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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 D21H |
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管理番号 | 1125870 |
異議申立番号 | 異議2003-72067 |
総通号数 | 72 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1999-11-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-08-13 |
確定日 | 2005-10-20 |
異議申立件数 | 3 |
事件の表示 | 特許第3377439号「剥離紙と粘着シート及び剥離処理面加工方法」の請求項1ないし7に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3377439号の請求項1ないし7に係る特許を取り消す。 |
理由 |
[1]手続きの経緯 本件特許第3377439号の請求項1〜7に係る発明についての出願は、平成10年5月11日に特許出願され、平成14年12月6日に特許権の設定登録がなされ、その後、その請求項1〜7に係る特許について、特許異議申立人 高良尚志、宮崎幸雄及び株式会社トンボ鉛筆よりそれぞれ特許異議の申立てがなされ、平成17年4月21日付で取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成17年6月8日付けで特許異議意見書及び訂正請求書が提出され、これに対して平成17年6月20日付で訂正拒絶の理由が通知され、その指定期間内である平成17年7月28日付けで意見書が提出されたものである。 [2]訂正の適否についての判断 1.訂正の内容 特許権者が求めている訂正の内容は以下のとおりである。 なお、訂正事項の整理のために、各訂正事項にa〜fの符号を付与する。 (1)訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1において、「【請求項1】表面が剥離処理された帯状素材紙11の長手方向Lに対して30°≦θ≦60°の傾斜角度θをもって傾いた四辺により形成される四角形を底面とする独立した多数の倒立四角錐台状の微小凹部2…を剥離処理面Cに配置したことを特徴とする剥離紙。」とあるのを、 「【請求項1】表面が剥離処理された帯状素材紙11の長手方向Lに伸びて配置された繊維方向に対して30°≦θ≦60°の傾斜角度θをもって傾いた四辺により形成される四角形を底面とする独立した多数の倒立四角錐台状の微小凹部2…を剥離処理面Cに配置したことを特徴とする剥離紙。」に訂正する。 (2)訂正事項b 特許請求の範囲の請求項4において、「【請求項4】表面が剥離処理された帯状素材紙11の長手方向Lに対して30°≦θ≦60°の傾斜角度θをもって傾いた四辺により形成される四角形を底面とする独立した多数の倒立四角錐台状の微小凹部2…を剥離処理面Cに配置した剥離紙と、この剥離処理面Cに積層されて上記微小凹部2…内にまで充填された独立した多数の微小凸部19を有する粘着層14と、この粘着層14に積層された表面シート体15と、から構成されたことを特徴とする粘着シート。」とあるのを、 「【請求項4】表面が剥離処理された帯状素材紙11の長手方向Lに伸びて配置された繊維方向に対して30°≦θ≦60°の傾斜角度θをもって傾いた四辺により形成される四角形を底面とする独立した多数の倒立四角錐台状の微小凹部2…を剥離処理面Cに配置した剥離紙と、この剥離処理面Cに積層されて上記微小凹部2…内にまで充填された独立した多数の微小凸部19を有する粘着層14と、この粘着層14に積層された表面シート体15と、から構成されたことを特徴とする粘着シート。」に訂正する。 (3)訂正事項c 特許請求の範囲の請求項7において、「【請求項7】周方向Mに対して30°≦β≦60°の傾斜角度βをもって傾いた四辺により形成される四角形を底面とする独立した多数の四角錐台状の微小凸部7…を表面に有するエンボスロール8を、表面が剥離処理された帯状素材紙11に対して転動押圧し、かつ、該帯状素材紙11の長手方向Lに対して30°≦θ≦60°の傾斜角度θをもって傾いた四辺により形成される四角形を底面とする独立した多数の倒立四角錐台状の微小凹部2…を上記剥離処理面Cに形成することを特徴とする剥離処理面加工方法。」とあるのを、「【請求項7】周方向Mに対して30°≦β≦60°の傾斜角度βをもって傾いた四辺により形成される四角形を底面とする独立した多数の四角錐台状の微小凸部7…を表面に有するエンボスロール8を、表面が剥離処理された帯状素材紙11に対して転動押圧し、かつ、該帯状素材紙11の長手方向Lに伸びて配置された繊維方向に対して30°≦θ≦60°の傾斜角度θをもって傾いた四辺により形成される四角形を底面とする独立した多数の倒立四角錐台状の微小凹部2…を上記剥離処理面Cに形成することを特徴とする剥離処理面加工方法。」に訂正する。 (4)訂正事項d 明細書の段落0006に「【0006】【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するために、本発明に係る剥離紙は、表面が剥離処理された帯状素材紙の長手方向に対して30°〜60°の傾斜角度をもって傾いた四辺により形成される四角形を底面とする独立した多数の倒立四角錐台状の微小凹部を剥離処理面に配置している。」とあるのを、 「【0006】【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するために、本発明に係る剥離紙は、表面が剥離処理された帯状素材紙の長手方向に伸びて配置された繊維方向に対して30°〜60°の傾斜角度をもって傾いた四辺により形成される四角形を底面とする独立した多数の倒立四角錐台状の微小凹部を剥離処理面に配置している。」に訂正する。 (5)訂正事項e 明細書の段落0007に 「【0007】 また、本発明に係る粘着(加工)シートは、表面が剥離処理された帯状素材紙の長手方向に対して30°〜60°の傾斜角度をもって傾いた四辺により形成される四角形を底面とする独立した多数の倒立四角錐台状の微小凹部を剥離処理面に配置した剥離紙と、この剥離処理面に積層されて上記微小凹部内にまで充填された独立した多数の微小凸部を有する粘着層と、この粘着層に積層された表面シート体と、から構成されている。」とあるのを、 「【0007】 また、本発明に係る粘着(加工)シートは、表面が剥離処理された帯状素材紙の長手方向に伸びて配置された繊維方向に対して30°〜60°の傾斜角度をもって傾いた四辺により形成される四角形を底面とする独立した多数の倒立四角錐台状の微小凹部を剥離処理面に配置した剥離紙と、この剥離処理面に積層されて上記微小凹部内にまで充填された独立した多数の微小凸部を有する粘着層と、この粘着層に積層された表面シート体と、から構成されている。」に訂正する。 (6)訂正事項f 明細書の段落0009に「【0009】 また、本発明に係る剥離処理面加工方法は、周方向に対して30°〜60°の傾斜角度をもって傾いた四辺により形成される四角形を底面とする独立した多数の四角錐台状の微小凸部を表面に有するエンボスロールを、表面が剥離処理された帯状素材紙に対して転動押圧し、かつ、該帯状素材紙の長手方向に対して30°〜60°の傾斜角度をもって傾いた四辺により形成される四角形を底面とする独立した多数の倒立四角錐台状の微小凹部を上記剥離処理面に形成する。」とあるのを、 「【0009】 また、本発明に係る剥離処理面加工方法は、周方向に対して30°〜60°の傾斜角度をもって傾いた四辺により形成される四角形を底面とする独立した多数の四角錐台状の微小凸部を表面に有するエンボスロールを、表面が剥離処理された帯状素材紙に対して転動押圧し、かつ、該帯状素材紙の長手方向に伸びて配置された繊維方向に対して30°〜60°の傾斜角度をもって傾いた四辺により形成される四角形を底面とする独立した多数の倒立四角錐台状の微小凹部を上記剥離処理面に形成する。」に訂正する。 2.訂正の目的の適否、訂正の範囲の適否及び拡張・変更の存否 上記訂正a〜fは、いずれも傾斜角度の測定対象を「帯状素材紙の長手方向」から「帯状素材紙の長手方向に伸びて配置された繊維方向」に変更するものである。 しかし、製造段階で剥離紙の繊維方向が全体的に帯状素材紙の長手方向に配向されるとしても、その方向が帯状素材紙の長手方向と完全に一致するものとは認められないから、上記訂正における測定対象の変更は、実質的にもその内容が変更されるものである。 この点については、権利者自身も、特許異議意見書で、「エンボスロールとペーパーロール(ゴムロール)の間に送り込まれる帯状素材紙に配置される繊維の向きによっては、素材紙に形成される凹部の四辺が、その繊維方向に対し直交して配置される場合もあります。」(5頁16〜19行、9頁14〜17行)と主張し、「帯状素材紙の長手方向」と「帯状素材紙の長手方向に伸びて配置された繊維方向」とが必ずしも一致するものではない旨の主張を行っている。 また、仮に、権利者が訂正拒絶理由に対する意見書の「5.意見の内容(2)」で主張するように、「帯状素材紙の長手方向に伸びて配置された繊維方向」と「帯状素材紙の長手方向」とが同一方向を示し、実質上測定対象の変更ではないとすれば、訂正の前後で実質的な内容に変化はなく、訂正事項a〜cは特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当しないし、訂正前の「帯状素材紙の長手方向」の記載は明りょうであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正にも該当しない。誤記又は誤訳の訂正に該当しないことも明らかである。 同様に、訂正事項d〜fも、訂正前の「帯状素材紙の長手方向」の記載は明りょうであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当しない。 したがって、上記の訂正は特許法第120条の4第2項各号に規定されるいずれの訂正目的にも適合しないし、同法同条第3項において準用する同法第126条第3項の規定にも適合しないので、当該訂正は認められない。 [3]特許異議申し立てについての判断 (1)本件発明 本件特許第3377439号の請求項1〜7に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」〜「本件発明7」という。)は、上記〔2〕に記載のとおり、訂正は認められないので、特許査定時の特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】表面が剥離処理された帯状素材紙11の長手方向Lに対して30°≦θ≦60°の傾斜角度θをもって傾いた四辺により形成される四角形を底面とする独立した多数の倒立四角錐台状の微小凹部2…を剥離処理面Cに配置したことを特徴とする剥離紙。 【請求項2】上記倒立四角錐台の上記底面の一辺の長さ寸法Aを0.1 mm≦A≦2mmの範囲に設定し、かつ、凹部2の深さ寸法Hを0.003 mm≦H≦0.1 mmの範囲に設定し、さらに、隣り合う該凹部2,2の間隔寸法Wを0.02mm≦W≦2mmの範囲に設定した請求項1記載の剥離紙。 【請求項3】四角形が正方形乃至菱形である請求項1又は2記載の剥離紙。 【請求項4】表面が剥離処理された帯状素材紙11の長手方向Lに対して30°≦θ≦60°の傾斜角度θをもって傾いた四辺により形成される四角形を底面とする独立した多数の倒立四角錐台状の微小凹部2…を剥離処理面Cに配置した剥離紙と、この剥離処理面Cに積層されて上記微小凹部2…内にまで充填された独立した多数の微小凸部19を有する粘着層14と、この粘着層14に積層された表面シート体15と、から構成されたことを特徴とする粘着シート。 【請求項5】上記倒立四角錐台の上記底面の一辺の長さ寸法Aを0.1mm≦A≦2mmの範囲に設定し、かつ、凹部2の深さ寸法Hを0.003 mm≦H≦0.1mmの範囲に設定し、さらに、隣り合う該凹部2,2の間隔寸法Wを0.02mm≦W≦2mmの範囲に設定した請求項4記載の粘着シート。 【請求項6】四角形が正方形乃至菱形である請求項4又は5記載の粘着シート。 【請求項7】周方向Mに対して30°≦β≦60°の傾斜角度βをもって傾いた四辺により形成される四角形を底面とする独立した多数の四角錐台状の微小凸部7…を表面に有するエンボスロール8を、表面が剥離処理された帯状素材紙11に対して転動押圧し、かつ、該帯状素材紙11の長手方向Lに対して30°≦θ≦60°の傾斜角度θをもって傾いた四辺により形成される四角形を底面とする独立した多数の倒立四角錐台状の微小凹部2…を上記剥離処理面Cに形成することを特徴とする剥離処理面加工方法。」 (2)平成17年4月21日付けで通知した取消しの理由で引用した刊行物の記載 刊行物1:特開平9-141812号公報(特許異議申立人宮崎幸雄の提出した甲第1号証、特許異議申立人高良尚志の提出した甲第1号証) (1-1) 「【請求項1】紙基材の少なくとも片面に剥離処理を施したのちエンボス加工してなるエンボス剥離紙において、剥離処理面が微細かつ不連続な凹部を多数有し、その反対面が平滑であることを特徴とする粘着シート用エンボス剥離紙。 【請求項2】紙基材の少なくとも片面に剥離処理を施し、剥離面側に金属製のエンボス型付けロールを、背面側に表面が平滑な弾性ロールを使用してエンボス加工したことを特徴とする粘着シート用エンボス剥離紙の製造方法。」(特許請求の範囲) (1-2)「…粘着シートの粘着面もしくは粘着面を保護する剥離シート、あるいはその両方に凹凸を設ける方法としては、通常エンボス加工処理が用いられている。エンボス加工処理とは、圧接された金属製彫刻ロールと弾性ロールとの間をエンボス加工する面を金属ロール側に通すことによって行われている。」(段落0004) (1-3)「図3」には、粘着シート用エンボス剥離紙の製造方法を示す説明図が記載されている。 「(3a)」(彫刻ロールRの表面拡大図)には、ほぼ正方形の四角形を底面とする独立した多数の四角錐台状の微小凸部を表面に有するエンボスロールRが記載されている。 「(3b)」(上下ロールの圧接部分の断面拡大図)には、該エンボスロールRを、表面が剥離処理された帯状紙基材に対して転動押圧することにより、四角形を底面とする独立した多数の倒立四角錐台状の微小凹部が紙基材の剥離処理面に形成されるプロセスが示されている。(4頁) (1-4) 「(実施例1) まず米坪110g/m2の上質紙の両面にポリエチレンを20μm厚さにラミネートした。さらに片方のラミネート面にシリコーン樹脂を塗布して剥離処理を行い、片面剥離紙を得た。 上記によって得た片面剥離紙(水分量4〜8%)に60〜80℃の条件で剥離処理面に65メッシュ、深度65μmの金属彫刻ロールを用い、1300mm幅、総圧130tの条件でエンボス加工を行った。この方法で製造したエンボス剥離紙のエンボス深度は25μmであり、また図2に示すように、剥離面のみエンボス加工され、背面は全く平滑であった。 (実施例2) エンボス加工時に48メッシュ、深度65μmの金属彫刻ロールを使用した外は実施例1とまったく同様にしてエンボス剥離紙を得た。この方法で製造したエンボス剥離紙のエンボス深度は60μmであり、また、実施例1と同様に背面は全く平滑であった。」(段落0017〜0019) (1-5) 「…、前記剥離紙にエンボス加工を施す彫刻ロールの方としては、剥離処理面に微細かつ不連続な凹部を付与できるものであれば種々のものが使用できるが、絹目模様や格子模様が有効であり、特に繊維の流れに逆らった斜め絹目やひし形等のダイヤ模様が特に好適に使用できる。」(段落0013) (1-6) 「【発明の効果】以上述べてきたように、本発明によって、粘着シート用の剥離紙に関する。特に、粘着シートを剥離紙から剥がし、他の物品等に貼り付けたとき、粘着シートと該物品の間に空気が入って表面がふくれることを防止することができ、さらに背面が平滑であることによって加工適性に優れた粘着シート用エンボス剥離紙を得ることができる。」(段落0021) 刊行物3:実開昭56-74045号公報(特許異議申立人宮崎幸雄の提出した甲第6号証) (3-1) 「基材1の片面に剥離層2を成層し、全面に凹凸3を形成した剥離シート4の剥離層2上に粘着剤層5を成層すると共に該粘着剤層5上にシート本体6を張設してなる粘着シート体。」(実用新案登録請求の範囲) (3-2) 第1図及び第2図に具体例の一部剥離した部分拡大断面図が記載され、その両図には剥離層の凹凸形状が粘着剤層に転写されることが示されている。 刊行物4:特開昭59-78285号公報(特許異議申立人宮崎幸雄の提出した甲第7号証、特許異議申立人高良尚志の提出した甲第2号証) (4-1) 「剥離フィルム、粘着剤層および基材フィルムからなる粘着フィルムであって、該剥離フィルムが高さ1〜15μmの連続した凸線状にエンボス加工されている合成樹脂フィルムであることを特徴とする粘着フィルム。」(特許請求の範囲) (4-2) 第3図(剥離フィルムのエンボス加工の例を示す部分拡大図)には、図の上下方向に対し45°程度の傾斜角度を有し、図中の線のところが凸状になっているエンボス加工部の形状が示されている。 (4-3) 「本発明においては、この剥離面に高さ1〜15μm、好ましくは2〜10μmの連続した凸線状に全面がエンボス加工されていることが必須である。この連続した凸線が粘着剤層の粘着面(被着剤との接着面)に転写され連続した凹線を形成する。」(2頁左上欄1〜6行) 刊行物5:特開平3-243677号公報(特許異議申立人宮崎幸雄の提出した甲第8号証) (5-1) 「凹部を多数有する離型フィルムの表面に、凹部に粘着剤が充填され且つその上に連続して所定厚みの粘着剤基層が形成されるように粘着剤を凹部の深さよりも厚く塗工し、次いで該粘着剤基層表面に基材を貼り合わせることを特徴とする再剥離性を有する粘着シートの製造方法。」(特許請求の範囲(2)) (5-2) 「次に本発明の粘着シートの製造方法について説明する。第3図(a)に示すように、多数の凹部10を形成してなる離型フィルム11を用意し、この離型フィルムの表面に、同図(b)に示すように粘着剤を凹部10の深さよりも厚く塗工する。即ち、粘着剤が凹部10を完全に埋め尽すと共に、その上に連続して所定厚みの粘着剤層が形成されるように塗工する。次いで同図(c)に示すように粘着剤層3の表面に基材2を貼り合わせ、再剥離性を有する粘着シート1を得る。 上記工程において、凹部10に充填された粘着剤が粘着剤凸状体5を形成し、その上に連続的に所定厚みをもって塗工された粘着剤が粘着剤基層4を形成する。 離型フィルム11の凹部10の形状としては、上記粘着剤凸状体5の形状に対応したものを使用すればよく、離型フィルム11に凹部10を形成する方法としては、従来公知の熱圧エンボス加工等が挙げられる。」(3頁右下欄3行〜4頁左上欄1行) 刊行物6:実用新案登録第2503717号公報(特許異議申立人株式会社トンボ鉛筆の提出した甲第1号証) (6-1) 「【請求項1】表面シート体1と、散点状に配置された独立した多数の小凸部2…を有する粘着層3と、この多数の小凸部2…に対応して密着する散 点状に配置された独立した多数の小凹部4…を有する剥離紙5と、から構成し、かつ、上記小凸部2…は、上記粘着層3の基本平坦面3aから突出し、該小凸部2…の高さ寸法Hを、3μm〜50μmの範囲に設定したことを特徴とする粘着加工シート。」(実用新案登録請求の範囲) (6-2) 「また、剥離紙5の小凹部4…の深さ寸法は、粘着層3の小凸部2…の高さ寸法Hと同一(3μm〜50μm程度、好ましくは15μm〜25μm)とされる。 次に、この粘着加工シートの製造方法を製造工程順に説明する。 先ず、剥離紙5の剥離処理面Aに、エンボスや印刷等にて、独立した多数の小凹部4…を形成する。」(段落0024〜0026) (6-3) 「次に、図3は、粘着層3の小凸部2…の第1の変形例を示し、この例では、夫々の小凸部2…は四角錐台状とされている。」(段落0040) (6-4) 「この突条に囲まれた平面視正方形状の部分を小凹部4…として剥離紙5を形成した。また、小凹部4…は縦横に1mm間隔毎に配設し、開口の一辺を0.3mmとし、かつ、深さを20μmに設定した。」(段落0051) 刊行物7:特開平6-212131号公報(特許異議申立人株式会社トンボ鉛筆の提出した甲第3号証) (7-1) 「【請求項1】凹凸部を有した剥離シートの剥離層面上に粘着剤溶液を塗布、乾燥し、該剥離シートに粘着剤層を形成させた積層体とし、該積層体の粘着剤面に基材層を貼り合わせることを特徴とする再剥離の容易な装飾用粘着シートの製造方法。」(特許請求の範囲) (7-2) 「上記剥離シート上の凹凸部の形状としては、サインカーブの様な凹凸形状ではなく、好ましくは凸部分が台形状に類似した形状になっていて、先端部分が平坦状になっているものが良い。 上記凹凸形状のさらに詳細な内容としては、凸部と凹部の段差が10〜20μm、凹部の底部の幅が50〜100μmおよび凸部の平坦部の幅が50〜100μmの範囲を有しているものが好ましくは挙げられる。」(段落0012〜0013) (3)対比・判断 1)本件発明1、本件発明3及び本件発明7について (本件発明1,7) 摘示事項(1-1)〜(1-6)から、刊行物1には、「四角形を底面とする独立した多数の四角錐台状の微小凸部を表面に有するエンボスロールを、表面が剥離処理された帯状の紙基材に対して転動押圧し、四角形を底面とする独立した多数の倒立四角錐台状の微小凹部を帯状の紙基材の剥離処理面に形成する剥離処理面加工方法の発明(以下、「引用例1発明A」という)及びその方法により製造される粘着シート用エンボス剥離紙の発明(以下、「引用例1発明B」という)」が記載されているものと認められ、上記エンボスロール(彫刻ロール)の表面形状として、絹目模様や格子模様が有効であり、特に繊維の流れに逆らった斜め絹目やひし形等のダイヤ模様が特に好適に使用できることが記載されている。 本件発明1と引用例1発明Bとを比較すると、両者は、剥離紙が表面を剥離処理された帯状素材紙であり、その剥離処理面に四角形を底面とする独立した多数の倒立四角錐台状の微小凹部が形成されている剥離紙である点で一致している。 また、本件発明7と引用例1発明Aとを比較すると、両者は、エンボスロールが四角形を底面とする独立した多数の四角錐台状の微小凸部を表面に有する点、該エンボスロールを表面が剥離処理された帯状素材紙に対して転動押圧し、剥離処理された帯状素材紙の剥離処理面に四角形を底面とする独立した多数の倒立四角錐台状の微小凹部を形成する剥離処理面加工方法である点で一致している。 したがって、引用例1発明Bは、上記紙基材の剥離処理面上の「微小凹部」が、長手方向Lに対して30°≦θ≦60°の傾斜角度θをもって傾いた四辺により形成される四角形を底面とするもので形成されていることが明確には記載されていない点で本件発明1と相違し、引用例1発明Aは、その点に加えて、エンボスロール表面上の「微小凸部」が周方向Mに対して30°≦β≦60°の傾斜角度βをもって傾いた四辺により形成される四角形を底面とするものであることが明確には記載されていない点で、本件発明7と相違する。 そこで、上記相違点において、傾斜角度θ及びβが上記範囲内の45°程度の場合について検討する。 引用例1発明A及びBには、エンボスロール(彫刻ロール)の表面形状として「特に繊維の流れに逆らった斜め絹目やひし形等のダイヤ模様が特に好適に用いられる」(摘示事項(1-5))との記載もあり、さらに刊行物4の第3図では、剥離フィルムのエンボス加工処理例として、45°程度の傾斜角度の格子状の凸部を有するエンボス加工後の表面形状が示されている。 そして、本件明細書段落0020に記載されているように、紙の繊維は走行方向である長手方向に並ぶとすれば、引用例1発明の上記記載は、紙の長手方向に対して斜め絹目やひし形等のダイヤ模様となるように配置すると解するのが自然であり、また、刊行物4の第3図も図面の上下方向がフィルムの方向(長手方向)と解するのが自然であり、そのフィルムの長手方向に対して45°程度の傾斜角度で設けられた模様と認められる。 したがって、引用例1発明A及びBにおいて、紙基材の剥離処理面上の「微小凹部」を、長手方向Lに対して45°程度の傾斜角度θをもって傾いた四辺により形成される四角形を底面とするもので形成することは、引用例1発明A及びB並びに刊行物4に記載された発明に基づき当業者が容易になし得る程度のことであり、同様にエンボスロール表面上の「微小凸部」を周方向Mに対して45°程度の傾斜角度βをもって傾いた四辺により形成される四角形を底面とするもので形成することも、当業者にとって容易になし得る程度のことである。 よって、本件発明1及び7は、当業者が引用例1発明A及びB並びに刊行物4に記載された発明に基づき容易に想到し得る程度のものである。 (本件発明3) また、微小凹部の四角形を正方形乃至菱形とすることも、摘示事項(1-3)、(1-5)のとおり、引用例1発明Bに記載されているから、本件発明3も引用例1発明B及び刊行物4に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。 2)本件発明4及び本件発明6について (本件発明4) 本件発明4と引用例1発明Bとを比較する。 本件発明4は、剥離紙と該剥離紙の粘着処理面に積層された粘着層及び該粘着層に積層された表面シート体とから構成される粘着シートに関するものである。 剥離紙についての一致点及び相違点は上記1)に記載したとおりであるから、粘着層及び表面シート体について、さらに検討する。 粘着シートは、刊行物3〜5の記載にもみられるように、基材層(本件発明4の表面シート体に相当)、粘着剤層(本件発明4の粘着層に相当)及び剥離層(本件発明4の剥離紙に相当)とから構成されるものである。 そして、引用例1発明Bも粘着シート用エンボス剥離紙であるから、その剥離処理面上に粘着剤層である粘着層が積層され、さらにその粘着層上に基材層となる表面シート体が積層されることは、引用例1発明Bの当然の前提となる事項である。 したがって、本件発明4と引用例1発明Bとは、剥離紙についての相違点以外には、引用例1発明Bは粘着層が剥離紙上の微小凹部内にまで充填された独立した多数の微小凸部を有する粘着層であることが明確に記載されていない点で相違する。 しかし、刊行物3〜5の剥離(離型)層(フィルム)と粘着層の関係についての記載(摘示事項(3-2)、(4-3)、(5-1))から明らかなように、剥離紙上に形成される粘着層の形状は、通常、剥離紙の表面形状を反映したものと認められる。 そうすると、引用例1発明Bにおいて、剥離紙に積層される粘着層を、剥離紙の表面形状とおりに剥離紙の微小凹部内にまで充填された独立した多数の微小凸部を有する粘着層とすることは、刊行物3〜5の記載に基づき、当業者が容易になし得る程度のことである。 また、剥離紙についての判断は、1)で検討したとおりである。 (本件発明6) 微小凹部の四角形を正方形乃至菱形とすることも、摘示事項(1-3)、(1-5)のとおり、引用例1発明Bに記載されているから、本件発明6も引用例1発明B及び刊行物3〜5に記載された発明に基づき当業者が容易になし得る程度のことである。 3)本件発明2及び本件発明5について 本件発明2は、本件発明1の剥離紙に対して、倒立四角錐台の底面の一辺の長さ寸法、凹部の深さ寸法及び隣り合う該凹部の間隔寸法を規定するものである。 また、本件発明5は、本件発明4の粘着シートにおける剥離紙に対して、同様の寸法を規定するものである。 しかし、刊行物6には、粘着加工シートにおいて、剥離紙の凹部の深さ寸法に相当する粘着層の微小凸部の高さが3μm〜50μm(0.003mm〜0.05mm)程度とすること、隣り合う小凹部を縦横に1mm間隔ごとに配設すること及び開口の一辺(底面の一辺の長さ寸法とは異なる)を0.3mmとすることが記載され(摘示事項(6-1)〜(6-4))、刊行物7には、粘着シートに使用される凹凸部を有する剥離シートにおいて、凸部と凹部の段差が10〜20μm(0.01mm〜0.02mm)、凹部の底部の幅が50〜100μm(0.05mm〜0.1mm)であることが記載(摘示事項(7-1)、(7-2))されている。 よって、引用例1発明Bにおいて、倒立四角錐台の底面の一辺の長さ寸法を、例えば、0.1mm程度とすること、凹部の深さ寸法を0.003mm〜0.05mm程度とすること及び隣り合う該凹部の間隔寸法を1mm程度とすることは、刊行物6及び7の記載を考慮すれば当業者が容易になし得る程度のことと認められ、それらの寸法はいずれも本件発明2及び5の寸法範囲に含まれるものである。 したがって、本件発明2は、引用例1発明B、刊行物4に記載された発明及び刊行物6〜7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。 また、本件発明5は、引用例1発明B、刊行物3〜5に記載された発明及び刊行物6〜7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。 〔4〕むすび 以上のとおりであるから、本件の請求項1〜7に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2005-09-01 |
出願番号 | 特願平10-126980 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZB
(D21H)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 橋本 栄和 |
特許庁審判長 |
松井 佳章 |
特許庁審判官 |
石井 克彦 鴨野 研一 |
登録日 | 2002-12-06 |
登録番号 | 特許第3377439号(P3377439) |
権利者 | 日栄化工株式会社 |
発明の名称 | 剥離紙と粘着シート及び剥離処理面加工方法 |
代理人 | 田中 宏 |
代理人 | 中谷 武嗣 |