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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G |
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管理番号 | 1126744 |
審判番号 | 不服2002-10553 |
総通号数 | 73 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-08-21 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-06-12 |
確定日 | 2005-11-17 |
事件の表示 | 平成9年特許願第20572号「再生型トナーカートリッジ」拒絶査定不服審判事件〔平成10年8月21日出願公開、特開平10-221938〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成9年2月3日の出願であって、その各請求項に係る発明は、平成17年8月8日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された事項により特定されるものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明は次のとおりである。 「【請求項1】 画像形成装置の装置本体に着脱可能に装着されてこの画像形成装置に新規トナーを供給するカートリッジ本体と、 このカートリッジ本体に取り付けられ、前記画像形成装置本体側に配設されたカートリッジ管理装置からの信号に応じて非接触状態で前記カートリッジ管理装置と信号やデータのやりとりを行なう、少なくともアンテナとこのアンテナと接続された記憶素子とを一体的に備えた非接触データキャリアと、 を備えていることを特徴とする再生型トナーカートリッジ。」(以下、「本願発明」という。) 2.刊行物の記載事項 2-1.刊行物1について 平成17年6月3日付けの拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された特開平5-210304号公報(以下「刊行物1」という。)には、 〔1a〕「カートリッジ(1)に現像剤を封入し、該カートリッジ(1)を交換することにより、現像器(2)に現像剤を継続して供給する像形成装置において、前記カートリッジ(1)に現像剤情報記憶手段(14)と、前記カートリッジ(1)側若しくは像形成装置側に設けられた現像剤情報書き込み手段(140)と、を備えてなることを特徴とする像形成装置。」(特許請求の範囲・請求項1)、 〔1b〕「【要約】 【目的】 本発明は、再生利用可能なカートリッジに現像剤を封入して、該カートリッジを交換することにより、現像器に現像剤を継続して供給する像形成装置に関し、回収された該カートリッジを再生するための工数を削減することのできる手段を有した像形成装置を提供することを目的とする。また、該カートリッジは、主要プロセス部品と一体になったプロセスカートリッジを含む。 【構成】 カートリッジ1側に設けられた現像剤情報記憶手段14に、該カートリッジ1の使用前と使用後のシートカウンタの値の他、現像ローラの回転回数・回転時間、感光ドラムの回転回数・回転時間等カートリッジ使用状況を書き込むことのできる、現像剤情報書き込み手段140を、像形成装置側、或いは該カートリッジ1側に設けて構成する。」(1頁要約欄)、 〔1c〕「【従来の技術】 ・・・従来、電子写真装置では、現像剤を交換する際、新旧現像剤において、現像剤の色はもちろんのこと、帯電量に差異があると、記録画像の濃度が該現像剤の交換前後で著しく異なったり、記録画像にカブリやカスレ等が発生し、記録画像の品質が劣化することが知られている。このため、特開平2-72381等に提案されているように、現像剤を封入するカートリッジに記憶素子を設けて、封入した現像剤の色・極性・帯電量等、現像剤固有の情報を、予め該記憶素子に記憶させた後出荷する一方、装置側には、該記憶素子の情報を読み取る手段を設けて、読み取った該現像剤固有の情報に従い、装置側にて感光ドラムの帯電レベル等を制御しつつ、最適な記録画像を得る工夫がなされている。 ・・・ところで近年、資源保護の重要性が認識されるようになり、現像剤交換により装置から取り外されたカートリッジを回収し、再生して再利用することが必要となった。 ・・・こうして、装置から取り外されたカートリッジは、該カートリッジの製造工場等に回収された後、下記工程を経て再生され、再出荷されるようになった。 (a)カートリッジ内に残留している使用済み現像剤の廃棄 (b)カートリッジの破損状況の検査、及び再利用可能なカートリッジの選別 (c)再利用可能なカートリッジの清掃 (d)清掃済みカートリッジへ新しい現像剤の封入 (e)現像剤情報記憶手段へ、封入した現像剤情報の書き込み 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、上記工程のうち、特に(b)の工程をクリアするためには多くの費用と時間がかかるという問題がある。なぜならば、これまでのカートリッジでは上記現像剤情報記憶手段に書き込まれた内容が、該カートリッジに封入した現像剤の色・極性・帯電量等、現像剤固有の情報のみであり、更に、該情報が、該カートリッジの出荷時点における情報であるため、該カートリッジが回収された時点において、それまでに該カートリッジを交換した回数をはじめ、記録枚数、感光ドラム・現像器・クリーナ等の回転回数、プロセス部品の障害内容及び回数等、該カートリッジ使用期間中の状況が全く不明であるからである。」(従来の技術欄、及び、発明が解決しようとする課題欄、2〜6段落、) 〔1d〕「【実施例】以下、本発明の要旨についてレーザプリンタを例に取り、具体的に説明する。図1は、本発明によるカートリッジの第1実施例を示す。また、図2は、本カートリッジをレーザプリンタ3にセットした状態を示す。 図1において、1はトナー及び現像剤を封入するカートリッジを示す。トナー収容器11にはトナーが封入され、現像剤収容器12には、予めトナーとキャリアを混合攪拌した現像剤が封入されている。・・・14は現像剤情報記憶手段を示し、EP-ROM、或いはICカード等を使用している。該現像剤情報記憶手段14には、該カートリッジ1の出荷時における現像剤情報が記憶される他、今後の該カートリッジ1の使用状況を書き込む領域が確保されている。まず、該カートリッジ1出荷時に、封入した現像剤のロット番号・製造日・現像剤色・帯電量・該カートリッジ1の再生回数等が該現像剤情報記憶手段14に記録される。 一方、図2に示すように、レーザプリンタ3側に、マイクロプロセッサを用いた現像剤情報書き込み手段140を設け、該現像剤情報書き込み手段140は、該現像剤情報記憶手段14とコネクタを介して接続されている。・・・ 本発明によるレーザプリンタ3における・・・トナー情報書き込み手段140は、該制御部40を介して、印刷枚数をカウントするシートカウンタ等の情報をはじめ、現像器の回転回数、感光ドラムの回転回数、プロセス部品の障害の概略や回数等の情報を収集する機能を持つとともに、カートリッジ1に設けられた現像剤情報記憶手段14へ、前記情報を書き込む機能を持つ。」(14〜19段落)、 〔1e〕「・・・それまでに封入されていた現像剤の帯電量を現像剤情報記憶手段14より読み出し、それと同等の帯電量を有する現像剤を封入することにより、前記(c)の工程におけるカートリッジの清掃を簡略化することができる。・・・ 書き込まれた情報を、該カートリッジの再生作業時に該現像剤情報記憶手段14から読み出し、該現像ローラ21、該回収ローラ52の回転時間を知ることにより、該現像ローラ21、該回収ローラ52、帯電ブレード53等の構成部品の交換時期を正確に予測できる。従って、前記工程(b)の工数を削減することができる。」(21〜23段落)、 〔1f〕「【発明の効果】本発明によると、カートリッジそのものに、該カートリッジ使用期間中の情報が記憶されているので、(1)カートリッジの細部の検査をしなくても、該カートリッジの消耗状況がわかるので、該カートリッジ再生可否の判定が容易になり、(2)カートリッジ構成部品の磨耗状況が、迅速かつ的確に判断でき、無駄なく該構成部品を交換することができ、更に、(3)回収されたカートリッジを再生する工数の無駄を省き、再生カートリッジの価格低減が可能となる。」(発明の効果欄)、 が記載されている。 2-2.刊行物2について 同じく拒絶の理由に引用された実願昭62-180022号(実開平1-84169号)のマイクロフィルム(以下「刊行物2」という。)には、 〔2a〕「(1)ICメモリを備えたIC内蔵電子部品であって、 使用部品の使用限度を判定するためのデータが登録されたICメモリを備えたIC内蔵電子部品。」(実用新案登録請求の範囲)、 〔2b〕「(ロ)考案の背景 従来、各種の電子機器や電子部品には、製造年月日、ロットナンバを印刷したラベルが貼着されるか、或は上述の製造年月日、ロットナンバを直接電子部品に印刷、刻印することで、当該電子部品の使用限度等が示されていた。 しかし、このような手段では、電子部品の小型化に支障をきたすと共に、例えば電子部品が切削油等の降り掛かる悪環境下で使用された場合には上述の製造年月日、ロットナンバの解読が不可能となって、使用限度が不明になる問題点を有していた。」(考案の背景欄)、 〔2c〕「(ト)考案の実施例 この考案の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。 図面は装置間伝送装置に用いるIC内蔵電子部品を示し、第1図において、この装置は、IC内蔵電子部品としてのデータキャリア1と、このデータキャリア1に対して記憶情報の読取り(リード)および書込み(ライト)を行なうリードライトヘッド2と、上位コンピュータ3と、・・・ 第2図に示すように、上述のデータキャリア1は、コイルスプール7に巻回した電磁コイル8を設け、この電磁コイル8の一端には、整流器9と、被変調波から信号波を分離して取出す復調器10とを接続し、・・・を介して、EEPROM13(電気的書換え可能ROMのこと)および、ONE TIME PROM37(記憶されたデータをプロテクトし、データ書換え不可能なROMのことで、以下単にPROMと略記する)を接続し、上述のEEPROM13内には、部品の番地や種別等の必要なデータを記録する。 一方、PROM37には使用部品の製造年月日、ロットナンバをBCNコードで記憶する。」(実施例欄、IC内蔵電子部品のデータキャリア説明の項)、 〔2d〕「前述のリードライトヘッド2は、データキャリア1に対して電磁結合され、相互誘導作用によりデータの送受信を双方向に行なう。 このリードライトヘッド2は、コイルスプール18に巻回した電磁コイル19の両端をLC発信器20に接続すると共に、接続ライン21,22間に第3コンデンサ23を介設して構成している。・・・ この上位コンピュータ3に前述のシリアル通信伝送媒体4を介して接続したIDコントローラ5は、・・・上位コンピュータ3からライトコマンドを受けて前述のリードライトヘッド2を介してPROM37に製造年月日、ロットナンバをBCNコードにより書込む・・・。」(実施例欄、上位コンピュータのリードライトヘッド説明の項)、 〔2e〕「次にPROM37の製造年月日、ロットナンバを読取る場合の作用について述べる。まず、上位コンピュータ3の・・・リードコマンドを・・・受信したCPU30は、リードライトヘッド2をリード制御して、このリードライトヘッド2を介してデータキャリア1のPROM37内のBCNコードでの製造年月日、ロットナンバを読取るリード処理を実行する。・・・ このように上述のPROM37に記憶させた使用限度を判定するためのデータとしての製造年月日、ロットナンバを読出し、読出し時点での年月日と比較することで、使用部品の使用限度を判定しチェックすることができる。・・・ 加えて、上述の電子部品が例えば、切削油等の降り掛かる悪環境下で使用された場合にも上述のPROM37内のデータには何等の影響もなく、必要に応じて使用限度の解読ができ、電子部品の寿命の予知が可能となる。・・・ ICメモリは、PROM37に対応し、使用限度を判定するためのデータは、BCNコードの製造年月日データ、ロットナンバデータに対応するも、この考案は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。・・・上述のデータは使用回数、使用時間などを使用毎に更新して、このデータで使用限度を解読するもよい。」(実施例欄、データキャリア読取りの作用効果等の説明の項)、 が記載されている。 3.対比、判断 3-1.対比 以下、本願発明と、刊行物1記載の発明とを対比する。 〔ア〕刊行物1記載の発明の「カートリッジ」は、「資源保護の重要性が認識されるようになり、現像剤交換により装置から取り外されたカートリッジを回収し、…破損状況の検査、及び再利用可能なカートリッジの選別、…清掃、…新しい現像剤の封入、現像剤情報記憶手段へ、封入した現像剤情報の書き込み」などを経て再生され、再出荷されるものであるから、本願発明の「再生型トナーカートリッジ」に相当する。(〔1b〕〜〔1c〕参照) 〔イ〕刊行物1記載の発明の「カートリッジ付設の現像剤情報記憶手段14」は、レーザプリンタ3の現像剤情報書き込み手段140と電気的接続コネクタを介して接続され、トナー情報や、プロセス部品の回転数、カートリッジの再生回数などの情報が書き込まれ、記憶するものであるから、本願発明の「カートリッジ本体に取り付けられ、画像形成装置本体側に配設されたカートリッジ管理装置からの信号に応じて前記カートリッジ管理装置と信号やデータのやりとりを行なう、対話部材と、この対話部材と接続された記憶素子とを一体的に備えたデータキャリア」に相当するものである。(〔1d〕〜1e) 〔ウ〕しかしながら、「管理装置と信号やデータのやりとりを行うもの」(本願明細書24段落の記載に基づき「対話部材」という。)に関して、本願発明では「非接触式のアンテナ」を用いているのに対し、刊行物1記載の発明では「接触式の電気的接続コネクタ」を使用している。(〔1d〕〜〔1e〕参照) 〔ア〕〜〔ウ〕の検討から、本願発明と、刊行物1記載の発明との両者は、 「画像形成装置の装置本体に着脱可能に装着されてこの画像形成装置に新規トナーを供給するカートリッジ本体と、 このカートリッジ本体に取り付けられ、前記画像形成装置本体側に配設されたカートリッジ管理装置からの信号に応じて前記カートリッジ管理装置と信号やデータのやりとりを行なう対話部材と、この対話部材と接続された記憶素子とを一体的に備えたデータキャリアと、 を備えていることを特徴とする再生型トナーカートリッジ。 」で一致し、 前記「管理装置と信号やデータのやりとりを行う対話部材」が、本願発明では「非接触式のアンテナ」であるのに対して、刊行物1記載の発明では「接触式の電気的接続コネクタ」である点でのみ相違する。 3-2.相違点について 上記相違点について検討する。 刊行物2には、 ・電子部品に内蔵されるICメモリは、電気的書換え可能なROMと、データ送受信できる電磁コイルとを一体的に備えており、その電子部品の使用限度を判定するためのデータが書込まれ登録されてデータキャリアとして使用されること(〔2a〕〜〔2c〕参照)、 ・該データキャリアの電磁コイルは、データキャリアにデータを書込んだり読取って判定する上位コンピュータ、即ち、管理装置に繋がるリードライトヘッドと「電磁結合して、相互誘導作用によりデータの送受信を双方向に行なう」、非接触式のアンテナの対話部材として機能すること(〔2c〕〜〔2d〕参照)、 ・電子部品の使用限度を判定するためのデータとしては、当該部品の製造年月日、ロットナンバ、部品種別などが記録されるが、場合によっては、使用回数や使用時間などのデータを使用毎に更新して記録して、このデータで使用限度を判定してもよいこと(〔2c〕〜〔2d〕参照)、 ・データキャリアをICメモリと、非接触でデータ送受信できる電磁コイルのアンテナの対話部材とで構成して電子部品に組み込むことにより、従来の電子部品の表面へのラベル貼り付けや刻印によるデータ登録の場合の読み取りトラブル、即ち、当該電子部品やそれを組込んだ装置の使用時の切削油などの汚れによる読み取り不可が回避できるし、登録できるデータ種類も多くなること(〔2b〕〜〔2e〕参照) が示されている。 ところで、トナーカートリッジは、使用時、トナー漏れで周辺にトナー汚れをもたらすことが良く知られており、刊行物1記載のトナーカートリッジのデータキャリアも使用時にコネクタなど周辺がトナー汚れすることは明らかである。 してみると、刊行物1記載のトナーカートリッジのデータキャリアに関して、接触式コネクタの対話部材を、刊行物2記載の、汚れてもトラブルの無い、非接触対話部材のアンテナに代替することは、当業者であれば当然試みることといえる。 そして、本願発明の、トナーカートリッジの保守・点検を確実に行えること、管理を効率化できることなどの効果は、いずれも刊行物1ないし2記載のものから予測できるものであって、本願発明の作用効果は格別顕著なものとは認められない。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-09-16 |
結審通知日 | 2005-09-20 |
審決日 | 2005-10-04 |
出願番号 | 特願平9-20572 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G03G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 矢沢 清純 |
特許庁審判長 |
山下 喜代治 |
特許庁審判官 |
井出 和水 伏見 隆夫 |
発明の名称 | 再生型トナーカートリッジ |
代理人 | 須山 佐一 |