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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G05D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G05D
管理番号 1125386
審判番号 不服2003-22624  
総通号数 72 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-01-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-11-20 
確定日 2005-10-27 
事件の表示 平成 7年特許願第164213号「位置決め制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 1月17日出願公開、特開平 9- 16261〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年6月29日の出願であって、平成15年10月16日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年12月22日付で手続補正がなされたものである。

2.平成15年12月22日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年12月22日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「サーボモータを用いた位置決め制御装置において、
目標位置と現在位置から得られる位置指令を、回転座標系における位置指令に変換する第1の座標系変換手段と、
前記回転座標系における位置指令に所定のギア比を乗算し、前記サーボモータ側の座標系における位置指令を算出する第1の電子ギアと、
前記サーボモータ側の座標系における位置指令に基づいて前記サーボモータを回転させるモータ駆動手段と、
前記サーボモータの回転に伴ってエンコーダが出力するパルスの積算値に、前記第1の電子ギアが有するギア比の逆数を乗算し、位置フィードバック値を算出する第2の電子ギアと、
前記位置フィードバック値を、回転座標系における位置フィードバック値に変換する第2の座標系変換手段とを具備し、 前記第1の座標系変換手段および前記第2の座標系変換手段は、入力値の増加に伴って出力値が増加し、かつ、予め設定された一定周期毎に該出力値を所定の基準値に戻す周期関数を有し、該周期関数を用いて座標系の変換を行うことを特徴とする位置決め制御装置。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第1の座標系変換手段および第2の座標系変換手段」について「入力値の増加に伴って出力値が増加し、かつ、予め設定された一定周期毎に該出力値を所定の基準値に戻す周期関数を有し、該周期関数を用いて座標系の変換を行う」との限定を付加するものであって、平成6年改正前の特許法第17条の2第3項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成6年改正前の特許法第17条の2第4項において準用する同法第126条第3項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特開昭60-10309号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項からなる発明が記載されている。
(2-1)「位置制御による方法は、第1図に示す様に、ロボットハンドの現在位置を示す対偶変位θを座標変換して得られる現在位置データxと目標位置データxfとを用いて、次のサンプリング時の目標位置xnを位置計算する。この目標位置xnを座標変換して求められる対偶変位θaから前記現在位置を示す対偶変位θを減算し、その値をk倍して目標値となる各回転対偶の対偶変位θ(ドット付き)を求め、駆動系1に入力する。」
(2-2)「駆動系1は、……モータMとタコジェネレータTGと回転変位検出器PEとカウンタCとサーボアンプA1とアンプA2とから構成されている。」

この記載事項と図1の記載から、引用文献1には、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という)が記載されているものと認められる。
「モータMを用いた位置制御装置において、
現在位置を示す対偶変位θを座標変換して得られる現在位置データxと目標位置データxfとを用いて、次のサンプリング時の目標位置xnを位置計算し、この目標位置xnを座標変換して求められる対偶変位θaから前記現在位置を示す対偶変位θを減算し、
その値をk倍して目標値となる各回転対偶の対偶変位θ(ドット付き)を求め、駆動系1に入力する位置決め制御装置。」

同じく原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-73147号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項からなる発明が記載されている。
(2-3)「【0048】
第14及び第15の発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、機械的に構成された変速機をそのままプログラム(ソフトウェアモジュール)に置き換えることのできる位置決め装置を得ることを目的とする。」
(2-4)「【0130】
仮想駆動モジュール51は実際にはない仮想のモータを駆動するための位置情報を生成、出力するプログラムからなるソフトウェアモジュールであり、ここで生成された位置情報が仮想連結シャフト50に渡される。
仮想駆動モジュール51は図4に示すように、入力xを入力する入力軸(仮想のモータ、ギア、カム等を模擬しているので、回転体の軸のように表現しているが、実際にはソフトウェアであるので入力手段のことを意味する。以下、同様)52と出力yを出力する出力軸(仮想のモータ、ギア、カム等を模擬しているので、回転体の軸のように表現しているが、実際にはソフトウェアであるので出力手段のことを意味する。以下、同様)53と変数i54を持った関数fで表されるブラックボックス55として表され、図7に示すメモリ構成で内部にモジュール番号71、接続情報72、位置情報を生成する演算式、または位置決めプログラム73と1つまたは複数の変数i74と1つまたは複数のパラメータ75を持っている。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「モータM」は、タコジェネレータTGと回転変位検出器PEとでフィードバックしロボットハンドの位置制御を行うものであるから「サーボモータ」であることは明らかである。
また、後者の「目標位置データxf」,「現在位置データx」,および「目標位置xn」はそれぞれ前者の「目標位置」,「現在位置」,および「位置指令」に相当し、後者の、目標位置xnを座標変換して対偶変位θaを求める手段が前者の「第1の座標系変換手段」に相当し、後者の、現在位置を示す対偶変位θから現在位置データxを得る座標変換手段が前者の「第2の座標系変換手段」に相当するので、両者は、
[一致点]
「サーボモータを用いた位置決め制御装置において、
目標位置と現在位置から得られる位置指令を、回転座標系における位置指令に変換する第1の座標系変換手段と、
前記サーボモータ側の座標系における位置指令に基づいて前記サーボモータを回転させるモータ駆動手段と、
前記位置フィードバック値を、回転座標系における位置フィードバック値に変換する第2の座標系変換手段とを具備する位置決め制御装置。」である点で一致し
[相違点]
(イ)本件補正発明では、回転座標系における位置指令に所定のギア比を乗算し、サーボモータ側の座標系における位置指令を算出する第1の電子ギアと、サーボモータの回転に伴ってエンコーダが出力するパルスの積算値に、第1の電子ギアが有するギア比の逆数を乗算し、位置フィードバック値を算出する第2の電子ギアと、を有するのに対して、引用発明ではこのような構成の特定がなされていない点、および
(ロ)本件補正発明では、第1の座標系変換手段および第2の座標系変換手段は、入力値の増加に伴って出力値が増加し、かつ、予め設定された一定周期毎に該出力値を所定の基準値に戻す周期関数を有し、該周期関数を用いて座標系の変換を行うのに対して、引用発明では、このような構成を有していない点で相違している。

(4)相違点に対する判断
(イ)について
位置決め装置においてモータの駆動系のように、入力と出力の間で単位量の異なる場合に換算を行うことは、引用文献2に記載されている様に周知の事項であり、引用発明においても必要に応じて適宜設計し得る事項と認められる。
(ロ)について
ベルトコンベヤのように指令位置が一定周期毎に繰り返す制御装置において、入力値の増加に伴って出力値が増加し、かつ、予め設定された一定周期毎に該出力値を所定の基準値に戻す構成は、特開平4-217507号公報に
「【0002】 【従来の技術】
図4はベルトコンベア位置決め装置の第1の従来例の構成を示す説明図である。同図に示すように、ベルトコンベア1はギヤードモータ2を動力源として駆動される。このベルトコンベア1にはパルス発生器3が備えられ、パルス発生器3はベルトコンベア1の移動量に対応してパルスを発生する。
【0003】
パルス発生器3から出力されるパルスはカウンタユニット4によりパルスカウント値としてカウントされ、このパルスカウント値はシーケンサ5に与えられる。なお、パルスカウント値はベルトコンベア1が所定の基準位置にある時を起点(0)てして、一方方向へのベルトコンベア1の移動は正のパルスとして、他方方向へのベルトコンベア1の移動は負のパルスとしてカウントされる。
【0004】
シーケンサ5は、あらかじめティーチングユニット6から位置決め制御プログラムを取り込んでおり、この位置決め制御プログラムの制御下で、図示しない入力装置から得られた位置指令(ベルトコンベア1の基準位置からの移動量)に基づき、位置指令に対応するパルス数である指令パルス数を計算し、この指令パルス数にパルスカウント値が等しくなるように、駆動指令を駆動装置8に与える。
【0005】
また、シーケンサ5は表示器7にベルトコンベアのパルスカウント値等の表示も行う。そして、駆動装置8はシーケンサ5より得た駆動指令に基づき、ギヤードモータ2を駆動する。」
と記載されているように周知の事項と認められ、この点の相違は必要に応じて適宜設計し得る事項と認めざるを得ない。

また、本件補正発明の奏する効果は、引用文献1,2及び上記周知例に記載の発明から予測しうる程度のものと認められる。
したがって、本件補正発明は、引用文献1,2および上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
したがって、本件補正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号 )附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるものとされた同法[第1条の規定]による改正前の特許法第17条の2第4項において読み替えて準用する同法第126条第3項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成15年12月22日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「サーボモータを用いた位置決め制御装置において、
目標位置と現在位置から得られる位置指令を、回転座標系における位置指令に変換する第1の座標系変換手段と、
前記回転座標系における位置指令に所定のギア比を乗算し、前記サーボモータ側の座標系における位置指令を算出する第1の電子ギアと、
前記サーボモータ側の座標系における位置指令に基づいて前記サーボモータを回転させるモータ駆動手段と、
前記サーボモータの回転に伴ってエンコーダが出力するパルスの積算値に、前記第1の電子ギアが有するギア比の逆数を乗算し、位置フィードバック値を算出する第2の電子ギアと、
前記位置フィードバック値を、回転座標系における位置フィードバック値に変換する第2の座標系変換手段と
を具備することを特徴とする位置決め制御装置。」

(1)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、上記したとおりであって、前記2.で検討した本件補正発明から「入力値の増加に伴って出力値が増加し、かつ、予め設定された一定周期毎に該出力値を所定の基準値に戻す周期関数を有し、該周期関数を用いて座標系の変換を行う」点を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「2.(3)、(4)」に記載したとおり、引用文献1,2および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献1,2および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用文献1,2および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-08-16 
結審通知日 2005-08-23 
審決日 2005-09-06 
出願番号 特願平7-164213
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G05D)
P 1 8・ 575- Z (G05D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森林 克郎  
特許庁審判長 田良島 潔
特許庁審判官 佐々木 芳枝
田中 秀夫
発明の名称 位置決め制御装置  
代理人 渡邊 隆  
代理人 西 和哉  
代理人 青山 正和  
代理人 志賀 正武  
代理人 高橋 詔男  
代理人 鈴木 三義  
代理人 村山 靖彦  

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