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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63B
管理番号 1126562
審判番号 不服2004-18254  
総通号数 73 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-02 
確定日 2005-11-10 
事件の表示 平成9年特許願第29371号「ゴルフボール」拒絶査定不服審判事件〔平成10年8月25日出願公開、特開平10-225533〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年2月13日の出願であって、平成16年7月28日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年10月1日に手続補正がなされたものである。

2.平成16年10月1日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年10月1日付け手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の減縮を目的として請求項1は、
「コアを被覆するカバーが、内層カバーと外層カバーの2層構造に構成されるゴルフボールにおいて、
前記内層カバーは、アイオノマー樹脂および/または熱可塑性エラストマーからなる基材樹脂を含む樹脂組成物から形成され、ショアD硬度が64〜73、かつ厚さが1.0〜3.0mmに設定され、
前記外層カバーは、前記基材樹脂を形成するアイオノマー樹脂および/または熱可塑性エラストマーよりも低硬度の熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物から形成され、ショアD硬度が45〜58、かつ厚さが1.0〜3.0mmに設定されることを特徴とするゴルフボール。」
と補正された。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(2)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布されている刊行物である、特開平9-658号公報(公開日:平成9年1月7日、以下、「引用文献1」という。)には、
特許請求の範囲に「【請求項1】コア(1)と該コア上に形成されたカバーから成り、該カバーが硬い内側カバー層(2)と軟らかい外側カバー層(3)の2層構造をとる2層カバー構造を有するゴルフボールにおいて、該内側カバー層(2)が樹脂の総重量に対して5重量%以上の高剛性ポリアミド樹脂を含有することを特徴とするゴルフボール。【請求項2】該内側カバー層(2)がポリアミド樹脂とアイオノマー樹脂の混合物から成る請求項1記載のゴルフボール。…【請求項4】該内側カバー層(2)がショアD硬度60〜90を有する請求項1記載のゴルフボール。【請求項5】該外側カバー層(3)がショアD硬度56〜64を有する請求項1記載のゴルフボール。【請求項6】該外側カバー層(3)がショアD硬度60〜63を有する請求項5記載のゴルフボール。」、
段落【0006】に「内側カバー層(2)を構成するその他の樹脂成分は、アイオノマー樹脂であり、ゴルフボールのカバーに使用されている一般に公知のものが挙げられる。…本発明では、このアイオノマー樹脂と高剛性の上記ポリアミド樹脂を組合せることにより、従来の硬い(高剛性)高酸アイオノマー樹脂を用いたゴルフボールより更に高剛性および高弾性となり得る。」、
段落【0007】に「外側カバー層(3)はその樹脂成分がアイオノマー樹脂から成り、ゴルフボールのカバーに使用されている一般に公知のものが挙げられるが、…ショアD硬度が56〜64、好ましくは60〜63の範囲の軟らかい(低剛性)アイオノマー樹脂であることが好ましい。」、
段落【0009】に「外側および内側カバー層の厚みはともに、0.5〜2.3mmの範囲が好ましい。」、
段落【0013】に「(ii)内側カバー層配合(下記の比率で樹脂をブレンドして…コア上に1.7mmの厚さに被覆した。)」、
段落【0014】に「(iii)外側カバー層配合(下記の比率で樹脂をブレンドして…上記(ii)で得られたカバー上に1.9mmの厚さに被覆した。)」と記載されており、
これらの記載を参照すると、引用文献1には、
「コアを被覆するカバーが、内側カバーと外側カバーの2層構造に構成されるゴルフボールにおいて、
前記内側カバーは、アイオノマー樹脂と高剛性ポリアミド樹脂を含有する樹脂組成物から形成され、ショアD硬度が60〜90、かつ厚さが0.5〜2.3mmに設定され、
前記外側カバーは、前記内側カバーよりも低硬度のアイオノマー樹脂から形成され、ショアD硬度が56〜64、かつ厚さが0.5〜2.3mmに設定されるゴルフボール」という技術が記載されていると認められ、アイオノマー樹脂は熱可塑性樹脂であるから、
引用文献1には次の発明が記載されているものと認める。かっこ内は対応する引用文献1における構成・用語である。

「コアを被覆するカバーが、内層カバー(内側カバー)と外層カバー(外側カバー)の2層構造に構成されるゴルフボールにおいて、
前記内側カバーは、アイオノマー樹脂からなる基材樹脂を含む樹脂組成物(アイオノマー樹脂と高剛性ポリアミド樹脂を含有する樹脂組成物)から形成され、ショアD硬度が60〜90、かつ厚さが0.5〜2.3mmに設定され、
前記外層カバーは、前記基材樹脂を形成するアイオノマー樹脂よりも低硬度の熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物(前記内側カバーよりも低硬度のアイオノマー樹脂)から形成され、ショアD硬度が56〜64、かつ厚さが0.5〜2.3mmに設定されるゴルフボール」
(以下「引用発明」という。)

(3)対比
補正発明と引用文発明とを比較すると、両者は、
「コアを被覆するカバーが、内層カバーと外層カバーの2層構造に構成されるゴルフボールにおいて、
前記内層カバーは、アイオノマー樹脂からなる基材樹脂をを含む樹脂組成物から形成され、
前記外層カバーは、前記基材樹脂を形成するアイオノマー樹脂よりも低硬度の熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物から形成されるゴルフボール」
の点で一致し、以下の点で相違している。

相違点:補正発明では、内層カバーは、ショアD硬度が64〜73、かつ厚さが1.0〜3.0mmに設定され、外層カバーは、ショアD硬度が45〜58、かつ厚さが1.0〜3.0mmに設定されるのに対し、引用発明では、内層カバーは、ショアD硬度が60〜90、かつ厚さが0.5〜2.3mmに設定され、外層カバーは、ショアD硬度が56〜64、かつ厚さが0.5〜2.3mmに設定される点。

(4)判断
相違点について検討する。
両者とも、内層カバーのショアD硬度の方が外層カバーのショアD硬度より大きいことでは同じであり、また、数値範囲の一部は重複する上、大差はなく、かつ、補正発明における数値の上限・下限に特別な臨界的意義を有するものではないことから、ショアD硬度についての数値限定は適宜なしうることにすぎない。また、厚さに関しても、数値の一部は重複する上、大差はなく、かつ、補正発明における数値の上限・下限に特別な臨界的意義を有するものではないことから、その数値限定は設計的事項にすぎない。
したがって、補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成16年10月1日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1〜12に係る発明は、平成13年5月28日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1〜12に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】コアを被覆するカバーが、内層カバーと外層カバーの2層構造に構成されるゴルフボールにおいて、
前記内層カバーは、ショアD硬度60以上とし、
前記外層カバーは、内層カバーよりも硬度を低く設定し、ショアD硬度45〜65とすることを特徴とするゴルフボール。
【請求項2】〜【請求項12】(記載を省略)」
(以下、請求項1記載の発明を「本願発明」という。)

(1)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1の記載事項は、前記2.(2)に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した補正発明を特定するために必要な事項である限定事項の一部を削除したものである。してみると、本願発明を特定するために必要な事項を全て含み、さらに他の限定事項を付加したものに相当する補正発明が、前記2.(3)、(4)に記載したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項2〜12に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-08-30 
結審通知日 2005-09-06 
審決日 2005-09-26 
出願番号 特願平9-29371
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63B)
P 1 8・ 121- Z (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小齊 信之土屋 保光  
特許庁審判長 安藤 勝治
特許庁審判官 新井 夕起子
南澤 弘明
発明の名称 ゴルフボール  
代理人 宮寺 利幸  
代理人 千葉 剛宏  

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