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審決分類 審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1126528
審判番号 不服2003-1875  
総通号数 73 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-02-06 
確定日 2005-11-11 
事件の表示 平成 7年特許願第 78159号「録音再生装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 9月27日出願公開、特開平 8-249792〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本件審判の請求に係る特許出願(以下、「本願」という。)は、平成7年3月9日に出願されたものであって、その請求項1に係る発明は、平成14年11月18日付けの手続補正によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】 録音開始位置及び録音終了位置を管理情報として記録媒体上の指定された管理エリアに書き込むとともに録音対象信号を録音する機能を有する録音再生装置において、
再生装置から供給される前記録音対象信号としての再生信号のレベルが予め定めたしきい値以下となるまで録音を継続するとともに、前記再生信号のレベルが予め定めたしきい値以下となる点を再生動作終了点として記憶する第1の手段と、
前記再生信号のレベルが再び前記しきい値以上になったとき前記再生動作終了点をリセットする第2の手段と、
前記再生動作終了点が録音終了まで存在したときに、前記再生動作終了点を録音終了点として前記管理エリアに管理情報として記録する第3の手段と、
を備えて成ることを特徴とする録音再生装置。」(以下、「本願発明」という。)


2.先願及び先願明細書等の記載
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前の他の出願であって、その出願後に出願公開された特願平5-253458(特開平7-111068号)(以下、「先願」という。)の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には、ディスク記録再生装置に関する発明について、以下の記載がある。
2-1)「【0007】【発明が解決しようとする課題】ところで、従来のディスク記録再生装置では、手動操作により録音を停止するようになっていたので、CDプレーヤなどのプログラム再生機能を使って指定した曲だけをに録音する場合や、CDシングルなどの録音側の容量より小さい曲を録音する場合、ソース側の再生が終了した後に無音が続けて録音されてしまうという問題点があった。無音が続けて録音されないようにするには、録音中は常にセットの側に待機しており、ソース側の再生が終了したら録音を停止しなければならなかった。
【0008】また、手動操作により録音を停止しなければ、録音可能領域の最後まで無音が録音されてしまい、無音部を空き領域として登録し直さなければ、追加の録音ができなくなってしまうという問題点があった。
【0009】そこで、上述の如き従来のディスク記録再生装置における問題点に鑑み、本発明の目的は、無音など無効な録音状態を検出して自動的に停止することができるディスク記録再生装置を提供することにある。」
2-2)「【0026】また、上記ハイブリッドディスク11bの記録再生領域A20は、演奏情報などのプログラムデータが記録されるプログラム領域A21と、その内周側に設けられたUTOC領域A22とを有している。この記録再生領域A20が光磁気記録媒体領域となっている。そして、上記ハイブリッドディスク11bの記録再生領域A20には、グルーブ(トラッキング用案内溝)に沿って記録トラックが形成されており、さらに、上記グルーブを蛇行(ウォブリング)させることにより、ウォブリング信号としてCLV制御用正弦波信号が記録されているとともに、上記CLV制御用正弦波信号に周波数変調を施すことによりアドレス情報が重畳されている。また、上記UTOC領域A22には、上記プログラム領域A21に記録されたデータの記録位置や記録内容を示すUTOCデータとして、プログラム領域に記録された一連のデータを示すトラック番号や各領域の位置を示すアドレスなどの各種管理データが記録される。
【0027】ここで、上記UTOC領域A22には、セクタ0、セクタ1及びセクタ2の3セクタ分の記録再生領域が割り当てられている。
【0028】上記UTOC領域A22のセクタ0の構造を図3に示してあるように、上記セクタ0には、ディスク11bの記録状況が書かれている。P-FRAは上記プログラム領域A21内の記録可能領域を管理するためもので、このP-FRAには記録可能領域の開始位置を示すスタートアドレスが入っているセクタ0上のポインタが書かれている。また、P-TNOnは上記プログラム領域A21内の記録済領域を管理するためもので、P-TNO1には1曲目の曲が始まるアドレスが入っているセクタ0上のポインタが書かれている。すなわち、P-TNO1に「1」が入っていたら、セクタ0の(76+1×2)×4バイトを先頭に、スタートアドレスとエンドアドレスが書かれている。P-TNO2以降も同じである。」
2-3)「【0032】そして、この実施例のディスク記録再生装置1は、上記スピンドルモータ12により線速度一定で回転されるディスク11bに対し、例えば光学ピックアップ13によりレーザ光を照射しながら、磁気ヘッド10により記録データに応じた変調磁界を印加することにより、上記ディスク11bの上記記録再生領域A20の記録トラックに沿って光磁気的にオーディオデータの記録を行い、また上記ディスク11bの再生専用領域A10及び記録再生領域A20の記録トラックを上記光学ピックアップ13によりレーザ光でトレースすることによって、光学的にオーディオデータの再生を行うもので、オーディオ信号を入出力するためのA/D変換器2及びD/A変換器21、上記A/D変換器2によりオーディオ信号をディジタル化したオーディオデータが示す信号レベルをレベル検出回路3、システム全体の制御を行うシステムコントローラ4、オーディオデータに圧縮/伸長処理を施す圧縮/伸長回路6、オーディオデータをバッファメモリ18に一時記憶しておくためのメモリコントローラ7、ディスクフォーマットに対応した変換処理を行うエンコーダ/デコーダ8、上記磁気ヘッド10を駆動する磁気ヘッド駆動回路9、上記磁気ヘッド10及び光学ピックアップ13を移動させる送りモータ14、上記スピンドルモータ12,光学ピックアップ13や送りモータ14の制御を行うサーボ制御回路15、上記光学ピックアップ13により得られる再生出力を上記エンコーダ/デコーダ8,サーボ制御回路15やアドレスデコーダ17に供給するRF回路16などを備えてなる。」
2-4)「【0035】上記サーボ制御回路15は、例えばフォーカスサーボ制御回路やトラッキングサーボ制御回路、スピンドルモータサーボ制御回路、スレッドサーボ制御回路などから構成される。上記フォーカスサーボ制御回路は、上記フォーカスエラー信号が零になるように、上記光学ピックアップ13の光学系のフォーカス制御を行う。また、上記トラッキングサーボ制御回路は、上記トラッキングエラー信号が零になるように上記光学ピックアップ13の光学系のトラッキング制御を行う。さらに、上記スピンドルモータサーボ制御回路は、上記光磁気ディスク2を所定の一定線速度で回転駆動するように上記スピンドルモータ12を制御する。また、上記スレッドサーボ制御回路は、上記システムコントローラ4により指定される上記ディスク11bの目的トラック位置に上記光学ピックアップ13及び磁気ヘッド10を移動させるように上記送りモータ14を制御する。また、このような各種制御動作を行う上記サーボ制御回路15は、該サーボ制御回路15により制御される各部の動作状態を示す情報を上記システムコントローラ4に供給する。
【0036】また、上記システムコントローラ4は、キー入力操作部19の電源キーやイジェクトキー、再生キー、一次停止キー、停止キー、録音キーなどの各種キー操作による操作入力に応じた動作制御を行う。また、このシステムコントローラ4は、上記ディスク11bの記録トラックから再生されるセクタ単位のアドレス情報に基づいて、上記光学ピックアップ13及び磁気ヘッド10がトレースしている上記記録トラック上の記録位置や再生位置を管理する。上記システムコントローラ4は、上記ディスク11bの再生専用領域A10のリードイン領域A12から読み出されるTOCデータを記憶しておくRAMを内蔵しており、このTOCデータに基づいて再生専用領域A10のプログラム領域A11の再生位置を管理する。さらに、上記システムコントローラ7は、上記ディスク11bの記録再生領域A20のUTOC領域A22から読み出されるUTOCデータを上記RAMに記憶しておき、このUTOCデータに基づいて記録再生領域A20のプログラム領域A21に対する記録位置や再生位置を管理する。」
2-5)「【0059】また、上記ディスク記録再生装置では、記録動作を行う際に、上記レベル検出器3による検出出力に基づいて、上記システムコントローラ4により図6のフローチャートに示した記録制御を行う代わりに、図7のフローチャートに示すような記録制御を行うようになしてもよい。
【0060】すなわち、図7のフローチャートに示すような記録制御を行う場合、上記システムコントローラ4は、録音モードが設定されると先ず第1ステップiで録音を開始させる制御を行い、第2ステップjでメモリをクリアし、その後に第3ステップkに移る。
【0061】ここで、上記メモリはオーディオデータの記録位置を示すアドレスを記憶するためのもので、上記システムコントローラ4に内蔵されている。
【0062】第3ステップkでは、上記レベル検出器3による検出出力に基づいて、記録するオーディオ信号の信号レベルすなわち音声レベルが所定レベル(例えば-80dB)に達したか否かの判定処理を行う。そして、この第3ステップkでは、判定結果が「YES」すなわち音声レベルが-80dB以上であれば第4ステップlに移って上記メモリをクリアしてから次の第5ステップkに移る。また、この第3ステップkでは、判定結果が「NO」すなわち音声レベルが-80dB未満であれば第7ステップoに移る。
【0063】第5ステップmでは、上記レベル検出器3による検出出力に基づいて、音声レベルが所定レベル(例えば-80dB)よりも低下したか否かの判定処理を行う。そして、この第5ステップmでは、判定結果が「NO」すなわち音声レベルが-80dB以上であれば上記第7ステップoに移る。また、この第5ステップmでは、判定結果が「YES」すなわち音声レベルが-80dB未満であるときには第6ステップnに移ってオーディオデータの記録位置を示すアドレスを上記メモリに記憶してから上記第3ステップkに戻って音声レベルの判定処理を繰り返し行う。これにより、音声レベルが-80dB以上になるたびに上記メモリはクリアされて、音声レベルが-80dB未満のオーディオデータの先頭の記録位置を示すアドレスが上記メモリに記憶される。
【0064】また、第7ステップoでは、録音を停止したか否かの判定処理を行う。そして、この第7ステップoでは、判定結果が「NO」すなわち録音状態にあるときには上記第3ステップkに戻って音声レベルの判定処理を繰り返し行う。また、この第7ステップoでは、次の第8ステップpに移る。」
2-6)「【0065】ここで、上記システムコントローラ4は、上記キー入力操作部19による停止操作入力を受け付けた場合、又は、上記ディスク11bの記録再生領域A20のプログラム領域A21に記録可能領域がなくなった場合に、上記録音を停止させる制御を行うようになっている。」
2-7)「【0066】第8ステップpでは、上記メモリに音声レベルが-80dB未満のオーディオデータの先頭の記録位置を示すアドレスが記憶されているか否かの判定処理を行う。そして、この第8ステップpでは、判定結果が「YES」すなわち上記メモリにアドレスが記憶されている場合には次の第9ステップqに移り、また、判定結果が「YES」すなわち上記メモリにアドレスが記憶されている場合には第11ステップsに移る。
【0067】第9ステップqでは、このようにして録音したオーディオデータに対し、上記メモリ記憶されていたアドレスよりも後のオーディオデータを他の曲のオーディオデータとして分割するように、RAM上でUTOCデータを書き換える。これにより、録音したオーディオデータの終わりの部分に生じる無音状態の無効録音部分を有効録音部分と自動的に分離することができる。
【0068】次の第10ステップrでは、上記第9ステップqにおいて分割した最後の曲すなわち上記無効録音部分の曲を削除するように、RAM上でUTOCデータを書き換える。
【0069】さらに、次の第11ステップsでは、上記UTOCデータを上記RAMから読み出して上記ディスク11bの記録再生領域A20のUTOC領域A22に記録する。これにより、録音したオーディオデータの終わりの部分に無音状態の無効録音部分がある場合には、この無効録音部分を自動的に削除することができる。」

以上の記載を図面を参照して整理すると、結局、先願明細書等には、以下のとおりの発明が記載されているものと認める。
「メインデータを記録するメインデータ記録領域と該メインデータ記録領域について記録済領域と記録可能領域とを管理する管理データを記録する管理データ記録領域を有するディスク状記録媒体に対して、メインデータと管理データを記録再生するディスク記録再生装置であって、
システム全体の制御を行うシステムコントローラを有し、
システムコントローラは、メインデータであるオーディオデータの録音モードが設定されると、
第1ステップで録音を開始させる制御を行い、
第2ステップで、システムコントローラに内蔵され、オーディオデータの記録位置を示すアドレスを記憶するメモリをクリアし、
第3ステップで、記録するオーディオ信号の信号レベルすなわち音声レベルが所定レベル(例えば-80dB)に達したか否かの判定処理を行い、音声レベルが-80dB以上であれば、
第4ステップに移って上記メモリをクリアしてから第5ステップに移り、
また、第3ステップで、音声レベルが-80dB未満であれば第7ステップに移り、
第5ステップで、音声レベルが所定レベル(例えば-80dB)よりも低下したか否かの判定処理を行い、音声レベルが-80dB以上であれば、第7ステップに移り、
第5ステップで、音声レベルが-80dB未満であるときには第6ステップに移ってオーディオデータの記録位置を示すアドレスを上記メモリに記憶してから第3ステップに戻って音声レベルの判定処理を繰り返し行い、音声レベルが-80dB以上になるたびに上記メモリはクリアされて、音声レベルが-80dB未満のオーディオデータの先頭の記録位置を示すアドレスが上記メモリに記憶し、
第7ステップで、キー入力操作部による停止操作入力を受け付けたか否か、又は、ディスクの記録再生領域のプログラム領域に記録可能領域がなくなったか否か、いずれも録音停止か否かの判定処理を行い、判定結果が「NO」すなわち録音状態にあるときには第3ステップに戻って音声レベルの判定処理を繰り返し行い、
また、第7ステップで、判定結果が「YES」すなわち録音停止と判定したとき、第8ステップに移り、
第8ステップで、上記メモリに音声レベルが-80dB未満のオーディオデータの先頭の記録位置を示すアドレスが記憶されているか否かの判定処理を行い、判定結果が「YES」すなわち上記メモリにアドレスが記憶されている場合には次の第9ステップに移り、
また、判定結果が「NO」すなわち上記メモリにアドレスが記憶されていない場合には第11ステップに移り、
第9ステップで、録音したオーディオデータに対し、上記メモリ記憶されていたアドレスよりも後のオーディオデータを他の曲のオーディオデータとして分割するように、RAM上でUTOCデータを書き換え、これにより、録音したオーディオデータの終わりの部分に生じる無音状態の無効録音部分を有効録音部分と分離し、
第10ステップで、第9ステップにおいて分割した最後の曲すなわち無効録音部分の曲を削除するように、RAM上でUTOCデータを書き換え、
第11ステップで、上記UTOCデータを上記RAMから読み出してディスクの記録再生領域のUTOC領域に記録するようにした
ディスク記録再生装置。」(以下、「先願発明」という。)


3.対比・判断
3-1)対比
(i)先願発明は、「CDプレーヤなどのプログラム再生機能を使って指定した曲だけをに録音する場合や、CDシングルなどの録音側の容量より小さい曲を録音する場合、ソース側の再生が終了した後に無音が続けて録音されてしまうという問題点があった。」(【0007】)とし、その解決を課題としてなされたもので、本願発明と課題は共通するものである。
(ii)先願発明で、ディスクが有する管理データ記録領域とディスクの記録再生領域のUTOC領域とは同義であり、同様に、ディスク上のメインデータ記録領域について、記録済領域と記録可能領域とを管理する管理データとUTOCデータとは同義である。
管理データ記録領域には、各曲毎に、スタートアドレスとエンドアドレスが記録されるとともに、記録可能領域の開始位置を示すスタートアドレスが記録されるとされている(【0028】)。
ディスク上に記録された第一曲目のスタートアドレスが録音開始位置に対応する管理データであり、記録可能領域の開始位置を示すスタートアドレスが録音部分の最後の位置に対応する管理データであり、いずれも、所定の管理データ記録領域に記録される管理情報である。
(iii)先願発明の解決すべき課題からみて、録音対象信号はCDプレーヤなどの再生装置からの再生信号であることも明らかである。
(iv)両発明で、記録媒体に記録される管理情報、録音対象信号自体に差異はなく、いずれも、録音対象信号の入力音声レベルを所定の値と比較しながら録音動作を制御する点で差異はない。

(v)[本願発明における第1の手段について]
本願発明の「再生装置から供給される前記録音対象信号としての再生信号のレベルが予め定めたしきい値以下となるまで録音を継続するとともに、前記再生信号のレベルが予め定めたしきい値以下となる点を再生動作終了点として記憶する第1の手段」について、先願発明との対応関係について検討する。
先願発明における「-80dB」は、本願発明における「予め定めたしきい値」に相当することは明らかである。
先願発明は、第1ステップで、録音が開始される。
先願発明で、再生信号の音声レベルを判定するステップは、第3ステップ及び第5ステップである。
第3ステップで、音声レベルが所定値以上、かつ、第5ステップで音声レベルが所定値より大きいと判定されると、第7ステップを経由してメモリをクリアしつつ、第7ステップで、停止操作がなされたか、または、記録可能領域なしと判定されるまで、録音が続けられるようにされている。
さらに、第3ステップで、音声レベルが所定値以上でなくなった(即ち、本願発明でいう「予め定めたしきい値以下となるまで」)と判定されたときにも、第7ステップを経由するようになされており、停止操作がなされたか、または、記録可能領域がなくなるまで、録音が続けられるようにされている。
さらに、第5ステップで、音声レベルが所定値未満と判定されたときにも、第3ステップに戻るようにされている。
いずれの場合においても、録音が停止されるのは、第7ステップで、停止操作がなされた、または、記録可能領域がなくなったと判定されたときであり、少なくとも、録音対象信号である再生信号の音声レベルが予め定められたしきい値以下となるまでは、録音が続けられるようにされていることは明らかである。
そして、音声レベルが所定値以上から(第3ステップで「YES」と判定された後)、所定値よりも低下したとき(第5ステップで「YES」と判定されたとき)、第6ステップで、その時のオーディオデータの記録位置を示すアドレスをメモリに記憶する処理がなされている。
記録位置を示すアドレスが、本願発明における「再生動作終了点」に相当することは明らかである。
結局、先願発明における、第1ステップを含み、第3ステップ及び第5ステップから第7ステップを介して第3ステップに戻るフロー、及び、第6ステップから第3ステップに戻るフローが、本願発明における「第1の手段」に相当することは明らかである。

(vi)[本願発明における第2の手段について]
先願発明は、第5ステップで音声レベルが所定値より低下したと判定された後で、第3ステップに戻ったとき、音声レベルが所定値以上であると判定されると、次の第4ステップでメモリのクリア処理を行うものであり、音声レベルが-80dB以上になるたびに上記メモリはクリアされて、結局、メモリには、音声レベルが-80dB未満のオーディオデータの先頭の記録位置を示すアドレスが記憶されることになる。
第5ステップから第6ステップを経て、第3ステップの判定後、第4ステップでのメモリのクリア処理が、本願発明の再生動作終了点をリセットする動作に相当することは明らかである。
したがって、先願発明が、本願発明が備える「第2の手段」を有していることも明らかである。

(vii)[本願発明における第3の手段について]
先願発明の第7ステップから第11ステップの各ステップであるが、第7ステップは、キー入力操作部による停止操作入力を受け付けたか否か、または、ディスクの記録再生領域のプログラム領域に記録可能領域がなくなったか否かを判定するステップで、録音停止を判定するものである。
録音停止の判定をすると、第8ステップに移り、
第8ステップで、上記メモリに音声レベルが-80dB未満のオーディオデータの先頭の記録位置を示すアドレスが記憶されているか否かの判定処理を行い、判定結果が「YES」すなわち上記メモリにアドレスが記憶されている場合には次の第9ステップに移り、
第9ステップで、録音したオーディオデータに対し、上記メモリ記憶されていたアドレスよりも後のオーディオデータを他の曲のオーディオデータとして分割するように、RAM上でUTOCデータを書き換え、これにより、録音したオーディオデータの終わりの部分に生じる無音状態の無効録音部分を有効録音部分と分離し、
第10ステップで、第9ステップにおいて分割した最後の曲すなわち無効録音部分の曲を削除するように、RAM上でUTOCデータを書き換えている。
第11ステップで、上記UTOCデータを上記RAMから読み出してディスクの記録再生領域のUTOC領域に記録している。
第8ステップで、メモリに記憶されるアドレスは、音声レベルが-80dB未満のオーディオデータの先頭の記録位置を示すものであり、以下のステップの処理で、メモリ記憶されたアドレスよりも後のオーディオデータは無効録音部分の曲として削除されるようRAM上でUTOCデータを書き換えられ、ディスクのUTOC領域に記録されるとされている。
メモリに記憶されたアドレスは、有効録音部分のエンドアドレス、または、記録可能領域の先頭アドレスに相当するものであって、本願発明における録音終了点に相当することは明らかであり、ディスクのUTOC領域に記録されることは明らかである。
結局、先願発明が、本願発明が備える「第3の手段」を有していることは明らかである。

3-2)判断
以上のとおり、先願発明は、本願発明が備えるすべての要件を有するものであるから、両発明は同一発明と認める。


4.請求人の主張について
請求人は、請求の理由において、「本願に係る発明は、再生信号のレベルが予め定めたしきい値以下となるまで録音を継続、つまり再生信号のレベルが予め定めたしきい値以下となったときに録音を(一旦)停止しており、無駄な録音部分が発生することがない。」旨主張するので検討する。
本願発明は、上記1.に記載したとおりのもので、「再生信号のレベルが予め定めたしきい値以下となったときに録音を(一旦)停止する」との記載はない。また、発明の詳細な説明等にも記載はなく、請求人の主張する「再生信号のレベルが予め定めたしきい値以下となるまで録音を継続する」ことが、要するに、「再生信号のレベルが予め定めたしきい値以下となったときに録音を(一旦)停止する」ことを意味していると解釈するには困難である。
さらに、このような解釈が、発明の詳細な説明及び図面の記載から可能であるか否かについて検討する。
4-1)入力される信号のレベルを監視しているのはシステムコントローラであり、入力信号レベルとしきい値との比較結果に応じた制御を図2のように行なうとしている(【0014】)。
4-2)図2は、本発明の実施例の動作を示すフローチャートであるとされている(【図面の簡単な説明】)。
4-3)ステップS8で、入力レベルAが0と判断されたとき、ステップS8からステップS6に戻り、録音可能領域Xが1だけデクリメントされ、入力レベルA=0の期間は、X=0となるまで、録音が継続している。
4-4)ステップS8で、入力レベルA≠0とされたときも、ステップS9の録音可能領域のデクリメント処理が続いており、録音が継続することは明らかである。
4-5)ステップS11で、入力レベルAがしきい値Bより大と判断されたとき、ステップS11からステップS9に戻り、録音可能領域Xがデクリメントされ、入力レベルA>Bの期間は、X=0となるまで、録音が継続することは明らかである。
4-6)ステップS11で、入力レベルAがしきい値Bより大ではないと判断されたときでも、その時点を#Aに記録するステップS12が介在するものの、ステップS13での録音可能領域Xのデクリメント処理が連続しており、A>Bでないと判断されている期間は、録音可能領域X=0となるまで、録音が継続することは明らかである。
4-7)図2による実施例の説明、記載では、入力レベルの有無、大小にかかわらず、ミニディスクの「録音可能領域X」がX=0で、記録可能領域がないと判断されるまで、録音を継続することは明らかである。
4-8)ステップS17以後の録音終了処理に移行するのは、3つのルートがあるが、いずれも、入力レベルの有無、大小にかかわらず、ミニディスクの「録音可能領域X」がX=0となったときのみで、「再生信号のレベルが予め定めたしきい値以下となったときに録音を(一旦)停止する」ことを想定しているとは到底考えられない。
4-9)結局、請求人が主張するように、「再生信号のレベルが予め定めたしきい値以下となるまで録音を継続する」ことが、即ち、「再生信号のレベルが予め定めたしきい値以下となったときに録音を(一旦)停止する」ことを意味していると解釈することはできないものであるし、根拠がなく、採用できない。


5.むすび
したがって、本願発明は、先願明細書等に記載された発明と同一であり、しかも、本願発明の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められないので、本願発明については、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-09-12 
結審通知日 2005-09-14 
審決日 2005-09-29 
出願番号 特願平7-78159
審決分類 P 1 8・ 16- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田付 徳雄  
特許庁審判長 江畠 博
特許庁審判官 山澤 宏
片岡 栄一
発明の名称 録音再生装置  
代理人 福山 正博  

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