ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C22C |
---|---|
管理番号 | 1125823 |
異議申立番号 | 異議2003-73384 |
総通号数 | 72 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1999-03-16 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-12-24 |
確定日 | 2005-07-15 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3469441号「高周波焼入用鋼」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3469441号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。 |
理由 |
1.本件手続の経緯 本件特許第3469441号の請求項1乃至4に係る発明についての出願は、平成9年8月28日に特許出願され、平成15年9月5日にその特許権の設定登録がなされたものである。 これに対して、住友金属工業株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内の平成17年2月21日付けで訂正請求がなされたものである。 2.訂正の適否 2-1.訂正の内容 本件訂正請求の内容は、本件特許明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり、すなわち次の訂正事項a乃至cのとおりに訂正するものである。 (1)訂正事項a:請求項1乃至4にそれぞれ記載された「Ti:0.05〜0.20%」を「Ti:0.055〜0.20%」と訂正する。 (2)訂正事項b:特許明細書の段落【0005】の「0.05%以上のTi」を「0.055%以上のTi」と訂正する。 段落【0007】、【0012】及び【0034】の「Tiを0.05〜0.20%添加」を「Tiを0.055〜0.20%添加」とそれぞれ訂正する。 段落【0008】、【0009】、【0010】及び【0011】の「Ti:0.05〜0.20%」を「Ti:0.055〜0.20%」とそれぞれ訂正する。 段落【0016】の「0.05%未満」を「0.055%未満」と、「Ti:0.05〜0.20%」を「Ti:0.055〜0.20%」とそれぞれ訂正する。 (3)訂正事項c:特許明細書の段落【0003】の「TiNおよびAl」を「TiNおよびAlN」と訂正する。 2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 訂正事項aは、請求項1乃至4にそれぞれ記載されているTi含有量の下限を「0.05%」から「0.055%」に訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当する。また、訂正事項bは、訂正事項aの訂正に伴い、明細書の対応する記載を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明に該当する。さらに、訂正事項cは、誤記の訂正に該当する。 そして、上記訂正事項a乃至cは、いずれも願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 2-3.まとめ したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項乃至第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.本件訂正発明1乃至4について 訂正後の本件請求項1乃至4に係る発明(以下、それぞれ「本件訂正発明1乃至4」という。)は、上記訂正を認容することができるから、訂正明細書の請求項1乃至4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】重量%で、C:0.35〜0.70%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.2〜1.5%、Ti:0.055〜0.20%、N:<0.01%を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、Ti炭化物、Ti炭窒化物を鋼中に微細分散させたことを特徴とする高周波焼入時の結晶粒度特性及び疲労強度特性に優れた鋼。 【請求項2】重量%で、C:0.35〜0.70%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.2〜1.5%、Ti:0.055〜0.20%、N:<0.01%を含有し、さらに選択的に、Cr:0.15%〜2.0%、Mo:0.03%〜1.0%、Ni:0.03%〜3.0%の中から少なくとも1種以上を含み、残部Fe及び不可避不純物からなり、Ti炭化物、Ti炭窒化物を鋼中に微細分散させたことを特徴とする高周波焼入時の結晶粒度特性及び疲労強度特性に優れた鋼。 【請求項3】重量%で、C:0.35〜0.70%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.2〜1.5%、Ti:0.055〜0.20%、N:<0.01%、B:0.0005〜0.0050%を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、Ti炭化物、Ti炭窒化物を鋼中に微細分散させたことを特徴とする高周波焼入時の結晶粒度特性及び疲労強度特性に優れた鋼。 【請求項4】重量%で、C:0.35〜0.70%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.2〜1.5%、Ti:0.055〜0.20%、N:<0.01%、B:0.0005〜0.0050%を含有し、さらに選択的に、Cr:0.15%〜2.0%、Mo:0.03%〜1.0%、Ni:0.03%〜3.0%の中から少なくとも1種以上を含み、残部Fe及び不可避不純物からなり、Ti炭化物、Ti炭窒化物を鋼中に微細分散させたことを特徴とする高周波焼入時の結晶粒度特性及び疲労強度特性に優れた鋼。」 4.特許異議申立てについて 4-1.取消理由の概要 当審で通知した取消理由の概要は、訂正前の本件請求項1及び2に係る発明は、引用例1に記載された発明であるか、又は引用例1乃至引用例3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、訂正前の本件請求項3及び4に係る発明は、引用例1乃至引用例5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の本件請求項1乃至4に係る発明についての特許は、特許法第29条第1項第3号及び同条第2項の規定に違反してなされたものである、というものである。 4-2.引用例の記載内容 取消理由において引用された引用例1、2、4及び5には、それぞれ次の事項が記載されている。 (1)引用例1:特開平9-59745号公報 (1a)「【請求項1】合金元素の含有率が質量%で、 C :0.05%〜1.2% Si:3.00%以下 Mn:2.50%以下 Cr:2.50%以下 Ni:2.50%以下 Mo:2.00%以下 N :0.010%以下 Al:0.060%以下を含有し、 さらに、 Nb:0.005%〜0.20% Ti:0.005%〜0.050% Ta:0.010%〜0.20% Hf:0.010%〜0.20% Zr:0.010%〜0.20% V :0.010%〜1.00% から選ばれる1種または2種以上を含有し、素地中にNb、Ti、Ta、Hf、Zr、Vのうちのいずれかの炭化物を5個/10μm2以上を析出していることを特徴とした結晶粒粗大化防止鋼。 【請求項2】請求項1に記載の鋼が、素地中にNb、Ti、Ta、Hf、Zr、Vの窒化物または炭窒化物を素地中に5個/10μm2以上析出していることを特徴とした結晶粒粗大化防止鋼。」(特許請求の範囲の請求項1,2) (1b)「本発明は、浸炭焼入れ処理、高周波焼入れ処理、または、焼入れ処理などの熱処理により起こるオーステナイト結晶粒の粗大化の発生を防止する鋼に関する。」(段落【0001】) (1c)「【従来の技術】炭素鋼、肌焼鋼、強靭鋼、軸受鋼、バネ鋼、工具鋼などの特殊鋼の多くは、それぞれの使用用途に応じて、焼入れ処理、浸炭焼入れ処理、または、高周波焼入れ処理などの各種の熱処理が施される。しかし、これらの熱処理を行う場合には材料は高温に昇温・保持されるためにオーステナイト結晶粒が成長し、結晶粒を粗大化させるという問題がある。粗大粒が発生した場合には,鋼の強度・靭性や疲れ特性を低下させることが知られており、実用上で問題とされてる。」(段落【0002】) (1d)「【課題を解決するための手段】本発明者は、種々合金元素の組合せについて検討を行い、高温加熱時のオーステナイト結晶粒の成長を防止することに対して、鋼の素地中に分散させる析出物の形態と量を適正化することによって、結晶粒の粗大化を防止できることを見出した。本発明者は粗大化特性に及ぼす析出物形態(組成)について詳細を検討した結果、Nb炭化物、Nb窒化物、または、Nb炭窒化物を素地中に析出させ少なくとも5個/10μm2以上を分布させることによって,焼入れ処理や浸炭処理などの高温加熱時にも結晶粒が粗大化を生じることを防止できることを見いだした。また、Ti、Ta、Hf、Zr、Vでも同様の効果が得られることを確認した。」(段落【0007】) (1e)「Si、Mn、Cr、Ni、Moの各元素は引張や疲労などの強度特性の改善および靭性の改善、または焼入れ性特性の改善などの鋼の機械的な特性改善を目的として添加される元素である。従って、それぞれの用途に適した範囲で元素量を選定すればよい。Si、Mn、Cr、Ni、Mo各元素の添加量の上限は、熱間加工性の低下、切削性、鍛造性などの製造性を劣化させない範囲として、それぞれ、3.00%、2.50%、2.50%,2.50%、2.00%に規定する。」(段落【0011】) (1f)「N:0.010%以下 Nを含有させることによって、Nb、Ta、Tiの窒化物または炭窒化物を析出させることができるため、結晶粒の粗大化を抑制する効果があるが、本発明に於いては実質的に炭化物系の析出物を得ることを目的としており,Nの含有量は少ないことが望ましい。特に、鋼中のN量が増加すると本発明の様にTi、Nbなどの窒化物生成傾向の強い元素が添加された場合には、凝固時に大型の窒化物を生成し、本来目的とする炭化物系の析出物を得ることが困難になるためにN量の上限を0.010%に規制した。」(段落【0012】) (1g)「Nb、Ti、Ta、Hf、Zr、Vは、本発明に於いて重要な役割を示す元素であり、所定の析出物の形態および量を得て粗大化特性を向上させるためには、それぞれ少なくとも、Nb:0.005%、Ti:0.005%、Ta:0.010%、Hf:0.010%、Zr:0.010%、V:0.01%を単独もしくは複合して添加する必要がある。しかし、過剰に添加しても効果が飽和するとともに、熱間加工性や冷間加工性を低下させ、いたずらに素材の製造コスを上昇させるために、各々の添加量の上限を規定した。」(段落【0014】) (2)引用例2:特公昭61-45685号公報 (2a)「2 C 0.1〜0.3%,Si 0.05〜0.5%,Mn 0.3〜2%,Sol Al0.005〜0.1%を含み、またTi,Nbの1種又は2種を合計で0.05〜0.15%含み、更にCr2%以下、Mo0.5%以下、B 0.003%以下の1種又は2種以上を含み、残部鉄および不純物からなる鋼材を950℃〜A3点のオーステナイト低温域に加熱し、その後A1点以上の温度で熱間圧延することを特徴とするオーステナイト結晶粒の粗大化温度の高い肌焼鋼の製造方法。」(第1頁特許請求の範囲第2項) (2b)「本発明においてTi,Nbの含有量は重要な意味を有する。すなわち本発明の方法はその目的達成のため、低温加熱圧延材を再加熱してもオーステナイト結晶粒の粗大化を相当な高温、例えば950℃程度まで抑えるためにTi,Nbを多量に含有せしめ、これらの微細炭化物又は炭窒化物(析出物)を多量に形成せしめるのである。 第1図は0.2%C-0.3%Si-0.6%Mn-1%Cr-0.04%Al-Ti又はNb 添加鋼について900℃加熱圧延材について1000℃×1時間の再加熱におけるオーステナイト結晶粒の粗大化率(オーステナイト結晶粒度No.4以下の粗大結晶粒の占める面積比率)とTi又はNb含有量との関係を示した図である。第1図から知られるように、Ti又はNb含有量が0.05%以上の場合には1000℃の高温であつても結晶粒の粗大化が生じていない。したがつてTi,Nbは0.05%以上含有せしめる必要がある。なお、Ti,Nb含有量の上限はTi,Nb系介在物の増加による延性,冷間加工性の劣化の点で0.15%とする。」(第2頁第3欄第7行乃至第27行) (2c)「本発明では上述の元素の他に必要に応じて強度付与元素としてCr,Mo,Bの1種又は2種以上を含有せしめることができる。Cr2%以上、Mo0.5%以上、B 0.003%以上では延性、冷間加工性を悪化させる。」(第2頁第4欄第7行乃至第11行) (3)引用例4:特開昭63-216920号公報 「B:0.0005〜0.0050% BはSi含有量およびMn含有量を少なくしたことによる焼入性の低下を補い、例えば高周波焼入後において必要な焼入深さを確保するために添加する元素であって、・・・しかし、多量に含有すると高周波焼入時に結晶粒を粗大化し、靱性を低下させるので0.0050以下に限定した。」(第3頁左下欄第16行乃至右下欄第4行) (4)引用例5:特開平9-53150号公報 「h) B Bは、“浸炭材を焼入する時に生成するオ-ステナイト粒界上での炭化物(Cr炭化物等)の析出”を抑え、これにより浸炭部の不完全焼入組織,粒界脆化を防止して浸炭・焼入材に十分な衝撃荷重強度,耐摩耗性,転動疲労特性等を確保するために欠かせない成分である。また、本発明では“浸炭・焼入時に粒界上に炭化物が析出することにより粒界の脆弱化を著しく促進するというCrの弊害”を防止するためにCr含有量を制限しているが、Bは、このようにCr含有量を低減した結果起きる“鋼基地の焼入性低下”を補って鋼芯部の焼入性を確保する作用も分担する。しかし、B含有量が0.0005%未満であると上記作用による所望の効果が得られず、一方、 0.009%を超えてBを含有させると逆にBによる粒界脆化が起きるようになるので、B含有量は0.0005〜 0.009%と定めた。」(段落【0026】) 4-3.当審の判断 (1)本件訂正発明1について 引用例1の上記(1a)には、 「【請求項1】合金元素の含有率が質量%で、 C :0.05%〜1.2% Si:3.00%以下 Mn:2.50%以下 Cr:2.50%以下 Ni:2.50%以下 Mo:2.00%以下 N :0.010%以下 Al:0.060%以下を含有し、 さらに、 Nb:0.005%〜0.20% Ti:0.005%〜0.050% Ta:0.010%〜0.20% Hf:0.010%〜0.20% Zr:0.010%〜0.20% V :0.010%〜1.00% から選ばれる1種または2種以上を含有し、素地中にNb、Ti、Ta、Hf、Zr、Vのうちのいずれかの炭化物を5個/10μm2以上を析出していることを特徴とした結晶粒粗大化防止鋼。 【請求項2】請求項1に記載の鋼が、素地中にNb、Ti、Ta、Hf、Zr、Vの窒化物または炭窒化物を素地中に5個/10μm2以上析出していることを特徴とした結晶粒粗大化防止鋼。」と記載されているから、請求項1の記載において選択成分の中から「Ti」を1種選択し、また請求項2の記載において「炭窒化物」を選択した場合には、引用例1には、 「合金元素の含有率が質量%で、 C :0.05%〜1.2% Si:3.00%以下 Mn:2.50%以下 Cr:2.50%以下 Ni:2.50%以下 Mo:2.00%以下 N :0.010%以下 Al:0.060%以下を含有し、 さらに、 Ti:0.005%〜0.050% を含有し、素地中にTiの炭化物を5個/10μm2以上を析出し、素地中にTiの炭窒化物を素地中に5個/10μm2以上析出していることを特徴とした結晶粒粗大化防止鋼。」が記載されていると云える。また、引用例1の上記(1b)には、「本発明は、浸炭焼入れ処理、高周波焼入れ処理、または、焼入れ処理などの熱処理により起こるオーステナイト結晶粒の粗大化の発生を防止する鋼に関する。」(段落【0001】)とも記載されているから、上記結晶粒粗大化防止鋼は、「高周波焼入時のオーステナイト結晶粒の粗大化を防止した鋼」であると云えるし、上記(1e)の「Si、Mn、Cr、Ni、Moの各元素は引張や疲労などの強度特性の改善および靭性の改善、または焼入れ性特性の改善などの鋼の機械的な特性改善を目的として添加される元素である。」という記載に徴すれば、この「結晶粒粗大化防止鋼」も、「疲労強度特性に優れた鋼」であると云える。 そうすると、これら記載を整理すれば、引用例1には、 「合金元素の含有率が質量%で、 C :0.05%〜1.2% Si:3.00%以下 Mn:2.50%以下 Cr:2.50%以下 Ni:2.50%以下 Mo:2.00%以下 N :0.010%以下 Al:0.060%以下を含有し、 さらに、 Ti:0.005%〜0.050% を含有し、素地中にTiの炭化物を5個/10μm2以上を析出し、素地中にTiの炭窒化物を素地中に5個/10μm2以上析出して、高周波焼入時のオーステナイト結晶粒の粗大化を防止した、疲労強度特性に優れた結晶粒粗大化防止鋼。」という発明(以下、「引用例1発明」という)が記載されていると云える。 そこで、本件訂正発明1と引用例1発明とを対比すると、引用例1発明も、「鋼」であるから「残部Fe及び不可避不純物」と言い換えることができると云える。また、引用例1発明の「高周波焼入時のオーステナイト結晶粒の粗大化を防止した」とは、引用例1の記載からみて、本件訂正発明1の「高周波焼入時の結晶粒度特性に優れた」という性質に相当することは明らかであるし、引用例1発明の「素地中にTiの炭化物を5個/10μm2以上を析出し、素地中にTiの炭窒化物を素地中に5個/10μm2以上析出して」とは、その析出した炭化物及び炭窒化物が微細であることは明らかであるから、本件訂正発明1の「Ti炭化物、Ti炭窒化物を鋼中に微細分散させた」に相当すると云えるから、両者は、「重量%で、C:0.35〜0.70%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.2〜1.5%、N:<0.01%、及びTiを含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、Ti炭化物、Ti炭窒化物を鋼中に微細分散させたことを特徴とする高周波焼入時の結晶粒度特性及び疲労強度特性に優れた鋼。」という点で一致し、次の点で相違していると云える。 相違点: (イ)本件訂正発明1は、Tiを「0.055〜0.20%」含有するのに対し、引用例1発明は、Tiを「0.005%〜0.050%」含有する点 (ロ)本件訂正発明1は、Cr、Ni及びMoを含有するとまでは特定していないのに対し、引用例1発明は、Cr:2.50%以下、Ni:2.50%以下、 Mo:2.00%以下を含有する点 (ハ)本件訂正発明1は、Alを含有するとは特定していないのに対し、引用例1発明は、Alを0.060%以下含有する点 次に、これら相違点について検討する。 (i)相違点(イ)について 引用例1発明において、そのTiの上限を「0.050%」に設定した理由は、引用例1の上記(1g)の「過剰に添加しても効果が飽和するとともに、熱間加工性や冷間加工性を低下させ、いたずらに素材の製造コスを上昇させるために、各々の添加量の上限を規定した。」という記載から明らかなように、Tiの効果と加工性の低下とを考慮したものであり、一方、本件訂正発明において、そのTiの含有量を「0.055〜0.20%」に設定した理由も、本件明細書の「0.055%未満では、その多くはTi窒化物となりTiの効果がでない。また、0.20%を超えると加工性が低下するため、Ti:0.055〜0.20%とする。」(段落【0016】)という記載から明らかなように、Tiの効果と加工性の低下とを考慮したものであるから、両者は、その具体的な含有量に相違はあるものの、Tiを含有する理由の点では共通していると云える。そして、一般的な肌焼鋼において、Tiの効果と加工性の低下とを考慮して、Tiを0.05%を超えて上限0.15%まで含有することも、例えば上記引用例2の上記(2a)及び(2b)によって既に公知であるから、この引用例2の教示に基づいて引用例1発明のTiの含有量を0.05%より多い「0.055〜0.20%」とすることは当業者であれば容易に想到することができたと云うべきである。 (ii)相違点(ロ)について 本件訂正発明1は、Cr、Ni及びMoを含有するものではないが、本件訂正発明2ではこれら成分を含有しているように、これら成分が焼入性特性や疲労などの強度特性の改善の目的として必要に応じて選択的に含有されるものであることは、例えば引用例1の上記(1e)及び引用例2の上記(2c)に記載されているように、鋼の合金設計上の周知事項であるから、これら成分の取捨選択は当業者が適宜容易になし得たことであると云える。 (iii)相違点(ハ)について 本件訂正発明1は、Alを含有するとは特定していないが、本件訂正明細書の段落【0021】の「また、Alは、それぞれの鋼の溶製中に脱酸材として添加して含有されたものである。」という記載や段落【0024】の表1の実施例がすべてAlを含有するという事実をみる限り、本件訂正発明1も、「不可避不純物」としてか否かは明らかではないが、引用例1発明でいう「Al:0.060%以下」の範囲内のAlの含有を許容するものであることが明らかであるから、両者は、この点で実質的な差異はないと云うべきである。 してみると、本件訂正発明1の上記相違点(イ)乃至(ハ)は、引用例1のその余の記載及び引用例2の記載さらには周知事項から当業者が容易に想到することができたものであるから、本件訂正発明1は、引用例1及び引用例2に記載された発明と周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると云える。 (2)本件訂正発明2について 本件訂正発明2は、本件訂正発明1の特定事項に加え、さらに「さらに選択的に、Cr:0.15%〜2.0%、Mo:0.03%〜1.0%、Ni:0.03%〜3.0%の中から少なくとも1種以上を含み、」という事項を特定するものであるが、上記引用例1発明も、前示のとおり、この事項を特定事項とするものであるから、本件訂正発明2の上記特定事項は、引用例1発明との対比において相違点とはならない。 してみると、本件訂正発明2も、引用例1及び引用例2に記載された発明と周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると云える。 (3)本件訂正発明3について 本件訂正発明3は、本件訂正発明1の特定事項に加え、さらに「B:0.0005〜0.0050%」という事項を特定するものであるが、Bが鋼の焼入性を向上させる成分であることは、例えば上記引用例4及び5に記載されているように、周知の事項である。 してみると、本件訂正発明3も、引用例1及び2に記載された発明と引用例4及び5に記載された周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると云える。 (4)本件訂正発明4について 本件訂正発明4は、本件訂正発明2の特定事項に加え、さらに「B:0.0005〜0.0050%」という事項を特定するものであるが、本件訂正発明2及びこの「B」に係る特定事項については、前示のとおりであるから、本件訂正発明4も、引用例1及び2に記載された発明と引用例4及び5に記載された周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると云える。 5.むすび したがって、本件請求項1乃至4に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 高周波焼入用鋼 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】重量%で、C:0.35〜0.70%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.2〜1.5%、Ti:0.055%〜0.20%、N:<0.01%を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、Ti炭化物、Ti炭窒化物を鋼中に微細分散させたことを特徴とする高周波焼入時の結晶粒度特性及び疲労強度特性に優れた鋼。 【請求項2】重量%で、C:0.35〜0.70%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.2〜1.5%、Ti:0.055%〜0.20%、N:<0.01%を含有し、さらに選択的に、Cr:0.15%〜2.0%、Mo:0.03%〜1.0%、Ni:0.03%〜3.0%の中から少なくとも1種以上を含み、残部Fe及び不可避不純物からなり、Ti炭化物、Ti炭窒化物を鋼中に微細分散させたことを特徴とする高周波焼入時の結晶粒度特性及び疲労強度特性に優れた鋼。 【請求項3】重量%で、C:0.35〜0.70%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.2〜1.5%、Ti:0.055%〜0.20%、N:<0.01%、B:0.0005〜0.0050%を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、Ti炭化物、Ti炭窒化物を鋼中に微細分散させたことを特徴とする高周波焼入時の結晶粒度特性及び疲労強度特性に優れた鋼。 【請求項4】重量%で、C:0.35〜0.70%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.2〜1.5%、Ti:0.055%〜0.20%、N:<0.01%、B:0.0005〜0.0050%を含有し、さらに選択的に、Cr:0.15%〜2.0%、Mo:0.03%〜1.0%、Ni:0.03%〜3.0%の中から少なくとも1種以上を含み、残部Fe及び不可避不純物からなり、Ti炭化物、Ti炭窒化物を鋼中に微細分散させたことを特徴とする高周波焼入時の結晶粒度特性及び疲労強度特性に優れた鋼。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、機械構造用鋼として使用される、高周波焼入時の結晶粒度特性及び疲労強度特性に優れた鋼で、鋼中に微細分散したTi炭化物、Ti炭窒化物のピンニング作用により、高周波焼入時の耐粗粒化効果を向上させ、更に、マトリックスの分散強化と結晶粒微細化によって、疲労強度を向上させた鋼に関する。 【0002】 【従来の技術】 従来、機械構造用鋼などの疲労強度を要する鋼は、中・高炭素鋼をズブ焼入れ焼戻し、または高周波焼入れ焼戻しして使用している。機械構造用鋼の疲労強度を低下させる要因としては、結晶粒の粗大化が挙げられる。結晶粒の粗大化を防ぐためには、オーステナイト化時に鋼の温度を上げ過ぎないことが重要であるが、高周波焼入れは短時間で鋼を加熱するために、表面から内部に向かって温度勾配が生じ、鋼の表面近傍の温度が高くなる傾向にある。特に、焼入れ深さを深めにする場合には、内部もオーステナイト化に十分な温度に上げなければならないため、表面近傍の温度はさらに高くなる。以上のように、高周波焼入れは特に表面近傍で粗粒が発生しやすい熱処理法であり、このため、高周波焼入れ用鋼は、高い耐粗粒化効果が求められている。 【0003】 これに対して、特開平8-283910号公報には、TiNおよびAlNさらにはNb炭窒化物、V炭窒化物を微細析出させて結晶粒界をピンニングすることにより、結晶粒の粗大化を抑えた高周波焼入用鋼材が示されている。しかし、これらの析出物は十分に微細であるとはいえないため、高周波焼入れ時の耐粗粒化効果が十分でない。 【0004】 本発明者らは、高周波焼入時の耐粗粒化効果を向上させて結晶粒を微細化することによって、疲労強度を向上させた鋼を実現するために、鋭意検討を行い、次の知見を得た。 【0005】 (1)鋼の中に0.055%以上のTiを添加して、Ti炭化物、Ti炭窒化物を微細に析出させることにより、耐粗粒化効果を向上させることができる。 【0006】 (2)上記の(1)の効果と併せて、Ti炭化物、Ti炭窒化物によるマトリックスの分散強化を図ることができる。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】 本発明は、上述の知見に基づき、従来の高周波焼入用鋼において、Tiを0.055〜0.20%添加することにより鋼中にTi炭化物、Ti炭窒化物を微細に分散析出させ、鋼中に微細に分散析出したTi炭化物、Ti炭窒化物が結晶粒界をピンニングすることにより、高周波焼入時の耐粗粒化効果を向上させ、更に、マトリックスの分散強化と結晶粒微細化によって、疲労強度を向上させた鋼を提供することである。 【0008】 【課題を解決するための手段】 上記の課題を解決するためのこの発明の手段は、請求項1の発明では、重量%で、C:0.35〜0.70%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.2〜1.5%、Ti:0.055〜0.20%、N:<0.01%を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、Ti炭化物、Ti炭窒化物を鋼中に微細分散させたことを特徴とする高周波焼入時の結晶粒度特性及び疲労強度特性に優れた鋼である。 【0009】 請求項2の発明では、重量%で、C:0.35〜0.70%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.21〜1.5%、Ti:0.055〜0.20%、N:<0.01%を含有し、さらに選択的に、Cr:0.15%〜2.0%、Mo:0.03%〜1.0%、Ni:0.03%〜3.0%の中から少なくとも1種以上を含み、残部Fe及び不可避不純物からなり、Ti炭化物、Ti炭窒化物を鋼中に微細分散させたことを特徴とする高周波焼入時の結晶粒度特性及び疲労強度特性に優れた鋼である。 【0010】 請求項3の発明では、重量%で、C:0.35〜0.70%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.2〜1.5%、Ti:0.055〜0.20%、N:<0.01%、B:0.0005〜0.0050%を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、Ti炭化物、Ti炭窒化物を鋼中に微細分散させたことを特徴とする高周波焼入時の結晶粒度特性及び疲労強度特性に優れた鋼である。 【0011】 請求項4の発明では、重量%で、C:0.35〜0.70%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.2〜1.5%、Ti:0.055〜0.20%、N:<0.01%、B:0.0005〜0.0050%を含有し、さらに選択的に、Cr:0.15%〜2.0%、Mo:0.03%〜1.0%、Ni:0.03%〜3.0%の中から少なくとも1種以上を含み、残部Fe及び不可避不純物からなり、Ti炭化物、Ti炭窒化物を鋼中に微細分散させたことを特徴とする高周波焼入時の結晶粒度特性及び疲労強度特性に優れた鋼である。 【0012】 本発明は、上記のようにTiを0.055〜0.20%添加することにより鋼中にTi炭化物、Ti炭窒化物を微細分散させることにより、高周波焼入時の耐粗粒化効果を向上させ、更に、鋼中に微細分散したTi炭化物、Ti炭窒化物によるマトリックスの分散強化と結晶粒微細化によって、疲労強度を向上させるものである。 【0013】 本発明の組成割合の限定理由を述べる。 Cは、0.35%未満では焼入時の硬さが低くなり、0.70%を超えると焼入時の表面硬さは飽和し、かつ加工性が低下する。そこで、C:0.35%〜0.70%とする。 【0014】 Siは、鋼の焼入性に効果のある元素であるが、0.05%未満では製鋼時の脱酸効果が十分でなく、0.50%を超えると加工性が著しく低下するため、0.05〜0.50%とする。 【0015】 Mnは、鋼の焼入性に効果のある元素であるが、0.2%未満では焼入性が不足し、1.5%を超えると加工性が低下するため、Mn:0.2〜1.5%とする。 【0016】 Tiは、鋼中にTi炭化物、Ti炭窒化物の形で微細分散して結晶粒界をピンニングすることによって、高周波焼入時の耐粗粒化効果を向上させ、更に、マトリックスを分散強化し、結晶粒を微細化することによって、疲労強度を向上させる元素であるが、0.05%未満では、その多くはTi窒化物となりTiの効果がでない。また、0.20%を超えると加工性が低下するため、Ti:0.055〜0.20%とする。 【0017】 Nは、鋼中でTi窒化物を形成する。Ti炭化物、Ti炭窒化物は高周波焼入時の結晶粒を微細化して疲労強度を向上させるために効果が大きいが、N量が増加すると、Ti窒化物の量が増加し、Ti炭化物、Ti炭窒化物の量が減少してしまう。そのため、N:<0.01%とする。 【0018】 Bは、ごく微量の添加によって鋼の焼入性を著しく向上させる元素であるが、0.0005%未満ではその効果は十分でなく、0.0050%を超えると、逆に焼入性を低下させ靭性を劣化させる。そのため、B:0.0005%〜0.0050%とする。 【0019】 Cr、Mo、Niは、焼入性向上及び疲労寿命向上に効果のある元素で、選択的に添加できるが、少なすぎると効果がなく、多すぎると効果が飽和する。そこで、Cr:0.15〜2.0%、Mo:0.03〜1.0%、Ni:0.03〜3.0%の中から少なくとも1種以上を含むものとする。 【0020】 【発明の実施の形態】 表1に示す化学成分組成の27種の供試鋼(比較例1〜12種、本発明の実施例1〜15種)をそれぞれ100kg真空溶解炉にて溶製し、熱間鍛造で40mmφに鍛伸し、焼きならし後、試験平行部25mmφのねじり疲労試験片に加工し、ねじり疲労試験に供した。更に、ねじり疲労試験後の試験片を用いて、高周波焼入時の鋼のオーステナイト結晶粒度試験を行った。 【0021】 また、本発明の実施の形態の鋼組成を表1の実施例1〜15に示す。実施例1〜5は炭素含有量がS53C鋼を基本とする鋼に相当するものであり、それぞれTiを約0.1%含有するものである。実施例2は実施例1にCrを添加したもの、実施例3は実施例1にMoを添加したもの、実施例4は実施例1にNiを添加したものである。実施例5は実施例1のSi、Mnを低減し、Bを添加したものである。実施例6〜13は、炭素含有量がS65C鋼を基本とする鋼に相当するものである。実施例6〜9は、S65C鋼にTiを0.055〜0.200%含有するものであり、実施例10〜13は実施例6のSi、Mnを低減し、Bを添加し、さらにTiを約0.1%含有する鋼である。実施例11は実施例10にCrを添加したもの、実施例12は実施例10にMoを添加したもの、実施例13は実施例10にNiを添加したものである。実施例14は炭素含有量0.4%相当の鋼(比較例11も同様)にTiを約0.1%含有する鋼である。また、Alは、それぞれの鋼の溶製中に脱酸材として添加して含有されたものである。 【0022】 【実施例】 まず、ねじり疲労試験の試験条件を示す。表1に示す種々の組成材を40mmφ棒鋼に圧延し、図1に示す形状の供試片に加工し、表2に示す条件で供試片の中央部を高周波焼入れし、170℃で焼戻し処理を行い、ねじり疲労試験を行った。ねじり疲労特性は5×105サイクルでの時間強度で評価した。 【0023】 次に、鋼のオーステナイト結晶粒度試験の試験条件を示す。ねじり疲労試験後の試験片から、光学顕微鏡観察試験片を採取し、ピクリン酸アルコール溶液で腐食して400倍で観察し、高周波焼入部の表面から4mmの深さの部位でのオーステナイト結晶粒度を求めた。表1に本発明の実施の形態を示す実施例と比較例を示す。 【0024】 【表1】 【0025】 【表2】 【0026】 比較例1はS53C鋼であり、比較例2、3、4は比較例1にそれぞれCr、Mo、Niを含有させた鋼である。比較例5は比較例1のSi、Mnを低減しBを添加したものである。比較例6はS65C鋼であり、比較例7は比較例6のSi、Mnを低減し、Bを添加したものである。比較例8、9、10は、比較例7にそれぞれCr、Mo、Niを含有させた鋼である。比較例11は炭素含有量0.4%相当の鋼である。 【0027】 これに対し、比較例に比してTiを0.055〜0.200%添加した実施例1〜15では、鋼中に微細に分散したTi炭化物、Ti炭窒化物により、高周波焼入時の耐粗粒化効果を向上させ、更に、マトリックスの分散強化と、結晶粒の微細化により、疲労強度を向上させたものである。 【0028】 【表3】 【0029】 上記で作製した試験片をねじり疲労試験機を用いて試験し、5×105サイクルでの時間強度でねじり疲労強度を評価し、表3に示した。実施例1〜5、7、10〜14はそれぞれTiを約0.1%添加した鋼であるが、対応する比較例1〜11に比べて、ねじり強度が平均で約50MPa上昇している。また、実施例6〜9はTiの添加量を段階的に変更した鋼であるが、実施例6〜9を比べるとTiの添加量が増えるに従ってねじり強度が向上していることがわかる。以上の結果より、実施例はTiを添加することによって、比較例に対してねじり疲労強度が向上していることがわかる。また、Ti量が増加するほどねじり疲労強度が向上することがわかる。 【0030】 【表4】 【0031】 次に、上記でねじり疲労試験を行った後の試験片を用いて、高周波焼入時の鋼のオーステナイト結晶粒度試験を行い、表4に示した。実施例1〜5、7、10〜14はそれぞれTiを約0.1%添加した鋼である。これらは対応する比較例1〜11に比べて、オーステナイト結晶粒度が粒度番号で約3GSN大きくなっている。また、実施例6〜9はTiの添加量を段階的に変更した鋼であるが、実施例6〜9を比べるとTiの添加量が増えるに従って粒度番号が大きくなっていることがわかる。以上の結果より、実施例はTiを添加することによって、比較例に対して高周波焼入時の粗粒化が抑制され、結晶粒が微細化されていることがわかる。 【0032】 以上の実験の結果より、実施例は比較例に対して、Ti炭化物、Ti炭窒化物を鋼中に微細分散させることにより高周波焼入時の耐粗粒化効果が向上し、更に、鋼中に微細分散したTi炭化物、Ti炭窒化物によるマトリックスの分散強化と、結晶粒微細化によって、疲労強度が向上していることがわかる。 【0033】 実施例は比較例に対して、Ti炭化物、Ti炭窒化物等の微細な析出物が確認された。ねじり疲労強度の向上は微細析出物によるマトリックスの分散強化が影響している。 【0034】 【発明の効果】 以上に説明した通り、本発明による鋼は、Tiを0.055〜0.20%添加することにより、鋼中にTi炭化物、Ti炭窒化物を微細に析出させ、鋼中に微細に分散析出したTi炭化物、Ti炭窒化物が結晶粒界をピンニングすることにより、高周波焼入時の耐粗粒化効果を向上させ、更に、マトリックスの分散強化と結晶粒微細化によって、高周波焼入時の結晶粒度特性及び疲労強度特性を向上させることができるという優れた効果を有するものである。 【図面の簡単な説明】 【図1】 供試鋼の疲労試験における供試片の形状を示す図で、(a)は平面図で、(b)は正面図である。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2005-05-27 |
出願番号 | 特願平9-249304 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZA
(C22C)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 奥井 正樹、木村 孔一 |
特許庁審判長 |
沼沢 幸雄 |
特許庁審判官 |
原 賢一 平塚 義三 |
登録日 | 2003-09-05 |
登録番号 | 特許第3469441号(P3469441) |
権利者 | 山陽特殊製鋼株式会社 |
発明の名称 | 高周波焼入用鋼 |
代理人 | 横井 健至 |
代理人 | 今井 毅 |
代理人 | 横井 健至 |