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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1125365
審判番号 不服2002-11258  
総通号数 72 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-06-20 
確定日 2005-10-27 
事件の表示 特願2001-171683「肌トラブル出現注意時期の鑑別法及び鑑別のためのシート」拒絶査定不服審判事件〔平成14年2月26日出願公開、特開2002-58651〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成13年6月6日(優先権主張平成12年6月7日)の出願であって、平成14年5月10日付けで拒絶査定(発送日平成14年5月21日)がなされ、これに対し、平成14年6月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年6月20日付けで手続補正がなされたものである。

II.平成14年6月20日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年6月20日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正の内容
本件補正は、補正前の特許請求の範囲(平成14年1月11日付けの手続補正による):
「【請求項1】15歳までで一番長く住んでいた地域の気候特性を指標とする肌トラブルの出現注意時期の鑑別法に於いて、雨や曇り、霧の多いところが該当する地域の気候特性である人の肌トラブルの出現注意時期を環境変化のあったときと鑑別することを特徴とする、肌トラブル出現注意時期の鑑別法。
【請求項2】15歳までで一番長く住んでいた地域の気候特性を指標とする肌トラブルの出現注意時期の鑑別法に於いて、1)雪が多い気候条件の地域、2)気温の高い気候条件の地域、及び、3)気温の低い気候条件の地域の何れかの地域が該当する地域の気候特性である人の肌トラブルの出現注意時期を季節の変わり目と鑑別することを特徴とする、肌トラブルの出現注意時期の鑑別法。
【請求項3】15歳までで一番長く住んでいた地域の気候特性を指標とする肌トラブルの出現注意時期の鑑別法に於いて、1)雨や曇り、霧の多いところが該当する地域の気候特性である人の肌トラブルの出現注意時期を環境変化のあったときと鑑別し、1’)雪が多い気候条件の地域、2’)気温の高い気候条件の地域、及び、3’)気温が低いところの何れかの地域が該当する地域の気候特性である人の肌トラブルの出現注意時期を季節の変わり目と鑑別することを特徴とする、肌トラブルの出現注意時期の鑑別法。
【請求項4】請求項1〜3何れか1項に記載の鑑別のためのシートであって、15歳までで一番長く住んでいた地域の気候特性とその気候特性に対する肌トラブルの出現注意時期とが対応させて記載されており、該気候特性が「雨や曇り、霧の多い」、「雪が多い」、「気温が高い」、及び、「気温が低い」のうちの何れかであり、該気候特性のイメージを表現する象徴的な図形で記載してあることを特徴とする、肌トラブルの出現注意時期の鑑別のためのシート。
【請求項5】更に、15歳までで一番長く住んでいた地域の属性の人に特徴的な、紫外線に対する抵抗力についてのコメントが記されていることを特徴とする、請求項4に記載の肌トラブルの出現注意時期の鑑別のためのシート。
【請求項6】請求項4又は5に記載の肌トラブルの出現注意時期の鑑別のためのシートにおいて、背景が淡い寒色によって彩られ、肌トラブルの出現注意時期の記載が淡い暖色で彩られたコラム中に明度の低い色の文字で描かれていることを特徴とする、肌トラブルの出現注意時期の鑑別のためのシート。
【請求項7】淡い寒色が、淡い青及び淡い紫から選ばれる1種乃至は2種以上である請求項6に記載の肌トラブルの出現注意時期の鑑別のためのシート。
【請求項8】淡い暖色が淡い黄色及びオレンジから選ばれる1種乃至は2種以上である、請求項6又は7に記載の肌トラブルの出現注意時期の鑑別のためのシート。」
を、
「【請求項1】15歳までで一番長く住んでいた地域の気候特性を指標とする肌トラブルの出現注意時期の鑑別法に於いて、雨や曇り、霧の多いところが該当する地域の気候特性である人の肌トラブルの出現注意時期を環境変化のあったときと鑑別することを特徴とする、肌トラブル出現注意時期の鑑別法。
【請求項2】15歳までで一番長く住んでいた地域の気候特性を指標とする肌トラブルの出現注意時期の鑑別法に於いて、1)雪が多い気候条件の地域、2)気温の高い気候条件の地域、及び、3)気温の低い気候条件の地域の何れかの地域が該当する地域の気候特性である人の肌トラブルの出現注意時期を季節の変わり目と鑑別することを特徴とする、肌トラブルの出現注意時期の鑑別法。
【請求項3】15歳までで一番長く住んでいた地域の気候特性を指標とする肌トラブルの出現注意時期の鑑別法に於いて、1)雨や曇り、霧の多いところが該当する地域の気候特性である人の肌トラブルの出現注意時期を環境変化のあったときと鑑別し、1’)雪が多い気候条件の地域、2’)気温の高い気候条件の地域、及び、3’)気温の低いところの何れかの地域が該当する地域の気候特性である人の肌トラブルの出現注意時期を季節の変わり目と鑑別することを特徴とする、肌トラブルの出現注意時期の鑑別法。
【請求項4】請求項1〜3何れか1項に記載の鑑別のためのシートであって、15歳までで一番長く住んでいた地域の気候特性とその気候特定に対する肌トラブルの出現注意時期とが対応させて記載されており、該気候特性が「雨や曇り、霧の多い」、「雪が多い」、「気温が高い」、及び、「気温が低い」のうちの何れかであり、該気候特性のイメージを表現する象徴的な図形で記載してあることを特徴とする、肌トラブルの出現注意時期の鑑別のためのシート。
【請求項5】更に、15歳までで一番長く住んでいた地域の属性の人に特徴的な、紫外線に対する抵抗力についてのコメントが記されていることを特徴とする、請求項4に記載の肌トラブルの出現注意時期の鑑別のためのシート。
【請求項6】請求項4又は5に記載の肌トラブルの出現注意時期の鑑別のためのシートにおいて、背景が淡い寒色によって彩られ、肌トラブルの出現注意時期の記載が淡い暖色で彩られたコラム中に黒文字で描かれており、淡い寒色が、淡い青及び淡い紫から選ばれる1種乃至は2種以上であり、淡い暖色が淡い黄色及びオレンジから選ばれる1種乃至は2種以上であることを特徴とする、肌トラブルの出現注意時期の鑑別のためのシート。」
と、補正するものである。

上記補正は、(イ)請求項6における(i)補正前の「明度の低い色の文字」を「黒文字」と特定するとともに、(ii)「淡い寒色」が淡い青及び淡い紫から選ばれる1種乃至は2種以上であり、(iii)「淡い暖色」が淡い黄色及びオレンジから選ばれる1種乃至は2種以上であると特定し、(ロ)淡い寒色について特定していた請求項7および淡い暖色について特定していた請求項8を削除するものであるから、当初明細書に記載された内容に基づいており、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2.独立特許要件の検討
そこで、この補正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)本願明細書には、段落【0007】(平成14年1月11日付けの手続補正による)に、「(1)本発明の肌トラブルの出現注意時期の鑑別法
本発明の肌トラブルの出現注意時期の鑑別法は、幼少年期の大半を過ごした地域の気候特性を指標とすることを特徴とする。ここで、幼少年期とは、・・・代表できる。この期間に過ごした気候的環境から紫外線或いは温度などに対する抵抗力が傾向づけられ、それぞれの抵抗性の傾向の違いにより肌のトラブルの出方や出るタイミングなどが異なってくる。これは、この期間が人間の一生における環境適応性を決定づけるからだと考えられている。ここで、幼少年期の大半を過ごしたところは、出身地を代表特性値として用いても大きな違いはなく、アイデンティティーの強さから、この様な出身地のイメージを用いることが的確な鑑別が出来るので有利である。この様な適応性を決定づける環境的因子としては、紫外線や温度等が挙げられる。具体的には、本発明においては地域的気候条件を、1)日射しが強いところ、2)雨や曇り霧の多いところ、3)雪が多いところ、4)気温が高いところ、5)気温が低いところ、6)都市部の6つに特徴付け、これに加えて1)〜6)の何れにも特徴づけられない地域を選択肢として設けておくことが好ましい。これは、本発明者らが、個対応のカウンセリング化粧料の販売時のプロファイルデータ(例数1342)の調査より、明らかにしたもので、肌トラブルを実感する時期と幼少年期の大半を過ごした地域の気候特性をプロットしたものは、図1、図2に示した如くになり、肌トラブルを起こしやすい時期が、季節の変わり目と急激に環境が変化した時期の二つであり、この二つの内のどちらがより大きな要因となるかは、幼少年期の大半を過ごした地域の気候特性によって特徴づけられることが判る。中でも、肌トラブルに対して、雨、曇り又は霧が多いところは環境の急激な変化が大きな因子となっていることは、特に特徴的であると言える。この様な傾向を利用して肌トラブルの出現注意時期を鑑別するのが、本発明の鑑別法である。この様な鑑別により、肌トラブルの出現時期を予測することが出来、実際に肌トラブルの発生に素早く対応することが出来る。この様な対応により、肌トラブルなどの好ましくない事象を避け、更なる悪化を防ぐことが出来る。」と記載されている。
そして、図1,図2が上記例数1342の調査の肌トラブルを実感する時期と幼少年期の大半を過ごした地域の気候特性をプロットしたものを示すものであると記載されているが、図2については、段落【0017】にあるように「光に対する反応と出身地の気候特性との関係」を示したものであるから、肌トラブルを実感する時期と幼少年期の大半を過ごした地域の気候特性をプロットしたものには該当しない。
また、その調査にあたり、具体的な地域を上記の6種の地域的気候条件にどのような基準で区分して回答を得たのか、例えば、どの程度に雨や曇り、霧が多い場合に「雨や曇り、霧の多いところ」と区分するのか、またさらに、雨や曇り霧の多く日照時間が少なくなる結果気温が低い地域となる場合など、複数の気候条件に当てはまる地域も当然存在し、特に都市部などは1)から5)までのすべての気象条件と重複する場合が考えられるが、これらの点については、明細書及び図面の他の記載をみても、具体的な地域を上記の6種の気候条件に区分する際の基準となるような説明や記載は何ら存在しない。
しかも、本願明細書の段落【0009】〜【0015】、図3(段落【0013】及び図3は平成14年1月11日付けの手続補正による)によれば、15歳までで一番長く住んでいた地域の気候特性を指標とする肌トラブルの出現注意時期の鑑別法であるとしても、雨や曇り、霧の多いところが該当する地域である場合以外は、上記6種以外の場合も含めてすべての場合において、肌トラブルの出現注意時期を季節の変わり目と鑑定すると記載されている。

(2)本件補正後の請求項1〜3に記載された事項により特定される発明は、
「【請求項1】15歳までで一番長く住んでいた地域の気候特性を指標とする肌トラブルの出現注意時期の鑑別法に於いて、雨や曇り、霧の多いところが該当する地域の気候特性である人の肌トラブルの出現注意時期を環境変化のあったときと鑑別することを特徴とする、肌トラブル出現注意時期の鑑別法。
【請求項2】15歳までで一番長く住んでいた地域の気候特性を指標とする肌トラブルの出現注意時期の鑑別法に於いて、1)雪が多い気候条件の地域、2)気温の高い気候条件の地域、及び、3)気温の低い気候条件の地域の何れかの地域が該当する地域の気候特性である人の肌トラブルの出現注意時期を季節の変わり目と鑑別することを特徴とする、肌トラブルの出現注意時期の鑑別法。
【請求項3】15歳までで一番長く住んでいた地域の気候特性を指標とする肌トラブルの出現注意時期の鑑別法に於いて、1)雨や曇り、霧の多いところが該当する地域の気候特性である人の肌トラブルの出現注意時期を環境変化のあったときと鑑別し、1’)雪が多い気候条件の地域、2’)気温の高い気候条件の地域、及び、3’)気温の低いところの何れかの地域が該当する地域の気候特性である人の肌トラブルの出現注意時期を季節の変わり目と鑑別することを特徴とする、肌トラブルの出現注意時期の鑑別法。」である。
そうすると、15歳までで一番長く住んでいた具体的な地域が、雨や曇り、霧がある程度多い場合に「雨や曇り、霧の多いところ」に該当するとして他の気候条件の地域と明確に区分できなければ、鑑別結果が左右されてしまう結果となる。
ところが、「雨や曇り、霧の多いところ」という記載自体、何と比較してそれらが「多い」のか、その比較の基準が明確でない記載であるし、雨や曇り、霧の多い結果、気温の低くなる場合もあるにもかかわらず、区分すべき他の気候条件の地域も、「雪が多い」、「気温の高い」や「気温の低い」という、同様にその比較に基準が明確でない「多い」、「高い」、「低い」という記載表現を含むものであって、本願明細書の発明の詳細な説明には、前記(1)で検討したように、肌トラブルの出現注意時期を鑑別するための指標として、15歳までで一番長く住んでいた具体的な地域を、「雨や曇り、霧の多いところ」に該当するのかどうか、他の気候条件の地域に該当するのかどうかを、どのような基準に従って区分すればよいのかについて、当業者が再現性ある状態で区分できるように記載されていないから、当業者が本件補正後の請求項1および3に記載された発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載してあるものということができない。
そして、本件補正後の特許請求の範囲1ないし3における「雨や曇り、霧の多いところ」や「雪が多い」、「気温の高い」、「気温の低い」という、何と比較して「多い」あるいは「高い」、「低い」のか比較の基準の不明な記載表現は、結果的に特許を受けようとする発明を明確でないものとしている。

(3)また、本件補正後の特許請求の範囲1ないし3には、「環境変化」、「季節の変わり目」という記載表現があるが、「環境変化」には気候の変化も通常含まれるし、さまざまな事象の変化が含まれる広義の記載表現である。そして、「季節の変わり目」といっても、季節がどのように変化した時点をそのように呼ぶか、一定の基準があるわけでもなく漠然としているとしかいえないものである。
そうすると、鑑定結果として、肌トラブルの出現注意時期を「環境変化のあったときと鑑別する」、あるいは「季節の変わり目と鑑別する」という記載表現では、用語の意味が曖昧かつ不明確で、結果的に特許を受けようとする発明を明確でないものとしている。

(4)したがって、補正後の明細書の記載は特許法第36条第4項及び第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、補正後の発明は特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである

III.本願発明について
1.本願明細書および図面
平成14年6月20日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願明細書及び図面は、平成13年9月26日付け及び平成14年1月11日付けの手続補正により補正されたとおりのものであり、その請求項1〜8の記載は、前記II.1.補正の内容の項の前半に記載したとおりのものであって、請求項1〜5の記載は上記補正後のものと変わるところはない。

2.原査定の理由
原査定の拒絶の理由は、概略次のとおりである。
「理由1(特許法第36条第4項要件)について
1)明細書の記載では、複数の気候条件に当てはまる地域(例えば、雪が多くて気温が低い地域や日射しが強い都市部の地域など)をどの気候条件に区分するのか記載されておらず、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に説明されていない。
出願人は意見書において、本発明は複数の気候条件に当てはまる地域を想定していない旨述べているが、実際には複数の気候条件に当てはまる地域が多数あることは明らかであり、そのような地域をどのように分類・区分けするのかが記載されていない以上、当業者が請求項に記載の発明を実施できる程度に明確かつ十分に説明しているということはできない。

理由2(特許法第36条第6項第2号要件)について
1)請求項1-8における「雨や曇り、霧の多いところ」や「気温が低いところ」なる記載表現では、何に対して「多い」あるいは「低い」のか比較の基準が不明確でその結果発明の範囲が不明確である。
出願人は意見書において、「雨や曇り、霧の多いところ」や「気温が低い」の記載表現は、曖昧さを含むかも知れないが一義的に認識しうるものである旨主張しているが、発明が明確に把握されるためには、発明に属する具体的な事物の範囲が明確である必要があり、その前提として、発明を特定するための事項の記載が明確である必要があることから、本発明のような曖昧な記載表現では発明の範囲が不明確である。
2)請求項1-8における「季節の変わり目」や「環境変化のあったとき」なる記載表現では、用語の意味が曖昧かつ不明確でその結果発明の範囲が不明確である。
なお、発明が明確に把握されるためには、発明に属する具体的な事物の範囲が明確である必要があり、その前提として、発明を特定するための事項の記載が明確である必要があることから、本発明のような曖昧な記載表現では発明の範囲が不明確である。」

3.明細書の記載についての検討
本願明細書および図面の記載については、前記II.3.独立特許要件の項において検討したとおりであって、特許法第36条第4項及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

なお、請求人の主張は、地域の気象特性の区分は、要するに「多い」とか「低い」などの比較基準の不明な記載表現であっても、パネラーにとって一義的に認識しうるとの主張を繰り返すのみであって、採用できるものではない。
また、平成14年1月11日付けの意見書に添付して提出された文献1(香粧品化学研究開発専門誌(月刊)「FRAGRANCE JOURNAL(フレグランス ジャーナル) 1994年8月号 発行日1994年(平成6年)8月15日 発行所フレグランス ジャーナル社 p20-21,p26)にも、20頁の図6には、棒グラフ化された自分が敏感肌と考える理由として挙げられた多数の理由の中に「季節の影響大」が挙げられ、21頁の図10には、棒グラフ化された敏感肌、健常肌の人がにきび・吹き出物の原因として挙げた多数の理由の中に「季節の影響」が挙げられ、26頁の図2には、敏感肌と自己申告したパネルに「どのようなときに敏感肌と感じるのか」を調査した結果が示されており、「季節によって変化する」が65%、「環境の温度差でほてりやすい」が55%となっていることが示されているが、これらは敏感肌と感じる人についての調査結果であり、肌トラブルに関連した回答内容もあるものの、肌トラブルの出現時期について直接調査した報告でもなく、「季節の変わり目」と「季節の影響」、「季節によって変化する」という回答項目との相関関係を説明する記載もない。同じく文献2〔Parfumerie und Kosmerik,69.Jahrgang,Nr.5(1988)p.281-284(注:書名は一部の独文字を通常のアルファベットで置き換えてある。)〕にも、281頁左欄1〜14行目に、以下の記載:「刺激をうけやすいあるいは敏感な肌の問題は重要であると考えられている。多数の文献によると敏感肌の人の増加率は40〜60%にのぼると言われている。この原因としては環境影響の悪化が挙げられる。このような環境影響の悪化(例えば、大気汚染、スモッグ、大気の温暖化、エアコンあるいは人工的な光)は皮膚を刺激する。同様に自分自身の内的精神的な原因(例えば、ストレス、コーヒー、アルコール、あるいはタバコ中毒)も存在する。それらは、例えばタバコなどは酸素の供給をしている血管を損なう。他の要因としては薬剤と加齢がある。「ピル」は肌を乾燥させ、それによって皮膚を虚弱化する。また、加齢によって皮膚は段々薄くなり、過敏になってくる。」があるが、この記載も敏感肌の増加と「環境影響の悪化」との関係を記述しているものであって、「環境影響の悪化」の例示はあるものの大気汚染から人工的な光まで広範なもので、“15歳までで一番長く住んでいた地域の気候特性を指標とする肌トラブルの出現注意時期の鑑別法”において、鑑別結果として、肌トラブルの出現注意時期を「環境変化のあったときと鑑別する」、あるいは「季節の変わり目と鑑別する」という漠然としてあいまいな記載表現が、具体的にどのような時期を示すのか、鑑定を受ける消費者等あるいは彼らに鑑定結果を提示するべき者に明確な事項であることを裏付ける文献とはいえない。

4.むすび
以上のとおり、本願は特許法第36条第4項及び第6項第2号に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-08-24 
結審通知日 2005-08-30 
審決日 2005-09-14 
出願番号 特願2001-171683(P2001-171683)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61B)
P 1 8・ 536- Z (A61B)
P 1 8・ 537- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小田倉 直人  
特許庁審判長 鐘尾 みや子
特許庁審判官 長井 真一
菊井 広行
発明の名称 肌トラブル出現注意時期の鑑別法及び鑑別のためのシート  
代理人 遠山 勉  
代理人 川口 嘉之  
代理人 松倉 秀実  

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