• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H01L
審判 全部申し立て 発明同一  H01L
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1125737
異議申立番号 異議2003-73041  
総通号数 72 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-09-08 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-16 
確定日 2005-07-20 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3417328号「プラズマ処理方法及び装置」の請求項1ないし24に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3417328号の請求項1ないし24に係る特許を維持する。 
理由 【1】手続の経緯
特許3417328号に係る発明は、平成11年2月23日に特許出願され、平成15年4月11日に特許権の設定登録がなされ、その後、佐藤正より特許異議の申立てがなされ、平成17年4月14日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成17年6月21日に訂正請求がなされたものである。

【2】平成17年6月21日の訂正請求に対する判断

【2-1】訂正事項
訂正事項a;特許請求の範囲の【請求項3】を
「真空容器内にガスを供給しつつ真空容器内を排気し、真空容器内を所定の圧力に制御しながら、真空容器内の基板電極に載置された基板に対向して設けられた対向電極に、周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を印加することにより、真空容器内にプラズマを発生させ、基板を処理するプラズマ処理方法であって、前記対向電極以外に設けられた環状溝より内側の前記対向電極を含む面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍であり、かつ、前記環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置することを特徴とするプラズマ処理方法。」と訂正する。
訂正事項b;特許請求の範囲の【請求項7】を
「真空容器内にガスを供給しつつ真空容器内を排気し、真空容器内を所定の圧力に制御しながら、アンテナに周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を印加することにより、真空容器内の基板電極に載置された基板に対向して設けられた誘電体窓を介して、真空容器内に電磁波を放射することにより、真空容器内にプラズマを発生させ、基板を処理するプラズマ処理方法であって、前記誘電体窓の外側に設けられた環状溝より内側の前記誘電体窓を含む面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍であり、かつ、前記環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置し、前記環状溝の溝幅が3mm乃至50mmであることを特徴とするプラズマ処理方法。」と訂正する。
訂正事項c;特許請求の範囲の【請求項15】を
「真空容器と、真空容器内にガスを供給するガス供給装置と、真空容器内を排気する排気装置と、真空容器内に基板を載置する基板電極と、基板電極に対向して設けられた対向電極と、対向電極に周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を供給する高周波電源とを備えたプラズマ処理装置であって、前記対向電極以外に設けられた環状溝より内側の前記対向電極を含む面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍であり、かつ、前記環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置することを特徴とするプラズマ処理装置。」と訂正する。
訂正事項d;特許請求の範囲の【請求項19】を
真空容器と、真空容器内にガスを供給するガス供給装置と、真空容器内を排気する排気装置と、真空容器内に基板を載置する基板電極と、基板電極に対向して設けられた誘電体窓と、誘電体窓を介して真空容器内に電磁波を放射するアンテナと、アンテナに周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を供給する高周波電源とを備えたプラズマ処理装置であって、前記誘電体窓の外側に設けられた環状溝より内側の前記誘電体窓を含む面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍であり、かつ、前記環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置し、前記環状溝の溝幅が3mm乃至50mmであることを特徴とするプラズマ処理装置。」と訂正する。
訂正事項e;明細書の段落【0015】を
「本願の第2発明のプラズマ処理方法は、真空容器内にガスを供給しつつ真空容器内を排気し、真空容器内を所定の圧力に制御しながら、真空容器内の基板電極に載置された基板に対向して設けられた対向電極に、周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を印加することにより、真空容器内にプラズマを発生させ、基板を処理するプラズマ処理方法であって、前記対向電極以外に設けられた環状溝より内側の前記対向電極を含む面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍であり、かつ、前記環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置することを特徴とする。」と訂正する。
訂正事項f;明細書の段落【0017】を
「本願の第4発明のプラズマ処理方法は、真空容器内にガスを供給しつつ真空容器内を排気し、真空容器内を所定の圧力に制御しながら、アンテナに周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を印加することにより、真空容器内の基板電極に載置された基板に対向して設けられた誘電体窓を介して、真空容器内に電磁波を放射することにより、真空容器内にプラズマを発生させ、基板を処理するプラズマ処理方法であって、前記誘電体窓の外側に設けられた環状溝より内側の前記誘電体窓を含む面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍であり、かつ、前記環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置し、前記環状溝の溝幅が3mm乃至50mmであることを特徴とする。」と訂正する。
訂正事項g;明細書の段落【0019】を
「本願の第6発明のプラズマ処理装置は、真空容器と、真空容器内にガスを供給するガス供給装置と、真空容器内を排気する排気装置と、真空容器内に基板を載置する基板電極と、基板電極に対向して設けられた対向電極と、対向電極に周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を供給する高周波電源とを備えたプラズマ処理装置であって、前記対向電極以外に設けられた環状溝より内側の前記対向電極を含む面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍であり、かつ、前記環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置することを特徴とする。」と訂正する。
訂正事項h;明細書の段落【0021】を
「本願の第8発明のプラズマ処理装置は、真空容器と、真空容器内にガスを供給するガス供給装置と、真空容器内を排気する排気装置と、真空容器内に基板を載置する基板電極と、基板電極に対向して設けられた誘電体窓と、誘電体窓を介して真空容器内に電磁波を放射するアンテナと、アンテナに周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を供給する高周波電源とを備えたプラズマ処理装置であって、前記誘電体窓の外側に設けられた環状溝より内側の前記誘電体窓を含む面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍であり、かつ、前記環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置し、前記環状溝の溝幅が3mm乃至50mmであることを特徴とする。」と訂正する。
訂正事項i;明細書の段落【0042】を
「また、本願の第2発明のプラズマ処理方法によれば、真空容器内にガスを供給しつつ真空容器内を排気し、真空容器内を所定の圧力に制御しながら、真空容器内の基板電極に載置された基板に対向して設けられた対向電極に、周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を印加することにより、真空容器内にプラズマを発生させ、基板を処理するプラズマ処理方法であって、前記対向電極以外に設けられた環状溝より内側の前記対向電極を含む面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍であり、かつ、前記環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置することで、均一なプラズマを発生させることができ、基板を均一に処理することができる。」と訂正する。
訂正事項j;明細書の段落【0044】を
「また、本願の第4発明のプラズマ処理方法によれば、真空容器内にガスを供給しつつ真空容器内を排気し、真空容器内を所定の圧力に制御しながら、アンテナに周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を印加することにより、真空容器内の基板電極に載置された基板に対向して設けられた誘電体窓を介して、真空容器内に電磁波を放射することにより、真空容器内にプラズマを発生させ、基板を処理するプラズマ処理方法であって、前記誘電体窓の外側に設けられた環状溝より内側の前記誘電体窓を含む面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍であり、かつ、前記環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置し、前記環状溝の溝幅が3mm乃至50mmであることで、均一なプラズマを発生させることができ、基板を均一に処理することができる。」と訂正する。
訂正事項k;明細書の段落【0046】を
「また、本願の第6発明のプラズマ処理装置によれば、真空容器と、真空容器内にガスを供給するガス供給装置と、真空容器内を排気する排気装置と、真空容器内に基板を載置する基板電極と、基板電極に対向して設けられた対向電極と、対向電極に周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を供給する高周波電源とを備えたプラズマ処理装置であって、前記対向電極以外に設けられた環状溝より内側の前記対向電極を含む面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍であり、かつ、前記環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置することで、均一なプラズマを発生させることができ、基板を均一に処理することができる。」と訂正する。
訂正事項l;明細書の段落【0048】を
「また、本願の第8発明のプラズマ処理装置によれば、真空容器と、真空容器内にガスを供給するガス供給装置と、真空容器内を排気する排気装置と、真空容器内に基板を載置する基板電極と、基板電極に対向して設けられた誘電体窓と、誘電体窓を介して真空容器内に電磁波を放射するアンテナと、アンテナに周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を供給する高周波電源とを備えたプラズマ処理装置であって、前記誘電体窓の外側に設けられた環状溝より内側の前記誘電体窓を含む面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍であり、かつ、前記環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置し、前記環状溝の溝幅が3mm乃至50mmであることで、均一なプラズマを発生させることができ、基板を均一に処理することができる。」と訂正する。

【2-2】訂正の適否
訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項aは、特許請求の範囲の請求項3において、訂正前の「前記対向電極の外側に設けられた環状溝より内側の少なくとも前記対向電極を含む面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍」を「前記対向電極以外に設けられた環状溝より内側の前記対向電極を含む面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍」に訂正するものである。この訂正は、環状溝の設けられる位置、及び環状溝より内側の対向電極の面積が基板の面積の0.5乃至2.5倍である点について、明瞭でない記載の釈明を目的としたものであり、かつ、当該事項は、願書に添付した明細書の段落【0027】に記載されている。
訂正事項bは、特許請求の範囲の請求項7において、訂正前の「前記誘電体窓の外側に設けられた環状溝より内側の少なくとも前記誘電体窓を含む面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍」を「前記誘電体窓の外側に設けられた環状溝より内側の前記誘電体窓を含む面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍」に訂正するものである。この訂正は、誘電体窓の外側に設けられた環状溝より内側の前記誘電体窓を含む面積と基板の面積の関係について、「0.5乃至2.5倍」と明らかな特定を紛らわしくしていた「少なくとも」の記載を削除するもので、明瞭でない記載の釈明を目的としたものである。
訂正事項cは、特許請求の範囲の請求項15において、訂正前の「前記対向電極の外側に設けられた環状溝より内側の少なくとも前記対向電極を含む面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍」を「前記対向電極以外に設けられた環状溝より内側の前記対向電極を含む面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍」に訂正するものである。この訂正は、環状溝の設けられる位置、及び環状溝より内側の対向電極の面積が基板の面積の0.5乃至2.5倍である点について、明瞭でない記載の釈明を目的としたものであり、かつ、当該事項は、願書に添付した明細書の段落【0027】に記載されている。
訂正事項 dは、特許請求の範囲の請求項19において、訂正前の「前記誘電体窓の外側に設けられた環状溝より内側の少なくとも前記誘電体窓を含む面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍」を「前記誘電体窓の外側に設けられた環状溝より内側の前記誘電体窓を含む面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍」に訂正するものである。この訂正は、誘電体窓の外側に設けられた環状溝より内側の前記誘電体窓を含む面積と基板の面積の関係について、「0.5乃至2.5倍」と明らかな特定を紛らわしくしていた「少なくとも」の記載を削除して明瞭でない記載の釈明を目的としたものである。
訂正事項e〜lは、前記訂正事項a〜dによる特許請求の範囲の訂正に伴って、発明の詳細な説明の記載を整合させるためのものであり、明瞭でない記載の釈明を目的としている。
したがって、上記訂正事項a〜lは、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

【2-3】まとめ
以上のとおり、【2-1】段落の訂正は、特許法120条の4第2項、及び同条第3項において準用する特許法126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。

【3】本件特許発明
前記【2】段落で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1〜24に係る発明(以下、「本件発明1」〜「本件発明24」という)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜24に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】 真空容器内にガスを供給しつつ真空容器内を排気し、真空容器内を所定の圧力に制御しながら、真空容器内の基板電極に載置された基板に対向して設けられた対向電極に、周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を印加することにより、真空容器内にプラズマを発生させ、基板を処理するプラズマ処理方法であって、
前記対向電極に1つだけ設けられた環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置することを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項2】 環状溝より内側の対向電極の面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍であることを特徴とする請求項1記載のプラズマ処理方法。
【請求項3】 真空容器内にガスを供給しつつ真空容器内を排気し、真空容器内を所定の圧力に制御しながら、真空容器内の基板電極に載置された基板に対向して設けられた対向電極に、周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を印加することにより、真空容器内にプラズマを発生させ、基板を処理するプラズマ処理方法であって、
前記対向電極以外に設けられた環状溝より内側の前記対向電極を含む面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍であり、かつ、前記環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置することを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項4】 対向電極上若しくはその周囲に絶縁リングを設け、前記対向電極と前記絶縁リングによって前記環状溝を形成することを特徴とする請求項3記載のプラズマ処理方法。
【請求項5】 真空容器内にガスを供給しつつ真空容器内を排気し、真空容器内を所定の圧力に制御しながら、アンテナに周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を印加することにより、真空容器内の基板電極に載置された基板に対向して設けられた誘電体窓を介して、真空容器内に電磁波を放射することにより、真空容器内にプラズマを発生させ、基板を処理するプラズマ処理方法であって、
前記誘電体窓に1つだけ設けられた環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置し、前記環状溝の溝幅が3mm乃至50mmであることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項6】 環状溝より内側の誘電体窓の面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍であることを特徴とする請求項5記載のプラズマ処理方法。
【請求項7】 真空容器内にガスを供給しつつ真空容器内を排気し、真空容器内を所定の圧力に制御しながら、アンテナに周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を印加することにより、真空容器内の基板電極に載置された基板に対向して設けられた誘電体窓を介して、真空容器内に電磁波を放射することにより、真空容器内にプラズマを発生させ、基板を処理するプラズマ処理方法であって、
前記誘電体窓の外側に設けられた環状溝より内側の前記誘電体窓を含む面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍であり、かつ、前記環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置し、前記環状溝の溝幅が3mm乃至50mmであることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項8】 誘電体窓と真空容器の上壁面とで環状溝を形成することを特徴とする請求項7記載のプラズマ処理方法。
【請求項9】 環状溝が、絶縁リングに設けられていることを特徴とする請求項4記載のプラズマ処理方法。
【請求項10】 環状溝が、前記対向電極と前記絶縁リングとの間に設けられることを特徴とする請求項4記載のプラズマ処理方法。
【請求項11】 環状溝が、前記真空容器と前記絶縁リングとの間に設けられることを特徴とする請求項4記載のプラズマ処理方法。
【請求項12】 環状溝の溝深さが、5mm以上であることを特徴とする請求項1〜11の何れか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項13】 真空容器と、真空容器内にガスを供給するガス供給装置と、真空容器内を排気する排気装置と、真空容器内に基板を載置する基板電極と、基板電極に対向して設けられた対向電極と、対向電極に周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を供給する高周波電源とを備えたプラズマ処理装置であって、
前記対向電極に1つだけ設けられた環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項14】 環状溝より内側の対向電極の面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍であることを特徴とする請求項13記載のプラズマ処理装置。
【請求項15】 真空容器と、真空容器内にガスを供給するガス供給装置と、真空容器内を排気する排気装置と、真空容器内に基板を載置する基板電極と、基板電極に対向して設けられた対向電極と、対向電極に周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を供給する高周波電源とを備えたプラズマ処理装置であって、
前記対向電極以外に設けられた環状溝より内側の前記対向電極を含む面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍であり、かつ、前記環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項16】 対向電極上若しくはその周囲に絶縁リングを設け、前記対向電極と前記絶縁リングによって前記環状溝を形成することを特徴とする請求項15記載のプラズマ処理装置。
【請求項17】 真空容器と、真空容器内にガスを供給するガス供給装置と、真空容器内を排気する排気装置と、真空容器内に基板を載置する基板電極と、基板電極に対向して設けられた誘電体窓と、誘電体窓を介して真空容器内に電磁波を放射するアンテナと、アンテナに周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を供給する高周波電源とを備えたプラズマ処理装置であって、
前記誘電体窓に1つだけ設けられた環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置し、前記環状溝の溝幅が3mm乃至50mmであることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項18】 環状溝より内側の前記誘電体窓の面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍であることを特徴とする請求項17記載のプラズマ処理装置。
【請求項19】 真空容器と、真空容器内にガスを供給するガス供給装置と、真空容器内を排気する排気装置と、真空容器内に基板を載置する基板電極と、基板電極に対向して設けられた誘電体窓と、誘電体窓を介して真空容器内に電磁波を放射するアンテナと、アンテナに周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を供給する高周波電源とを備えたプラズマ処理装置であって、
前記誘電体窓の外側に設けられた環状溝より内側の前記誘電体窓を含む面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍であり、かつ、前記環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置し、前記環状溝の溝幅が3mm乃至50mmであることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項20】 誘電体窓と真空容器の上壁面とで環状溝を形成することを特徴とする請求項19記載のプラズマ処理装置。
【請求項21】 環状溝が、絶縁リングに設けられていることを特徴とする請求項15記載のプラズマ処理装置。
【請求項22】 環状溝が、前記対向電極と前記絶縁リングとの間に設けられることを特徴とする請求項15記載のプラズマ処理装置。
【請求項23】 環状溝が、前記真空容器と前記絶縁リングとの間に設けられることを特徴とする請求項15記載のプラズマ処理装置。
【請求項24】 環状溝の溝深さが、5mm以上であることを特徴とする請求項13〜23の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。」

【4】特許異議申立て理由の概要
特許異議申立人 佐藤正は、甲第1〜5号証および参考資料1を提示し、本件発明1〜24は、甲第3号証に記載された発明であるから、特許法29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、また甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、さらに、甲第4号証に記載された発明と同一であるから特許法29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1〜24に係る特許は特許法113条第1項第2号の規定により取り消すべきものである点を主張している。
さらに、発明の詳細な説明には記載不備があり特許法第36条4項の規定に違反していることから、本件特許は特許法113条第1項第4号の規定により取り消すべきものである旨を主張している。

甲第1号証 特開平8-50997号公報
(以下、「刊行物1」という)
甲第2号証 特開昭61-284572号公報
(以下、「刊行物2」という)
甲第3号証 特開平5-279859号公報
(以下、「刊行物3」という)
甲第4号証 特願平10-199307号(特開2000-30897号) の出願当初の明細書及び図面
(以下、「先願明細書等」という)
甲第5号証 特開平9-148097号公報
(以下、「刊行物5」という)
参考資料1 明石和夫 他著,「光・プラズマ プロセシング」,初版, 日刊工業新聞社、昭和61年9月29日発行,p.28-31

【5】刊行物1〜3,5、先願明細書等、及び参考資料1の記載内容

[1]刊行物1の記載内容
(1-a)段落【0011】,【0012】には、
「・・・図1は、本願発明の実施例の高周波放電用電極及びこの高周波放電用電極が採用された実施例の高周波プラズマ基板処理装置を説明する概略図である。図1に示す装置は、排気系11及びガス導入系12を備えた処理室1と、この処理室1の内部に対向配置された基板電極2及び本実施例の高周波放電用電極である対向電極3と、対向電極3に高周波電力を印加する高周波電源4等から主に構成されている。・・・
まず、処理室1は、排気系11やガス導入系12の接続箇所や基板10の搬出入等のための出入口等を除き気密に構成された真空容器である。そして、付設された排気系11は処理に必要な圧力まで処理室1の内部を排気し、ガス導入系12は処理に必要なガスを処理室1の内部に導入するよう各々構成されている。」と記載され、
(1-b)段落【0015】には、
「高周波電源4としては、13.56MHz等の高周波を発振するものが使用されている。即ち、本実施例では、数MHzから数百MHzの帯域の高周波を採用している。・・・」と記載され、
(1-c)段落【0019】,【0020】には、
「・・・まず、基板搬送機構等により搬送された基板10は、不図示の出入口から搬入されて基板電極2の対向面上に配置される。そして、静電吸着や機械的な保持の手段により基板電極2上に固定される。次に、排気系11が動作して処理室1の内部を所定の圧力まで排気し、ガス導入系12が処理に必要なガスを処理室1内に導入する。処理室1には不図示の真空計が設けられており、処理室1内の圧力をモニタしながら排気系11やガス導入系12を制御することで、処理室1内の圧力が所定の値に維持される。・・・
この状態で、高周波電源4が動作して例えば13.56MHzの高周波電圧が対向電極3に印加される。この結果、対向電極3と基板電極2との間の放電空間に高周波電界が生じ、導入されたガスがこの電界により電離して当該空間にプラズマが形成される。・・・」
と記載され、
(1-d)段落【0025】には、
「従って、プラズマ密度が高くなり易い部分に位置する溝35の深さを浅くし、プラズマ密度が低くなり易い部分に位置する位置の溝35の深さを深くすることで、結果的に放電空間のプラズマ密度は均一化される。・・・図1のような構成の装置では、対向電極3の端部付近において電界が強くなる場合があり、この場合には、放電空間中の電極端部近傍部分において高密度となり易い。」と記載され、
(1-e)段落【0030】には、
「さらに、図7に示す実験例では、・・・。尚、同様にこの際の調整後の溝の深さ分布について説明すると、溝35-1から溝35-6までが18mmの深さ、溝35-7が深さ7mm、溝35-8が0mmの深さ(溝無し)、溝35-12が30mm、の深さの分布であった。」と記載され、
(1-f)段落【0037】には、
「・・・放電空間のプラズマ密度が均一化される。」と記載されている。

[2]刊行物2の記載内容
(2-a)第1頁左欄第4行〜第7行には、
「電極上で放射状に発生する閉磁界内に、同心円状に配設された少なくとも1つの環状溝部を有する電極部材を、丈夫磁界が溝部を貫通するように配設したことを特徴とする放電電極」と記載され
(2-b)第1頁左欄第10行〜第12行には、
「本発明は、放電電極に係り、特にマグネトロン放電およびホローカソード放電を発生させるための放電電極に関する。」と記載され、
(2-c)第1頁右欄第18行〜第19行には、
「・・・安定したプラズマ放電を起こさせることができかつ均一な膜形成を行うことのできる放電電極を提供することを目的とする。」と記載され、
(2-d)第2頁左上欄第17行〜右上欄第7行には、
「第1図は本発明の一実施例を示したもので、・・・このターゲット3の上面には、・・・第2図(a)に示すように、同心円状に複数の溝4,4・・・が形成され、さらに、ターゲット3には電源5が接続されている。なお、上記溝4は1つであってもよく、・・・同心状の溝4を形成するようにしてもよい。」と記載されている。

[3]刊行物3の記載内容
(3-a)【特許請求の範囲】の欄には、
「【請求項1】減圧可能な真空容器と、該真空容器内に配され該真空容器とは絶縁された電極と、該電極に対向して配された被処理基体を支持する支持台と、前記電極と前記真空容器との間に放電が生じないよう前記電極の近傍に配されたアースシールドと、前記真空容器内にプラズマ処理用のガスを供給するガス供給手段と、を有し、前記電極に電力を供給して該電極と前記支持台との間にプラズマを発生させ、該プラズマにより前記被処理基体にプラズマ処理を行なうプラズマ処理装置において、前記電極と前記アースシールドとの間に絶縁材料を配したことを特徴とするプラズマ処理装置。」
【請求項2】前記電極と前記絶縁材料及び前記アースシールドと前記絶縁材料との間隔が3mm以下である請求項1記載のプラズマ処理装置。・・・
【請求項7】前記高周波電源の発信周波数が40MHz〜250MHzである請求項6記載のプラズマ処理装置。」と記載され、
(3-b)段落【0001】には、
「【産業上の利用分野】本発明は、例えば半導体デバイス、電子写真用感光体デバイス、画像入力用ラインセンサー、撮像デバイス、あるいは光起電力デバイス等の製造に用いられるスパッタ、プラズマCVD、ドライエッチング等、プラズマを用いて処理を行うプラズマ処理装置に関するものである。」と記載され
(3-c)段落【0013】には、
「本発明によれば、電極(カソード)とアースシールド間の放電発生を防止しつつ電極(カソード)とアースシールド間の間隔を大きくすることができるので、電極(カソード)とアースシールド間での高周波電力の損失を減少することができる。その結果、生産性を改善することができ、また生産性を損なわずに放電周波数を大きくすることができる。また電極(カソード)とアースシールド間の間隔は大きくでき且つ絶縁材料が配置されているのでショートの原因となる異物は侵入しにくくなるのでショート発生を防止でき信頼性を向上することができる。」と記載されている。

[4]先願明細書等の記載内容
(先-a)【特許請求の範囲】には、
「【請求項1】一部を封止部材で封止してなる容器内へ、前記封止部材を透過させてマイクロ波を導入することによってプラズマを生成し、生成したプラズマによって前記封止部材に対向配置した被処理物を処理する装置において、前記封止部材には、環状又は渦巻き状の溝が形成してあることを特徴とするプラズマ処理装置。」と記載され、
(先-b)段落【0021】には、
「反応器1の内部は処理室2になっており、処理室2の周囲壁を貫通する貫通穴に嵌合させたガス導入管15から処理室2内に所要のガスが導入される。反応器1の周壁には排気口16が開設してあり、排気口16から処理室2の内気を排出するようになしてある。」と記載され、
(先-c)段落【0024】には、
「次いで、マイクロ波発振器20からマイクロ波を発振させ、これを導波管21を介して誘電体線路9に導入し、誘電体線路9内に定在波を形成する。この定在波によって、誘電体線路9の下方に漏れ電界が形成され、それがエアギャップ10、マイクロ波制限板7の開口及び封止板3を透過して処理室2内へ導入される。このようにしてマイクロ波が処理室2内へ伝播し、処理室2内にプラズマが生成される。載置台11には高周波電源18から高周波電圧が印加されており、それによって形成される高周波電界によって、プラズマ中のイオンを被処理物W上に導き、被処理物Wの表面をエッチングする。」と記載され、
(先-d)段落【0032】には、
「・・・図4は本発明に係るプラズマ処理装置の要部寸法を説明する説明図であり、・・・図4に示した如く、本発明に係るプラズマ処理装置にあっては、封止板の中央部の厚さTW1が30mm、封止板の環状電極板に対向する部分の厚さTW2が20mm、封止板に設けた溝の内径DA1が200mm、封止板に設けた溝の外径DA2が280mm、封止板に設けた溝の深さHA1が5mm、環状電極板の内径DA3が298mmになしてある。」と記載され、
(先-e)段落【0037】には、
「図5は本発明に係るプラズマ処理装置によってシリコン酸化膜が形成してある被処理物をエッチングした結果を示すグラフであり、縦軸は相対エッチング速度を横軸は被処理物の中心からの位置を示している。・・・」と記載され、
(先-f)段落【0039】には、
「・・・反応器内に均一な密度のプラズマを生成することができ・・・優れた効果を奏する。」と記載されている。

[5]刊行物5の記載内容
(5-a)段落【0001】には、
「【発明の属する技術分野】本発明は、電磁波発生源を備えたプラズマ生成装置、およびこのプラズマ生成装置を用いて製作された半導体素子とその製法に関する。」と記載され、
(5-b)段落【0012】には、
「また、本発明の・・・目的は安価で均一なプラズマを生成できるプラズマ処理装置を提供することにある。」
(5-c)段落【0022】〜【0024】には、
「・・・図1は本発明の一実施例のプラズマ処理装置の縦断面図である。プラズマ処理装置100は、プラスマ処理を実施する外部容器16と、この外部容器16に取り付けられ容器16内部を真空排気するガス排気系35と、容器16内部に処理ガスを導入するガス供給系34とを備えている。さらに、容器16内部には被処理材である試料12を載置する試料保持台11が設けられている。ここで、試料12としては5インチないし14インチウエハを用いている。・・・
容器16の上部には、容器16内でプラズマを発生させるための電磁波発生源1およびこの電磁波発生源1で発生した電磁波を容器16内に導く第1、第2の電磁波伝送部2、4が配設されている。つまり、電磁波発生源1で発生した電磁波は…誘電体窓6に入射する。・・・
石英からなる誘電体窓6は、容器16の上部にO-リング等を用いて気密に取り付けられており、誘電体窓6と容器16とで真空雰囲気が実現できるように構成されている。・・・ここで、電磁波として2.45GHzのマイクロ波を用いる場合には、例えば電磁波発生源にマグネトロンを用い、電磁波伝送路に導波管を用いる。・・・」と記載され、
(5-d)段落【0025】には、
「誘電体窓6の伝送路結合器5とは反対側、すなわち、容器16に面する側には誘電体窓6の内部を伝播した電磁波が容器16内に入射するのを制限するための電磁波反射板7が設けられている。さらに容器16の上部には、補助反射板17も設けられており、容器16の壁面近傍の誘電体窓6から電磁波が容器16に入射するのを防止している。つまり、電磁波は誘電体窓6の内部で径方向に拡大された後、電磁波反射板7と補助反射板17により形成されたリング状電磁波放射口8から外部容器16に入射する。・・・」と記載されている。

[6]参考資料1の記載内容
第28頁第8行〜第30頁第2行には、
「(3)ホロー陰極放電(hollow cathode discharge)
陰極降下領域に接して、きわめて強い輝度で発光している構造を負グロー(negative glow)と称し、プラズマ密度が高く、またエネルギーの範囲も比較的広い。・・・このような構造の放電がホロー陰極放電として特色のある性質を持つためには、2個の陰極近傍の負グローが合体していなければならない。したがって、ホロー間隙の大きさ、ガスの種類、ガス圧や放電電流の間にある条件が満たされていることが必要である。・・・」
と記載されている。

【6】特許異議申立てに対する当審の判断

【6-1】本件発明1〜24について
[1]本件発明1について
まず、本件発明1と刊行物1に記載された発明とを比較検討する。
刊行物1には、上記摘記事項(1-a)〜(1-f)を総合的に考慮して、
「真空容器内にガスを供給しつつ真空容器内を排気し、真空容器内を所定の圧力に制御しながら、真空容器内の基板電極に載置された基板に対向して設けられた対向電極に、高周波電力を印加することにより、真空容器内にプラズマを発生させ、基板を処理するプラズマ処理方法であって、前記対向電極に複数の環状溝が設けられ、当該環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置するプラズマ処理方法。」(以下、「刊行物1発明」という。)が開示されている。
ここで、刊行物1発明には、本件発明1の「対向電極に1つだけ設けられた環状溝」という発明特定事項について記載されておらず、また、刊行物1発明における対向電極に設けられた複数の環状溝は、複数の環状溝の深さの差を利用してプラズマの均一性を達成する点にその特徴があるから、複数の環状溝は必須の構成であり、1つだけの溝を対向電極に設ける構成を意図するものではない。
次に、本件発明1と刊行物1及び刊行物2を組み合わせた発明とを比較検討する。
刊行物2には、上記摘記事項(2-a)〜(2-d)を総合的に考慮すれば、
「放電電極に1つの環状溝を設け、当該溝部を磁界が貫通するマグネトロン放電用の放電電極」
とする技術的事項が開示されている。
ここで、刊行物1発明のプラズマ処理方法の対向電極において、刊行物2の開示内容を採用することが当業者であれば容易に想到しうるかどうかについて検討する。
刊行物2の電極構造は、環状溝を設けて磁界が貫通する構成とすることにより安定したプラズマを発生させる、いわゆるマグネトロン放電を利用する技術である。すなわち、磁界の存在が環状溝を有する電極採用の前提条件である。
しかし、刊行物1発明のプラズマ処理方法は、磁界を利用することは前提としておらず、かつその必要性も意図されていない。
したがって、刊行物1発明のプラズマ処理方法における対向電極において、刊行物2の電極を採用することは、当業者であっても、容易に想到し得たものとすることはできない。
よって、本件発明1は、刊行物1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、刊行物1及び刊行物2に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

[2]本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用するものであって、「環状溝より内側の対向電極の面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍」であることをさらなる発明特定事項としている。
してみれば、本件発明1の構成を限定したのであるから、本件発明1が前記[1]段落で述べたように、刊行物1に記載された発明から当業者が容易に想到し得た発明でもなく、また、刊行物1及び刊行物2に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明2も、必然の結果として、刊行物1に記載された発明から当業者が容易に想到し得た発明でもなく、また、刊行物1及び刊行物2に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

[3]本件発明3について
まず、本件発明3と刊行物1発明とを比較検討する。
刊行物1発明は、環状溝は対向電極に形成されているのに対して、本件発明3では、環状溝は、対向電極以外に設けられていることから、対向電極の構造が異なる。
したがって、本件発明3は、刊行物1に記載された発明ではなく、また、刊行物1に記載された発明から当業者が容易に想到し得た発明でもない。
次に、本件発明3と刊行物3に記載された発明とを比較検討する。
刊行物3には、上記摘記事項(3-a)〜(3-c)から、総合的に考慮すると
「真空容器内にガスを供給しつつ真空容器内を排気し、真空容器内を所定の圧力に制御しながら、真空容器内の基板電極に載置された基板に対向して設けられた対向電極に、高周波電力を印加することにより、真空容器内にプラズマを発生させ、基板を処理するプラズマ処理方法であって、前記対向電極とアースシールドとの間に絶縁材料を配したプラズマ処理方法。」(以下、「刊行物3発明」という。)が開示されている。
ここで、本件発明3と刊行物3発明とを対比すると、本件発明3においては、対向電極以外に設けられた環状溝を有するに対して、刊行物3発明では、対向電極とアースシールドとの間に絶縁材料を配している点で相違する。
以下、上記相違点について検討する。
本件発明3の環状溝は、周辺部のプラズマを環状溝により制御することでプラズマの均一性を図ることを目的とした構造であるが、刊行物3発明の対向電極とアースシールドとの間に絶縁材料を配している構造は、電極とアースシールド間の放電発生を防止しつつ、電極とアースシールド間の高周波電力の損失を減少することを目的とした構造であつて、目的が異なっている。。
また、プラズマの均一性に関する技術的課題についても刊行物3発明では、まったく考慮されておらず、当該技術的課題を示唆する記載もない。
以上の差異に基づいて、本件発明3は、明細書の段落【0041】に記載された「均一なプラズマを発生させることができ、基板を均一に処理することができる」という格別な作用効果を奏する。
したがって、本件発明3は、刊行物3に記載された発明とはいえず、また、刊行物3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

[4]本件発明4について
本件発明4は、本件発明3を引用し、さらにその構成を限定するものであるから、本件発明3と同様、本件発明4は、刊行物3に記載された発明とはいえず、また、刊行物3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

[5]本件発明5について
まず、本件発明5と先願明細書等に記載された発明とを比較検討する。
先願明細書等には、上記摘記事項(先-a)〜(先-f)を、総合的に考慮すると、
「真空容器内にガスを供給しつつ真空容器内を排気し、真空容器内を所定の圧力に制御しながら、マイクロ波発信器からマイクロ波を発生させ、導波管、誘電体線路を介して、真空容器内の基板電極に載置された基板に対向して設けられた封止部材を介して、真空容器内に電磁波を放射することにより、真空容器内にプラズマを発生させ、基板を処理するプラズマ処理方法であって、前記封止部材に1つだけ設けられた環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置し、前記環状溝の溝幅が3mm乃至50mmの範囲を含むプラズマ処理方法。」(以下、「先願発明」という。)が開示されている。
ここで、本件発明5と先願発明とを対比すると、本件発明5では、アンテナに周波数50MHz乃至3GHzを含む高周波電力を印加して、真空容器内に電磁波を放射するのに対して、先願発明では、マイクロ波発信器からマイクロ波を発生させ、導波管、誘電体線路を介して、真空容器内に電磁波を放射する点で相違する。
したがって、本件発明5は、先願発明と同一とはいえない。

次に、本件発明5と刊行物5に記載された発明とを比較検討する。
刊行物5には、上記摘記事項(5-a)〜(5-d)を、総合的に考慮すると、
「 真空容器内にガスを供給しつつ真空容器内を排気し、真空容器内を所定の圧力に制御しながら、電磁波発生源から電磁波電送部を介して、真空容器内の基板電極に載置された基板に対向して設けられた誘電体窓を介して、真空容器内に電磁波を放射することにより、真空容器内にプラズマを発生させ、基板を処理するプラズマ処理方法であって、前記誘電体窓に1つだけ設けられた環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置したプラズマ処理方法。」(以下、「刊行物5発明」という。)が開示されている。
ここで、刊行物5発明には、環状溝の溝幅に関する数値限定はないが、その環状溝を設ける目的は、マイクロ波の伝達制御のためであるから、格別な意義はないとすると、
本件発明5と刊行物5発明とを比較すると、本件発明5では、アンテナに周波数50MHz乃至3GHzを含む高周波電力を印加して、真空容器内に電磁波を放射するのに対して、刊行物5発明では、電磁波発生源から電磁波電送部を介して、真空容器内の基板電極に載置された基板に対向して設けられた誘電体窓を介して、真空容器内に電磁波を放射する点で相違する。
そして、当該相違点は、本件発明5の一つの発明特定事項と認められるが、当該発明特定事項については、他の刊行物には記載も示唆もされておらず、また、周知技術ともいえない。
したがって、本件発明5は、刊行物5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

[6]本件発明6について
本件発明6は、本件発明5を引用し、その構成をさらに限定するものであるから、本件発明5と同様、本件発明6は先願発明と同一といえず、また、刊行物5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

[7]本件発明7について
本件発明7は、本件発明5を引用し、その構成に「誘電体窓の外側に設けられた環状溝より内側の前記誘電体窓を含む面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍」であることをさらなる発明特定事項としている。
してみれば、本件発明5の構成を限定したのであるから、本件発明5が前記[5]段落で述べたように、刊行物5に記載された発明から当業者が容易に発明することができない以上、本件発明7も、必然の結果として、刊行物5に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

[8]本件発明8について
本件発明8は、本件発明7を引用し、その構成をさらに限定するものであるから、本件発明8は、本件発明7と同様、刊行物5に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

[9]本件発明9について
本件発明9は、本件発明4を引用し、その構成をさらに限定した内容であるから、本件発明9は、本件発明4と同様、刊行物3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

[10]本件発明10について
本件発明10は、本件発明4を引用し、その構成をさらに限定した内容であるから、本件発明10は、本件発明4と同様、刊行物3に記載された発明とはいえず、また、刊行物3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

[11]本件発明11について
本件発明11は、本件発明4を引用し、その構成をさらに限定した内容であるから、本件発明11は、本件発明4と同様、刊行物3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

[12]本件発明12について
本件発明12については、本件発明1〜11を引用し、その構成をさらに限定した内容であるから、本件発明1〜11について前記したと同様、刊行物1〜3,5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、先願明細書等に記載された発明と同一ということもできない。

[13]本件発明13について
本件発明13は、本件発明1のプラズマ処理方法を実現するための装置に関する発明である。してみれば、本件発明1と同様、本件発明13は、刊行物1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、刊行物1及び刊行物2に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

[14]本件発明14について
本件発明14については、本件発明13を引用し、その構成をさらに限定した内容であるから、本件発明13と同様、本件発明14は、刊行物1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、刊行物1及び刊行物2に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

[15]本件発明15について
本件発明15は、本件発明3のプラズマ処理方法を実現するための装置に関する発明である。してみれば、本件発明3と同様、本件発明15は、刊行物3に記載された発明とはいえず、また、刊行物3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

[16]本件発明16について
本件発明16については、本件発明15を引用し、その構成をさらに限定した内容であるから、本件発明15と同様、本件発明16は、刊行物3に記載された発明とはいえず、また、刊行物3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

[17]本件発明17について
本件発明17は、本件発明5のプラズマ処理方法を実現するための装置に関する発明である。してみれば、本件発明17は、刊行物5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、先願明細書等に記載された発明と同一ともいえない。

[18]本件発明18について
本件発明18については、本件発明17を引用し、その構成をさらに限定した内容であるから、本件発明18は、本件発明17と同様、刊行物5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、先願明細書等に記載された発明と同一ともいえない。

[19]本件発明19について
本件発明19は、本件発明7のプラズマ処理方法を実現するための装置に関する発明である。してみれば、本件発明19は、本件発明7と同様、刊行物5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

[20]本件発明20について
本件発明20については、本件発明19を引用し、その構成をさらに限定した内容であるから、本件発明20は、本件発明19と同様、刊行物5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

[21]本件発明21について
本件発明21については、本件発明15を引用し、その構成をさらに限定した内容であるから、本件発明21は、本件発明15と同様、刊行物3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

[22]本件発明22について
本件発明22については、本件発明15を引用し、その構成をさらに限定した内容であるから、本件発明22は、本件発明15と同様、刊行物3に記載された発明とはいえず、また刊行物3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

[23]本件発明23について
本件発明23については、本件発明15を引用し、その構成をさらに限定した内容であるから、本件発明23は、本件発明15と同様、刊行物3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

[24]本件発明24について
本件発明24については、本件発明13〜23を引用し、その構成をさらに限定した内容であるから、本件発明24は、本件発明13〜23について上に記載したと同様、刊行物1〜3,5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができた発明とはいえず、また、先願明細書等に記載された発明と同一ということもできない。

【6-2】発明の詳細な説明の記載について
特許異議申立人は、参考資料1の第29頁第2行〜第8行には「このような構造の放電が、ホロー陰極放電として特色のある性質を持つためには、2個の陰極近傍の負グローが合体していなけれはならない。したがってホロー間隙の大きさ、ガスの種類、ガス圧や放電電流の間にある条件が満されていることが必要てある。」と記載されていることから、所定の条件を満たさなければホローカソード放電が生じないことが一般的に知られており、環状溝を対向電極の外側に設けた態様においては、ホローカソード放電が生じるとは技術的に認めがたく、環状溝を対向電極に設けた態様と同様の効果を奏する
とは認められず、したがって、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない、旨を主張する。
しかしながら、ホローカソード現象の発生は、当該参考資料1が示唆するように、ホロー間隙の大きさ、ガスの種類、ガス圧や放電電流等の条件を満足することで発生するので、環状溝を対向電極の外側に設けた態様においても、これらの条件を最適化することでホローカソード現象が生じうると解される。また、ホローカソード現象の放電に影響を与えるパラメータとして溝の形状、ガスの種類、ガス圧、放電電流等は、既知の制御パラメータであるから、当業者であれば当該パラメータを制御して、発明を実施することは可能と認められる。
したがって、発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているものと認められるから、特許異議申立人の上記主張は失当である。

【7】むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1〜24に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1〜24に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
プラズマ処理方法及び装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】真空容器内にガスを供給しつつ真空容器内を排気し、真空容器内を所定の圧力に制御しながら、真空容器内の基板電極に載置された基板に対向して設けられた対向電極に、周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を印加することにより、真空容器内にプラズマを発生させ、基板を処理するプラズマ処理方法であって、
前記対向電極に1つだけ設けられた環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置することを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項2】環状溝より内側の対向電極の面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍であることを特徴とする請求項1記載のプラズマ処理方法。
【請求項3】真空容器内にガスを供給しつつ真空容器内を排気し、真空容器内を所定の圧力に制御しながら、真空容器内の基板電極に載置された基板に対向して設けられた対向電極に、周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を印加することにより、真空容器内にプラズマを発生させ、基板を処理するプラズマ処理方法であって、
前記対向電極以外に設けられた環状溝より内側の前記対向電極を含む面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍であり、かつ、前記環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置することを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項4】対向電極上若しくはその周囲に絶縁リングを設け、前記対向電極と前記絶縁リングによって前記環状溝を形成することを特徴とする請求項3記載のプラズマ処理方法。
【請求項5】真空容器内にガスを供給しつつ真空容器内を排気し、真空容器内を所定の圧力に制御しながら、アンテナに周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を印加することにより、真空容器内の基板電極に載置された基板に対向して設けられた誘電体窓を介して、真空容器内に電磁波を放射することにより、真空容器内にプラズマを発生させ、基板を処理するプラズマ処理方法であって、前記誘電体窓に1つだけ設けられた環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置し、前記環状溝の溝幅が3mm乃至50mmであることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項6】環状溝より内側の誘電体窓の面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍であることを特徴とする請求項5記載のプラズマ処理方法。
【請求項7】真空容器内にガスを供給しつつ真空容器内を排気し、真空容器内を所定の圧力に制御しながら、アンテナに周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を印加することにより、真空容器内の基板電極に載置された基板に対向して設けられた誘電体窓を介して、真空容器内に電磁波を放射することにより、真空容器内にプラズマを発生させ、基板を処理するプラズマ処理方法であって、前記誘電体窓の外側に設けられた環状溝より内側の前記誘電体窓を含む面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍であり、かつ、前記環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置し、前記環状溝の溝幅が3mm乃至50mmであることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項8】誘電体窓と真空容器の上壁面とで環状溝を形成することを特徴とする請求項7記載のプラズマ処理方法。
【請求項9】環状溝が、絶縁リングに設けられていることを特徴とする請求項4記載のプラズマ処理方法。
【請求項10】環状溝が、前記対向電極と前記絶縁リングとの間に設けられることを特徴とする請求項4記載のプラズマ処理方法。
【請求項11】環状溝が、前記真空容器と前記絶縁リングとの間に設けられることを特徴とする請求項4記載のプラズマ処理方法。
【請求項12】環状溝の溝深さが、5mm以上であることを特徴とする請求項1〜11の何れか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項13】真空容器と、真空容器内にガスを供給するガス供給装置と、真空容器内を排気する排気装置と、真空容器内に基板を載置する基板電極と、基板電極に対向して設けられた対向電極と、対向電極に周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を供給する高周波電源とを備えたプラズマ処理装置であって、前記対向電極に1つだけ設けられた環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項14】環状溝より内側の対向電極の面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍であることを特徴とする請求項13記載のプラズマ処理装置。
【請求項15】真空容器と、真空容器内にガスを供給するガス供給装置と、真空容器内を排気する排気装置と、真空容器内に基板を載置する基板電極と、基板電極に対向して設けられた対向電極と、対向電極に周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を供給する高周波電源とを備えたプラズマ処理装置であって、前記対向電極以外に設けられた環状溝より内側の前記対向電極を含む面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍であり、かつ、前記環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項16】対向電極上若しくはその周囲に絶縁リングを設け、前記対向電極と前記絶縁リングによって前記環状溝を形成することを特徴とする請求項15記載のプラズマ処理装置。
【請求項17】真空容器と、真空容器内にガスを供給するガス供給装置と、真空容器内を排気する排気装置と、真空容器内に基板を載置する基板電極と、基板電極に対向して設けられた誘電体窓と、誘電体窓を介して真空容器内に電磁波を放射するアンテナと、アンテナに周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を供給する高周波電源とを備えたプラズマ処理装置であって、
前記誘電体窓に1つだけ設けられた環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置し、前記環状溝の溝幅が3mm乃至50mmであることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項18】環状溝より内側の前記誘電体窓の面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍であることを特徴とする請求項17記載のプラズマ処理装置。
【請求項19】真空容器と、真空容器内にガスを供給するガス供給装置と、真空容器内を排気する排気装置と、真空容器内に基板を載置する基板電極と、基板電極に対向して設けられた誘電体窓と、誘電体窓を介して真空容器内に電磁波を放射するアンテナと、アンテナに周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を供給する高周波電源とを備えたプラズマ処理装置であって、
前記誘電体窓の外側に設けられた環状溝より内側の前記誘電体窓を含む面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍であり、かつ、前記環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置し、前記環状溝の溝幅が3mm乃至50mmであることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項20】誘電体窓と真空容器の上壁面とで環状溝を形成することを特徴とする請求項19記載のプラズマ処理装置。
【請求項21】環状溝が、絶縁リングに設けられていることを特徴とする請求項15記載のプラズマ処理装置。
【請求項22】環状溝が、前記対向電極と前記絶縁リングとの間に設けられることを特徴とする請求項15記載のプラズマ処理装置。
【請求項23】環状溝が、前記真空容器と前記絶縁リングとの間に設けられることを特徴とする請求項15記載のプラズマ処理装置。
【請求項24】環状溝の溝深さが、5mm以上であることを特徴とする請求項13〜23の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、半導体等の電子デバイスやマイクロマシンの製造に利用されるドライエッチング、スパッタリング、プラズマCVD等のプラズマ処理方法及び装置に関し、特にVHF帯またはUHF帯の高周波電力を用いて励起するプラズマを利用するプラズマ処理方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体等の電子デバイスの微細化に対応するために、高密度プラズマの利用が重要であることについて、特開平8-83696号公報に述べられているが、最近は、電子密度が高くかつ電子温度の低い、低電子温度プラズマが注目されている。
【0003】
Cl2やSF6等のように負性の強いガス、言い換えれば、負イオンが生じやすいガスをプラズマ化したとき、電子温度が3eV程度以下になると、電子温度が高いときに比べてより多量の負イオンが生成される。この現象を利用すると、正イオンの入射過多によって微細パターンの底部に正電荷が蓄積されることによって起きる、ノッチと呼ばれるエッチング形状異常を防止することができ、極めて微細なパターンのエッチングを高精度に行うことができる。
【0004】
また、シリコン酸化膜等の絶縁膜のエッチングを行う際に一般的に用いられるCxFyやCxHyFz(x、y、zは自然数)等の炭素及びフッ素を含むガスをプラズマ化したとき、電子温度が3eV程度以下になると、電子温度が高いときに比べてガスの解離が抑制され、とくにF原子やFラジカル等の生成が抑えられる。F原子やFラジカル等はシリコンをエッチングする速度が早いため、電子温度が低い方が対シリコンエッチング選択比の大きい絶縁膜エッチングが可能になる。
【0005】
また、電子温度が3eV以下になると、イオン温度やプラズマ電位も低下するので、プラズマCVDにおける基板へのイオンダメージを低減することができる。
【0006】電子温度の低いプラズマを生成できる技術として現在注目されているのは、VHF帯またはUHF帯の高周波電力を用いるプラズマ源である。
【0007】
図15は、2周波励起式平行平板型プラズマ処理装置の断面図である。図15において、真空容器1内にガス供給装置2から所定のガスを導入しつつ排気装置としてのポンプ3により排気を行い、真空容器1内を所定の圧力に保ちながら、対向電極用高周波電源4により100MHzの高周波電力を対向電極5に供給すると、真空容器1内にプラズマが発生し、基板電極6上に載置された基板7に対してエッチング、堆積、表面改質等のプラズマ処理を行うことができる。このとき、図15に示すように、基板電極6にも基板電極用高周波電源8により高周波電力を供給することで、基板7に到達するイオンエネルギーを制御することができる。なお、対向電極5は、絶縁リング11により、真空容器と絶縁されている。
【0008】
図16は我々がすでに提案しているアンテナ方式プラズマ源を搭載したプラズマ処理装置の断面図である。図16において、真空容器1内にガス供給装置2から所定のガスを導入しつつ排気装置としてのポンプ3により排気を行い、真空容器1内を所定の圧力に保ちながら、アンテナ用高周波電源12により100MHzの高周波電力を、誘電体窓14上の渦形アンテナ13に供給すると、真空容器1内に放射された電磁波によって真空容器1内にプラズマが発生し、基板電極6上に載置された基板7に対してエッチング、堆積、表面改質等のプラズマ処理を行うことができる。このとき、図16に示すように、基板電極6にも基板電極用高周波電源8により高周波電力を供給することで、基板7に到達するイオンエネルギーを制御することができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図15や図16に示した従来の方式では、プラズマの均一性を得ることが難しいという問題点があった。
【0010】
図17は、図15のプラズマ処理装置において、イオン飽和電流密度を、基板7の直上20mmの位置において測定した結果である。プラズマ発生条件は、ガス種とガス流量がCl2=100sccm、圧力が1Pa、高周波電力が2kWである。図17から、周辺部でプラズマ密度が高くなっていることがわかる。
【0011】
図18は、図16のプラズマ処理装置において、イオン飽和電流密度を、基板7の直上20mmの位置において測定した結果である。プラズマ発生条件は、ガス種とガス流量がCl2=100sccm、圧力が1Pa、高周波電力が2kWである。図18から、周辺部でプラズマ密度が高くなっていることがわかる。
【0012】
このようなプラズマの不均一は、高周波電力の周波数が50MHz以下の場合には見られなかった現象である。プラズマの電子温度を下げるためには、50MHz以上の高周波電力を用いる必要があるが、この周波数帯では、対向電極やアンテナとプラズマとが容量的または誘導的に結合することによってプラズマが生成されるという効果に加えて、対向電極やアンテナから放射される電磁波がプラズマの表面を伝搬することによってプラズマが生成されるという効果が現れる。真空容器の周辺部は、プラズマの表面を伝搬してきた電磁波の反射面となるため電界が強くなり、濃いプラズマが発生してしまうものと考えられる。
【0013】
本発明は、上記従来の問題点に鑑み、均一なプラズマを発生させることができるプラズマ処理方法及び装置を提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本願の第1発明のプラズマ処理方法は、真空容器内にガスを供給しつつ真空容器内を排気し、真空容器内を所定の圧力に制御しながら、真空容器内の基板電極に載置された基板に対向して設けられた対向電極に、周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を印加することにより、真空容器内にプラズマを発生させ、基板を処理するプラズマ処理方法であって、前記対向電極に1つだけ設けられた環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置することを特徴とする。
【0015】
本願の第2発明のプラズマ処理方法は、真空容器内にガスを供給しつつ真空容器内を排気し、真空容器内を所定の圧力に制御しながら、真空容器内の基板電極に載置された基板に対向して設けられた対向電極に、周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を印加することにより、真空容器内にプラズマを発生させ、基板を処理するプラズマ処理方法であって、前記対向電極以外に設けられた環状溝より内側の前記対向電極を含む面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍であり、かつ、前記環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置することを特徴とする。
【0016】
本願の第3発明のプラズマ処理方法は、真空容器内にガスを供給しつつ真空容器内を排気し、真空容器内を所定の圧力に制御しながら、アンテナに周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を印加することにより、真空容器内の基板電極に載置された基板に対向して設けられた誘電体窓を介して、真空容器内に電磁波を放射することにより、真空容器内にプラズマを発生させ、基板を処理するプラズマ処理方法であって、前記誘電体窓に1つだけ設けられた環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置し、前記環状溝の溝幅が3mm乃至50mmであることを特徴とする。
【0017】
本願の第4発明のプラズマ処理方法は、真空容器内にガスを供給しつつ真空容器内を排気し、真空容器内を所定の圧力に制御しながら、アンテナに周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を印加することにより、真空容器内の基板電極に載置された基板に対向して設けられた誘電体窓を介して、真空容器内に電磁波を放射することにより、真空容器内にプラズマを発生させ、基板を処理するプラズマ処理方法であって、前記誘電体窓の外側に設けられた環状溝より内側の前記誘電体窓を含む面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍であり、かつ、前記環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置し、前記環状溝の溝幅が3mm乃至50mmであることを特徴とする。
【0018】
本願の第5発明のプラズマ処理装置は、真空容器と、真空容器内にガスを供給するガス供給装置と、真空容器内を排気する排気装置と、真空容器内に基板を載置する基板電極と、基板電極に対向して設けられた対向電極と、対向電極に周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を供給する高周波電源とを備えたプラズマ処理装置であって、前記対向電極に1つだけ設けられた環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置することを特徴とする。
【0019】
本願の第6発明のプラズマ処理装置は、真空容器と、真空容器内にガスを供給するガス供給装置と、真空容器内を排気する排気装置と、真空容器内に基板を載置する基板電極と、基板電極に対向して設けられた対向電極と、対向電極に周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を供給する高周波電源とを備えたプラズマ処理装置であって、前記対向電極以外に設けられた環状溝より内側の前記対向電極を含む面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍であり、かつ、前記環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置することを特徴とする。
【0020】
本願の第7発明のプラズマ処理装置は、真空容器と、真空容器内にガスを供給するガス供給装置と、真空容器内を排気する排気装置と、真空容器内に基板を載置する基板電極と、基板電極に対向して設けられた誘電体窓と、誘電体窓を介して真空容器内に電磁波を放射するアンテナと、アンテナに周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を供給する高周波電源とを備えたプラズマ処理装置であって、前記誘電体窓に1つだけ設けられた環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置し、前記環状溝の溝幅が3mm乃至50mmであることを特徴とする。
【0021】
本願の第8発明のプラズマ処理装置は、真空容器と、真空容器内にガスを供給するガス供給装置と、真空容器内を排気する排気装置と、真空容器内に基板を載置する基板電極と、基板電極に対向して設けられた誘電体窓と、誘電体窓を介して真空容器内に電磁波を放射するアンテナと、アンテナに周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を供給する高周波電源とを備えたプラズマ処理装置であって、前記誘電体窓の外側に設けられた環状溝より内側の前記誘電体窓を含む面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍であり、かつ、前記環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置し、前記環状溝の溝幅が3mm乃至50mmであることを特徴とする。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1実施形態について、図1及び図2を参照して説明する。
【0023】
図1に、本発明の第1実施形態において用いたプラズマ処理装置の断面図を示す。図1において、真空容器1内に、ガス供給装置2から所定のガスを導入しつつ、排気装置としてのポンプ3により排気を行い、真空容器1内を所定の圧力に保ちながら、対向電極用高周波電源4により100MHzの高周波電力を対向電極5に供給することにより、真空容器1内にプラズマが発生し、基板電極6上に載置された基板7に対してエッチング、堆積、表面改質等のプラズマ処理を行うことができる。また、基板電極6に高周波電力を供給するための基板電極用高周波電源8が設けられており、基板7に到達するイオンエネルギーを制御することができるようになっている。また、基板7に対向して設けられたプラズマトラップ(以下「環状溝」と称す)9によって、基板上のプラズマ分布が制御された状態で基板を処理することができるようになっている。環状溝9は、対向電極5に設けられている。真空容器1内壁面を構成する、基板に対向する面のうち、環状溝9によって囲まれた部分10(斜線部)の面積は、基板の面積の0.8倍である。また、環状溝9の溝幅は10mmであり、環状溝9の溝深さは15mmである。なお、対向電極5は、絶縁リング11により、真空容器と絶縁されている。
【0024】
図2に、イオン飽和電流密度を、基板7の直上20mmの位置において測定した結果を示す。プラズマ発生条件は、ガス種とガス流量がCl2=100sccm、圧力が1Pa、高周波電力が2kWである。図2から、図17で見られたような周辺部のプラズマが濃いという傾向が抑制され、均一なプラズマが発生していることがわかる。
【0025】
このように、従来例の図15で示したプラズマ処理装置と比較してプラズマの均一性が改善した原因として、以下のことが考えられる。対向電極5から放射された電磁波は、環状溝9で強められる。また、低電子温度プラズマではホローカソード放電が起きやすい傾向があるため、固体表面で囲まれた環状溝9で高密度のプラズマ(ホローカソード放電)が生成しやすくなっている。したがって、真空容器1内では、プラズマ密度が環状溝9で最も高くなり、拡散によって基板7近傍までプラズマが輸送されることで、均一なプラズマが得られたものと考えられる。
【0026】
なお、ホローカソード放電とは、以下のようなものである。一般に、プラズマに接している固体表面は、電子とイオンの熱運動速度の違いに起因して負に帯電するため、固体表面に電子を固体表面から追い返す直流電界が生じる。本発明の第1実施形態で例示した環状溝9のように、固体表面によって囲まれた空間では、電子がこの直流電界の存在により、固体表面に衝突する確率が低下するため、電子の寿命が長くなり、その結果、環状溝9で高密度のプラズマが生成される。このような放電を、ホローカソード放電という。
【0027】
以上述べた本発明の第1実施形態において、環状溝9が対向電極5に設けられている場合について説明したが、この場合、対向電極5に発生する自己バイアス電圧によって、環状溝9に存在する高密度イオンが高いエネルギーで対向電極5に衝突し、対向電極5のスパッタリングを生じるおそれがある。対向電極5のスパッタリングは、対向電極5の短命化や、基板7への不純物混入を招くという点で好ましくない。これを避けるためには、環状溝を対向電極5以外の部分に構成すればよい。例えば、環状溝9を、図3の第2実施形態に示すように、絶縁リング11に設けることが考えられる。また、環状溝9を、図4の第3実施形態に示すように、絶縁リング11の外側に設けることが考えられる。また、環状溝9を、図5の第4実施形態または図6の第5実施形態に示すように、対向電極5と絶縁リング11との間に設けることによっても、若干の改善を図ることが可能である。また、環状溝9を、図7の第6実施形態に示すように、真空容器1と絶縁リング11との間に設けることが考えられる。
【0028】
次に、本発明の第7実施形態について、図8及び図9を参照して説明する。
【0029】
図8に、本発明の第7実施形態において用いたプラズマ処理装置の断面図を示す。図8において、真空容器1内に、ガス供給装置2から所定のガスを導入しつつ、排気装置としてのポンプ3により排気を行い、真空容器1内を所定の圧力に保ちながら、アンテナ用高周波電源12により100MHzの高周波電力を渦形のアンテナ13に印加し、基板電極6に載置された基板7に対向して設けられた誘電体窓14を介して、真空容器1内に電磁波を放射することにより、真空容器1内にプラズマが発生し、基板7に対してエッチング、堆積、表面改質等のプラズマ処理を行うことができる。また、基板電極6に高周波電力を供給するための基板電極用高周波電源8が設けられており、基板7に到達するイオンエネルギーを制御することができるようになっている。また、基板7に対向して設けられた環状溝9によって、基板上のプラズマ分布が制御された状態で基板を処理することができるようになっている。環状溝9は、誘電体窓14に設けられている。真空容器1内壁面を構成する、基板に対向する面のうち、環状溝9によって囲まれた部分10(斜線部)の面積は、基板の面積の0.8倍である。また、環状溝9の溝幅は10mmであり、環状溝9の溝深さは15mmである。
【0030】
図9に、イオン飽和電流密度を、基板7の直上20mmの位置において測定した結果を示す。プラズマ発生条件は、ガス種とガス流量がCl2=100sccm、圧力が1Pa、高周波電力が2kWである。図9から、図18で見られたような周辺部のプラズマが濃いという傾向が抑制され、均一なプラズマが発生していることがわかる。
【0031】
このように、従来例の図16で示したプラズマ処理装置と比較してプラズマの均一性が改善した原因として、以下のことが考えられる。アンテナ13から放射された電磁波は、環状溝9で強められる。また、低電子温度プラズマではホローカソード放電が起きやすい傾向があるため、固体表面で囲まれた環状溝9で高密度のプラズマ(ホローカソード放電)が生成しやすくなっている。したがって、真空容器1内では、プラズマ密度が環状溝9で最も高くなり、拡散によって基板7近傍までプラズマが輸送されることで、均一なプラズマが得られたものと考えられる。
【0032】
以上述べた本発明の第7実施形態において、環状溝9が誘電体窓14に設けられている場合について説明したが、環状溝9は、図10の第8実施形態に示すように、誘電体窓14の外側に設けられていてもよい。また、環状溝9は、図11の第9実施形態に示すように、真空容器1と、誘電体窓14との間に設けられていてもよい。
【0033】
以上述べた本発明の実施形態においては、本発明の適用範囲のうち、真空容器の形状、対向電極またはアンテナの形状及び配置、誘電体の形状及び配置、環状溝の形状及び配置に関して様々なバリエーションのうちの一部を例示したに過ぎない。本発明の適用にあたり、ここで例示した以外にも様々なバリエーションが考えられることは、いうまでもない。例えば、本発明の実施形態においては、対向電極が円形である場合について説明したが、多角形、楕円形等他の形状による構成も可能である。同様に、アンテナが渦形である場合について説明したが、平板状、スポーク状等他の形状による構成も可能である。あるいは、図12に示すような、空洞共振器15を備えた表面波プラズマ処理装置において、空洞共振器15をアンテナと見なして本発明を適用することも可能である。また、図13に示すような、空洞共振器15とスロットアンテナ16を備えた表面波プラズマ処理装置においても、本発明を適用することも可能である。
【0034】
また、以上述べた本発明の実施形態において、環状溝が円環状である場合について説明したが、基板の形状に合わせて、環状溝の形状を多角形、楕円形等他の形状にすることも可能である。あるいは、環状溝を、閉じた環状にするのではなく、図14に示す平面図のように、分断されてはいるが、全体として環状を成す形状とすることも可能である。
【0035】
また、以上述べた本発明の第1または第7実施形態において、対向電極またはアンテナに100MHzの高周波電力を供給する場合について説明したが、周波数はこれに限定されるものではなく、50MHz乃至3GHzの周波数を用いるプラズマ処理方法及び装置において、本発明は有効である。
【0036】
また、以上述べた本発明の第1または第7実施形態において、真空容器内壁面を構成する、基板に対向する面のうち、環状溝によって囲まれた部分の面積が、基板の面積の0.8である場合について説明したが、この部分の面積は、基板の面積の0.5乃至2.5倍であることが望ましい。この部分の面積が基板の面積の0.5倍未満である場合は、基板と環状溝との距離を十分離しても、基板近傍で均一なプラズマを得ることが難しくなる。また、この部分の面積が基板の面積の2.5倍を越える場合は、基板近傍で均一なプラズマを得るには、基板と環状溝との距離を極めて大きく離す必要があり、装置の大型化を招き、また、真空容器内を低圧に保つためにポンプに多大の負担を強いることになるため、好ましくない。
【0037】
また、以上述べた本発明の第1または第7実施形態において、環状溝の溝幅が10mmである場合について説明したが、環状溝の溝幅は、3mm乃至50mmであることが望ましい。溝幅が3mm未満である場合、または、50mmを越える場合は、環状溝でホローカソード放電が起きない可能性がある。
【0038】
また、各実施形態においては、溝の形状としては、矩形状について説明したが、U形状、V形状でもよく、また、矩形状、U形状、V形状を組み合わせた形状でも良い。
【0039】
また、以上述べた本発明の第1または第7実施形態において、環状溝の溝深さが15mmである場合について説明したが、環状溝の溝深さは、5mm以上であることが望ましい。溝深さが5mm未満である場合は、環状溝でホローカソード放電が起きない可能性がある。
【0040】
また、以上述べた本発明の実施形態において、真空容器内に直流磁界が存在しない場合について説明したが、高周波電力がプラズマ中に浸入できるようになるほどの大きな直流磁界が存在しない場合、例えば、着火性の改善のために数十ガウス程度の小さな直流磁界を用いる場合においても、本発明は有効である。しかし、本発明は、真空容器内に直流磁界が存在しない場合にとくに有効である。
【0041】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本願の第1発明のプラズマ処理方法によれば、真空容器内にガスを供給しつつ真空容器内を排気し、真空容器内を所定の圧力に制御しながら、真空容器内の基板電極に載置された基板に対向して設けられた対向電極に、周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を印加することにより、真空容器内にプラズマを発生させ、基板を処理するプラズマ処理方法であって、前記対向電極に1つだけ設けられた環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置することで、均一なプラズマを発生させることができ、基板を均一に処理することができる。
【0042】
また、本願の第2発明のプラズマ処理方法によれば、真空容器内にガスを供給しつつ真空容器内を排気し、真空容器内を所定の圧力に制御しながら、真空容器内の基板電極に載置された基板に対向して設けられた対向電極に、周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を印加することにより、真空容器内にプラズマを発生させ、基板を処理するプラズマ処理方法であって、前記対向電極以外に設けられた環状溝より内側の前記対向電極を含む面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍であり、かつ、前記環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置することで、均一なプラズマを発生させることができ、基板を均一に処理することができる。
【0043】
また、本願の第3発明のプラズマ処理方法によれば、真空容器内にガスを供給しつつ真空容器内を排気し、真空容器内を所定の圧力に制御しながら、アンテナに周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を印加することにより、真空容器内の基板電極に載置された基板に対向して設けられた誘電体窓を介して、真空容器内に電磁波を放射することにより、真空容器内にプラズマを発生させ、基板を処理するプラズマ処理方法であって、前記誘電体窓に1つだけ設けられた環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置し、前記環状溝の溝幅が3mm乃至50mmであることで、均一なプラズマを発生させることができ、基板を均一に処理することができる。
【0044】
また、本願の第4発明のプラズマ処理方法によれば、真空容器内にガスを供給しつつ真空容器内を排気し、真空容器内を所定の圧力に制御しながら、アンテナに周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を印加することにより、真空容器内の基板電極に載置された基板に対向して設けられた誘電体窓を介して、真空容器内に電磁波を放射することにより、真空容器内にプラズマを発生させ、基板を処理するプラズマ処理方法であって、前記誘電体窓の外側に設けられた環状溝より内側の前記誘電体窓を含む面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍であり、かつ、前記環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置し、前記環状溝の溝幅が3mm乃至50mmであることで、均一なプラズマを発生させることができ、基板を均一に処理することができる。
【0045】
また、本願の第5発明のプラズマ処理装置によれば、真空容器と、真空容器内にガスを供給するガス供給装置と、真空容器内を排気する排気装置と、真空容器内に基板を載置する基板電極と、基板電極に対向して設けられた対向電極と、対向電極に周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を供給する高周波電源とを備えたプラズマ処理装置であって、前記対向電極に1つだけ設けられた環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置することで、均一なプラズマを発生させることができ、基板を均一に処理することができる。
【0046】
また、本願の第6発明のプラズマ処理装置によれば、真空容器と、真空容器内にガスを供給するガス供給装置と、真空容器内を排気する排気装置と、真空容器内に基板を載置する基板電極と、基板電極に対向して設けられた対向電極と、対向電極に周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を供給する高周波電源とを備えたプラズマ処理装置であって、前記対向電極以外に設けられた環状溝より内側の前記対向電極を含む面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍であり、かつ、前記環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置することで、均一なプラズマを発生させることができ、基板を均一に処理することができる。
【0047】
また、本願の第7発明のプラズマ処理装置によれば、真空容器と、真空容器内にガスを供給するガス供給装置と、真空容器内を排気する排気装置と、真空容器内に基板を載置する基板電極と、基板電極に対向して設けられた誘電体窓と、誘電体窓を介して真空容器内に電磁波を放射するアンテナと、アンテナに周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を供給する高周波電源とを備えたプラズマ処理装置であって、前記誘電体窓に1つだけ設けられた環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置し、前記環状溝の溝幅が3mm乃至50mmであることで、均一なプラズマを発生させることができ、基板を均一に処理することができる。
【0048】
また、本願の第8発明のプラズマ処理装置によれば、真空容器と、真空容器内にガスを供給するガス供給装置と、真空容器内を排気する排気装置と、真空容器内に基板を載置する基板電極と、基板電極に対向して設けられた誘電体窓と、誘電体窓を介して真空容器内に電磁波を放射するアンテナと、アンテナに周波数50MHz乃至3GHzの高周波電力を供給する高周波電源とを備えたプラズマ処理装置であって、前記誘電体窓の外側に設けられた環状溝より内側の前記誘電体窓を含む面積が前記基板の面積の0.5乃至2.5倍であり、かつ、前記環状溝の外側が真空容器の内壁面よりも内側に位置し、前記環状溝の溝幅が3mm乃至50mmであることで、均一なプラズマを発生させることができ、基板を均一に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の第1実施形態で用いたプラズマ処理装置の構成を示す断面図
【図2】
本発明の第1実施形態における、イオン飽和電流密度の測定結果を示す図
【図3】
本発明の第2実施形態で用いたプラズマ処理装置の構成を示す断面図
【図4】
本発明の第3実施形態で用いたプラズマ処理装置の構成を示す断面図
【図5】
本発明の第4実施形態で用いたプラズマ処理装置の構成を示す断面図
【図6】
本発明の第5実施形態で用いたプラズマ処理装置の構成を示す断面図
【図7】
本発明の第6実施形態で用いたプラズマ処理装置の構成を示す断面図
【図8】
本発明の第7実施形態で用いたプラズマ処理装置の構成を示す断面図
【図9】
本発明の第7実施形態における、イオン飽和電流密度の測定結果を示す図
【図10】
本発明の第8実施形態で用いたプラズマ処理装置の構成を示す断面図
【図11】
本発明の第9実施形態で用いたプラズマ処理装置の構成を示す断面図
【図12】
本発明の他の実施形態で用いたプラズマ処理装置の構成を示す断面図
【図13】
本発明の他の実施形態で用いたプラズマ処理装置の構成を示す断面図
【図14】
本発明の他の実施形態で用いた環状溝の構成を示す平面図
【図15】
従来例で用いたプラズマ処理装置の構成を示す断面図
【図16】
従来例で用いたプラズマ処理装置の構成を示す断面図
【図17】
従来例における、イオン飽和電流密度の測定結果を示す図
【図18】
従来例における、イオン飽和電流密度の測定結果を示す図
【符号の説明】
1 真空容器
2 ガス供給装置
3 ポンプ
4 対向電極用高周波電源
5 対向電極
6 基板電極
7 基板
8 基板電極用高周波電源
9 環状溝
10 環状溝によって囲まれた部分(斜線部)
11 絶縁リング
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-07-01 
出願番号 特願平11-44359
審決分類 P 1 651・ 161- YA (H01L)
P 1 651・ 536- YA (H01L)
P 1 651・ 121- YA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 酒井 英夫  
特許庁審判長 池田 正人
特許庁審判官 川真田 秀男
大嶋 洋一
登録日 2003-04-11 
登録番号 特許第3417328号(P3417328)
権利者 松下電器産業株式会社
発明の名称 プラズマ処理方法及び装置  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 坂口 智康  
代理人 坂口 智康  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 岩橋 文雄  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ