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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G08B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G08B
管理番号 1125734
審判番号 不服2003-13501  
総通号数 72 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-06-06 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-07-16 
確定日 2005-11-04 
事件の表示 平成 7年特許願第309624号「家庭用・業務用に兼用可能なガス警報器」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 6月 6日出願公開、特開平 9-147266〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成7年11月29日の出願であって、平成15年1月27日付けで手続補正がなされたところ、同年6月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月16日に審判請求がなされるとともに、同年8月12日に手続補正がなされたものである。

第2.平成15年8月12日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成15年8月12日付け手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の請求項1に記載された発明
平成15年8月12日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、本願明細書における特許請求の範囲の請求項1は、

「設置対象とする場所で発生した検知対象ガス成分の濃度が一定レベルを越えたことを検知して警報指令を発するセンサ回路部と、
警報音を予め信号として記憶し前記警報指令を受けて警報音信号を出力する警報音記憶部と、
前記警報音信号を警報音に変換して出力する警報出力部とを一つのケース内に備えたガス警報器において、
前記、警報出力部はスピーカであり、前記警報音記憶部が前記設置対象に対応して決まる選択可能な複数種類の警報音信号を予め記憶するとともに、前記警報指令を前記複数種類の警報音信号の選択信号として前記警報音記憶部に供給する切り換えスイッチを前記ケース部に備えたことにより、
設置対象とする場所を家庭用と業務用の兼用にすることを可能とし、
前記設置対象とする場所が業務用の場合は電子音の警報音を、該場所が家庭の場合は音声合成音の警報音を出力する、ことを特徴とする家庭用・業務用に兼用可能なガス警報器。」
と補正された。

上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定する事項である「センサ回路部」、「警報音記憶部」、「警報出力部」について「一つのケース内に備えた」との限定を付加し、「警報出力部」について「スピーカであり、」との限定を付加するとともに、「切り換えスイッチ」について「ケース部に備えた」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下検討する。

2.引用例
(1)原査定において引用した実願昭62-35947号(実開昭63-144738号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、以下の記載がある。
ア.「船内警報の原因をなす機関部などの船内状況を検出する検出部と、検出部からの検出信号により船内異常点を検出し、異常内容を表示すると共に警報信号を出力する制御部と、制御部からの警報信号に基づき船内の任意の場所でブザー警報を出力するブザーとを備えた船内警報装置において、上記ブザーに音声警報を出力するスピーカを並設すると共に、上記制御部からの警報信号を受け、内部に登録してある音声データを組み合せ、異常内容に応じた音声メッセージを作成して上記スピーカに出力する音声警報出力装置を設け、且つ上記音声警報又はブザー警報を選択する切換手段を設けたことを特徴する船内音声警報装置。」(実用新案登録請求の範囲)

イ.「第1図は本考案の船内音声警報装置例を示す。ここでは機関部警報のみを扱うが、他の船内警報、例えば火災警報、甲板・荷役関連警報、操船警報、衝突予防警報等にも適用できる。
船内音声警報装置は、音声による船内警報装置(実願昭60-31042号)を既存の機関部警報システムの1部に取り入れてシステム化したものであり、検出部1、制御部2、音声警報出力装置3、ブザー、スピーカ4、切換スイツチ5等で主に構成されている。」(明細書第5頁第19行〜第6頁第8行)

ウ.上記イ.より、引用例に記載された船内音声警報装置は、火災警報器であるといえる。

これらの記載及び図面を参照すると、引用例1には次の発明が記載されている。(以下、「引用発明」という。)

「設置対象とする場所で発生した異常を検知して検出信号を発する検出部1と、
検出信号を受けて警報信号を出力する制御部2と、
予め音声データを登録し前記警報信号を受けて音声データを組み合わせ、音声メッセージを出力する音声警報出力装置3と、
前記音声メッセージを音声警報に変換して出力するスピーカ4と、
前記警報信号に基づきブザー警報を出力するブザーと
を備えた火災警報器において、
前記警報信号を複数種類の警報の選択信号として前記制御部2から出力する切換スイッチ5を備えたことにより、
音声警報とブザー警報とを切り換えて出力する火災警報器。」

(2)同様に、原査定において引用した特開昭58-144298号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面と共に以下の記載がある。
ア.「以下、本発明のガス漏れ報知機について実施例の図面と共に説明する。図は本発明の一実施例を示しており、図中、1はガスを検出してガス漏れ発生信号を発生するセンサ部、2は上記センサ部1からのガス漏れ発生信号が入力された時に後述する入力部により設定されたインターバル毎に後述する報知部の出力すべき信号を発生させる制御信号を発生する制御部、3は上記制御部2からの制御信号によってガス漏れ信号を発生する報知部、・・・上記制御部2に出力する壁掛型時計である。」(第1頁右下欄第19行〜第2頁左上欄第11行)

3.対比
本願補正発明と上記引用発明とを対比すると、その作用・機能からみて、後者における「警報信号」が前者の「警報指令」に相当する。
また、後者の「検出部1」及び「制御部2」と前者の「センサ回路部」とは、いずれも設置対象とする場所で発生した「異常を検知して警報指令を発する手段」である点で共通すると共に、後者の「火災警報器」と前者の「ガス警報器」とはいずれも「警報器」である点で共通する。
さらに、後者の「予め音声データを登録し前記警報信号を受けて音声データを組み合わせ、音声メッセージを出力する音声警報出力装置3と、前記音声メッセージを音声警報に変換して出力するスピーカ4と、前記警報信号に基づきブザー警報を出力するブザー」と前者の「警報音を予め信号として記憶し前記警報指令を受けて警報音信号を出力する警報音記憶部と、前記警報音信号を警報音に変換して出力する警報出力部」とはいずれも「警報指令を受けて複数種類の警報を選択的に出力する手段」である点で共通し、後者の「警報信号を複数種類の警報の選択信号として前記制御部2から出力する切換スイッチ5」と前者の「警報指令を前記複数種類の警報音信号の選択信号として前記警報音記憶部に供給する切り換えスイッチ」とはいずれも「警報指令を複数種類の警報の選択信号として利用する切り換えスイッチ」である点で共通し、さらに、後者の「音声警報とブザー警報とを切り換えて出力する」と前者の「設置対象とする場所が業務用の場合は電子音の警報音を、該場所が家庭の場合は音声合成音の警報音を出力する」ことはいずれも「複数種類の警報を切り換えて出力する」ことである点で共通する。
したがって、両者は、
「設置対象とする場所で発生した異常を検知して警報指令を発する手段と、
前記警報指令を受けて複数種類の警報を選択的に出力する手段を備えた警報器において、
前記警報指令を複数種類の警報音の選択信号として利用する切り換えスイッチを備えたことにより、
複数種類の警報を切り換えて出力する警報器。」の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
「警報器」に関して、本願補正発明は「設置対象とする場所で発生した異常を検知して警報指令を発する手段」と、「警報指令を受けて複数種類の警報を選択的に出力する手段」とを「一つのケース内に」備えた「ガス警報器」であるのに対し、引用発明は「火災警報器」であって、かかる手段を一つのケース内に備えたものとはされておらず、また、「設置対象とする場所で発生した異常」に関して、本願補正発明は「検知対象ガス成分の濃度が一定レベルを越えたこと」を検知するものであるのに対し、引用発明は特に限定しておらず、さらに、「切り換えスイッチ」に関して、本願補正発明は「ケース部に備えた」ものであるのに対し、引用発明はケース部に備えたものとはしていない点。
[相違点2]
「警報指令を発する手段」に関して、本願補正発明は「センサ回路部」であるのに対し、引用発明は「検出部」及び「制御部」であり、また、「警報指令を受けて複数種類の警報を選択的に出力する手段」に関して、本願補正発明は「警報音を予め信号として記憶し前記警報指令を受けて警報音信号を出力する警報音記憶部と、前記警報音信号を警報音に変換して出力する警報出力部」であるのに対し、引用発明は「予め音声データを登録し前記警報信号を受けて音声データを組み合わせ、音声メッセージを出力する音声警報出力装置3と、前記音声メッセージを音声警報に変換して出力するスピーカ4と、前記警報信号に基づきブザー警報を出力するブザー」であり、さらに、「前記警報指令を複数種類の警報音の選択信号として利用する切り換えスイッチ」に関して、本願補正発明は「前記警報指令を前記複数種類の警報音信号の選択信号として前記警報音記憶部に供給する切り換えスイッチ」であるのに対し、引用発明は「前記警報信号を複数種類の警報の選択信号として前記制御部2から出力する切換スイッチ5」である点。
[相違点3]
本願補正発明は「設置対象とする場所を家庭用と業務用の兼用にすることを可能とし」ているのに対し、引用発明は設置対象とする場所を家庭用と業務用の兼用にすることを可能とするものとはしておらず、また、「複数種類の警報を切り換えて出力する」ことに関して、本願補正発明は「設置対象とする場所が業務用の場合は電子音の警報音を、該場所が家庭の場合は音声合成音の警報音を出力する」ことであるのに対し、引用発明は、単に「音声警報とブザー警報とを切り換えて出力する」ことである点。

4.判断
(1)[相違点1]について
ガスを検知するセンサ部、センサ部からの信号が入力され報知部に出力すべき信号を発生させる処理部、ガス漏れ信号を発生する報知部を備えたガス警報器は、引用例2に記載されており、引用発明の警報器を引用例2に記載されたガス警報器として改変することに格別のものは見当たらず、ガス警報器であれば、検知対象ガス成分の濃度が一定レベルを越えたことを検知するセンサ部はごく普通に採用されるものである。
また、センサ回路部、警報音記憶部、警報出力部等の警報器の構成を一つのケース内に備えたガス警報器は、例えば、特開昭58-191099号公報に記載されているように周知であるところ、引用発明において、周知のガス警報器のように警報器をなす各構成を一つのケース内に備えるようにし、その際、警報器の構成の一部をなすスイッチをもかかるケース部に設けることは当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。

(2)[相違点2]について
警報装置において、ブザー等の音データを、音声データと同様に記憶手段に記憶しておき、音声データと同じスピーカから出力させることは、例えば、実願昭63-4247号(実開平1-109460号)のマイクロフィルムに記載されるように周知の技術である。
そして、引用発明において、上記周知技術を加味して、選択可能な複数種類の警報音信号として音声合成音信号と電子音信号とを警報音記憶部に記憶させておき、ブザー警報を出力するブザーを別途設ける代わりに、両信号を切り換えて警報出力部から出力する構成とすることは、当業者が普通に想到し得ることである。
また、引用発明における異常を検知して検出信号を発する検出部と検出信号を受けて警報信号を発する制御部とを一体として、異常を検知して警報指令を発するセンサ回路部とすることは当業者が適宜なし得る設計的事項であるところ、引用発明に上記周知技術を加味して複数種類の警報音信号を警報音記憶部に記憶させたものにおいて、切り換えスイッチが警報指令を複数種類の警報の選択信号として制御部から出力するものとする代わりに、警報指令を複数種類の警報音信号の選択信号として警報音記憶部に供給する構成とすることは当業者にとって格別困難ではない。

(3)[相違点3]について
火災警報器やガス警報器において、設置場所に応じて出力する情報を変える必要が生じることは、例えば、特開平4-296800号公報に記載されているように、当業者にとって周知の課題であり、そのために設置場所に応じた複数種類の警報音やメッセージを予め記憶しておくことも特開平4-296800号公報に記載されているように周知の技術といえる。
そして、引用発明において複数種類の警報をどのように切り換えるかは、警報器の使用時に際し使用者が適宜設定し得る事項であるところ、火災警報器やガス警報器において、設置場所に応じて出力する情報を変える必要が生じることが周知の課題であることを鑑みれば、引用発明の警報器を業務用・家庭用に兼用可能とし、業務用の場合にブザー警報とし、家庭用の場合に音声警報とすることも適宜なし得る程度のことにすぎない。

(4)また、本願補正発明を全体として検討しても、引用例1、2に記載された発明及び周知技術から予測される以上の格別の効果を奏するものとも認められない。

したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明1、2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項の規定で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成15年8月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年1月27日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「設置対象とする場所で発生した検知対象ガス成分の濃度が一定レベルを越えたことを検知して警報指令を発するセンサ回路部と、
警報音を予め信号として記憶し前記警報指令を受けて警報音信号を出力する警報音記憶部と、
前記警報音信号を警報音に変換して出力する警報出力部とを少なくとも一つのケース内に備えたガス警報器において、
前記警報音記憶部が前記設置対象に対応して決まる選択可能な複数種類の警報音信号を予め記憶するとともに、前記警報指令を前記複数種類の警報音信号の選択信号として前記警報音記憶部に供給する切り換えスイッチを備えたことにより、
設置対象とする場所を家庭用と業務用の兼用にすることを可能とし、
前記設置対象とする場所が業務用の場合は電子音の警報音を、該場所が家庭の場合は音声合成音の警報音を出力する、ことを特徴とする家庭用・業務用に兼用可能なガス警報器」

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用した引用例、及びその記載事項は前記「第2.2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記「第2.」で検討した本願補正発明から「センサ回路部」、「警報音記憶部」、「警報出力部」について「一つのケース内に備えた」との限定を省き、「警報出力部」について「スピーカであり、」との限定を省くとともに、「切り換えスイッチ」について「ケース部に備えた」との限定を省いたものである。

そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2.4.」に記載したとおり、引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-08-30 
結審通知日 2005-09-06 
審決日 2005-09-21 
出願番号 特願平7-309624
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G08B)
P 1 8・ 121- Z (G08B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小谷 一郎宮崎 敏長  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 丸山 英行
佐々木 芳枝
発明の名称 家庭用・業務用に兼用可能なガス警報器  
代理人 篠部 正治  
代理人 篠部 正治  

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