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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1126740 |
審判番号 | 不服2002-18648 |
総通号数 | 73 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-04-21 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-09-26 |
確定日 | 2005-11-17 |
事件の表示 | 平成10年特許願第280092号「ファームウェア切り替え方式」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 4月21日出願公開、特開2000-112752〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成10年10月1日の出願であって、平成14年9月26日付けで審判請求及び手続補正がなされ、これに対し、前置審査により平成15年8月29日付けで拒絶理由通知(以下、「前置拒絶理由通知」という。)がなされたが、これに対し応答期間中に何ら応答がなかったものであり、その請求項4に係る発明は、特許請求の範囲の請求項4に記載されたとおり次のものと認める。(以下、「本願発明」という。) 「ファームウェアによって制御されるプロセッサを備えるコンピュータシステムにおいて、適合するファームウェアのレビジョンを識別して前記プロセッサに指示する診断プロセッサと、それぞれ異なる複数個のファームウェアを保持し前記診断プロセッサの指示によって前記ファームウェアの特定のエリアを指定しその読み出しデータをプロセッサ自身に供給するプロセッサとを有するファームウェア切り替え方式において、前記診断プロセッサは各プロセッサごとにプロセッサのレビジョン情報を取込んで解読し適合するファームウェアを決定し,そのファームウェアの格納位置を示す識別データを前記各プロセッサごとに送付することを特徴とするファームウェア切り替え方式。」 2.引用発明 (1)これに対して、前置拒絶理由通知に引用された、本願の出願日前である平成8年7月30日に頒布された刊行物である特開平8-194613号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。 (ア)「【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、マイクロプログラムがロードされたI/O制御ボードでI/Oを制御する計算機システムに係わり、特にシステムを停止せずに保守・交換を行わねばならない場合において好適且つ、信頼性の高いマイクロプログラムのロード方法に関する。」 (イ)「【0011】 【実施例】 図1に、ハードウェア構成例を示す。処理装置101,I/O制御ボード104,107,110,111及びメモリ102はそれぞれシステムバス103に接続され、各I/O制御ボードへのデータの入出力を行う。ファイルI/O制御ボードにはそれぞれマルチアクセスコントローラ(以下MACと略す)105,108が接続され、さらにMACには磁気ディスク106,109が接続されている。磁気ディスクはI/O制御ボードを経由しデータの読み込み・書き込みが行われる。また、MAC105により磁気ディスク106はI/O制御ボード107,MAC108により磁気ディスク109はI/O制御ボード104の両方からアクセス可能となっている。外部からのマイクロプログラムのインストール用にフロッピーディスク112または、カードリッジテープ113が接続されている。システムの操作を行うコンソールディスプレイ114が接続されている。」 (ウ)「【0017】 第1の特徴を図11〜図14を使い説明する。OSは、I/O制御ボードにマイクロプログラムをロードする時、ロードプログラム1110を起動する。まず、ロードプログラムは、メモリ上1102のシステム構成管理テーブル1111より物理アドレス1(1202)のボード認識番号1(1203)を取り出す (処理1401)。ここで取り出した認識番号1からボード認識番号対応テーブルよりボード名称IOU-A1303を導く(処理1402)。次に磁気ディスク上にIOU-Aマイクロプログラムが存在するかチェックを行う。このときマイクロプログラムIOU-Aが存在しない場合は、物理アドレスを1つカウントアップする(処理1406)処理を行い、物理アドレスのチェック(処理1400)を行う。存在した場合、マイクロプログラムIOU-A1114をメモリに読み込む(処理1404)。メモリにIOU-Aを読み込み終了後、I/O制御ボードへのロードを行う(処理1405)。ロードはメモリ上にあるIOU-A(1112)をシステムバス1103を経由してI/O制御ボード上のメモリ1109に書き込む。書き込み後、ロードプログラムは、I/O制御ボードのイニシャルプログラム1115に対しマイクロプログラムの起動要求命令を発行し、イニシャルプログラムは起動要求を受けると処理装置1108を使いマイクロプログラムを起動する。マイクロプログラムロードが終わると物理アドレスを1つカウントアップ(処理1406)し物理アドレスのチェック(処理1400)を行い、再びシステム構成管理テーブルより物理アドレス2のボード認識番号の取り出す処理を行う。これらの一連の処理を行い物理アドレスがシステムの最後までくるとマイクロプログラムのロード処理を終了する。 【0018】 第2の特徴を図12,図15〜図17を使い説明する。I/O制御ボード作成上のルールとしてI/O制御ボードに機能追加・変更する場合、ボード認識手段にあるボードバージョン番号1502を従来値よりも大きい値1503,1504に変更する。また、マイクロプログラム作成上のルールとしてマイクロプログラム変更時1505は、マイクロプログラム内1601に対応I/O制御ボードバージョンへこのとき有効な組み合わせボードバージョン1503を記憶する。 【0019】 ボードの相性チェック処理では、システム構成管理テーブルよりボードバージョン1204を取り出し(処理1701)、次にマイクロプログラムから対応I/O制御ボードバージョン1601を取り出す(処理1702)。取り出した2つのバージョンを比較しI/O制御ボードのボードバージョンがマイクロプログラム内の対応I/O制御ボードバージョン以上の値の場合、マイクロプログラムのロード処理(処理1704)を行い処理を終了する。もし、対応I/O制御ボードバージョンより小さい値の場合はなにもせず処理を終了する。」 上記(ウ)の段落【0019】の記載からして、I/O制御ボードのボードバージョンがマイクロプログラム内の対応I/O制御ボードバージョン以上の値の場合、処理装置は、I/O制御ボードバージョンに適合するバージョンのマイクロプログラムを決定して、磁気ディスクから読み出して当該I/O制御ボードにロードしているものと認められる。 よって、上記(ア)乃至(ウ)からして、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。 マイクロプログラムによって制御されるI/O制御ボードを備える計算機システムにおいて、 適合するマイクロプログラムのバージョンを識別する処理装置と、I/O制御ボードとを有するマイクロプログラムロード方式において、前記処理装置は、各I/O制御ボードごとにボードバージョン番号を取り出して適合するマイクロプログラムを決定し、そのマイクロプログラムを前記各I/O制御ボードごとにロードすることを特徴とするマイクロプログラムロード方式。 (2)前置拒絶理由通知に引用された、本願の出願日前である平成元年2月27日に頒布された刊行物である特開昭64-50124号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。 (エ)「2.特許請求の範囲 それぞれ内容の異なるソフトウェア命令インタプリタであるマイクロプログラムを同一ソフトウェア命令のアドレスフィールドにもとづき外部から並列に与えられる同一アドレス情報により読出せるように記憶する複数のマイクロプログラム記憶手段と、ソフトウェア命令の指示によりこれら複数のマイクロプログラム記憶手段のうちどのマイクロプログラムを選択するかを指示する選択指示情報を格納する選択指示情報格納手段と、この選択指示情報格納手段からの指示により前記複数のマイクロプログラム記憶手段から読出されるマイクロプログラムの1つを選択する選択手段とを含むことを特徴とする情報処理装置。」 (オ)「図を参照すると、本発明の一実施例は、ソフトウェア命令群と第1のマイクロプログラムを記憶する主記憶6、この主記憶6にアドレスバス23を介してアドレスを与え主記憶6からバス11、データバス9およびバス10を介して与えられるソフトウェア命令を解読するプロセッサ1、このプロセッサ1を介して主記憶1から与えられる第1のマイクロプログラムを格納する複数のランダムアクセスメモリ(以下RAM)3、4および5、第1のマイクロプログラムを複数のRAM3、4および5のいずれか一つに与えるため選択するセレクタ8、このセレクタに対する選択指示情報を格納するmビットレジスタ7、および少なくとも主記憶6からRAM3、4および5の1つへの第1のマイクロプログラムの転送用ソフトウェア命令およびmビットレジスタ7の内容変更用ソフトウェア命令をインタプリトするための第2のマイクロプログラムを格納する読取専用記憶(以下ROM)2を備えている。」(第2頁右上欄第6行-左下欄第4行) (カ)「したがって、前記拡張して使用したいソフトウェア命令に含まれ、またはそのアドレスフィールドの内容にもとづいて発生される同一のアドレスをアドレスバス20を介して、レジスタ7で指定されるRAMに与えることにより、所望のマイクロプログラムがセレクタ8、およびデータバス15を介してプロセッサ1に与えられ、拡張ソフトウェア命令の遂行ができる。」(第3頁左下欄第3-10行) 上記(エ)乃至(カ)からして、引用文献2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。 予め複数のマイクロプログラムを複数のマイクロプログラム記憶手段に格納しておき、ソフトェア命令の指示によってmビットレジスタを設定し、該mビットレジスタに基づいて前記マイクロプログラム記憶手段を指定し、そこから読み出したマイクロプログラムをプロセッサに供給するプロセッサを有するマイクロプログラム切り替え方式。 3.本願発明と引用発明との対比 本願発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「マイクロプログラム」、「I/O制御ボード」、「マイクロプログラムのバージョン」、「処理装置」及び「ボードバージョン番号」はそれぞれ、本願発明の「ファームウェア」、「プロセッサ」、「ファームウェアのレビジョン」、「診断プロセッサ」及び「プロセッサレビジョン情報」に対応しており、両者は、ファームウェアにより制御されるプロセッサのレビジョンを認識し、これに適合するファームウェアを決定し、プロセッサに供給できるようにする点で一致する一方、以下の点で相違している。 [相違点] 本願発明は、プロセッサが、それぞれ異なる複数個のファームウェアを保持し、診断プロセッサから、ファームウェアの格納位置を示す識別データを含む指示により、ファームウェアの特定のエリアを指定しデータを読み出してプロセッサ自身に供給するのに対し、引用発明1では、処理装置がボードバージョン番号に適合するマイクロプログラムを読み出してI/O制御ボードにロードする点。 4.当審の判断 上記相違点について検討するに、引用発明2にあるように、予め複数のマイクロプログラム(ファームウェア)を複数のエリア(マイクロプログラム記憶手段)に格納しておき、ソフトウェア命令の指示により、特定のエリアを指定して読み出したデータをプロセッサに供給するという技術思想は周知であり、かつ、引用発明1と引用発明2とは、ファームウェアの選択と実行に係る制御を行っている点で共通しているから、引用発明2に係る技術思想を引用発明1に適用し、引用発明1に係るファームウェアのロードに替えて、ファームウェアの切り替え方式を採用することにより、プロセッサに適合するファームウェアを実行できるよう構成することは当業者が容易に想到し得たものである。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が容易に予測できる範囲内のものである。 5.むすび したがって、本願発明は、引用発明1及び2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-09-15 |
結審通知日 | 2005-09-20 |
審決日 | 2005-10-03 |
出願番号 | 特願平10-280092 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 衣川 裕史 |
特許庁審判長 |
井関 守三 |
特許庁審判官 |
彦田 克文 林 毅 |
発明の名称 | ファームウェア切り替え方式 |
代理人 | 谷澤 靖久 |
代理人 | 机 昌彦 |
代理人 | 河合 信明 |