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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H05B
管理番号 1125876
異議申立番号 異議2003-72109  
総通号数 72 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-09-13 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-08-22 
確定日 2005-10-21 
異議申立件数
事件の表示 特許第3379263号「蛍光ランプ点灯装置」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3379263号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
特許第3379263号の請求項1〜4に係る発明についての出願は、平成7年2月28日に出願されたものであって、平成14年12月13日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、東芝ライテックにより特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知されたものである。

(1)本件発明
本件の請求項1〜4に係る発明(以下、「本件発明1〜4」という。)は、願書に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された次のとおりのものと認める。
請求項1「共振コンデンサ、蛍光ランプ、インダクタンス素子、カレントトランス、および、FETを直列に接続して形成した直列体と、前記直列体の両端に接続された平滑コンデンサとを備えた蛍光ランプ点灯装置において、前記FETのゲートとソースとの間に接続された前記カレントトランスの二次巻線とトリガコンデンサとの直列体と、前記FETのドレインとゲートとの間に接続された前記トリガコンデンサを充電する第1の抵抗体と、前記FETのゲートとソースとの間に接続された前記トリガコンデンサを充電または放電する第2の抵抗体とからなる起動手段を有することを特徴とする蛍光ランプ点灯装置。」
請求項2「起動手段が、前記カレントトランスの二次巻線と前記トリガコンデンサとの前記直列体と、前記直列体の両端間に接続された対向する一組の定電圧ダイオードと、前記FETのドレインとゲートとの間に接続された前記トリガコンデンサを充電する前記第1の抵抗体と、前記直列体の両端間に接続された前記トリガコンデンサを充電または放電する前記第2の抵抗体とからなることを特徴とする請求項1記載の蛍光ランプ点灯装置。」
請求項3「起動手段が、前記カレントトランスの二次巻線と前記トリガコンデンサとの前記直列体と、前記カレントトランスの二次巻線の両端間に接続された対向する一組の前記定電圧ダイオードと、前記FETのドレインとゲートとの間に接続された前記トリガコンデンサを充電する前記第1の抵抗体と、前記直列体の両端間に接続された前記トリガコンデンサを充電または放電する前記第2の抵抗体とからなることを特徴とする請求項1記載の蛍光ランプ点灯装置。」
請求項4「起動手段が、前記カレントトランスの二次巻線と前記トリガコンデンサとの前記直列体と、前記カレントトランスの二次巻線の両端間に接続された対向する一組の前記定電圧ダイオードと、前記FETのドレインとゲートとの間に接続された前記トリガコンデンサを充電する前記第1の抵抗体と、前記FETのソース端子と前記トリガコンデンサとの接続点と、対向して設けられた一組の前記定電圧ダイオードの中点間に、前記トリガコンデンサを充電または放電する前記第2の抵抗体を設けたことを特徴とする請求項1記載の蛍光ランプ点灯装置。」

(2)引用刊行物
(イ)当審で通知した取消しの理由で引用した特開平6-96888号公報(特許異議申立人の提出した甲第2号証。以下、「引用刊行物1」という。)には、図1〜5と共に、以下の事項が記載されている。
(あ)「可飽和変流器の検出巻線により放電ランプに流れる電流を検出し、この検出された電流に従い前記可飽和変流器の出力巻線により1対のスイッチング素子の制御端子に制御信号を入力して主端子間の電流を制御する自励式ハーフブリッジ型のインバータ回路を有する放電灯点灯装置において、
前記少なくとも一方のスイッチング素子の制御端子および主端子間に双方向性の定電圧手段を設けたことを特徴とする放電灯点灯装置。」(特許請求の範囲の請求項1)
(い)「図1に示すように、商用交流電源および安定器13などにて構成された直流電源E間に、インダクタL11およびコンデンサC11の直列回路が接続され、これらインダクタL11およびコンデンサC11の直列回路には、インバータ回路21のスイッチング素子となる電界効果トランジスタQ11のドレイン、ソースおよび同様にスイッチング素子となる電界効果トランジスタQ12のドレイン、ソースが接続されている。
【0025】また、インダクタL11およびコンデンサC11の接続点は、ダイオードD11を介して電界効果トランジスタQ11および電界効果トランジスタQ12との間に接続されるとともに、トリガ素子Q13 を介して電界効果トランジスタQ12のゲートに接続されている。
【0026】さらに、電界効果トランジスタQ11のゲート、ソース間には、抵抗R11および可飽和変流器CT11の出力巻線CT11b が接続され、電界効果トランジスタQ12のゲート、ソース間には、抵抗R12および可飽和変流器CT11の出力巻線CT11cが接続されるとともに、逆特性に直列に接続されたツェナダイオードZD11,ZD12からなる定電圧手段22が接続されている。
【0027】また、このインバータ回路21には、チョークコイルL12および直流カット用のコンデンサC12を介して、蛍光ランプFLのフィラメントFLa ,FLb が接続されている。また、これらフィラメントFLa ,FLb 間には、始動用のコンデンサC13 が接続されている。
【0028】次に、上記実施例の動作について説明する。
【0029】まず、インバータ回路21が起動する際には、インダクタL11およびトリガ素子Q13 を介して電界効果トランジスタQ12をオンさせる。
【0030】そして、蛍光ランプFLがオンしていない状態では、インバータ回路21の出力端子間に、2次電圧が発生している。このため、ツェナダイオードZD11あるいはツェナダイオードZD12がオン状態となり、電界効果トランジスタQ12のオン、オフ周期が短くなりインバータ回路21の発振周波数が低下して、インバータ回路21の出力電圧が増加する。
【0031】その後、蛍光ランプFLが始動点灯すると、インバータ回路21の2次電圧がなくなり、ツェナダイオードZD11およびツェナダイオードZD12のいずれも逆阻止状態となり、電界効果トランジスタQ12のオン、オフ周期が長くなりインバータ回路21の発振周波数が増加して、インバータ回路21の出力電圧が低下する。」(第3頁第4欄第39行〜第4頁第5欄第31行、段落番号【0024】〜【0031】)
(う)図1には、直流電源Eの両端に、直列の電界効果トランジスタQ11及びQ12の両端を接続するとともに、電界効果トランジスタQ11、可飽和変流器CT11の検出巻線CT11a、チョークコイルL12、直流カットのコンデンサC12、放電ランプFLのフィラメントFLa、始動用のコンデンサC13、放電ランプFLのフィラメントFLbを直列に接続した直列体を接続する態様が図示されている。
放電灯と放電ランプFLとは同じものであり、蛍光ランプFLは放電ランプの一種であって、同じ符号FLが付されていることとを考慮しつつ、これらの記載事項及び図示内容を総合すると、上記引用刊行物1には、
「ハーフブリッジ型のインバータ回路の直列の電界効果トランジスタQ11及びQ12の両端及び、その一方の電界効果トランジスタQ11、可飽和変流器CT11の検出巻線CT11a、チョークコイルL12、直流カットのコンデンサC12、蛍光ランプFLのフィラメントFLa、始動用のコンデンサC13、蛍光ランプFLのフィラメントFLbを直列に接続した直列体の両端に、商用交流電源などにて構成された直流電源Eを接続し、
電界効果トランジスタQ11及びQ12のゲート、ソース間に可飽和変流器CT11の出力巻線CT11b 及びCT11cが接続されるとともに、少なくとも一方の電界効果トランジスタQ11又はQ12のゲート、ソース間に逆特性に直列に接続されたツェナダイオードZD11,ZD12が接続され、
インダクタL11およびトリガ素子Q13 により起動する放電灯点灯装置。」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

(ロ)同じく引用した特開平2-70271号公報(特許異議申立人の提出した甲第1号証。以下、「引用刊行物2」という。)には、「自励インバータの起動回路」が記載されており、第1〜7図と共に以下の事項が記載されている。
(あ)「トリガダイオード(5)によるパルスにて起動を図るのも以上の配慮の一端であるが、以下の点で問題があった。
従来回路で必須であるトリガダイオード(5)は、個有の重大な弱点を持っている。すなわち、第1に、その放電電圧は略30〜35V位であるので、入力電源電圧が30V以下のスイッチング電源には使用不可能であること、第2に、その構造上、高品質の通信工業規格を製造メーカが保証せず、総て民生規格であり使用保証温度も0〜85℃内であること、である。
本発明は、3次自励発振巻線の巻線数によって電源の最低電圧の制限をなくし、また使用部品も総て通信工業規格のものの使用が可能であるようなものを得ることを目的とするものである。」(第2頁左上欄第19行〜右上欄第14行)
(い)「『作用』
電源電圧がコンデンサに充電されるとともに、MOSFET(4)のゲート電圧も上昇する。その後コンデンサの充電を続け、この充電電圧すなわち、ゲート電圧がスレシホールド電圧を越すとMOSFETは導通する。さらに詳しくは、ゲート電圧は、高抵抗と飽和リアクトルを介して充電され、このゲート電圧がスレシホールド電圧を越すとMOSFETは、導通を開始する。」(第2頁左下欄第7〜15行)
(う)「第1図において、(8)は主変圧器で、この主変圧器(8)には、1次入力巻線(9)、2次入力巻線(10)、3次自励発振巻線(11)を有する。前記1次入力巻線(9)には、開閉素子であるMOSFET(4)を直列に介して電源(1)に結合されている。また、前記2次出力巻線(10)には、整流平滑回路(15)と出力電圧検出回路(16)を介して出力端子(17)(18)に結合されている。さらに、前記3次巻線(11)の正側端は、抵抗(13)(14)を介してMOSFET(4)のゲートに結合され、負側端はコンデンサ(19)を介して前記MOSFET(4)のソースに結合されている。前記電源(1)の正側と、前記コンデンサ(19)と飽和リアクトル(12)の結合点との間には、高抵抗(21)が挿入されている。前記コンデンサ(19)の両端間に、堰層電圧素子としてのダイオード(22)を結合し、このダイオード(22)のアノード側と、前記3次巻線(11)の正側端との間に、抵抗(23)、ツェナーダイオード(24)、ダイオード(25)を直列に接続した駆動回路(26)を結合し、MOSFET(4)の起動前は飽和リアクトル(12)側がソース側に対して正の電圧を持ち、起動後にはこの正電圧を消滅させるようになっている。」(第2頁右下欄第10行〜第3頁左上欄第11行)
(え)「インバータ回路に入力電圧Viが低圧より供給を開始すると、・・・高抵抗(21)を介してコンデンサ(19)に電圧Vcが供給される。この時MOSFET(4)のゲート、ソース間のインピーダンスはMOSFETの特質としてC1ssのキャパシタンスのみであるので、ゲート電圧Vgはコンデンサ(19)の充電とともに上昇する。これは第3図(a)の状態であり、ゲート電圧Vgはスレシホールド電圧Vgtを越さないので起動しない。その後コンデンサ(19)の充電を続け第3図(b)に至ってVc≒VgがVgt以上になるとMOSFET(4)は導通を開始する。」(第3頁右上欄第6〜18行)
(お)「コンデンサ(19)の両端に、堰層電圧素子(22)と駆動回路(26)を付加した回路の動作を説明する。
もし、上述の回路を有しないときには第4図(a)(b)のような動作となる。すなわち、この第4図(a)(b)においては、高抵抗(21)より流入する電流が継続すると、コンデンサ(19)の充電電圧Vcは第4図(b)のように一定電圧Vcを保持し、この電圧Vcによってゲート電圧Vgは正方向にシフトされる。したがって、T1時のMOSFET(4)の導通時期にゲート電圧Vgは不必要に大きな値を持ち、大きなドレイン電流Idを流して、能率を低下させ、また出力ノイズも増大する。そこで、何等かの方法によって第5図(b)のようにコンデンサ電圧Vcを零とすればT1のゲート時にVgは充分に抑制され、ドレイン電流Idは第5図(a)のようになり、能率は向上し、また出力ノイズも低減する。」(第3頁左下欄第19行〜右下欄第15行)
(か)「第1図におけるダイオード(25)、ツェナーダイオード(24)、抵抗(23)、ダイオード(22)により一旦運転に入った後、3次巻線(11)に誘起した電圧を利用して3次巻線(11)の正側→ダイオード(25)→ツェナーダイオード(24)→抵抗(23)→ダイオード(22)→3次巻線(11)の負側に電流を循環させればコンデンサ(19)の両端の電圧はダイオード(22)の順方向の電圧降下によって第5図(b)のようにクランプされ、確実に確保される。」(第3頁右下欄末行〜第4頁左上欄第8行)
(き)「本発明は上述のようにトリガーダイオードを用いないので、トリガーダイオードの弱点にこだわらずに回路を構成できる。また、回路構成が極めて簡単で、高安定性を有する。さらに、起動後にコンデンサの充電電圧を零にすることにより、ゲート電圧が充分に抑制されて能率が向上し、出力ノイズも低減される。」(第4頁左上欄第10〜16行)
(く)第1図には、高抵抗(21)の一端を電源(1)の正側に接続する態様を実線で示すと共に、破線で、MOSFET(4)のドレインに接続する態様が図示されている。

(3)対比・判断
(イ)本件発明1について
本件発明1と引用発明1とを対比すると、その機能と構造からみて、後者の「チョークコイルL12」は前者の「インダクタンス素子」に、以下、同様に、「可飽和変流器CT11」は「カレントトランス」に、「電界効果トランジスタQ11及びQ12」は「FET」に、「放電灯点灯装置」は「蛍光ランプ点灯装置」にそれぞれ相当している。
また、引用発明1の「電界効果トランジスタQ11、可飽和変流器CT11の検出巻線CT11a、チョークコイルL12、直流カットのコンデンサC12、蛍光ランプFLのフィラメントFLa、始動用のコンデンサC13、蛍光ランプFLのフィラメントFLbを直列に接続した直列体」と、本件発明1の「共振コンデンサ、蛍光ランプ、インダクタンス素子、カレントトランス、および、FETを直列に接続して形成した直列体」とは、コンデンサ、「蛍光ランプ、インダクタンス素子、カレントトランス、および、FETを直列に接続して形成した直列体」である点で共通し、引用発明1の「商用交流電源などにて構成された直流電源E」と、本件発明1の「平滑コンデンサ」とは、ともに、上記「コンデンサ、『蛍光ランプ、インダクタンス素子、カレントトランス、および、FETを直列に接続して形成した直列体』」の両端に接続される電源を構成している点で共通している。
さらに、引用発明1の「インダクタL11およびトリガ素子Q13」はこれらによりインバータ回路を起動するのであるから、起動手段を有しているといえる。
したがって、両者は、
「コンデンサ、蛍光ランプ、インダクタンス素子、カレントトランス、および、FETを直列に接続して形成した直列体と、前記直列体の両端に接続された電源とを備えた蛍光ランプ点灯装置において、起動手段を有する蛍光ランプ点灯装置。」
の点で一致し、
(あ)直列体のコンデンサに関して、本件発明1は「共振コンデンサ」であるのに対して、引用発明1は共振コンデンサでない点、
(い)電源に関して、本件発明1は「直列体の両端に接続された平滑コンデンサとを備え」るのに対して、引用発明1は「商用交流電源などにて構成された直流電源Eを接続」する点、
(う)起動手段に関して、本件発明1は「FETのゲートとソースとの間に接続された前記カレントトランスの二次巻線とトリガコンデンサとの直列体と、前記FETのドレインとゲートとの間に接続された前記トリガコンデンサを充電する第1の抵抗体と、前記FETのゲートとソースとの間に接続された前記トリガコンデンサを充電または放電する第2の抵抗体とからなる起動手段」であるのに対して、引用発明1はそのような起動手段ではない点で相違するものと認める。

そこで上記相違点について検討する。
(あ)の点について
引用発明1の「始動用のコンデンサC13」は、「蛍光ランプFL」の全体に対しては並列に接続するものであるものの、始動時に共振させて高電圧を蛍光ランプに印加させることが当業者にとって常套手段であるし、
ハーフブリッジ型のインバータ回路を用いた放電等点灯回路等、スイッチング素子に直列に共振コンデンサとインダクタンス素子を用いたインバータ回路は周知のものでもあることから、引用発明1において、直列体に共振コンデンサを設けることは、当業者が容易になしうることと認められる。そしてこのことによる格別の効果を奏するとも認められない。

(い)の点について
引用発明1の直流電源Eは、商用交流電源から構成されるものである。また、本件発明1の平滑コンデンサも交流電源に接続された整流回路3の出力端に接続され、整流、平滑して直流入力を得るものである(本件明細書段落番号【0016】及び【0017】等参照。)。そして商用交流電源から直流電源を構成する手段として整流回路で整流した脈流を平滑コンデンサで平滑することが常套手段であるといえることから、単に、当該常套手段を採用することは当業者が適宜なし得ることと認められる。そしてこのことにより、格別の効果を奏するとも認められない。

(う)の点について
(i) 引用刊行物2には、自励インバータの起動回路として、トリガーダイオードを用いないで自励インバータを起動するために、
電源(1)に、自励インバータの主電流を流す主変圧器(8)の1次入力巻線(9)を介して接続された、MOSFET(4)(本件発明1の「FET」に相当する。以下、同様に記載。)のゲートとソースとの間に、主変圧器(8)の3次巻線(11)(「カレントトランスの二次巻線」)とコンデンサ(19)(「トリガコンデンサ」)の直列体を接続し、
電源(1)の正側と、コンデンサ(19)(「トリガコンデンサ」)と主変圧器(8)の3次巻線(11)(「カレントトランスの二次巻線」)の接続点との間に、高抵抗(21)(「第1の抵抗体」)を挿入することにより、
高抵抗(21)(「第1の抵抗体」)を介してコンデンサ(19)(「トリガコンデンサ」)を充電し、この充電電圧がスレシホールド電圧を越すとMOSFET(「FET」)が導通して起動することが記載されていると認められ、
さらに、高抵抗(21)(「第1の抵抗体」)の電源の正極側を破線で、MOSFET(4)(「FET」)のドレインに接続する態様が図示されている。(以下、「引用刊行物2記載事項1」という。)
引用発明1はFETのドレインとソースとの間にカレントトランスの二次巻線を接続するものであり、上記引用刊行物2記載事項1を起動手段として適用することは当業者にとって容易であり、その際、第1の抵抗体は起動時、トリガコンデンサを充電するものであって、そのゲート側の電圧が上昇すればよいのであるから、トリガコンデンサへの充電を、直接トリガコンデンサの端子に接続する代わりに、カレントトランスの二次巻線を介しておこなうようにFETのゲートに接続する程度ことは、単なる設計上の選択的事項にすぎないと認められる。
また、第1の抵抗体の電源側についても、スレシホールド電圧より高い部分により充電電流を流すものであればよいことは明らかであり、かつ引用刊行物2にはFETのドレインに接続する態様が破線で図示されているのであるから、FETのドレインに接続することも、単なる設計上の選択的事項にすぎないと認められる。
(ii)さらに、引用刊行物2には、上記記載事項1に加え、起動後にコンデンサ(「トリガコンデンサ」)の充電電圧を零に、つまり放電するために、
コンデンサ(19)(「トリガコンデンサ」)の両端間にダイオード(22)を結合し、このダイオード(22)のアノード側、つまりFETのソースとトリガコンデンサの接続点と、3次巻線(11)(「カレントトランスの二次巻線」)の正側端との間に、抵抗(23)、ツェナーダイオード(24)、ダイオード(25)を直列に接続した駆動回路(26)を結合し、
3次巻線(11)に誘起した電圧を利用して、駆動回路(26)を介してコンデンサ(19)(「トリガコンデンサ」)に電流を流して放電するとともに、
さらに逆方向に充電されないように、コンデンサ(19)(「トリガコンデンサ」)の両端間に結合したダイオード(22)の順方向の電圧降下によってクランプすることも記載されていると認められる。(以下、「引用刊行物2記載事項2」という。)
引用発明1に上記引用刊行物2記載事項1を適用するとともに、起動後トリガコンデンサの充電電圧を放電するように、上記引用刊行物2記載事項2をも適用し、カレントトランスの二次巻線の正側端とトリガコンデンサのソース側、つまりFETのゲートとソースとの間に、放電のための駆動回路(26)に相当する要素を接続することは、上記引用刊行物2記載事項1の事項を適用するに際して、当業者が普通になし得ることであって、その要素として抵抗を選択することも、そもそも駆動回路(26)に抵抗(23)が含まれるように、電流を流す手段として当業者にとってごく通常の技術手段であるといえる。
なお、第2の抵抗体に関して、本件発明1は「トリガコンデンサを充電または放電する」としているが、発明の詳細な説明にはどのように充電するか全く記載が無く、具体的には放電することが記載されるのみである。また、引用刊行物2に記載の駆動回路(26)もコンデンサ(19)(「トリガコンデンサ」)を、その両端間に結合したダイオード(22)の順方向の電圧降下の電圧まで充電するともいえる。さらに引用刊行物2記載のダイオード(22)について、本件発明1はそれを除外するものではない上、ダイオード(22)はより確実な起動・動作を行うためのものとみることができ、単にこれを省略する程度のことも、当業者が適宜なし得る設計上の事項と認められる。
(iii)そうすると、引用発明1に引用刊行物2に記載の事項(引用刊行物2記載事項1及び2)を適用して、相違点(う)に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得ることと認められる。
なお、引用刊行物2の駆動回路(26)には、第2のダイオード(25)及びツェナーダイオード(24)が含まれるが、本件発明1はこのような構成を除外するものではない。たとえ、これらを有しないものとしても、単にこれを省略することは、当業者が適宜なし得る設計上の選択的事項であるといえる。
特許権者が平成17年7月19日付特許異議意見書第4頁第20〜22行において主張する、電源電圧が低い時にインバータを起動しないようにすることができる、という作用についても、そもそも明細書に記載されるものではなく、かつそのように作用する構成としたというものでもない。引用刊行物2に記載の起動回路も電源電圧がスレシホールド電圧より下がれば起動することはなく、また当業者であれば、第2のダイオード(25)及びツェナーダイオード(24)を除く時には、当然そのような作用効果を奏するものであって、当業者が容易に想到し得るものと認められる。

そして、これら(あ)〜(う)の点を合わせ考えても、本件発明1は、その作用効果が格別であるとは言えず、当業者が引用発明1及び引用刊行物2に記載の事項に基いて容易になし得ることと認められる。

(ロ)本件発明2について
本件発明2と引用発明1とを対比すると、その機能と構造からみて、後者の「チョークコイルL12」は前者の「インダクタンス素子」に、以下、同様に、「可飽和変流器CT11」は「カレントトランス」に、「電界効果トランジスタQ11及びQ12」は「FET」に、「放電灯点灯装置」は「蛍光ランプ点灯装置」に、「ツェナダイオードZD11,ZD12」は「定電圧ダイオード」にそれぞれ相当している。
また、引用発明1の「逆特性に直列に接続されたツェナダイオードZD11,ZD12」は本件発明2の「対向する一組の定電圧ダイオード」に相当し、引用発明1の「電界効果トランジスタQ11、可飽和変流器CT11の検出巻線CT11a、チョークコイルL12、直流カットのコンデンサC12、蛍光ランプFLのフィラメントFLa、始動用のコンデンサC13、蛍光ランプFLのフィラメントFLbを直列に接続した直列体」と本件発明2の「共振コンデンサ、蛍光ランプ、インダクタンス素子、カレントトランス、および、FETを直列に接続して形成した直列体」とは、コンデンサ、「蛍光ランプ、インダクタンス素子、カレントトランス、および、FETを直列に接続して形成した直列体」である点で共通し、引用発明1の「商用交流電源などにて構成された直流電源E」と本件発明2の「平滑コンデンサ」とは、ともに上記「コンデンサ、『蛍光ランプ、インダクタンス素子、カレントトランス、および、FETを直列に接続して形成した直列体』」の両端に接続される電源を構成している点で共通している。
さらに、引用発明1の「インダクタL11およびトリガ素子Q13」はこれらによりインバータ回路を起動するのであるから、起動手段を有しているといえる。
したがって、両者は、
「コンデンサ、蛍光ランプ、インダクタンス素子、カレントトランス、および、FETを直列に接続して形成した直列体と、前記直列体の両端に接続された電源とを備えた蛍光ランプ点灯装置において、起動手段を有する蛍光ランプ点灯装置。」
の点で一致し、
(あ)直列体のコンデンサに関して、本件発明2は「共振コンデンサ」であるのに対して、引用発明1は共振コンデンサでない点、
(い)電源に関して、本件発明2は「直列体の両端に接続された平滑コンデンサとを備え」るのに対して、引用発明1は「商用交流電源などにて構成された直流電源Eを接続」する点、
(う)起動手段に関して、本件発明2は「前記カレントトランスの二次巻線と前記トリガコンデンサとの前記直列体と、前記直列体の両端間に接続された対向する一組の定電圧ダイオードと、前記FETのドレインとゲートとの間に接続された前記トリガコンデンサを充電する前記第1の抵抗体と、前記直列体の両端間に接続された前記トリガコンデンサを充電または放電する前記第2の抵抗体とからなる」ものであるのに対して、引用発明1はそのようなものではない点で相違するものと認める。

そこで上記相違点について検討する。
(あ)及び(い)の点については、上記「(イ)本件発明1について」の「(あ)の点について」及び「(い)の点について」で検討したとおりである。

(う)の点について
この点に関する本件発明2の構成は、実質的には、「(イ)本件発明1について」の相違点(う)に関する本件発明1の構成に、「(前記カレントトランスの二次巻線と前記トリガコンデンサとの)前記直列体の両端間に接続された対向する一組の定電圧ダイオード」を付加したものであると認められる。そして、(カレントトランスの二次巻線とトリガコンデンサとの)前記直列体は、請求項1においてFETのゲートとソースとの間に接続されるのであるから、対向する一組の定電圧ダイオードはFETのゲートとソースとの間に接続されるものである。
一方、引用発明1は「少なくとも一方の電界効果トランジスタQ11又はQ12のゲート、ソース間に逆特性に直列に接続されたツェナダイオードZD11,ZD12を接続され」たものであるから、少なくとも一方のFETのゲート、ソース間に「対向する一組の定電圧ダイオード」を接続するものである。引用発明1の「対向する一組の定電圧ダイオード」を(請求項1の)直列体の接続されるFETのゲート、ソース間に接続することは、当業者にとって、どのFETのゲートとソースとの間に接続するかという、単なる設計上の択一的事項にすぎず、「直列体の両端間に接続された対向する一組の定電圧ダイオード」を付加する点は実質的な相違点とはいえない。
そうすると、(う)に関するその余の点は、既に「(イ)本件発明1について」の「(う)の点について」で述べたとおりであり、引用発明1に引用刊行物2に記載の事項を適用して、相違点(う)に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得ることと認められる。
なお、対向する一組の定電圧ダイオードの作用・効果が、明細書中に全く記載されておらず、具体的に、FETのゲート回路のどこに挿入するかについても当業者にとって単なる設計上に事項であると認められる。

そして、これら(あ)〜(う)の点を合わせ考えても、本件発明2は、その作用効果が格別であるとは言えず、当業者が引用発明1及び引用刊行物2に記載の事項に基いて容易になし得ることと認められる。

(ハ)本件発明3について
本件発明3と引用発明1とを対比すると、その機能と構造からみて、後者の「チョークコイルL12」は前者の「インダクタンス素子」に、以下、同様に、「可飽和変流器CT11」は「カレントトランス」に、「電界効果トランジスタQ11及びQ12」は「FET」に、「放電灯点灯装置」は「蛍光ランプ点灯装置」に、「ツェナダイオードZD11,ZD12」は「定電圧ダイオード」に、「可飽和変流器CT11の出力巻線CT11b 及びCT11c」は「カレントトランスの二次巻線」にそれぞれ相当している。
また、引用発明1の「逆特性に直列に接続されたツェナダイオードZD11,ZD12」は本件発明3の「対向する一組の定電圧ダイオード」に相当し、引用発明1の「電界効果トランジスタQ11、可飽和変流器CT11の検出巻線CT11a、チョークコイルL12、直流カットのコンデンサC12、蛍光ランプFLのフィラメントFLa、始動用のコンデンサC13、蛍光ランプFLのフィラメントFLbを直列に接続した直列体」と本件発明3の「共振コンデンサ、蛍光ランプ、インダクタンス素子、カレントトランス、および、FETを直列に接続して形成した直列体」とは、コンデンサ、「蛍光ランプ、インダクタンス素子、カレントトランス、および、FETを直列に接続して形成した直列体」である点で共通し、引用発明1の「商用交流電源などにて構成された直流電源E」と本件発明3の「平滑コンデンサ」とは、ともに上記「コンデンサ、『蛍光ランプ、インダクタンス素子、カレントトランス、および、FETを直列に接続して形成した直列体』」の両端に接続される電源を構成している点で共通している。
さらに、引用発明1の「インダクタL11およびトリガ素子Q13」はこれらによりインバータ回路を起動するのであるから、起動手段を有しているといえる。
したがって、両者は、
「コンデンサ、蛍光ランプ、インダクタンス素子、カレントトランス、および、FETを直列に接続して形成した直列体と、前記直列体の両端に接続された電源とを備えた蛍光ランプ点灯装置において、起動手段を有する蛍光ランプ点灯装置。」
の点で一致し、
(あ)直列体のコンデンサに関して、本件発明3は「共振コンデンサ」であるのに対して、引用発明1は共振コンデンサでない点、
(い)電源に関して、本件発明3は「直列体の両端に接続された平滑コンデンサとを備え」るのに対して、引用発明1は「商用交流電源などにて構成された直流電源Eを接続」する点、
(う)起動手段に関して、本件発明3は「前記カレントトランスの二次巻線と前記トリガコンデンサとの前記直列体と、前記カレントトランスの二次巻線の両端間に接続された対向する一組の前記定電圧ダイオードと、前記FETのドレインとゲートとの間に接続された前記トリガコンデンサを充電する前記第1の抵抗体と、前記直列体の両端間に接続された前記トリガコンデンサを充電または放電する前記第2の抵抗体とからなる」ものであるのに対して、引用発明1はそのようなものではない点で相違するものと認める。

そこで上記相違点について検討する。
(あ)及び(い)の点については、上記「(イ)本件発明1について」の「(あ)の点について」及び「(い)の点について」で検討したとおりである。

(う)の点について
この点に関する本件発明3の構成は、実質的には、「(イ)本件発明1について」の相違点(う)に関する本件発明1の構成に、「前記カレントトランスの二次巻線の両端間に接続された対向する一組の前記定電圧ダイオード」を付加したものであると認められる。
しかしながら、引用発明1は「電界効果トランジスタQ11及びQ12(FET)のゲート、ソース間に可飽和変流器CT11の出力巻線CT11b 及びCT11c(カレントトランスの二次巻線)が接続されるとともに、少なくとも一方の電界効果トランジスタQ11又はQ12(FET)のゲート、ソース間に逆特性に直列に接続されたツェナダイオードZD11,ZD12(対向する一組の定電圧ダイオード)を接続され」たものであるから、少なくとも一方のFETのゲート、ソース間に接続される、カレントトランスの二次巻線の両端間に、対向する一組の定電圧ダイオードを接続するものである。
引用発明1に引用刊行物2に記載の事項を適用するに際して、コンデンサ(19)(「トリガコンデンサ」)の電圧は3次巻線(11)(「カレントトランスの二次巻線」)を介してFETのゲート、ソース間に印加されればよく、対向する一組の定電圧ダイオードはその作動からみて3次巻線(11)の出力がFETのゲート、ソース間に印加する部分に接続されればよいのであるから、単に、トリガコンデンサを、カレントトランスの二次巻線及び対向する一組の定電圧ダイオードより、FETのソース側に設けることは当業者が適宜選択し得る設計的事項である。
また、「(ロ)本件発明2について」の「(う)の点について」で述べたように、対向する一組の定電圧ダイオードを(請求項1の)直列体に接続されるFETのゲート、ソース間に接続することも、当業者にとって、単なる設計上の択一的事項にすぎない。
そうすると、(う)に関するその余の点は、既に「(イ)本件発明1について」の「(う)の点について」で述べたとおりであり、引用発明1に引用刊行物2に記載の事項を適用して、相違点(う)に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得ることと認められる。

そして、これら(あ)〜(う)の点を合わせ考えても、本件発明3は、その作用効果が格別であるとは言えず、当業者が引用発明1及び引用刊行物2に記載の事項に基いて容易になし得ることと認められる。

(ニ)本件発明4について
本件発明4と引用発明1とを対比すると、その機能と構造からみて、後者の「チョークコイルL12」は前者の「インダクタンス素子」に、以下、同様に、「可飽和変流器CT11」は「カレントトランス」に、「電界効果トランジスタQ11及びQ12」は「FET」に、「放電灯点灯装置」は「蛍光ランプ点灯装置」に、「ツェナダイオードZD11,ZD12」は「定電圧ダイオード」に、「可飽和変流器CT11の出力巻線CT11b 及びCT11c」は「カレントトランスの二次巻線」にそれぞれ相当している。
また、引用発明1の「逆特性に直列に接続されたツェナダイオードZD11,ZD12」は本件発明4の「対向する一組の定電圧ダイオード」に相当し、引用発明1の「電界効果トランジスタQ11、可飽和変流器CT11の検出巻線CT11a、チョークコイルL12、直流カットのコンデンサC12、蛍光ランプFLのフィラメントFLa、始動用のコンデンサC13、蛍光ランプFLのフィラメントFLbを直列に接続した直列体」と本件発明4の「共振コンデンサ、蛍光ランプ、インダクタンス素子、カレントトランス、および、FETを直列に接続して形成した直列体」とは、コンデンサ、「蛍光ランプ、インダクタンス素子、カレントトランス、および、FETを直列に接続して形成した直列体」である点で共通し、引用発明1の「商用交流電源などにて構成された直流電源E」と本件発明4の「平滑コンデンサ」とは、ともに上記「コンデンサ、『蛍光ランプ、インダクタンス素子、カレントトランス、および、FETを直列に接続して形成した直列体』」の両端に接続される電源を構成している点で共通している。
さらに、引用発明1の「インダクタL11およびトリガ素子Q13」はこれらによりインバータ回路を起動するのであるから、起動手段を有しているといえる。
したがって、両者は、
「コンデンサ、蛍光ランプ、インダクタンス素子、カレントトランス、および、FETを直列に接続して形成した直列体と、前記直列体の両端に接続された電源とを備えた蛍光ランプ点灯装置において、起動手段を有する蛍光ランプ点灯装置。」
の点で一致し、
(あ)直列体のコンデンサに関して、本件発明4は「共振コンデンサ」であるのに対して、引用発明1は共振コンデンサでない点、
(い)電源に関して、本件発明4は「直列体の両端に接続された平滑コンデンサとを備え」るのに対して、引用発明1は「商用交流電源などにて構成された直流電源Eを接続」する点、
(う)起動手段に関して、本件発明4は「前記カレントトランスの二次巻線と前記トリガコンデンサとの前記直列体と、前記カレントトランスの二次巻線の両端間に接続された対向する一組の前記定電圧ダイオードと、前記FETのドレインとゲートとの間に接続された前記トリガコンデンサを充電する前記第1の抵抗体と、前記FETのソース端子と前記トリガコンデンサとの接続点と、対向して設けられた一組の前記定電圧ダイオードの中点間に、前記トリガコンデンサを充電または放電する前記第2の抵抗体を設けた」ものであるのに対して、引用発明1はそのようなものではない点で相違するものと認める。

そこで上記相違点について検討する。
(あ)及び(い)の点については、上記「(イ)本件発明1について」の「(あ)の点について」及び「(い)の点について」で検討したとおりである。

(う)の点について
この点に関する本件発明4の構成は、実質的には、「(イ)本件発明1について」の相違点(う)に関する本件発明1の構成において、「前記カレントトランスの二次巻線の両端間に接続された対向する一組の前記定電圧ダイオード」を付加するとともに、「第2の抵抗体」のゲート側を「対向して設けられた一組の前記定電圧ダイオードの中点間に」設けたものと認められる。
しかしながら、引用発明1は「電界効果トランジスタQ11及びQ12(FET)のゲート、ソース間に可飽和変流器CT11の出力巻線CT11b 及びCT11c(カレントトランスの二次巻線)が接続されるとともに、少なくとも一方の電界効果トランジスタQ11又はQ12(FET)のゲート、ソース間に逆特性に直列に接続されたツェナダイオードZD11,ZD12(対向する一組の定電圧ダイオード)を接続され」たものであるから、少なくとも一方のFETのゲート、ソース間に接続される、カレントトランスの二次巻線の両端間に、対向する一組の定電圧ダイオードを接続するものである。
「(ロ)本件発明3について」の「(う)の点について」で述べたと同様に、引用発明1に引用刊行物2に記載の事項を適用するに際して、コンデンサ(19)(「トリガコンデンサ」)の電圧は3次巻線(11)(「カレントトランスの二次巻線」)を介してFETのゲート、ソース間に印加されればよく、対向する一組の定電圧ダイオードはその作動からみて3次巻線(11)の出力がFETのゲート、ソース間に印加する部分に接続されればよいのであるから、単に、トリガコンデンサを、カレントトランスの二次巻線及び対向する一組の定電圧ダイオードより、FETのソース側に設けることは当業者が適宜選択し得る設計的事項である。
また、「(ロ)本件発明2について」の「(う)の点について」で述べたように、対向する一組の定電圧ダイオードを(請求項1の)直列体に接続されるFETのゲート、ソース間に接続することも、当業者にとって、単なる設計上の択一的事項にすぎない。
さらに、引用刊行物2に記載の駆動回路(26)は、コンデンサ(19)(「トリガコンデンサ」)の電荷を放電するように、3次巻線(11)(「カレントトランスの二次巻線」)に誘起した電圧を利用してトリガコンデンサのソース側に接続するものであって、対向して設けられた一組の前記定電圧ダイオードがカレントトランスの二次巻線に接続されている場合に、その定電圧ダイオードを利用し、これを介するように、上記駆動回路(26)を設ける程度のことに、格別の困難性は認められず、当業者が適宜なし得る設計的事項であるといえる。
そして、(う)に関するその余の点は、既に「(イ)本件発明1について」の「(う)の点について」で述べたとおりであり、引用発明1に引用刊行物2に記載の事項を適用して、相違点(う)に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得ることと認められる。
なお、対向する一組の定電圧ダイオードの作用・効果が、明細書中に全く記載されておらず、具体的に、FETのゲート回路のどこに挿入するかについても当業者にとって単なる設計上に事項であると認められる。そして第2の抵抗体についてもどのように充電するか全く記載が無く、具体的には放電することが記載されるのみである。
特許権者が平成17年7月19日付特許異議意見書第4頁第23〜33行において主張する、定電圧ダイオードの値と第1の抵抗体の抵抗値、第2の抵抗体の抵抗値を適切に選ぶことによりトリガコンデンサの充電電圧を所望の値に設定することが容易になるという作用についても、そもそも明細書に記載されるものではなく、かつ、そのように作用する構成としたというものでもない。引用刊行物2に記載の起動装置もダイオード(22)によりコンデンサ(19)充電電圧を順方向の電圧降下にクランプするものであって、当該効果についても、当業者であれば、容易に認識しうると認められる。

さらに、これら(あ)〜(う)の点を合わせ考えても、本件発明4は、その作用効果が格別であるとは言えず、当業者が引用発明1及び引用刊行物2に記載の事項に基いて容易になし得ることと認められる。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本件発明1〜4は、引用発明1及び引用刊行物2に記載の事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明1〜4についての特許は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明1〜4についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2005-09-02 
出願番号 特願平7-40848
審決分類 P 1 651・ 121- Z (H05B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 仁木 浩  
特許庁審判長 阿部 寛
特許庁審判官 下原 浩嗣
平上 悦司
登録日 2002-12-13 
登録番号 特許第3379263号(P3379263)
権利者 松下電器産業株式会社
発明の名称 蛍光ランプ点灯装置  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 坂口 智康  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 和泉 順一  

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