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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B |
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管理番号 | 1125522 |
審判番号 | 不服2002-24401 |
総通号数 | 72 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-03-08 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-12-19 |
確定日 | 2005-10-31 |
事件の表示 | 平成4年特許願第222838号「X線断層像撮影装置」拒絶査定不服審判事件〔平成6年3月8日出願公開、特開平6-63034〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成4年8月21日の出願であって、平成14年4月15日付け拒絶理由通知書で通知した拒絶の理由により同年11月19日に拒絶の査定がなされ、これに対し、同年12月19日に不服の審判の請求がなされたものであるところ、平成11年8月18日付け及び平成14年6月24日付けの手続補正は、それぞれ、平成13年9月11日及び平成14年8月6日に却下されたので、本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成14年3月18日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1及び請求項6の記載は次のとおりである(以下、それぞれ「本願発明1」「本願発明6」という。)。 「【請求項1】 固定部から架台回転部のX線発生系に、スリップリング及びブラシを介して電力を供給するX線断層像撮影装置において、 前記スリップリングを介して前記X線発生系に供給される供給電圧、又は前記スリップリングと前記ブラシとの接触抵抗を検出する検出部と、 この検出部の出力をメンテナンス情報として記憶する記憶部とを備えたことを特徴とするX線断層像撮影装置。 【請求項6】 固定部から架台回転部のX線発生系に、スリップリング及びブラシを介して電力を供給するX線断層像撮影装置において、 前記スリップリングを介して前記X線発生系に供給される供給電圧に係る電流の変化を検出する検出部と、 この検出部の出力をメンテナンス情報として記憶する記憶部とを備えたことを特徴とするX線断層像撮影装置。」 なお、請求人は、上記審判請求書の手続補正書(方式)において、平成14年6月24日付け手続補正書による補正を却下した平成14年8月6日の決定について、同補正における補正事項は、出願当初明細書又は図面から自明ないし出願当初明細書に明瞭に記載されているので、上記手続補正は却下されるべきではない旨釈明しているが、平成5年法律第26号附則第2条によれば、同法施行の際(審決注、平成6年1月1日)現に特許庁に係属している特許出願に係る審判についてはなお従前の例によるとされているから、補正却下の決定に対する不服の申立ては、平成5年法律第26号による改正前の特許法第122条の<補正却下の決定に対する審判>によるほかはなく請求人の上記釈明には法律的根拠がなく受け入れることはできない。 2.刊行物 (2-1)刊行物1 原査定の拒絶の理由で引用した特開平3-292937号公報(以下「刊行物1」という。)には、「X線CT用スリップリング部」に関し、次の従来技術が図面とともに記載されている。 「(従来の技術) 現在X線CT装置として、スキャナ部の回転系における・・・電力供給等を行うために架台内にスリップリングを設け、連続回転を可能としたものが用いられている。このようなX線CT用スリップリング部としては、例えば第6図に示すようなものがある。図において・・・103は電力用スリップリング、104はこれに当接する電力用ブラシである。 ・・・ 上記X線CT用スリップリング部においては、スリップリング・・・103は回転時に・・・ブラシ・・・104に対して摺動するため、スリップリング・・・103及びブラシ・・・104が摩耗して摩耗粉を生じる。この摩耗粉がスリップリング部に溜まると、パワーラインの放電・・・が発生するので、これを防止するために摩耗粉を除去する必要がある。」(公報1頁右下欄10行ないし同2頁左上欄15行) (2-2)刊行物2 原査定の拒絶の理由で引用した特開平2-262029号公報(以下「刊行物2」という。)には、「回動軸に取付けられたトルクセンサの異常検出装置」に関し、次の事項が図面とともに記載されている。 「発明が解決しようとする課題 ・・・ハンドルの転舵に応じて回動する操舵軸に取付けられたポテンショメータから出力される電気信号をブラシとスリップリングとからなる集電機構を介して取出すようにしたものにおいては、該集電機構部におけるスリップリングとブラシ間の接触抵抗の経年変化等による変動がポテンショメータから出力される電気信号の変動即ち操舵トルクの誤検出につながり・・・問題を生ずる。 本発明はブラシとスリップリングとからなる集電機構内で発生する接触抵抗の異常値を監視し検出する異常検出装置を提供することを目的とするものである。」(公報2頁左上欄2ないし17行) 「しかしポテンショメータ4の抵抗体4aに制御用電源電圧Vccを供給する回路中に位置するスリップリングのいずれかとその相手側となるブラシ間の接触抵抗がごみの付着等何らかの原因により増加したとすると出力端子Cから出力される出力電圧V0が変動する・・・」(公報3頁右上欄9ないし14行) (2-3)刊行物3 原査定の拒絶の理由で引用した特開昭63-148599号公報(以下「刊行物3」という。)には、「X線装置」に関し、次の事項が図面とともに記載されている。 「このようなX線放射中のX線管電流は、検出抵抗5,6で検出され、X線管電流検出回路21で既知の方法で正常電流値と比較され、検出値が過大電流等の異常時には、異常割込信号(b)がCPU213に送られ・・・RAM212へ異常電流が流れたことを示す情報をメモリーする。修復作業時に作業者は既知の方法でこの情報を読出し、修復作業に役立てる。」(公報2頁右上欄12ないし同左下欄2行) 3.対比・判断 (3-1)本願発明1について 本願発明1と刊行物1に記載された従来技術(以下「刊行物1発明」という。)を対比すると、 刊行物1発明における「電力用スリップリング103」「電力用ブラシ104」「X線XT装置」が、それぞれ、本願発明1の『スリップリング』『ブラシ』『X線断層像撮影装置』に相当することは明らかであるから、 本願発明1と刊行物1発明とは、 (一致点) 「固定部から架台回転部のX線発生系に、スリップリング及びブラシを介して電力を供給するX線断層像撮影装置。」 である点で一致し、次の点で相違する。 <相違点A> 本願発明1が『スリップリングを介してX線発生系に供給される供給電圧を検出する検出部』又は『スリップリングとブラシとの接触抵抗を検出する検出部』を有するとともに、『この検出部の出力をメンテナンス情報として記憶する記憶部』を備えているのに対し、 刊行物1発明は、かかる検出部や記憶部を備えていない点。 上記相違点Aについて検討する。 スリップリングとブラシの摩耗の進行が、スリップリングとブラシとの接触抵抗の増加という電気的特性の変化として現れることは当業者にはよく知られた知見であり(例えば、特開平2-68875号公報の2頁左上欄12ないし18行の記載を参照)、当該接触抵抗自体ないしこれと電気的関係を有する前記スリップリングを介してX発生系に供給される電圧を検出し、当該電気的特性の変動から前記接触抵抗の増加を知ることができることは上記刊行物2を示すまでもなくあまりにも明らかである。 刊行物1発明においても、スリップリングとブラシの摩耗状態を知ることができれば、例えば、摩耗除去の必要性等を判断する上でも有用であることは明らかであるから、刊行物1発明において、前記摩耗状態を反映する接触抵抗自体や当該接触抵抗と電気的関係を有するX線発生系への供給電圧を検出するために周知の抵抗測定器や電圧測定器を採用すること、すなわち、『スリップリングを介してX線発生系に供給される供給電圧を検出する検出部』又は『スリップリングとブラシとの接触抵抗を検出する検出部』を有するようにすることは当業者が容易に想到し得ることであり、その際、『その検出部の出力をメンテナンス情報として記憶する記憶部』を備えるようにすることは、前記出力値の経時的変化を知ることの有用性(例えば、特開平4-109597号公報の3頁右上欄9ないし15行の記載を参照)や当該出力データを表示の用に供したり将来のデータ処理の必要性(例えば、実願昭58-190748号〔実開昭60-98300号〕のマイクロフィルムの明細書8頁8ないし19行の記載を参照)等を勘案して当業者が適宜になし得ることである。 したがって、本願発明1は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3-2)本願発明6について 本願発明6と上記刊行物1発明とを対比すると、上記「(3-1)」に記載したのと同様の理由により、本願発明6と刊行物1発明とは、 (一致点) 「固定部から架台回転部のX線発生系に、スリップリング及びブラシを介して電力を供給するX線断層像撮影装置。」 である点で一致し、次の点で相違する。 <相違点B> 本願発明6が『スリップリングを介してX線発生系に供給される供給電圧に係る電流の変化を検出する検出部』及び『この検出部の出力をメンテナンス情報として記憶する記憶部』とを備えているのに対し、 刊行物1発明は、かかる検出部や記憶部を備えていない点。 上記相違点Bについて検討する。 上記相違点Aについての検討で示したとおり、スリップリングとブラシの接触抵抗自体ないしこれと電気的関係を有する前記スリップリングを介してX線発生系に供給される電圧を検出し、当該電気的特性の変動から前記接触抵抗の増加を知ることができることは明らかである。そして、前記接触抵抗やX線発生系への供給電圧が変化すれば、この供給電圧に係る電流が変化することもまた明らかであるとともに、このような電流のもとであるX線管電流を監視することは周知技術である(上記刊行物3の記載を参照。)。 刊行物1発明においても、スリップリングとブラシの摩耗状態に関する情報が有益であることは前示のとおりであり、刊行物1発明において、当該摩耗状態を反映するX線発生系への供給電圧に係る電流の変化を検出するために、その電流の変化と同様の変化をしているX線管電流を検出する着想を得るのに困難はなく、X線管電流の測定は上記のとおり周知技術であるから、『スリップリングを介してX線発生系に供給される供給電圧に係る電流の変化を検出する検出部』を有するようにすることは当業者が容易に想到し得ることであり、その際、『その検出部の出力をメンテナンス情報として記憶する記憶部』を備えるようにすることは、上記相違点Aについての検討でも示したとおり当業者が適宜になし得ることである。 したがって、本願発明6は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明1及び本願発明6は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願のその余の請求項に係る発明についての判断を示すまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-09-05 |
結審通知日 | 2005-09-06 |
審決日 | 2005-09-20 |
出願番号 | 特願平4-222838 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 後藤 順也、服部 秀男、神谷 直慈 |
特許庁審判長 |
渡部 利行 |
特許庁審判官 |
長井 真一 櫻井 仁 |
発明の名称 | X線断層像撮影装置 |
代理人 | 堀口 浩 |