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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04M
管理番号 1126611
審判番号 不服2002-21561  
総通号数 73 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-12-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-11-07 
確定日 2005-11-10 
事件の表示 平成6年特許願第117754号「公衆通信システム」拒絶査定不服審判事件〔平成7年12月12日出願公開、特開平7-327090〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成6年5月31日の出願であって、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年7月8日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「公衆通信網によりオンラインセンタに接続される公衆通信システムにおいて、
各公衆通信システム毎に割り当てられる識別子IDを登録しておくID登録部と、
停電発生後から全システムが全て情報をオンラインセンタへアップロードするまでの時間を登録しておく最大待機時間登録部と、
各システムがオンラインセンタへのアップロードを行う時間間隔を登録しておく基本待機時間登録部と、
前記識別子IDと最大待機時間および基本待機時間をもとに各システムが停電発生からアップロードを開始するまでの時間を算出する送信時間算出部と
を設け、かつ前記送信時間算出部により算出した時間が経過したことを検出してオンラインセンタへ送信を行うとともに、送信後、オンラインセンタより返信がないことを検出して、所定時間の経過後にオンラインセンタへ再度の送信を行うように構成した公衆通信システム。」

2.引用発明及び周知技術
(1)これに対して、当審の拒絶理由に引用された特開平3-145237号公報(以下、「引用例」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「第6図に示す本発明に適用される通信ネットワークにおいて、伝送路60により相互に接続された端末が複数台存在するとき、そのうちの1台をセンタ端末とすると、他の端末は第7図に示すようにシステムに電源が投入されると、前記センタ端末に登録要求72を送信し、前記センタ端末は応答として、登録確認73を送信するという処理を行う。前記端末の通信制御処理装置82は第8図に示すように、伝送路(制御チャネル)81上の通信プロトコルに従って通信を行う送受信制御処理部83と、属性通知用のタイマ制御部85と、タイマ制御処理部85からの信号によりセンタ端末61に対して属性を通知する属性登録制御処理部84と、自己のアドレスを保持しておく自己アドレス保持部88から構成されている。」(2頁左上欄2行目〜右上欄8行目)
ロ.「このように前記従来技術において、端末が複数台存在する際には、起動させるタイマが全て同一であるという理由により、一斉にタイマ割り込みが発生し、いずれも登録要求を出そうとして衝突が発生し、競合が起こり、競合で負けた端末は登録要求が出せるまでタイマを起動させ、割り込みを発生させるという処理を繰り返し行い、他の処理を行っていても定期的にタイマ割り込みが発生し処理を中断しなければならず効率が悪い、という問題点を有していた。」(2頁右下欄3〜12行目)
ハ.「第1の実施例において、電源投入後、第6図に示す通信ネットワークにおける、伝送路60により相互に接続された複数台の端末の通信制御処理装置82の属性登録制御部141は、各端末のランダム変数(時間)に自己アドレス保持部16内の自己アドレスを乗算して重みをつけた値と、センタ立ち上げ時に要するタイマ値とを加算し、タイマ制御部151のタイマ部152にその値を渡す。するとタイマ制御部151においてタイマが起動し、一定時間経過後、属性制御部141にタイマ割り込み(41)が発生し、属性登録制御部141は送受信制御処理部13に登録要求電文を渡す。送受信制御処理部13は、前記登録要求電文を伝送路11上に送信する。また、端末(2)63においても全く同様の処理を行う。」(4頁左上欄18行目〜右上欄12行目)
ニ.「さらに、第2の実施例として前記全端末ランダムな時間を、登録処理に要する最適なタイマ値にした。前記最適なタイマ値とは、属性登録処理が端末(1)62からセンタ端末61への登録要求電文32の送信と、登録要求電文32を受信した前記センタ端末61の登録確認電文33の応答とで構成されるとき、登録要求電文32送信処理時間と、登録確認電文33送信処理時間と、登録要求電文32送信処理から登録確認電文33応答処理までの時間と登録確認電文33の応答から端末(2)63の登録要求電文34送信までの時間を加算した値である。つまりこれは登録処理に要する最小時間である。」(4頁左下欄14行目〜右下欄6行目)
ホ.「一台の端末が各種属性登録処理に用するそれぞれの最小時間に自己アドレスを乗算した値を用いることにより、登録を行う全端末の登録処理に要する総時間の短縮が図れる。」(5頁右上欄2〜5行目)

上記引用例の記載及び添付図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記「自己アドレス」は「端末毎に割り当てられる」ものであり、上記「最小時間に自己アドレスを乗算」する場合に「最小時間」を「保持する手段」や「乗算」のための「演算手段」を上記各端末が備えていることは当業者であれば自明のことである。 また、上記「最小時間に自己アドレスを乗算した値」はタイマ値として用いられるものである。
したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「通信ネットワークによりセンタに接続される端末において、
各端末毎に割り当てられる自己アドレスを登録しておく自己アドレス保持部と、
一台の端末が各種属性登録処理に要するそれぞれの最小時間を保持する手段と、
タイマ値として用いられる前記最小時間に自己アドレスを乗算した値を算出する演算手段と
を設け、かつ前記演算手段により算出した時間が経過したことを検出してセンタへ送信を行う端末。」

(2)また、同じく当審の拒絶理由に引用された実願平1-93888号の願書に添付された明細書と図面を撮影したマイクロフィルム(実開平3-34379号参照、以下、「周知例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「本案は遠方監視制御装置に係り、特にリアルタイムの時計部を備えて時刻データを取扱う子局装置における時計部の停電バツクアツプに好適な方式に関する。」(1頁14〜17行目)
ロ.「子局装置は供給電源の停電が発生すると一定時間親局に対し停電信号を発報した後、動作を停止する。」(3頁2〜4行目)

例えば上記周知例1に記載されているように、「遠方監視制御装置において、子局装置に停電が発生すると一定時間親局に対し停電信号を発報した後、動作を停止する」技術手段は周知である。

(3)また、同じく当審の拒絶理由に引用された特開平2-199931号公報(以下、「周知例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「同一の通信回線を複数の通信装置で共有し、或る通信装置から送信されたデータが受信されると、該データを受信した通信装置は確認信号を返送するようにした通信装置間のデータ伝送方式において、
1または複数の通信装置から成るグループ毎に相互に異なる固有の待機時間を設定しておき、
送信通信装置は、データの送信を行つた後、受信通信装置から前記確認信号が返送されて来ないときには、前記待機時間経過後にデータの再送信を行うことを特徴とするデータ伝送方式。」(1頁左下欄、特許請求の範囲)
ロ.「第1図は、本発明の一実施例のデータ伝送方式が用いられる宅配業の無線通信方式の系統図である。荷物の集配を行う複数の自動車には、通信装置である無線機M1〜M3が搭載され、それぞれ移動局S1〜S3を構成する。また単一の基地局S0の無線機M0には、中央処理装置Uが接続される。
複数の移動局S1〜S3の無線機M1〜M3と、基地局S0の無線機M0とは、同一チャネル、すなわち同一の周波数帯域で無線通信を行う。移動局S1〜S3の無線機M1〜M3には、たとえば車番などに対応した固有の番号がそれぞれ付与されており、これらの無線機M1〜M3と基地局S0の無線機M0とは、この固有番号を用いて通信相手局を特定し、データの伝送を行う。」(3頁左上欄2〜16行目)
ハ.「なお、上述の実施例では、移動局S1〜S3は車番が偶数または奇数の2つのグループに分割されたけれども、本発明の他の実施例として、移動局の数が多いときには3つまたはそれ以上のグループに分割されてもよい。」(4頁右下欄18行目〜5頁左上欄3行目)

例えば上記周知例2に記載されているように、「同一の通信回線を複数の通信装置で共有するデータ伝送方式において、複数の通信装置をその数に応じて適宜数のグループに分割し、前記グループ毎に相互に異なる固有の待機時間を設定してデータの衝突を防止する」技術手段は周知である。

3.対比
本願発明と引用発明とを対比するに、引用発明の「通信ネットワーク」と本願発明の「公衆通信網」はいずれも「通信網」であるという点で一致しており、引用発明の「端末」と本願発明の「公衆通信システム」はいずれも「リモート装置」であるという点で一致している。
また、引用発明の「センタ」、「自己アドレス」、「自己アドレス保持部」、「最小時間」と本願発明の「オンラインセンタ」、「識別子ID」、「ID登録部」、「基本待機時間」はそれぞれ同じものを指す用語であって、それぞれの間に実質的な差異はなく、本願発明の「アップロード」とは端末からセンタへ情報を送信することであるから、引用発明の「一台の端末が各種属性登録処理に要するそれぞれの最小時間を保持する手段」と本願発明の「各システムがオンラインセンタへのアップロードを行う時間間隔を登録しておく基本待機時間登録部」の間にも実施的な差異はない。
また、引用発明の「タイマ値として用いられる前記最小時間に自己アドレスを乗算した値を算出する演算手段」と本願発明の「前記識別子IDと最大待機時間および基本待機時間をもとに各システムが停電発生からアップロードを開始するまでの時間を算出する送信時間算出部」はいずれも「送信時間算出部」 であるという点で一致している。

したがって、本願発明と引用発明は、
「通信網によりオンラインセンタに接続されるリモート装置において、
各リモート装置毎に割り当てられる識別子IDを登録しておくID登録部と、
各リモート装置がオンラインセンタへのアップロードを行う時間間隔を登録しておく基本待機時間登録部と、
送信時間算出部と
を設け、かつ前記送信時間算出部により算出した時間が経過したことを検出してオンラインセンタへ送信を行うリモート装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点>
(1)「通信網」および「リモート装置」に関し、本願発明は「公衆通信網」および「公衆通信システム」であるのに対し、引用発明は「通信ネットワーク」および「端末」である点。
(2)「送信時間算出部」の構成に関し、本願発明は「停電発生後から全システムが全て情報をオンラインセンタへアップロードするまでの時間を登録しておく最大待機時間登録部」を備え、「前記識別子IDと最大待機時間および基本待機時間をもとに各システムが停電発生からアップロードを開始するまでの時間を算出する」ものであるのに対し、引用発明は「タイマ値として用いられる前記最小時間に自己アドレスを乗算した値を算出する演算手段」である点。
(3)「公衆通信システム」に関し、本願発明は「送信後、オンラインセンタより返信がないことを検出して、所定時間の経過後にオンラインセンタへ再度の送信を行う」構成を備えているのに対し、引用発明はその点の構成を備えていない点。

4.当審の判断
そこで、まず、上記相違点(1)について検討するに、公衆通信網は通信ネットワークの代表例であり、通信網を公衆通信網に限定し、公衆通信網に接続される端末を公衆通信システムとする程度のことは当業者であれば適宜成し得ることである。

ついで、上記相違点(2)について検討するに、上記周知例1には「遠方監視制御装置において、子局装置に停電が発生すると一定時間親局に対し停電信号を発報した後、動作を停止する」構成が開示されているところ、当該停電発生後に停電信号を発報する構成を引用発明に適用する上での阻害要因は何ら見あたらないから、引用発明の技術手段を「停電発生後の停電信号の発報」時に適用する程度のことは当業者であれば適宜成し得ることである。そして、前記「発報(即ち、停電情報の送信)」は停電発生後から動作を停止するまでの間に行われなければならず、それゆえこの期間にはいわゆる「上限」が存在し、複数の子局間にこの期間のばらつきが存在することを考慮すると、当該期間中のばらつきに影響されない一定範囲を本願発明のようなすべてのシステムからのアップロードが完了しなければならない「最大待機時間」として規定する程度のことは当業者であれば設計的事項に過ぎないものである。一方、上記周知例2には「同一の通信回線を複数の通信装置で共有するデータ伝送方式において、複数の通信装置をその数に応じて適宜数のグループに分割し、前記グループ毎に相互に異なる固有の待機時間を設定してデータの衝突を防止する」技術手段が開示されているから、上記引用発明における「最小時間」の「端末数」倍の要処理総時間が「最大待機時間」を上まわる場合に当該要処理総時間を「最大待機時間」内に収めるために全端末をその数に応じて適宜数のグループに分割する程度のことも当業者であれば必要に応じて適宜成し得ることである。
したがって「送信時間算出部」の構成に関し、引用発明の「タイマ値として用いられる前記最小時間に自己アドレスを乗算した値を算出する演算手段」を周知例1に開示されている「停電発生後の停電信号の発報」時に適用することにより、本願発明のような「停電発生後から全システムが全て情報をオンラインセンタへアップロードするまでの時間を登録しておく最大待機時間登録部」を備え、「前記識別子IDと最大待機時間および基本待機時間をもとに各システムが停電発生からアップロードを開始するまでの時間を算出する」構成に変更する程度のことは、当業者であれば容易なことである。

ついで、上記相違点(3)について検討するに、上記周知例2の摘示事項イには「送信通信装置は、データの送信を行つた後、受信通信装置から前記確認信号が返送されて来ないときには、前記待機時間経過後にデータの再送信を行う」構成が開示されており、また、上記引用例の摘示事項ロには「端末が複数台存在する際には、起動させるタイマが全て同一であるという理由により、一斉にタイマ割り込みが発生し、いずれも登録要求を出そうとして衝突が発生し、競合が起こり、競合で負けた端末は登録要求が出せるまでタイマを起動させ、割り込みを発生させるという処理を繰り返」すことが開示されているから、引用発明の構成における端末のグループ化に伴って生じるグループ内の衝突に対する善後策として、上記引用例や周知例2に記載されているような衝突発生後の再送信技術を付加する程度のことも当業者であれば適宜成し得ることである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-09-08 
結審通知日 2005-09-13 
審決日 2005-09-28 
出願番号 特願平6-117754
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 篠塚 隆  
特許庁審判長 佐藤 秀一
特許庁審判官 衣鳩 文彦
浜野 友茂
発明の名称 公衆通信システム  
代理人 森本 義弘  

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