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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G10K
管理番号 1126652
審判番号 不服2003-4550  
総通号数 73 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-05-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-03-20 
確定日 2005-11-10 
事件の表示 平成 7年特許願第287607号「カラオケ演奏の合間に再生される情報ファイルを楽曲ファイル配信の際に更新する通信カラオケシステム、ホスト装置、通信カラオケ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 5月16日出願公開、特開平 9-128452〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年11月6日の出願であって、平成15年2月12日付けで補正の却下の決定がなされるとともに同日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年3月20日に拒絶査定に対する審判の請求がなされるとともに、上記補正の却下の決定に対して不服が申し立てられたものである。

2.平成15年2月12日付け補正の却下の決定の取消し
平成15年2月12日付け補正の却下の決定は、以下の理由で取り消す。

同決定の理由は要するに、平成14年6月17日付け手続補正書により補正された本願の各請求項に係る発明は引用文献1(特開平6-67682号公報)及び引用文献3(特開平4-348433号公報)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同発明は、独立して特許を受けることができないものであるというものである。
しかし、請求項1に係る発明の発明特定事項である「ダウンロードすべき前記情報ファイルを通信カラオケ装置毎に個別にリストアップした『ダウンロードすべき情報ファイルリスト』」、又は請求項2に係る発明の発明特定事項である「ダウンロードすべき前記情報ファイルを通信カラオケ装置が設置されている地域毎に個別にリストアップした『ダウンロードすべき情報ファイルリスト』」について、引用文献1及び3には記載も示唆もされていない。
請求項1又は2を引用して記載された請求項3ないし5に係る発明についても同様である。
そして、本願の各請求項に係る発明は、上記リストを有することにより、「ダウンロードされるファイルの数が減少し、ホスト装置の作業効率を向上することができるとともに、通信時間の削減にも寄与することができる。」という特有の効果を奏するものである。
したがって、本願の各請求項に係る発明は、引用文献1及び3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
よって、同決定の理由はその前提において失当であり、同決定を取り消す。

3.本願発明
本願の請求項3に係る発明は、平成17年8月17日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項3に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「【請求項3】つぎの事項(31)〜(35)により特定される通信カラオケ装置。
(31)端末記憶手段と、端末制御手段とを備え、通信回線を介してホスト装置と接続可能であり、楽曲ファイルに基づいてカラオケ演奏するとともに、カラオケ演奏の合間に情報ファイルを再生する通信カラオケ装置であること
(32)端末記憶手段は、楽曲ファイルの集合と、情報ファイルの集合と、保有情報ファイルリストを格納すること
(33)端末制御手段は、ホスト装置からの楽曲ファイル配信を受ける際に第4、第5処理を行うこと
(34)第4処理は、端末記憶手段に格納された保有情報ファイルリストをホスト装置に送信すること
(35)第5処理は、ホスト装置から受信した情報ファイルを端末記憶手段に格納するとともに、ホスト装置から受信した必要情報ファイルリストを端末記憶手段に新たな保有情報ファイルリストとして更新記憶すること」

4.引用例
これに対して、当審において平成17年6月14日付けで通知した拒絶の理由に引用した特開平6-318090号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(摘記箇所は段落番号により特定する。)
(1) 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明はカラオケ通信システムに係り、特に告示出力に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、営業用のカラオケ装置としては、中央装置から複数のカラオケ端末装置に演奏データを伝送するカラオケ通信システムが存在した。例えば、特開平4-14919号公報に開示されるカラオケ通信システムは、端末装置から所望の曲を伝送回線を介して中央装置に対してリクエストすると、中央装置はそのリクエストに関わるカラオケデータを伝送回線を介して端末装置に伝送する。カラオケ端末装置は、伝送されてきたカラオケデータを一時記憶し、データを再生して演奏出力する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のようなカラオケ通信システムにおいて、カラオケ端末装置がカラオケの演奏出力を行なっていない期間に、宣伝や天気予報、行楽情報のような各種情報を映像・音声出力する告示出力を行ないたいという要求があるが、告示出力を行なうには、告示出力を行なう度毎に、中央装置に格納されている告示データを伝送回線を介して受信取得し、その告示データに基づいて告示出力を行なわなければならない。例えば、所定の時間毎に複数の告示を順番に出力する場合には、各カラオケ端末装置は所定の時間毎に告示データを中央装置から受信取得する必要がある。このため、中央装置が各カラオケ端末装置へ送信するデータ量は膨大なものになり、中央装置および伝送回線のデータ転送能力をオーバーしてしまい、システムが麻痺する危険があり、上記カラオケ通信システムにおいては告示出力を行なうことができなかった。
【0004】本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、中央装置からカラオケ端末装置への告示データの転送量を減らし、中央装置および伝送系のデータ伝送に係る負担を軽減することにより、告示出力を確実に実現することができるカラオケ通信システムを提供することを目的とする。」
(2) 「【0009】
【実施例】以下、本発明を具体化した一実施例である告示出力として広告出力を行なう場合の実施例について、図面を参照して説明する。
【0010】図2は、本実施例のカラオケ通信システムの概略構成を示すブロック図である。
【0011】このカラオケ通信システムは、大きな構成要素として、ひとつの中央装置2、ひとつまたは複数のカラオケ端末装置4、および、中央装置2と各カラオケ端末装置4を双方向的に結ぶ伝送回線6を備えている。
【0012】中央装置2は、中央装置制御部50と、カラオケデータ格納手段としての大容量のカラオケデータ格納部52と、告示データ格納手段としての広告データ格納部54と中央装置側通信回路56とから構成されている。中央装置制御部50は、マイクロコンピュータで構成されており、広告データ変更手段としての広告データ変更部50aを含んでいる。
【0013】カラオケデータ格納部52は、膨大な量のカラオケソフトのカラオケデータ(演奏データおよび背景映像データ)を格納しているもので、例えば磁気ディスクや多数のレーザディスクなどが使用されている。演奏データには、音楽データと歌詞データとが含まれている。
【0014】広告データ格納部54は、複数の広告データ(音声データおよび映像データ)を格納しているもので、例えばハードディスク、フロッピディスク、光磁気ディスクなどで構成されている。
【0015】中央装置制御部50は、中央装置側通信回路56を介してカラオケ端末装置4から送信されてきたリクエストの曲番号に対応するカラオケデータ(演奏データおよび背景映像データ)をカラオケデータ格納部52から読み出す機能と、同様にして送信されてきた広告データ送信要求に応じて、広告データ格納部54から広告データを読み出す機能と、その読み出した演奏データおよび背景映像データもしくは広告データをカラオケ端末装置4に送信するように中央装置側通信回路56を制御する機能等を備えている。また、中央装置制御部50に含まれる広告データ変更部50aは、前記広告データ格納部54に格納された広告データのうち任意のものを削除し、また、前記広告データ格納部54に新規に広告データを格納するものである。
【0016】カラオケ端末装置4は、端末装置制御部60と、端末装置側通信回路62と、告示データ記憶手段としての広告データ記憶部64と、広告出力部66と、演奏手段としてのカラオケ演奏部68と、選曲番号入力部70と、カラオケデータ一時記憶部72と、音声信号選択回路74と、オーディオアンプ76と、マイクロフォン78と、スピーカ80と、映像信号選択回路82と、モニタディスプレイ84とから構成されている。前記端末装置制御部60は、マイクロコンピュータで構成されており、告示データ先読み手段としての広告データ先読み部60aと、告示データ更新手段としての広告データ更新部60bと、広告出力管理部60cとを含んでいる。なお、出力手段は、前記広告出力部66と広告出力管理部60cとから構成されている。
【0017】選曲番号入力部70は、所望する演奏曲を指定するものであり、所望する演奏曲の曲番号を入力する。
【0018】端末装置側通信回路62は、伝送回線6を介して中央装置2の中央装置側通信回路56と双方向的に結ばれており、選曲番号入力部70から入力された希望する演奏曲の曲番号を含んだカラオケデータ送信のリクエスト、および、広告データを取得するための広告データ送信要求を中央装置2に送信すると共に、中央装置2で読み出された演奏データおよび背景映像データならびに広告データを受信するものである。
【0019】広告データ記憶部64は、カラオケ端末装置4が必要とする広告データを記憶しておくものであり、例えば、半導体メモリ、ハードディスク、フロッピーディスク、光磁気ディスク、バブルメモリ等で構成されている。
【0020】広告出力部66は、広告データ記憶部64から読み出された広告データを広告映像信号および広告音声信号に変換し、それぞれ音声信号選択回路74および映像信号選択回路82へ出力するものである。
【0021】カラオケデータ一時記憶部72は、中央装置2から送信され端末装置側通信回路62によって受信したカラオケデータ(演奏データおよび背景映像データ)を一時的に格納しておくためのものである。このバッファメモリとしてのカラオケデータ一時記憶部72は、半導体メモリ、ハードディスク、フロッピーディスク、光磁気ディスク、バブルメモリ等のいずれかが用いられる。
【0022】カラオケ演奏部68は、カラオケデータ一時記憶部72から読み出された演奏データのうちの音楽データからカラオケ音声信号を生成して、音声信号選択回路74へ出力し、また、演奏データのうちの歌詞データと背景映像データからそれぞれ歌詞映像信号と背景映像信号とを生成し、それらを合成したカラオケ映像信号を映像信号選択回路82へ出力するものである。
【0023】音声信号選択回路74は、広告出力部66から供給される広告音声信号と、カラオケ演奏部68から供給されるカラオケ音声信号のうちの一方(有効な方の信号)をオーディオアンプ76へ出力するものである。オーディオアンプ76は、音声信号選択回路74からの音声信号と、歌い手によるマイクロフォン78からの歌唱音声信号とをミキシングして増幅し、スピーカ80から出力するものである。
【0024】映像信号選択回路82は、広告出力部66から供給される広告映像信号と、カラオケ演奏部68から供給されるカラオケ映像信号のうちの一方(有効な方の信号)をモニタディスプレイ84へ出力するものである。
【0025】端末装置制御部60は、カラオケ端末装置4の全体を制御するものである。
【0026】広告データ先読み部60aは、中央装置2の広告データ格納部54に格納されている全広告データを、伝送回線6および端末装置側通信回路62を介して取得し、広告データ記憶部64に格納するものである。
【0027】広告データ更新部60bは、広告データ格納部54に格納されている広告データの内容が広告データ変更部50aによって変更された場合に、広告データ記憶部64に格納されている広告データを、広告データ格納部54の内容と一致するように更新するものである。広告データ更新部60bは、後述する広告更新割り込み処理によって、広告データ記憶部64の格納内容の更新を行なう。
【0028】広告出力管理部60cは、所定の時間毎に、広告データ記憶部64から広告データを読み出して、その読み出した広告データを広告出力部66へ送出し、広告出力部66に広告音声および映像の出力を行なわせるものである。なお、広告出力管理部60cには、次に出力すべき広告を指し示すワークエリアである広告ポインタが含まれるが、広告ポインタは図2には図示されていない。
【0029】図3は、広告データ格納部54および広告データ記憶部64に格納されるデータの概略を示す図である。
【0030】図3(a)は、広告データ格納部54に格納される広告データの内容を示す図である。広告データ格納部54には、複数の広告データが複数の広告データファイル90として格納されており、加えて、格納されている全広告データファイル90のファイル名が登録されている広告データ登録テーブル92が格納されている。
【0031】また、図3(b)は、広告データ記憶部64に格納される広告データの内容を示す図である。広告データ記憶部64には、広告データ格納部54と同様に、複数の広告データファイル90と、広告データ登録テーブル92が格納されている。
【0032】広告データ登録テーブル92の内容を図3(c)に示す。
【0033】広告データ登録テーブル92は、広告データ格納部54または広告データ記憶部64に格納されている広告データファイル90の数を表す広告データ数と、格納されている広告データファイル90の各々のファイル名とからなっており、広告データファイル名の並び順は広告出力の順番を示している。」
(3) 「【0037】次に、広告出力管理部60cが、所定の時間毎に広告データ記憶部64から広告データを読み出して広告出力部66へ送ることにより、広告を順次出力する(S2)。この処理は、選曲番号入力手段70に曲番号を入力することで終了する。
【0038】続いて、選曲番号入力手段72から入力された曲番号に対応する楽曲の演奏を行なう(S3)。
【0039】楽曲の演奏が終了すると、広告順次出力処理(S2)へ戻り、以後、広告の順次出力(S2)と楽曲演奏(S3)が繰り返される。」
(4) 「【0042】最初に、広告データ格納部54に格納されている広告データ登録テーブル92を取得する(S10)。実際の手順としては、広告データ登録テーブル送信要求を端末装置側通信回路62および伝送回線6を介して中央装置2に送信し、それに応じて中央装置2から送信されてくる広告データ登録テーブル92(以下、本体側広告テーブルとする)を伝送回線6と端末装置側通信回路62を介して受信する。
【0043】次に、広告データ記憶部64に格納されている全広告データファイル90を消去し、広告データ記憶部64に格納されている広告登録テーブル92(以下、端末側広告テーブルとする)を広告データ数=0の状態に初期化する(S11)。」
(5) 「【0063】カラオケ端末装置4においては、また、所定の時間間隔で広告更新割り込み処理が起動される。この時間間隔は十分に長く定められている。図8は、広告更新割り込み処理のフローチャートである。
【0064】まず、広告データ先読み処理(図5,S10)と同様に、広告データ格納部54に格納されている本体側広告テーブルを取得する(S40)。
【0065】次に、端末側広告テーブルの先頭から広告データファイル名を1件読み出す(S41)。続いて、読み出した広告データファイル名と先に取得した本体側広告テーブルに登録されている全広告データファイル名とを比較することにより、読み出した広告データファイル名が本体側広告テーブルに登録されているか否かを調べる(S42)。
【0066】ここで、本体側広告テーブルに登録されていない場合(S42:NO)は、S41で読み出した広告データファイル名を端末側広告テーブルから削除する(S43)と共に、そのファイル名の広告データファイルを広告データ記憶部64から消去する(S44)。本体側広告テーブルに登録されている場合(S42:YES)は、S43,S44の削除処理を行なわない。
【0067】続いて、端末側広告テーブルの全広告データファイル名が読み出されたか、すなわち、端末側広告テーブルに登録された全広告データファイルについて処理が終了したかを調べ(S45)、終了していないならば(S45:NO)、S41へ戻り、次の広告データファイル名の読み込みを行ない、全広告データファイルの処理が終了するまでの間(S45:NOの間)、S41〜S45の処理を繰り返す。この処理により、広告データ記憶部64に格納されているが広告データ格納部54には格納されていない広告データファイル、すなわち、端末側広告テーブルに登録されており本体側広告テーブルに登録されていない広告データファイルが広告データ記憶部64から削除される。
【0068】全広告データファイルの処理が終了したら(S45:YES)、端末側広告テーブルを登録件数=0に初期化する(S46)。なお、初期化前に、初期化前の端末側広告テーブルの内容を取得し、無変更広告テーブルとして保存しておく。この無変更広告テーブルには、広告データ格納部54と広告データ記憶部64に共通に格納されている広告データファイルのファイル名が登録されている。
【0069】続いて、本体側広告テーブルの先頭から広告データファイル名を1件読み込む(S47)。
【0070】そして、その読み込んだ広告データファイル名が広告データ記憶部64に格納されている広告データのファイル名であるか否かを調べる(S48)。実際の処理としては、S47で読み込んだ広告データファイル名が、前記無変更広告テーブルに登録されているか否かを調べ、登録されていれば広告データ記憶部64に格納されていると判断する。
【0071】ここで、広告データ記憶部64に格納されていない場合(S48:NO)には、広告データ先読み処理(図5,S13)と同様に、その広告データファイル名の広告データファイルを受信取得する(S49)。広告データファイルの取得に成功した場合(S50:YES)は、取得した広告データファイルを広告データ記憶部64に格納し(S51)、さらに、端末側広告テーブルに登録する(S52)。端末側広告テーブルへの登録は、広告データ先読み処理(図5,S16)と同様に行なう。広告データファイルの取得に失敗した場合(S50:NO)は、格納・登録処理は行なわない。
【0072】一方、広告データ記憶部64に格納されていた場合(S48:YES)は、広告データファイルの取得を行なわずに、端末側広告テーブルへの登録のみを行なう(S52)。
【0073】上記、広告データファイル1件の処理を行なった後、本体側広告テーブルの全ファイルの処理が終了したかどうかを調べ(S53)、終了していない場合(S53:NO)には、次のファイル名の読み込み処理(S47)へ戻る。こうして、本体側広告テーブルに登録されている全広告データファイルの処理が終了するまで、S47〜S53を繰り返す。そして、全ファイルの処理が終了したら(S53:YES)、広告更新割り込みの処理を終了する。
【0074】以上、S40〜S53の処理によって、広告データ記憶部64に格納される広告データは、広告データ格納部54に格納されている広告データと一致するように更新される。すなわち、広告データ変更部50aによってなされた、広告データ格納部54に格納される広告データの削除および広告データ格納部54への広告データの追加を、広告データ記憶部64の格納内容に反映することができる。また、この結果、広告データ変更部50aの行なった広告データ変更内容が、カラオケ端末装置4の広告出力に反映される。」
(6) 「【0080】さらに、本実施例では、カラオケ端末装置4に広告データ更新部60bを設けて、所定の時間毎に、図8に示す広告更新処理を行なうことで広告データ記憶部64の格納内容の更新を行なっていたが、更新は他の方法で行なってもよい。例えば、広告データ更新部60bを中央装置2に設け、広告データ変更部50aが広告データ格納部54の格納内容を変更した場合に、広告データ更新部60bが、その変更内容に対応する広告データ記憶部64の格納内容の変更指示をカラオケ端末装置4へ送信することで実現してもよい。」

これら記載事項及び図2によれば、引用刊行物には、
「カラオケ端末装置4は、端末装置制御部60と、端末装置側通信回路62と、告示データ記憶手段としての広告データ記憶部64と、広告出力部66と、演奏手段としてのカラオケ演奏部68と、カラオケデータ一時記憶部72と、から構成されている。前記端末装置制御部60は、告示データ更新手段としての広告データ更新部60bを含んでいる。端末装置側通信回路62は、伝送回線6を介して中央装置2の中央装置側通信回路56と双方向的に結ばれており、選曲番号入力部70から入力された希望する演奏曲の曲番号を含んだカラオケデータ送信のリクエスト、および、広告データを取得するための広告データ送信要求を中央装置2に送信すると共に、中央装置2で読み出された演奏データおよび背景映像データならびに広告データを受信するものである。カラオケデータ一時記憶部72は、中央装置2から送信され端末装置側通信回路62によって受信したカラオケデータ(演奏データおよび背景映像データ)を一時的に格納しておくためのものである。広告データ記憶部64には、複数の広告データファイル90と、広告データ登録テーブル92が格納されている。」発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

5.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「カラオケ端末装置4」は中央装置2と伝送回線6を介して通信するものであるから、「通信カラオケ装置」ということができる。そしてこの「中央装置2」は、本願発明の「ホスト装置」に相当する。
引用発明の「広告データ記憶部64」と「カラオケデータ一時記憶部72」はまとめて「端末記憶手段」ということができる。
引用発明の「端末装置制御部60」は本願発明の「端末制御手段」に相当する。
引用発明の「演奏データ」は本願発明の「楽曲ファイル」に相当し、引用発明においても「演奏データ」に基づいてカラオケ演奏される(4.(2)の段落0022参照)。
引用発明の「広告データ」は本願発明の「情報ファイル」に相当し、カラオケ演奏の合間に再生される(4.(3)参照)。
引用発明の「広告データ登録テーブル92」は本願発明の「保有情報ファイルリスト」に相当する。
してみると、本願発明と引用発明は、
「つぎの事項(31)〜(32)により特定される通信カラオケ装置。
(31)端末記憶手段と、端末制御手段とを備え、通信回線を介してホスト装置と接続可能であり、楽曲ファイルに基づいてカラオケ演奏するとともに、カラオケ演奏の合間に情報ファイルを再生する通信カラオケ装置であること
(32)端末記憶手段は、情報ファイルの集合と、保有情報ファイルリストを格納すること」
である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:
本願発明では端末記憶手段に楽曲ファイルの集合を格納するのに対し、引用発明では演奏データが一時的に格納されるにすぎず複数の演奏データが格納されるものではない点。

相違点2:
本願発明は
「(33)端末制御手段は、ホスト装置からの楽曲ファイル配信を受ける際に第4、第5処理を行うこと
(34)第4処理は、端末記憶手段に格納された保有情報ファイルリストをホスト装置に送信すること
(35)第5処理は、ホスト装置から受信した情報ファイルを端末記憶手段に格納するとともに、ホスト装置から受信した必要情報ファイルリストを端末記憶手段に新たな保有情報ファイルリストとして更新記憶すること」という発明特定事項を含むのに対し、引用発明は広告データ更新部により広告データを更新するものである点。

6.判断
(1)上記相違点1について検討する。
通信カラオケ装置において、曲をまとめてダウンロードすることは周知技術であって(特開平7-143081号公報参照)、この周知技術を前提とすれば引用発明においてまとめてダウンロードした楽曲ファイルを集合として記憶手段に格納することは当業者が容易になし得ることである。
(2)上記相違点2について検討する。
引用発明の「広告更新」は、カラオケ端末装置にて、十分に長い所定の時間間隔ごとに中央装置の本体側広告テーブルを取得し端末側広告テーブル(「広告データ登録テーブル92」と同義、4.(4)の段落0043参照)と比較した上で広告データ記憶部64に格納されていない広告データファイルを受信取得し広告データ記憶部64に格納し、さらに、端末側広告テーブルに登録するものである(4.(5)参照)。そして、引用刊行物には更新部を中央装置側に設けることが示唆されている(4.(6)参照)から、上述のカラオケ端末装置でなしている本体側広告テーブルと端末側広告テーブルの比較を本体装置側で行うことは当業者が容易に思いつくことである。すると、このために、カラオケ端末装置から中央装置に端末側広告テーブルを送信すること、すなわち本願発明の「第4処理」及び中央装置から広告データファイルを取得し広告データ記憶部に格納するとともに、端末側広告テーブルに登録するために本体側広告テーブルを受信し更新記憶すること、すなわち「第5処理」をカラオケ端末装置で行うようにすることは当業者が容易になし得る設計変更である。
また、この更新を行う時期として引用刊行物には、所定の時間間隔ごとや中央装置側の広告データが変更された時点が記載されている(4.(6)参照)が、複数の例が記載されていることから見ても、更新を行う時期は、予想されるホスト装置側の広告データの変更頻度や通信回線の容量、費用などを考慮して当業者が適宜設定すべき事項にすぎない。
そして、通信を行うときに1回でまとめてデータを送ることは慣用手段である(日常生活上も1回の郵送に「追伸」を追加すること等普通に行われていることである。)から、更新の時期を「ホスト装置からの楽曲ファイル配信を受ける際」とし、楽曲ファイルと更新用の情報ファイルをまとめてホスト装置から各通信カラオケ装置に送るように設計変更することは、当業者が容易になし得ることである。
してみると、引用発明の広告データ更新部により広告データを更新することに代え、「(33)端末制御手段は、ホスト装置からの楽曲ファイル配信を受ける際に第4、第5処理を行うこと
(34)第4処理は、端末記憶手段に格納された保有情報ファイルリストをホスト装置に送信すること
(35)第5処理は、ホスト装置から受信した情報ファイルを端末記憶手段に格納するとともに、ホスト装置から受信した必要情報ファイルリストを端末記憶手段に新たな保有情報ファイルリストとして更新記憶すること」を採用することは、当業者が容易にないうることである。
一方、本願発明の奏する効果を検討してみても、引用発明及び技術常識から予想される効果を越えるものではない。

7.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本願は他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-09-08 
結審通知日 2005-09-13 
審決日 2005-09-28 
出願番号 特願平7-287607
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G10K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青柳 光代佐藤 智康  
特許庁審判長 杉山 務
特許庁審判官 深沢 正志
田口 英雄
発明の名称 カラオケ演奏の合間に再生される情報ファイルを楽曲ファイル配信の際に更新する通信カラオケシステム、ホスト装置、通信カラオケ装置  
代理人 原島 典孝  
代理人 原島 典孝  
代理人 一色 健輔  
代理人 一色 健輔  

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