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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1126607
審判番号 不服2002-19863  
総通号数 73 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-10-14 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-10-10 
確定日 2005-11-10 
事件の表示 平成 8年特許願第 78619号「電子写真用感光体の塗布装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年10月14日出願公開、特開平 9-269604〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、出願日が平成8年4月1日である特願平8-78619号であって、平成14年9月4日付で拒絶査定がなされ、これに対し平成14年10月10日に拒絶査定に対する審判請求がなされた。

2.本願発明
本願の請求項2に係る発明は、平成14年8月12日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項2に記載された次のとおりのもの(以下、「本願発明」という)と認める。
「浸漬塗布法により円筒状基体の外表面に感光層塗膜を形成するための塗布液を有する塗布槽と、この塗布槽から溢れた前記塗布液を回収して前記塗布槽へ再供給するための回収配管,貯留槽,供給配管からなる塗布液循環機構と、前記塗布槽の中へ前記円筒状基体を浸漬する昇降機構とを備えた塗布装置において、前記塗布液循環機構の中に脱気機構を配設し、該脱気機構は前記回収配管と前記貯留槽の間に略鉛直に配設された脱気管と前記貯留槽の中に配設されたガイドとからなることを特徴とする電子写真用感光体の塗布装置。」

3.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、実願平1-55441(実開平2-147271号公報)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。
ア.【産業上の利用分野】
本考案は、例えば電子写真用の感光ドラムを被塗布物として、該ドラム基体の表面に感光層を塗着形成させる塗布装置に関する。(明細書第1頁11〜14行)

イ.【従来の技術】
感光ドラムの感光層塗布装置として(「とて」は誤記と認める。)従来では第3図に示すような装置が使用されている。図において、1は塗布液(セレンなどの光導電性材料を樹脂中に分散させた液)2を満たした上面開放の塗布槽、3は容積の大きな液溜槽、4は塗布槽1と液溜槽3との底部の間に配管した送液管、5は送液ポンプ、6は塗布槽1の頂部と液溜槽3との間に配管したオーバーフロー戻し管である。(明細書第1頁15行〜第2頁3行)

ウ.一方、塗布槽1の側方には被塗布物である感光ドラム基体7を把持して昇降操作するハンドリング装置8が据付けてあり、前記のように塗布液2を塗布槽1と液溜槽3との間で循環送流させながら、ドラム基体7を塗布槽内の液中に浸漬、引き上げ操作することによりドラム基体7の表面に塗材が塗着され、その後の乾燥工程を経て感光層が形成される。(明細書第2頁10〜17行)

エ.【実施例】
・・・本考案により塗布槽1から引出したオーバーフロー戻り管6と液溜槽3との間には、新たに泡抜き用の気液分離管8が介装されている。この気液分離管8は、第2図に明示されているように液溜槽3の槽内における液面よりも低い位置で槽の側面からエルボ形に屈曲して立ち上がるように接続したパイプであり、かつそのパイプ上端と液溜槽3の槽内上部空間との間が均圧排気管10を介して連通し合っている。(明細書第5頁3〜14行)

したがって、上記記載事項、及び図面も参照すると、引用例1には、
「塗布槽内の液中に浸漬、引き上げ操作することによりドラム基体7の表面に感光層を塗着形成させる塗布液2を満たした上面開放の塗布槽1と、この塗布槽1からオーバーフローした塗布液2を回収して前記塗布槽1へ循環送流させるためのオーバーフロー戻り管6、液溜槽3、送液管4からなる塗布液循環送流機構と、前記塗布槽1の中へ前記ドラム基体7を浸漬、引き上げのため昇降操作するハンドリング装置8とを備えた塗布装置において、前記塗布液循環送流機構の中に泡抜き用の気液分離管8が介装され、気液分離管8は前記オーバーフロー戻り管6と前記液溜槽3との間に略鉛直に配設されている電子写真用の感光ドラムの塗布装置」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

また、原査定の拒絶の理由に引用された、特開平7-88411号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
オ.【0001】【産業上の利用分野】
本発明は液循環装置に関し、詳しくは、基体表面に或る種の塗工膜(例えば電子写真感光層など)を形成するための塗布装置における液循環装置に関する。

カ.【0011】
図4(a)は液循環タンク4に隣接して液循環タンク41を配設し、これらのタンク4、41を底部に近いところでパイプ61で接続し、後段のタンク41内の液流入口近傍に邪魔板8を配置し、液循環タンク41からの液を液循環パイプ6を通してカラーパン2に戻すようにした液循環装置である。この装置においては、泡を含んだ塗工液は泡浮上パイプ3を通り、循環タンク4の中に流入する。この際、塗工液は泡浮上パイプ3により液循環タンク4の液面に向け流出するため、塗工液に含まれている泡がタンク液面に集まる。そのため、泡が自然破泡し易い。また、液循環タンク4の底部に近いところの排出口に新たな液循環タンク41を付加し、その新たな液循環タンクの内部の導入口近傍に邪魔板8を設けたことにより、塗工液は邪魔板8により、流路が変わり上方の液面に向かって流れ、塗工液中の残余の泡が液面に集まり自然破泡する。また、塗工液の流路が変わるためショートパスも防止される。従って、循環ポンプ5により、塗工液がカラーパン2に戻る時にはもはや泡が含まれない塗工液となる。

4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「塗布槽内の液中に浸漬、引き上げ操作することによりドラム基体7の表面に感光層を塗着形成させる塗布液2を満たした上面開放の塗布槽1」は、本願発明の「浸漬塗布法により円筒状基体の外表面に感光層塗膜を形成するための塗布液を有する塗布槽」に相当する。以下、同様に「この塗布槽1からオーバーフローした塗布液2を回収して前記塗布槽1へ循環送流させるためのオーバーフロー戻り管6、液溜槽3、送液管4からなる塗布液循環送流機構」は「この塗布槽から溢れた前記塗布液を回収して前記塗布槽へ再供給するための回収配管,貯留槽,供給配管からなる塗布液循環機構」に、「塗布槽1の中へ前記ドラム基体7を浸漬、引き上げのため昇降操作するハンドリング装置8」は「塗布槽の中へ前記円筒状基体を浸漬する昇降機構」に、「オーバーフロー戻り管6と前記液溜槽3との間に略鉛直に配設されている気液分離管8」は「回収配管と前記貯留槽の間に略鉛直に配設された脱気管」に、「電子写真用の感光ドラムの塗布装置」は「電子写真用感光体の塗布装置」に、それぞれ相当する。

また、引用発明の「泡抜き用の気液分離管8」が、本願発明の「脱気機構」と構成は相違するものの、「脱気機構」であることは明らかである。

したがって、本願発明と引用発明とは、「浸漬塗布法により円筒状基体の外表面に感光層塗膜を形成するための塗布液を有する塗布槽と、この塗布槽から溢れた前記塗布液を回収して前記塗布槽へ再供給するための回収配管,貯留槽,供給配管からなる塗布液循環機構と、前記塗布槽の中へ前記円筒状基体を浸漬する昇降機構とを備えた塗布装置において、前記塗布液循環機構の中に脱気機構を配設し、該脱気機構は前記回収配管と前記貯留槽の間に略鉛直に配設された脱気管からなることを特徴とする電子写真用感光体の塗布装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点;本願発明では、脱気機構が、脱気管と貯留槽の中に配設されたガイドとからなるのに対し、引用発明では、貯留槽の中に配設されたガイドの記載がない点。

5.当審の判断
上記各相違点について検討する。
引用例2の液循環タンクの内部の導入口近傍に設けられた邪魔板8は、上記記載事項カ.に「塗工液は邪魔板8により、流路が変わり上方の液面に向かって流れ、塗工液中の残余の泡が液面に集まり自然破泡する。」と記載されるように、本願発明のガイドに相当することは明らかである。そして、引用例2も引用発明と技術分野を同じくするものであり、引用発明に引用例2に記載された発明を適用して、上記相違点に係る構成とすることは、当業者にとって容易である。

また、本願発明の作用・効果についても、引用発明、及び引用例2に記載された発明から予測し得る範囲内のものである。

6.むすび
したがって、本願発明は、引用例1及び引用例2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-09-06 
結審通知日 2005-09-13 
審決日 2005-09-27 
出願番号 特願平8-78619
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菅野 芳男  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 秋月 美紀子
前田 佳与子
発明の名称 電子写真用感光体の塗布装置  
代理人 篠部 正治  

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