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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
管理番号 1126700
審判番号 不服2002-19737  
総通号数 73 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-10-04 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-10-10 
確定日 2005-11-14 
事件の表示 平成 5年特許願第 65858号「画像診断システム」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年10月 4日出願公開、特開平 6-277207〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成5年3月25日の出願であって、その請求項1〜8に係る発明は、平成12年3月27日付け、平成14年3月19日付け、平成14年11月8日付け及び平成17年8月23日付け手続補正書で補正された明細書及び図面の記載によれば、その特許請求の範囲の請求項1〜8に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1に記載された事項は次のとおりである。(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)
【請求項1】被検体の撮影データを検出する検出手段及びこの検出手段による検出動作を制御する第1の制御手段と、前記撮影データ、スキャン条件、検査日時、検査場所、患者データを記憶する第1の記憶手段とを有する撮影装置と、
この撮影装置とは別体であって、前記撮影データに基づいて断層像を生成する画像生成を行う画像生成手段及びこの画像生成手段による画像生成動作を制御する第2の制御手段を有する画像処理装置と、
前記撮影装置と前記画像処理装置との間で、前記撮影データとして前記画像生成前の投影データを通信可能とし、前記撮影データと共に、スキャン条件、検査日時、検査場所、患者データを通信可能とする通信手段とを備え、
前記通信手段は、前記撮影データと共に、前記撮影装置を識別するための識別情報を、前記撮影装置と前記画像処理装置との間で通信可能とするものであり、
前記画像処理装置は、前記撮影装置の識別情報を記憶する記憶手段を更に備え、前記第2の制御手段は、前記記憶手段に記憶された識別情報と前記撮影装置から送信された識別情報が合致した場合、前記撮影データを受信可能とすることを特徴とする画像診断システム。

2.引用刊行物記載の発明
2-1.当審の拒絶の理由に引用した、本願の出願日前に頒布された特開昭61-331号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。
ア.「少なくとも1つ設けられ、被撮影体の所定の平面における放射線の透過率を検出する撮影手段と、当該撮影手段に情報通信路を介して接続され、各撮影手段における撮影を制御すると共に検出した透過率データを用いて撮影した平面像を形成し表示部にて表示出力する画像形成手段とを特徴とする放射線断層撮影装置。」(特許請求の範囲(1))
イ.「当初、特に医療用として普及して来たX線撮影装置は、そのX線の走査技術、放射線検出器、断面像の再構成技術の進歩に伴い、その有用性から他の分野における応用が提案されている。すなわち、例えば現在主に超音波を用いて行われている素材の内部欠陥検出にX線を用いることで、測定精度の向上を図ることができ、特に例えばセラミックスや複合材料などの新素材の開発に伴う精度向上の要求に応えることができる。」(第1頁右下欄第5〜13行)
ウ.「第1図は、本発明の一実施例に係る放射線断層撮影装置を示すもので、画像再構成装置12が電話回線13を介して撮影部14-1〜14-nおよび表示部15-1〜15-nに接続されている構成である。 撮影部14-1〜14-nは、被撮影体(図示せず)を載置する回転テーブル16、当該被撮影体に対しX線を平面走査しながら放射するX線発生器17、当該X線発生器17におけるX線の出力および走査を制御するX線コントローラ18、被撮影体を通過したX線の強度を検出するX線検出器19、検出したX線強度のデータを収集するデータ収集部20、前記回転テーブル16、X線コントローラ18およびデータ収集部20に制御信号を出力する制御部21を有する。加えて、撮影部14-1〜14-nは、画像再構成装置12との間でデータの送受を行うためにインターフェース22を有している。インターフェース22は、データ収集部20で収集したデータについてA/D変換器23が処理したデジタルデータを符号化し電話回線13を介して画像再構成装置12に伝送出力し、また、当該画像再構成装置12から符号化されて伝送されて来た撮影制御指令信号を再生する機能を有するものである。したがって、撮影部14-1〜14-nとしては、画像再構成装置12に対してデータ検出用の端末ユニットをみることができ、被撮影体の撮影のみを行えればよいので、比較的コンパクトにまとめやすく、可搬性に優れる。 画像再構成装置には、撮影部14-1〜14-nから伝送されて来た撮影により得られたX線強度データについての符号化信号を再生し、また撮影制御指令信号を符号化して電話回線13を介して撮影部14-1〜14-nに伝送出力し、一方、表示部15-1〜15-nに対して撮影部14-1〜4-nから伝送されて来たデータを用いて再構成した撮影像についての信号を符号化して電話回線13を介して伝送出力する機能を備えるインターフェース24を有する。また、画像再構成装置12は、インターフェース24で再生されたX線強度データをI/Oポート25を介して適宜入力して画像再構成ユニット27に供給制御したり、当該ユニットで再構成された撮影像信号を適宜表示部15-1〜15-nの伝送出力指示あるいは撮影部14-1〜14-nに適宜撮影制御指令信号を伝送出力指示するCPU26と、当該CPU26の処理プログラムあるいは処理データの一時記憶のためのメモリディスク28を有する。なお、画像再構成装置12としては、その設置場所が撮影部14-1〜14-nに対して制約されないので、できるだけ環境条件の良好な場所に設置することで、画像再生処理の信頼性を高めることができる。」(第2頁左下欄第4行から第3頁左上欄第16行)
上記記載事項ア.〜ウ.及び第1図の記載によれば、引用刊行物1には、
「被撮影体に対しX線を走査しながら放射するX線発生器17及び被撮影体を通過したX線強度のデータを検出するX線検出器19、並びにX線発生器17等を制御するX線コントローラ18及び制御部21を有する撮影部14-1〜14-nと、この撮影部とは別体であって、前記X線強度のデータに基づいて断層像を生成する画像再構成ユニット27及びこの画像再構成ユニット27による画像再構成動作を制御するCPU26を有する画像再構成装置12と、前記撮影部14-1〜14-nと前記画像再構成装置12との間で、前記X線強度のデータを通信可能とする電話回線13とを備えた放射線断層撮影装置。」(引用刊行物1記載の発明)が記載されていると認められる。

2-2.当審の拒絶の理由に引用した、本願の出願日前に頒布された特開昭63-286951号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている。
エ.「センタ装置と端末とが通信回線を介して接続された情報処理システムにおいて、センタ装置の利用を許可された端末および利用者を識別するための端末識別情報および利用者識別情報を登録する端末・利用者識別情報登録手段と、・・・端末からのセンタ装置の利用開始時に端末から受信した端末識別情報および利用者識別情報を端末・利用者識別情報登録手段に登録された端末識別情報および利用者識別情報を端末・利用者識別情報登録手段に登録された端末識別情報および利用者識別情報を調べて端末および利用者がセンタ装置の利用を許可されている端末および利用者であるか否かをチェックしてセンタ装置の利用を許可または禁止する利用可否判別手段とを備えるセンタ装置と、端末識別情報を保持する不揮発性情報保持手段と、利用者識別情報を入力する入出力装置と、端末からのセンタ装置の利用開始時に入出力装置から入力された利用者識別情報に不揮発性情報保持手段に保持された端末識別情報を付加してセンタ装置に送信する端末識別情報付加送信手段とを備える端末と、を有することを特徴とするセンタ装置の不正利用防止方式。」(特許請求の範囲)

3.対比・判断
本願発明と引用刊行物1記載の発明とを対比する。
引用刊行物1記載の発明の「被撮影体に対しX線を走査しながら放射するX線発生器17及び被撮影体を通過したX線強度のデータを検出するX線検出器19」、「X線発生器17等を制御するX線コントローラ18及び制御部21」、「撮影部14-1〜14-n」、「前記X線強度のデータに基づいて断層像を生成する画像再構成ユニット27」、「この画像再構成ユニット27による画像再構成動作を制御するCPU26」、「画像再構成装置12」及び「電話回線13」が、それぞれ本願発明の「被検体の撮影データを検出する検出手段」、「検出手段による検出動作を制御する制御手段」、「撮影装置」、「前記撮影データに基づいて断層像を生成する画像生成を行う画像生成手段」、「画像生成手段による画像生成動作を制御する制御手段」、「画像処理装置」及び「通信手段」に相当することは明らかである。また、引用刊行物1記載の発明においては、「X線強度のデータ」を画像再構成装置12に送って画像再構成装置12で画像を生成するものであるから、引用刊行物1記載の発明の「X線強度のデータ」は本願発明の「画像生成前の投影データ」に相当するということができる。さらに、引用刊行物1記載の発明の「放射線断層撮影装置」は、本願発明の「画像診断システム」に対応することが明らかである。
してみると、両者は、「被検体の撮影データを検出する検出手段及びこの検出手段による検出動作を制御する第1の制御手段を有する撮影装置と、この撮影装置とは別体であって、前記撮影データに基づいて断層像を生成する画像生成を行う画像生成手段及びこの画像生成手段による画像生成動作を制御する第2の制御手段を有する画像処理装置と、前記撮影装置と前記画像処理装置との間で、前記撮影データとして前記画像生成前の投影データを通信可能とする通信手段とを備えた画像診断システム。」である点で一致し、次の点で相違すると認められる。
(相違点1)
本願発明においては、撮影装置が、撮影データ等を記憶する記憶手段を有しているのに対して、引用刊行物1記載の発明には、この構成が記載されていない点。
(相違点2)
本願発明においては、撮影装置において、スキャン条件、検査日時、検査場所、患者データを記憶手段に記憶するとともに、これらのデータを通信手段で通信可能とするのに対して、引用刊行物1記載の発明には、この構成は記載されていない点。
(相違点3)
本願発明では、通信手段が、撮影データと共に、撮影装置を識別するための識別情報を、撮影装置と画像処理装置との間で通信可能とするものであり、画像処理装置が、撮影装置の識別情報を記憶する記憶手段を備え、制御手段が、記憶手段に記憶された識別情報と撮影装置から送信された識別情報が合致した場合、撮影データを受信可能とするのに対し、引用刊行物1記載の発明では、この構成を有していない点。

上記相違点について、判断する。
相違点1について、
送信側と受信側とを通信手段で接続して送信側から受信側へデータを送る場合に、送信側に記憶手段を設けてデータを予め記憶し、最適な時にあるいは送信要求があった時に、記憶したデータを受信側へ送ることは周知の技術である(特開平1-305931号公報、特開昭63-109843号公報参照)から、撮像部から画像再構成装置へ電話回線を介して撮影データを送る刊行物1記載の発明において、撮像部に撮影データ等を記憶する記憶手段を設けることは当業者ならば適宜採用する事項である。

相違点2について、
引用刊行物1には、「放射線断層撮影装置」を素材の内部欠陥検出に用いることが記載されているが、上記引用刊行物1の記載事項イ.に「特に医療用として普及して来たX線撮影装置は、」と記載されているように、「放射線断層撮影装置」を医療用の診断装置に用いることは極めて周知であるから、引用刊行物1記載の発明を医療用の診断装置に用いることは当業者が普通に採用することである。そして、医療用の装置において、撮影データに加えて、撮影情報や患者情報を入力して記憶あるいは必要に応じて伝送することは周知である(特開平4-54568号公報、特開平1-102541号公報参照)から、この周知技術を用いて、撮影データに加えて、スキャン条件、検査日時、検査場所、患者データを記憶手段に記憶し、通信手段によりこれらのデータを通信可能とすることは、当業者ならば容易に想到し得たものと認められる。

相違点3について、
上記「2-2.」の引用刊行物2の記載事項に記載のように、引用刊行物2には、端末装置とセンタ装置との間で通信手段を介してデータの通信を行う場合に、センタ装置に予め記憶した端末装置を識別するための識別情報と、端末装置から送信した端末装置を識別するための識別情報とが合致した場合に、データの通信を可能とすることが記載されており、引用刊行物1記載の発明の「撮影部」及び「画像再構成装置」はそれぞれ「端末装置」及び「センタ装置」に該当するものであるから、この技術的思想を引用刊行物1記載の発明に用いて、通信手段が、撮影データと共に、撮影装置を識別するための識別情報を、撮影装置と画像処理装置との間で通信可能とするものであり、画像処理装置が、撮影装置の識別情報を記憶する記憶手段を備え、制御手段が、記憶手段に記憶された識別情報と撮影装置から送信された識別情報が合致した場合、撮影データを受信可能とするように構成することは当業者ならば容易に想到し得たものと認められる。

そして、本願発明の作用効果も、引用刊行物1記載の発明、引用刊行物2記載の発明及び上記周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は引用刊行物1記載の発明、引用刊行物2記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-09-15 
結審通知日 2005-09-20 
審決日 2005-10-05 
出願番号 特願平5-65858
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小田倉 直人  
特許庁審判長 高橋 泰史
特許庁審判官 菊井 広行
長井 真一
発明の名称 画像診断システム  
代理人 堀口 浩  

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