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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01Q
管理番号 1125714
審判番号 不服2003-21242  
総通号数 72 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-09-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-10-31 
確定日 2005-11-04 
事件の表示 平成7年特許願第64820号「分離型アンテナ」拒絶査定不服審判事件〔平成8年9月13日出願公開、特開平8-237017〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成7年2月27日の出願であって、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年9月1日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「給電ポイントであるホルダー内を伸張位置と収縮位置との間で摺動可能である伸縮式ホイップ型アンテナのアンテナエレメントを、伸長時にホルダーと電気的に接続されてアンテナとして働く第1のアンテナエレメント部分と、収縮時に働く第2のアンテナエレメント部分とで構成し、第2のアンテナエレメントを第1のアンテナエレメント上に、絶縁体と導電体とからなる誘電スリーブを介して電気的に分離すると共に機械的に接続しており、前記絶縁体は前記第1のアンテナエレメントの上端に取りつられるとともに上方に延在し、前記導電体は、前記絶縁体の上方への延在端の頭部にその周囲を間隔をおいて取り巻くように取付けられたスリーブ形状をしており、しかも絶縁体の頭部上に取り付けられた前記第2のアンテナエレメントを構成するヘリカルコイルが設けられ、このヘリカルコイルと前記スリーブ形状の導電体とが互いに接続されており、前記ヘリカルコイルと前記スリーブ形状の導電体との周囲を取り囲むようにキャップが設けられ、アンテナの収縮時に前記ホルダーの頭部が前記絶縁体と導体との間に嵌入して該導体を介して前記第2のアンテナエレメントに給電するように構成されていることを特徴とする分離型アンテナ。」

2.引用発明及び周知技術
(1)これに対し、原審の拒絶理由に引用された特開平5-243829号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
イ.「【産業上の利用分野】本発明は、例えば、携帯無線、特に手持ち携帯無線電話器に適用することができる収縮可能なアンテナを有するアンテナ組立体に関する。」(2頁2欄、段落1)
ロ.「本発明は、サポート内に設けられ、収縮位置と伸長位置の間を移動可能な細長いアンテナ要素と、細長いアンテナ要素の一端で支持された螺旋アンテナ要素とを有し、細長いアンテナ要素は、収縮位置への移動によって、放射装置として作動しなくなることを特徴とするアンテナ組立体を提供する。本発明によるアンテナ組立体は、小型で便利な二重アンテナ装置を提供し、該装置は、理想的には携帯用無線器への適用に適し、比較的流れ作業的な仕方で組み立てることができるので、低コストである。両方のアンテナ要素は、最適な放射性能のために、無線器ハウジングの外部とすることができる。伸長位置では、細長いアンテナ要素は、単独で或いは螺旋アンテナ要素と組み合せて、作動する。収縮位置では、細長いアンテナ要素は、作動しないので、より小型の螺旋アンテナ要素は、単独で単一のアンテナ機能を果たす。より好ましい実施例では、伝導性給電装置が、アンテナ要素に接続され、細長いアンテナ要素は、収縮位置で伝導性給電装置に結合されたままである。」(3頁3欄、段落5)
ハ.「アンテナサポートは、細長いアンテナ要素を収縮位置に実質的に閉じ込めるようになった電気的伝導性部分を有するのが適当である。サポートは、アンテナ要素に対する給電装置をなす1対の同軸の導体を有するのが好ましく、細長いアンテナ要素は、同軸の対の中央導体に電気接続されている。サポートは、誘電管からなり、同軸導体が、誘電管の内面及び外面にそれぞれ設けられる。変形例として、サポートは、例えば、空隙によって間隔を隔てられた1対の自立型同心円筒体からなるものでもよい。いずれの場合でも、細長いアンテナ要素は、電気伝導性部分が、好ましくはその内端で、同軸の対の中央導体に、物理的に接触し、その結果、これに電気接続されるように中央導体内に摺動可能に設けられる。」(3頁3欄、段落7)
ニ.「接続装置は、サポートにある固定電気コネクターと、螺旋アンテナ要素に接続された可動電気コネクターとからなるのが適当であり、該可動電気コネクターは、細長いアンテナ要素が、収縮位置にあるとき、固定電気コネクターに係合する。2つのコネクターは、それぞれ同心コレットの形態をなすのがよい。」(3頁4欄、段落10)
ホ.「変形実施例では、螺旋アンテナ要素12を、細長いアンテナ要素11から電気的に隔絶してもよい。この場合、絶縁スリーブ8を貫通して延びる伝導性部材のような接触装置を設けて、アンテナが、完全に収縮位置にあるとき、細長い要素の外端を、内側導体9に電気接続してもよい。収縮位置では、コレットスイッチ15、16は、螺旋アンテナ要素12を同軸の給電の中央導体に接続するのに依然として効果的である。かくして、コレットの対15及び16は、螺旋アンテナ要素12用の低インダクタンス、低抵抗アンテナスイッチを構成する。アンテナが、伸ばされたときには、コレット15及び16間の接触は、断たれ、かくして、螺旋アンテナ要素の連結を外す。又、細長いアンテナ要素の外端の接触装置と同軸サポートの内側導体9との電気接続も、断たれ、それによって低端部分17で内側導体9に電気接続されたままの細長い要素は、放射アンテナとしてその機能を果たす。」(4頁6欄〜5頁7欄、段落21)

上記記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記「細長いアンテナ要素」と「螺旋アンテナ要素」とからなる「アンテナ組立体」はいわゆる「伸縮式ホイップ型アンテナ」であり「分離型アンテナ」を構成している。また、上記「細長いアンテナ要素」は、「伸長時にサポートと電気的に接続されてアンテナとして働く第1のアンテナエレメント部分」を構成し、上記「螺旋アンテナ要素」は、いわゆる「ヘリカルコイル」であり、「収縮時に働く第2のアンテナエレメント部分」を構成するとともに「収縮位置では、同心コレットの形態をなしている可動電気コネクターを介して同軸の給電の中央導体に接続」し、「伸ばされたときには、絶縁スリーブを介して細長いアンテナ要素から電気的に隔絶」するものである。
また、上記「同心コレットの形態をなしている可動電気コネクター」は「絶縁体の周囲に間隔をおいて取付けられ」、「アンテナの収縮時にサポートの頭部が絶縁体と導体との間に嵌入して該導体を介して第2のアンテナエレメントに給電する」構成を備えており、上記「サポート」の「内側導体」(即ち、サポート内)はいわゆる「給電ポイント」となっている。
したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「給電ポイントであるサポート内を伸張位置と収縮位置との間で摺動可能である伸縮式ホイップ型アンテナのアンテナエレメントを、伸長時にサポートと電気的に接続されてアンテナとして働く第1のアンテナエレメント部分と、収縮時に働く第2のアンテナエレメント部分とで構成し、第2のアンテナエレメントを第1のアンテナエレメント上に、絶縁体と導電体とからなるコネクタを介して電気的に分離すると共に機械的に接続しており、前記絶縁体は前記第1のアンテナエレメントの上端に取りつけられるとともに上方に延在し、前記導電体は、第1のアンテナエレメントの頭部の周囲に間隔をおいて取付けられた同心コレットの形態をしており、しかも絶縁体中に取り付けられた前記第2のアンテナエレメントを構成するヘリカルコイルが設けられ、このヘリカルコイルと前記同心コレット形態の導電体とが互いに接続されており、アンテナの収縮時に前記サポートの頭部が前記絶縁体と導体との間に嵌入して該導体を介して前記第2のアンテナエレメントに給電するように構成されている分離型アンテナ。」

(2)例えば実願平4-76544号のCD-ROM(実開平6-41082号参照、以下、「周知例1」という。)には、図面とともに、以下の事項イ.が記載されており、また例えば実願昭61-153715号のマイクロフィルム(実開昭63-60282号参照、以下、「周知例2」という。)には、図面とともに、以下の事項ロ.が記載されている。
イ.「円筒状をなしその後部に同軸ケーブルのシールド線が接続された金属製スリーブと、前記同軸ケーブルの芯線に接続され前記スリーブの中心軸に配置されたコンタクトと、前記スリーブと前記コンタクトを電気的に絶縁しかつ該コンタクトを該スリーブ内に固定する絶縁体と、前記スリーブの外側に嵌合される絶縁性のカバーとを、備えた同軸コネクタにおいて、
前記金属製スリーブは、少なくともその前部を弾性変形可能な完全円筒構造にし、かつその内周面に1個又は複数個の凸部を設けたことを特徴とする同軸コネクタ。」(2頁1欄、請求項1)
ロ.「コード芯線と接続されるプラグピンと、プラグピンを外周から固定し芯線とシールド線を絶縁するインナーシェルタと、インナーシェルタに外挿され前記シールド線と接続されて芯線への雑音混入を防止するスリーブと、スリーブに被せてプラグ内部を保護するプラグキャップとからなる音響機器用ピンコネクタ」(1頁左下欄5〜11行目)

例えば上記周知例1、2に記載されているように、「コネクタを構成する導電体の一つをスリーブ形状としスリーブを含むコネクタ全体を取り囲むようにキャップを設ける」構成は周知である。

(3)例えば特開平6-104625号公報(以下、「周知例3」という。)には、図面とともに、以下の事項イ.が記載されており、また例えば特開平6-6121号公報(以下、「周知例4」という。)には、図面とともに、以下の事項ロ.が記載されている。
イ.「図1において、10はスリーブアンテナ全体を示す。11はエレメントであり、1/4波長モノポールアンテナ12の上端部に絶縁体13を介して接続された1/4波長ヘリカルアンテナ14を備えている。」(2頁2欄、24〜28行目)
ロ.「【実施例】以下、本発明を実施例を示す図面によって詳細に説明する。 図1は本発明の一実施例を示す図であって、(a)は金属製のロッド1を無線装置2の筐体3から引き出した状態を示す斜視図、(b)は前記ロッド1をスライドして前記筐体3内に収納した状態を示すアンテナ装置部分の断面図であり、このアンテナ装置に於いてはロッド1の下端部に接触金具として大径部7を形成する一方、上端部にはロッド1と同径の絶縁部材9を介して第2の接触金具として機能する金属製の大径部10及び該大径部10に導通固定されたヘリカル型アンテナ11を具備している。このヘリカル型アンテナ11はロッド1と同様に当該無線装置の送受信周波数に於いて軸方向と直交する円形状のアンテナ放射パターン特性を有するよう導線を螺旋状に成型したものであり、また収納した状態から指でつまんでロッドを引き出す際の圧迫力或いは携帯時の衝撃等から形状を保護すべく非金属カバー12にて覆われている。」(2頁2欄〜3頁3欄、段落8)

例えば上記周知例3、4に記載されているように、「ヘリカルコイルを絶縁体の上部に取り付け、絶縁体の頭部の周囲にヘリカルコイル給電用導体を設ける」構成は周知である。また上記周知例4には「ヘリカル型アンテナを非金属カバーで覆う」構成も開示されている。

3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「サポート」は本願発明でいう「ホルダー」と実質的に同一の部材である。
また、引用発明の「コネクタ」と本願発明の「誘電スリーブ」はいずれも「接続部」であるという点で一致しており、引用発明の「第1のアンテナエレメントの頭部の周囲に間隔をおいて取付けられた同心コレットの形態」と本願発明の「前記絶縁体の上方への延在端の頭部にその周囲を間隔をおいて取り巻くように取付けられたスリーブ形状」は、いずれも「所定の形状」であるという点で一致しており、引用発明の「絶縁体中に取り付けられた前記第2のアンテナエレメント」と本願発明の「絶縁体の頭部上に取り付けられた前記第2のアンテナエレメント」はいずれも「絶縁体の所定部分に取り付けられた前記第2のアンテナエレメント」であるという点で一致している。

したがって、本願発明と引用発明は、以下の<一致点>で一致し、また、<相違点>で相違している。
<一致点>
「給電ポイントであるホルダー内を伸張位置と収縮位置との間で摺動可能である伸縮式ホイップ型アンテナのアンテナエレメントを、伸長時にホルダーと電気的に接続されてアンテナとして働く第1のアンテナエレメント部分と、収縮時に働く第2のアンテナエレメント部分とで構成し、第2のアンテナエレメントを第1のアンテナエレメント上に、絶縁体と導電体とからなる接続部を介して電気的に分離すると共に機械的に接続しており、前記絶縁体は前記第1のアンテナエレメントの上端に取りつけられるとともに上方に延在し、前記導電体は、所定の形状をしており、しかも絶縁体の所定部分に取り付けられた前記第2のアンテナエレメントを構成するヘリカルコイルが設けられ、このヘリカルコイルと前記所定の形状の導電体とが互いに接続されており、アンテナの収縮時に前記ホルダーの頭部が前記絶縁体と導体との間に嵌入して該導体を介して前記第2のアンテナエレメントに給電するように構成されている分離型アンテナ。」

<相違点>
(1)「接続部」に関し、本願発明は「誘電スリーブ」であるのに対し、引用発明は「コネクタ」である点。
(2)「所定の形状」に関し、本願発明は「前記絶縁体の上方への延在端の頭部にその周囲を間隔をおいて取り巻くように取付けられたスリーブ形状」であるのに対し、引用発明は「第1のアンテナエレメントの頭部の周囲に間隔をおいて取付けられた同心コレットの形態」である点。
(3)「ヘリカルコイル」が設けられる「絶縁体の所定部分」に関し、本願発明は「絶縁体の頭部上」であるのに対し、引用発明は「絶縁体中」である点。
(4)「ヘリカルコイル」および「接続部」の構成に関し、本願発明は「前記ヘリカルコイルと前記スリーブ形状の導電体との周囲を取り囲むようにキャップが設けられ」ているのに対し、引用発明はその点の構成を備えていない点。

4.当審の判断
そこで、まず、上記相違点(1)の「接続部」と相違点(2)の「所定の形状」について検討するに、例えば上記周知例1、2に記載されているように、「コネクタを構成する導電体の一つをスリーブ形状としスリーブを含むコネクタ全体を取り囲むようにキャップを設ける」構成は周知であるところ、当該周知技術を引用発明のコネクタに適用する上での阻害要因は何ら見あたらないから、引用発明の「同心コレットの形態」を「同軸部材の周囲を間隔をおいて取り巻くように取付けられたスリーブ形状」に変更することは当業者であれば適宜成し得ることであり、例えば上記周知例3、4に記載されているように、「ヘリカルコイルを絶縁体の上部に取り付け、絶縁体の頭部の周囲にヘリカルコイル給電用導体を設ける」構成も周知であり、当該周知技術を引用発明のコネクタに適用する上での阻害要因は何ら見あたらないから、引用発明の「同心コレットの形態」を「同軸部材の周囲を間隔をおいて取り巻くように取付けられたスリーブ形状」に変更するに際し、その取り付け位置を「絶縁体の上方への延在端の頭部」とする程度のことは単なる設計的事項に過ぎないものである。
したがって、引用発明の「コネクタ」を本願発明のような「前記絶縁体の上方への延在端の頭部にその周囲を間隔をおいて取り巻くように取付けられたスリーブ形状」とするとともに、当該構成を「誘電スリーブ」と呼称する程度のことは当業者であれば適宜成し得たものである。
ついで、上記相違点(3)の「ヘリカルコイル」が設けられる「絶縁体の所定部分」について検討するに、上記したように、「ヘリカルコイルを絶縁体の上部に取り付け、絶縁体の頭部の周囲にヘリカルコイル給電用導体を設ける」構成は周知であり、当該周知技術を引用発明のヘリカルコイルの取り付けに適用する上での阻害要因は何ら見あたらないから、引用発明の「絶縁体中」に設ける構成を本願発明のような「絶縁体の頭部上」に変更する程度のことも当業者であれば適宜成し得ることである。
ついで、上記相違点(4)の「ヘリカルコイル」および「接続部」の構成について検討するに、上記したように、「コネクタを構成する導電体の一つをスリーブ形状としスリーブを含むコネクタ全体を取り囲むようにキャップを設ける」構成は周知であり、また上記周知例4には「ヘリカル型アンテナを非金属カバーで覆う」構成も開示されているのであるから、引用発明のヘリカルコイルおよびコネクタを保護カバーで覆うように構成する程度のことも当業者であれば適宜成し得ることである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は上記引用例に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-09-01 
結審通知日 2005-09-07 
審決日 2005-09-21 
出願番号 特願平7-64820
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮崎 賢司  
特許庁審判長 佐藤 秀一
特許庁審判官 小林 紀和
浜野 友茂
発明の名称 分離型アンテナ  
代理人 山本 格介  
代理人 池田 憲保  

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