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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01G
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H01G
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01G
管理番号 1124330
異議申立番号 異議2003-72420  
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-10-08 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-09-30 
確定日 2005-10-05 
異議申立件数
事件の表示 特許第3391269号「誘電体セラミックおよびその製造方法、ならびに、積層セラミック電子部品およびその製造方法」の請求項1ないし18に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3391269号の請求項1ないし18に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続きの経緯
本件特許第3391269号に係る手続きの主な経緯は次のとおりである。
特許出願(特願平10-236736号) 平成10年 8月24日
(優先権主張 平成10年 1月20日)
特許権設定登録 平成15年 1月24日
特許異議申立(申立人:堺化学工業株式会社)平成15年 9月30日
特許異議申立(申立人:森山 茂靖) 平成15年 9月30日
取消理由通知 平成16年 8月19日
特許異議意見書 平成16年10月25日

第2 本件発明
本件請求項1〜18に係る発明(以下、「本件発明1〜18」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1〜18に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 ペロブスカイト構造のc軸/a軸比が1.005〜1.010であり、結晶格子中のOH基量が1wt%以下(0wt%は含まず。)であり、最大粒子径が0.5μm以下、平均粒子径が0.1〜0.3μmであり、かつ、1つの粉体粒子において、結晶性の低い部分と結晶性の高い部分とからなり、前記結晶性の低い部分の直径が粉体粒径の0.4以下の、湿式合成法で合成しかつ熱処理して得られたチタン酸バリウム系粉末を焼成して得られた、(当該誘電体セラミックの平均粒径)/(前記チタン酸バリウム系粉末の平均粒径)の比をRとしたとき、Rは0.90〜1.2の範囲内にある、誘電体セラミック。
【請求項2】 当該誘電体セラミックの複数の粒子は、個々の粒子内で組成および結晶系が異なるコアシェル構造を示している、請求項1に記載の誘電体セラミック。
【請求項3】 当該誘電体セラミックの複数の粒子は、個々の粒子内で一様な組成および結晶系を示している、請求項1に記載の誘電体セラミック。
【請求項4】 ペロブスカイト構造のc軸/a軸比が1.005〜1.010であり、結晶格子中のOH基量が1wt%以下(0wt%は含まず。)であり、最大粒子径が0.5μm以下、平均粒子径が0.1〜0.3μmであり、かつ、1つの粉体粒子において、結晶性の低い部分と結晶性の高い部分とからなり、前記結晶性の低い部分の直径が粉体粒径の0.4以下の、湿式合成法で合成しかつ熱処理して得られたチタン酸バリウム系粉末を用意する工程と、
前記チタン酸バリウム系粉末を焼成する工程と
を備える、(当該誘電体セラミックの平均粒径)/(前記チタン酸バリウム系粉末の平均粒径)の比をRとしたとき、Rは0.90〜1.2の範囲内にある誘電体セラミックの製造方法。
【請求項5】 焼成後の前記誘電体セラミックの複数の粒子は、個々の粒子内で組成および結晶系が異なるコアシェル構造を示すようにされる、請求項4に記載の誘電体セラミックの製造方法。
【請求項6】 焼成後の前記誘電体セラミックの複数の粒子は、個々の粒子内で一様な組成および結晶系を示すようにされる、請求項4に記載の誘電体セラミックの製造方法。
【請求項7】 複数の積層された誘電体セラミック層と、前記誘電体セラミック層間の特定の界面に沿って形成された内部導体とを含む、積層体を備える、積層セラミック電子部品であって、
前記誘電体セラミック層が、ペロブスカイト構造のc軸/a軸比が1.005〜1.010であり、結晶格子中のOH基量が1wt%以下(0wt%は含まず。)であり、最大粒子径が0.5μm以下、平均粒子径が0.1〜0.3μmであり、かつ、1つの粉体粒子において、結晶性の低い部分と結晶性の高い部分とからなり、前記結晶性の低い部分の直径が粉体粒径の0.4以下の、湿式合成法で合成しかつ熱処理して得られたチタン酸バリウム系粉末を焼成して得られた、(当該誘電体セラミックの平均粒径)/(前記チタン酸バリウム系粉末の平均粒径)の比をRとしたとき、Rは0.90〜1.2の範囲内にある、誘電体セラミックからなる、積層セラミック電子部品。
【請求項8】 前記誘電体セラミックの複数の粒子は、個々の粒子内で組成および結晶系が異なるコアシェル構造を示している、請求項7に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項9】 前記誘電体セラミックの複数の粒子は、個々の粒子内で一様な組成および結晶系を示している、請求項7に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項10】 前記内部導体は、卑金属を含む、請求項7ないし9のいずれかに記載の積層セラミック電子部品。
【請求項11】 前記内部導体は、ニッケルまたはニッケル合金を含む、請求項10に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項12】 前記積層体の端面上の互いに異なる位置に設けられる複数の外部電極をさらに備え、複数の前記内部導体は、いずれかの前記外部電極に電気的に接続されるように、それぞれの端縁を前記端面に露出させた状態でそれぞれ形成されている、請求項7ないし11のいずれかに記載の積層セラミック電子部品。
【請求項13】 ペロブスカイト構造のc軸/a軸比が1.005〜1.010であり、結晶格子中のOH基量が1wt%以下(0wt%は含まず。)であり、最大粒子径が0.5μm以下、平均粒子径が0.1〜0.3μmであり、かつ、1つの粉体粒子において、結晶性の低い部分と結晶性の高い部分とからなり、前記結晶性の低い部分の直径が粉体粒径の0.4以下の、湿式合成法で合成しかつ熱処理して得られたチタン酸バリウム系粉末を用意する工程と、
前記チタン酸バリウム系粉末を含む複数のセラミックグリーンシートと、前記セラミックグリーンシート間の特定の界面に沿って形成された内部導体とを積層した、積層体を作製する工程と、
前記チタン酸バリウム系粉末を焼結させて(当該誘電体セラミックの平均粒径)/(前記チタン酸バリウム系粉末の平均粒径)の比をRとしたとき、Rは0.90〜1.2の範囲内にある誘電体セラミックとするように、前記積層体を焼成する工程と
を備える、積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項14】 焼成後の前記誘電体セラミックの複数の粒子は、個々の粒子内で組成および結晶系が異なるコアシェル構造を示すようにされる、請求項13に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項15】 焼成後の前記誘電体セラミックの複数の粒子は、個々の粒子内で一様な組成および結晶系を示すようにされる、請求項13に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項16】 前記内部導体は、卑金属を含む、請求項13ないし15のいずれかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項17】 前記内部導体は、ニッケルまたはニッケル合金を含む、請求項16に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項18】 前記積層体を作製する工程は、それぞれの端縁を前記積層体の端面に露出させた状態で、複数の前記内部導体を前記セラミックグリーンシート間の特定の界面に沿ってそれぞれ形成する工程を備え、さらに、各前記内部導体の露出した前記端縁にそれぞれ電気的に接続されるように前記積層体の前記端面上に複数の外部電極を形成する工程を備える、請求項13ないし17のいずれかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法。」

第3 特許異議申立の理由及び取消理由の概要
1 特許異議申立の理由
(1)特許異議申立人:堺化学工業株式会社
特許異議申立人堺化学工業株式会社は、証拠として、
刊行物1:Journal of the European Ceramic Society 9(1992)41-46 「Characterization of Hydrothermal Barium Titanate」(特許異議申立人堺化学工業株式会社が提出した甲第1号証、特許異議申立人森山茂靖が提出した甲第2号証)
刊行物2:Journal of the Society of Powder Technology Japan Vol.34No.11 PP862〜874(1997):粉体工学会誌 抜刷 第34巻第11号 (32)〜(44)ページ 1997年「チタン酸バリウムとその複合粒子の製造法とプロセス」(特許異議申立人堺化学工業株式会社が提出した甲第2号証)
刊行物3:特開平6-60721号公報(同甲第3号証)
を提出し、本件特許の請求項1〜18に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された刊行物1〜3に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、さらに、明細書の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してなされたものであり、本件請求項1〜18に係る発明についての特許を取り消すべき旨主張している。

(2)特許異議申立人:森山茂靖
特許異議申立人森山茂靖は、証拠として、
刊行物1:Journal of the European Ceramic Society 9(1992)41-46 「Characterization of Hydrothermal Barium Titanate」(特許異議申立人堺化学工業株式会社が提出した甲第1号証、特許異議申立人森山茂靖が提出した甲第2号証)
刊行物4:特開平9-241074号公報(特許異議申立人森山茂靖が提出した甲第1号証)
刊行物5:「ニューケラス3 積層セラミックコンデンサ」、株式会社学献社、1988年9月26日、33〜38頁,48頁(同甲第3号証)
を提出し、本件特許の請求項1〜18に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された刊行物1,4,5に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、さらに、明細書の記載が不備のため、特許法第36条第4項及び第6項の規定に違反してなされたものであり、本件請求項1〜18に係る発明についての特許を取り消すべき旨主張している。

2 取消理由の概要
取消理由の概要は、以下のとおりである。
「1)本件特許の請求項1〜18に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された下記の刊行物1〜5に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1〜18に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
2)本件特許は、明細書及び図面の記載が下記6,7の点で不備のため、特許法第36条第4項及び第6項の規定に違反してなされたものである。


1.刊行物1:Journal of the European Ceramic Society 9(1992)41-46 「Characterization of Hydrothermal Barium Titanate」(特許異議申立人堺化学工業株式会社が提出した甲第1号証、特許異議申立人森山茂靖が提出した甲第2号証)
2.刊行物2:Journal of the Society of Powder Technology Japan Vol.34No.11 PP862〜874(1997):粉体工学会誌 抜刷 第34巻第11号 (32)〜(44)ページ 1997年「チタン酸バリウムとその複合粒子の製造法とプロセス」(特許異議申立人堺化学工業株式会社が提出した甲第2号証)
3.刊行物3:特開平6-60721号公報(同甲第3号証)
4.刊行物4:特開平9-241074号公報(特許異議申立人森山茂靖が提出した甲第1号証)
5.刊行物5:「ニューケラス3 積層セラミックコンデンサ」、株式会社学献社、1988年9月26日、33〜38頁,48頁(同甲第3号証)

本件請求項1〜18に係る発明は、刊行物1〜5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
特許異議申立人堺化学工業株式会社が提出した特許異議申立書の「4.申立の理由」及び特許異議申立人森山茂靖が提出した特許異議申立書の「3.申立ての理由」も参照されたい。

6.特許異議申立人堺化学工業株式会社が提出した特許異議申立書の「(4)特許請求の範囲の記載不備」記載の点で不備である。

7.特許異議申立人森山茂靖が提出した特許異議申立書の「(4.3)申立ての理由1(明細書の記載不備)」記載の点で不備である。」

第4 当審の判断
1 特許法第36条について
(1)特許異議申立人堺化学工業株式会社は、特許異議申立書第27頁〜第28頁の(4-1)において、「本件特許明細書の【0009】には、「【0009】なお、上述のOH基量は、試料を熱重量分析し、150℃以上の温度での減量値に基づいて求めたものである。」と記載されているが、温度範囲の上限が規定されていないので、減量値は一義的に定められず、請求項1のOH基量も一義的に定められないので、発明が明確でない」旨主張している。
しかし、熱重量分析において、上限温度は、温度上昇に伴う重量減少が止まる温度であることは明らかであり、上限温度の明示がなくても、減量値は一義的に定められるので、請求項1のOH基量が明確でないとはいえない。

(2)特許異議申立人堺化学工業株式会社は、特許異議申立書第28頁〜第30頁の(4-2)において、「結晶性の低い部分と結晶性の高い部分との境界線をどのように設定するかは、非常に困難な問題であり、一義的なものとはいえないので、発明が明確でない」旨主張し、さらに特許異議申立人森山茂靖は、特許異議申立書第10頁〜第11頁の(4.3)<1>において、「結晶性の低い部分と結晶性の高い部分との境界を定量的に判断することは不可能である」旨主張している。
しかし、本件特許明細書に添付された図2は、不鮮明で、境界が判然としないが、特許異議意見書に添付された参考資料は、カラーで明瞭なので、これを見れば境界線を設定することがそれほど困難であるとはいえず、発明が明確でないとはいえない。

(3)特許異議申立人森山茂靖は、特許異議申立書第11頁の(4.3)<2>において、「請求項5、8及び14にコアシェル構造が記載されているが、コアシェル構造とするためには、添加物が必須であるのに、添加物が添加されていないものを含んでいる」旨主張している。
しかし、請求項2、5、8及び14は、焼成後の誘電体セラミックの粒子がコアシェル構造であることを限定しただけであり、コアシェル構造を得るための製法を請求しているわけではないので、添加物を記載する必要性は認められない。さらに、本件特許明細書に実施例として記載された試料1〜17では、コアシェル構造となっており、実施可能要件も満足している。

2 特許法第29条第2項について
(1)刊行物記載の発明
ア 刊行物1記載の発明
刊行物1には、水熱合成法によるチタン酸バリウムの特性に関して、図1、2、6、7、9と共に以下の点が記載されている。
「水熱合成法によるBaTiO3のTEM写真では、比表面積、粒子密度に影響する裂け目や内部空隙がよく見られる(図6)。」(第43頁右欄第11行〜第15行)
「格子欠陥を有するBaTiO3を500℃に加熱することによって、下記式の反応に従って水分が蒸発し、格子欠陥が消滅する。」(第45頁右欄第36行〜第46頁左欄第4行)
「700℃にては相対密度が約93%とかなり低く、これは水熱合成法によるBaTiO3結晶内の空隙によるものと思われる。内部空隙は、800℃以上の熱処理により部分的に消滅する。しかし、水熱合成法によるBaTiO3を焼結させたセラミックスでは、多数の内部空隙がしばしば存在することがTEM観察(図9)によりわかる。」(第46頁右欄第2行〜第8行)

イ 刊行物2記載の発明
刊行物2には、チタン酸バリウムとその複合粒子の製造法とプロセスに関して、以下の点が記載されている。
「水熱合成法によって得られるチタン酸バリウム・・・通常は加熱処理・・が必要である。」(第39頁右欄第15行〜第22行)
「誘電率の温度変化率を平坦化するためには、・・・チタン酸バリウムの粒成長を抑制する成分・・が必要である。」(第42頁左欄第25行〜右欄第1行)

ウ 刊行物3記載の発明
刊行物3には、誘電体磁器およびその製造方法に関して、以下の点が記載されている。
「【0046】・・・湿式法で得られるチタン酸バリウムは・・・結晶性においても満足できるものとするためには、熱処理をする必要がある。」

エ 刊行物4記載の発明
刊行物4には、非還元性誘電体セラミック及びそれを用いた積層セラミック電子部品に関して、以下の点が記載されている。
「【請求項1】 最大粒子径が0.5μm、平均粒子径が0.1〜0.3μmで表される複数の粒子からなる焼結体・・・」
「【0028】又、試料番号3では、水熱合成法で作製した平均粒径0.3μmのチタン酸バリウム(BaTiO3 )と、微粉砕した炭酸マンガンを出発原料とした。」
【0025】【表1】の試料番号3は、焼成前後において平均粒径0.3μmである。

オ 刊行物5記載の発明
刊行物5には、低温焼結性チタン酸バリウムに関し、水熱合成法チタン酸バリウムの粒径について記載されている。

(2)本件発明と刊行物記載の発明との対比・判断
ア 本件発明1について
本件発明1と刊行物1〜5記載の発明とを対比すると、刊行物1〜5には、本件発明1の構成要素である「1つの粉体粒子において、結晶性の低い部分と結晶性の高い部分とからなり、前記結晶性の低い部分の直径が粉体粒径の0.4以下」である点が記載されていない。
本件発明1の結晶性の低い部分とは、空隙などの格子欠陥を多く含む領域のことである(本件特許明細書【0011】参照。)。そして、刊行物1では、「500℃に加熱することによって、水分が蒸発し、格子欠陥が消滅するが、700℃でも水熱合成法によるBaTiO3結晶内に空隙が残り、この内部空隙は、800℃以上の熱処理により部分的に消滅する。しかし、水熱合成法によるBaTiO3を焼結させたセラミックスでは、多数の内部空隙がしばしば存在することがTEM観察(図9)によりわかる」旨記載されており、ミクロの格子欠陥は消滅するが、マクロの空隙は、図9からも明らかなように依然として多く残っている。
また、刊行物1の図6のTEM写真に黒い粒子があるが、これは試料が厚いために像が黒くなったとも考えられ、空隙の直径が小さいか否かは不明である。
なお、特許異議申立人堺化学工業株式会社は、特許異議申立書第14頁第17行〜第19行において、本件発明1における「前記結晶性の低い部分の直径が粉体粒径の0.4以下の、」との要件は、単なる熱処理条件の設定によって決定する数値範囲にすぎない旨主張している。
しかし、熱処理条件の何を制御するかが問題であり、本件発明1では、熱処理時の昇温速度を1℃/分以下にすることにより、結晶性の低い部分の直径を粉体粒径の0.4以下としているが(本件特許明細書【0022】参照。)、熱処理時の昇温速度を1℃/分以下にすることは、各刊行物に記載されておらず、結晶性の低い部分の直径を粉体粒径の0.4以下とすることが、単なる熱処理条件の設定によって決定する数値範囲にすぎないとはいえない。
そして、本件発明1は、上記構成要素により誘電率の温度特性が良く、信頼性の高い誘電体材料とすることができる。
したがって、本件発明1は、刊行物1〜5記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 本件発明2〜18について
本件発明2〜18は、本件発明1の構成要素すべてを含み、更に限定したものであるから、本件発明1と同様の理由により、刊行物1〜5記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び取消理由によっては本件発明1〜18についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1〜18についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2005-09-15 
出願番号 特願平10-236736
審決分類 P 1 651・ 537- Y (H01G)
P 1 651・ 121- Y (H01G)
P 1 651・ 536- Y (H01G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 江畠 博  
特許庁審判長 橋本 武
特許庁審判官 浅野 清
岡 和久
登録日 2003-01-24 
登録番号 特許第3391269号(P3391269)
権利者 株式会社村田製作所
発明の名称 誘電体セラミックおよびその製造方法、ならびに、積層セラミック電子部品およびその製造方法  
代理人 安富 康男  
代理人 八木 敏安  
代理人 小柴 雅昭  
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