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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E04D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04D
管理番号 1125679
審判番号 不服2004-26097  
総通号数 72 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2003-07-03 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-24 
確定日 2005-11-02 
事件の表示 特願2001-381070「縦葺屋根構造」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月 3日出願公開、特開2003-184230〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年12月14日の出願であって、平成16年11月15日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年12月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成17年1月20日付で手続補正がなされたものである。

2.平成17年1月20日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年1月20日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、請求項1は、次のとおり補正された。
「下地上に保持部材を固定し、面板部の両側縁に略左右対称な側縁成形部を有する縦葺屋根板を敷設してなる縦葺屋根構造にあって、
前記縦葺屋根板の側縁成形部は、面板部の側縁を略傾斜状に立ち上げた片の高さの途中のみに、保持部材の被嵌合部に保持される嵌合部を備え、該嵌合部の外方に、隣り合う縦葺屋根板と互いに重合する重合部を備え、屋根面の傾斜や風向き等の諸条件に応じて上側及び下側を設定でき、
敷設状態において上側に位置させた重合部の端部が下側に位置させた重合部に弾性的に当接することを特徴とする縦葺屋根構造。」(以下、「補正発明」という。)
上記補正は、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)本願出願前に頒布された刊行物に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-212797号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。
「【請求項2】外装下地上に外装材保持用部材を固定し、両側縁の立上り部に嵌合部を有し、立上り部から外方に延出する略左右対称な重合延出部を形成した縦葺き外装材を敷設してなる建築物の外装構造にあって、立上り部の嵌合部を外装材保持用部材の被嵌合部に弾性係合させて保持させ、水上側に敷設する外装材の重合延出部を水下側に敷設する外装材の重合延出部の上に重合させることを特徴とする建築物の外装構造。」
「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、3次元曲面を呈する屋根構造に適用して風雨に対して安全性が高いものとできる縦葺き外装材及び建築物の外装構造に関する。」
「【0006】【発明の実施の形態】本発明の縦葺き外装材1は、図2に示すような両側縁の立上り部3に嵌合部31を有する構成であり、両立上り部3,3には、それぞれ外方に延出する略左右対称の重合延出部4を形成している。」
「【0008】図2に示される外装材1は、略平坦状の面板部2の両側縁に、断面略く字状の嵌合部31を有する傾斜状の立上り部3,3を備え、両立上り部3,3から外方に延出する略左右対称の断面山形状の重合延出部4を形成してなる折板屋根板であり、その施工(接続)状態において隣り合う立上り部3,3で桟状の山部が形成される構成である。より詳細に説明すると、前記立上り部3は、面板部2の端縁から傾斜状に立上る傾斜面部32、該傾斜面部32の上端からさらに外方へ断面略く字状に突出する嵌合部31を形成した構成である。尚、図示しないが、嵌合部31としては、立上り部3の傾斜と略直交する角度で、外側に狭窄部分を有して膨出する構成を採用してもよい。前記重合延出部4は、略傘状に延出する構成であり、その施工(接続)状態において隣り合う重合延出部4と重合して係合状態となる。
【0009】図3,4の外装構造を前記外装材1と共に構築する外装材保持用部材5は、基本的に前記外装材1の嵌合部31と弾性嵌合する被嵌合部51,51を有する構成であり、従来公知の吊子やタイトフレームと称される部材であり、複数部材の組合せ品も含まれる。…」
「【0010】前記外装材保持用部材5を固定する外装下地6は、梁や母屋、胴縁等の鉄骨躯体が一般的であるが、これに限定されるものではない。…」
「【0012】前記各部材を用いて外装構造を施工するには、一般の嵌合式の外装材と同様に施工するものであり、概ね以下の手順で行われる。即ち、梁や母屋、胴縁等の鉄骨下地6上に、前記外装材保持用部材5を取り付けて、これに前記外装材1を弾性嵌合により施工した後、カバー材7を取り付けるものである。但し、外装材1を敷設するに際し、屋根面の傾斜や風向き等の諸条件に応じて水上側に敷設する外装材1の重合延出部4を水下側に敷設する外装材1の重合延出部4の上に重合させる。ここで、図1の屋根面は、棟軒方向に傾斜すると共に緩やかに上に凸状であり、しかも中央部分から両側縁に向かって下り傾斜している。したがって、図1のような3次元曲面を呈する屋根面を施工する場合、図1(a),(b)の右半部分では、図3に示すように左側に配設する外装材1の重合延出部4を右側に配する外装材1の重合延出部4の上に重合させる。また、図1(a),(b)の左半部分では、図4に示すように右側に配設する外装材1の重合延出部4を左側に配設する外装材1の重合延出部4の上に重合させる。さらに、予め外装材1を上に凸状に成形して或いは施工に際して上に凸状になるようにして敷設した。尚、例えば仮り置きした状態が所望の施工状態と異なっていても、左右の重合延出部4,4を弾性に抗して持ち上げて正規の施工状態とすることは容易であるから、現場成形した外装材1を屋根面へ搬送(リフトアップ)して敷設(仮り置き)する際にはその方向を限定するものではない。
【0013】このように本発明の外装材1は、外装材1の立上り部3及び重合延出部4が略左右対称に形成されているので、屋根面への搬送の際に取付ミスを生じ得ないものとなり、その外装材1の敷設作業も含めて施工性が向上する。また、外装材1は、物品として製造成形性の点で優れたものとなる。」
また、図2、3等をみると、面板部2の側縁を傾斜状に立ち上げた片の高さの途中のみに、外装用保持部材5の被嵌合部51に保持される嵌合部31を備えた点、重合延出部4の端部が下側に位置させた重合延出部4に重合する点が記載されている。
そうすると、上記記載、対応する図面及び当業者の技術常識によれば、刊行物1には以下の発明が記載されていると認められる。
「外装下地6上に外装用保持部材5を固定し、面板部2の両側縁に略左右対称な立上り部3を有する縦葺外装材1を敷設してなる縦葺屋根構造にあって、
前記縦葺外装材1の立上り部3は、面板部2の側縁を傾斜状に立ち上げた片の高さの途中のみに、外装用保持部材5の被嵌合部51に保持される嵌合部31を備え、屋根面の傾斜や風向き等の諸条件に応じて上側及び下側を設定でき、
敷設状態において上側に位置させた重合延出部4の端部が下側に位置させた重合延出部4に重合する縦葺屋根構造。」

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-184251号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。
「【請求項1】屋根板本体(2)の両側縁部に第一及び第二係合片(3),(4)がそれぞれ全長に亘って形成されており長手方向に湾曲せしめられて成る長尺状のアーチ型屋根用屋根板(1)であって、屋根下地材(5)に先に固定される屋根板(1)の第一係合片(3)の外面に次に固定される屋根板(1)の第二係合片(4)を係合する作業を幅方向に順次繰返し行ってアーチ型屋根面を構成せしめるものであり、第一係合片(3)が、屋根板本体(2)に近接した高さ位置に屋根板本体(2)の中央側に凸を成す本体側凸条部(3a)が形成されており、該本体側凸条部(3a)から上方に屈曲された後に裏面側に屈曲された略逆U字状を成す略逆U字状部(3b)が形成されており、該略逆U字状部(3b)の端縁側に屋根板本体(2)と反対側に凸を成す端縁側凸条部(3c)が形成されており、更に該端縁側凸条部(3c)の端縁側に屋根板本体(2)と同一高さで屋根下地材(5)に固定される固定部(3d)が延設されて成り、第二係合片(4)が、屋根板本体(2)に近接した高さ位置に屋根板本体(2)の中央側に凸を成す本体側凸条部(4a)が形成されており、該本体側凸条部(4a)から上方に屈曲された後に裏面側に屈曲された略逆U字状を成す略逆U字状部(4b)が形成されており、更に該略逆U字状部(4b)から屋根板本体(2)と反対側に凸を成す端縁側凸条部(4c)が形成されて成ることを特徴とするアーチ型屋根用屋根板(1)。
【請求項2】第二係合片(4)の端縁側凸条部(4c)の更に端縁側に、連結相手側のアーチ型屋根用屋根板(1)に形成されている第一係合片(3)の本体側凸条部(3a)と屋根板本体(2)との間の部分の表面に当接される舌片(4ca)が形成されている請求項1に記載のアーチ型屋根用屋根板(1)。」
「【0027】次いで、次に固定される屋根板1の第二係合片4を、先に固定された屋根板1の第一係合片3に上方より押し付けて、第二係合片4の本体側凸条部4aと端縁側凸条部4cとこの端縁側凸条部4cの更に端縁側に舌片4caが形成されている場合にはこの舌片4caの各裏面が、それぞれ第一係合片3の端縁側凸条部3cと本体側凸条部3aと更には本体側凸条部3aと屋根板本体2との間の部分の各外面に当接するように、第二係合片4のばね作用によって第一係合片3に係合させる。」

(3)対比・判断
補正発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「外装下地6」は補正発明の「下地」に相当し、以下同様に、「外装用保持部材5」は「保持部材」に、「立上り部3」は「側縁成形部」に、「縦葺外装材1」は「縦葺屋根板」に、「重合延出部4」は「重合部」に、「重合」は「当接」に、それぞれ相当するから、両者は、
「下地上に保持部材を固定し、面板部の両側縁に略左右対称な側縁成形部を有する縦葺屋根板を敷設してなる縦葺屋根構造にあって、前記縦葺屋根板の側縁成形部は、面板部の側縁を略傾斜状に立ち上げた片の高さの途中のみに、保持部材の被嵌合部に保持される嵌合部を備え、該嵌合部の外方に、隣り合う縦葺屋根板と互いに重合する重合部を備え、屋根面の傾斜や風向き等の諸条件に応じて上側及び下側を設定でき、敷設状態において上側に位置させた重合部の端部が下側に位置させた重合部に当接する縦葺屋根構造。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点]上側に位置させた重合部の端部が下側に位置させた重合部に、補正発明は、弾性的に当接するのに対し、刊行物1記載の発明は、重合すると記載されている点。
上記相違点について検討する。
刊行物2には、第二係合片4(補正発明の「上側に位置させた重合部」に相当)の端縁側凸条部4cの更に端縁側に舌片4caが形成されている場合にはこの舌片4caの各裏面が、それぞれ第一係合片3(補正発明の「下側に位置させた重合部」に相当)の端縁側凸条部3cと本体側凸条部3aと更には本体側凸条部3aと屋根板本体2との間の部分の各外面に当接するように、第二係合片4のばね作用(補正発明の「弾性」に相当)によって第一係合片3に係合させる点が記載されている。
そうすると、刊行物1記載の発明の重合(当接)において、刊行物2記載の発明の弾性的に当接する点を適用し、相違点に係る補正発明の構成とすることは、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の発明が共に屋根構造という同一の技術分野に属するものであるから、何ら困難性はなく、当業者が容易に想到するものである。

そして、補正発明の作用効果も、刊行物1、2記載の発明から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、補正発明は、刊行物1、2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成17年1月20日付の手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成16年7月12日付の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「下地上に保持部材を固定し、面板部の両側縁に略左右対称な側縁成形部を有する縦葺屋根板を敷設してなる縦葺屋根構造にあって、
前記縦葺屋根板の側縁成形部は、面板部の側縁を略傾斜状に立ち上げた片の高さの途中のみに、保持部材の被嵌合部に保持される嵌合部を備え、該嵌合部の外方に、隣り合う縦葺屋根板と互いに重合する重合部を備え、
敷設状態において上側に位置させた重合部の端部が下側に位置させた重合部に弾性的に当接することを特徴とする縦葺屋根構造。」
(以下、「本願発明」という。)

(2)本願出願前に頒布された刊行物に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した補正発明から「屋根面の傾斜や風向き等の諸条件に応じて上側及び下側を設定でき」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する補正発明が、前記「2.(3)」に記載したとおり、刊行物1、2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1、2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1、2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-08-18 
結審通知日 2005-08-23 
審決日 2005-09-08 
出願番号 特願2001-381070(P2001-381070)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04D)
P 1 8・ 575- Z (E04D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中田 誠  
特許庁審判長 山田 忠夫
特許庁審判官 南澤 弘明
斎藤 利久
発明の名称 縦葺屋根構造  
代理人 福田 伸一  
代理人 福田 武通  
代理人 福田 賢三  

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