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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02G
管理番号 1125438
審判番号 不服2002-23595  
総通号数 72 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-12-06 
確定日 2005-10-26 
事件の表示 平成11年特許願第22448号「管接続用の受口」拒絶査定不服審判事件〔平成11年9月28日出願公開、特開平11-266513〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯
本願は、平成6年3月30日の出願である特願平6-60672号(以下「原出願」という。)の一部を平成11年1月29日に新たに特許出願したものであって、平成14年11月6日に拒絶の査定がなされ、これに対し、平成14年12月6日に不服の審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

[2]平成14年12月6日付け手続補正についての補正却下の決定

[結論]
平成14年12月6日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(2-1)本件補正
本件補正は、補正前の請求項2及び請求項3を削除するとともに、請求項1を次のとおりに補正することを含むものである(下線は本件補正における補正箇所)。

「【請求項1】管が挿入される開口を有する筒体の周壁にスリットを形成して、該スリットにより囲まれた部分に弾性をもたせ、内面に管を係止するための爪部を突出させて成る管係止爪を一体に備えた管接続用の受口であって、
前記管係止爪は、前記管が挿入される筒体の開口側を基端として前記筒体の軸心に沿って延設されることにより先端側が前記筒体の内外方に弾性変形し、
該管係止爪の外面側に、該管係止爪の先端近傍から前記開口側に向けて延設された操作片を該管係止爪と一体に形成し、
該操作片と前記管係止爪外面との間には該操作片の押圧に必要な隙間を有し、
前記筒体の外周側から前記筒体の軸心に向けて前記操作片の先端部が押圧されることによって、前記管係止爪を管係止爪の基端を中心に外方へ拡開すべくしならせて、前記爪部による管の係止を解除することを特徴とする管接続用の受口。」

本件補正における、請求項2及び請求項3を削除する補正は、平成6年改正前の特許法第17条の2第3項第1号(請求項の削除)に掲げる事項を目的としていることは明らかである。

本件補正における、請求項1についてする補正は、本件補正前に記載のあった「管係止爪」について、その延設方向と弾性方向を限定し、本件補正前に記載のあった「操作片」について、前記「管係止爪」との位置関係を限定するものであるから、同法第17条の2第3項第2号(特許請求の範囲の減縮)に掲げる事項を目的とするものである。

次に、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(同法第17条の2第4項において読み替えて準用する同法第126条第3項の規定に該当するか)について検討する。

(2-2)従来周知の「管接続用の受口」

(ア)周知例1
実願昭63-56026号(実開平1-159525号)のマイクロフィルム(以下「周知例1」という。)には、「波付電線管用コネクター」に関し、次の事項が図面とともに記載されている。

「第1図ないし第4図に・・・波付電線管用コネクターが示されている。
・・・
コネクター本体Aは・・・筒部が電線管差込み部4となって・・・いる。
電線管差込み部4の中央部分には一対の爪体10が相対向して弾性変形可能に一体に設けられている。
・・・
爪体10の弾性を利用して、コネクター本体Aに波付電線管Pを差し込むと、波付電線管Pの溝部20に爪体10の引掛り部10aが挿入される。」
(明細書6頁5行〜同8頁7行)

(イ)周知例2
実願昭63-5467号(実開平1-109688号)のマイクロフィルム(以下「周知例2」という。)には、「コルゲート管用継手」に関し、次の事項が図面とともに記載されている。

「第1図はこの考案の一実施例に係る継手20の斜視図、第2図および第3図はコルゲート管の連結状態を示すもので・・・ある。
・・・
継手20は継手本体22と・・・からなる。
継手本体22は・・・筒状体両側の両端28近くの周面に、中央部26に向けて開いたほぼコの字状の切り込み30を・・・設けて、その切り込み30により囲まれた部分からなる弾性片32を・・・形成し、その各弾性片32の内面に、コルゲート管外周面の凹部18に嵌合する・・・突起34を設け・・・てなる。・・・弾性片の突起34は、その突起34とコルゲート管外周面の凹部18との嵌合により、コルゲート管の連結用端部12aを確実に継手本体22に固定できる充分な高さとし、かつ突起34の断面形状を先端の細くなったくさび状にして、しかもコルゲート管12の挿入方向が傾斜面となるようにしておくのが好ましい。」(明細書7頁14行〜同8頁20行)

上記周知例1及び2に記載のものは、いずれも『管接続用の受口』に属するものであることは明らかであるところ、周知例1に記載の「爪体10」「引掛り部10a」は、その作用効果に照らすと、それぞれ『管係止爪』『爪部』ということができ、同様に、周知例2に記載の「弾性片32」「突起34」は、それぞれ『管係止爪』『爪部』ということができるから、次に記載する「管接続用の受口」が、本願の原出願の出願当時既に周知であったものと認められる。

なお、このことは、本願明細書及び図面の図16,17及びその説明箇所に「従来の受口」として、このような「管接続用の受口」が記載されていることからも明らかである。

(従来周知の「管接続用の受口」)
「管が挿入される開口を有する筒体の周壁にスリットを形成して、該スリットにより囲まれた部分に弾性をもたせ、内面に管を係止するための爪部を突出させて成る管係止爪を一体に備えた管接続用の受口であって、
前記管係止爪は、前記管が挿入される筒体の開口側を基端として前記筒体の軸心に沿って延設されることにより先端側が前記筒体の内外方に弾性変形することを特徴とする管接続用の受口。」

(2-3)対比・判断
本願補正発明と上記従来周知の「管接続用の受口」とを対比すると、両者は、

(一致点)
「管が挿入される開口を有する筒体の周壁にスリットを形成して、該スリットにより囲まれた部分に弾性をもたせ、内面に管を係止するための爪部を突出させて成る管係止爪を一体に備えた管接続用の受口であって、
前記管係止爪は、前記管が挿入される筒体の開口側を基端として前記筒体の軸心に沿って延設されることにより先端側が前記筒体の内外方に弾性変形することを特徴とする管接続用の受口。」

である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点A>
「管係止爪の外面側」に、本願補正発明では、『操作片』を、押圧に必要な隙間を確保しつつ、前記管係止爪の先端近傍から開口側(管挿入側)に向けて延設するように前記管係止爪と一体に形成し、筒体の外周側から該筒体の軸心に向けて前記『操作片』の先端部が押圧されることによって、前記管係止爪をその基端を中心に外方へ拡開すべくしならせて前記爪部による管の係止を解除するようにしたのに対し、従来周知の「管接続用の受口」は、かかる『操作片』を有しない点。

上記相違点Aについて検討する。
管接続用の受口において、その基端を中心とした管係止爪の外方への拡開により前記管係止爪による管の係止状態の解除を必要とする場合があることは、原査定の拒絶の理由で引用した特開昭63-302708号公報、実願平2-43721号(実開平4-2923号)のマイクロフィルム、実願平3-3186号(実開平4-98823号)のマイクロフィルム等で知られているところ、係止爪の外方への拡開による係止状態の解除手段として、『操作片』を係止爪の延設方向とは反対側に延設するように前記係止爪と一体に設け、その先端部の押圧により、前記係止爪を外方へ拡開すべくしならせることは、実願平3-2821号(実開平4-96499号)のCD-ROM〔第3図の作動片16cが『操作片』に相当〕や実願昭59-154778号(実開昭61-68994号)のマイクロフィルム〔第3図の操作片部14が『操作片』に相当〕にも記載されるように周知の技術的手段であるから、上記従来周知の「管接続用の受口」において、上記周知の爪部による係止の解除手段を採用し、管係止爪の先端近傍から管が挿入される開口側に向けて、押圧に必要な隙間を有するようにしつつ管係止爪と一体に『操作片』を延設するように形成することは当業者が容易に想到し得ることであり、この場合、「(管接続用の受口の)筒体の外周側から該筒体の軸心に向けて前記『操作片』の先端部が押圧」されることとなることは明らかである。

なお、請求人は、審判請求書において、本願補正発明は、爪係止片に筒体の内外方向の弾性を付与し、かつ、この爪係止片を外方へしならせることで爪部と管との係止を解除するという構成を採用したことにより、作業者が一方の手で管を握り、他方の手で筒体と共に操作片を握るだけの作業で、操作片が押し下げられ管と筒体との連結の解除を行うことができ、建造物の壁裏や床下のような狭い環境下や真っ暗な環境下であっても、管と筒体とを簡単に解除することができるという作用効果を奏する、という旨の主張をしているが、上記のとおり、爪係止片に筒体の内外方向の弾性を付与した管接続用の受口は、本願の原出願の出願当時既に周知である上、爪係止片を外方へしならせることにより爪部と管との係止を解除することも周知の技術的手段であるから、上記作用効果は、上記周知技術等から当業者が予測し得る範囲内のものと言わざるを得ない。

したがって、本願補正発明は、上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(2-4)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成6年改正前の特許法第17条の2第4項において読み替えて準用する同法第126条第3項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記結論のとおり決定する。

[3]本願発明について

(3-1)本願発明
平成14年12月6日付けの手続補正が上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、同年9月27日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1の記載は次のとおりである(以下「本願発明」という。)。

「【請求項1】管が挿入される筒体の周壁にスリットを形成して、該スリットにより囲まれた部分に弾性をもたせ、内面に管を係止するための爪部を突出させて成る管係止爪を一体に備えた管接続用の受口であって、
前記管係止爪の外面側に、該管係止爪の先端近傍から基端側に延設された操作片を有し、
前記筒体の外周側から前記筒体の軸心に向けて前記操作片の先端部が押圧されることによって、該管係止爪を基端を中心に外方へ拡開すべくしならせて、前記爪部による管の係止を解除することを特徴とする管接続用の受口。」

(3-2)刊行物
原査定の拒絶の理由で引用された実願平2-43721号(実開平4-2923号)のマイクロフィルム(以下「刊行物1」という。)には、「波付電線管用継手」に関し、次の事項が図面とともに記載されている。

「第1図は本考案の波付電線管用継手の一実施例である。
同図に示す1は継手本体である。・・・
2は前記継手本体1に形成された、波付電線管Aを差込むための差込み穴である。
3は差込み穴2の差込み口2aの先端部周囲から継手本体1の奥の方へ向けて延設された・・・連結部である。この実施例での連結部3は・・・同差込み穴2の周囲に沿って湾曲され且つ前記継手本体1と一体に形成されている。そして本考案では・・・両連結部3が次第に内側に傾斜されて先細に形成されている。・・・
4は前記両連結部3の先端に内側に向けて突設された係止部である。この係止部4は波付電線管Aの外周波形の谷部aに係止して、同波付電線管Aが容易に引き抜けないようにするためのものである。・・・なお従来と同様に、同係止部4の同波付電線管Aの差込み側には次第に内側に傾斜するガイド面4aが形成され、その反対側(先方側)には係止面4bが形成されている。
第4図は本考案の継手において・・・波付電線管Aを抜去するための管抜き用治具10の一例であり・・・抜去突子12とから構成されている。
・・・
前記抜去突子12は前記連結部3を外側に押し広げるためのものであ・・・る。」(明細書6頁9行〜同9頁5行)

(3-3)対比・判断
本願発明と刊行物1に記載された発明(以下「刊行物1発明」という。)とを対比すると、
刊行物1に記載の「波付電線管用継手」は、本願発明の『管接続用の受口』に相当することは明らかであるところ、
刊行物1に記載の「継手本体1」「連結部3」「係止部4」は、それぞれ本願発明の『筒体』『管係止爪』『爪部』に相当し、また、前記「連結部3」は「継手本体1」に『一体に』形成されたものであり、『弾性』を有するものであることは明らかであり、
刊行物1発明において、「連結部3」を、管抜き用治具10の抜去突子12により「外側に押し広げ」ることによって、波付電線管Aを「係止部4」による係止から解除しているのは、本願発明で、『管係止爪を基端を中心に外方へ拡開させて、爪部による管の係止を解除』するのに相当するから、

結局、本願発明と刊行物1発明とは、

(一致点)
「管が挿入される筒体に、弾性を有し、内面に管を係止するための爪部を突出させて成る管係止爪を一体に備えた管接続用の受口であって、
該管係止爪を基端を中心に外方へ拡開させて、前記爪部による管の係止を解除することを特徴とする管接続用の受口。」

である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点B>
筒体と一体に弾性をもたせて備えられる「管係止爪」が、本願発明では、筒体の周壁に形成したスリットにより囲まれた部分であるのに対し、刊行物1発明では、継手本体1を管差込み穴2の周囲に沿って湾曲させることにより形成されており、
基端を中心とした外方への管係止爪の拡開による係止の解除が、本願発明では、管係止爪の外面側に、該管係止爪の先端近傍から基端側に延設された操作片を設け、筒体の外周側から該筒体の軸心に向けて前記操作片の先端部を押圧することによりしならせすることでなされるのに対し、刊行物1発明では、管抜き用治具10の抜去突子12により連結部3(管係止爪)を外側に押し広げることによりなされる点。

上記相違点Bについて検討する。
上記(2-2)に記載したとおり、「管が挿入される開口を有する筒体の周壁にスリットを形成して、該スリットにより囲まれた部分に弾性をもたせ、内面に管を係止するための爪部を突出させて成る管係止爪を一体に備えた管接続用の受口」は、本願の原出願の出願当時既に周知であり、また、上記(2-3)に記載したとおり、基端を中心として外方へ係止爪を拡開することによる係止の解除手段として、係止爪の外面側に、該係止爪の延設方向とは反対側に操作片を設け、該操作片を押圧して係止爪をしならせるようにすることは、本願の原出願の出願当時既に周知の技術的手段であるから、刊行物1発明における「管係止爪」を、上記従来周知の「管接続用の受口」のように、筒体の周壁にスリットを設けることによって形成することとし、その際、該「管係止爪」の基端を中心とした外方への拡開による係止の解除手段として、上記周知の技術的手段を採用し、管係止爪の外面側に、該管係止爪の先端近傍から基端側に延設された操作片を設け、筒体の外周側から該筒体の軸心に向けて前記操作片の先端部を押圧して管係止爪をしならせるようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(3-4)むすび
以上のとおり、本願発明は、上記刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本願の他の請求項に係る発明についての判断を示すまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-08-17 
結審通知日 2005-08-23 
審決日 2005-09-05 
出願番号 特願平11-22448
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H02G)
P 1 8・ 121- Z (H02G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清田 健一  
特許庁審判長 高橋 泰史
特許庁審判官 水垣 親房
長井 真一
発明の名称 管接続用の受口  
代理人 廣江 武典  

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