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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1125463
審判番号 不服2001-10457  
総通号数 72 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-10-20 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-06-20 
確定日 2005-10-28 
事件の表示 平成 9年特許願第108200号「パチンコ遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成10年10月20日出願公開、特開平10-277224〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は平成9年4月9日の出願であって、平成13年5月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成13年6月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成13年7月18日付けで手続補正がなされたものである。


【2】平成13年7月18日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成13年7月18日付けの手続補正を却下する。

[理由]
〔1〕補正後の本願発明
本件補正は、請求項1を次のとおりに補正することを含むものである。
「【請求項1】表示装置、該表示装置を制御する制御装置並びに該表示装置及び該制御装置を収容する表示ユニットカバーを具備する表示ユニットを備えたパチンコ遊技機であって、
前記表示ユニットカバーは、
前記表示装置の表示部以外の前部を覆う正面カバーと、
前記表示装置及び制御装置の側面及び背面を覆うとともに、透明素材から形成された背面カバーとから構成され、
前記正面カバーと背面カバーとは、前記表示装置及び制御装置を収容した状態で一体化されて前記表示ユニットを構成し、
前記正面カバーには、前記表示装置の表示部に対応して窓部が形成されるとともに、その窓部には透明アクリル板が配置されていることを特徴とするパチンコ遊技機。」(以下、「補正発明」という。)
上記補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正発明が、その特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。


〔2〕引用刊行物とそれに記載の事項
原審における平成12年9月5日付けの拒絶理由通知書で引用し、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平8-266711号公報(以下、「刊行物」という。)には、弾球遊技機に関して、以下の事項が図面とともに記載されている。
(1)「一方、図2を参照して弾球遊技機1の裏面構造について簡単に説明すると、周知のように、弾球遊技機1の裏面には、・・・機構板15が開閉自在に設けられるが、その機構板15のほぼ中央には、貫通窓16が形成され、その貫通窓16に遊技盤6に設けられる可変表示装置7(画像表示装置)の後方突出部が貫通するようになっている。・・・」(段落【0010】)
(2)「なお、図2に示す貫通窓16を貫通する可変表示装置7の後方突出部は、後述する透明カバー47が描かれているが、実際には、これらを保護する入賞装置カバー23(図5参照)が入賞玉集合カバー体22に着脱自在に取り付けられている。この場合においては、入賞装置カバー23も透明な合成樹脂によって形成されることが望ましい。何故なら、透明カバー47によって覆われる画像情報作成回路基板46に不正行為が行われているか否かが可変表示装置7を遊技盤6に取り付けたままの状態でしかも前面枠3を外枠2に対して開放した状態で極めて容易に発見できるからである。・・・」(段落【0011】)
(3)「弾球遊技機1の概略構成は、上記した通りであるが、次に本実施例の要部を構成する可変表示装置7として使用される画像表示装置について説明する。・・・図3は、画像表示装置30・・・の表示器31・・・を駆動する回路の概略ブロック図である。図において、画像表示装置30・・・の表示器31・・・は、前記遊技制御回路基板ボックス18に収納される遊技制御回路基板123(主基板と表示)からの指令に基づいて画像情報作成回路基板46・・・(画像情報作成回路部と表示)から画像信号が導出され、その導出された画像信号を受けた画像表示制御回路35・・・(ドライブ回路ともいう)が表示器31・・・に所定の画像を表示するものである。したがって、表示器31・・・に表示される画像は、一に画像情報作成回路基板46・・・に依存するものである。・・・つまり、画像表示装置30・・・を備えた弾球遊技機1においては、画像情報作成回路基板46・・・を交換することにより、適正に検査を受けた画像と異なる画像でほぼ同一内容の遊技を行うことができることとなり、不正行為を簡単に行うことができる。・・・このような不正行為を防止するために、本実施例における画像表示装置30・・・では、画像情報作成回路基板46・・・を収納する収納カバーの一部又は全部を透明な合成樹脂で形成することにより、内部を透視できるようにした。・・・」(段落【0013】)
(4)「まず、図4乃至図9を参照して液晶画像表示装置30の構成について説明する。図4は、液晶画像表示装置30の斜視図であり、図5は、液晶画像表示装置30を遊技盤6に取り付けた状態での縦断面図であり、図6は、液晶画像表示装置30に付設される画像情報作成回路基板46とそれを覆う透明カバー47との関係を示す分解斜視図であり、図7は、液晶画像表示装置30のバックライト33交換の様子を示す背面からの斜視図であり、図8は、液晶画像表示装置30の分解斜視図であり、図9は、画像情報作成回路基板46の正面概略図である。」(段落【0014】)
(5)「図8において、液晶画像表示装置30は、画像を表示する液晶パネルユニット31と、該液晶パネルユニット31がその前面に取り付けられ且つ液晶パネルユニット31の裏面から光を照射するバックライト33を収納する表示枠32と、該表示枠32の裏面に取り付けられ且つ画像表示制御回路基板35(ドライバ回路)を収納するカバーケース40と、該カバーケース40の裏面に取り付けられる画像情報作成回路基板46と、該画像情報作成回路基板46を被覆する透明カバー47と、から構成されている。」(段落【0015】)
(6)「表示枠32の裏面に突設される取付ボス39には、画像表示制御回路基板35が取り付けられるが、その画像表示制御回路基板35には、その前面側に多数の電子部品が実装されていると共に、前記バックライト33からの配線を接続するコネクタ38と、液晶パネルユニット31のTAB配線を接続するコネクタ37とが実装され、その裏面には、画像情報作成回路基板46のコネクタ60と接続されるコネクタ36が実装されている。」(段落【0017】)
(7)「上記した画像表示制御回路基板35を被覆するカバーケース40には、その裏面に画像情報作成回路基板46を止着するための取付ボス41が四隅に突設されると共に、前記コネクタ36,60同士の接続を行うための接続穴42、画像表示制御回路基板35に設けられる輝度調節摘み(図示しない)をドライバー等の工具を挿入して回転させる調節穴7、及び画像情報作成回路基板46を被覆する透明カバー47を係止するための係合穴44がそれぞれ適宜箇所に形成されている。」(段落【0018】)
(8)「カバーケース40の取付ボス41に取り付けられる画像情報作成回路基板46には、図9に示すように、VDP52、CPU53、キャラクタROM54、パレットRAM55、ワークRAM56、発信回路57、VRAM58の各電子部品と前記画像表示制御回路基板35のコネクタ36と接続するためのコネクタ60(CN2)と、前記遊技制御回路基板ボックス18に収納される遊技制御回路基板123のコネクタ133に接続される配線62の先端に取り付けられるコネクタ61と接続されるコネクタ59(CN1)とが実装されている。そして、図示の実施例では、コネクタ60を除く電子部品及びコネクタ59は、次に説明する透明カバー47に対面する側に実装されている。これは、透明カバー47を介して画像情報作成回路基板46上に不正な部品が実装されているか否かを極めて容易に見極めるためである。」(段落【0019】)
(9)「カバーケース40の裏面に着脱自在に装着される透明カバー47は、透明な合成樹脂によって成形されるものであり、その上下前端縁には、カバーケース40の係合穴44に着脱し得る係止爪48が突設されると共に、その上部中央には、ビス止め穴49が形成され、後面一側に前記配線62のコネクタ61を差し込んでコネクタ59と接続するための接続開口50が形成されている。ビス止め穴49は、図7に示すように、カバーケース40の裏面上中央に穿設された止め穴49aに対応し、係止爪48を係合穴44に係合した後に、ビス止め穴49と止め穴49aとを合致させてビス止めすることにより、透明カバー47をカバーケース40に止着するものである。・・・」(段落【0020】)
(10)そして、図5〜8の記載によれば、カバーケース40がバックライト33等が位置する表示枠32の背部及び該表示枠32に取り付けた画像表示制御回路基板35の側面及び背面を覆っていること、透明カバー47がカバーケース40に取り付けた画像情報作成回路基板46の側面及び背面を覆っていること、表示枠32とカバーケース40及び透明カバー47が液晶パネルユニット31及びバックライト33等並びに画像表示制御回路基板35及び画像情報作成回路基板46を収容した状態で一体化されて液晶画像表示装置30を構成していることは、何れも、自明の事項である。
これら(1)〜(10)の記載等を含む刊行物全体の記載及び当業者の技術常識によれば、刊行物には以下の発明が記載されているものと認められる。
「液晶パネルユニット31及びその裏面から光を照射するバックライト33等、遊技制御回路基板123からの指令に基づいて画像信号を導出させる画像情報作成回路基板46及び前記画像信号を受けてバックライト33から光を照射させて液晶パネルユニット31に所定の画像を表示させる画像表示制御回路基板35並びに表示枠32、カバーケース40及び透明カバー47を具備する液晶画像表示装置30を備えた弾球遊技機1であって、
前記表示枠32、カバーケース40及び透明カバー47は、
前記液晶パネルユニット31をその前面に取り付けるとともにバックライト33等を収納する表示枠32と、
前記表示枠32のバックライト33等が位置する部分である背部及び該表示枠32に取り付けた画像表示制御回路基板35の側面及び背面を覆うカバーケース40と、
前記カバーケース40に取り付けた画像情報作成回路基板46の側面及び背面を覆うとともに、透明な合成樹脂から形成された透明カバー47とから構成され、
前記表示枠32とカバーケース40及び透明カバー47とは、前記液晶パネルユニット31及びバックライト33等並びに画像表示制御回路基板35及び画像情報作成回路基板46を収容した状態で一体化されて前記液晶画像表示装置30を構成した弾球遊技機1。」(以下、「刊行物記載の発明」という。)


〔3〕対比・判断
(1)補正発明と刊行物記載の発明との対比
補正発明と刊行物記載の発明とを対比すると、刊行物記載の発明の「液晶パネルユニット31及びその裏面から光を照射するバックライト33等」,「遊技制御回路基板123からの指令に基づいて画像信号を導出させる画像情報作成回路基板46及び該画像信号を受けてバックライト33から光を照射させて液晶パネルユニット31に所定の画像を表示させる画像表示制御回路基板35」,「液晶画像表示装置30」,「弾球遊技機1」,「液晶パネルユニット31の表面」が、補正発明の「表示装置」,「表示装置を制御する制御装置」,「表示ユニット」,「パチンコ遊技機」,「表示装置の表示部」にそれぞれ相当し、
そして、刊行物記載の発明の「表示枠32」と補正発明の「正面カバー」とについては、刊行物記載の発明の「表示枠32」が「液晶パネルユニット31をその前面に取り付けるとともにバックライト33等を収納する」ものであることから、「液晶パネルユニット31及びバックライト33等」を覆うものであって、その前面の「液晶パネルユニット31の表面」に対応する部分が開口しているものと認められるところ、補正発明の「正面カバー」が「表示装置の表示部以外の前部を覆う」とともに、「表示装置の表示部に対応して窓部が形成される」ものであるから、何れも、表示装置(液晶パネルユニット31及びバックライト33等)を覆うとともに、表示装置の表示部(液晶パネルユニット31の表面)に対応して窓部が形成されるカバーである点で技術的に共通し、また、刊行物記載の発明の「カバーケース40及び透明カバー47」と補正発明の「背面カバー」とについては、刊行物記載の発明の「カバーケース40」が「表示枠32のバックライト33等が位置する部分である背部及び該表示枠32に取り付けた画像表示制御回路基板35の側面及び背面を覆う」ものであり、同じく、「透明カバー47」が「カバーケース40に取り付けた画像情報作成回路基板46の側面及び背面を覆うとともに、透明な合成樹脂から形成された」ものであるところ、補正発明の「背面カバー」が「表示装置及び制御装置の側面及び背面を覆うとともに、透明素材から形成された」ものであるから、何れも、制御装置(画像表示制御回路基板35及び画像情報作成回路基板46)の側面及び背面を覆うカバーである点で技術的に共通し、したがって、刊行物記載の発明の「表示枠32、カバーケース40及び透明カバー47」が、補正発明の「表示ユニットカバー」に対応するものということができるから、
両者は、「表示装置、該表示装置を制御する制御装置並びに該表示装置及び該制御装置を収容する表示ユニットカバーを具備する表示ユニットを備えたパチンコ遊技機であって、
前記表示ユニットカバーは、
前記表示装置を覆うカバーと、
前記制御装置の側面及び背面を覆うカバーとから構成され、
前記表示装置を覆うカバーと制御装置の側面及び背面を覆うカバーとは、前記表示装置及び制御装置を収容した状態で一体化されて前記表示ユニットを構成し、
前記表示装置を覆うカバーには、前記表示装置の表示部に対応して窓部が形成されているパチンコ遊技機。」の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
制御装置の側面及び背面を覆うカバーに関して、補正発明が、「表示装置及び制御装置の側面及び背面を覆うとともに、透明素材から形成された」ものであるのに対して、刊行物記載の発明では、特に透明であるとの限定がない「カバーケース40」と透明な合成樹脂(透明素材)から形成された「透明カバー47」とからなるものであり、しかも、該「カバーケース40」がバックライト33等が位置する表示枠32の背部の側面及び背面を覆っているものの、液晶パネルユニット31及びバックライト33等(表示装置)の側面及び背面を覆っているとはいえない点。
<相違点2>
表示装置を覆うカバーに関して、補正発明が、「表示装置の表示部以外の前部を覆う正面カバー」であって、その表示装置の表示部に対応して形成された「窓部」に「透明アクリル板が配置されている」のに対して、刊行物記載の発明では、そのようにしたものか否か定かでない点。

(2)各相違点についての検討
<相違点1について>
背面カバーにより表示装置及び制御装置の側面及び背面を覆うようにすることは、例えば、特開平6-121872号公報に、段落【0034】,【0037】〜【0039】等の記載及び図3,5〜8等の記載を参照すると、前ケース52と後ケース62(補正発明の背面カバーに相当或いは対応する。以下同様。)とからなるユニットケース51内に映像表示器44(表示装置)及び映像制御装置50(制御装置)を組み込んだ、即ち、映像表示器44及び映像制御装置50の側面及び背面を後ケース62により覆うようにした遊技機が記載され、特開平8-323016号公報に、段落【0028】,【0029】等の記載及び図6等の記載を参照すると、前ケース60と後ケース61(背面カバー)とからなる表示部ケース59内に画像表示部55(表示装置)及び駆動基板55a(制御装置)を組み込んだ、即ち、画像表示部55及び駆動基板55aの側面及び背面を後ケース61により覆うようにした弾球遊技機が記載されているように、遊技機の技術分野において従来から周知であり、また、背面カバーを透明素材から形成することも、例えば、原審における平成13年5月14日付けの拒絶査定書で提示した刊行物である特開平4-325174号公報に、段落【0013】,【0029】,【0036】等の記載及び図3〜5等の記載を参照すると、回路基板30を収容する回路ボックス31の上ケース44(背面カバー)と下ケースとを透明な合成樹脂で形成して回路ボックス31内部を透視可能とし、これにより、回路基板30に加えられる不正な改変を容易に発見できるようにしたパチンコ機が記載され、同じく、特開平6-170053号公報に、段落【0013】,【0019】,【0020】,【0033】,【0034】,【0056】,【0058】,【0062】等の記載及び図1,2等の記載を参照すると、各ユニット10,20,30の各ユニットベース11,21,31と上下カバー体54,55(背面カバー)とを透明合成樹脂材で形成して、各ユニット10,20,30の故障、改変、異常等を外部から透視してこれに対処できるようにしたパチンコ機が記載されているように、遊技機の技術分野において従来から周知であり、そして、何よりも、原審における平成12年9月5日付けの拒絶理由通知書で引用した刊行物である特開平6-23114号公報に、段落【0018】,【0019】,【0021】等の記載及び図5〜8等の記載を参照すると、可変表示装置などの電気的遊技機器45(表示装置)及び制御回路41(制御装置)の側面及び背面を覆うカバー体12(背面カバー)を透明なプラスチック(透明素材)で成形して、カバー体12を閉じた状態で内部機器の状態を監視できるようにしたパチンコ機が記載されていることから、補正発明の上記相違点1に係る事項は、部分的にも全体的にも既によく知られたものということができる。
而して、刊行物記載の発明に上記のような周知技術を適用して、補正発明の上記相違点1に係る事項を想到することに格別の技術的困難性を認めることができず、しかも、このような周知技術を刊行物記載の発明に適用するに際しては、何れの技術も遊技機に関するものである以上、何らの阻害要因もないというべきであるから、補正発明の上記相違点1に係る事項は刊行物記載の発明及び周知技術から当業者が容易に想到しえたものといわざるをえない。
<相違点2について>
正面カバーにより表示装置の表示部以外の前部を覆うようにすることは、例えば、上記特開平8-323016号公報に、図6等の記載を参照すると、画像表示部55(表示装置)の表示部以外の前部を覆う前ケース60(正面カバー)を有する弾球遊技機が記載され、上記特開平6-121872号公報に、段落【0034】,【0035】,【0049】等の記載及び図5〜7等の記載を参照すると、映像表示器44(表示装置)の映像表示パネル46(表示部)以外の前部を覆う前ケース52(正面カバー)を有する遊技機が記載され、特開平6-296739号公報に、段落【0015】,【0016】等の記載及び図4等の記載を参照すると、液晶表示パネル16(表示装置)の表示部以外の前部を覆うアルミニューム製のラミネート薄板64(正面カバー)を有する遊技装置が記載されているように、遊技機の技術分野において従来から周知であり、また、表示装置の表示部に対応して形成された正面カバーの窓部に透明合成樹脂板を配置することも、例えば、上記特開平6-121872号公報に、段落【0035】,【0049】,【0181】等の記載及び図5〜7等の記載を参照すると、映像表示器44(表示装置)の映像表示パネル46(表示部)に対応して形成された前ケース52(正面カバー)の窓部に樹脂製クリアプレート53を設けて、搬送時や組付時における映像表示パネル46の破損を防止するようにした遊技機が記載され、上記特開平6-296739号公報に、段落【0015】,【0016】等の記載及び図4等の記載を参照すると、液晶表示パネル16(表示装置)の表示部に対応して形成されたアルミニューム製のラミネート薄板64(正面カバー)の窓部に透明プラスチック製の保護カバー66を設けて、パチンコ玉の衝突による衝撃から液晶表示パネル16を保護するようにした遊技装置が記載されているように、遊技機の技術分野において従来から周知であり、さらに、窓部に透明アクリル板を配置することも、例えば、特開平6-296745号公報に、段落【0006】,【0007】等の記載及び図1等の記載を参照すると、枠体6内(窓部)にアクリル板等の透明板5(透明アクリル板)を嵌め込んだ遊技機が記載され、特開平8-289960号公報に、段落【0013】,【0025】等の記載及び図2,4,6等の記載を参照すると、ケース1の開口1a(窓部)にアクリル樹脂の成形品であるレンズ板17(透明アクリル板)を設けたパチンコ遊技機が記載され、特開平7-185074号公報に、段落【0021】〜【0025】,【0033】,【0034】等の記載及び図1,2の記載を参照すると、遊技機の枠1における可変表示部2に対応する窓部に透光性のプラスチック板やアクリル板等からなる遊技基盤3(透明アクリル板)を設けた遊技機が記載されているように、遊技機の技術分野において従来から周知であるから、補正発明の上記相違点2に係る事項は部分的に既によく知られたものということができる。
而して、刊行物記載の発明に上記のような周知技術を適用して、補正発明の上記相違点2に係る事項を想到することに格別の技術的困難性を認めることができず、しかも、周知技術の刊行物記載の発明への適用については、何れの技術も遊技機に関するものである以上、何らの阻害要因もないというべきであるから、補正発明の上記相違点2に係る事項は刊行物記載の発明及び周知技術から当業者が容易に想到しえたものといわざるをえない。

(3)作用効果・判断
そして、補正発明によって奏する効果も、刊行物記載の発明及び周知技術から普通に予測できる範囲内のものであって、格別なものがあるとは認められないから、補正発明は、刊行物記載の発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものといわざるをえない。


〔4〕むすび
したがって、補正発明は、刊行物記載の発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、その特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
以上のように、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第4項の規定に適合しないものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。


【3】本願発明について
〔1〕本願発明
本願の請求項1,2に係る発明は、平成13年7月18日付け手続補正が上記のとおり却下されたので、平成12年11月10日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】表示装置、該表示装置を制御する制御装置並びに該表示装置及び該制御装置を収容する表示ユニットカバーを具備する表示ユニットを備えたパチンコ遊技機であって、
前記表示ユニットカバーは、
前記表示装置の表示部以外の前部を覆う正面カバーと、
前記表示装置及び制御装置の側面及び背面を覆うとともに、透明素材から形成された背面カバーとから構成され、
前記正面カバーと背面カバーとは、前記表示装置及び制御装置を収容した状態で一体化されて前記表示ユニットを構成することを特徴とするパチンコ遊技機。
【請求項2】(記載を省略する。)」(請求項1に係る発明を、以下、「本願発明」という。)


〔2〕引用刊行物等とそれらに記載された事項
これに対し、原審における平成12年9月5日付けの拒絶理由通知書で引用し、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物の記載事項は、上記【2】〔2〕に記載したとおりである。


〔3〕対比・判断
本願発明は、上記【2】で検討した補正発明における「正面カバー」についての限定事項である「前記正面カバーには、前記表示装置の表示部に対応して窓部が形成されるとともに、その窓部には透明アクリル板が配置されている」との点を削除したものである。
そうすると、本願発明の技術事項を全て含み、かつ、上記「正面カバー」について減縮した補正発明が上記【2】〔3〕に記載したとおり、刊行物記載の発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものといわざるをえないものであることから、本願発明も、同様の理由により、刊行物記載の発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-07-20 
結審通知日 2005-08-09 
審決日 2005-08-23 
出願番号 特願平9-108200
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 澤田 真治  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 辻野 安人
渡戸 正義
発明の名称 パチンコ遊技機  
代理人 岡戸 昭佳  
代理人 山中 郁生  
代理人 富澤 孝  

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