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審決分類 |
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1125476 |
審判番号 | 不服2003-3658 |
総通号数 | 72 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2002-03-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-03-06 |
確定日 | 2005-10-28 |
事件の表示 | 特願2000-278541「土地価格算出システム、土地価格算出方法及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 3月29日出願公開、特開2002- 92127〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成12年9月13日の出願であって、平成15年1月23日付で拒絶査定がされ、これに対し、同年3月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年4月7日付で手続補正がなされたものである。 第2 平成15年4月7日付の手続補正についての補正却下の決定 1 補正却下の決定の結論 平成15年4月7日付の手続補正を却下する。 2 理由 (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「【請求項1】土地価格を算出するための土地価格算出システムであって、 新築建物単価と耐用年数の具体的数値を示す数値表と、 不動産の広告に表示されている建物価格と土地価格の和である物件価格を受け付ける物件価格受付手段と、 不動産の広告に表示されている前記建物と同種の建物の新築建物単価又は広告に提示されていなければ前記数値表を参考にして入力される新築建物単価を受け付ける新築建物単価受付手段と、 不動産の広告に表示されている前記物件の建物面積を受け付ける建物面積受付手段と、 前記物件の建物を何年使用できるかを一定の基準に基づいて設定した耐用年数又は広告に提示されていなければ前記数値表を参考にして入力される耐用年数を受け付ける耐用年数受付手段と、 不動産の広告に表示されている前記物件の建物の築年数を受け付ける築年数受付手段と、 前記各受付手段にて受け付けられた物件価格と、新築建物単価と、建物面積と、耐用年数と、築年数とを記憶する記憶手段と、 前記記憶手段に記憶された新築建物単価と建物面積と耐用年数と築年数とを用いて建物価格を算出し、前記記憶手段に記憶された物件価格と前記建物価格とを利用して土地価格を求める演算を行う演算手段と、 前記演算手段により算出された土地価格の演算結果を出力する出力手段とを具備していることを特徴とする土地価格算出システム。」と補正された。(以下,「補正発明」という。) 上記補正は、平成14年12月27日付けで補正された特許請求の範囲の記載を補正するものである。 平成14年12月27日付け手続補正書には,「【請求項1】土地価格を算出するための土地価格算出システムであって、不動産の広告に表示されている建物価格と土地価格の和である物件価格を受け付ける物件価格受付手段と、不動産の広告に表示されている前記建物と同種の建物の新築建物単価を受け付ける新築建物単価受付手段と、(以下略)」と記載されており, 「新築建物単価受付手段」は,不動産の広告に表示されている建物と同種の建物の新築建物単価であるのに対し,補正発明は,「又は広告に提示されていなければ前記数値表を参考にして入力される新築建物単価」と記載することにより,新築建物単価の対象とする範囲が拡張されたこととなる。 特許法17条の2の規定において,121条1項の審判(拒絶査定不服審判)を請求する場合の補正は,補正内容が出願当初の明細書に記載されていることはもちろん,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに限るとされている。 本件補正は,補正前の発明である平成14年12月27日付けで補正された特許請求の範囲を拡張するものであり,特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当せず,同53条1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 平成15年4月7日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年12月27日付の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】土地価格を算出するための土地価格算出システムであって、 不動産の広告に表示されている建物価格と土地価格の和である物件価格を受け付ける物件価格受付手段と、 不動産の広告に表示されている前記建物と同種の建物の新築建物単価を受け付ける新築建物単価受付手段と、 不動産の広告に表示されている前記物件の建物面積を受け付ける建物面積受付手段と、 前記物件の建物を何年使用できるかを一定の基準に基づいて設定した耐用年数を受け付ける耐用年数受付手段と、 不動産の広告に表示されている前記物件の建物の築年数を受け付ける築年数受付手段と、 前記各受付手段にて受け付けられた物件価格と、新築建物単価と、建物面積と、耐用年数と、築年数とを記憶する記憶手段と、 前記記憶手段に記憶された新築建物単価と建物面積と耐用年数と築年数とを用いて建物価格を算出し、前記記憶手段に記憶された物件価格と前記建物価格とを利用して土地価格を求める演算を行う演算手段と、 前記演算手段により算出された土地価格の演算結果を出力する出力手段とを具備していることを特徴とする土地価格算出システム。」 1 引用例 原査定の拒絶の理由に引用された実願昭63-47627号(実開平1-151318号)のマイクロフィルム(以下,「引用例」という。)には,次の記載がある。(以下,「引用発明」という。) ア 問題点を解決するための手段の項には,「これに対し,この考案は,土地に関し,予め当該地区の地方裁判所で算出した最低競売価格及び土地評価額と,実際に競売された競落価格即ち落札価格との間に関連性があることに着目し,これらから実際の土地取引に妥当と思われる土地価格を算出し,これを所要の取引土地価格として表記したものである。」(2頁7〜13行) イ 考案の実施例には,「最低競売価格a,前記裁判所が査定した評価額である評価土地価格bを並記した最低競売価格欄3,競落価格c,この競落価格から最低競売価格と評価土地価格との差(建物自体の価値)を引いたすなわちc-(a-b)の数値で表される所要の取引土地価格dを並記した競落価格欄4を設け,」(2頁最下行〜3頁6行),と記載され,さらに「この考案においては,前記したように所要の取引土地価格dは,d=c-(a-b)として示され,実際の取引土地価格に近いものであって,最も妥当なものということができる。」(4頁12〜15行)と記載されている。 2 対比 一般に,不動産の広告には,土地価格と建物価格を合計した金額が物件価格として表示されており,土地や建物の広さと共に,中古物件の場合には建物の築年数が掲載されていることは普通に知られている。 そして,物件価格から建物価格を引き算すれば土地価格が求められることは,常識といえる。 引用例には,「取引土地価格dは,d=c-(a-b)として示され」るとあり,明示されていない取引される土地価格を求めていることが認められ,「最低競売価格と評価土地価格との差(建物自体の価値)」の記載から建物自体の価値を土地価格の計算に用いていることが理解できる。 また,引用例は「土地価格算出表」に関するものであるが,土地価格を算出する過程を含めシステムと捉えることができるから,本願発明と引用例に記載された発明とは,次の一致点を有する。 一致点:土地価格を算出するための土地価格算出システムであって、建物価格と土地価格の和である物件価格を基に,物件価格と建物価格とを利用して土地価格を求める演算を行い、演算により算出された土地価格の演算結果を出力することを特徴とする土地価格算出システム。 そして,次の相違点を有する。 相違点1:本願発明では,物件価格が不動産の広告に表示されているものであるのに対し,引用発明では競落価格である点。 相違点2:建物の価格を得る手段が本願発明では,建物と同種の建物の新築建物単価,物件の建物面積,建物の築年数及び耐用年数を用いているのに対し,引用発明では,裁判所が算出した最低競売価格と評価土地価格から求めている点。 相違点3:本願発明が記憶手段や演算手段等を備えたシステムであるのに対し,引用発明は,土地価格算出表であり,計算により得られた数値を表示するものである点。 3 当審の判断 (1) 相違点1について 引用発明の競落価格は,公示の後,落札された価格であり,物件の販売価格ということができ,同じく本願発明の物件価格も,広告の後,販売される物件の販売価格とみることができるから,両者とも物件価格としては区別する必要は認められず,不動産の広告を利用したことによる格別な創意・工夫も認められない。 (2) 相違点2について 建物の価格が築年数とともに変化することは,不動産の知識を有する当業者に自明の事項であり,原査定で引用された中央三井アセットマネジメント編著「この1冊で分かる不動産の証券化そのしくみと手法」中央公論新社(2000年3月25日)の244頁ないし245頁にも,建物の価格が「再調達原価(償却前取得簿価)-減価償却累計額の合計額」として示されている。 このことは,再調達価格が新築建物価格であり,建物の広さにより再調達の価格が異なることは常識であるから,建物単価と広さ(面積)から再調達原価が決まること,及び建物の種類により耐用年数が異なり,築年数により減価償却累計額が決まることも当業者であれば基礎知識として当然に有しているものと認められる。 したがって,建物の価格を得る手段は,当業者であれば格別の困難なく想到できる事項である。 (3)相違点3について 本願発明の,物件価格、新築建物単価、建物面積、耐用年数及び築年数をそれぞれ受け付ける受付手段,記憶する手段,演算を行う演算手段,そして出力する出力手段は,通常のコンピュータ装置が備えるもので,その役割もコンピュータが備える本来の機能を発揮させるにとどまるものであり,当該相違点に当業者が格別推考力を要したとは認められない。 (4) 相違点全体についてみるに,コンピュータに関連する事項を除き,当業者が容易に想到しうるビジネス形態であり,特許請求の範囲の記載にもなんら技術的事項は認められず,また,コンピュータに関連する事項も当業者が通常の態様で使用する記載であり,全体としても当業者であれば容易に想到できたものと認められる。 4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたもので、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-08-12 |
結審通知日 | 2005-08-23 |
審決日 | 2005-09-05 |
出願番号 | 特願2000-278541(P2000-278541) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
P 1 8・ 572- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 谷口 信行 |
特許庁審判長 |
杉山 務 |
特許庁審判官 |
大野 弘 深沢正志 |
発明の名称 | 土地価格算出システム、土地価格算出方法及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体 |
代理人 | 井上 敬子 |
代理人 | 赤澤 一博 |