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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1125316 |
審判番号 | 不服2003-6838 |
総通号数 | 72 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-12-14 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-04-23 |
確定日 | 2005-10-24 |
事件の表示 | 特願2001- 62108「支援必要者用遠隔支援システム」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月14日出願公開,特開2001-344355〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯・本願発明 本願は,平成12年3月27日の出願(特願2000-86076号)を基礎として優先権を主張する平成13年3月6日の出願であって,本願の発明は,15年2月20日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたものと認められるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は次のとおりである。 「【請求項1】 支援必要者の眼鏡フレーム(2)に設けられてその支援必要者を基準とした正面方向を撮影し,その撮影した映像を含む画像信号を出力する第1の撮影手段(3)と,前記支援必要者から支援要求を入力してその支援要求を含む支援要求信号を出力する支援要求入力手段(4)と,支援情報信号を入力してそこに含まれた支援情報を前記支援必要者に出力する支援情報出力手段(5)と,前記撮影手段からの画像信号と前記支援要求入力手段からの支援要求信号とを支援端末装置(6)に無線通信回線を介して送信するとともに前記支援端末装置から無線通信回線を介して受信した支援情報信号を前記支援情報出力手段に出力する第1の無線通信手段(7)とを有する携帯型支援装置(8)と,常時稼働して,前記第1の無線通信手段から受信した前記第1の撮影手段からの画像信号に含まれた映像を表示するとともにその第1の無線通信手段から受信した前記支援要求入力手段からの支援要求信号に含まれた支援要求を出力し,その映像と支援要求とに応じた支援情報を支援者から入力してその支援情報を含む前記支援情報信号を前記第1の無線通信手段に無線通信回線を介して送信する一または複数の前記支援端末装置とを具えてなる支援必要者用遠隔支援システムにおいて, 前記第1の撮影手段に,支援端末装置(6)からの指示による支援必要者(1)の操作あるいは支援端末装置(6)からの遠隔操作により,映像の画質(解像度,色情報,各画素の量子化レベル等),明るさ(シャッター速度,絞り,バイアス等),1秒間に送る画像数すなわちフレームレート(FPS:frame per second),視野(パン,チルト,ズーム),支援要求信号のパケットサイズ,あるいは映像と音声との通信帯域幅の一もしくは複数のパラメータを変更することにより,支援要求信号が支援者にとってわかりやすく支援しやすいものになるようにした機能を設けたことを特徴とする支援必要者用遠隔支援システム。」 2 引用例 これに対して,原査定の拒絶の理由に引用された,刊行物には以下の事項が記載されている。 (1) 坂本夏樹他,「ディジタルスチルカメラと携帯電話を用いた視覚障害者支援システムの検討」映像情報メディア学会誌,社団法人映像情報メディア学会,1997年11月20日,第51巻,第11号,p.1906〜1914(以下,「引用例1」という。) ア 「このような画像情報を用いたシステムを実際に構築する上で柱となる機能が,画像情報の取得およびその伝送である 我々は,最近普及の著しい携帯型のディジタルスチルカメラを用いれば,静止画像の圧縮されたディジタルデータを扱える点,また移動体通信機器(携帯電話,PHS等)を用いれば,情報の送受信が場所による制約を受けにくく,容易に行える点に着目し,ディジタルスチルカメラとディジタル携帯電話を用いて,あたかも視覚障害者の傍に支援者がいるような状況を作り出す視覚障害者支援システムを作製し,その性能の検討を行った。なお,使用した機器の伝送速度の制限等で,現在,実時間での処理が必ずしも充分とはいえない。そこで,視覚障害者支援のためにこのようなシステムを用いた支援法の可能性を示すことに重点を置いた。なお,2000年頃には,動画像を扱える伝送速度の実現が予定されている。」(1907頁左欄14〜29行) イ 「しかし,支援者が遠隔地で認識対象の画像を見ることができ,その場所から指示を行うことができれば,擬似的に視覚障害者の傍にいるような状況を作り出すことが可能となる。このような支援を行えれば,必要な場合のみ支援者の指示を仰げばよいことから,視覚障害者が単独で行動し,社会参加する機会を増やすことができると考える。」(1908頁左欄3〜9行) ウ「撮像部は,動画像を扱えることが理想だが,現時点では伝送速度の制限から静止画に限定した。」(1908頁右欄12〜13行) エ 「データ伝送・指示部としては,無線によるデータ伝送と音声による指示が行えるものとして,モデム付きのディジタル携帯電話(NTTドコモ,デジタルムーバF,デジタルデータアダプタ2400)を選択した。」(1908頁右欄19〜22行) オ 「(1) 障害者のカメラ撮影は,腹部の位置でカメラを水平にして自分の前方を写す。これ以外の状態で撮影するときは,必ずどういう状態で撮影するのか支援者が指示を出す(例えばカメラを手にとって,目の高さで撮影するなど)。」(1909頁左欄21〜25行) 3 対比・判断 (1) 本願発明と引用例1に記載された発明(以下「引用発明」という。)とを対比する。 引用発明の,「視覚障害者」は,本願発明の「支援必要者」に相当し,引用発明も本願発明と同様「支援必要者用遠隔支援システム」と理解できる。 引用発明では,「撮像部は,動画像を扱えることが理想だが,現時点では伝送速度の制限から静止画に限定した。」(前掲ウ)とあることから,本願の出願時点における技術の進展状況からみて,動画像を扱うことは,実質的に記載されているとみることができる。 「障害者のカメラ撮影は,腹部の位置でカメラを水平にして自分の前方を写す」(前掲オ)ことから,引用発明でも正面方向を撮影していることが認められる。 さらに,引用発明では「無線によるデータ伝送と音声による指示が行えるものとして,モデム付きのディジタル携帯電話」を利用していることから,この携帯電話が支援要求入力手段及び支援情報出力手段に相当し,無線通信回線を介して伝送していることも,当業者であれば容易に理解できるところである。 (2) 一致点,相違点 以上を踏まえると本願発明と引用発明とは,次の一致点を有し,後記する相違点を備える。 【一致点】 支援必要者に設けられてその支援必要者を基準とした正面方向を撮影し,その撮影した映像を含む画像信号を出力する第1の撮影手段(3)と,前記支援必要者から支援要求を入力してその支援要求を含む支援要求信号を出力する支援要求入力手段(4)と,支援情報信号を入力してそこに含まれた支援情報を前記支援必要者に出力する支援情報出力手段(5)と,前記撮影手段からの画像信号と前記支援要求入力手段からの支援要求信号とを支援端末装置(6)に無線通信回線を介して送信するとともに前記支援端末装置から無線通信回線を介して受信した支援情報信号を前記支援情報出力手段に出力する第1の無線通信手段(7)とを有する携帯型支援装置(8)と,前記第1の無線通信手段から受信した前記第1の撮影手段からの画像信号に含まれた映像を表示するとともにその第1の無線通信手段から受信した前記支援要求入力手段からの支援要求信号に含まれた支援要求を出力し,その映像と支援要求とに応じた支援情報を支援者から入力してその支援情報を含む前記支援情報信号を前記第1の無線通信手段に無線通信回線を介して送信する支援端末装置とを具えてなる支援必要者用遠隔支援システム。 【相違点1】本願発明では,撮影手段が眼鏡フレームに設けられているのに対し,引用発明では,撮影手段を腹部に設けている点。 【相違点2】本願発明では,支援端末装置が「常時稼働」しているのに対し,引用発明では,端末の稼働時間に関する記載がない点。 【相違点3】本願発明は,「第1の撮影手段に,支援端末装置(6)からの指示による支援必要者(1)の操作あるいは支援端末装置(6)からの遠隔操作により,映像の画質(解像度,色情報,各画素の量子化レベル等),明るさ(シャッター速度,絞り,バイアス等),1秒間に送る画像数すなわちフレームレート(FPS:frame per second),視野(パン,チルト,ズーム),支援要求信号のパケットサイズ,あるいは映像と音声との通信帯域幅の一もしくは複数のパラメータを変更することにより,支援要求信号が支援者にとってわかりやすく支援しやすいものになるようにした機能を設け」ているのに対し,引用発明では,撮影手段である電子スチルカメラがこれらの機能を有していない点。 (3) 相違点の判断 相違点1について 原査定の拒絶の理由で引用された「視覚補助装置」と題する特開2000-325389号公報(平成12年11月28日公開,以下,「引用例2」という。)には,撮影手段が眼鏡フレームに設けられた例が示されている。 すなわち,引用例2の要約には,図2を選択図として「【課題】目の不自由な人に対して,屋外,屋内にてカメラによる画像認識から移動を可能にするために,カメラの画像をセンサーあるいは音声でリアルタイムに知らせることで,目の不自由な人が自由に行動できるようにする視覚補助装置を提供する。 【解決手段】 眼鏡203にカメラ201と眼鏡レンズ204を通常の眼鏡のレンズ内に装置し,同時に眼鏡の片側にあるレンズ位置にカメラ202と眼鏡レンズ205を装置する。カメラ201の映像信号はレンズ領域内のスペースと眼鏡フレーム206に電子部品を装置するが,スペースが不足の場合は耳ホルダー214の後方に増幅部213を装置する。カメラ202の映像信号も眼鏡レンズ領域内と眼鏡フレーム207内に電子部品を装置し,スペースが不足のときは耳ホルダー212にも増幅部を装置して対応する。」 との記載があり,この技術を引用発明に適用することは,引用例2に記載された発明が本願発明と同様の技術分野に属することから当業者であれば容易に想到できたものと認められる。 なお,引用例2は本願の優先日後の公開であるが,本願出願時に本願の図3ないし6に関する実施例を追加したことから,第1の撮影手段及び支援端末装置の技術的特徴の範囲が,優先権主張の基礎出願(特願2000-86076号)の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内ではないので,本願の優先権の主張は認められず,現実の出願日である平成13年3月6日が基準となる。 相違点2について 支援者がみる端末装置を常時稼働とするか,必要なときのみ稼働させるかは,システムの運用の問題であり,なんら技術的な事項は存在せず,当業者であれば必要に応じ適宜実施できる程度の事項にすぎない。 相違点3について 引用発明には,支援必要者のカメラ撮影について「腹部の位置でカメラを水平にして自分の前方を写す。これ以外の状態で撮影するときは,必ずどういう状態で撮影するのか支援者が指示を出す(例えばカメラを手にとって,目の高さで撮影するなど)」とあることから,撮影手段が支援者にとって分かりやすく支援しやすいものとなるようにしていることが認められる。 本願の出願時点における当業者に知られた動画撮影を行う撮影手段は,本願発明が規定する各種の機能である,画質,明度,フレームレート,視野,通信のパケットサイズあるいは帯域幅を変更する機能を備えていることは,自明の事項である。 この点に関し,請求人は,「カメラを遠隔制御するシステムにおいて,複数のパラメータを変更する機能を実現するための具体的な構成」は,例えば特開平10-164420号公報や特開平9-163253号公報等に開示されていることを自認している。 そうすると,引用発明において撮影手段として動画を撮影するカメラを採用するに際し,上記各種の機能を備えているものとすることは,当業者であれば容易に想到し得る事項と認められる。 そして,本願発明については,相違点全体としても格別なものとはいえず,効果についても当業者が予測し得ない格別顕著なものは認められない。 4 むすび したがって,本願発明は,引用発明に基づいて,引用例2に記載された技術を参酌することにより,当業者が容易に発明をすることができたものであるので,他の請求項について検討するまでもなく,本願は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-08-30 |
結審通知日 | 2005-09-01 |
審決日 | 2005-09-13 |
出願番号 | 特願2001-62108(P2001-62108) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松田 直也 |
特許庁審判長 |
杉山 務 |
特許庁審判官 |
大野 弘 深沢正志 |
発明の名称 | 支援必要者用遠隔支援システム |
代理人 | 野村 泰久 |
代理人 | 野村 泰久 |