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審決分類 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01L
審判 一部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H01L
審判 一部申し立て 2項進歩性  H01L
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
管理番号 1125890
異議申立番号 異議2003-73217  
総通号数 72 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-11-04 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-25 
確定日 2005-10-21 
異議申立件数
事件の表示 特許第3432997号「半導体装置に使用する絶縁膜」の請求項1ないし7、24ないし26に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3432997号の請求項1ないし5、7、24ないし26に係る特許を取り消す。 同請求項6に係る特許を維持する。 
理由 【1】手続の経緯
特許第3432997号の発明は、平成8年4月23日に特許出願され、平成15年5月23日にその特許権の設定登録がなされたものである。その後、一部の請求項である請求項1〜7、24〜26に係る特許について、東谷満より特許異議の申立てがなされ、平成17年4月25日付けで、請求項1〜5、7、24〜26に係る特許について、取消理由が通知されたが、指定期間内に特許権者から何らの応答もなかった。

【2】平成17年4月25日付けの取消理由通知の概要
平成17年4月25日付けで通知した取消理由通知の概要は以下の通りである。
[1].本件特許の請求項1〜5、7、24〜26に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物である下記引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものである。
[2].本件特許の請求項1〜5、7、24〜26に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物である下記引用例1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。

引用例1:特開平2-234430号公報(異議申立の甲第2号証)

1.証拠の記載事実
引用例1には以下の記載がある。
(1)「(1)シリコン基板上に形成された、電子部品、及び該電子部品の保護膜あるいは多層配線間の層間絶縁膜としての薄膜を有する半導体装置において、上記薄膜として、膜中に含まれるSi-H結合が4×1021個/cm3以下のシリコン窒化膜又はシリコン酸窒化膜を用いたことを特徴とする半導体装置。」(第1頁左欄第5行〜第12行)
(2)「各P-SiN膜、ECRSiN膜(R.T.)、ECRSiN膜(300℃)で作成した膜のSi-H、N-H結合の個数について、各々1.0×1022、1.0×1022;0.3×1022、1.5×1022; 0.1×1022、0.6×1022 である例」(第2頁右下欄表1の記載内容)
(3)「〔発明の効果〕
以上のように、この発明に係る半導体装置によれば、パッシベーション膜や層間絶縁膜として、その膜中に含まれるSi-H結合が4×1021個/cm3以下のシリコン窒化膜あるいはシリコン酸窒化膜を用いたので、ゲート絶縁膜の信頼性を向上することができる。」(第3頁右下欄第8行〜第14行)

2.対比・判断
引用例1において、上記摘記事項(2)には、絶縁膜中のN-H結合量としてECRSiN膜(R.T.)について1.5×1022/cm3の例が開示されており、この値のN-H結合量を実現する為の窒素濃度の最小値を考えると、窒素原子の5本の結合手が全て水素と結合していると仮定した場合で、このときの窒素濃度は1 .5×1022/cm3の1/5の3×1021/cm3であり、また、水素を含むSiN膜においては、窒素原子は水素原子との結合のみならずシリコン原子又は窒素原子とも結合していると考えられので、ECRSiN膜(R.T.)の窒素濃度は3×1021/cm3以上と考えられる。(異議申立書第9頁第17〜21行参照。)
よって、引用例1には、
Si-H結合を有するガスを含む原料ガスを用いてCVD法により形成される絶縁膜を有する半導体装置において、前記絶縁膜中のSi-H結合量は、4×1021個/cm3以下であり、かつ、前記絶縁膜中の窒素濃度は、3×1021/cm3以上であることを特徴とする半導体装置
の開示があるものといえる。
したがって、本件発明1〜5,7は、引用例1に記載された発明と同一、または、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものと認められる。
また、本件発明24〜26は、本件発明1〜5,7に記載された絶縁膜の形成方法に関する発明として、CVD法による通常の製造方法であり、引用例1に記載された発明、または引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものと認められる。

【3】取消理由についての判断
前記取消理由の内容は妥当なものであるから、本件の請求項1〜5、7、24〜26に係る特許は、その取消理由によって取り消すべきものと認められる。

【4】特許異議申立て理由の概要
特許異議申立人 東谷満は、下記の甲第1〜5号証を提示し、前記取消理由通知の対象外とした本件の請求項6に係る発明につき、本件の請求項6に係る発明は、前記甲第1号証に記載された発明、または甲第1〜5号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項6に係る発明の特許は、特許法第29条第1項第3号又は同法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきである、と主張している。

甲第1号証:特公平7-54750号公報
甲第2号証:特開平2-234430号公報
甲第3号証:特公平7-52673号公報
甲第4号証:特公平6-91083号公報
甲第5号証:本件の出願段階での平成14年11月11日付けの拒絶理由通
知書

【5】本件請求項6に係る発明
本件の請求項6に係る発明(以下、「本件発明6」という)は、請求項1に係る発明を引用しているので、その特許明細書の特許請求の範囲の請求項1及び請求項6に記載された事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】Si-H結合を有するガスを含む原料ガスを用いてCVD法により形成される絶縁膜を有する半導体装置において、前記絶縁膜中のSi-H結合量は、0.6×1021cm-3以下であり、かつ、前記絶縁膜中の窒素濃度は、3×1021cm-3以上であることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】前記絶縁膜の屈折率は、1.65以上であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。」

【6】甲第1号証〜甲第5号証の記載内容
[1]甲第1号証の記載内容
(1-1)【特許請求の範囲】に、
「【請求項1】プラズマ化学気相成長法により形成され発光層に接するSiN:H膜を上部絶縁層または下部絶縁層の少なくとも一方に備えた薄膜EL素子において、上記SiN:H膜中のN-H結合数が1.4×1022/cm3以下であることを特徴とする薄膜EL素子。」と記載されている。
(1-2)第2頁右欄第5〜8行に
「上記SiN:H膜4および6を形成する際、原料ガスとしてSiH4ガスとN2ガスを用いて、プラズマCVDの基板温度,入力パワーおよび反応系ガス圧などの諸条件を変化させて形成したところ、」と記載されている。

[2]甲第2号証の記載内容
(2-1)第1頁左欄5〜12行には、
「(1)シリコン基板上に形成された、電子部品、及び該電子部品の保護膜あるいは多層配線間の層間絶縁膜としての薄膜を有する半導体装置において、上記薄膜として、膜中に含まれるSi-H結合が4×1021個/cm3以下のシリコン窒化膜又はシリコン酸窒化膜を用いたことを特徴とする半導体装置。」
と記載されている。
(2-2)第3頁右下欄8〜14行には、
「(発明の効果)
以上のように、この発明に係る半導体装置によれば、パッシベーション膜や層間絶縁膜として、その膜中に含まれるSi-H結合が4×1021個/cm3以下のシリコン窒化膜又はシリコン酸窒化膜を用いたので、ゲート絶縁膜の信頼性を向上することができる効果がある。」と記載されている。

[3]甲第3号証の記載内容
(3-1)第1頁左欄2〜8行には、
「【請求項1】透光性基板に透明電極,下部絶縁層,発光層,上部絶縁層および背面電極を順次積層した薄膜EL素子において、上記絶縁層の少くとも一部がプラズマCVD法により形成したSixNyOz:H膜であり、上記SixNyOz:H膜の膜中の水素量が2×1022atoms/cm3以下であることを特徴とする薄膜EL素子。」と記載されている。
(3-2)第2図から第6図には、各々第2図にSixNyOz:H膜中の酸素/窒素の組成比z/yとN2中のN2O分圧との関係、第3図に上記膜中の珪素/窒素の組成比x/yとN2中のN2O分圧との関係、第4図にエージングによる発光開始電圧Vthの移動を示す関係、第5図は成膜速度とSiH4流量比の関係、第6図は輝度とSiH4流量比の関係、が記載されている。

[4]甲第4号証の記載内容
(4-1)【特許請求の範囲範囲】には、
「【請求項1】Au電極を備えたGaAs素子上に、電子サイクロトロン共鳴プラズマCVD装置を用いてN2ガスとSiH4ガスから形成された窒化シリコン膜を有する半導体装置において、上記N2ガス流量と上記SiH4ガス流量を選択することにより、上記窒化シリコン膜の応力を4×109dyne/cm2以下の圧縮応力として、該窒化シリコン膜の上記Au電極を備えたGaAs素子上からの剥離を防止すると共に、該窒化シリコン膜の耐酸性、緻密性を良好としたことを特徴とする半導体装置。」が記載されている。
(4-2)第2頁右欄7行〜29行には、
「上述のように、ECRプラズマCVD装置を用いて窒化シリコン膜が形成されるが、SiH4ガス流量、N2ガス流量を変化させることにより種々の圧縮応力を有する窒化シリコン膜が形成できる。
SiH4ガス流量 N2ガス流量 マイクロ波出力
(例1) 10sccm 10sccm 600W
(例2) 10sccm 13sccm 600W
(例3) 10sccm 15sccm 600W
(例4) 10sccm 20sccm 600W
(例5) 15sccm 20sccm 600W
(例6) 15sccm 22sccm 600W
上記の条件でGaAsMESFET上に窒化シリコン膜を形成すると、圧縮応力は下記のようになった
(例1)12×109dyne/cm2(例2) 5×109dyne/cm2(例3)5×109dyne/cm2(例4)1×109dyne/cm2(例5)5×109dyne/cm2(例6)4×109dyne/cm2また、(例1)〜(例6)の条件で素子上の0%、20%、40%、70%、100%がAu電極であるGaAsMESFET上に窒化シリコン膜を作製した(ただし、0%の場合はAu電極なし、100%の場合は全面Au電極)。」と記載されている。

[5]甲第5号証
拒絶理由通知書中の備考欄には、「〜誘電率は屈折率の2乗であり、誘電率が2.72以上のものは通常使用されるものである。〜」と記載されている。

【7】特許異議申立てについての判断
[1]本件発明6について
前記甲第1〜4号証には、本件発明6の発明特定事項である「絶縁膜の屈折率は、1.65以上であること」という点について、なんらの記載も示唆もない。
また、甲第5号証の記載は、誘電率と屈折率は2乗の関係に基づくものとという意味であるが、正確には、比透磁率等の他の物理的要素を考慮する必要があり、誘電率の値を持って屈折率が一義的に定まるものとは認められない。
そして、本件発明6は、当該発明特定事項により、特許明細書の記載に見られるように「P-CVD膜の屈折率を1.65以上にすることで、耐湿性試験の不良率を0%にすることができる。」という効果を奏する。
したがって、本件発明6は、前記甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到できたものとは認められない。
また、その余の特許異議申立ての証拠を検討しても、本件発明6に係る特許を取り消すことはできない。

【8】むすび
以上のとおり、本件の請求項1〜5、7、24〜26に係る発明は、引用例1に記載された発明であり、また、同引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件の請求項1〜5、7,24〜26についての発明は、特許法29条第1項及び第2項の規定に違反して特許されたものであり、同法113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
また、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件の請求項6に係る特許を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2005-09-01 
出願番号 特願平8-100977
審決分類 P 1 652・ 121- ZC (H01L)
P 1 652・ 113- ZC (H01L)
P 1 652・ 537- ZC (H01L)
P 1 652・ 536- ZC (H01L)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 田中 永一  
特許庁審判長 池田 正人
特許庁審判官 川真田 秀男
大嶋 洋一
登録日 2003-05-23 
登録番号 特許第3432997号(P3432997)
権利者 株式会社東芝
発明の名称 半導体装置に使用する絶縁膜  

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