• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特29条の2  F27D
審判 全部申し立て 2項進歩性  F27D
管理番号 1125818
異議申立番号 異議2003-73517  
総通号数 72 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-02-13 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-26 
確定日 2005-07-13 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3449673号「吹付け施工方法」の請求項1ないし9に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3449673号の請求項1ないし9に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3449673号の請求項1〜9に係る発明は、平成8年7月18日に特許出願され、平成15年7月11日にその発明について特許の設定登録がなされ、その後、全請求項に係る特許について宮越典明より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成16年10月19日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
2-1.訂正の内容
平成16年10月19日付け訂正請求の内容は、本件特許明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり、すなわち次の(a)乃至(m)のとおりに訂正するものである。
(a)特許請求の範囲の請求項1の
「耐火性骨材と耐火性粉末からなる耐火組成物」を、
「耐火性骨材と耐火性粉末と分散剤とからなる耐火組成物」と訂正する。
(b)特許請求の範囲の請求項1の
「所定量の水」を、
「該耐火組成物100重量部に対して12重量部以下の水」と訂正する。
(c)特許請求の範囲の請求項1の
「混練した自己流動性を有する坏土」を、
「混練した、圧送ポンプと圧送配管によって圧送できる自己流動性を有する坏土」と訂正する。
(d)特許請求の範囲の請求項1の
「急結剤」を、
「急結剤(珪酸アルカリ溶液を除く)」と訂正する。
(e)特許請求の範囲の請求項2の
「前記坏土が分散剤を含有する」を、
「前記坏土が、耐火性骨材と耐火性粉末の合量100重量部に対して0.02〜1重量部の分散剤を含有する」と訂正する。
(f)明細書段落【0010】の
「耐火性骨材と耐火性粉末からなる耐火組成物」を、
「耐火性骨材と耐火性粉末と分散剤とからなる耐火組成物」と訂正する。
(g)明細書段落【0010】の
「所定量の水」を、
「該耐火組成物100重量部に対して12重量部以下の水」と訂正する。
(h)明細書段落【0010】の
「混練した自己流動性を有する坏土」を、
「混練した、圧送ポンプと圧送配管によって圧送できる自己流動性を有する坏土」と訂正する。
(i)明細書段落【0010】の
「急結剤」を、
「急結剤(珪酸アルカリ溶液を除く)」と訂正する。
(j)明細書段落【0041】の
「15重量部以下、さらには12重量部以下とするのが好ましい。」を、
「12重量部以下とする。」と訂正する。
(k)明細書段落【0069】の表2の例6〜例12におけるヘキサメタリン酸ソーダの量「0.0」を「0.05」に訂正する。
(l)明細書段落【0069】の表2の例6、及び例8〜例12における急結剤の量「50.3」を「0.3」に訂正する。
(m)明細書段落【0070】の表3の例13〜例16におけるヘキサメタリン酸ソーダの量「0.0」を「0.05」に、また、急結剤の量「50.3」を「0.3」に、それぞれ訂正する。

2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記(a)の訂正は、請求項2の「前記坏土が分散剤を含有する」や段落【0037】の「分散剤としては、・・・粉末状で耐火組成物に配合しておくことが好ましい。」等の記載に基づき、特許請求の範囲の請求項1において、耐火組成物が分散剤を含む旨を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
上記(b)の訂正は、段落【0041】の「粉体組成物に加える水分は、・・・粉体組成物100重量部に対して15重量部以下、さらには12重量部以下とするのが好ましい。」という記載に基づき、特許請求の範囲の請求項1において、加える水の量を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
上記(c)の訂正は、段落【0013】の「自己流動性を有する不定形耐火物の坏土を圧送ポンプと圧送配管によって施工現場に圧送する点にある。この方法によれば、予め所要の水分を混合してある不定形耐火物の坏土を圧送ポンプと圧送配管で施工現場に送ることができ」等の記載に基づき、特許請求の範囲の請求項1において、「自己流動性」が「圧送ポンプと圧送配管によって圧送できる」ものであることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
上記(d)の訂正は、特許請求の範囲の請求項1において、急結剤が「珪酸アルカリ溶液を除く」ものであることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
上記(e)の訂正は、段落【0037】の「分散剤としては、ポリメタリン酸塩類、・・・から選ばれる1種以上が好ましく、組成物の耐火性粉末と耐火性骨材の合量100重量部に対して0.02〜1重量部添加しておくのが好ましい。」という記載に基づき、特許請求の範囲の請求項2において、分散剤の含有量を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
上記(f)〜(j)の訂正は、上記(a)〜(e)の訂正により特許請求の範囲の記載が訂正されることに伴い、これに整合するように発明の詳細な説明の記載を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
上記(k)〜(m)の訂正は、表1の実施例である例1や実施例以外の例2〜4における分散剤ヘキサメタリン酸ソーダの量が0.05であり、実施例である例1の急結剤の量が0.3である旨の記載に基づき、明らかな誤記を訂正するものであるから、誤記の訂正を目的とするものである。
そして、上記(a)〜(m)の訂正は、いずれも、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

2-3.訂正の適否についてのまとめ
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び第120条の4第3項で準用する第126条第2、3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断
3-1.取消理由の概要
当審が通知した取消理由の概要は、次の(1)、(2)のとおりである。
(1)本件請求項1〜9に係る発明は、本件の出願日前の他の特許出願(以下、「先願」という)であって、その出願後に出願公開された先願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「先願明細書」という)に記載された発明と同一と云える。しかも、本件請求項1〜9に係る発明の発明者が上記先願に係る発明の発明者と同一であるとも、また、本件の出願の時に、その出願人が上記先願の出願人と同一であるとも認められないので、本件請求項1〜9に係る発明の特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきである(取消理由1)。
(2)本件請求項1〜9に係る発明は、その出願前に頒布された刊行物1〜4(特許異議申立人が提出した甲第2〜5号証に同じ)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1〜9に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものである(取消理由2)。

3-2.本件発明
上記2.で述べたとおり訂正が認められるから、本件請求項1〜9に係る発明は、平成16年10月19日付け訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜9に記載された次のとおりのものである(以下、本件請求項1〜9に係る発明を「本件発明1」〜「本件発明9」といい、これらの発明をまとめて「本件発明」という)。
「【請求項1】 アルミナ質骨材と炭化ケイ素質骨材とを含む耐火性骨材と耐火性粉末と分散剤とからなる耐火組成物であって、アルミナ質骨材を7〜70重量%と炭化ケイ素質骨材を10〜45重量%それぞれ含有する耐火組成物に、該耐火組成物100重量部に対して12重量部以下の水を加えて混練した、圧送ポンプと圧送配管によって圧送できる自己流動性を有する坏土を所定量の急結剤(珪酸アルカリ溶液を除く)とともに吹付けることを特徴とする吹付け施工方法。
【請求項2】 前記坏土が、耐火性骨材と耐火性粉末の合量100重量部に対して0.02〜1重量部の分散剤を含有する請求項1記載の吹付け施工方法。
【請求項3】 耐火性骨材の一部としてカーボン質骨材を、耐火性骨材と耐火性粉末の合量中0.1〜10重量%含有する耐火性組成物を使用する請求項1または2記載の吹付け施工方法。
【請求項4】 前記耐火組成物中、耐火性骨材が74〜93%、耐火性粉末が26〜7%である請求項1、2または3記載の吹付け施工方法。
【請求項5】 耐火性粉末としてアルミナセメント、ヒュームドシリカ粉末、アルミナ粉末の1以上を使用する請求項1、2、3または4記載の吹付け施工方法。
【請求項6】 前記自己流動性を有する坏土を、圧送ポンプと圧送配管によって施工現場に圧送し、圧送配管の下流部に設けた圧縮空気注入口および急結剤注入口からそれぞれ圧縮空気と所要量の急結剤を坏土中に注入し、注入した圧縮空気とともに急結剤が混入した坏土をノズル配管によってその先端に接続した吹付けノズルに送り、吹付けノズルから坏土を施工箇所に吹付けることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の吹付け施工方法。
【請求項7】 急結剤注入口を圧縮空気注入口の下流または圧縮空気注入口と同位置に設け、坏土に注入する圧縮空気の一部または全部を使用して急結剤を注入する請求項6記載の吹付け施工方法。
【請求項8】 急結剤を耐火性骨材と耐火性粉末の合量100重量部に対し、0.05〜3重量部注入する請求項1〜7のいずれか記載の吹付け施工方法。
【請求項9】 前記自己流動性を有する坏土を高炉樋耐火ライニング用として吹付ける請求項1〜8のいずれか記載の吹付け施工方法。」

3-3.先願と先願明細書の記載事項、及び、引用刊行物とその記載事項
〔0〕先願:特願平8-179913号[特開平9-315872号公報、特許第2831976号公報(特許異議申立人提出の甲第1号証)参照]
〔0a〕「粒径10mm以下の耐火性骨材67〜97.5重量%と、粒径10μm以下の耐火性超微粉2〜25重量%と、アルミナセメント0.5〜8重量%とからなる耐火組成物100重量%に対して、分散剤0.01〜1.0重量%を外掛けで添加してなることを特徴とするローセメントキャスタブルを予めミキサーで水と混練して流し込みの作業性にしたものを圧送ポンプで吹付けノズルに輸送し、前記吹付けノズルで圧搾空気とともに、珪酸アルカリ溶液[SiO2/R2Oモル比が2.0〜3.3で(R2Oはアルカリ金属酸化物)、15℃でのBe(ボーメ度)換算比重が40以上]を保形性付与剤として前記ローセメントキャスタブル粉体100重量%に対して外掛けで0.1〜1.5重量%添加し、吹付け施工することを特徴とする湿式吹付け施工法。」(特許請求の範囲の請求項1)
〔0b〕「【産業上の利用分野】 本発明は取鍋、タンディッシュ等の溶湯金属容器及び高炉出銑樋等の内張り材として使用されるローセメントキャスタブルの湿式吹付け施工法に関する。」(段落【0001】)
〔0c〕「本発明に使用する耐火性骨材は、電融アルミナ、焼結アルミナ、ボーキサイト、カイアナイト、アンダリュサイト、ムライト、シャモット、ロー石、珪石、アルミナ-マグネシアスピネル、マグネシア、ジルコン、ジルコニア、炭化珪素、黒鉛、ピッチ等からなる群から選ばれた少なくとも1種であり、必要に応じて2種以上を併用することができる。」(段落【0009】)
〔0d〕「耐火性超微粉としては、非晶質シリカ、耐火性粘土、超微粉シリカ、超微粉アルミナ、超微粉チタニア、超微粉ムライト、超微粉ジルコニア、超微粉クロミア、超微粉炭化珪素、超微粉カーボン等からなる群から選ばれた少なくとも1種を使用し、必要に応じて2種以上を併用することができる。」(段落【0010】)
〔0e〕「混練水量は通常の流し込み可能な程度に設定する。添加水分量は粒度構成や耐火性骨材の気孔率によって大きな影響を受けるが、概ねローセメントキャスタブル100重量%に対して外掛けで5〜8重量%である。」(段落【0015】)
〔0f〕「混練物はミキサーから圧送ポンプにより吹付けノズルに輸送し、吹付けノズルで圧搾空気とともに珪酸アルカリ溶液を添加して、吹付け施工を行う。」(段落【0015】)
〔0g〕「珪酸アルカリ溶液は保形性付与剤として用いるが、保形性付与剤は吹付け施工した瞬間に上記構成のローセメントキャスタブルの流動性を消失させて保形性を持たせる作用を有する。珪酸アルカリ溶液は、(1)吹付け材の接着性が良好で、(2)溶鋼品質への悪影響がなく(リンやホウ素等の化合物は好ましくない)、また(3)液体として入手しやすい等の点で、他の保形性付与剤に比べて優れている。」(段落【0016】、なお、数字を囲む○を(1)のように括弧で代替表示している)
〔0h〕実施例1の吹付施工法における成分割合は、(A)耐火組成物の内、(A-1)耐火性骨材は、電融アルミナ(5mm超)17重量%、電融アルミナ(5mm下)35重量%、電融アルミナ(1mm下)16重量%、炭化珪素18重量%、ピッチ2重量%であり、(A-2)耐火性超微粉は、粘土1重量%、アルミナ超微粉5重量%、非晶質シリカ3重量%、カーボンブラック1重量%であり、(A-3)アルミナセメントは、2重量%であり、(B)分散剤は、ヘキサメタリン酸ソーダが耐火組成物100重量%に対して外掛けで0.1重量%であり、(C)乾燥爆裂防止剤は、金属アルミニウムが耐火組成物100重量%に対して外掛けで0.5重量%であり、(D)珪酸ソーダ溶液は、耐火組成物と分散剤の乾燥粉体100重量%に対して外掛けで0.4重量%であり、(E)予備混練水分量は、耐火組成物と分散剤の乾燥粉体100重量%に対して外掛けで5.2重量%であり、(F)吹付け施工体の全水分量は、耐火組成物と分散剤の乾燥粉体100重量%に対して外掛けで5.4重量%である(段落【0026】〜【0027】の表1と注参照)。
〔1〕刊行物1:特開平6-219854号公報(同甲第2号証)
〔1a〕「【請求項1】 アルミナ骨材を30〜70重量%と炭化珪素骨材を5〜60重量%含む耐火材料に、粒径20μm以下のゼオライトを0.01〜3重量%と、2μm以下の超微粉シリカを0.5〜5重量%と、CaO+Al2O3の合量が99重量%以上のアルミナセメントをCaO換算で0.5〜2重量%とを含有せしめてなるアルミナ-炭化珪素耐火物。
【請求項2】 アルミナ骨材を30〜70重量%と炭化珪素骨材を5〜60重量%含む耐火材料に、粒径20μm以下のゼオライトを0.01〜3重量%と、2μm以下の超微粉シリカを0.5〜5重量%と、CaO+Al2O3の合量が99重量%以上のアルミナセメントをCaO換算で0.5〜2重量%とを含有せしめてなるアルミナ-炭化珪素耐火物を吹付け施工後、・・・アルミナ-炭化珪素耐火物の施工方法。」(特許請求の範囲)
〔1b〕「本発明は、高炉出銑口、高炉樋、混銑車内張り等、窯炉等の補修用の不定形吹付け耐火物として好適な耐火物と、その耐火物を使用する施工方法に関する。」(段落【0001】)
〔1c〕「更に、耐火性を損なわない範囲で耐火性粘土,珪石,ジルコン,炭素等、従来の不定形耐火物に使用される骨材が任意に使用できる。」(段落【0012】)
〔1d〕「シリカ超微粉は、粒径0.01〜2μmのものであり、非晶質で金属シリコン,シリコン合金,ジルコニア製造の際に副生し、一般にシリカフラワーとして知られる集塵ダストである。このシリカ超微粉は、キャスタブル耐火物に施工時の流動性を付与するとともに、結合剤としてのアルミナセメントまたは、分散剤から溶出するCa2+ ,Na+ のイオンによるファンデルーワルース結合で強固な結合を発現し、施工体の強度、緻密化を向上させる。」(段落【0013】)
〔1e〕「不定形耐火物における一般的な分散剤や作業性を調整する添加剤についても、耐食性及び耐火性が低下しない範囲で使用できる。」(段落【0015】)
〔1f〕実施例1の配合物組成は、電融アルミナ5-1mmが40重量%、電融アルミナ1-0mmが10重量%、炭化珪素5-1mmが10重量%、炭化珪素1-0mmが25重量%、超微粉シリカ(平均粒径0.5μm)が3重量%、アルミナ超微粉(平均粒径2.5μm)が6重量%、アルミナセメント(CaO=26%)が3重量%、ゼオライト(平均粒径1.5μm)が1重量%、耐火粘土が1重量%、分散剤(ヘキサメタ硫酸ソーダ)が+0.1重量%である(第4頁表1)。
〔2〕刊行物2:「耐火物」No.245、Vol.30、耐火物技術協会(昭和53年6月10日発行)第37〜39頁(同甲第3号証)
〔2a〕「2.ショットキャスト工法の概要
2.1 システム
2.2 特徴
Table1に示すごとく湿式法と乾式法の区別は主として水の添加位置による。
本工法は、キャスタブルの流し込みに使用されるスクイズポンプを使用する新湿式法であり、ノズル部にて硬化剤を添加して吹付けを行うものである。
この方法は、従来の湿式吹付法ほど水分(30%以上)も必要とせず、流し込み法(10〜15%)程度で可能となり、しかもリバウンドロスが少なく、粉じんも発生しない。」(第37頁「2.ショットキャスト工法の概要」)
〔2b〕「混練は、・・・水分約15%を添加、泥状にして、約5分おこない、スクイズ・ポンプにて圧送、ノズルの先端にて硬化剤を添加し、吹付ける。」(第38頁左欄「5.1 施工状況」第1〜3行)
〔2c〕 ショットキャスト工法のシステムに関し、材料と水を混合機で混合し、混合物をスクイズポンプとポンプ・ノズル間の配管でノズルに移送するとともに、添加材料をコンプレッサーの圧搾空気とともにノズル近傍の容器からノズルに供給することが示されている(第37頁右欄「2.1 システム」の図面参照)
〔3〕刊行物3:特開昭63-265870号公報(同甲第4号証)
〔3a〕「粉末耐火骨材に、粒子径20μ以下のアルミナ、シリカ、ジルコニア、ジルコン、炭化珪素、粘土等の内の1つ、もしくは2以上を適宜組合せた超微粒粉末と、解膠剤及び凝集剤を添加混合してなる吹付耐火材料。」(特許請求の範囲)
〔3b〕「本発明においては耐火骨材に、粒子径20μ以下の超微粒粉末に加えて分散機能を有する解膠剤を添加し混合することにより前記超微粒粉末の分散効果を発揮させ、添加水分10%以下での吹付を可能とした。即ち低水分化により吹付けられた耐火物層、つまり施工体の高密度、高強度化が可能となり、その耐用性を著しく向上できた。しかしながら前記解膠剤による分散効果が発現した状態では、耐火材料に流動性があり過ぎ、吹付時のタレ現象が発生し、作業上問題がある。そこで本発明においては吹付け時に添加水分の大幅な増加を生じさせることなく、然も直ちに保型性を発揮する凝集剤を添加し、混合することによって前記問題点の効果的な解決に成功した。」(第2頁右上欄第7〜末行)
〔3c〕「吹付工法には例えば第2図に示すように混練ミキサー6で耐火骨材や超微粒粉末等の混合と同時に水分を添加する湿式のものもある。このような湿式では水分を含む混練された吹付耐火材料は圧送ポンプ7で圧送され、且つコンプレッサー2から供給される圧縮空気で随伴されて吹付ノズル3へ供給される。而してかかる湿式吹付工法においては解膠剤は耐火骨材や超微粒粉末と同時に混練ミキサー6で添加し、凝集剤は吹付直前の吹付ノズル3で添加することが管路5で吹付耐火材が凝集することなどを確実に防止でき効果的である。」(第2頁左下欄第17行〜右下欄第8行)
〔3d〕「解膠剤としては各種アルカリリン酸塩、有機リン酸塩、リグニン、アルキルスルホン酸、カルボン酸系の界面活性剤等を使用することができ、その使用量は耐火骨材100に対して重量比で0.01〜3.0の範囲が好ましい。」(第3頁左上欄第1〜5行)
〔3e〕「凝集剤としては硝酸カリウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸アルミニウム、炭酸ナトリウム等の硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、塩化物等の塩類の他、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム等のリン酸塩、脂肪酸が使用できる。凝集剤の添加量としては耐火骨材100に対して重量比で0.2〜3.0の範囲が好ましい。」(第3頁右上欄第18行〜左下欄第4行)
〔3f〕「実施例2.
本発明の吹付耐火材料を高炉の溶銑樋の中間補修に用い、その耐用性を調査した。・・・吹付耐火材料の組成は第4表に示す通りであり、この吹付耐火材料を第5表に示す条件で吹付施工した。」(第4頁左下欄第1〜9行)
〔3g〕実施例2の吹付材料の組成は、100重量%の耐火骨材(主成分は、Al2O3-SiC-Cで、粒度構成は、7〜1mmが45%、1〜0.074mmが29%、-0.074mmが30%)、3重量%の超微粒粉末(〜15μのアルミナ(Al2O3)と〜15μのシリカ(SiC)を合わせて100%)、0.2重量%の解膠剤(主成分はポリアクリル酸ソーダ)、0.4重量%の凝集剤(主成分は硝酸カリウム)であり(第4頁右下欄第4表)、添加水分量が5〜6重量%である(第5頁左上欄第5表)。
〔3h〕湿式吹付工法の構造図として、混練ミキサー6からの混練物を圧送ポンプ7に供給し、圧送ポンプに接続された管路5の途中にコンプレッサー2からの管を接続し、管路5の先端部に吹付ノズル3を設け、管路5と吹付ノズルの接続部付近に凝集剤吐出機8からの管を接続し、混練物と凝集剤の混合物を圧縮空気とともに吹付ノズル先端から吹き付けることが示されている(第5頁第2図参照)。
〔4〕刊行物4:特公昭57-7350号公報(同甲第5号証)
〔4a〕「泥漿状の不定形耐火物を圧送機によって輸送管で圧送し、該輸送管の先端に設けられた先絞りノズルで圧搾空気と共に、硬化促進剤を添加し吹付けることを特徴とする不定形耐火物の吹付施工法。」(特許請求の範囲)
〔4b〕「本発明の吹付施工法に使用される不定形耐火物は、公知の粘土質(断熱)キャスタブル、ハイアルミナキャスタブル、その他の吹付材等いかなる材質のものでもよく、これらに予め所定水分あるいは必要に応じて保水剤等を添加し、公知のモルタルミキサーあるいは強制撹拌式ミキサーで混練し、泥漿とする。
しかしながらこの場合、先に述べた湿式吹付法に用いられるキャスタブル(水分30重量%以上)程水分は必要でなく、輸送管で輸送できる程度(水分10〜20重量%)で充分である。」(第2頁右欄第17〜27行)
〔4c〕「圧送に使用する圧送機は、比較的水分の少ない泥漿を圧送するのに適する公知のスクイズポンプ9またはクランプポンプ等が好ましく、・・・」(第2頁右欄第33〜36行)
〔4d〕「本発明の吹付施工法に使用される硬化促進剤は使用されるキャスタブルあるいは吹付材等に予め添加されている硬化剤の種類によって決定される。
即ち、硬化剤として周知の水硬性のアルミナセメントが添加されているキャスタブルには、硬化促進剤としてNaOH、Na2SiO3、Na2CO3 、KOH、・・・の中からまた硬化剤として、珪酸ソーダが添加されている吹付材には、硬化促進剤として、Na2SiF6、Al2O3・3P2O5・6H2O、CO2ガス等の中から、さらに硬化剤として、公知のリン酸塩が添加されている塩基性耐火物には硬化促進剤(「促進材」は、「促進剤」の誤記と認める)として、リン酸アルミニウム、リン酸アンモン等の中から、いずれの場合でも、それぞれ一種または二種以上を適宜選択して使用することができる・・・
尚、硬化促進剤の添加量は、第1表に示すごとく少なすぎると硬化時間が長くなり、いわゆるたれ下り等が発生するため、施工性が低下し、多すぎると硬化時間が短かすぎて、いわゆるノズルづまりをおこしたり、施工体の強度が低下するので、アルミナセメントを硬化剤とするキャスタブルの場合、0.1〜2.0重量%、また珪酸ソーダを硬化剤とする吹付材の場合、0.5〜3.0重量%が最適である。」(第3頁右欄第1〜29行)
〔4e〕「予め所要の粒度、水分、および粘性に調整された泥漿状のキャスタブル2を、樋によってスクイズポンプ9の材料ホッパー10に投入し、作業者がいずれも可撓性の材料ホース1、硬化促進剤ホース11およびエアーホース12をそれぞれ接続部に連設した、先絞りノズル7を施工場所に位置合せしたのち、合図によって電動モーター19のスイッチ(図示せず)を押し該スクイズポンプ9を作動せしめ、該泥漿状のキャスタブル2を圧送する。該キャスタブル2が、先絞りノズル7の先端部5から溢れ出すと同時に、バルブ13を操作し、予め所要濃度に調整されタンク14に貯蔵された硬化促進剤懸濁液15を流量計18を経由して流出せしめ、さらに、エアーバルブ16を操作し、減圧弁17で所定圧力に調節した圧搾空気を添加管6より、先絞りノズル7の先端で添加混入せしめ、泥漿状のキャスタブル2を所定の施工厚みになるまで噴射し吹付ける。」(第5頁左欄第3〜20行)

3-4.当審の判断
(1)取消理由1について
(1-1)本件発明1について
先願明細書の上記〔0a〕には、「粒径10mm以下の耐火性骨材67〜97.5重量%と、粒径10μm以下の耐火性超微粉2〜25重量%と、アルミナセメント0.5〜8重量%とからなる耐火組成物100重量%に対して、分散剤0.01〜1.0重量%を外掛けで添加してなることを特徴とするローセメントキャスタブルを予めミキサーで水と混練して流し込みの作業性にしたものを圧送ポンプで吹付けノズルに輸送し、前記吹付けノズルで圧搾空気とともに、珪酸アルカリ溶液[SiO2/R2Oモル比が2.0〜3.3で(R2Oはアルカリ金属酸化物)、15℃でのBe(ボーメ度)換算比重が40以上]を保形性付与剤として前記ローセメントキャスタブル粉体100重量%に対して外掛けで0.1〜1.5重量%添加し、吹付け施工することを特徴とする湿式吹付け施工法。」という「珪酸アルカリ溶液の保形性付与剤を用いる湿式吹付け施工法」が記載されている。
また、先願明細書の上記〔0g〕には、該湿式吹付け施工法に用いる保形性付与剤について、「珪酸アルカリ溶液は保形性付与剤として用いるが、保形性付与剤は吹付け施工した瞬間に上記構成のローセメントキャスタブルの流動性を消失させて保形性を持たせる作用を有する。珪酸アルカリ溶液は、(1)吹付け材の接着性が良好で、(2)溶鋼品質への悪影響がなく(リンやホウ素等の化合物は好ましくない)、また(3)液体として入手しやすい等の点で、他の保形性付与剤に比べて優れている。」と記載されており、「珪酸アルカリ溶液の保形性付与剤を用いる湿式吹付け施工法」の開発過程として、「その他の保形性付与剤」を用いる「湿式吹付け施工法」も研究され、性能だけでなく入手しやすさ等も含めた点で優れた「珪酸アルカリ溶液の保形性付与剤を用いる湿式吹付け施工法」が開発されたことが明らかである。してみれば、先願明細書には、「珪酸アルカリ溶液の保形性付与剤を用いた湿式吹付け施工法」の前提となった「珪酸アルカリ以外のその他の保形性付与剤を用いる湿式吹付け施工法」も記載されていると云うことができ、しかも、これらの湿式吹付け施工法は、性能の比較がなされていることからみて、同様の吹付け施工条件で比較されたと云えるから、先願明細書には、「粒径10mm以下の耐火性骨材67〜97.5重量%と、粒径10μm以下の耐火性超微粉2〜25重量%と、アルミナセメント0.5〜8重量%とからなる耐火組成物100重量%に対して、分散剤0.01〜1.0重量%を外掛けで添加してなることを特徴とするローセメントキャスタブルを予めミキサーで水と混練して流し込みの作業性にしたものを圧送ポンプで吹付けノズルに輸送し、前記吹付けノズルで圧搾空気とともに、珪酸アルカリ以外のその他の保形性付与剤を前記ローセメントキャスタブル粉体100重量%に対して外掛けで0.1〜1.5重量%添加し、吹付け施工することを特徴とする湿式吹付け施工法。」という「珪酸アルカリ溶液以外のその他の保形性付与剤を用いる湿式吹付け施工法」も記載されていると云える。
そして、該耐火性骨材について、上記〔0c〕には、「本発明に使用する耐火性骨材は、電融アルミナ、焼結アルミナ、・・・、炭化珪素、黒鉛、ピッチ等からなる群から選ばれた少なくとも1種であり、必要に応じて2種以上を併用することができる。」と記載され、耐火性骨材として、「電融アルミナ、焼結アルミナ等のアルミナ骨材、炭化珪素骨材、黒鉛骨材、ピッチ骨材」を用いる場合も包含していると云えるし、また、混練する水の量について、上記〔0e〕には、「混練水量は通常の流し込み可能な程度に設定する。添加水分量は粒度構成や耐火性骨材の気孔率によって大きな影響を受けるが、概ねローセメントキャスタブル100重量%に対して外掛けで5〜8重量%である。」と記載され、混練水量は、ローセメントキャスタブル100重量%に対して外掛けで5〜8重量%であると云えるし、さらに、「ローセメントキャスタブルを予めミキサーで水と混練して流し込みの作業性にしたものを圧送ポンプで吹付けノズルに輸送」する際に、「圧送配管」を用いることは通常のことであるから、耐火性骨材として、「アルミナ骨材、炭化珪素骨材、黒鉛骨材、ピッチ骨材」を用いる場合について、これらの事項を整理すると、先願明細書には、
「アルミナ骨材、炭化珪素骨材、黒鉛骨材、ピッチ骨材を含む粒径10mm以下の耐火性骨材67〜97.5重量%と、粒径10μm以下の耐火性超微粉2〜25重量%と、アルミナセメント0.5〜8重量%とからなる耐火組成物100重量%に対して、分散剤0.01〜1.0重量%を外掛けで添加してなることを特徴とするローセメントキャスタブルを予めミキサーでローセメントキャスタブル100重量%に対して外掛けで5〜8重量%水と混練して流し込みの作業性にした混練物を圧送ポンプと圧送配管で吹付けノズルに輸送し、前記吹付けノズルで圧搾空気とともに、珪酸アルカリ溶液の保形性付与剤を前記ローセメントキャスタブル粉体100重量%に対して外掛けで0.1〜1.5重量%添加し、吹付け施工することを特徴とする湿式吹付け施工法。」という「珪酸アルカリ溶液の保形性付与剤を用いる湿式吹付け施工法」の発明(以下、「先願クレーム発明」と、
「アルミナ骨材、炭化珪素骨材、黒鉛骨材、ピッチ骨材を含む粒径10mm以下の耐火性骨材67〜97.5重量%と、粒径10μm以下の耐火性超微粉2〜25重量%と、アルミナセメント0.5〜8重量%とからなる耐火組成物100重量%に対して、分散剤0.01〜1.0重量%を外掛けで添加してなることを特徴とするローセメントキャスタブルを予めミキサーでローセメントキャスタブル100重量%に対して外掛けで5〜8重量%水と混練して流し込みの作業性にした混練物を圧送ポンプと圧送配管で吹付けノズルに輸送し、前記吹付けノズルで圧搾空気とともに、珪酸アルカリ溶液の保形性付与剤又はその他の保形性付与剤を前記ローセメントキャスタブル粉体100重量%に対して外掛けで0.1〜1.5重量%添加し、吹付け施工することを特徴とする湿式吹付け施工法。」という「珪酸アルカリ溶液以外のその他の保形性付与剤を用いる湿式吹付け施工法」の発明(以下、「先願発明」という)が記載されていると認められる。
本件発明1は、いわゆる「除くクレーム」により「珪酸アルカリ溶液」がその上位概念の急結剤から除かれ、前記先願クレーム発明との同一性を回避しようとするものであるから、先願発明と対比すると、先願発明における「アルミナ骨材」、「炭化珪素骨材」、「保形性付与剤」は、それぞれ、本件発明1における「アルミナ質骨材」、「炭化ケイ素質骨材」、「急結剤」に相当し、また、先願発明における「耐火性超微粉」、「アルミナセメント」は、本件明細書の「本発明において使用する耐火性粉末としては、アルミナセメント、・・・無定形シリカから選ばれる1種以上であって平均粒径が30μ以下のものが好ましい。」(段落【0032】)という記載からみて、「耐火性粉末」と云えるし、さらに、先願発明における「混練物」、「ローセメントキャスタブル」は、それぞれ、本件発明1における「坏土」、「耐火組成物」に対応するから、両者は、
「アルミナ質骨材と炭化ケイ素質骨材とを含む耐火性骨材と耐火性粉末と分散剤とからなる耐火組成物であって、アルミナ質骨材と炭化ケイ素質骨材を含有する耐火組成物に、該耐火組成物100重量部に対して5〜8重量部の水を加えて混練した、圧送ポンプと圧送配管によって圧送できる坏土を所定量の珪酸アルカリ以外の急結剤とともに吹付ける吹付け施工方法。」である点で一致するが、次の点で一応の相違がみられる。
相違点:
(イ)本件発明1は、耐火組成物におけるアルミナ質骨材と炭化ケイ素質骨材の量が、それぞれ、「7〜70重量%」、「10〜45重量%」であるのに対し、先願発明は、それらの量が明りょうでない点。
(ロ)本件発明1は、坏土が「自己流動性を有する」のに対し、先願発明は、坏土が「自己流動性を有する」か否か明りょうでない点。

以下、これらの相違点について検討する。
(i)相違点(イ)について
先願明細書の上記〔0h〕には、実施例1の吹付施工法における耐火性骨材として、「電融アルミナ(5mm超)17重量%、電融アルミナ(5mm下)35重量%、電融アルミナ(1mm下)16重量%、炭化珪素18重量%、ピッチ2重量%」を用いる旨が記載されており、このような記載からみれば、「アルミナ質骨材」の量を「68重量%(=17重量%+35重量%+16重量%)」とし、「炭化ケイ素質骨材」の量を「18重量%」とすることが実施例1として記載されていると云える。この実施例1は、前記先願クレーム発明の実施例であるが、前示のとおり、先願クレーム発明と先願発明は、性能の比較がなされていることからみて、同様の吹付け施工条件で比較されたと云うことができ、この実施例1の吹付け施工条件でそのような比較を行うことも先願明細書に記載された範囲内の事項と云えるから、先願発明は、「アルミナ質骨材」の量を「68重量%」とし、「炭化ケイ素質骨材」の量を「18重量%」としたものも包含していると認められる。
したがって、相違点(イ)は、実質的な相違とは云えない。

(ii)相違点(ロ)について
本件発明1における「自己流動性」は、「圧送ポンプと圧送配管によって圧送できる」という「坏土」の属性と認められるところ、先願発明においても、坏土(混練物)は、圧送ポンプと圧送配管によって圧送できるから、先願発明における「坏土(混練物)」も「自己流動性」を有すると認められる。
したがって、相違点(ロ)は、実質的な相違とは云えない。

(iii)本件発明1についてのまとめ
以上の検討のとおり、相違点(イ)、(ロ)は、実質的な相違とは云えないから、本件発明1は、先願発明と同一と云うべきである。

(1-2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用し、さらに、「前記坏土が、耐火性骨材と耐火性粉末の合量100重量部に対して0.02〜1重量部の分散剤を含有する」という特定事項を付加して限定したものである。
これに対し、先願発明では、「耐火組成物」(本件発明における「耐火性骨材及び耐火性粉末」に相当するもの)100重量%に対して分散剤0.01〜1.0重量%を外掛けで添加しており、本件発明2と先願発明は、前記特定事項の点で実質的に相違するとは云えないから、本件発明2は、本件発明1と同様に、先願発明と同一と云うべきである。

(1-3)本件発明3について
本件発明3は、本件発明1又は本件発明2を引用し、さらに、「耐火性骨材の一部としてカーボン質骨材を、耐火性骨材と耐火性粉末の合量中0.1〜10重量%含有する耐火性組成物を使用する」という特定事項を付加して限定したものである。
これに対し、先願発明における耐火性骨材としての「黒鉛骨材」、「ピッチ骨材」は、本件明細書の「高炉樋用などの骨材としてはカーボン質が有用である。・・・カーボンとしては、黒鉛が最適であるが、粉末ピッチ等も好ましく使用可能である。」(段落【0029】)という記載からみて、本件発明3における「カーボン質骨材」に相当するものと認められる。しかも、先願明細書の上記〔0h〕には、実施例1として、耐火性骨材(合計88重量%)及び耐火性粉末{耐火性超微粉(合計10重量%)とアルミナセメント(2重量部)の合計12重量%}の合量100重量%のうち、耐火性骨材として、ピッチ2重量%を用いる旨が記載されている。
してみれば、本件発明3と先願発明は、前記特定事項の点で実質的に相違するとは云えないから、本件発明3は、本件発明1乃至本件発明2と同様に、先願発明と同一と云うべきである。

(1-4)本件発明4について
本件発明4は、本件発明1乃至3を引用し、さらに、「前記耐火組成物中、耐火性骨材が74〜93%、耐火性粉末が26〜7%である」という特定事項を付加して限定したものである。
これに対し、先願発明は、「耐火性骨材67〜97.5重量%」と、「耐火性粉末」として、「耐火性超微粉2〜25重量%」及び「アルミナセメント0.5〜8重量%」を合計で33〜2.5重量%含むものである。
してみれば、本件発明4と先願発明は、前記特定事項の点で実質的に相違するとは云えないから、本件発明4は、本件発明1乃至3と同様に、先願発明と同一と云うべきである。

(1-5)本件発明5について
本件発明5は、本件発明1乃至4を引用し、さらに、「耐火性粉末としてアルミナセメント、ヒュームドシリカ粉末、アルミナ粉末の1以上を使用する」ことを限定したものである。
これに対し、先願発明は、「耐火性粉末」として、「アルミナセメント」を含むとともに「超微粉アルミナ」を含み得るから(上記〔0d〕参照)、本件発明5は、本件発明1乃至4と同様に、先願発明と同一と云うべきである。

(1-6)本件発明6について
本件発明6は、本件発明1乃至5を引用し、さらに、「前記自己流動性を有する坏土を、圧送ポンプと圧送配管によって施工現場に圧送し、圧送配管の下流部に設けた圧縮空気注入口および急結剤注入口からそれぞれ圧縮空気と所要量の急結剤を坏土中に注入し、注入した圧縮空気とともに急結剤が混入した坏土をノズル配管によってその先端に接続した吹付けノズルに送り、吹付けノズルから坏土を施工箇所に吹付ける」という特定事項を付加して限定したものである。
これに対し、吹付ける坏土を混練場所から「圧送ポンプと圧送配管によって施工現場に圧送」することは、当然のことである。また、先願発明は、坏土(混練物)を圧搾空気とともに、急結剤(保形性付与剤)を添加し、吹付け施工するのであり、しかも、坏土の吹付けにノズルを用いることは通常のことであるから、『圧縮空気注入口および急結剤注入口からそれぞれ圧縮空気と所要量の急結剤を坏土中に注入し、注入した圧縮空気とともに急結剤が混入した坏土を吹付けノズルから施工箇所に吹付ける』点で、本件発明6と先願発明とが格別に相違するとは認められない。さらに、刊行物3の上記〔3h〕には、湿式吹付工法の構造図として、混練ミキサー6からの混練物を圧送ポンプ7に供給し、圧送ポンプに接続された管路5の途中にコンプレッサー2からの管を接続し(その管の接続口は、本件発明6における「圧縮空気注入口」に相当する)、管路5の先端部に吹付ノズル3を設け、管路5と吹付ノズルの接続部付近に凝集剤吐出機8からの管を接続し(その管の接続口は、本件発明6における「急結剤注入口」に相当する)、混練物と凝集剤(本件発明6における「急結剤」に相当するもの)の混合物を圧縮空気とともに吹付ノズル先端から吹付けることが示されており、『圧縮空気注入口及び急結剤注入口を圧送配管の下流部に設けること』、及び、『急結剤が混入した坏土を吹付けノズル先端から吹付けること』が本件特許の出願前において周知の事項と云える。そして、このような周知事項を勘案すると、坏土中への圧縮空気と急結剤の注入をそれぞれ「圧送配管の下流部に設けた圧縮空気注入口および急結剤注入口」から行うこと、及び、「急結剤が混入した坏土をノズル配管によってその先端に接続した吹付けノズルに送」ることは、設計上の微差であって実質的な相違点とは云えない。
したがって、本件発明6と先願発明が前記特定事項の点で実質的に相違するとは云えないから、本件発明6は、本件発明1乃至5と同様に、先願発明と同一と云うべきである。

(1-7)本件発明7について
本件発明7は、本件発明6を引用し、さらに、「急結剤注入口を圧縮空気注入口の下流または圧縮空気注入口と同位置に設け、坏土に注入する圧縮空気の一部または全部を使用して急結剤を注入する」という特定事項を付加して限定したものである。
これに対し、『急結剤注入口を圧縮空気注入口の下流または圧縮空気注入口と同位置に設け、坏土に注入する圧縮空気の全部を使用して急結剤を注入する』ことは、刊行物2の上記〔2b〕、〔2c〕にみられるように本件特許の出願前において周知の事項と云える。そして、このような周知事項を勘案すると、前記特定事項は、設計上の微差であって実質的な相違点とは云えない。
したがって、本件発明7は、本件発明6と同様に、先願発明と同一と云うべきである。

(1-8)本件発明8について
本件発明8は、本件発明1乃至7を引用し、さらに、「急結剤を耐火性骨材と耐火性粉末の合量100重量部に対し、0.05〜3重量部注入する」ことを限定したものである。
これに対し、先願発明は、『保形性付与剤を前記ローセメントキャスタブル粉体(すなわち、耐火性骨材、耐火性粉末、及び、分散剤)100重量%に対して外掛けで0.1〜1.5重量%添加』するものであり、急結剤(保形性付与剤)を耐火性骨材と耐火性粉末の合量100重量部に対し、0.1〜1.5重量部〔=(急結剤0.1〜1.5重量%)×{耐火性骨材及び耐火性粉末100重量%+(分散剤0.01〜1.0重量%)}/100〕添加するものと云えるから、本件発明8は、本件発明1乃至7と同様に、先願発明と同一と云うべきである。

(1-9)本件発明9について
本件発明9は、本件発明1乃至8を引用し、さらに、「前記自己流動性を有する坏土を高炉樋耐火ライニング用として吹付ける」ことを限定したものである。
これに対し、先願発明は、「取鍋、タンディッシュ等の溶湯金属容器及び高炉出銑樋等の内張り材として使用されるローセメントキャスタブルの湿式吹付け施工法に関する」ものであり(上記)〔0b〕参照)、高炉出銑樋(すなわち、高炉樋)の耐火性の内張り材(すなわち、ライニング)用として吹付けるものと云えるから、本件発明9は、本件発明1乃至8と同様に、先願発明と同一と云うべきである。

(1-10)取消理由1のまとめ
本件発明1乃至9は、上記(1-1)〜(1-9)のとおり、先願発明と同一と云うべきである。しかも、本件発明1乃至9の発明者が上記先願に係る発明の発明者と同一であるとも、また、本件の出願の時に、その出願人が上記先願の出願人と同一であるとも認められないから、本件発明1乃至9に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものである。

(2)取消理由2について
(2-1)本件発明1について
刊行物1の上記〔1a〕の請求項2には、「アルミナ骨材を30〜70重量%と炭化珪素骨材を5〜60重量%含む耐火材料に、粒径20μm以下のゼオライトを0.01〜3重量%と、2μm以下の超微粉シリカを0.5〜5重量%と、CaO+Al2O3の合量が99重量%以上のアルミナセメントをCaO換算で0.5〜2重量%とを含有せしめてなるアルミナ-炭化珪素耐火物を吹付け施工後、・・・アルミナ-炭化珪素耐火物の施工方法。」と記載され、また、上記〔1e〕には、「不定形耐火物における一般的な分散剤や作業性を調整する添加剤についても、耐食性及び耐火性が低下しない範囲で使用できる。」と記載され、さらに、吹付用の耐火物に水を加え混合した混合物を吹付けることは通常のことであるから、「分散剤」を使用する場合について、これらの事項を整理すると、刊行物1には、
「アルミナ骨材を30〜70重量%と炭化珪素骨材を5〜60重量%含む耐火材料に、粒径20μm以下のゼオライトを0.01〜3重量%と、2μm以下の超微粉シリカを0.5〜5重量%と、CaO+Al2O3の合量が99重量%以上のアルミナセメントをCaO換算で0.5〜2重量%と、分散剤とを含有せしめてなるアルミナ-炭化珪素耐火物に水を加え混合した混合物を吹付ける吹付施工方法。」という発明(以下、「刊行物1発明」という)が記載されていると認められる。

本件発明1と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明における「アルミナ骨材」、「炭化珪素骨材」は、それぞれ、本件発明1における「アルミナ質骨材」、「炭化珪素質骨材」に相当し、また、「粒径20μm以下のゼオライト」、「2μm以下の超微粉シリカ」、及び、「CaO+Al2O3の合量が99重量%以上のアルミナセメント」は、本件明細書の「本発明において使用する耐火性粉末としては、アルミナセメント、・・・無定形シリカから選ばれる1種以上であって平均粒径が30μ以下のものが好ましい。」(段落【0032】)という記載からみて、「耐火性粉末」と云えるし、さらに、刊行物1発明における「混合物」は、本件発明1における「坏土」に対応するから、両者は、
「アルミナ質骨材と炭化ケイ素質骨材とを含む耐火性骨材と耐火性粉末と分散剤とからなる耐火組成物であって、アルミナ質骨材を30〜70重量%と炭化ケイ素質骨材を10〜45重量%それぞれ含有する耐火組成物に、該耐火組成物100重量部に対して所定量の水を加えて混合した坏土を吹付ける吹付け施工方法。」である点で一致するが、次の点で相違する。
相違点:
耐火組成物に所定量の水を加えて混合した坏土を吹付ける際に、本件発明1は、「耐火組成物100重量部に対して12重量部以下の水を加えて混練した、圧送ポンプと圧送配管によって圧送できる自己流動性を有する坏土を所定量の急結剤(珪酸アルカリ溶液を除く)とともに吹付ける」のに対し、刊行物1発明は、それらが明りょうでない点。

以下、この相違点について検討する。
刊行物2の上記〔2a〕には、ショットキャスト工法に関し、「本工法は、キャスタブルの流し込みに使用されるスクイズポンプを使用する新湿式法であり、ノズル部にて硬化剤を添加して吹付けを行うものである。この方法は、従来の湿式吹付法ほど水分(30%以上)も必要とせず、流し込み法(10〜15%)程度で可能となり、」と記載され、また、上記〔2b〕には、「混練は、・・・水分約15%を添加、泥状にして、約5分おこない、スクイズ・ポンプにて圧送、ノズルの先端にて硬化剤を添加し、吹付ける。」と記載され、さらに、ショットキャストのシステムに関し、上記〔2c〕には、材料と水を混合機で混合し、混合物をスクイズポンプとポンプ・ノズル間の配管でノズルに移送するとともに、添加材料をコンプレッサーの圧搾空気とともにノズル近傍の容器からノズルに供給することが示されている。そして、これらを整理するとともに、「スクイズポンプ」、「硬化剤」がそれぞれ本件発明1における「圧送ポンプ」、「急結剤」に相当することを勘案すると、刊行物2には、「吹付材料に10〜15%程度の水を加えて混練した混練物を圧送ポンプと圧送配管でノズルに圧送し、圧搾空気及び所定量の急結剤とともに吹付ける吹付け施工方法」が記載されていると云える。
刊行物3の上記〔3d〕には、湿式吹付工法に関し、「混練ミキサー6で耐火骨材や超微粒粉末等の混合と同時に水分を添加する湿式のものもある。このような湿式では水分を含む混練された吹付耐火材料は圧送ポンプ7で圧送され、且つコンプレッサー2から供給される圧縮空気で随伴されて吹付ノズル3へ供給される。」と記載され、また、上記〔3g〕には、実施例として、添加水分量を5〜6重量%とすることが記載され、さらに、上記〔3h〕には、湿式吹付工法に関し、混練ミキサー6からの混練物を圧送ポンプ7に供給し、圧送ポンプに接続された管路5の途中にコンプレッサー2からの管を接続し、管路5の先端部に吹付ノズル3を設け、管路5と吹付ノズルの接続部付近に凝集剤吐出機8からの管を接続し、混練物と凝集剤の混合物を圧縮空気とともに吹付ノズル先端から吹付けることが示されている。そして、これらを併せ考慮するとともに、「凝集剤」、「管路」がそれぞれ本件発明1における「急結剤」、「圧送配管」に相当することを勘案すると、刊行物3には、『添加水分量を5〜6重量%とした混練物を圧送ポンプと圧送配管で圧送し、圧縮空気及び所定量の急結剤とともに吹付ける吹付け施工方法』が記載されていると云える。
刊行物4の上記〔4a〕には、不定形耐火物の吹付施工法に関し、「泥漿状の不定形耐火物を圧送機によって輸送管で圧送し、該輸送管の先端に設けられた先絞りノズルで圧搾空気とともに、硬化促進剤を添加し吹付ける」と記載され、また、上記〔4b〕には、不定形耐火物の水分について、「輸送管で輸送できる程度(水分10〜20重量%)で充分である。」と記載され、さらに、上記〔4c〕には、圧送機について、「スクイズポンプ9またはクランプポンプ等が好ましく」と記載されているから、これらの記載を整理するとともに、「圧送機(乃至スクイズポンプ)」、「硬化促進剤」、「輸送管」がそれぞれ本件発明1における「圧送ポンプ」、「急結剤」、「圧送配管」に相当することを勘案すると、刊行物4には、『水分が10〜20重量%の泥漿状の不定形耐火物を圧送ポンプと圧送配管で圧送し、圧搾空気及び所定量の急結剤とともに吹付ける吹付け施工方法』が記載されていると云える。
このような刊行物2〜4の記載からみて、耐火組成物に所定の水を加えて混合した坏土を吹付ける際に、「耐火組成物100重量部に対して12重量部以下の範囲内の水を加えて混練した、圧送ポンプと圧送配管によって圧送できる坏土を圧縮空気及び所定量の急結剤とともに吹付ける」ことは、本件特許の出願前において周知の技術と云える。しかも、本件発明1における「自己流動性」は、「圧送ポンプと圧送配管によって圧送できる」という「坏土」の属性と認められるところ、刊行物2〜4に記載されたものにおいても、坏土(混練物)は、圧送ポンプと圧送配管によって圧送できるから、刊行物2〜4記載の前記周知技術における「坏土(混練物)」も「自己流動性」を有すると認められる。さらに、急結剤について、刊行物2には、その材料が特定されておらず、また、刊行物3の上記〔3e〕、刊行物4の〔4d〕には、それぞれ、「凝集剤としては硝酸カリウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸アルミニウム、炭酸ナトリウム等の硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、塩化物等の塩類の他、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム等のリン酸塩、脂肪酸が使用できる。」、「硬化促進剤は使用されるキャスタブルあるいは吹付材等に予め添加されている硬化剤の種類によって決定される。即ち、硬化剤として周知の水硬性のアルミナセメントが添加されているキャスタブルには、硬化促進剤としてNaOH、Na2SiO3、Na2CO3 、KOH、・・・の中からまた硬化剤として、珪酸ソーダが添加されている吹付材には、硬化促進剤として、Na2SiF6、Al2O3・3P2O5・6H2O、CO2ガス等の中から、さらに硬化剤として、公知のリン酸塩が添加されている塩基性耐火物には硬化促進剤として、リン酸アルミニウム、リン酸アンモン等の中から、いずれの場合でも、それぞれ一種または二種以上を適宜選択して使用することができる」と記載され、珪酸アルカリ溶液以外のものを用いることが記載されていると云えるから、急結剤として、「珪酸アルカリ溶液を除く」ものを用いることも、前記周知技術の範囲内の事項と云える。
そして、このような耐火物の吹付施工に関する周知技術を刊行物1発明の耐火物の吹付施工方法に適用して本件発明1を構成することは、耐火物の吹付けという技術分野の共通性からみて、当業者が容易に想到し得たものと云うべきである。
以上の相違点についての検討からみて、本件発明1は、刊行物1〜4に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2-2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用し、さらに、「前記坏土が、耐火性骨材と耐火性粉末の合量100重量部に対して0.02〜1重量部の分散剤を含有する」という特定事項を付加して限定したものである。
これに対し、刊行物1発明は、坏土が分散剤を含有するものであり、しかも、実施例1として、耐火性骨材85重量%、耐火性粉末14重量%に対し、分散剤(ヘキサメタ硫酸ソーダ)を+0.1重量%とする旨が記載されている(上記〔1f〕、後記(4)参照)。
してみれば、本件発明2と刊行物1発明は、前記特定事項の点で実質的に相違するとは云えないから、本件発明2は、本件発明1と同様に、刊行物1〜4に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2-3)本件発明3について
本件発明3は、本件発明1又は本件発明2を引用し、さらに、「耐火性骨材の一部としてカーボン質骨材を、耐火性骨材と耐火性粉末の合量中0.1〜10重量%含有する耐火性組成物を使用する」ことを限定したものである。
これに対し、刊行物1の上記〔1d〕には、「更に、耐火性を損なわない範囲で耐火性粘土,・・・,炭素等、従来の不定形耐火物に使用される骨材が任意に使用できる。」と記載され、「カーボン質骨材」に相当する「炭素」を骨材として使用すること、及び、耐火性を損なわない範囲の使用量とすることが記載されていると云えるから、刊行物1発明において、耐火性骨材と耐火性粉末の合量中0.1〜10重量%の範囲内の量の炭素(カーボン質骨材)を耐火性骨材の一部として使用し本件発明3を構成することは、当業者が容易に想到し得たものと云うべきである。
よって、本件発明3は、本件発明1乃至本件発明2と同様に、刊行物1〜4に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2-4)本件発明4について
本件発明4は、本件発明1乃至3を引用し、さらに、「前記耐火組成物中、耐火性骨材が74〜93%、耐火性粉末が26〜7%である」という特定事項を付加して限定したものである。
これに対し、刊行物1の上記〔1f〕には、実施例として、電融アルミナ5-1mmが40重量%、電融アルミナ1-0mmが10重量%、炭化珪素5-1mmが10重量%、炭化珪素1-0mmが25重量%、超微粉シリカ(平均粒径0.5μm)が3重量%、アルミナ超微粉(平均粒径2.5μm)が6重量%、アルミナセメント(CaO=26%)が3重量%、ゼオライト(平均粒径1.5μm)が1重量%、耐火粘土が1重量%、分散剤(ヘキサメタ硫酸ソーダ)が+0.1重量%のものを用いる旨が記載され、「耐火性骨材」を「85%(=40%+10%+10%+25%)」、「耐火性粉末」を「14%(=3%+6%+3%+1%+1%)」とすることが記載されていると云える。
してみると、本件発明4と刊行物1発明は、前記特定事項の点で実質的に相違するとは云えないから、本件発明4は、本件発明1乃至3と同様に、刊行物1〜4に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2-5)本件発明5について
本件発明5は、本件発明1乃至4を引用し、さらに、「耐火性粉末としてアルミナセメント、ヒュームドシリカ粉末、アルミナ粉末の1以上を使用する」という特定事項を付加して限定したものである。
これに対し、刊行物1発明は、前示のとおり、「耐火性粉末」として「超微粉シリカ」及び「アルミナセメント」を使用するものであり、本件発明5と刊行物1発明は、前記特定事項の点で実質的に相違するとは云えないから、本件発明5は、本件発明1乃至4と同様に、刊行物1〜4に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2-6)本件発明6について
本件発明6は、本件発明1乃至5を引用し、さらに、「前記自己流動性を有する坏土を、圧送ポンプと圧送配管によって施工現場に圧送し、圧送配管の下流部に設けた圧縮空気注入口および急結剤注入口からそれぞれ圧縮空気と所要量の急結剤を坏土中に注入し、注入した圧縮空気とともに急結剤が混入した坏土をノズル配管によってその先端に接続した吹付けノズルに送り、吹付けノズルから坏土を施工箇所に吹付ける」という特定事項を付加して限定したものである。
これに対し、吹き付ける坏土を、混練場所から「圧送ポンプと圧送配管によって施工現場に圧送」することは、当然のことである。
また、刊行物2〜4に記載された前述の周知技術は、耐火組成物に所定の水を加えて混合した坏土を吹付ける際に、「耐火組成物100重量部に対して12重量部以下の範囲内の水を加えて混練した、圧送ポンプと圧送配管によって圧送できる坏土を圧縮空気及び所定量の急結剤とともに吹付ける」ものであるから、「圧縮空気注入口および急結剤注入口からそれぞれ圧縮空気と所要量の急結剤を坏土中に注入し、注入した圧縮空気とともに急結剤が混入した坏土を吹付けノズルから施工箇所に吹付ける」点で、本件発明6と前記周知技術とが格別に相違するとは認められない。
さらに、刊行物3の上記〔3h〕には、湿式吹付工法の構造図として、混練ミキサー6からの混練物を圧送ポンプ7に供給し、圧送ポンプに接続された管路5の途中にコンプレッサー2からの管を接続し(その管の接続口は、本件発明6における「圧縮空気注入口」に相当する)、管路5の先端部に吹付ノズル3を設け、管路5と吹付ノズルの接続部付近に凝集剤吐出機8からの管を接続し(その管の接続口は、本件発明6における「急結剤注入口」に相当する)、混練物と凝集剤(本件発明6における「急結剤」に相当するもの)の混合物を圧縮空気とともに吹付ノズル先端から吹き付けることが示されており、『圧縮空気注入口及び急結剤注入口を圧送配管の下流部に設けること』、及び、『急結剤が混入した坏土を吹付けノズル先端から吹付けること』も本件特許の出願前において周知の事項と云える。
してみれば、前記特定事項は、刊行物2〜4に記載された発明乃至周知技術に基づき当業者が容易に想到し得たものと云うべきであるから、本件発明6は、本件発明1乃至5と同様に、刊行物1〜4に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2-7)本件発明7について
本件発明7は、本件発明6を引用し、さらに、「急結剤注入口を圧縮空気注入口の下流または圧縮空気注入口と同位置に設け、坏土に注入する圧縮空気の一部または全部を使用して急結剤を注入する」ことを限定したものである。
これに対し、『急結剤注入口を圧縮空気注入口の下流または圧縮空気注入口と同位置に設け、坏土に注入する圧縮空気の全部を使用して急結剤を注入する』ことは、刊行物2の上記〔2b〕、〔2c〕にみられるように本件特許の出願前において公知乃至周知の事項と云えるから、本件発明7は、本件発明6と同様に、刊行物1〜4に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2-8)本件発明8について
本件発明8は、本件発明1乃至7を引用し、さらに、「急結剤を耐火性骨材と耐火性粉末の合量100重量部に対し、0.05〜3重量部注入する」ことを限定したものである。
一方、刊行物3の上記〔3e〕には、「凝集剤」(本件発明における「急結剤」に相当するもの)の添加量について「耐火骨材100に対して重量比で0.2〜3.0の範囲が好ましい。」と記載され、上記〔3g〕には、実施例2の吹付材料の組成として、100重量%の耐火骨材、3重量%の超微粒粉末、0.2重量%の解膠剤、0.4重量%の凝集剤(急結剤)を用いる旨が記載されている。
また、刊行物4の上記〔4d〕には、「硬化促進剤」(本件発明における「急結剤」に相当するもの)の添加量について、「少なすぎると硬化時間が長くなり、いわゆるたれ下り等が発生するため、施工性が低下し、多すぎると硬化時間が短かすぎて、いわゆるノズルづまりをおこしたり、施工体の強度が低下するので、アルミナセメントを硬化剤とするキャスタブルの場合、0.1〜2.0重量%、また珪酸ソーダを硬化剤とする吹付材の場合、0.5〜3.0重量%が最適である。」と記載されている。
このような刊行物3,4の記載からみれば、急結剤の注入量を「耐火性骨材と耐火性粉末の合量100重量部に対し、0.05〜3重量部」の範囲内の値とすることは、当業者が容易に想到し得たことというべきであるから、本件発明8は、本件発明1乃至7と同様に、刊行物1〜4に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2-9)本件発明9について
本件発明9は、本件発明1乃至8を引用し、さらに、「前記自己流動性を有する坏土を高炉樋耐火ライニング用として吹付ける」という特定事項を付加して限定したものである。
これに対し、刊行物1の上記〔1b〕には、「本発明は、・・・、高炉樋、・・・等、窯炉等の補修用の不定形吹付け耐火物として好適な耐火物と、その耐火物を使用する施工方法に関する。」と記載されおり、刊行物1発明は、高炉樋の耐火物(すなわち、耐火ライニング)を補修する吹付施工法を包含していると云える。
してみれば、本件発明9と刊行物1発明は、前記特定事項の点で実質的に相違するとは云えないから、本件発明9は、本件発明1乃至8と同様に、刊行物1〜4に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2-10)取消理由2のまとめ
本件発明1乃至9は、上記(2-1)〜(2-9)のとおり、刊行物1〜4に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1乃至9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

4.むすび
以上のとおり、本件発明1乃至9に係る特許は、特許法第29条の2の規定及び同法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
吹付け施工方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ質骨材と炭化ケイ素質骨材とを含む耐火性骨材と耐火性粉末と分散剤とからなる耐火組成物であって、アルミナ質骨材を7〜70重量%と炭化ケイ素質骨材を10〜45重量%それぞれ含有する耐火組成物に、該耐火組成物100重量部に対して12重量部以下の水を加えて混練した、圧送ポンプと圧送配管によって圧送できる自己流動性を有する坏土を所定量の急結剤(珪酸アルカリ溶液を除く)とともに吹付けることを特徴とする吹付け施工方法。
【請求項2】
前記坏土が、耐火性骨材と耐火性粉末の合量100重量部に対して0.02〜1重量部の分散剤を含有する請求項1記載の吹付け施工方法。
【請求項3】
耐火性骨材の一部としてカーボン質骨材を、耐火性骨材と耐火性粉末の合量中0.1〜10重量%含有する耐火性組成物を使用する請求項1または2記載の吹付け施工方法。
【請求項4】
前記耐火組成物中、耐火性骨材が74〜93%、耐火性粉末が26〜7%である請求項1、2または3記載の吹付け施工方法。
【請求項5】
耐火性粉末としてアルミナセメント、ヒュームドシリカ粉末、アルミナ粉末の1以上を使用する請求項1、2、3または4記載の吹付け施工方法。
【請求項6】
前記自己流動性を有する坏土を、圧送ポンプと圧送配管によって施工現場に圧送し、圧送配管の下流部に設けた圧縮空気注入口および急結剤注入口からそれぞれ圧縮空気と所要量の急結剤を坏土中に注入し、注入した圧縮空気とともに急結剤が混入した坏土をノズル配管によってその先端に接続した吹付けノズルに送り、吹付けノズルから坏土を施工箇所に吹付けることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の吹付け施工方法。
【請求項7】
急結剤注入口を圧縮空気注入口の下流または圧縮空気注入口と同位置に設け、坏土に注入する圧縮空気の一部または全部を使用して急結剤を注入する請求項6記載の吹付け施工方法。
【請求項8】
急結剤を耐火性骨材と耐火性粉末の合量100重量部に対し、0.05〜3重量部注入する請求項1〜7のいずれか記載の吹付け施工方法。
【請求項9】
前記自己流動性を有する坏土を高炉樋耐火ライニング用として吹付ける請求項1〜8のいずれか記載の吹付け施工方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高炉樋をはじめとして、各種窯炉の内張材、取鍋等の精錬容器の内張り材、精錬用ランス材等を吹付けにより施工するための方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高炉樋には、混練坏土を流し込み、次いでバイブレーターで坏土に振動を加えて坏土の流動性を高めて流し込み施工している。最近は、流し込み耐火物の施工作業を省力化するため、振動を与えなくても施工可能な自己流動性を有する流し込み耐火物が開発され、実用に供され始めている。
【0003】
そして、これら流し込み耐火物を使用した後、損傷箇所に吹付け補修することにより耐用を延ばす方法がよく行われている。しかし、従来行われている耐火物の吹付け施工方法は、乾いた粉体の坏土または流動性がない湿らせた坏土を空気流に乗せて配管で吹付けノズルに送り、吹付けノズルの箇所で水分を注入する乾式または半乾式と呼ばれる方法であるため、気孔率が小さく、強度および耐食性に優れた吹付け耐火物を施工できなかった。
【0004】
すなわち、従来の吹付け施工方法では、坏土中の細かい粒子の分散が不充分な状態で吹付け施工されるため、坏土中に多くの空気が取り込まれて気孔率が大きく嵩比重の小さい耐火物になる。このため吹付け補修材は、流し込み材に比べて耐用が短かった。
【0005】
特公平2-27308や特開昭62-36071では、施工時における粉塵の発生を抑制するため、予め不定形耐火物用粉体組成物にある程度の水分を混合しておき、足りない水分と急結剤の水溶液を吹付けノズルで注入する方法を提案しているが、気流搬送配管が不定形耐火物の坏土で閉塞しないようにするため不定形耐火物用粉体組成物に予め混合できる水分の量に限界があり、空気の取り込みや粉塵の発生を充分には回避できなかった。また、吹付け施工時にはリバウンドによるロスが相当量発生し、粉塵が周囲にまき散らされるという作業環境上の問題もあった。
【0006】
また、吹付けノズルの直前で搬送されてきた湿った坏土に残りの水分を注入する場合、吹付け施工する坏土中の水分の分布が不均一になるのを避けられない。特に流動性を向上させるとともに不定形耐火物を緻密化するための耐火性超微粉を混合してある不定形耐火物を施工する場合には、不定形耐火物用粉体組成物に混合しておく水分の絶対量が少なく、吹付け施工は一層困難であった。
【0007】
一方、材料面でも従来高炉樋には種々の材料が使用されており、なかでもアルミナ-炭化ケイ素-カーボン系材料は好ましく使用されているものである。特にアルミナは、耐熱性、耐食性付与として、また炭化ケイ素は、耐摩耗性付与、耐熱スポール性付与、耐浸透性付与として重用されている。
【0008】
また、カーボン質は耐熱スポール性付与、耐浸透性付与として有用なものである。しかしながら、このようなアルミナ、炭化ケイ素、カーボンの使用に関していえば、従来の前記した吹付け方法では、得られる施工体の気孔率が大きく、耐食性、耐摩耗性、耐酸化性等の点で充分その材料特性を生かしきれていなかったのが実情である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前述の従来技術の問題点に鑑み、施工した耐火物壁の組織が緻密で耐用性の長いアルミナ、炭化ケイ素を骨材として含有する耐火壁を形成しうる吹付け施工方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は前述の課題を達成すべくなされたものであり、本発明の吹付け施工方法は、アルミナ質骨材と炭化ケイ素質骨材とを含む耐火性骨材と耐火性粉末と分散剤とからなる耐火組成物であって、アルミナ質骨材を7〜70重量%と炭化ケイ素質骨材を10〜45重量%それぞれ含有する耐火組成物に、該耐火組成物100重量部に対して12重量部以下の水を加えて混練した、圧送ポンプと圧送配管によって圧送できる自己流動性を有する坏土を所定量の急結剤(珪酸アルカリ溶液を除く)とともに吹付けることを特徴とする吹付け施工方法である。
【0011】
また、望ましい実施態様の1つは、耐火性骨材の一部としてカーボン質骨材を、耐火性骨材と耐火性粉末の合量中0.1〜10重量%含有する耐火性組成物を使用する。
【0012】
さらに別の望ましい態様については、以下に詳しく説明する。
【0013】
本発明の吹付施工方法の主な特徴は、自己流動性を有する不定形耐火物の坏土を圧送ポンプと圧送配管によって施工現場に圧送する点にある。この方法によれば、予め所要の水分を混合してある不定形耐火物の坏土を圧送ポンプと圧送配管で施工現場に送ることができ、予め所要の水分を混合してあることによって坏土中の水の分布が均等であり、圧縮空気を注入するまでの坏土中には粒子の周囲に随伴する空気がほとんどなく、坏土にキャリアである圧縮空気を注入したときに巻き込まれる気泡も、そのほとんどが吹付け施工時に坏土から放出され、その結果として気孔率が小さい不定形耐火物の施工体が得られる。
【0014】
本発明の吹付け施工方法では、圧縮空気の他に所要量の急結剤が坏土中に注入され、ノズル配管を経て吹付けノズルから施工箇所に吹付けられた坏土は注入後急速に流動性が低下する。このため、たとえば垂直な壁面に坏土を吹付け施工しても、吹付けられた坏土が壁面から流れ落ちたりせずに施工できる。また、ノズル配管の先に吹付けノズルが接続されていることによって吹付けノズルに接続する配管は一本で済み、吹付けノズルの上下左右への移動操作は容易である。また好ましくはノズル配管をフレキシブルな配管として屈曲しやすくすることで人手による吹付け施工を容易にすることができる。
【0015】
なお、圧送ポンプとしては、市販品を入手できることから、ピストン式またはスクイーズ式の圧送ポンプを使用するのが好ましい。スクイーズ式とは、ダイヤフラムを圧縮空気で駆動するダイヤフラム式ポンプ、弾性を有するチューブをローラでしごいて坏土を圧送するポンプ等をいう。これらの圧送ポンプとしては、圧送する坏土の脈動が小さくなるように、好ましくは複数のダイヤフラム、複数のチューブまたは複数のピストンを備えた圧送ポンプを使用するのが好ましい。
【0016】
急結剤の注入箇所は、圧縮空気の注入口の下流または圧縮空気の注入口と同位置とするのが好ましい。急結剤を注入後の坏土は急速に硬化を起こした状態でノズル配管を通って、吹付けノズルに送られ吹付けノズルから吹付け施工される。急結剤を注入後の坏土は、ノズル配管を通過中に乱流の撹拌を受け、坏土中によりよく分散され、その結果坏土に注入する急結剤の所要量を減少できる。ノズル配管の長さは、好ましくは100mm以上、特には200mm以上とすることで乱流の撹拌の効果が得られる。
【0017】
ノズル配管を設けなかったり、吹付けノズル部に急結剤注入口を設けると、急結剤の分散不良や急結不良を起こし、吹付け後の坏土にダレ落ちが生じたり、これを防止するために、多量の急結剤を注入すると吹付けノズル部での閉塞を起こしたり、耐火物性能の低下を引き起こすため好ましくない。
【0018】
圧送配管およびノズル配管は、人手によって吹付けたり位置の移動を行うが、ポンプへの圧送負荷を低下させるために配管は50A以上(JIS G3452による、以下同様)が好ましく、配管中が坏土で満たされるとかなりの重量となる。
【0019】
ここで、急結剤の注入箇所を、圧縮空気の注入口の下流、さらに好ましくは1m以上下流に設けることで、圧縮空気の注入口より下流の配管内の坏土は、空送状態になるため、配管重量が軽くなり人手によるハンドリングが容易となる。
【0020】
急結剤の注入箇所を圧縮空気の注入口と同位置にすると、急結後の坏土の空送負荷区間は、ノズル配管部のみでよく、注入する空気量を低下できるため、特に低水量(実施例と同じ基準で好ましくは5〜7%)で施工されるので不定形耐火物で発生する粉塵量を低下させうる。ここで、ノズル配管より上流の圧送配管は坏土で満たされて重くなるため、配管サイズは50A前後とするのが好ましい。
【0021】
急結剤の注入箇所を圧縮空気注入口と同位置にする場合の一つの態様としては、坏土に注入される圧縮空気の一部または全部を使用し、急結剤が注入される。特に坏土に注入される圧縮空気の全部を急結剤の注入に使用した場合には、圧縮空気は急結剤と一緒に共通する配管によって坏土に注入されるので、圧縮空気を坏土に注入するそれ独自の配管が省ける。
【0022】
本発明では坏土の流動性を約20℃の室温下でコーン型を用いて評価する。すなわち、耐火組成物に約20℃の水を加えて混練した直後の坏土を、上端内径50mm、下端内径100mm、高さ150mmで上下端が開口した円錐台形状のコーン型に混練直後の坏土を流し込んで充たし、コーン型を上方に抜き取って60秒間静置したときの広がり直径(2方向の広がりを測定した平均値、以下フロー値という)で表示する。
【0023】
坏土はフロー値が165mm以上あれば自己流動性を呈する。しかし、圧送ポンプと圧送配管で混練された坏土を施工現場に、容易、かつ滞りなく送れるように、圧送ポンプで圧送する坏土のフロー値は、アルミナと炭化ケイ素を主成分とする本発明の耐火組成物の坏土としては180mm以上、さらには200mm以上とするのが好ましい。フロー値が大きい坏土を使用すれば、圧送ポンプの吸い込み抵抗と圧送配管内の流動抵抗を小さくでき、圧送配管の直径の低減や坏土の長距離圧送を実現できる。
【0024】
本発明で使用する耐火組成物中の耐火性骨材は、不定形耐火物に耐熱性や耐食性を付与する耐火物の主要な成分である。耐火性骨材としては、高い充填密度が得られる粒度分布を有するものがよく、予め粗粒、中粒および細粒に分級した耐火性骨材を、高い充填密度が得られるように再調合したものを使用するのが好ましい。耐火性骨材の充填密度を高くできれば、耐火性粉末と坏土に自己流動性を付与するのに必要な混練水の量を少なくできる。
【0025】
耐火性骨材としては、耐火性粉末より粒径の大きいものであり、通常30μm超の粒状物として使用する。
【0026】
本発明で使用される耐火組成物は耐火性骨材と耐火性粉末からなるが、耐火性骨材としてアルミナ質と炭化ケイ素質を必須成分として含有するものである。アルミナ質は、電融アルミナ、焼結アルミナなどのAl2O3成分を重量%で95%以上含むものが最適であるが、ボーキサイト、ムライト、バン土頁岩、シリマナイト、カイヤナイト、アンダリュウサイトなどのAl2O3を主成分とするものも好ましく使用できる。
【0027】
本発明において、アルミナ質骨材の配合割合は、耐火性骨材と耐火性粉末の合量中、重量%で7〜70%である。
【0028】
また、炭化ケイ素(SiC)質骨材は、重量%でSiCを95%以上含むSiC質のものが好ましく、配合割合は10〜80%である。これは10%より少ないと高炉出銑鍋や樋用としての充分な耐食性が得られにくいとともに、過焼結を発生する恐れもあるからであり、一方、80重量%より多いと自己流動性を付与するための混練水量を多く必要とするからである。望ましい耐食性および流動性を確保するためには15〜45%がより好ましい。
【0029】
本発明に好ましく用いられる耐火性骨材として、このほか、カーボン質、窒化ケイ素質、スピネル質、ジルコン質などがあるが、なかでも高炉樋用などの骨材としてはカーボン質が有用である。すなわち、カーボン質は、高炉出銑樋の蓋用には必要はないが、樋用または鍋用の骨材としては有用である。カーボンとしては、黒鉛が最適であるが、粉末ピッチ等も好ましく使用可能である。
【0030】
カーボン質骨材の配合割合は、耐火性骨材と耐火性粉末の合量中において、カーボンとして0.5〜5重量%が好ましい。
【0031】
これは、0.5重量%より少ないと、加熱後の施工体組織が過焼結となり、施工体が剥離するし、5重量%より多いと、自己流動性を付与するために必要な水分量が多くなるとともに耐酸化性の低下、耐磨耗性の低下を招くからである。より好ましくは1〜4重量%である。
【0032】
本発明において使用する耐火性粉末としては、アルミナセメント、アルミナ、ムライト、バン土頁岩、スピネル、マグネシア、ジルコニア、ジルコン、窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、ホウ化ジルコニウムおよびヒュームドシリカ等の無定形シリカから選ばれる1種以上であって平均粒径が30μm以下のものが好ましい。
【0033】
なお、これらの耐火性粉末の一部として、アルミナの平均粒径が10μm以下、好ましくは5μm以下、およびヒュームドシリカなどの平均粒径が10μm以下、好ましくは1μm以下の耐火性超微粉を使用すると、坏土中の水の量を減らすことができ、かつ坏土に良好な流動性を付与できる。
【0034】
また、耐火性粉末の一部として、アルミナセメントを使用すれば、アルミナセメントが不定形耐火物の結合剤として機能し、施工体は常温から高温までの広い範囲において強度を保持できる。アルミナセメントの好ましい使用割合は、耐火性骨材と耐火性粉末の合量中0.5〜3重量%である。
【0035】
本発明において、耐火性骨材と耐火性粉末の好ましい割合は、前者が74〜93%、後者が26〜7%であり、このようにすることで本発明の目的を達成しうる吹付け耐火物組織が得られる。
【0036】
本発明では、所望の自己流動性を有する坏土とすることが必要であり、そのために分散剤が必要である。
【0037】
分散剤としては、使用する耐火性粉末および耐火性骨材の種類に合わせて選定した粉末状で耐火組成物に配合しておくことが好ましい。分散剤としては、ポリメタリン酸塩類、ポリカルボン酸塩類、ポリアクリル酸塩類およびβ-ナフタレンスルホン酸塩類から選ばれる1種以上が好ましく、組成物の耐火性粉末と耐火性骨材の合量100重量部に対して0.02〜1重量部添加しておくのが好ましい。
【0038】
また、本発明における耐火性骨材としてカーボン質骨材を使用する場合には、吹付け施工後酸化雰囲気にさらされる操業下では酸化されてしまう恐れが大きいため、酸化防止剤を添加しておくことが必要となる。酸化防止材としては、シリコン、アルミニウム等の金属、合金や炭化ケイ素、ホウ化ジルコニウム、炭化ホウ素等が使用しうる。
【0039】
酸化防止剤の添加割合は、耐火性骨材と耐火性粉末の合量100重量部に対し、0.5重量部あれば充分である。なお、酸化防止剤は、これらの範囲においてカーボン質骨材が多く使用される場合には相対的に多く添加しておくことが好ましい。
【0040】
本発明において耐火組成物100重量部に対して加える水の量は、組成物に配合される主要原料である骨材の比重や気孔率によって変化するが、自己流動性を付与するために必要な坏土中の水分量には自ら下限があり、組成物100重量部に対して4重量部以上の水分を加える。組成物は、たいてい乾いた粉体の状態で施工現場の近くに運搬し、施工現場に持ち込んだミキサー中で組成物に水を加えて混練した坏土をコンクリートミキサー車で施工現場に運んで吹付け施工することもできる。
【0041】
ポンプ圧送する坏土の水分、すなわち粉体組成物に加える水分は、施工された吹付け不定形耐火物の気孔率を小さくして耐火物としての良好な特性を確保できるように、粉体組成物100重量部に対して12重量部以下とする。坏土中の水分が少なければ、坏土中に含まれる耐火性骨材が沈降して坏土が不均質化するのを抑制でき、気孔率が小さく均質な組織の不定形耐火物の施工体が得られる。
【0042】
坏土に注入する急結剤としては、水溶液の急結剤でも使用できるが、吹付け施工する坏土中の水分量を必要最小限に留めて施工体の気孔率を小さくするため、好ましくは粉末を使用する。粉末の急結剤は、好ましくは圧縮空気をキャリアーとして急結剤注入口から坏土中に注入する。水溶液の急結剤を坏土に注入するときはなるべく濃い水溶液を使用するのが好ましい。急結剤は、坏土中に急結剤が均一に分散するように圧縮空気で吹いて圧縮空気をキャリアーとして坏土中に注入するのが好ましい。急結剤としては、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム等のアルカリ金属のアルミン酸塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム等の炭酸塩、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム等の硫酸塩、CaO・Al2O3、12CaO・7Al2O3、CaO・2Al2O3、3CaO・Al2O3、3CaO・Al2O3・CaF、11CaO・7Al2O3・CaF2等のカルシウムアルミネート類、酸化カルシウム、水酸化カルシウムおよびこれらの複合物または混合物から選ばれる1種以上が好ましく使用できる。
【0043】
急結剤の所要量は、急結剤の種類によってある程度変化するので、急結剤の種類と、急結剤を注入した後のノズル配管の長さなどによって注入量を調節するのが好ましい。
【0044】
これらの急結剤のうちで、入手が容易であって安価であり、かつその急結特性が優れていることから、アルミン酸ナトリウムの粉末または水溶液を使用するのが特に好ましい。
【0045】
急結剤の注入量は、水と分散剤を除く乾燥基準の耐火組成物100重量部に対して、0.05〜3重量部とするのが好ましい。0.05重量部より少ないと、効果が大きい急結剤であっても急結速度が不足して吹付け施工された坏土が流れ落ちることになり、3重量部を超えて多く注入すると急速に硬化して吹付け施工が難しくなったり、耐熱性や耐食性などの耐火物としての性能が低下することになる。
【0046】
【実施例】
以下本発明の実施例によって具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によってなんら限定されるものではない。
【0047】
耐火性骨材として、Al2O3の含有量が97重量%の電融アルミナ骨材の粗粒1(粒径5〜1mm)、粗粒2(粒径3〜1mm)および中粒(粒径1mm以下)、Al2O3の含有量が99重量%の焼結アルミナ骨材の微粒(粒径0.043mm以下)、SiCの含有量が95重量%のSiC質骨材の粗粒(粒径4〜1mm)、中粒(粒径1mm以下)、微粒(粒径0.15mm以下)および微粉(粒径0.01mm以下)、カーボンの含有量が60重量%のカーボン質骨材(粉末ピッチ)の微粒(粒径1.2mm以下)を使用した。
【0048】
耐火物の結合部を構成する耐火性粉末として、Al2O3とCaOの含有量がそれぞれ74重量%と24重量%のアルミナセメント(平均粒径5.6μm)、Al2O3の含有量が99重量%のバイヤーアルミナ粉末(平均粒径4.3μm)、SiO2の含有量が93重量%のヒュームドシリカ(平均粒径0.8μm)、Al2O3とSiO2の含有量がそれぞれ28重量%と53重量%の粘土、P2O5とNa2Oの含有量がそれぞれ65重量%と21重量%のリン酸塩を使用した。
【0049】
さらに、P2O5とNa2Oの含有量がそれぞれ69.6重量%と30.4重量%の粉末状ヘキサメタリン酸ナトリウム(Na6P6O18)を分散剤として添加した。シリコン粉末は、Si純度が99重量%以上で粒径100μm以下のものを使用した。
【0050】
表1の例1は本発明の実施例であり、例2〜5は比較例である。表2の例6〜10は本発明の実施例であり、例11、12は比較例である。表3の例13、14は本発明の実施例であり、例15、例16は比較例である。
【0051】
耐火性骨材、耐火性粉末および分散剤を調合して表1、2および3に示す組成物を調合し、各組成物に表1、2および3に示す量の水を加え、500kg容量のボルテックスミキサー中で3分間混練して坏土とした。各坏土の流動性は、混練した直後の各坏土を上端内径50mm、下端内径100mm、高さ150mmで上下端が開口した円錐台形状のコーン型に流し込み、コーン型を上方に抜き取って60秒間静置したときの広がり直径の最大部と最小部に対し90度の位置の2方向についてノギスで測定し、その平均値をフロー値とした。
【0052】
急結剤には、粒径が800μm以下で平均粒径が約150μmの粉末であって、アルミン酸ナトリウム(約20%の結晶水を含む)と炭酸ナトリウムを3:1の重量比で含むものを用い、表1、2および3に示した調合の坏土を調製して吹付け施工した。すなわち、図1の系統概要図に示す構成の吹付け施工装置を使用し、高炉樋の内張りを想定した吹付け施工を行った。
【0053】
図1において、1は圧送ポンプ、2a、2bは圧送配管、3はノズル、4は吹付けノズル、5は急結剤のフィーダ、6はエアーコンプレッサ、7は混練手段を備えた坏土の容器、8は施工壁面、9は吹付け施工された施工体、10は圧縮空気注入口、11は急結剤注入口、12、13は空気用弁である。なお、以下の例では圧送ポンプとして2つのピストンを備えるPutzmister社製圧送ポンプBSA702を用い、圧送速度を混練した坏土で3トン/時間とし、圧縮空気注入口から4〜6気圧に調節した圧縮空気を注入して吹付けノズルに坏土を供給した。
【0054】
また、粉末状急結剤を定量的に坏土に注入するため、テーブルフィーダを備える日本プライブリコ社製のQガンを用い、空気圧力を3〜4kg/cm2の範囲で制御して表1、2および3に示す急結剤の注入量に調節した。
【0055】
なお、上記実施例で使用された吹付け施工装置では、圧送ポンプ1から圧縮空気の注入口10までの圧送配管2aを寸法65Aで長さ70mの鋼管および65Aから50Aに絞った長さ1mのテーパ付き鋼管を接続したものとし、圧縮空気の注入口10から急結剤の注入口11までの圧送配管2bを寸法50Aで長さ3mのゴムホースとし、急結剤の注入口11から吹付けノズル4までのノズル配管3を寸法50Aで長さ1.2mのゴムホースとして配管の内側に段差ができないように接続した。また、圧縮空気注入口10と急結剤の注入口11のはそれぞれY字管を取り付けた。
【0056】
吹付けノズル4は柔軟なゴムホースに接続されているのでゴムホースの及ぶ範囲で移動と方向の変更が容易であるので、吹付けノズル4は手で持って操作し、壁面8に吹付け施工した。本発明の施工方法では、吹付け施工時のリバウンドと粉塵の発生はほとんどなく、従来の不定形耐火物の吹付け施工方法と比べて施工歩留と作業環境はきわめて良好であった。
【0057】
気孔率の評価は、吹付け施工体より採取した試料を110℃で24時間乾燥させたのちJIS R2205に準拠して測定した。
【0058】
耐食性の評価は、吹付け施工体より採取した試料を110℃で24時間乾燥後、400℃で5時間加熱して得られた試験片で実施した。侵食試験は誘導炉で、銑鉄とスラグを使用し、1550℃で5時間行った。耐食性の指標として、耐食性指数を用いた。耐食性指数が高いほど、耐食性が高いことを示す。
【0059】
過焼結性の評価は、吹付け施工体より採取した試料を110℃で24時間乾燥させた後、1000℃および1400℃で焼成した施工体の破壊強度を測定した。そして、1000℃焼成品と1400℃焼成品の破壊強度の比(1000℃/1400℃)が1.5以上であると、剥離現象があると考えられている。
【0060】
表1の例1は、本発明の実施例であり、例2と例3は急結剤の注入量が不適当な例であって壁面から坏土がタレ落ち、満足な施工体が得られなかった。また、例3では急結剤が過剰なため坏土の硬化が急速に進行し、吹付けノズルからの吹付けが不安定となり、リバウンドロスが多く出て壁面への付着性が悪く、やはり満足な施工体が得られなかった。このため、例2と例3については施工体の性質の測定等がなされてない。
【0061】
例4は例1の坏土を流し込み成形した不定形耐火物の施工体について求めた結果であり、例5は流動性がない湿らせた坏土を空気流に乗せて配管で吹付けノズルに送り、吹付けノズルの箇所で水分を注入する半乾式と呼ばれる方法で吹付けたものである(なお、例4、5はいずれも参考のために示したものである)。表1に示された例1との比較から、本発明の方法によって吹付け施工して得られた不定形耐火物の気孔率や耐食性は、流し込み成形して得られた施工体にはやや劣るものの、半乾式で吹付けられた施工体より優れることがわかる。
【0062】
表2の例6〜10は、本発明の実施例であり、例11と例12はSiCの調合量が不適当な例であり、例11はSiC量が少なく、耐食性が低いものであり、例12はSiC量が多く、坏土に自己流動性が付与できず、吹付け施工ができなかったため、施工体の性質の測定等がなされていない。
【0063】
表3の例13〜例15は、本発明の実施例であるが、例15はカーボン量が少なく、施工体が過焼結となりやすいため、高炉樋用の一部の用途には必ずしも適切なものとはいえないが、樋蓋用などには充分有用なものである。例16は不適当な例であり、カーボン量が多く、坏土に自己流動性が付与できず、吹付け施工ができなかったため、施工体の性質の測定などがなされていない。
【0064】
これらから分かることは、高炉樋の損傷が激しい部位へ吹付け補修施工しても、表1に示したとおり、従来の半乾式に対して、本発明の方法では耐用を長くすることができる。従って、実際にこの吹付け補修を繰り返し行う継ぎ足し補修施工を行うと、従来方法よりも耐火物原単位(通銑量1トン当たりに必要な耐火物量(kg))を著しく減少することが可能となる。
【0065】
表4に初期ライニング厚み450mmが、最大損傷量200mmとなったところで、損傷分を吹付け補修し、計5回継ぎ足し吹付け補修した場合を想定した原単位結果を示した。例17に本発明の実施例、例18に従来方式の比較例を示した。
【0066】
本発明の吹付け施工方法は補修施工用に限定されず、流し込み施工の代わりに吹付け施工を行うことにより、型枠が不要であるなどによって顕著な省力化が達成できるという利点が得られる。また本発明の吹付け施工方法は、高炉樋に限定されず、樋カバーや高炉鍋などへの不定形耐火物施工に適用できる。
【0067】
図2に示す吹付け施工装置は、本発明の不定形耐火物の吹付け施工方法を実施するために使用できる他の施工装置の例であり、この施工装置では圧縮空気と急結剤の坏土への注入が同位置でなされるように圧縮空気および急結剤注入口14が圧送配管2aとノズル配管3の間に設けられており、図1の装置と同じ名称の部分には図1と同じ符号が付してある。
【0068】
【表1】


【0069】
【表2】

【0070】

【0001】
【表1】

【0072】
【発明の効果】
本発明の不定形耐火物の吹付け施工方法によれば、アルミナ質骨材、炭化ケイ素質骨材を耐火性骨材として含む耐火組成物に所要の水分を加えて混練してなる自己流動性を有する坏土をポンプ圧送して吹付け施工することにより、施工体の気孔率が従来の吹付け施工方法による施工体の気孔率と比べて顕著に小さくでき、流し込み施工された不定形耐火物の施工体に近い気孔率、耐食性を有する不定形耐火物の施工体が得られる。この不定形耐火物の施工体は、従来の吹付け施工方法による気孔率の大きい不定形耐火物の施工体と比べて耐火物としての特性が顕著に優れている。また、流し込みによる施工方法と比べて型枠が不要であるなどによって顕著な省力化が達成でき、工期も顕著に短縮できるという利点が得られる。
【0073】
また、吹付け施工時のリバウンドによるロスが非常に少ないので不定形耐火物の施工歩留がよく、粉塵がほとんど発生しないので作業環境も良好である。省力化と良好な作業環境の確保は、今後の産業の存続と発展に不可欠な要件でもあるので、その産業上の価値は多大である。
【0074】
また、カーボン質骨材の耐火性骨材を使用できるので、高炉樋用など高い組成物の吹付け施工法として最適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の不定形耐火物の吹付け施工方法を実施するのに使用する装置の系統概略図。
【図2】本発明の不定形耐火物の吹付け施工方法を実施するのに使用する他の装置の系統概略図。
【符号の説明】
1:圧送ポンプ
2a、2b:圧送配管
3:ノズル配管
4:吹付けノズル
5:急結剤のフィーダ
6:エヤーコンプレッサ
7:混練手段を備えた杯土の容器
8:施工する壁面
9:吹付け施工された施工体
10:圧縮空気注入口
11:急結剤注入口
12、13:空気用弁
14:圧縮空気および急結剤注入口
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-05-25 
出願番号 特願平8-189717
審決分類 P 1 651・ 16- ZA (F27D)
P 1 651・ 121- ZA (F27D)
最終処分 取消  
前審関与審査官 木村 孔一  
特許庁審判長 沼沢 幸雄
特許庁審判官 綿谷 晶廣
原 賢一
登録日 2003-07-11 
登録番号 特許第3449673号(P3449673)
権利者 旭硝子セラミックス株式会社
発明の名称 吹付け施工方法  
代理人 山本 量三  
代理人 小川 利春  
代理人 小川 利春  
代理人 泉名 謙治  
代理人 山本 量三  
代理人 泉名 謙治  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ