導波路に接続しかつ前記リレー導波路から出てくる放射を前記放射が前記第2の結合導波路に入るように再分割するように適合された第2の多モード導波路も含んでいることと、
(c)前記第1および第2の多モード導波路は、同じ幅2bを有し、かつそれぞれ前記第1の結合導波路と前記レーザ導波路との間および前記レーザ導波路と前記第2の結合導波路との間に光路を提供し、これらの光路長の合計は2b2/λに等しく、式中λは前記多モード導波路内のレーザ放射波長であることと、
(d)前記レーザ導波路はレーザ励起手段を組み込んでいることと、
(e)前記第1および第2の結合導波路ならびに前記レーザ導波路は、それらが前記基本モードだけの伝搬を提供するように構成されるか、または動作中にそれらの入力された励起が放射の基本モードだけをそこに伝搬させるようなものであることから、基本モード動作に適合されていることと、
(f)前記第1の結合導波路、前記第1の多モード導波路、および前記レーザ導波路の相対寸法および相対位置決めは、前記第1の結合導波路の同位相の対称基本モードとして伝搬する放射が前記第1の多モード導波路の対称モードだけを励起し、かつ前記第1の多モード導波路内でそのように励起されたモードが、前記第1の多モード導波路内の放射経路に沿ったモード分散によって、各々のレーザ導波路の基本モードだけを励起するようになっていることと、
(g)前記レーザ導波路、前記第2の多モード導波路、および前記第2の結合導波路の相対寸法および相対位置決めは、前記レーザ導波路内を伝搬する放射が組み合わされてそれぞれの第2の結合導波路上に最大値が集中する放射強度を発生し、かつ前記第2の多モード導波路内の放射経路に沿ったモード分散によって、それらの基本モードだけを励起するようになっていることとを特徴とする、反射手段によって定められたレーザ空洞と前記空洞内にレーザ放射を導く導波手段とを組み込んだレーザ。」(以下、「本件発明7」という。)
「【請求項8】単一の波長源からの放射を複数の出力導波路間で分割する光学デバイスであって、
(a)前記デバイスは入力導波路を前記出力導波路に接続する多モード導波路を組み込み、
(b)前記入力導波路は前記多モード導波路の横断面の中心に接続され、かつ前記波長源からの放射を前記多モード導波路にリレーするように適合され、かつ
(c)前記出力導波路は、前記多モード導波路の横断面上に離間して配置された位置で前記多モード導波路に接続された光学デバイスにおいて、
(d)前記多モード導波路は、放射経路の長手方向に連続して配置された幅の異なる複数の区分を有することと、
(e)前記入力導波路および前記出力導波路は、それらが前記基本モードだけの伝搬を提供するように構成されるか、または動作中にそれぞれ前記波長源からおよび前記多モード導波路からの入力された励起が、前記放射の基本モードだけをそこに伝搬させるようなものであることから、基本モード動作に適合されていることと、
(f)各々の多モード導波路の区分は、2b2/λに等しい光路長をそこを通過する放射に提供し、λは前記波長源の放射波長であり、かつ2bは各々の場合のそれぞれの導波路の区分の幅であることと、
(g)前記入力導波路、前記多モード導波路、および前記出力導波路の相対寸法および相対位置決めは、前記入力導波路の同位相の対称基本モードとして伝搬する放射が前記第1の多モード導波路の区分の対称モードだけを励起し、かつ前記入力導波路からの多モード導波路の励起は、前記多モード導波路内の放射経路に沿ったモード分散によって、各々の出力導波路の基本モードだけを励起するようになっていることとを特徴とする、単一の波長源からの放射を複数の出力導波路間で分割する光学デバイス。」(以下、「本件発明8」という。)

3.3 甲号証の記載事項
甲第1号証には、次の(a)〜(g)の事項が記載されている。
(a)「Abstract- We employ the three-dimensional split-step fast Fourier transform beam propagation method to demonstrate that losses associated with a strongly-guiding semiconductor rib waveguide Y-junction can be substantially reduced by adding an optimized length of an initial straight broad waveguide segment.」(404頁左欄1〜5行)
(b)「We find that for an optimized value of z0, the losses are much lower than those of conventional Y-junctions [3].」(404頁左欄27〜28行)
(c)「Furthermore, the input waveguide is single mode and can be easily coupled to a rib waveguide laser.」(404頁左欄33行〜同頁右欄2行)
(d)「We now apply the beam propagation method to a Y-junction composed of strongly guiding 0.8μm high InGaAsP rib waveguides etched into a 1.0μm thick epilayer with refractive index n1 = 3.295 corresponding to a band gap wavelength of 1.02μm. The InP cladding layer refractive index is set to n2 = 3.21 at our light wavelength of λ = 1.3μm. The profile of the Y-junction, Fig.1, contains three segments [11]. The first of these is a straight single mode waveguide of width w. In the second section, the width is increased to w0 over a transmission length z0. The arms of the subsequent Y-branch are centered along two S-bends centered at ±x(z) with x(z) = w/2 + hz/L - hsin(2πz/L)/2π where h is the net lateral displacement of one of the waveguide branches, L is the junction length, and z is the longitudinal distance measured from the end of the wide waveguide. The width of each waveguide branch is kept constant in the direction normal to the curve x(z) with the outer edge situated at a distance w/2 from x(z) in the direction of the outward normal. The inner edge of the waveguide is similarly displaced at a distance - w/2 from x(z) except near the round vertex, cf. Fig.1, ・・・ Previous two-dimensional beam propagation studies of weakly guiding junctions with similar geometries have established that for laterally symmetric input excitations and refractive index profiles, the overall loss is minimized at values of z0 for which the two lowest-order propagating symmetric modes of the wide section interfere destructively in the vertex region [11].」(404頁右欄31行〜405頁左欄23行)
(e)「The Y-junction geometrical parameters are w = 2.0μm, wo = 4.0μm, L = 100μm, h = 9μm, zi = 15.5μm, and zf = 16.5μm. ・・・ This structure is excited with the fundamental mode of the narrow single-mode rib waveguide. Fig.2 shows a plot of the transmitted fraction of the incident power T remaining in the local normal mode at the output as a function of the transition length z0. The transmission varies approximately sinusoidally with a distance between successive extrema of 21μm, in good agreement with the coupling length π/(β2 - β0) ≒ 22.3μm whereβ0 and β2 are the propagation constants of the two lowest-order symmetric modes.」(405頁左欄29行〜同頁右欄1行)
(f)「We now consider the sensitivity of the loss to small independent variations in both the input excitation and the geometrical parameters of the modified Y-junction for an optimum transition length, z0 = 6μm.」(405頁右欄12〜16行)
(g)「We have analyzed strongly guiding semiconductor rib waveguide Y-junctions formed from an initial wide straight waveguide segment followed by a Y-branch with a rounded vertex with the split-step fast Fourier transform algorithm. As expected, the transmission is a periodic function of the wide waveguide section length as a result of interference between its two lowest symmetric modes.」(409頁左欄18〜24行)
甲第2号証には、次の(h)〜(k)の事項が記載されている。
(h)「The present invention is concerned with an imaging system for the self-imaging of objects, using optical waveguides comprising reflecting boundary surfaces, and satisfying the imaging condition Lλ = 4hNμW2eq, wherein L is the axial distance between the object and the self-image, Weg is a typical transverse dimension of the waveguide having an effective refractive index Nμ, and λis the operational wavelength, and h is an integer for single imaging and not an integer for multiple imaging.」(ABSTRACT)
(i)「The wedge shaped film type waveguide123 shown in FIG.10 is the simplest form of a waveguide with locally variable cross section because it possesses plane walls or boundary surfaces124, 125. For this waveguide equation(35) provides that the mean thickness Weq,z is equal to the geometric average of the equivalent film thicknesses at the beginning and end of the waveguide Weq,z = [Weq,z(O)Weq,z(L)]1/2. (36)」(21欄54〜62行、注.アンダーラインの箇所は原文ではアッパーラインとして記載されている。)
(j)「By varying the phase shift through 180°it is possible to switch over the output image from one output window to the other.」(37欄39〜41行)
(k)「FIG.34 shows an example of a waveguide of square cross section consisting of a transparent material (e.g. glass) whose index approximates as far as possible the index of the fibre cores. The thickness and the length L of the waveguide are so selected that the imaging parameter according to equation(1) has the value h = 1/8. The end faces of the waveguide are arranged precisely normal to its axis, and the rear end face SP in FIG.34 is rendered reflecting. In consequence of the reflection at this surface, the guide section used in the reflection mode in the star coupler functions like a guide section of double the length when used in the transmission mode, that is to say with the parameter h = 1/4. Corresponding to this the multiplicity q of the imaging is 4 in both y and the z-direction and therefore the non-reflecting end face contains sixteen windows, which serve at the same time for input and output.」(40欄64行〜41欄12行)
甲第3号証には、次の(l)の事項が記載されている。
(l)「入射光は交差型カプラ2の片側の入射端より入り、導波路5、4に分岐される。両電極間に基板1を通じて電圧を印加すると、導波路4、5の垂直方向にそれぞれ逆の電界がかかり、生じた屈折率差により2本の導波路の伝搬光に位相差をあたえ、それを公差型カプラ3で合流することにより強度変調がかかる。」(3頁左下欄1〜7行)
甲第4号証には、次の(m)の事項が記載されている。
(m)「In this configuration, shown in Fig.1, each laser is uncoupled from its neighbors along a part of the total resonator length, but all the lasers share a common section of the resonator in the region near the mirrors. Light from the uncoupled (waveguide) section of the laser propagates in the common resonator section where it diffracts. Upon reflection from the resonator mirror, some of the light is reflected back into the waveguide section, as is the case in any laser. However, fractions of this field are also reflected back into the adjacent lasers, thus constituting the dominant coupling mechanism.」(554頁左欄21〜31行)

3.4 対比・判断
本件発明1について
本件発明1と甲第1号証に記載された発明とを対比する。
(1)甲第1号証に記載された「straight single mode waveguide」が、本件発明1の「第1の結合導波路」に相当する。また、同甲号証に「Furthermore, the input waveguide is single mode and can be easily coupled to a rib waveguide laser.」(上記(c))と記載されていることからみて、上記「straight single mode waveguide」は、放射源と光結合されるものであるといえ、またシングルモードの導波路であるから、この放射源によって励起されるのは基本モードだけである。
(2)甲第1号証に「the two lowest-order propagating symmetric modes of the wide section interfere destructively in the vertex region [11].」」(上記(d))と記載されていることから、同甲号証のFig.1に示されたY-junctionでは、幅がwoである導波路部分とそれに続くvertex region(Fig.1においてziで示された部位)までの導波路部分とから、0次と2次の対称モードを伝搬する多モード導波路が構成されているとみることができる。また、多モード導波路を伝搬する0次と2次の対称モードは、この多モード導波路の入力導波路となるシングルモードの導波路(straight single mode waveguide)における対称な基本モードが結合して生じたものであるから、上記多モード導波路では、上記シングルモードの導波路での対称基本モードにより対称モードだけが励起される。(このとき対称モードと非対称モードとの間に結合が起こらないことは、当業者にとって明らかである。)
(3)甲第1号証のFig.1に示されたY-junctionにおける多モード導波路に続く2つの「waveguide branch」が、本件発明1の「第2の結合導波路」に相当する。
(4)甲第1号証のFig.1に示されたY-junctionは、導波経路全体にわたってコアとクラッドがそれぞれ同じ材料であるから、waveguide branchでのコアとクラッドの屈折率は、straight single mode waveguideでのそれらと同じであり、また両導波路の幅も同じwであることから、規格化周波数も両者同じになる。このことから、waveguide branchは、straight single mode waveguideと同様に、シングルモードの導波路であり、そこで励起されるのは基本モードだけである。(導波路でのある波長光の伝搬がシングルモードか多モードかは、規格化周波数によって決まり、導波路が伝搬方向に対して傾斜していることやそれが曲がっていることとは、直接関係がない。)
(5)甲第1号証には、「the two lowest-order propagating symmetric modes of the wide section interfere destructively in the vertex region [11].」」(上記(d))と記載されており、また同甲号証のFig.1に示されたY-junctionでは、多モード導波路を伝搬してきた光が、シングルモードの導波路である二つのwaveguide branchに分岐されて出力されることからみて、このY-junctionも、本件発明1と同様に、「多モード導波路内の放射経路に沿ったモード分散によって、前記第2の結合導波路(waveguide branch)の各々の基本モードをだけ励起するようになっている」といえる。
上記(1)〜(5)からみると、甲第1号証に記載の発明は、本件発明1の技術的事項をすべて備えており、本件発明1と甲第1号証に記載の発明との間に実質的な相違点はない。

本件発明2について
本件発明2と甲第1号証に記載された発明とを対比する。
(6)甲第1号証に記載された「straight single mode waveguide」が、本件発明2の「入力導波路」に相当する。また、同甲号証に「Furthermore, the input waveguide is single mode and can be easily coupled to a rib waveguide laser.」(上記(c))と記載されていることからみて、上記「straight single mode waveguide」は、単一の放射源(「a rib waveguide laser」とあるように、放射源となる「rib waveguide laser」の冠詞が「a」なので、単一の放射源であることが読み取れる。)と光結合されるものであるといえ、またシングルモードの導波路であるから、この放射源によって励起されるのは基本モードだけである。
(7)甲第1号証に「the two lowest-order propagating symmetric modes of the wide section interfere destructively in the vertex region [11].」」(上記(d))と記載されていることから、同甲号証のFig.1に示されたY-junctionでは、幅がwoである導波路部分とそれに続くvertex region(Fig.1においてziで示された部位)までの導波路部分とから、0次と2次の対称モードを伝搬する多モード導波路が構成されているとみることができる。また、多モード導波路を伝搬する0次と2次の対称モードは、この多モード導波路の入力導波路となるシングルモードの導波路(straight single mode waveguide)における対称な基本モードが結合して生じたものであるから、上記多モード導波路では、上記シングルモードの導波路での対称基本モードにより対称モードだけが励起される。(このとき対称モードと非対称モードとの間に結合が起こらないことは、当業者にとって明らかである。)
(8)甲第1号証のFig.1に示されたY-junctionにおける多モード導波路に続く2つの「waveguide branch」が、本件発明2の「出力導波路」に相当する。
(9)甲第1号証のFig.1に示されたY-junctionは、導波経路全体にわたってコアとクラッドがそれぞれ同じ材料であるから、waveguide branchでのコアとクラッドの屈折率は、straight single mode waveguideでのそれらと同じであり、また両導波路の幅も同じwであることから、規格化周波数も両者同じになる。このことから、waveguide branchは、straight single mode waveguideと同様に、シングルモードの導波路であり、そこで励起されるのは基本モードだけである。(導波路でのある波長光の伝搬がシングルモードか多モードかは、規格化周波数によって決まり、導波路が伝搬方向に対して傾斜していることやそれが曲がっていることとは、直接関係がない。)
(10)甲第1号証には、「the two lowest-order propagating symmetric modes of the wide section interfere destructively in the vertex region [11].」」(上記(d))と記載されており、また同甲号証のFig.1に示されたY-junctionでは、多モード導波路を伝搬してきた光が、シングルモードの導波路である二つのwaveguide branchに分岐されて出力されることからみて、このY-junctionも、本件発明2と同様に、「多モード導波路内の放射経路に沿ったモード分散によって、各々の出力導波路(waveguide branch)の基本モードだけを励起するようになっている」といえる。
(11)甲第1号証には、「The transmission varies approximately sinusoidally with a distance between successive extrema of 21μm, in good agreement with the coupling length π/(β2 - β0) ≒ 22.3μm whereβ0 and β2 are the propagation constants of the two lowest-order symmetric modes.」(上記(e))とあるように、出力導波路(waveguide branch)への出力が、多モード導波路の長さに対してπ/(β2-β0)毎に極値となるように周期的に変化することが記載されている。そして、ここでいう2次と0次の位相定数β2とβ0は、多モード導波路の幅と高さをそれぞれ2b及び2aとすると、それぞれβ2=2π/λ・[1-1/2・{(λ/4a)2-(3λ/4b)2}]及びβ0=2π/λ・[1-1/2・{(λ/4a)2-(λ/4b)2}]とあらわされるから(Katherine D. Laakmann and William H. Steier,“Waveguides: characteristic modes of hollow rectangular dielectric waveguides”,Applied Optics,1976-5,Vol.15,No.5,p.1334-1340を参照)、これらをπ/(β2-β0)に代入すると、π/(β2-β0)=2b2/λとなる。つまり、甲第1号証のFig.1に示されたY-junctionは、出力導波路(waveguide branch)への出力が、多モード導波路の長さに対して2b2/λ毎に極値となるように周期的に変化するものである。
また、甲第1号証に記載された具体的な数値から、2b2/λを求めると、b = w0 = 4.0 ÷ 2μm、(コアの屈折率が3.295、通信波長が1.3μmなので)λ = 1.3 ÷ 3.295μmであるから、約20μmとなる。これは同甲号証のFig.1に示されたY-junctionの多モード導波路の長さであるz0 + zi = 6μm + 15.5μm = 21.5μmとほぼ一致する。
以上のことから、甲第1号証のFig.1に示されたY-junctionは、多モード導波路の長さが2b2/λとなるものであり、またこのY-junctionでは、出力導波路(waveguide branch)の数K = 2であり、多モード導波路の幅がほぼ一定でありM = 1とみることができるから、多モード導波路の長さが4Mb2/λKを満足するものである。
上記(6)〜(11)からみると、甲第1号証に記載の発明は、本件発明2の技術的事項をすべて備えているから、本件発明2は甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当する。
なお、本件発明2に関し、平成16年5月19日付で通知した取消理由は、特許法第29条第1項第3号に該当するというものではないが、特許権者は、平成16年11月16日付の特許異議意見書において、「刊行物1(注.甲第1号証と同じ)は先に述べたとおり出力導波路の基本モードのみを励起することを開示していず、」(16頁16〜17行)と延べ、容易性の前提として同一性についても検討していることは明らかである。

本件発明5について
本件発明5は、本件発明2に対して、実質的に導波路の構造が同じであるものの、光を分岐する光デバイスである本件発明2に対して、本件発明5は、光を結合する光デバイスである点で、主に本件発明2と相違する。そして、すでに検討したように、本件発明2は甲第1号証に記載の発明と実質的に相違しないから、本件発明5は、上記の点のみで甲第1号証に記載された発明と相違するといえる。
しかし、光はその進行方向を逆転すると完全にもと来た経路を逆に進む性質があり、またこうした光の性質から、光の伝搬する方向を正反対にすると、光分岐器又は光結合器がそれぞれ光結合器又は光分岐器として機能することが技術常識であるから、光の伝搬する方向を正反対にして、甲第1号証に記載された発明を光結合を行う光デバイスとすることにより、本件発明5の技術的事項とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

本件発明3について
本件発明3は、本件発明2の技術的事項をすべて引用してさらに本件請求項3の(a)〜(e)の事項を限定するものであるところ、甲第2、3号証は、本件発明3が前提とする本件発明2の技術的事項を充足するものではないから、甲第2と3号証に記載の発明を組み合わせて、本件発明3の技術的事項とすることが、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

本件発明4について
本件発明4は、本件発明2に対して、主に出力導波路が行列で配列されているような二次元アレイであること、及び多モード導波路が2つの相互に直交した横断方向に多モードであることが、構成事項として付加されたものである。そして、すでに検討したように、甲第1号証に記載の発明は、本件発明2と実質的に相違しないから、本件発明4とは、上記付加された構成事項を備えていない点で相違する。
そこで、この相違点を検討する。
甲第1号証に記載の発明は、Y-junctionつまり一次元に2分岐する光導波路を前提にしたものであるから、単に甲第2号証のFIG.34に二次元アレイの導波路が示されているからといって、そのことがただちにこの両者を結びつける動機付けとはなり得ない。しかも、甲第2号証には、多モード導波路と二次元アレイの導波路とが光結合が、甲第1号証に記載された多モード導波路と出力導波路(waveguide branch)との光結合と同様の原理により行われることについて、何ら記載されていない。
したがって、甲第1と2号証に記載の発明を組み合わせて本件発明4の技術的事項とすることが、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

本件発明6について
本件発明6は、本件発明2に対して、実質的に導波路の構造が同じであるものの、本件発明6が光を結合する光デバイスであり、相互に入力導波路内の放射成分の位相をシフトする位相シフト手段を含んでいるのに対して、本件発明2が光を分岐する光デバイスであり、そのため位相シフト手段を有していない点で、主に相違する。そして、すでに検討したように、本件発明2は甲第1号証に記載の発明と実質的に相違しないから、本件発明6は、上記の点で甲第1号証に記載された発明と相違する。
そこで、この相違点を検討する。
「本件発明5について」のところで検討したように、甲第1号証に記載された発明を、光結合を行う光デバイスとすることは、当業者にとって容易であるといえる。
しかし、その際に入力導波路となるwaveguide branchは、甲第1号証の中では出力導波路であり、仮に甲第3号証の記載事項に倣い、この出力導波路としてのwaveguide branchに位相シフタ手段を設けることが、当業者にとって容易であるとしても、位相シフト手段は、それより下流での伝搬に影響を与えるものであり、それを入力導波路に設けることと出力導波路に設けることとは、多モード導波路での伝搬との関係において技術的な意味が異なるため(位相シフタ手段を出力導波路に設けても多モード導波路での伝搬には影響しない)、waveguide branchが入力導波路となる際にも、そこに位相シフタ手段を設けることが、当業者にとって容易であるということにはならない。仮にそれが容易であるとしても、それはwaveguide branchが入力導波路であるとの前提があってのことであり、この前提自体は、甲第1号証に記載されていないのだから、甲第1及び3号証の記載事項から当業者が容易に想到し得たとすることはできない。(waveguide branchを入力導波路とし、さらにそこに位相シフタ手段を設けることが容易であるというのは、いわゆる「容易の容易」の論理となる。)
したがって、甲第1と3号証に記載の発明を組み合わせて本件発明6の技術的事項とすることが、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

本件発明7について
甲第1号証に記載の発明は、分岐導波路でありこれをレーザに適用することは全く想定されていないから、甲第4号証に、中央にアレイレーザがあり、その前後にアレイレーザの各レーザが結合する共通の幅広導波路を配し、
この幅広導波路の端面を反射面とする共振器を構成したモノリシック集積レーザが記載されているとしても、甲第1と4号証に記載の発明を組み合わせて、本件発明7の技術的事項とすることが、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

本件発明8について
甲第2号証には、自己結像導波路を用いた強度の異なる光の分割が開示されているものの、甲第1号証は、異なる強度に光を分割することを開示するものではないから、この両者を組み合わせる動機付けがなく、甲第1と2号証に記載の発明を組み合わせて、本件発明8の技術的事項とすることが、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

4 むすび
以上のように、本件の請求項1、2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができず、また本件の請求項5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本件の請求項1、2、5に係る発明についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
本件の請求項3、4、6ないし8に係る発明については、特許異議の申立ての理由及び証拠によって特許を取り消すことはできない。また、他に特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
光学デバイス
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(a)多モード導波路と、
(b)前記多モード導波路の横断面の中心において、前記多モード導波路に接続された基本モード動作に適合した第1の結合導波路と、
(c)接続中心が前記多モード導波路の横断面上で互いに離間して配置されるように前記多モード導波路に接続された、各々が基本モード動作に適合した、少なくとも2つの第2の結合導波路と、
(d)少なくとも1つの結合導波路の基本モードだけを励起し、これによって前記多モード導波路の入力開口にわたって一定の位相の前記多モード導波路への入力を提供するように適合した放射源とを備え、
(e)前記結合導波路および前記多モード導波路が同じ組成材料の導波路コアを有し、かつ各々の結合導波路が前記多モード導波路に結合するように、前記多モード導波路コアが前記第1の結合導波路のコアから前記第2の結合導波路のコアまで延在していることと、
(f)前記結合導波路および前記多モード導波路の相対寸法および相対位置決めが、前記第1の結合導波路の同位相の対称基本モードとして伝搬する放射が前記多モード導波路の対称モードだけを励起し、かつ前記多モード導波路内でそのように励起されたモードが、前記多モード導波路内の放射経路に沿ったモード分散によって、前記第2の結合導波路の各々の基本モードだけを励起するようになっていることとを特徴とする光学デバイス。
【請求項2】複数の出力導波路間で単一の波長源からの放射を分割する光学デバイスであって、
(a)前記デバイスは入力導波路に接続された幅2bの入力端部と前記出力導波路に接続された幅2Mbの出力端部とを有する多モード導波路を組み込み、
(b)前記入力導波路は前記多モード導波路の横断面の中心に接続され、かつ前記波長源からの放射を前記多モード導波路にリレーするように適合され、
(c)前記出力導波路は前記多モード導波路に前記多モード導波路の横断面上で離間した位置で接続され、かつ
(d)前記多モード導波路は前記出力導波路間で前記入力導波路から出てくる放射の強度を分割するように適合された光学デバイスにおいて、
(e)前記入力導波路および前記出力導波路は、それらが前記基本モードの伝搬だけを提供するように構成されるか、または動作中はそれぞれ前記波長源からのおよび前記多モード導波路からのそれらの入力励起が、前記放射の基本モードだけをそのなかに伝搬させるようなものであることから、基本動作モードに適合されていることと、
(f)前記多モード導波路は前記入力導波路と前記出力導波路との間に、4Mb2/λKに等しい光路長であり、式中λは前記多モード導波路内の波長源の放射波長でありかつKは出力導波路の数を示す光路長を提供することと、
(g)前記入力導波路、多モード導波路および出力導波路の相対寸法および相対位置決めは、前記入力導波路の同位相の対称基本モードとして伝搬する放射が前記多モード導波路の対称モードだけを励起し、かつ前記多モード導波路内でそのように励起されたモードが、前記多モード導波路内の放射経路に沿ったモード分散によって、各々の出力導波路の基本モードだけを励起するようになっていることとを特徴とする複数の出力導波路間の単一の波長源からの放射を分割する光学デバイス。
【請求項3】(a)前記デバイスはマッハツェンダー光干渉計として適合され、
(b)出力導波路の数Kは2個であり、
(c)前記出力導波路は前記多モード導波路を補助多モード導波路に接続し、かつそこから外側の1対の補助導波路の間にある中央補助導波路に接続し、
(d)他の出力導波路の光学位相に関して、1つの出力導波路の光学位相を変化させる手段が設けられ、かつ
(e)前記補助導波路は、前記出力導波路の同位相の放射が、少なくとも実質的には前記中央補助導波路に固定される強度を発生し、かつ前記出力導波路の相対的逆位相の放射が、前記外側の1対の補助導波路内で実質的に等しい強度を発生するように適合された請求の範囲第2項に記載の光学デバイス。
【請求項4】複数の出力導波路間で単一の波長源からの放射を分割する光学デバイスであって、
(a)前記デバイスは入力導波路に接続された幅2bの入力端と前記出力導波路に接続された幅2Mbの出力端とを有する多モード導波路を組み込み、
(b)前記入力導波路は前記多モード導波路の横断面の中心に接続され、かつ前記波長源からの放射を前記多モード導波路にリレーするように適合され、
(c)前記出力導波路は前記多モード導波路に前記多モード導波路の横断面上で離間した位置で接続され、かつ
(d)前記多モード導波路は前記出力導波路間で前記入力導波路から出てくる放射の強度を分割するように適合された光学デバイスにおいて、
(e)前記入力導波路および前記出力導波路は、それらが前記基本モードの伝搬だけを提供するように構成されるか、または動作中はそれぞれ前記波長源からのおよび前記多モード導波路からのそれらの入力励起が、前記放射の基本モードだけをそのなかに伝搬させるようなものであることから、基本動作モードに適合されていることと、
(f)前記出力導波路は導波路が行列で配列されているような二次元アレイであり、各列は前記多モード導波路の幅寸法内に延在しかつK個の出力導波路を含んでいることと、
(g)前記多モード導波路は2つの相互に直交した横断方向に多モードであり、かつ前記入力導波路と前記出力導波路との間で4Mb2/λKに等しい光路長であり、式中λは前記多モード導波路内の波長源の放射波長である光路長を有していることと、
(h)前記入力導波路、多モード導波路および出力導波路の相対寸法および相対位置決めは、前記入力導波路の同位相の対称基本モードとして伝搬する放射が前記多モード導波路の対称モードだけを励起し、かつ前記多モード導波路内でそのように励起されたモードが、前記多モード導波路内の放射経路に沿ったモード分散によって、各々の出力導波路の基本モードだけを励起するようになっていることとを特徴とする複数の出力導波路間の単一の波長源からの放射を分割する光学デバイス。
【請求項5】同じ単一の波長を有する2つの放射入力の強度を組み合わせて単一の出力を提供する光学デバイスであって、
(a)前記デバイスは入力導波路に接続された幅2bの入力端と出力導波路に接続された幅2Mbの出力端とを有する多モード導波路を組み込み、
(b)前記入力導波路は前記多モード導波路に前記多モード導波路の横断面上で離間した位置で接続され、かつ各々が1つまたは複数の波長源から前記多モード導波路に入力放射をリレーするように適合され、
(c)前記多モード導波路は前記入力導波路から出てくる放射の強度を前記出力導波路にリレーするように適合された光学デバイスにおいて、
(d)前記出力導波路は前記多モード導波路の横断面の中心に接続されていることと、
(e)前記多モード導波路は、前記入力導波路から出てくる放射の強度を前記出力導波路内において組み合わせるように適合されていることと、
(f)前記入力導波路および前記出力導波路は、それらが前記基本モードの伝搬だけを提供するように構成されるか、または動作中はそれぞれ前記波長源からのおよび前記多モード導波路からのそれらの入力励起が、前記放射の基本モードだけをそのなかに伝搬させるようなものであることから、基本動作モードに適合されていることと、
(g)前記多モード導波路は前記入力導波路と前記出力導波路との間に、2Mb2/λに等しい光路長であり、式中λは前記多モード導波路内の入力放射長である光路長を提供することと、
(h)前記入力導波路、多モード導波路および出力導波路の相対寸法および相対位置決めは、相互に同位相である前記入力導波路内で対称基本モードとして伝搬する入力放射が結合されて、前記出力導波路上に最大値が集中する単一の信号強度を発生しかつ前記多モード導波路内の放射経路に沿ったモード分散によって、その基本モードだけを励起するようになっていることとを特徴とする、同じ単一の波長を有する2つの放射入力の強度を組み合わせて単一の出力を提供する光学デバイス。
【請求項6】同じ単一の波長を有する3つ以上の放射入力の強度を組み合わせて単一の出力を提供する光学デバイスであって、
(a)前記デバイスは3つ以上の入力導波路に接続された幅2bの入力端と出力導波路に接続された幅2Mbの出力端とを有する多モード導波路を組み込み、
(b)前記入力導波路は前記多モード導波路に前記多モード導波路の横断面上で離間した位置で接続され、かつ各々が1つまたは複数の波長源から前記多モード導波路に入力放射をリレーするように適合され、
(c)前記多モード導波路は前記入力導波路から出てくる放射の強度を前記出力導波路にリレーするように適合されたデバイスにおいて、
(d)前記出力導波路は前記多モード導波路の横断面の中心に接続されていることと、
(e)前記多モード導波路は、前記入力導波路から出てくる放射の強度を前記出力導波路内において組み合わせるように適合されていることと、
(f)前記入力導波路および前記出力導波路は、それらが前記基本モードの伝搬だけを提供するように構成されるか、または動作中はそれぞれ前記波長源からのおよび前記多モード導波路からのそれらの入力励起が、前記放射の基本モードだけをそのなかに伝搬させるようなものであることから、基本動作モードに適合されていることと、
(g)前記多モード導波路は前記入力導波路と前記出力導波路との間に、4Mb2/λKに等しい光路長であり、式中λは前記多モード導波路内の波長源の放射波長であり、かつKは入力導波路の数を示す光路長を提供することと、
(h)前記デバイスは、相互に前記入力導波路内の放射成分の位相をシフトする位相シフト手段を含んでいることと、
(i)前記入力導波路、多モード導波路および出力導波路の寸法および位置決めは、他の導波路に対して適切な位相を各々が有する前記入力導波路内で対称基本モードとして伝搬する入力放射が結合されて、前記出力導波路上に最大値が集中する単一の信号強度を発生し、かつ前記多モード導波路内の放射経路に沿ったモード分散によって、その基本モードだけを励起するようになっていることとを特徴とする、同じ単一の波長を有する3つ以上の放射入力の強度を組み合わせて単一の出力を提供する光学デバイス。
【請求項7】反射手段によって定められたレーザ空洞と前記空洞内にレーザ放射を導く導波手段とを組み込んだレーザであって、
(a)前記導波手段は、第1の結合導波路をレーザ導波路のセットに接続しかつ前記第1の結合導波路から第1の多モード導波路に入力された放射強度を各々のレーザ導波路入力された成分に分割するように適合された第1の多モード導波路を含んでいることと、
(b)前記導波手段はまた前記レーザ導波路のセットを第2の結合導波路に接続しかつ前記リレー導波路から出てくる放射を前記放射が前記第2の結合導波路に入るように再分割するように適合された第2の多モード導波路も含んでいることと、
(c)前記第1および第2の多モード導波路は、同じ幅2bを有し、かつそれぞれ前記第1の結合導波路と前記レーザ導波路との間および前記レーザ導波路と前記第2の結合導波路との間に光路を提供し、これらの光路長の合計は2b2/λに等しく、式中λは前記多モード導波路内のレーザ放射波長であることと、
(d)前記レーザ導波路はレーザ励起手段を組み込んでいることと、
(e)前記第1および第2の結合導波路ならびに前記レーザ導波路は、それらが前記基本モードだけの伝搬を提供するように構成されるか、または動作中にそれらの入力された励起が放射の基本モードだけをそこに伝搬させるようなものであることから、基本モード動作に適合されていることと、
(f)前記第1の結合導波路、前記第1の多モード導波路、および前記レーザ導波路の相対寸法および相対位置決めは、前記第1の結合導波路の同位相の対称基本モードとして伝搬する放射が前記第1の多モード導波路の対称モードだけを励起し、かつ前記第1の多モード導波路内でそのように励起されたモードが、前記第1の多モード導波路内の放射経路に沿ったモード分散によって、各々のレーザ導波路の基本モードだけを励起するようになっていることと、
(g)前記レーザ導波路、前記第2の多モード導波路、および前記第2の結合導波路の相対寸法および相対位置決めは、前記レーザ導波路内を伝搬する放射が組み合わされてそれぞれの第2の結合導波路上に最大値が集中する放射強度を発生し、かつ前記第2の多モード導波路内の放射経路に沿ったモード分散によって、それらの基本モードだけを励起するようになっていることとを特徴とする、反射手段によって定められたレーザ空洞と前記空洞内にレーザ放射を導く導波手段とを組み込んだレーザ。
【請求項8】単一の波長源からの放射を複数の出力導波路間で分割する光学デバイスであって、
(a)前記デバイスは入力導波路を前記出力導波路に接続する多モード導波路を組み込み、
(b)前記入力導波路は前記多モード導波路の横断面の中心に接続され、かつ前記波長源からの放射を前記多モード導波路にリレーするように適合され、かつ
(c)前記出力導波路は、前記多モード導波路の横断面上に離間して配置された位置で前記多モード導波路に接続された光学デバイスにおいて、
(d)前記多モード導波路は、放射経路の長手方向に連続して配置された幅の異なる複数の区分を有することと、
(e)前記入力導波路および前記出力導波路は、それらが前記基本モードだけの伝搬を提供するように構成されるか、または動作中にそれぞれ前記波長源からおよび前記多モード導波路からの入力された励起が、前記放射の基本モードだけをそこに伝搬させるようなものであることから、基本モード動作に適合されていることと、
(f)各々の多モード導波路の区分は、2b2/λに等しい光路長をそこを通過する放射に提供し、λは前記波長源の放射波長であり、かつ2bは各々の場合のそれぞれの導波路の区分の幅であることと、
(g)前記入力導波路、前記多モード導波路、および前記出力導波路の相対寸法および相対位置決めは、前記入力導波路の同位相の対称基本モードとして伝搬する放射が前記第1の多モード導波路の区分の対称モードだけを励起し、かつ前記入力導波路からの多モード導波路の励起は、前記多モード導波路内の放射経路に沿ったモード分散によって、各々の出力導波路の基本モードだけを励起するようになっていることとを特徴とする、単一の波長源からの放射を複数の出力導波路間で分割する光学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は光学デバイスに係わる。更に特に、本発明は、ビーム分割機能及び/又はビーム再結合機能を果たすためのデバイスに係わり、更に、そうした機能を使用するデバイスに係わる。
【0002】
【従来の技術】
集積光学系の新たに出現しつつある分野が、電子回路で使用される構成部品と類似した幾つかの構成部品をもたらしている。しかし、光信号分割機能及び光信号再結合機能は、効率的で安価で且つコンパクトな形態で実現されることが困難である。特許協力条約出願No PCT/GB 88/00124(1988年9月22日付でWO88/07179として公開)は、光散乱測定用のデバイスに係わる。これは、ヘテロダイン光うなりシステムにおける光ビーム分割(ビームスプリッティング)と光ビーム再結合とのための、光ファイバ方向性結合器の使用を開示する。その構成は多重同時測定では複雑になる可能性があり、この多重同時測定は光ファイバ結合器のカスケード構成を必要とする。この構成は、安価でもなく、光の強さの伝送に関して効率的でもない。
【0003】
1989年6月1日付でWO89/04988として公開された特許協力条約出願No PCT/GB 88/00928に開示される種類の電気光学ビーム誘導デバイス(electro-optic beamsteering device)において、多方向ビーム分割の必要性が特に生じる。このデバイスは、積層半導体構造物内に形成された電気光学材料の並列導波路アレイから成る。これらの導波路は、印加電気バイアスによって制御される光路長を有する。そのアレイは、適切な印加バイアス条件によって誘導可能な1つの共通出力ビームを与える。この種のデバイスは、単一の光源からの光が、各々の導波路への入力のために複数の(例えば10つの)等しい強さのビームに分割されることを要求する。このことは、積層半導体構造物に適合可能な多方向ビーム分割器の使用を必然的に含む。そうしたビーム分割器は、現時点では入手不可能である。
【0004】
米国特許第3,832,029号において、及び、“Image Formation Using Self-imaging Techniques(自己結像技術を使用する画像形成)”,Journal of the Optical Society of America,vol63,No4,April1973,page416-419において、O Bryngdahlは、対称なオブジェクトの自己画像(self-image)を生じさせるための、正方形横断面の光トンネル(optical tunnel)の使用を説明する。nが整数であり、dがこのトンネルの幅であり、且つλがこのトンネル内の光の波長である場合に、このトンネルは長さL=n(2d2/λ)である。両方の引例では、上記の長さ以外の長さにおいて多重自己画像が得られることが可能であるということが示唆される。Vとvが共通因子を持たない整数である場合に、これらの長さはL=(n+V/v)2d2/λである。しかし、上記の引例は両方とも、必要とされる数の自己画像を得るためには、どんな長さのトンネルが必要であるかを開示していない。
【0005】
しかし、ビーム分割機能とビーム再結合機能と干渉計機能とを与えるために、その自己結像作用において長方形導波路を使用することが知られている。これは、A SimonとR Ulrichによって、Applied Physics Letters,vol31,No2,July15,1977,pp77-79において開示される。このデバイスは、長方形の横断面を持つ導波路壁として配置される4つの光学研磨ガラスブロックを有する。その導波路のアスペクト比(幅:高さ)Wy/Wxは√2である。その導波路は、全反射(鏡)側壁を有し、空心になっている。その導波路は、(コア屈折率が1である場合に)長さL=4Wx2/λである。その導波路は、その一方の端部において、照明された試験物体からの光を偏心位置に受け、その後の出力のために、その導波路の他方の端部に2つの偏心画像を生じさせる。この偏心した入力は、出力画像の重なり合いを防止する。これはビーム分割器機能である。ビーム結合器機能は、その導波路の一方の端部における2つの偏心画像が、その他方の端部における2つの偏心出力画像に変換されることから成る。その2つの入力画像が同位相であるならば、その2つの出力画像の一方は暗い。その2つの入力画像が互いに位相が異なっているならば、その出力画像の両方が非ゼロの光の強さを有するだろう。ビーム結合器は、2つの入力ポートと2つの出力ポートを有するビーム分割器に相当する。その干渉計機能は、2つの導波路、即ち、ビーム分割器とビーム結合器とを直列に並べることによって生じさせられる。上記のデバイスは、英国特許第1 525 492号においてR Ulrichによっても説明されており、この特許文献は、他の幾つかのデバイスも説明している。これらのデバイスは、拡大又は縮小を得るための様々な横断面の多モード導波路を使用するデバイスを含む。
【0006】
容認可能な性能を得るために、R Ulrichによって説明されるデバイスで使用される導波路は、約50つのモードをサポートすることが必要とされる。このことは、その導波路が、高次数モードの閉じ込めを生じさせるために、高いコア屈折率を有することを必要とする。液体充填された導波路が使用されてもよい。しかし、こうした液体充填導波路は物理的に取扱い難い構造である。これらの液体充填導波路は、半導体リソグラフィーのような積層技術に対して特に適合可能なコンパクトな構造を生じさせるという問題を解決しない。
【0007】
光ビームを分割し再結合することに関する問題点は、the Proceedings of the European Conference on Optical Communications Gothenberg,Sweden1989においてA Fielding他によって提出されている。これらの著者は、ツリー型光結合器(tree optical coupler)とスター型光結合器(star optical coupler)とが光通信において重要な構成要素であるということを指摘する。1つ以上の入力光ファイバからの光出力を受けるために、及び、幾つかの出力光ファイバの間に光を分割するために、環状導波路が使用された。入力ファイバと出力ファイバは、この環状導波路の環状空間の周囲に配置された。入力ファイバと出力ファイバとは、各入力ファイバが、各出力ファイバ開口を中心とした光点パターンを発生させるように配置された。このことは、入力光の強さを出力ファイバ間に分配することを可能にした。しかし、そうした環状導波路システムは、そのアラインメントが時間を要する調整を必要とするが故に、製造が困難である。この場合にも同様に、その構造は、半導体加工で使用されるような積層技術に適合できない。
【0008】
“Passive Paths for Networks(ネットワークのための受動経路)”Physics World,September1991,pp50-54において、T IkegamiとM Kawachiは、受動的なビーム分割及び再結合デバイスの現在の技術水準について論評している。彼らは、ビーム分割器とプリズムのような大型デバイスについて簡潔に論じる。彼らは、溶融ファイバ結合器(fused fibre coupler)のようなファイバデバイスに移る。しかし、彼らは、そうした大型デバイスとファイバデバイスとは、低い生産性と、安定性の欠如と、光学回路の集積化への適合性の低さという欠点を有すると述べている。更に、彼らは、様々な形状のプレーナ形導波路デバイスを論じる。これらのプレーナ形導波路デバイスは、1組のY接合点(Y-junction)から成るビーム分割デバイスを含むが、しかし、同様に、これも低効率という欠点を有する。彼らは、8つの入力導波路と、12つのダミー入力導波路と、1つの平板導波路と、8つの出力導波路と、12つのダミー出力導波路から成る、8×8スター型結合器も説明する。このスター型結合器は、8つの入力を受け入れ、これらの入力を混合し、これらの入力を8つの出力導波路に均等に配分する。更に、スター型結合器は、1つの入力を受け入れて、その入力を8つの出力導波路の間に均等に配分することも可能である。ダミー導波路が、入力導波路と出力導波路との両側に配置される。ダミー導波路は、中心に位置した入力導波路及び出力導波路と同一の条件を周辺の入力導波路及び出力導波路に与えるために、必要である。このデバイスは、5mm×26mmのSi基板上に作られる。このデバイスは、8dBの固有結合損失に加えて、1.42dBの平均過剰損失を示す。0.49dBの標準偏差を示す結合の均一性は、適切であると主張されている。
【0009】
レーザのような能動光学デバイスにおいて、複合的な光ビーム再結合/分割構造を使用することも知られている。英国特許第1 525 492号でR Ulrichは、幾つかの類似したレーザ共振器デバイスを説明している。そうしたデバイスの1つは、その両端に平面鏡を有する長さL=4Wx2/λの導波路から成る。その空洞のモード制御は、互いを映し出すように配置された複数の小型の平面鏡を使用することによって改善されることが可能である。これらの鏡の大きさは、スプリアス光を反射せずに、被形成画像を反射するのに十分な大きさである。説明された別の代替案は、その一方の端部に1つの平面鏡を有し、且つその他方の端部に2つの小型の開口付き平面鏡を有する、長さL/2の導波路を含む。これらの開口付き鏡は、互いを映し出すように配置される。これらのデバイスは、前述のUlrichのデバイスと同じ欠点を有する。
【0010】
Appl.Phys.Lett.55(19),6th November1989,pp1949-51において、M Jansen他は、周期的アレイの形のモノリシック集積レーザダイオード(monolithically integrated laser diode)と自己結像Talbot空洞とを組み込んだレーザデバイスを説明する。このデバイスは、横断方向に配置され且つ周期的に間隔が置かれた光源アレイが、量zt(ztはTalbot長さである)の倍数である距離において周期的に再結像する、Talbot効果を使用する。これは、アレイの周期性の平方に比例する。アレイ光源の出力が同位相であるということ、又は、隣り合う出力が互いに逆相であるということが、必要条件である。Jansen他は、Zt/2の長さのTalbot空洞に光学結合され且つ劈開端面を有する、リニア並列ダイオードアレイを開示する。この端面における反射は、Talbot空洞の二重通過と光学長さZtとを生じさせる。このことは、ダイオード出力が、Talbot空洞内での混合後のフィードバックによって、そのダイオード出力自体の上に再結像されることを可能にする。更に、Talbot空洞は、動作基本モードに最も近い高次数モードを濾波して排除する。空洞フィードバックは、そのアレイ要素を強力に結合させ、単一縦モード動作を生じさせる。このフィードバックが、Talbot効果が必要とするアレイ要素間の位相関係をも与えると考えられる。しかし、この構造は、フィードバックデバイスであるが故に、単経路多方向ビーム分割(single pass multiway beamsplitting)には不適切である。更に、レーザ導波路に加えてTalbot空洞内においても電流が必要とされる。この電流は、空洞の透過性のために必要とされる。従って、このデバイスは受動デバイスではなく、受動的なビーム分割及び結合の用途には不適切である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ビーム分割機能及び/又はビーム再結合機能のための別の形態の光学デバイスを提供することが、本発明の目的である。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、多モード導波路を含む光学デバイスを提供し、この光学デバイスは、
(a)基本モード動作に適合した第1の結合導波路が、前記多モード導波路の横断面の中心において、前記多モード導波路に接続(port)され、
(b)各々に基本モード動作に適合した少なくとも2つの第2の結合導波路が、接続中心(port centres)が前記多モード導波路の横断面上に互いに間隔を置いて前記多モード導波路に接続され、
(c)前記結合導波路及び前記多モード導波路の相対寸法と相対位置決めとが、前記第1の結合導波路の同位相の対称基本モードとして伝搬する放射が前記多モード導波路の対称モードだけを励起するような相対寸法と相対位置決めとであり、前記多モード導波路内でそのように励起されたモードが、前記多モード導波路内の放射経路に沿ったモード分散によって、前記第2の結合導波路各々の基本モードを励起する。
【0013】
本発明は、第1の結合導波路から第2の結合導波路の各々に光信号が伝送可能であるという利点を有する。適切な整相(phasing)によって、第2の結合導波路内の光が、第1の結合導波路内で再結合されることが可能である。従って、本発明は、ビーム分割機能とビーム再結合機能が可能である。更に、第1の結合導波路と第2の結合導波路の基本モード動作と、これらの導波路の間のモードのマッピング(mapping)とによって、そのデバイスを通しての光伝送は、類似の従来技術のデバイスよりも効率的である。試験は、1-対-2方向ビーム分離器において75%以上の効率が得られることが可能であるということを示す。Fielding他は14.3dBの挿入損失を示し、この挿入損失は4%未満の効率に相当する。更に、多モード導波路における対称モード励起に対する制限によって、この導波路は、例えばUlrichの従来技術の導波路よりもはるかにコンパクトである。(同じ導波路媒質を有するデバイスに比較して)係数4の長さ縮小が得られることか可能である。更に、本発明は、それが積層構造技術の形で実現可能であるという別の利点を有する。これらの構造は、CO2レーザ放射のための中空アルミナ導波路と、近赤外放射のための半導体材料で形成されたリッジ形導波路(ridge waveguide)を含む。
【0014】
各々の結合導波路は、その導波路がより高次数のモードをサポートしないことによって、基本モード動作に適合させられることが可能である。或いは、各々の結合導波路は、より高次数のモードを維持することも可能である。この場合には、各々の導波路は、その導波路の基本モードだけを励起する形で入力放射を受け取ることによって、基本モード動作に適合させられる。
【0015】
本発明は透過デバイスであってもよく、その多モード導波路は縦方向の光路を有する。この場合には、第1と第2の結合導波路が、多モード導波路の互いに反対側の縦方向端部領域の各々に接続される。或いは、本発明は反射デバイスであってもよく、この場合には、第1と第2の結合導波路のどちらか一方に放射が入力され、多モード導波路内の反射手段によってその他方に反射される。この反射手段は逆反射であってもよく、この場合には、第1と第2の結合導波路が、多モード導波路の共通の縦方向端部領域に接続される。
【0016】
好ましい実施例では、本発明は長方形横断面の多モード導波路を使用する。この横断面は一定不変であってよく、又は、その代わりに、縦方向のテーパを有してもよい。その多モード導波路は、1つの横断方向における基本モード動作と、対角線方向の横寸法における多モード動作とに適合させられることが可能である。この場合には、多モード導波路と結合導波路は、概ね共面で平行な中心軸線を有する。しかし、本発明は、平行性と共面性からの僅かな逸脱によって大きく悪影響を受けることはない。本発明は、1-対-N方向ビーム分割器(N=1,2,3,…)として構成されることが可能である。この場合、多モード導波路は長さ4Mb2/Nλであり、この2bはそ多モード寸法における多モード導波路幅であり、Mは「その第2の端部領域の幅」:「その第1の端部領域の幅」の比率であり、λは多モード導波路内の光学動作波長である。多モード導波路の第2の端部領域は、第2の結合導波路の各々に共軸接続されたNつの対等な横断方向区画に概念的に分割される。
【0017】
さて、以下では、本発明がより詳細に理解され得るように、本発明の実施例が、次の添付図面を参照して非限定的な例として説明されるだろう。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1を参照すると、この図には、全体的に参照符号10で示されるビーム分割器の形の本発明の光学デバイスの斜視図が示されている。ビーム分割器10は、連続して配置された3つの層即ちstrata(水平層)を含み、これらの層の中の基板12と導波路層14が実線で示されている。被覆層の位置は点線16で示される。
【0019】
導波路層14は、次のような中空導波路を画定するように(描影法によって示される)その全厚さに亙って溝を付けられている:入力導波路18、中央導波路20、左出力導波路22、右出力導波路24。この中央導波路20は、25のような反射側壁を有する、一定不変の長方形断面の導波路である。この中央導波路20の高さは2aであり、幅は2bであり、長さLであり、これらの寸法の各々は、参照符号28で示されるx、y、zデカルト座標の各々に平行である。これらの中で、xは垂直であり、yとzは水平である。パラメタa、b、Lは、一般性を維持するように使用され、その具体的な値は後述される。しかし、この例では、b>2aである。
【0020】
入力導波路18と出力導波路22、24とは、辺2aの正方形の断面を有する。入力導波路18と中央導波路20とは、z方向に延在する共通の中心縦軸線30を共有する。出力導波路18、22は各々に、軸線30に対して平行であり且つyz平面内において軸線30の両側にずれている軸32、34を有する。入力及び中央及び出力導波路18〜24の各々は、2つの水平壁と2つの垂直壁とを有する。
【0021】
さて、上記の諸部分が同じ参照符号で示されている図2及び図3も参照すると、これらの図には、各々に矢印36と矢印38との方向で見た場合の、線II-IIと線III-IIIとに沿った断面図が示されている。両方の場合とも、その断面はz軸に対して垂直である。図2は、入力導波路18がそこで中央導波路20の中に合体する入力導波路18の出口開口40を示す。開口40は、中央導波路20への入力ポートとして働く。図2の点線領域42は、導波路層14内に形成された中央導波路20の垂直な入力端壁を示す。中央導波路20の側壁は参照符号25で示される。開口40は、端壁42内に対称に配置され、その中心は、側壁25から距離bを置いて軸線30上にある。
【0022】
図3は、出力導波路22、24の各々の入口開口50、52を示す。開口50、52は、中央導波路20の出力ポートとして働く。これらの開口は、中央導波路20の出力端壁54内に位置する。開口50、52は各々に軸線32、34上に中心を置き、軸線32、34は各々に、各側壁44と中央導波路軸線30とから距離b/2だけ離れて位置させられる。従って、軸線32、34は、互いに距離bだけ離れている。このことは、出力導波路の開口又はポート50、52(及び、軸線32、34上のこれらの開口の中心)を、中央導波路20の断面の各半分部分の中に対称的に配置する。これらの半分部分は、中央軸線30を通る垂直平面によって画定される。従って、軸線32、34上のポートの中心は、中央導波路20の横断面の(空間的意味で)y寸法に沿って周期的に配置される。
【0023】
さて次に、ビーム分割器10の動作が一般的に説明されるが、より詳細な理論的分析は後で示される。入力手段(図示されていない)によって与えられる光ビームが、入力導波路18の中に結合される。そのビームは、2b2/Lに等しい波長λを有する。このビームは、導波路軸線30に平行に方向付けられ、入力導波路の横断面の全体に亙って定位相である。このビームは、両方の横断寸法に、即ち、横断水平寸法と横断垂直寸法において、半波正弦状の強さ分布を有する。従って、このビームは、入力導波路18の基本EHS11モードだけを励起する。当然のことながら、入力導波路18は、異なった入力励起によって、より高次数のモードEHSmn(m及び/又はnは1より大きい)を維持することも可能である。従って、導波路18は、基本モードだけを励起する放射源と共に使用されることによって、基本モード動作に適合させられる。更に、代替案として、基本モードだけを維持する単一モード入力導波路を使用することも可能である。
【0024】
入力導波路18内での基本モード伝搬は、正弦関数の半周期(0〜π)の形の、この導波路に亙っての電界分布を生じさせる。導波路出力開口40では、この電界分布は軸線30を中心としている。この電界分布は、水平横断y方向において多モードデバイスである中央導波路20の対称モードEHSS1n(nが奇数)を励起する。垂直方向、即ちx方向では、中央導波路20は基本モードだけで動作する。入力が(a)共軸であり、(b)基本モードであり、且つ(c)入力導波路開口40の全体に亙って定位相であるが故に、多モード導波路20の非対称モード(nが偶数)は励起されない。軸線30上に中心を置いた開口40における電界分布は、これらのモードの線形和に分解される。これらのモードは、中央導波路20内において軸線30に沿ったz方向に様々な伝搬定数を有する。従って、xy平面に対して平行な平面内の電界分布は、z方向において変動する。この変動の故に、開口40の平面内の電界分布は、中央導波路20の長さに沿って、出力導波路22、24の各々の入口開口50、52における2つの同一の電界分布に、変換されるようになる。これらの分布は、各々の出力導波路軸線32、34を中心とする。出力開口50、52の間と、側壁44と出力開口50、52との間の、端壁54の領域内においては、電界は概ねゼロである。
【0025】
開口50、52における電界分布の各々は、その関連した各々の出力導波路22又は24の基本EHS11モードを励起する。従って、中央導波路20内の放射は出力導波路22、24の中に効率的に結合され、出力導波路22、24は単一モード(基本モード)デバイスとして動作する。入力導波路18に向かっての端壁54からの放射の著しい反射はない。従って、中央導波路内でのモード相互作用を変化させる逆方向伝搬なしに、放射が、入力導波路18から中央導波路18を通って出力導波路22、24の中に単一方向に伝搬する。従って、ビーム分割器10は、入力導波路18に加えられる入力放射ビームを、出力導波路22、24から出て行く2つの出力ビームに分割する。中央導波路20のモード構造が、一方の端部42における単一の基本モードの電界分布を、他方の端部54における2つの別々の類似した分布に変換するが故に、このビーム分割が起こる。これは、より一般的な現象の具体例であり、中央導波路の軸線上の平面波の励起と、次式で与えられる、中央導波路長さLと波長λとの間の上記の関係との故に、これが生じ、
L=2b2/λ (1)
前式中のbは中央導波路の1/2幅である。
【0026】
後述されるように、中央導波路長さLの変化と、中央導波路に対する入力の位置と形状の変化とが、放射分割効果を変化させる。
【0027】
さて、長方形導波路の理論的な伝搬特性が分析されるだろう。その導波路が高さ2aと幅2bを有し、複素誘電定数εを有する均一な誘電材料に境を接しているということが仮定される。更に、(導波路壁を与える)この誘電材料が高い反射性を有し、必要とされる伝搬モードに対して減衰をさほどもたらさないということも仮定される。その導波路は、x軸、y軸、z軸に対して各々に平行である高さ寸法と幅寸法と長さ寸法を有する。この導波路は、種類EHmnの直線偏光モードを既に正規化した。点(x,y,z)におけるmn次のモードEHmnの電界寄与Emn(x,y,z)が、次式のように、Appl.Opt.Vol.15,No.5,pp1334-1340,May1976においてLaakmann他によって計算された。
【0028】
【数1】

前式中で、mは、x軸に沿った電界依存性に関するモード数であり、
nは、y軸に沿った電界依存性に関するモード数であり、
zは、z軸に沿った距離であり、
Ymn=(βmn+iαmn)は、mn次モードの伝搬定数であり、βmnとαmnはmn次モードの位相係数と減衰係数であり、
「sin」の上の、「cos」は、「cos」が奇数モード数(場合に応じてm又はn)に対して適用され、「sin」が偶数モード数に対して適用されることを示している。
【0029】
位相係数βmnは次式で与えられる。
【数2】

【0030】
方程式(3.1)の括弧内の負項が、実際に満たされる1(近軸放射近似値)に比べて小さいならば、二項定理が方程式(3.1)を次式のように書き直すために使用されることが可能であり、
【0031】
【数3】

前式中でa、b、c、m、nは上記で定義された通りであり、λはその導波路内を伝搬する放射の自由空間波長である。
【0032】
方程式(2)は、長方形導波路の全ての直線偏光モードから得ることが可能な電界寄与を提示する。各モードの電界寄与(electrical field contribution)が、その導波路の側壁において、即ち、軸線30上でy=0である場合にy=+b及び-bにおいて、ゼロであるということに基づいて、この方程式が計算される。このことは、中央導波路が反射性の側壁25を有する場合に満たされる。必ずしも全ての中央導波路モードが所与の入力によって励起される必要はない。図1〜3のビーム分割器10の場合には、入力導波路18と中央導波路20の高さは一致させられ、2aに等しい。入力導波路18は、その基本モード即ち最低次数のモードEHS11の形の励起を与える。この励起は長方形導波路20の様々なEHmnモードに結合される。従って、入力EHS11モードは、EHmnモードと各々の複素乗法係数Amnとの線形結合に分解されるようになる。これは次式で表され、
【数4】

【0033】
実質的に、振幅結合係数Amnは、入力導波路開口40における電界を表すフーリエ級数の係数である。EHmnモードは相互に直交し、従って、係数Amnは、次の形の重複積分から計算されることが可能である。
【数5】

【0034】
方程式(2)〜(5)から、励起長方形導波路モードの振幅係数が、中央導波路幅と入力導波路幅の比率b/aに応じてどのように変化するかを計算することが可能である。図4は、b/aに応じたAmnの変化、即ち、中央導波路の「幅:高さ」の比率を変化させる効果を示す。図5は、出力結合を示す、|Amn|2の場合の同等物を示す。図4は、m=1且つnが奇数の時を除いてAmn=0であることを示す。これは、その励起条件の対称性に起因する。従って、励起されるモードは、対称モードEH11、EH13、EH15等だけである。
【0035】
図6には、より低次数のEHmn導波路モードの幾つかの形状が電界振幅分布として示されている。これらの分布は計算によって得られ、擬3次元的な形でグラフA〜Fとして示されている。便宜上、Gに示される座標軸は、図1の軸線30に関して回転させられている。軸x、y、zは、前述のように、多モード導波路20における横断垂直方向と横断水平方向と縦方向とに相当する。グラフA〜Fは、次のモードに相当する。

これらの中で、A、C、Eは対称モードであり、B、D、Fは反対称モードである。これを明確にするために、E(x)とE(-x)の各々が、図1のx軸の正部分と負部分に各々に関連付けられた電界振幅分布であり、E(x=0)がz軸30上にあるとする。E(y)とE(-y)が、y軸に関するその同等物であるとする。
対称モードの場合には、
E(x)=E(-x)且つE(y)=E(-y) (6.1)
反対称モードの場合には、次の(6.2)又は(6.3)のどちらか一方が当てはまる。
E(x)=-E(-x) (6.2)
E(y)=-E(-y) (6.3)
【0036】
ビーム分割器10内では、本発明によって、基本(対称)モード入力が、多モード導波路の対称モードだけが励起されることを可能にする。
【0037】
入力開口40から距離zにあるxy平面内の横断方向電界分布は、次式で与えられるEzであり、
Ez=ΣAmn・EHmn (7)
入力開口40から距離zにあるxy平面内の電界の強さの分布は、方程式(7)の絶対値又は量の平方である|Ez|2である。|Ez|2は、b/aの2つの値に関して、中央導波路20に沿った距離zに応じて計算された。両方の場合とも、中央導波路幅(2b)は3mmであり、その高さ(2a)は一方の場合には1mmであり、他方の場合には0.5mmである。これは、b/a=3とb/a=6とに相当し、その計算結果が図7と図8の各々にグラフで示されている。図7と図8は、中央導波路20に沿った一連のzの値の各々に関して、中央導波路に沿った位置yに応じた電界の強さI=|Ez|2を示す。両方の場合とも、その計算は、10.59ミクロンの放射波長(CO2レーザ)と、方程式(1)で与えられる425mmの中央導波路長さLとに基づいている。
【0038】
図5に示されるように、b/a=3である時には、モードEH11、EH13、EH15、EH17だけが励起され、これらは各々に近似相対出力0.52、0.33、0.13、0.02を有する。b/a=6である時には、モードEH11〜EH1.13が励起され、これらは各々に相対出力0.27〜0.02を有する。
【0039】
図7では、最初の中心極大60が、図1と図2の入力導波路開口40における電界の強さの分布Iを示す。この点(z=0)において、モードEH11〜EH17は、互いに同位相であり且つ極大60を生じさせるために積極的に干渉する電界を生じさせる。中央導波路20の長さを下るにつれて、即ち、zが増大するにつれて、モードEH11〜EH17は互いに同位相ではなくなる。これは、位相係数βmnと従って伝搬定数Ymnとがモード数mとnに依存している、方程式(2)、(3)の結果である。
【0040】
従って、これらのモード電界寄与の変化の空間比率(spatial rate)は、z軸30に沿って、即ち、中央導波路20の軸方向に異なる。これは、モード電界寄与の間の干渉の形を変化させ、横断方向に延びる様々な電界の強さの分布を生じさせる。これらの分布は、zの各々の値におけるxy平面内の61、62のような曲線によって示される。導波路20に沿った約2/3の距離においては、その電界の強さの分布は、3つの類似した極大を有する曲線63によって表される。導波路20の端部では、その強さの分布は、2つの明確に分かれた極大64a、64bを有する曲線64によって示される。極大64a、64bは、出力導波路22、24の入口開口50、52の中心に位置している。これらの極大は互いに同位相であり、各々が、それに関連した出力導波路22、24各々の基本モードを励起する。
【0041】
計算は、曲線60によって示されるように入力導波路18から中央導波路20への、及び、曲線64によって示されるように中央導波路20から出力導波路22への、効率的な放射結合があるということを示す。導波路端壁54の位置に相当する区画64c、64d、64eにおいて、曲線64はゼロになる。従って、端壁54においては、反射に利用できる強さはない。更に、極大64a、64bが、各々の出力導波路22、24の基本モードを励起するが故に、入力導波路18に向けて反射される波を発生させる不整合がない。従って、導波路18〜24に沿った減衰が僅かであり、即ち、m=1且つn=1、3、5、7の場合のαmnが非常に小さいと仮定するならば、入力導波路18内の放射は、出力導波路22、24の両方に効率的に均等に結合される。従って、ビーム分割器10は、b/aが3である時に良好なビーム分割特性を有する。
【0042】
さて、図8に目をやれば、この図は、前述のようにその導波路の横断面アスペクト比b/aが6である時の、中央導波路20の長さに沿った横断方向の電界分布を示す。図5に示されるように、b/aを(図7の場合のような)3から(図8の場合のような)6に増大させる効果は、中央導波路モードEH11、EH13に結合される出力を減少させ、且つ、モードEH15、EH1.13に結合される出力を増大させることである。より高次数のモードがより多くの出力を受けるが故に、図8における構造と定義の度合いは、図7のそれらより増大させられる。図8では、開口40の平面内の電界分布は、単一の極大70aを有する曲線70によって示される。前述されたように、異なるβmn値を有するモードEH11〜EH1.13の故に、横断方向の電界の強さの分布は、中央導波路20に沿った距離zに応じて変化する。曲線71〜75は、概ね等しい形状と大きさの複数の極大へ電界の強さが分割される位置を示している。曲線71、72、73、74、75は各々に、6つの、4つの、3つの、5つの、2つの極大を有する。特に、曲線73は、明確に画定された3つの極大73a、73b、73cを有する。曲線71〜75は各々に、前述のようにLが中央導波路の長さである場合に、入力導波路開口40からの距離L/3、L/2、2L/3、4L/5、Lに位置している。これらの長さは、2L/6、2L/4、2L/3、4L/5、2L/2と表されることが可能である。従って、極大の数と距離との間には逆関係がある。
【0043】
中央導波路20は、曲線75の極大75a、75bからの放射を受けるように配置された出力導波路22、24を有する。代替案のデバイスは、より短い中央導波路を使用し、曲線71〜74のいずれか1つの曲線の各々の極大に位置させられた1組の出力導波路を有することが可能である。このことは、N=6、4、3、又は5である場合に、1-対-N方向ビーム分割を可能にするだろう。M-対-N方向の放射ビーム分割のための複数の入力導波路と出力導波路を有することも可能である。例えば、3つの入力導波路が、曲線73上の極大の位置に中心を置いて配置され、且つ5つの出力導波路が、曲線74上の極大の位置に中心を置いて配置されることが可能である。しかし、後述されるように、入力導波路によって寄与される電界の位相が異なることが必要とされるだろう。極大70a、74a、74bは、同位相の電界に相当するが、一方、曲線71のような曲線における極大は、一般的に、同位相ではない。
【0044】
多方向放射ビーム分割が必要とされる場合には、出力導波路の間の端壁における寄生反射を防止するために、十分に大きな値のb/aを有することが必要である。b/aの十分に高い値が、ゼロ強さを介在させながら十分に画定された極大を生じさせるのに十分な対称EHmnモード(m=1、n=1、3、5…)が励起させられることを確実なものにする。これは、個々の用途に応じた設計の問題である。しかし、比較的少数のモードが励起されることだけしか本発明が必要としないということは、1つの利点である。例えば、b/a=3の場合の図7に示される電界パターンは、4つの最低次数の奇数EHmnモードによって、即ち、EH11、EH13、EH15、EH17によって概ね完全に記述される。同様に、b/a=6の場合の図8に示される電界パターンは、7つの最低次数の奇数EHmnモードによって概ね完全に記述される。従来技術の自己結像導波路は、50つ以上を必要とし、従って、高いモード数における全内部反射を維持するためには高屈折率のコア媒質を必要とする。
【0045】
図9は、図8がそれから得られる中央導波路寸法の場合における、結果的に生じる電界の位相φの、y軸に沿った変動を示す。各々に曲線70〜75に相当する80〜85のような曲線がが示される。81のような位相曲線の各々が、zの各々の値に関する中央導波路20に沿っての電界の位相変動を示し、図8の各々の電界の強さの分布に相当する。位相表示φの垂直スケールが参照符号86で示され、この場合には2πの間隔が示されている。曲線70と75における電界分布は、直線80、85で示されるように定位相である。しかし、例えば、曲線83は、その外側領域83a、83cとは位相において異なっている中央領域83aを有する。領域83a〜83cは、図8における関連の極大73a〜73cの位相を与える。従って、中央の極大73aは外側の極大73b、73cとは位相が異なっており、極大73b、73cは互いに同位相である。このことは、「3-対-4」ビーム結合器/分割器が、2つの同位相の極大75a、75bを生じさせるために、外側の極大73b、73cに対して位相がずれている中央の極大73aを必要とするだろうということを示す。
【0046】
曲線80、85が同位相であるが故に、これらの曲線は可逆的な特性を生じさせ、即ち、特に2つの同位相の入力75a、75bが1つの入力70を生じさせるだろう。これを拡張すれば、重ねられた出力導波路開口50、52と端と端をつないで配置された2つの中央導波路20は、極大70を極大75a/75bに変換し、その後で再び極大70に戻すだろう。このことは、重複された極大75a/75bに連続した図8の2つの変形物(version)を考察することによって、視覚化されることが可能である。このようにして作 られる中央導波路の2倍の長さは2Lであり、これは、方程式(1)から次のように与えられる。
2L=4b2/λ (7)
【0047】
方程式(7)は対称モード反復距離(2L)を与え、これは、最初の電界分布がそれに亙って再現される長方形導波路長さである。これは、その導波路に沿った放射伝搬の過程において適切な対称EHmn導波路モードの重大な減衰がないことを仮定する。
【0048】
図9における同等物と背中合わせに組み合わされた図8の2つの変形物の視覚化は、光学位相の効果を示す。例えば、単一の極大70とその対応する同位相の曲線80は、距離L/2において、位相変動を伴った4つの極大72に変換する。これらの極大72は、距離L/2において、2つの同位相の極大75a/75bに変換し、更に、距離3L/2において、単一の極大に変換する。
【0049】
図7と図8と図9は、b/aの特定の値に係わる。更に一般的には、図1〜3のビーム分割器10の場合に、入力導波路18からの励起のEH11対称性の故に、モードEH1nだけが励起される。入力導波路開口40においては、位相は一定不変である。任意のb/a値を含む場合には、方程式(3)を使用して、モードEH1pの位相係数β1pが次式で与えられ、
【数6】

モードEH1qの位相係数β1qが次式で与えらる。
【数7】

【0050】
方程式(8)からの方程式(9)の引き算と、再配列とによって、導波路距離zにおけるモードEH1pとモードEH1qの間の位相差は、次式によって与えられるχzである。
【数8】

【0051】
これらのモード間に2πの位相差が存在するという条件が課せられる場合には、方程式(10)は次式になり、
【数9】

【0052】
モードEH1pとモードEH1qの間に2πの位相差を生じさせる、長方形導波路内の方程式(11)における伝搬距離z(即ち、z2π)は、次式によって与えられる。
【数10】

【0053】
EH11モードとEH1nモード(即ち、基本モードと、n次の最高次の奇数モード)の場合には、z2πが次式で与えられる。
【数11】

【0054】
方程式(12)と方程式(13)を組み合わせることによって次式が得られる。
【数12】

【0055】
n=3、5、7、9、11、…の場合には、16L/(n2-1)z2πは2L、2L/3、L/3、L/5、2L/15、…である。同位相に戻されるEH11モードとEH13モードとに結果する長方形導波路内の伝搬距離2Lの分数として、その相対長さ比率は1、1/3、1/6、1/10、1/15等である。これは、長方形導波路のEH1nモードの間には調和関係があるということを示している。方程式(4)は、基本EH11モードとその次の最高次数のEH13モードとの間に2πの位相ずれを生じさせる伝搬距離z2πが、基本モードとその他の全てのEH1nモード(nは奇数)との間にも2πの位相ずれを生じさせるということを示している。このことは、奇数EH1nモードの励起だけがあるならば、距離z2πの後の、あらゆる対称入力電界の再現に結果する。更に、長方形導波路の十分な長さがあれば、「t」が整数である時に、対称入力電界は、距離tz2πにおいて周期的に生じさせられる。
【0056】
方程式(11)〜(14)は、πのモード間位相変化がそれによってもたらされる長方形導波路内の伝搬距離z2πを決定するように、書き直されてもよい。これらの方程式の精査によって、
【数13】

であると考えられる。
【0057】
Lと2Lは、zπとz2πがそれによってもたらされる導波路長さであり、L=2b2/λは方程式(1)から得られる。従って、zπとz2πは、両方ともb2に比例しており、導波路幅の適切な選択によって、長方形導波路に沿った予め決められた距離で生じるように決められることが可能である。
【0058】
上記の分析は、次のように実験によって正しいことが実証された。寸法1.5mm(幅2b)×0.6mm(高さ2a)×212mm(長さ2L)の中空の長方形アルミナ導波路が使用された。この長さは、10.59ミクロンのCO2レーザ波長の場合に4b2/λである。この導波路は、図1の中央導波路20を与える。この導波路への入力は、縦方向の導波路軸線(図1の軸線30)上の0.42mmのウェスト(waist)にCO2レーザビームを集束させることによって供給され、このビームは、この軸線に沿って方向付けられた。そうした入力は、入力導波路18からの励起に類似した励起を与えた。これは、辺0.6mmの正方形断面と共軸位置とを有する導波路からの基本モード入力の適切な近似だった。パイロ電気ビジコンカメラが、長方形導波路からの出力を検出するために使用された。このカメラは、その導波路からの放射出力が、その導波路長さ212mmによって変換された放射入力と、強さ分布の上で同等であり、即ち、その入力が、2L又は4b2/λに等しい軸方向移動を伴って再現されていることを確認した。強さの全伝送は、その入力の82%だった。この18%の損失が僅かであり、且つ、この損失が、入力導波路と出力導波路が使用されないことによる結合の非効率性に少なくとも部分的に起因するが故に、このことはその導波路による高い伝送効率を示した。bが多モード効果の原因となる導波路幅寸法である場合に、入力電界分布が、伝搬距離4b2/λにおいて長方形導波路によって再現されるということが正しいことを、測定が実証した。
【0059】
上記の構造は、ビーム分割効果を試験するためにも使用された。これを行うために、2つの中空コア光ファイバ(内径0.53mm)が長方形導波路の中に挿入され、このファイバは、その導波路の長さ中央の横断平面内に配置された入力端部を有した。従って、ファイバ入力端部は、入力CO2レーザビームのウェストから距離L=2b2/λ=106mmにあった。これらの入力におけるファイバ中心が、導波路中心軸線と導波路側壁各々との間の中間に位置させられた。従って、ファイバは、レーザビームウェストによって与えられる入力電界分布に長さLの長方形導波路を介して接続される正方形導波路22、24を模擬した。
【0060】
パイロ電気ビジコンカメラが、ファイバからの出力を検出するために使用された。このカメラは、それらのファイバ出力が振幅と強さ分布において相等しく、この強さ分布は両方の場合とも回転対称であるということを示した。このことは、入力放射の等振幅の基本モードの分離が長さL=2b2/λの長方形導波路の中で起こったということを証明した。更に、ファイバ出力間の重なり合いを生じさせるために、ファイバが互いに並列に配置された。このことは、十分に画定された干渉フリンジを生じさせた。導波路とファイバ、ビーム分割のプロセスは効率75%であることが計算された。25%の損失は、ファイバのミスアラインメントと、不正確な寸法合わせと、不完全な入力電界分布とに起因した。これにも係わらず、導波路長さ2Lにおける入力再構成のより早期の生起に加えて、ビーム分割効果が導波路長さLにおいて示された。
【0061】
ビーム分割デバイス10は、アルミナ以外の材料、例えばBeO、Si、Macor又は金属で作られてよい。
【0062】
図1〜9に関する上記の説明は、長方形導波路の幅寸法においてビーム分割が得られることが可能であることを示す。例えば、図8では、極大75a、75bが導波路幅に亙ってy軸に沿って互いに間隔を置かれている。中央導波路が2aより十分に大きい高さを持つように作られれば、前述の多モード構造に加えて、x寸法に多モード構造を有するだろう。特に、高さと幅が2b=4aであり長さがLである中央の正方形横断面の導波路が、その一方の端部において軸線上に位置する入力導波路基本EH11モードを、他方の端部における4つの同位相の基本モード出力に変換するだろう。これらの出力は、(b/2,b/2)、(b/2,-b/2)、(-b/2,-b/2)、(-b/2,b/2)によって与えられる、z=Lにおけるx,y平面内の点に集中させられる。ここでは、x=y=0は、(図1〜3の軸線30と同等である)その導波路の縦方向の対称軸上にある。この例では、2次元導波路モードEHmn(m,n=1,3,5,…)が、図1〜9の1次元だけの同等物(m=1,n=1,3,5,…)の代わりに励起される。互いに直角をなす図8の2つの変形物の考察が、適切な入力と出力の位置と、図9の場合のような位相管理とによって可能であるということを示す。
【0063】
正方形導波路に関する上記の説明は、長方形導波路に拡張可能である。前述のように、幅2bの導波路幅寸法におけるKつの強さ極大へのビーム分割が、次式によって与えられる距離LKにおいて生じる。
【数14】
LK=4b2/λK (17)
【0064】
導波路が、Jつの強さ極大への分割が必要とされる幅2aの直交幅寸法を有するならば、これは、次式で与えられる長さLJにおいて生じるだろう。
【数15】
LJ=4a2/λJ (18)
【0065】
JつとKつの強さ極大への同時分割が、その導波路の同じ長さにおいて求められるならば、その導波路の横断面寸法b/aは、LJとLKとを等しくすることと、次のような平方根をとることによって与えられるだろう。
【数16】
b/a=√(K/J) (19)
【0066】
従って、9×4配列の強さ極大への分割は、距離a2/λにおいて、3a/2に等しいbを有する長方形導波路内で起こるだろう。
【0067】
本発明の実施例では、その多モード導波路(例えば20)が正方形か長方形のどちらかであるということが好ましい。x軸とy軸は、この導波路の中心を通る(x=y=0)ように、且つ、図1と図2に示されるような導波路壁25、42の各々に対して平行であるように、画定される。その多モード導波路内の対称モード電界は、2つの鏡平面x=0、y=0内に反射対称性を持たなければならず、即ち、E(x,y,z)=E(-x,y,z)=E(x,-y,z)でなければならない。入力電界と出力電界は同一タイプの対称性を持たなければならず、従って、次のタイプの入力導波路、即ち、(1)x軸とy軸に対して平行な辺を有する正方形又は長方形の導波路と、(2)円形導波路又は光ファイバとが使用される。これらは重要なタイプの導波路であるが、x軸とy軸に対して45°をなす辺を有する正方形導波路、又はx軸とy軸に対して平行な長軸と短軸を有する楕円形導波路も使用可能である。菱形又は八角形の導波路も使用可能であり、又は、対称性条件を満たす他のあらゆるタイプの導波路も使用可能である。
【0068】
出力導波路は、入力導波路がその入力表面において有する形状と方向と同一の形状と方向を、多モード導波路の出力表面において持たなければならない。このことは、多モード導波路の出力端部における入力モードの画像が適正に出力導波路に整合させられることを確実なものにする。出力電界は、入力電界と同一のタイプの対称性を有するだろう。従って、一方の出力導波路がx=x0且つy=y0であるならば、他方の出力導波路が(-x0,y0)と(x0,-y0)と(-x0,-y0)とになければならない。1つ以上のそうした導波路がない場合には、寄生放射を除去するために吸収手段が使用されてもよい。
【0069】
後述されることになっている半導体材料導波路の場合のように、本発明のデバイス内の導波路の全てが1つの方向(例えばy方向)において単一モード化される場合には、その方向におけるモード形状が全ての導波路に関して同一であることが重要である。しかし、このモード形状は、この方向に正弦状である必要はない。従って、半導体材料層で形成される本発明のデバイスでは、その導波路は、望ましい単一モード方向に対して平行な厚さ寸法を有するGaAsとAlAGaAsの様々なエピタキシャル層から成ってよい。
【0070】
しかし、これらの基準は、正確な工作処理からの僅かな逸脱に対して本発明があまり大きな感度を持たないということを条件とする。
【0071】
図1と図2と図3を再度参照すると、ビーム分割器10は、入力導波路18と出力導波路22/24を互いに反対側の縦方向端部に有する透過デバイスである。多モード導波路20の同等物の中にリフレクタを組み込むことによって、関連した折返し光路デバイスが作られることか可能である。その反射光路は、非反射光路に対して任意の角度にあってよい。多モード導波路の一方の縦方向端部において入力された光がその端部に戻されるように、逆反射が得られてもよい。その場合には、(導波路18、22、24と同等の)入力導波路と出力導波路が、その多モード導波路の同一の縦方向端部に位置させられる。この場合には、光が前進方向と帰還方向の両方に多モード導波路の中を通過するが故に、その多モード導波路の必要長さはL/2である。
【0072】
さて図10を参照すると、この図には、Mach-Zehnder干渉計100の形の本発明の更に別の実施例が示されている。干渉計100は、補足的な特徴の追加を有する、背中合わせに直列に連結された2つの図1のデバイスと同等である。鎖線102は、互いの鏡像に接近した半分部分への干渉計100の概念的な分割を示す。これらの半分部分は、ビーム分岐器104とビーム結合器106を含む。このビーム分岐器104は、寸法2a×2b×Lの第1の長方形導波路110に共軸に接続された、正方形横断面の入力導波路108を含む。この場合には、前述のようにLは2b2/λである。長方形導波路110は、干渉計軸線114の両側にb/2ずらされ且つ軸線114に対して軸方向に平行な2つの干渉計アーム導波路112a、112bに接続される。干渉計アーム導波路112a、112bは、入力導波路108の寸法と同じ寸法を有する。
【0073】
干渉計アーム導波路112a、112bは、第1の長方形導波路110と共軸に配置され且つその導波路110と同じ寸法にされた第2(又は補助)の長方形導波路116に接続される。この補助導波路116は、中央導波路118と、2つのずれた出力導波路120a、120bとに接続される。中央導波路118は、干渉計軸線114と共軸である。ずれた出力導波路120a、120bは、軸線114から軸方向にb/2だけ間隔を置かれており、各々に干渉計アーム導波路112a、112bと共軸である。中央出力導波路118と各々のずれた出力導波路120a、120bとの間に有限の壁厚さがあるように、その形状はbが4aより大きくなければならないことを必要とする。入力導波路108と、干渉計アーム導波路112a、112bと、出力導波路118、120は、全て同じ長さLである。しかし、これらの導波路が基本モードでのみ動作するが故に、それらの長さは重要ではない。
【0074】
干渉計100は次のように働く。ビーム分岐器104はビーム分割器10と同様に機能する。ビーム分岐器104は、導波路108から入力された基本モード放射を、干渉計アーム導波路112a、112b内における、強さが等しく且つ同位相である2つの基本モードビームに分岐させる。
【0075】
図に示されているように、干渉計アーム導波路112a、112bは同一である。従って、これらの導波路112a、112bは、補助長方形導波路116に同位相の入力を与える。補助長方形導波路116は、第1のそうした導波路110に比べて反対に働き、これらの同位相の入力を、中央出力導波路118に入力される基本モードの単一ビームの形に再結合する。この機能は、逆の形で図8と同等である。このことは、本発明のデバイスの可逆性を示している。大きな放射の強さは、ずらされた出力導波路120a、120bには到達しない。
【0076】
しかし、干渉計アーム導波路112a、112bの一方の導波路における放射伝搬に、その他方の導波路における放射伝搬に比べて、位相変化がもたらされるならば、中央出力導波路118における強さが低減させられる。
【0077】
既に説明されたように、干渉計100は、背中合わせにされた2つの本発明のデバイス104、106と同等である。これらの中で、ビーム分岐器104は前述のデバイス10のように働き、一方、ビーム再結合器106は逆に働き、追加の導波路112a、112bを含む。従って、ビーム再結合器106は、本発明のデバイスが逆に動作させられることが可能であり、様々な位相特性の入力から生じる放射を受け入れるための追加の出力導波路を含むことが可能であるということを示す。
【0078】
図11と図12は、補助長方形導波路116に関する電界の強さの分布のグループである。これらの図は各々に、参照符号124における1対の電界振幅極大116によって示される同位相入力の場合と、参照符号126における逆位相入力量の極大と極小によって示される逆位相入力の場合の、補助導波路116内の状態を示す。
【0079】
図11は、逆にされた図8と同じである。同位相入力強さの極大127は、補助導波路116内において対称モード又は奇数モードだけを励起し、単一の中央の出力極大128を生じさせる。しかし、図12は、第2の導波路116に対する入力129の間のπの位相差が、1対の出力放射強さの極大131a、131bに結果するということを示している。極大131a、131bは各々に、ずらされ た出力導波路120a、120bの上に中心を置かれ、中央出力導波路118における放射の強さ131cはゼロである。
【0080】
一般的に、補助長方形導波路116への入力の間の(πだけではない)任意の位相差が、偶数モードと奇数モードの励起をもたらし、中央出力導波路118内での強さの大きさを変化させるだろう。位相差の変調は、この強さを変調する。この変調 は、電気光学的変調器又は放電セルを干渉計アーム導波路112a、112bのどちらか一方の中に組み込むことによって実現されることが可能である。この代わりに、液体又は気体の屈折率の僅かな変化を検出することを可能にするために、流体セルが干渉計アーム導波路のどちらか一方の中に組み込まれることも可能である。どちらの場合にも、その他方のアーム導波路は、測定されるべき位相変化がない時に補助長方形導波路116への等位相入力を生じさせるために、光路の補償増大を有する。
【0081】
さて、図13を参照すると、この図には、本発明の更に別の実施例の斜視図が示されている。この実施例は、参照符号140によって全体的に示されるビーム分割器の形である。ビーム分割器140は、固体導波路を使用するという点で、既述の諸実施例とは異なっている。このビーム分割器140は、中央縦軸線144を有する多モード中央導波路142を含む。単一の入力導波路146が多モード導波路142の一方の端壁142aに接続され、多モード導波路142と共軸である。4つの出力導波路148a〜148dが多モード導波路142の他方の端壁142bから延び、これらの出力導波路は各々に中心軸線150a〜150dを有する。多モード導波路142は、中心軸線144と、この中心軸線144に平行であり且つその両側に位置する更に別の2つの軸線154a、154bとを通過する垂直平面によって、1/4部分152a〜152dに縦方向に分割されたものと、見なされることも可能である。出力導波路は、それらの軸線150a〜150dが各々の多モード導波路1/4部分152a〜152dに対して中心にあるように配置される。更に一般的には、Nつの出力導波路を有するビーム分割器の場合に、出力導波路軸線の各々が、それに関連した多モード導波路各々の縦方向の均等の再分割部分がNつある時に、その関連した再分割部分の各々の中心にあるだろう。従って、これらの軸線は、多モード導波路の横断面に亙って周期的に配置される。
【0082】
多モード導波路142は長さ468μmで幅24μmであり、従って、その1/4部分152a〜152dは幅6μmである。その横断面は一定不変である。入力導波路146と出力導波路148a〜148dは幅2μmである。出力導波路148a〜148dは、隣り合う各対の軸線150a/150b等の間に6μmの間隔を有し、最も外側の軸線150a、150dと多モード導波路側壁142c、142dの各々との間に3μmの間隔を有する。
【0083】
入力導波路146は、矢印156で示されるような入力光を受け取る。出力導波路148a〜148dは、矢印162のような矢印によって示される通りに光がそこから出て行く端面160a〜160dを有する。鎖線164は、端壁142bにおいて光学測定を可能にするためにビーム分割器142がそこで切断されることが可能な位置を示す。
【0084】
ビーム分割器140は、図14に拡大スケールで示される層構造を有し、この図には出力導波路端面160が示されている。ビーム分割器は、エピタキシャル成長デバイスで通常使用される種類の半絶縁GaAsの基板ウェーハ170を含む。この基板ウェーハ170は、次の上向きに連続した層を有する。
【0085】
(a)厚さ0.1μmのGaAsバッファ層172、
(b)厚さ2.5μmのAl0.1Ga0.9As下部クラッディング層174(屈折率n=3.420)、
(c)厚さ1.0μmのGaAs導波路コア層176(n=3.479)、
(d)厚さ1.0μmのAl0.1Ga0.9As上部クラッディング層178(n=3.420)、
(e)厚さ0.1μmのGaAsキャッピング層180。
【0086】
垂直方向に、即ち、層172〜180の厚さ寸法に沿って、入力導波路146と出力導波路148a〜148dと多モード導波路142は単一モードである。入力導波路146と出力導波路148a〜148dの幅はNd-YAGレーザ放射の場合には2μmに過ぎないが故に、これらの導波路は、層厚さに対して直交した幅寸法においても単一モードである。しかし、多モード導波路142は、その24μmの幅によって、この第2の横断方向において複数のモードを維持する。
【0087】
光は、クラッディング層174、178によってコア層176に閉じ込められる。Nd-YAGレーザ放射の場合には、この領域は、垂直方向の伝搬の基本モードだけを維持する。導波路層174/176/178の組み合わせの有効屈折率neは、コア屈折率とクラッディング屈折率の中間であり、3.455である。従って、ビーム分割器140内でのNd-YAGレーザ波長は、3.455(ne)によって割られた1.064μm(λ0)の自由空間値である。
【0088】
その多モード導波路長さは468μmである。これはL/2に等しく、このLは等式(1)によって2b2/λとして与えられる。ここでは、2bは、多モード導波路幅24μmであり、λは、導波路142、146、148a〜148d内におけるNd-YAGレーザ波長である。L/2は、図8における曲線72に相当し、図8では、曲線70によって表される基本モード入力は、適切に配置された出力導波路148a〜148dのために、4つの基本モード励起に変換される。L/2の数的表現は次式を与え、
【数17】

これは図12の通りである。
【0089】
ビーム分割器140を製作する方法は次の通りである。層172〜180が、ドーピングのための特別な用意なしに、公知のエピタキシャル技術によって基板170上に連続的に付着させられる。これは、領域1014/cm3〜1016/cm3内にバックグラウンドドーピング(background doping)を残す。
【0090】
層の付着の後に、ホトレジスト層がキャッピング層180の上に回転塗布される。ビーム分割器140の輪郭を画定するマスクがホトレジスト上に置かれ、そのマスクを通してホトレジストに光を当てるために紫外光が使用される。その後で、ホトレジストが現像され、更に、除去のための半導体材料を露出させるために、UV露光領域が化学的に除去される。その後で、基板ウェーハが反応性イオンエッチング機械の中に入れられ、1時間に亙ってエッチングされる。これは、2.5μmのエッチング深さを生じさせ、従って、このエッチング深さはキャッピング層と上部クラッディング層とコア層178〜176を完全に貫通し、下部クラッディング層174の中に0.4μm入り込む。これは、導波路142、146、148a〜148dのような直立又はリッジ形導波路を画定する。
【0091】
上記の手順は三元半導体材料系AlxGa1-xAsに係わるが、他の三元又は四元半導体材料系を使用することも可能である。例えば、InGaAsPが使用されてよい。
【0092】
図13と図14に示される実施例は作られなかった。その代わりに、様々なビーム分割器パターンをくり抜くぬくホトリソグラフィーマスクが作られた。そのマスクは、試験用の多数の様々な形状のビーム分割器を含むウェーハを与えた。これらの中には、先細の多モード導波路を含むデバイスがあった。そうしたデバイスの1つが図15に示され、照合符号190によって全体的に表されている。
【0093】
この先細ビーム分割器190は、ビーム分割器140に関して前述された通りの層構造を有する。即ち、垂直方向又は厚さ方向におけるそれらの構造は相等しい。先細ビーム分割器190は、幅2μmの入力導波路192と、端部194aと端部194bの間で幅20μmから10μmに直線的に先細になる、長さ326μmの多モード導波路194とを含む。2つの出力導波路196a、196bが、幅1μmの狭い方の端部194bから延びる。
【0094】
多モード導波路194を先細にすることの効果が、乗法因子Mによって、特定の分割を得るために必要とされる長さを変化させることであることが示される。Mは、「出力端部194bの幅」:「入力端部194aの幅」の比率であり、この実施例では0.5である。特に、1-対-2方向の分離を生じさせるために必要とされる方程式(1)の長さLは次式で表され、
L=2Mb2/λ (17)
前式中でbは多モード導波路入力端部の1/2幅である。ビーム分割器190の場合には、
L=2×0.5×100×3.455/1.064=325μm (18)
【0095】
方程式(17)、(18)は、多モード導波路を先細にすることが、特定の度合いのビーム分割を得るために必要とされる長さを変化させるということを示している。パラメタMは1より大きくてもよく、このことは、入力から出力へとその幅が増大する多モード導波路に相当する。しかし、これは、特定の度合いのビーム分割を得るために必要な長さを増大させる。そのテーパは図15に示されるように線形であってもよく、又は、非線形であってもよい。後者の場合には、方程式(17)は当てはまらない。テーパの度合いは、多モード導波路内の放射が臨界角度よりも大きい角度で多モード導波路壁に入射することを可能にするような度合いでなければならない。このことは、低モード数の場合には、任意の直線状の又は縦方向に拡幅する導波路によって、又は、その長さに沿って比較的緩やかに狭まる導波路194によって、実現される。空気と境を接したGaAs導波路の場合には、導波路壁と中心軸線との間で測定される低減テーパ角度は、5°未満でなければならない。厳密に言えば、先細多モード導波路の出力端部は湾曲していなければならないが、しかし、5°より小さな小テーパ角度の場合には、このことは必ずしも必須ではない。
【0096】
方程式(17)は単一のテーパに当てはまるが、連続した複数のテーパを有する多モード導波路を設計することも可能である。これらのテーパは、同一方向、即ち、減少であっても、反対方向、即ち、増加であってもよい。
【0097】
さて、図16を参照すると、この図には、図13〜15を参照して説明されたように作られた様々なタイプのビーム分割器を試験することによって得られた結果が示されている。これらの結果は、1-対-2方向、1-対-5方向、1-対-10方向のビーム分割の各々のために作られた3つの非先細のデバイスと、図15で示された通りの寸法を有する1つの先細デバイスとから得られた。1-対-2方向デバイスは、長さ936μmで幅24μmの多モード中央導波路936と、幅2μmの入力導波路と出力導波路とを有する。1-対-5方向デバイスと1-対-10方向デバイスに関するその同等物は、各々に30μm×586μmと40μm×521μmである。
【0098】
各々の試験用ビーム分割器の有効性が次のように測定された。これらのビーム分割器はその多モード導波路の各出力端部において切断され、これらの出力端部は図13の線164と同等の位置にあった。このことは、多モード導波路の端部における強さ分布、即ち、出力導波路の入口開口に相当する位置における強さ分布が測定されることを可能にした。
【0099】
各々の入力導波路がNd-YAGレーザからの光で照明された。レーザ出力が、顕微鏡対物レンズを使用して直径1μmの回折制限スポット(diffraction-limited spot)に集束させられ、一方、このスポットは各々の入力導波路端面に当てられた。各々の切断面に現れる強さパターンが、赤外カメラで測定された。
【0100】
図16は、試験用ビーム分割器の各々に関する結果を2つの形で示している。従って、各々に全体として200、202、204、206で示される4つの結果のグループがある。各グループの上部の線200a〜206aは、個々の場合の赤外カメラ画像を表す。下部のグラフ200b〜206bは、個々の場合における、各々の多モード導波路出力面に沿った距離に応じた強さ変化を表す。線200a等は、光スポットを示す200c〜206cのような点を有する。200cのようなスポット間に与えられる間隔によって示されるように、水平方向のスケールはグループ毎に異なっている。グラフ200b等は、関連した真上の光スポットによる強さ変化を示す、200dのような極大を有する。
【0101】
結果グループ200は、1-対-2方向の非先細のビーム分割器に係わる。スポット200cは、12μm離れた中心を有する。その関連の極大200dは、1.8μmの半値幅エネルギー(FWHM)を有し、このFWHMは、スポット200cがその上に中心を置かれる関連の出力導波路の幅(2μm)よりも僅かに小さい。極大200dは概ね同一であり、高品質で且つ強さが等しいビーム分割を示す。更に、グラフ200bは、これらの極大の間でゼロになり、このことは理想的なビーム分割特性を示す。
【0102】
グループ202、204は、1-対-5方向デバイスと1-対-10方向デバイスに関する同様の結果を示す。これらは、各々に±15%と±20%の強さの拡がり(intensity spread)を有する極大202d、204dを示す。しかし、各々の場合に、求められる規則正しい間隔と、出力導波路幅と基本モードとに対する適切な整合と共に、適正な数の出力ビームへの分割が得られた。1-対-10方向デバイスは、204eのような僅かな寄生光スポットを示す。これは、隣り合う極大の間の領域の光の強さが完全にゼロではないということを示す。
【0103】
極大202d、204dにおける強さの拡がりと、204eのような寄生光との効果は、
(a)「GaAs:空気」界面が生じる、164と同等の切断面における反射と、
(b)試験結果を得るために使用されるカメラの制限された解像力と視野とに起因する。
【0104】
先細のビーム分離器に関する結果グループ206は、必要な5μmの間隔を有する適正な数(2つ)の極大206dを示す。
【0105】
集積光学回路の形の半導体ビーム分割器の応用例では、上記の制限(a)、(b)は当てはまらないだろう。
【0106】
図1〜16に関する上記の説明は、入力導波路と多モード導波路と出力導波路を含む事例に関して詳細に論じられてきたが、これらの事例では、
(a)入力導波路が直線状であり且つ多モード導波路と共軸であり、
(b)多モード導波路が、導波路厚さに直交した1つの横断方向寸法において多モードであり、その厚さ寸法において単一モードであり、
(c)出力導波路の軸線が、多モード導波路と入力導波路の軸線に対して平行で且つ共軸である。
【0107】
上記の条件(a)〜(b)は必ずしも不可欠ではない。入力導波路内の光が多モード導波路の対称モードだけを励起するならば、この入力導波路軸線は湾曲していてもよい。多モード導波路は、両方の横断方向寸法において多モードであってよい。例えば、既述のように、正方形入力導波路が正方形多モード導波路に共軸に接続されてよい。このことは、両方の横断方向寸法において2方向分割を生じさせるだろう。これは、光ファイバ多方向コネクタのための基礎を形成するだろう。1種の多モード導波路であるこのコネクタは、入力ファイバを受ける一方の端部に入口ポートを有し、各々の受ファイバのための複数の出力ポートを有するだろう。
【0108】
導波路軸線は必ずしも平行である必要はない。出力導波路が維持する基本放射モードが導波路壁において全内部反射を受けるならば、出力導波路は湾曲していてもよい。しかし、入力導波路がそこで多モード導波路の中に併合する開口又は入力ポート全体に亙って、放射振幅分布が定位相であることが必要である。ビーム分割器10の入力ポートは、図2の開口40である。基本モードだけで働き、且つその入力導波路が多モード導波路とそこで併合する入力ポートにおいて、多モード導波路に対して軸方向に平行である入力導波路によって、上記の基準が満たされる。
【0109】
さて、図17を参照すると、この図には、参照符号220によって全体的に示される本発明のビーム分割器の更に別の形態の略斜視図が示される。ビーム分割器220は、辺2aを有する正方形の内側横断面の、基本モード中空入力導波路222を含む。ビーム分割器220は、内側では正方形横断面であるが外側では辺2bを有する、長さLの多モード導波路224を有する。入力導波路222と多モード導波路224は共軸である。ビーム分割器220は、4つの基本モード中空出力導波路226a〜226dも含み、これらの出力導波路は入力導波路222と多モード導波路224とに対して軸方向に平行である。これらの出力導波路は、入力導波路222と同一の内側横断面を有し、即ち、辺2aを有する。
【0110】
図18は、矢印227の方向で見た場合の、図17の線XVIII-XVIIIに沿った断面である。この図は、入力導波路と多モード導波路の中心軸線230に比較した出力導波路軸線228a〜228dの各々の配置を示す。この図は、縦方向軸線228a〜228d、230に対して垂直な横断面である。228aのような出力導波路軸線の各々は、多モード導波路軸線230からb/2ずれている。こうしたずれは、対角線方向に上と下に向かって且つ左と右に向かってのずれである。これは、多モード導波路224の横断面の1/4部分の各々の中心に、出力導波路軸線を位置させる。
【0111】
ビーム分割器220は、図1のビーム分割器10の2次元的変形物に相当する。これは、中央導波路224が両方の横断寸法において多モードであるが故である。従って、入力導波路の基本モードは、両方の横断寸法において、多モード導波路の対称モード、即ち、mとnが両方とも奇数であり且つ1よりも大きい値をとることが可能な場合のモードEHmnを励起する。ビーム分割器10では、多モード導波路20が垂直寸法において単一モード動作に限定されたが故に、m=1の制限が適用された。
【0112】
多モード導波路224の横断方向の2次元性の故に、入力導波路内を伝搬する放射(基本モード)は、出力導波路軸線228a〜228d上に中心を置かれた4つの半周期の正弦状の強さ極大を生じさせる。図18の平面内の強さ分布は、互いに重なり合う形で並べられた図8の曲線75の2つの変形物に相当する。従って、ビーム分割器220は、互いに同位相の4つの出力ビームを伴う1-対-4方向ビーム分割を与える。入力導波路と出力導波路が光ファイバであった場合には、このビーム分割器は光ファイバ多方向結合器を与えることが可能だった。
【0113】
ビーム分割器10、220は、レーザデバイスとしての使用に適合させられてもよい。この場合には、ビーム分割器は、レーザ利得媒質(laser gain medium)が充填され且つその媒質の励起に適合させられた出力導波路22/24又は226a等と共に、動作させられるだろう。例えば、導波路22、24は、CO2ガスを充填され、高周波励起電極とその関連の回路構成部品を有することが可能である。レーザ鏡が、多モード導波路20から遠位の入力導波路18の端部と出力導波路22/24の端部に配置されるだろう。入力導波路と組み合わされる方の鏡は、部分透過性の出力結合器鏡であってよい。他方の鏡は可能な限り完全に反射するだろう。出力導波路内でのレーザ作用は、入力導波路内のビームに結合されるビームを生じさせるだろう。部分反射鏡は、その結合されたビームの一部分を自由空間に出力し、一方、フィードバックをもたらすためにその結合ビームの残り部分を戻すだろう。このフィードバックは、出力導波路、即ち、レーザ利得導波路の間に、均等に分岐させられるだろう。入力導波路における同位相基本モード極大(例えば70a)が、出力導波路において同位相の極大(例えば75a、75b)を生じさせるが故に、この構造が実現可能である。従って、出力導波路から入力導波路への通過とその帰還の各々において、放射の同位相の再結合と分岐が行われる。
【0114】
さて、図19と図20を参照すると、これらの図は各々に、参照符号240によって全体的に示される、レーザとして構成された本発明の更に別の略平面図と側面立面図を示す。レーザ240はアルミナ導波路本体部分242を含む。アルミナ導波路本体部分242は5つの区画244〜252から成り、これらは、単一の単一モード出力導波路254と、長さL/2の第1の多モード導波路256と、4つの単一モードのレーザ導波路258と、長さL/2の第2の多モード導波路260と、2つの単一モードのフィードバック導波路262を各々に与える。フィードバック導波路262は、第2の多モード導波路260の半分部分の各々の中心に接続され、レーザ導波路258は両方の多モード導波路256、260の1/4部分の各々の中心に接続される。レーザ導波路258は、従来の種類の高周波(RF)励起電極264を有する。
【0115】
レーザ240は、出力導波路254の付近の部分反射鏡(出力結合器)266と、フィードバック導波路262の付近の全反射鏡268を有する。導波路254〜262は、レーザ媒質としてのCO2ガスを充填され、RF励起によってレーザ導波路258内にレーザ利得がもたらされる。
【0116】
レーザ240は、2つの半分部分に分割された中央導波路20と、これらの2つの半分部分を接続するために挿入された4つの並列の単一モードレーザ導波路258とを有する、ビーム分割器10に相当する。出力結合器鏡266から反射されたレーザ放射は、出力導波路254に沿って進み、第1の多モード導波路256によって(不均等な整相を伴って)4つに分割される。このことは図8に曲線70、72によって示され、この図では、1-対-4方向の分割が多モード導波路の長さL/2において起こる。放射は、レーザ導波路258内で増幅される。この放射は第2の多モード導波路260に進み、この第2の多モード導波路260は、フィードバック導波路262内において、その放射を2つの(同位相の)ビームの形に再結合する。この変換は、図8の曲線72と曲線75と間の変換である。その放射は、全反射鏡268で反射される。その放射は、出力結合路鏡266における部分反射と部分透過のために、出力導波路254へとその経路を帰還する。透過は、矢印270で示される出力ビームを与える。
【0117】
利得を増大させるために追加のレーザ導波路が必要とされる場合には、そうした追加のレーザ導波路が備えられてよい。しかし、1-対-N方向の分割とそれに続く同位相条件の再成立とを可能にするために、多モード導波路256、260の長さは変更を必要とする。例えば、6つのレーザ導波路は、長さL/3の第1の多モード導波路と、長さ2L/3の第2の多モード導波路とによって、使用可能にされることが可能だった。このことは、(図8の曲線70、71の間のような)1-対-6方向の非同位相の分離と、それに続く(曲線70、71の間のような)6-対-2方向の同位相の結合とをもたらすだろう。従って、図19と図20の構成は、レーザ導波路アレイを位相同期(phase-lock)させるための手段を提供する。図19と図20の構成は、任意の必要な位相調整が行われるならば、光路に関する本発明のデバイスの可逆性をも示す。
【0118】
上記の説明は、約1μmと約10μmの赤外波長での使用のための中空導波路と固体導波路を説明した。可視波長とマイクロ波波長において本発明を応用するために導波路システムを設計することも可能である。
【0119】
さて図21を参照すると、この図には、本発明のビーム分割基の更に別の実施例の水平断面平面図が示される。このビーム分割器は全体として参照符号280で示される。ビーム分割器280は、「複合」多モード導波路と呼ばれることが可能な導波路282を含む。この複合導波路282は、共通の軸線284を有する第1と第2の区画282a、282bを有する。第1と第2の区画282a、282bは同じ高さ2aであるが、その各々の幅は、b2が(b1+a)より大きい時に、2b1と2b2である。これらの区画282a、282bは各々に次式で与えられる長さを有する。
L1=2b21/λ (19.1)
L2=2b22/λ (19.2)
【0120】
幅と高さが2aである単一の入力導波路286が、第1の導波路区画282aの外側端部288に共軸に接続される。4つの出力導波路290a〜290dが、第2の導波路区画282bの外側端部292に接続される。y方向とz方向のデカルト軸(Cartesian axes)が参照符号294で示される。z軸は、デバイス縦軸284であると見なされる。y方向における出力導波路290ac〜290dcの位置は次式で与えられる。

【0121】
本発明の前述の実施例の詳細な分析において、ビーム分割器280の動作モードが概略的に説明されるだろう。入力導波路286からの基本モード励起が、2つに分割するビームを生じさせる。このことは、導波路区画282a、282bがそこで合体する平面294内において、y=±b1/2で起こる。これらの2つのビームへの分岐(図示されていない)は、図8の極大75a、75bに相当し、同位相である。これらの2つのビームは連携して第2の導波路区画282bの対称モードを励起する。この区画282bにおけるモード分散が、出力導波路中心290ac〜290bcを中心とした、同じ強さの4つのビーム分割部分を生じさせるということが、前述の分析に類似した分析によって示されることが可能である。従って、ビーム分割器280は、(b2=2b1の時を除いて)周期的に間隔を置かれていない各々の中心において、距離(L1+L2)内に、1-対-4方向のビーム分岐を与える。共にカスケード接続された2つ以上の区画を有する複合多モード導波路が、図21に示される線の上で使用されてもよい。
【0122】
上記の諸実施例に加えて、本発明の更に別のデバイスがAlGaAsで作られ、これらのデバイスの性能が試験された。図22は、本発明の3つの異なった1-対-20方向ビーム分割器から得られた結果を示している。これら3つのビーム分割器は、製造時の不正確さに対する本発明の許容差を調べるために、僅か に相違した長さであるように設計された。グラフ300は、高さ2a=2.6μmと幅2b=120μmと長さL=2310μmという寸法を有するように設計された多モード導波路を有するこれら3つのビーム分割器の第1のものから得られた結果を示している。グラフ302、304は、これらのビーム分割器の第2と第3のものからの結果を示し、これらの第2と第3のビーム分割器では、多モード導波路の高さと幅は同じ寸法であるように設計され、その多モード導波路の長さは各々に2330μmと2350μmであるように設計されている。
【0123】
グラフ300、302から明瞭に見てとれるように、第1と第2のビーム分割器は、単一の入力ビームを、概ね同じ強さである20つの出力ビームに分割した。第3のビーム分割器に関するグラフ304は、実際には、概ね同じ強さである19つのビームへの分割を示す。これは、最右側にビームを搬送すべきだった出力導波路の損傷に起因する。グラフ300によって示される平均出力ビーム強さは、グラフ302、304によって示される平均出力ビーム強さよりも著しく低い。これは、第2と第3のビーム分割器に比較して、第1のビーム分割器の入力基本モード導波路の中への注入の効率がより一層低いということに起因するかも知れない。或いは、第1のビーム分割器の実効寸法が「適正な」寸法から最もかけ離れているということに起因しているかも知れない。第2と第3のビーム分割器の性能は極めて類似している。
【0124】
実際上、自己結像導波路に基づく従来技術のデバイスの場合に比べて、本発明のデバイスが、必要であると計算される寸法からの僅かな逸脱に対して、はるかに低い感度を有するということが発見されている。実際には、より大きな寸法許容差がデバイス製造中に許容されることが可能であり、従って、故障率と製造コストを低減させるが故に、これは従来技術に比べて大きな利点である。それは、本発明のデバイスが、温度によって引き起こされる長さと幅の変化に対して、感度がより一層低いだろうということも示している。製造技術の結果としての寸法誤差と、温度によって引き起こされる寸法変化と、導波路壁の粗さとに対する、デバイス動作の第一近似の感度は、多モード導波路長さを基準として評価されるだろう。自己結像導波路に基づく従来技術のデバイスは、本発明のデバイスよりも4倍長く、製造誤差と温度変化に対して4倍高い感度を有するだろう。
【0125】
さて図23を参照すると、この図には、本発明のMach-Zehnder干渉計から得られた結果がグラフの形で示されている。そのMach-Zehnder干渉計は、概ね、図10に関して説明された形状であり、2a=2.6μm、2b=32μm、多モード導波路長さ=1725μm、電極幅1.0μm、電極長さ6mmの寸法を有する。グラフ310〜322の各々は、移相器に加えられる様々な電圧に応じた干渉計からの出力の強さ分布を示し、これらの電圧は各々に、0V、5V、10V、15V、20V、25V、30Vである。図23は、前述のように動作するMach-Zehnder干渉計を示す。
【0126】
本発明のデバイスの効率が次のように調査された。基本モードの正方形断面の入力導波路と出力導波路とに接続された多モード導波路から各々が成る本発明の5つの1-対-1方向デバイスが、作られた。多モード導波路の寸法は、2a=2.6μm、2b=12μm、長さ516μmだった。入力導波路と出力導波路は、約2.6×2.6×500μmだった。5つのそうしたデバイスが、1つの線を形成するように互いに接続された。この線を通しての伝送効率が、2.6μm正方形断面と同じ全長とを有する比較用の基本モード正方形導波路の伝送効率と比較された。そのデバイスの線の出力において検出された光の強さは、比較用の基本モード導波路の出力で検出された強さの135%だった。1.35の5乗根が約1.06であるが故に、本発明の各デバイスは、同じ長さの比較用基本モード導波路によって伝送される光よりも約6%多い光を伝送した。
【図面の簡単な説明】
【図1】
ビーム分割器の形の本発明の光学デバイスの斜視図である。
【図2】
図1における線II-IIと線III-IIIに沿った断面図である。
【図3】
図1における線II-IIと線III-IIIに沿った断面図である。
【図4】
図1における、多モード中心導波路のアスペクト比に応じた相対モード振幅及び強さを示す。
【図5】
図1における、多モード中心導波路のアスペクト比に応じた相対モード振幅及び強さを示す。
【図6】
図6は、より低次数の様々な導波路モードに関するモード振幅分布を示す。
【図7】
様々な断面の多モード導波路に沿った位置に応じた電界の強さの変化を示す。
【図8】
様々な断面の多モード導波路に沿った位置に応じた電界の強さの変化を示す。
【図9】
図8の電界の強さの分布の各々に沿った位相変化を示す。
【図10】
Mach-Zehnder干渉計の形状にされた本発明の光学デバイスの平面図である。
【図11】
様々な入力位相条件に関する図10の干渉計の一部分における電界の強さの分布を示す。
【図12】
様々な入力位相条件に関する図10の干渉計の一部分における電界の強さの分布を示す。
【図13】
リッジ形導波路の形に形成された本発明の光ビーム分割器を斜視図の形で示す。
【図14】
リッジ形導波路の形に形成された本発明の光ビーム分割器を斜視図の形で示す。
【図15】
先細の多モード導波路を含む本発明のビーム分割器を示す。
【図16】
図13〜15のビーム分割器に類似したビーム分割器を使用して得られた結果を示す。
【図17】
2次元のビーム分割を与える本発明の別の形状のビーム分割器を概略的に示す。
【図18】
図17の線XVIII-XVIIIに沿った断面図である。
【図19】
レーザの形に作られた本発明の光学デバイスの略断面図と略側面図である。
【図20】
レーザの形に作られた本発明の光学デバイスの略断面図と略側面図である。
【図21】
複合多モード導波路を含む本発明の更に別の実施例の略断面平面図である。
【図22】
本発明の3つの1-対-20方向ビーム分割器から得られた結果を示す。
【図23】
本発明のMach-Zehnder干渉計から得られた結果を示す。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-03-14 
出願番号 特願平4-501199
審決分類 P 1 652・ 851- ZD (G02B)
P 1 652・ 852- ZD (G02B)
P 1 652・ 121- ZD (G02B)
P 1 652・ 113- ZD (G02B)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 日夏 貴史  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 稲積 義登
吉田 英一
登録日 2002-11-15 
登録番号 特許第3370667号(P3370667)
権利者 キネテイツク・リミテツド
発明の名称 光学デバイス  
代理人 大崎 勝真  
代理人 相馬 貴昌  
代理人 入戸野 巧  
代理人 井上 満  
代理人 一入 章夫  
代理人 大崎 勝真  
代理人 相馬 貴昌  
代理人 一入 章夫  
代理人 本山 泰  
代理人 川口 義雄  
代理人 川口 義雄  
代理人 井上 満  

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