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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G10L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G10L |
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管理番号 | 1126661 |
審判番号 | 不服2003-14016 |
総通号数 | 73 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-04-13 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-07-23 |
確定日 | 2005-11-10 |
事件の表示 | 平成11年特許願第280528号「音声合成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 4月13日出願公開、特開2001-100776〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成11年9月30日の出願であって、平成15年6月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月23日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年8月18日付けで手続補正がなされたものである。 2.上記手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成15年8月18日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)本件補正による特許請求の範囲についての補正 本件補正により、特許請求の範囲の請求項3は次のように補正された。(補正部分をアンダーラインで示す。) 「出力すべき音声の音韻情報を受けて、この音韻情報を拡張音節に区分する区分手段と、 区分手段によって区分された拡張音節をひとかたまりとして音声波形データを生成し、各拡張音節の音声波形データを結合して出力すべき音声波形データを得る音声波形合成手段と、 音声波形合成手段によって得られた音声波形データを受けて、アナログ音声信号に変換するアナログ変換手段と、 を備えた音声合成装置。 ここで、拡張音節とは、母音を含む音素系列からなっており、複数の音素が明瞭な区分に乏しく連続している場合にはこれら音素を1つのかたまりとして扱ったものであって、スペクトルまたは基本周波数の連続量が安定しており、それ以上分割しない音声波形素片切り出しのための最小単位をいう。」 (2)補正の目的の適否 上記補正は、補正前の請求項3に記載した発明を特定する事項である「拡張音節」が、「スペクトルまたは基本周波数の連続量が安定しており、それ以上分割しない音声波形素片切り出しのための最小単位」であるとの限定を付加するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号で規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (3)独立特許要件についての検討 そこで、本件補正後の請求項3に記載された発明(以下「補正発明」という。)が独立特許要件(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定)を満たすか否かについて以下に検討する。 (3.1)引用例 原査定の拒絶理由に引用された特開平1-209500号公報(以下「引用例」という。)には、音声合成方式について、現用の音声合成方式では、内容の異なった音声を出力するために、音素、音節、単語および文節といった音声単位を予め蓄えておき、それらの変型や結合により音声を合成する方式が採用されており、通常、これらの音声単位は、予め定められた使用箇所に依存して数個用意されるか、あるいは、音韻論的な単位に合わせて1個用意されるが、自然な出力音声を得るためには、出力したい音声内容の可変度に応じて、複数個の音声単位が必要であることが指摘されており、そのため、母音・子音・母音(VCV)、子音・母音・子音(CVC)および2音節連鎖(CVCV)など、長い音節単位を用いることにより、隣接する音韻による影響を取入れた合成方式なども考案されていることが記載されている(第1頁右下欄3〜19行目)。 (3.2)対比 そこで、補正発明と引用例記載のものとを対比してみると、補正発明でいう「拡張音節」は、その前記請求項3記載の定義は別として、音声合成を行う上での音声単位であることが明らかで、そうすると、補正発明は、「出力すべき音声の音韻情報を受けて、この音韻情報を音声単位に区分する区分手段と、区分手段によって区分された音声単位をひとかたまりとして音声波形データを生成し、各音声単位の音声波形データを結合して出力すべき音声波形データを得る音声波形合成手段と、音声波形合成手段によって得られた音声波形データを受けて、アナログ音声信号に変換するアナログ変換手段」を用いて音声合成を行うようにした点を基本的な構成とするものといえるところ、そのような構成は、音声を合成する上での常套の一構成にすぎないものであって、引用例記載の音声合成方式でも適宜同様の構成を採り得ることは明らかであるから、この点では両者に格別の違いがあるとは認められず、そうすると、両者は、上記音声単位について、補正発明が「母音を含む音素系列からなっており、複数の音素が明瞭な区分に乏しく連続している場合にはこれら音素を1つのかたまりとして扱ったものであって、スペクトルまたは基本周波数の連続量が安定しており、それ以上分割しない音声波形素片切り出しのための最小単位」であるとしているのに対し、引用例記載のものは、特にそのような拡張音声を開示するものではない点において一応相違するにすぎないものであることが認められる。 (3.3)判断 そこで、以下、上記相違点について検討すると、補正発明でいう上記拡張音節とは、その意味が必ずしも明確ではないが、明細書の説明(段落【0013】)に照らすと、上記音声合成を行う上での音声単位、つまりそれ以上分割しない音声波形素片切り出しのための最小単位を、該単位中に音声の持つスペクトルや基本周波数などの連続量の過渡部におけるダイナミックな動きが保存され、上記の連続量が安定した箇所で音声波形素片の切り出しがなされるように定めたものであって、その具体例(図6)では、例えば音節構造がVJ(2重母音)である「あい」,「うい」や、VN(母音・撥音)である「あん」等を含むものであることが認められる。 然るに、音声合成の音声単位としては、上記引用例にも示されているように、従来から音素、音節、単語等の他、VCV(母音・子音・母音)、CVC(子音・母音・子音)、CVCV(2音節連鎖)等の音声単位が使用もしくは提案されていること、音素の複合単位からなる音声単位では、音声単位内に音素の過渡部分を含ませるようにするのが通常であること〔この点、必要があれば、電子情報通信学会編「電子情報通信ハンドブック」オーム社(1990.4.30)1188頁参照)、音声合成において、出力合成音声における合成単位間の接続点でのスペクトルの変化が滑らかになるように、音声単位を定めること、そのために音声単位(音韻単位)に、例えば/ai/などの連母音や、/aN/などの複合音節を含ませることが周知の技術であること〔この点必要があれば、特開平6-95692号公報(特に第2頁の【請求項1】等)、特開平7-319497号公報(特に4頁段落【0018】等)参照〕、の各点を考慮すると、補正発明でいう上記拡張音節は、音声合成を行う上での音声単位の一選定態様として当業者が容易に想到し得た程度のものというべきであり、その作用効果も引用例、および音声合成における上記通常の技術事項や周知技術から当業者に予測できる範囲のもので、格別顕著なものとは認められないから、上記相違点において補正発明が格別のものであるとすることはできない。 したがって、補正発明は、引用例、上記通常の技術事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (3.4)むすび 以上のとおりであるから、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明についての検討 (1)本願発明 平成15年8月18日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項3に係る発明(以下これを「本願発明」という)は、出願当初の明細書における特許請求の範囲の請求項3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「出力すべき音声の音韻情報を受けて、この音韻情報を拡張音節に区分する区分手段と、 区分手段によって区分された拡張音節をひとかたまりとして音声波形データを生成し、各拡張音節の音声波形データを結合して出力すべき音声波形データを得る音声波形合成手段と、 音声波形合成手段によって得られた音声波形データを受けて、アナログ音声信号に変換するアナログ変換手段と、 を備えた音声合成装置。 ここで、拡張音節とは、母音を含む音素系列からなっており、複数の音素が明瞭な区分に乏しく連続している場合にはこれら音素を1つのかたまりとして扱ったものをいう。」 (2)引用例 原査定の拒絶理由に引用された引用例、およびその記載事項は、前記2.(3)(3.1)に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明は、前記2.(2)での認定から明らかなように、前記補正発明から、拡張音節が「スペクトルまたは基本周波数の連続量が安定しており、それ以上分割しない音声波形素片切り出しのための最小単位」であるとの限定を除いたものであるところ、上記限定事項を有する補正発明が、前記引用例、通常の技術事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであることは前記2.(3)(3.3)で判断したとおりであり、したがって、本願発明も、同様の理由により、前記引用例、通常の技術事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび 以上のとおりであるから、請求項3に係る本願発明は、引用例に記載された発明及び前記通常の技術事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-09-06 |
結審通知日 | 2005-09-12 |
審決日 | 2005-09-26 |
出願番号 | 特願平11-280528 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G10L)
P 1 8・ 575- Z (G10L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 渡邊 聡 |
特許庁審判長 |
藤内 光武 |
特許庁審判官 |
清水 正一 堀井 啓明 |
発明の名称 | 音声合成装置 |
代理人 | 松下 正 |
代理人 | 古谷 栄男 |
代理人 | 眞島 宏明 |