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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1124966 |
審判番号 | 不服2002-22968 |
総通号数 | 72 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-02-23 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-11-28 |
確定日 | 2005-10-13 |
事件の表示 | 平成11年特許願第223227号「診療録装置及び診療録情報管理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年2月23日出願公開、特開2001-52089〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成11年8月6日の出願であって、その請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める(以下、「本願発明」という。)。 「診療録情報を送受する手段を備えた第1の診療録装置と第2の診療録装置とを用いた診療録情報管理方法であって、 患者の診療録情報を記憶する第2の記憶装置を備えた前記第2の診療録装置が、前記第2の診療録装置が備える入力手段で指定された診療録情報を前記第2の記憶装置から抽出し、前記抽出した診療録情報を、前記第1の診療録装置に、事前に転送し、 前記第1の診療録装置は、前記第2の診療録装置から送信された診療録情報を受信し、前記受信した診療録情報を前記第1の診療録装置の第1の記憶装置に記憶保持しておき、 診療現場では、前記第1の診療録装置の前記第1の記憶装置に記憶される診療録情報について参照、及び更新が行なわれ、 前記第1の診療録装置の前記第1の記憶装置の診療録情報が更新された場合には、前記第1の記憶装置は、前記更新された診療録情報を、前記第2の診療録装置に転送し、 前記第1の診療録装置より送信された、前記更新された診療録情報を受信した前記第2の診療録装置は、前記更新された診療録情報によって前記第2の記憶装置の診療録情報を更新する、 ことを特徴とする診療録情報管理方法。」 2.引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、特開平11-143970号公報(以下、「引用例1」という。)には、「医療情報管理システム、医療情報管理方法、記録媒体」に関して、次の事項が図面と共に記載されている。 (a)「【発明の属する技術分野】本発明は、医療情報管理システム,医療情報管理方法,記録媒体に係り、詳しくは、診療録や医療検査結果および健康保険被保険者証の記載事項などの医療情報を管理するシステムおよび管理方法、その医療情報の管理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体に関するものである。」(公報段落番号【0001】) (b)「医療情報管理システム11は、制御装置12,再診受付機13,パーソナルコンピュータ14,LAN(LOCAL AREA NETWORK)15,保険証データ記憶装置16,画像データ記憶装置17,検査データ記憶装置18,診療録データ記憶装置19から構成されている。尚、制御装置12,再診受付機13,パーソナルコンピュータ14はそれぞれLAN15を介して互いに接続されている。また、制御装置12は各記憶装置16〜19とそれぞれ接続されている。 制御装置12は、CPU,ROM,RAM,I/O回路を有する周知のマイクロコンピュータを含んで構成され、電源スイッチ(図示略)がオンされることにより商用電源から電源が供給される。また、制御装置12には外部記憶装置12aが接続されている。そして、制御装置12は、後述するように、再診受付機13および各パーソナルコンピュータ14と各記憶装置16〜19との間のデータのやり取りを制御する。 再診受付機13は、保険医療機関の受付窓口に設置され、磁気テープ付診察券の記載事項のデータを読み取り、当該データをLAN15を介して制御装置12へ転送する。尚、磁気テープ付診察券には磁気テープが取着されており、その磁気テープには診察券の記載事項(被診療者のID番号,氏名,生年月日,年齢,性別など)が記録されている。 各パーソナルコンピュータ14は、保険医療機関内の受付窓口,各診療科,調剤科,会計課などの各部署にそれぞれ設置され、入力装置,表示装置,プリンタなどのコンピュータシステムの一般的な周辺機器(図示略)を備えている。 …(中略)…診療録データ記憶装置19は、診療や検査のために保険医療機関を訪れた全ての被診療者の診療録の記載事項のデータを記憶している。 尚、診療録の記載事項のデータには、オーダー,実施,所見などの診療内容、各種検査結果に基づいた診断結果、投薬や治療などの診療行為などがある。ちなみに、各記憶装置12a,16〜19は、半導体メモリ,ハードディスク,フロッピーディスク,データカード(ICカード,磁気カードなど),光ディスク(CD-ROM,DVDなど),光磁気ディスク(MDなど),相変化ディスク,磁気テープなどの記録媒体を利用する一般的なコンピュータの記憶装置であり、必要なデータを記憶可能であればどのような記録媒体を用いてもよい。」(公報段落番号【0031】〜【0038】) (c)「図3に示すS200において、再診の際に、被診療者は再診受付機13に磁気テープ付診察券を通す。再診受付機13は、診察券に取着された磁気テープのデータを読み取り、そのデータをLAN15を介して制御装置12へ転送する。次に、S210において、制御装置12は、再診受付機13から転送されてきた診察券のデータに基づき、各記憶装置16〜19に対して被診療者に関するデータの転送を要求する。 次に、S220において、各記憶装置16〜19は被診療者に関するデータを読み出し、そのデータを制御装置12へ転送する。次に、S230において、制御装置12は、各記憶装置16〜19から転送されてきた被診療者に関するデータを外部記憶装置12aに記憶させる。 次に、S240において、被診療者を検査または診療した医師や検査技師は、パーソナルコンピュータ14を用いて、制御装置12に対して被診療者に関するデータの転送を要求する。次に、S250において、制御装置12は、外部記憶装置12aから読み出した被診療者に関するデータを、S240にて要求してきたパーソナルコンピュータ14へLAN15を介して転送する。 次に、S260において、被診療者を検査または診療した医師や検査技師は、パーソナルコンピュータ14を用いて被診療者に関するデータに追加や修正を施す。パーソナルコンピュータ14は、追加や修正が施された被診療者に関するデータをLAN15を介して制御装置12へ転送する。 次に、S270において、制御装置12は、パーソナルコンピュータ14から転送されてきたデータに基づいて、外部記憶装置12aに記憶されている被診療者に関するデータを更新させる。次に、S280において、制御装置12は、更新した被診療者に関するデータを各記憶装置16〜19へ転送し、各記憶装置16〜19に記憶されている被診療者に関するデータを更新させる。」(公報段落番号【0046】〜【0050】) 以上のことから、引用例1には、 「診療録のデータを送受する手段を備えたパーソナルコンピュータと制御装置とを用いた診療録のデータ管理方法であって、 患者の診療録のデータを記憶する診療録データ記憶装置を備えた前記制御装置が、前記制御装置と通信可能な再診受付機で指定された診療録のデータを前記診療録データ記憶装置から抽出し、前記抽出した診療録のデータを、前記制御装置に設けた外部記憶装置に事前に転送するとともに、前記パーソナルコンピュータにより指定された診療録のデータを前記外部記憶装置から抽出し、前記抽出した診療録のデータを、前記パーソナルコンピュータに転送し、 前記パーソナルコンピュータは、前記制御装置から送信された診療録のデータを受信し、前記受信した診療録のデータを前記パーソナルコンピュータに記憶保持しておき、 診療現場では、前記パーソナルコンピュータに記憶される診療録のデータについて参照、及び更新が行なわれ、 前記パーソナルコンピュータの診療録のデータが更新された場合には、前記更新された診療録のデータを、前記制御装置に転送し、 前記パーソナルコンピュータより送信された、前記更新された診療録のデータを受信した前記制御装置は、前記更新された診療録のデータによって前記診療録データ記憶装置の診療録のデータを更新する、 ことを特徴とする診療録のデータ管理方法。」 が記載されていると認められる(以下、「引用例1発明」という。)。 また、原査定の拒絶の理由に引用された、特開平4-318675号公報(以下、「引用例2」という。)には、「病院情報システム」に関して、次の事項が図面と共に記載されている。 (d)「【実施例】以下、本発明の基本となる考え方を説明した後、具体的な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。前述の如く、本発明に係る病院情報システムにおいては、病院内の種々の情報をその性質に応じて、分類して取り扱う。すなわち、 …(中略)… 3)ラン状態のカルテ(医師の直接操作情報) 4)アクティブ状態のカルテ(保管状態にあり、容易にラン状態にできる) 5)インアクティブ状態のカルテ(保存状態にあり、アクティブにできる) …(中略)… 等である。これらの電子化情報は、ネットワークを通じてオンラインシステム化される。…(中略)… 以下、上記1)〜10)について詳細に説明する。 …(中略)… 3)〜5)はカルテ情報で、その状態により分類している。ここで、「ラン」とは、医師がそのカルテを扱っている状態である。すなわち、対象患者の検査情報を参照したり、オーダや所見その他の診療情報の入力を行う等、医師が情報を操作しているあるいは容易に操作できる状態である。具体的には、医師ワークステーションを通じて処理中または処理のため待機中のカルテである。「アクティブ」とは、容易に(短時間に)上記ラン状態にすべきカルテである。具体的には、現在診療が進行中の患者のカルテである。これは当日の診療(カルテの使用)の予定が無いものも含む。「インアクティブ」とは、既に目的とした診療が終了したか、あるいは、新たな診療行為が実施されないまま所定の期間が経過した患者のカルテである。上記性質から、本発明に係る病院情報システムにおいては、「ラン」はワークステーション上に置くカルテ情報、「アクティブ」は診療が実施される目的診療科で管理する、すなわち各診療科保管ファイルに置くカルテ情報とし、科内のローカルエリアネットワーク(支線LAN)等を通じて、高速にワークステーションに取り込み、かつ、そこで新たに追加された情報を含むカルテは、容易に上記科内保管ファイルに転送して最新情報の反映されたカルテとすることに特徴がある。」(公報段落番号【0006】〜【0007】) (e)「図3に、診療の過程を示す。まず、医師は、WS42を通じて自分および患者のIDで電子カルテシステムを起動する(ステップ21および22)。これにより、当該患者のカルテが開かれる(ステップ23)。すなわち、科内保管ファイル(F)41からアクティブ状態の当該カルテが、患者名で検索されてWSに表示され、ラン状態になる。ここで、上記カルテは、当日の診療スケジュールに従って予めWSに移し、ラン状態にしておくこともできる。なお、上記カルテには、前回までの診療記録が記載されており、医師はそれを基に診療を実行する。診療では、これまでの診療記録や検査データの参照,これらの情報の処理や表示法の変更等をWS上で実行する。更に、新たなオーダの発行やコメント、所見の入力、予約や診療計画の検討等を実行する(ステップ24)。検査や処置のオーダ等が発行されると、カルテに記録するとともにネットワークを介してそれぞれの目的部署に伝送される(ステップ25)。この制御はサーバ(S)40およびWS42からなる電子カルテシステムが行う。予約や他の部署宛の情報についても同様である。上記診療の実行に当たっては、例えば検査の状況や各種装置、病棟、予約状況等の情報の参照が必要である(ステップ26)。これらは病院内管理情報システムを通じて確認する。診療が終了するとカルテを閉じる(ステップ27)。すなわち、WS42上のランカルテを保管ファイル(F)41に戻す。ここで、当該患者が複数の科を受診している場合には、当該科の保管ファイル内容を他科の保管ファイルにも転送する(ステップ28)。なお、複数科受診は、前述の病院内管理情報システムを通じて確認する。カルテを閉じる事で電子カルテシステムは終了する。」(公報段落番号【0014】) 以上のことから、引用例2には、 「各診療科保管ファイルに保管されたカルテ情報を、当日の診療スケジュールに従って、予め医師の用いるワークステーションに移し、処理中または処理のため待機中にしておくこと」が記載されていると認められる。 3.対比 本願発明(以下、「前者」という。)と引用例1発明(以下、「後者」という。)とを対比すると、後者の「診療録のデータ」は前者の「診療録情報」に相当し、以下、同様に、後者の「パーソナルコンピュータ」は前者の「第1の診療録装置」に、後者の「制御装置」は前者の「第2の診療録装置」に、後者の「診療録データ記憶装置」は前者の「第2の記憶装置」に、それぞれ相当する。 また、後者の「制御装置と通信可能な再診受付機」は、抽出すべき診療録のデータを指定する情報を送信することにより、制御装置に入力するものであるから、前者の「第2の診療録装置が備える入力手段」に相当する。 してみれば、両者は、 「診療録情報を送受する手段を備えた第1の診療録装置と第2の診療録装置とを用いた診療録情報管理方法であって、 患者の診療録情報を記憶する第2の記憶装置を備えた前記第2の診療録装置が、前記第2の診療録装置が備える入力手段で指定された診療録情報を前記第2の記憶装置から抽出し、前記抽出した診療録情報を、前記第1の診療録装置に転送し、 前記第1の診療録装置は、前記第2の診療録装置から送信された診療録情報を受信し、前記受信した診療録情報を前記第1の診療録装置に記憶保持しておき、 診療現場では、前記第1の診療録装置に記憶される診療録情報について参照、及び更新が行なわれ、 前記第1の診療録装置の診療録情報が更新された場合には、前記更新された診療録情報を、前記第2の診療録装置に転送し、 前記第1の診療録装置より送信された、前記更新された診療録情報を受信した前記第2の診療録装置は、前記更新された診療録情報によって前記第2の記憶装置の診療録情報を更新する、 ことを特徴とする診療録情報管理方法。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] 前者の「第1の診療録装置」は、第1の記憶装置を備え、診療録情報の記憶保持、参照、更新、転送に用いるのに対し、後者の「パーソナルコンピュータ」は、記憶装置に言及がない点。 [相違点2] 前者の「第2の診療録装置」は、抽出した診療録情報を、第1の診療録装置に事前に転送するのに対し、後者の「制御装置」は、抽出した診療録のデータを、外部記憶装置に対しては事前に転送するものの、パーソナルコンピュータに対しては、その要求に応じて転送するものである点。 4.当審の判断 [相違点1について] 他の装置とデータを送受する手段を備えた端末装置として用いられるパーソナルコンピュータに記憶装置を設け、送受するデータの記憶保持、参照、更新、転送に用いることは、例を示すまでもなく当業者の周知技術であるから、引用例1発明に対して、前記した周知技術を適用し、上記した相違点1に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得ることである。 [相違点2について] 診療録等の医療現場で参照される情報を、医師の用いるワークステーション等の情報処理装置に予め転送することは、上記した引用例2に記載される他、出願人が本願明細書中で提示する先行技術文献である特開平5-28205号公報(特に、公報段落番号【0008】の「患者の再来受付けと同時に、…(中略)…診療WS4への転送を指示し、…(中略)…医師からの情報要求に対して即時に応答できるようにしている。」との記載等を参照。)にも記載のように、当業者の周知技術であると認められる。 そして、このような周知技術を引用例1発明に適用すること、すなわち、制御装置による診療録データの事前転送処理の転送先として、パーソナルコンピュータ自体を選択し、パーソナルコンピュータからの要求を待つことなく診療録データをパーソナルコンピュータに予め転送することについて、これを阻害する要因も認められないから、引用例1発明に対して、前記した周知技術を適用し、上記した相違点2に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得ることである。 そして、本願発明の作用効果も、上記した引用例1、2の記載及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである なお、請求人は、「その医療機関における全ての患者の情報やその診療のスケジュール等を総括して管理できる立場の者であり、そのような者は、第1の診療録装置と第2の診療録装置との間の通信が可能かどうかといった状況も把握しているのが普通」とする第2の診療録装置の「操作者」の存在を仮定して、本願発明の作用効果の顕著性を主張するが、特許請求の範囲の記載に基づく主張ではないから採用することができない。 5.むすび したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 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審理終結日 | 2005-08-09 |
結審通知日 | 2005-08-16 |
審決日 | 2005-08-29 |
出願番号 | 特願平11-223227 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松田 直也 |
特許庁審判長 |
赤穂 隆雄 |
特許庁審判官 |
篠原 功一 阿波 進 |
発明の名称 | 診療録装置及び診療録情報管理方法 |
代理人 | 工藤 雅司 |
代理人 | 机 昌彦 |
代理人 | 机 昌彦 |
代理人 | 机 昌彦 |
代理人 | 谷澤 靖久 |
代理人 | 谷澤 靖久 |
代理人 | 河合 信明 |
代理人 | 工藤 雅司 |
代理人 | 谷澤 靖久 |