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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B |
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管理番号 | 1124965 |
審判番号 | 不服2002-23475 |
総通号数 | 72 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-10-21 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-12-05 |
確定日 | 2005-10-13 |
事件の表示 | 平成5年特許願第84883号「医療用挿入補助具」拒絶査定不服審判事件〔平成6年10月21日出願公開、特開平6-292678号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成5年4月12日の特許出願であって、平成14年10月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成14年12月5日付けで審判請求がなされたものである。その請求項1に係る発明は、平成14年12月25日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。) 「体腔内に挿入器具を挿入するための管路を有する管状部材からなる外套管部と、 前記外套管部の手元側に設けられた本体部と、 前記管路と連通して前記挿入器具を前記管路へ挿通する前記本体部に設けられた挿通路と、 前記本体部に設けられて前記挿通路に前記挿入器具を挿入可能に形成された挿入穴部と、 前記挿通路と前記挿入穴部との連通を開閉するための、弾性を有する材料で形成された弁部材と、 前記弁部材を前記本体部に固定する固定部と、 前記挿入穴部の内径よりも大きな径を有して前記挿入穴部を気密状態で閉鎖可能に形成された前記弁部材に設けられた穴閉鎖部と、 前記弁部材に設けられ、前記挿入穴部から前記挿通路への前記挿入器具の挿入動作に応じて前記穴閉鎖部を前記外套管部の方向へ屈曲させる薄肉部で形成されたヒンジ部と、 前記穴閉鎖部に設けられ、該穴閉鎖部の先端側よりも前記ヒンジ部側の方が高い形状に形成された隆起部と、 を具備したことを特徴とする医療用挿入補助具。」 2.引用刊行物 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願前の昭和60年4月23日に頒布された刊行物(実願昭58-81776号(実開昭60-58101号)のマイクロフィルム)には、以下の事項が記載されている。 (a)「本考案は医療用器具の自動弁に関する。医療用トラカールや内視鏡の鉗子導入管口部には体内からの空気や流体を流出させないために自動弁が付くようになつている。この種の自動弁を第1図によつて説明する。1は導入管であり、その一部が示してある。この後端部2の開口3付近に弁室4がある。5は弁体でありプラスチツク製の半球体であつて一体に連結した支持腕6によつて回動自在に支持されていてその支持部でスプリング7によつて弁座8に球面が押圧されている。このような構成によると、導入管1の開口3から例えばトラカール9を挿入すると、トラカール9によつて弁体5は押されて弁口10が開口するが、スプリング7を用いているために弁体5がひらけばひらくほどスプリング7の発力が強くなるためにトラカール9の挿抜に際して摩擦抵抗が強くなる欠点を有する。」(明細書1頁14行〜2頁11行) (b)第1図には、「導入管1の管路と連通してトラカール9を管路へ挿通する後端部2に設けられた挿通路」が図示されている。 上記記載事項(a)および図示内容(b)を総合すると、刊行物には、医療用器具の自動弁に関し、「体腔内にトラカール9を挿入するための管路を有する導入管1と、導入管1の後端部2と、管路と連通してトラカール9を管路へ挿通する後端部2に設けられた挿通路と、後端部2に設けられて挿通路にトラカール9を挿入可能に形成された開口3と、挿通路と開口3との連通を開閉するための弁体5、支持腕6ないしスプリング7からなる弁を具備した医療器具の自動弁」(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 3.対比 本願発明と引用発明とを対比すると、それらの意味、機能または作用等からみて、後者の「トラカール9」は前者の「挿入器具」に相当し、以下同様に、後者の「導入管1」は前者の「管状部材からなる外套管部」に、後者の「後端部2」は前者の「本体部」に、後者の「開口3」は前者の「挿入穴部」に、後者の「弁」は前者の「弁部材」に、それぞれ相当する。 また、後者の「後端部2」の位置は、トラカール9が操作者の手元側から体腔に向かって移動して体壁に穿孔するものであることからみて、前者の「外套管部の手元側に設けられた」ものということができる。 そして、後者の「医療器具の自動弁」は体腔内にトラカール9を挿入するためのものであるから、前者の「医療用挿入補助具」ということができる。 したがって、両者は、 「体腔内に挿入器具を挿入するための管路を有する管状部材からなる外套管部と、 前記外套管部の手元側に設けられた本体部と、 前記管路と連通して前記挿入器具を前記管路へ挿通する前記本体部に設けられた挿通路と、 前記本体部に設けられて前記挿通路に前記挿入器具を挿入可能に形成された挿入穴部と、 前記挿通路と前記挿入穴部との連通を開閉するための、弁部材と、 を具備した医療用挿入補助具。」の点で一致しており、下記の点で相違している。 【相違点】 弁部材の構成に関し、本願発明では「弾性を有する材料で形成された弁部材と、 前記弁部材を前記本体部に固定する固定部と、 前記挿入穴部の内径よりも大きな径を有して前記挿入穴部を気密状態で閉鎖可能に形成された前記弁部材に設けられた穴閉鎖部と、 前記弁部材に設けられ、前記挿入穴部から前記挿通路への前記挿入器具の挿入動作に応じて前記穴閉鎖部を前記外套管部の方向へ屈曲させる薄肉部で形成されたヒンジ部と、 前記穴閉鎖部に設けられ、該穴閉鎖部の先端側よりも前記ヒンジ部側の方が高い形状に形成された隆起部」とを備えたものであるのに対し、引用発明では「弁体5、支持腕6ないしスプリング7からなる」ものである点。 4.当審の判断 ところで、医療用挿入補助具に用いられる弁部材の構成として「弾性を有する材料で形成された弁部材と、前記弁部材を本体部に固定する固定部と、挿入穴部の内径よりも大きな径を有して前記挿入穴部を気密状態で閉鎖可能に形成された前記弁部材に設けられた穴閉鎖部と、前記穴閉鎖部に設けられ、該穴閉鎖部の先端側よりも屈曲部側の方が高い形状に形成された隆起部」とを備えたものは、本願出願前に周知(例えば、実願平2-54742号(実開平4-13156号)のマイクロフィルム(以下周知文献1という。)の第1〜6図に記載された弁膜体、特開平3-242153号公報に記載された止血プラグ6を参照。)である。 さらに、弾性を有する材料で形成された弁部材において弁部材の屈曲を容易にするために薄肉部で形成されたヒンジ部を設けることは常とう手段(例えば、実願昭62-13988号(実開昭63-121871号)のマイクロフィルム、実願昭56-83509号(実開昭57-194961号)のマイクロフィルムを参照。)といえる。 してみると、引用発明の弁部材に代えて本願出願前に周知の弁部材を採用しつつ、さらに弁部材の屈曲を容易にするために上記常とう手段を適用して、相違点に係る構成とすることは当業者が容易になしうることといえる。 また、本願明細書に記載された、挿入器具の挿脱作業時の操作力の低減や洗浄・組立性の向上という本願発明の効果も、引用発明及び上記周知の弁部材から、当業者が予測し得ることのできる範囲内のものである。 なお、請求人は平成14年12月25日付けの手続補正書により補正された審判請求書において、本願発明の弁部材の構成および隆起部の機能に関し、「本願発明のように、弁部材の穴閉鎖部に隆起部を形成し、この隆起部に穴閉鎖部の先端側よりもヒンジ部側の方が高い形状に形成することにより、挿入穴部への挿入器具の挿入動作時に挿入器具によって穴閉鎖部の隆起部を押した際に、挿入器具は穴閉鎖部に穿さることなく、ヒンジ部を介して穴閉鎖部を外套管部の方向へ屈曲させ、外套管部内へ挿入させる。これにより、挿入器具の挿脱作業時に生じる圧迫力を低減して、挿入器具がうける損傷を防ぐことができ、その操作性を高める、という本願発明特有の技術的思想」が存すると主張するのでこの点につき検討する。 まず、特許請求の範囲の記載をみると、穴閉鎖部の構成は「挿入穴部の内径よりも大きな径を有して前記挿入穴部を気密状態で閉鎖可能に形成された」ものであって、弁部材が本願の【図3】、【図5】のように、挿通路を跨いでいわゆる片持ち梁のごとく設けられており、挿通路への挿入器具の挿入動作に応じて、穴閉鎖部に穿さることなく挿入器具先端が穴閉鎖部の表面をすべりながら、屈曲するものであるとは特定されていない。つまり、穴閉鎖部の構成として上記周知の弁部材のように中心部を挿入器具が突き抜ける態様も排除されていないから、請求人の主張のように、挿入器具が穴閉鎖部の隆起部を押した際に、挿入器具は穴閉鎖部に穿さることなく、ヒンジ部を介して穴閉鎖部を外套管部の方向へ屈曲させるということはできず、当該主張は、特許請求の範囲の記載に基づかない主張といわざるをえない。 5.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明および上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-08-11 |
結審通知日 | 2005-08-16 |
審決日 | 2005-08-30 |
出願番号 | 特願平5-84883 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 西山 智宏、稲村 正義、中田 誠二郎 |
特許庁審判長 |
阿部 寛 |
特許庁審判官 |
内藤 真徳 増沢 誠一 |
発明の名称 | 医療用挿入補助具 |
代理人 | 河野 哲 |
代理人 | 坪井 淳 |
代理人 | 鈴江 武彦 |
代理人 | 風間 鉄也 |
代理人 | 村松 貞男 |