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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1126787
審判番号 不服2002-16288  
総通号数 73 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-04-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-08-26 
確定日 2005-12-02 
事件の表示 平成11年特許願第204569号「一体化したマルチ・ディスプレイ型のオーバーレイ制御式通信ワークステーション」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 4月11日出願公開、特開2000-105742〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本願は、昭和62年10月3日(優先権主張1986年10月3日,米国)に出願した特願昭62-250562号の一部を分割して、平成11年6月18日に新たな特許出願とした特願平11-173202号の一部を更に分割して新たな特許出願としたものであって、その発明(以下、「本願発明」という。)の要旨は、平成15年10月10日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。
「装置であって、
イメージを表示するためのディスプレイであって、ネットワークから受けるイメージ情報を表示することができる、前記のディスプレイと、
前記ネットワークに結合された通信ユニットであって、イメージ情報を前記ネットワークとの間で送受し、また前記ネットワークに結合したイメージ処理システムからのイメージ情報を受けることができる、前記の通信ユニットと、
該通信ユニットを制御するための制御ユニットであって、該制御ユニットが、中央処理ユニットと区分メモリ・システムとを含み、該メモリ・システムが、複数の共通および個人的なイメージをそれぞれ記憶するための共通作業空間メモリと個人作業空間メモリを含み、また前記装置は、前記ネットワークに結合した前記イメージ処理システムが前記装置の前記共通作業空間メモリをアクセスできるように制御され、また、前記装置は、前記イメージ処理システムが該装置の前記個人作業空間メモリをアクセスすることができないように制御され、前記装置の前記個人作業空間メモリが、前記イメージ処理システムでは見ることができないが前記装置によって見ることができる1つ以上の個人的イメージを含む、前記の制御ユニットと、
を備え、
前記装置の前記中央処理ユニットの制御の下で、前記装置は、前記装置および前記イメージ処理システムにおける共通表示のために前記ネットワークに通信される共通イメージ情報を表示するように制御され、前記共通イメージは、前記装置によって編集され、該編集された共通イメージ情報は、前記装置および前記イメージ処理システムにおいて共通表示のために前記ネットワークに通信され、
また、前記装置が、前記制御ユニットに結合されており、低電力モードで動作することができる電源であって、前記通信ユニットは、該電源が低電力モードで動作している間、前記ネットワーク上の通信をモニタしまた遠隔のシステムに対し通信できるようになった、前記の電源、を備えること、を特徴とする装置」

2.引用例に記載されている発明
これに対し、当審の拒絶の理由に引用した、特開昭60-1987号公報(以下、「引用例1」という)には、遠隔静止画像会議システムに関して、図面と共に以下の記載がなされている。
(a)第1図に遠隔静止画像会議システムの全体図、第2図に会議の各地点においてコントローラに接続される機器の状態、第3図にはコントローラの内部構成例を示す。
第1図においては1は電子交換機であり4つの地点2a、2b、2c、2dを伝送路3で結んでグラフィック会議を行なう形態を示している。4つの地点2a、2b、2c、2dは画像用伝送路と加入者線によって結ばれている。…(略)…画像については周知のCSMA/CD(Carrier Sense Multiple Access with Collision Detection)方式で通信を行なう。(2頁左下欄9行〜右下欄2行)
(b)第2図は各地点のコントローラとそれに接続される機器を示したものである。画像伝送路3にコントローラ5が接続されコントローラ5にはつぎのごとき機器が接続されている。
(イ)コマンド入力装置6…コントローラを制御する命令を入力する。
(ロ)文字入力装置7…アルファベットなどの文字を入力する。
(ハ)2台のカラーグラフィックディスプレイ…1つはコモンディスプレイ8として使用し他はワークディスプレイ9として使用する。
(ニ)画像読取装置10…あらかじめ紙に画かれた図面を読取る。
(ホ)画像抽出装置11…磁気ディスクやグラフィックディスプレイ8,9にある画像を紙に抽出する。
(へ)ペンタブレット装置12…グラフィックディスプレイ8,9に表示中の画像に加筆、修正を行なうための線画入力装置。
(ト)画像作成コンピュータ13…図面作成等に用いる。
(チ)磁気ディスクファイル14…コモンファイルとワークファイルを格納する。(2頁右下欄6行〜3頁左上欄8行)
(c)第3図にはコントローラの内部構成を示す。高速処理装置(CPU)16には前記の各種機器の他に画像伝送を高速に行うためのDMAC(Direct Memory Access Controller)17と伝送路インターフェイスおよび2面の画像メモリ18,19が接続される。…(略)…なお5a,5bはそれぞれコントローラ5中のディスクコントローラおよびCSMA/CDコントローラであり、またグラフィックディスプレイ8,9の出力はそれぞれビデオ変換回路21a,21b、並直列変換回路22a,22bを介して画像メモリ18,19に記憶される。(3頁左上欄11行〜右上欄4行)
(d)かかる2面の画像メモリ18,19はコモンディスプレイ8とワークディスプレイ9の表示画像を記憶するRAM(Random Access Memory)であって、1面あたり96キロバイトであり、640×400ドットの8色の画面を表示できる。これらの画像メモリはCPU16やDMAC17がリードライトできるだけでなく並直列変換回路22a、22bへも一定周期で読出されてビデオ信号に変換されてラスタースキャン型グラフィックディスプレイ8,9に表示される。(3頁右上欄5行〜14行)
(e)(iii)コモンディスプレイ画像の修正加筆
すでに各地点のコモンディスプレイに画像が表示されているとき、この画像の修正加筆を任意の地点で行なうとその地点のコントローラは自分自身のコモンディスプレイの画像に修正加筆を行なうとともに修正内容を他の全地点に発信する。各地点のコントローラは伝送路からコモンディスプレイ修正・加筆情報を受信するとコモンディスプレイの表示内容を修正加筆する。(4頁右上欄2行〜10行)
(f)(iv)ワークディスプレイの修正加筆
各地点で独自に行なう。他地点へは一切通知しない。(4頁右上欄18行〜末行)

第1図の2a〜2dの各地点にある、第2図のコントローラ(5)とそれに接続される各種機器からなる装置は、画像処理システムといえる。
また、第3図のCSMA/CDコントローラは、第2図のコントローラ(5)によって制御されていることは明らかである。
また、摘記事項(e)及び(f)から、コモンディスプレイ用画像メモリ(18)の記憶内容は、2a〜2dの各地点にある画像処理システムに共通なものであり、ワークディスプレイ用画像メモリ(19)の記憶内容は各個人用のものであり、このコモンディスプレイ用画像メモリ(18)とワークディスプレイ用画像メモリ(19)とによってメモリ・システムが構成されていることは明らかである。
また、摘記事項(e)の「すでに各地点のコモンディスプレイに画像が表示されているとき、この画像の修正加筆を任意の地点で行なうとその地点のコントローラは自分自身のコモンディスプレイの画像に修正加筆を行なうとともに修正内容を他の全地点に発信する。各地点のコントローラは伝送路からコモンディスプレイ修正・加筆情報を受信するとコモンディスプレイの表示内容を修正加筆する。」という記載から、ある地点の画像処理システム内のコモンディスプレイ用画像メモリ(18)に、他の地点にある画像処理システムが実質的にアクセスできることは明らかである。
また、引用例1に記載された画像処理システムは電源の供給を受けて動作状態となることは明らかである。
したがって、上記引用例1には、
「画像処理システムであって、
静止画像を表示するためのディスプレイであって、画像伝送路から受ける静止画像情報を表示することができる、前記のディスプレイと、
前記画像伝送路に結合されたCSMA/CDコントローラであって、静止画像情報を前記画像伝送路との間で送受し、また前記画像伝送路に結合した他の地点にある画像処理システムからの静止画像情報を受けることができる、前記のCSMA/CDコントローラと、
該CSMA/CDコントローラを制御するためのコントローラであって、該コントローラが、CPUとコモンディスプレイ用画像メモリ及びワークディスプレイ用画像メモリとからなるメモリ・システムとを含み、該メモリ・システムが、共通および個人的な静止画像をそれぞれ記憶するためのコモンディスプレイ用画像メモリとワークディスプレイ用画像メモリを含み、また前記画像処理システムは、前記画像伝送路に結合した前記他の地点にある画像処理システムが前記画像処理システムの前記コモンディスプレイ用画像メモリをアクセスできるように制御され、また、前記画像処理システムは、前記他の画像処理システムが該画像処理システムの前記ワークディスプレイ用画像メモリをアクセスできないように制御され、前記画像処理システムの前記ワークディスプレイ用画像メモリが、前記他の画像処理システムでは見ることができないが前記会画像処理システムによって見ることがことができる1つ以上の個人的静止画を含む、前記のコントローラと、
を備え、
前記画像処理システムの前記CPUの制御の下で、前記画像処理システムは、前記画像処理システムおよび前記他の画像処理システムにおける共通表示のために前記画像伝送路に通信される共通静止画像情報を表示するように制御され、前記共通静止画像は、前記画像処理システムによって編集され、該編集された共通静止画像情報は、前記画像処理システムおよび前記他の画像処理システムにおいて共通表示のために前記画像伝送路に通信され、
また、前記画像処理システムが、電源の供給を受けて動作する画像処理システム」に関する発明(以下、引用例1記載発明」という)が記載されている。
また、当審の拒絶理由に引用した特開昭61-21668号公報(以下、「引用例2」という)には、データ伝送装置の節電を図るために、スタンバイ時(待ち受け受信時)には、呼出信号検出回路にのみ電源を供給して伝送路上に遠隔システムから自局を呼び出す呼出信号が送信されたか否かをモニターし、呼出信号を受信したときには、主電源をオン状態にして、データ通信に必要な各回路部に電源を供給して上記遠隔システムとの通信を可能にするデータ伝送装置、が記載されている。

3.本願発明と引用例1記載発明との対比
本願発明と引用例1記載発明とを対比すると、引用例1記載発明の「画像処理システム」、「他の地点にある画像処理システム」及び「静止画画像」は、本願発明の「装置」、「イメージ処理システム」及び「イメージ」にそれぞれ相当していることは明らかである。
また、引用例1記載発明の「画像伝送路」は、ネットワークを構成していることは明らかであるので、本願発明の「ネットワーク」に相当しているもと認められる。
また、引用例1記載発明の「CSMA/CDコントローラ」は、通信機能を有しているから、本願発明の「通信ユニット」に相当しているものと認められる。
また、引用例1記載発明の「コントローラ」によって、「CSMA/CDコントローラ」が制御されていることから、引用例1記載発明の「コントローラ」は、本願発明の「制御ユニット」に相当しているものと認められる。
また、引用例1記載発明の「CPU」は、その機能からみて本願発明の「中央処理ユニット」に相当していることは明らかである。
また、引用例1記載発明の「コモンディスプレイ用画像メモリ」と「ワークディスプレイ用画像メモリ」は、それぞれ共通および個人的な画像を区分して記憶しているので、前記「コモンディスプレイ用画像メモリ」と「ワークディスプレイ用画像メモリ」を合わせたものが、本願発明の「区分メモリ・システム」に相当しているものと認められる。
また、引用例1記載発明の「コモンディスプレイ用画像メモリ」及び「ワークディスプレイ用画像メモリ」は共に、作業空間を有していることは明らかであるので、それぞれ本願発明の「共通作業空間メモリ」及び「個人作業空間メモリ」に相当しているものと認められる。
また、本願発明の装置も、電源の供給を受けて動作状態となることは明らかである。
したがって、両者は、
「装置であって、
イメージを表示するためのディスプレイであって、ネットワークから受けるイメージ情報を表示することができる、前記のディスプレイと、
前記ネットワークに結合された通信ユニットであって、イメージ情報を前記ネットワークとの間で送受し、また前記ネットワークに結合したイメージ処理システムからのイメージ情報を受けることができる、前記の通信ユニットと、
該通信ユニットを制御するための制御ユニットであって、該制御ユニットが、中央処理ユニットと区分メモリ・システムとからなるメモリ・システムとを含み、該メモリ・システムが、共通および個人的なイメージをそれぞれ記憶するための共通作業空間メモリと個人作業空間メモリを含み、また前記装置は、前記ネットワークに結合した前記イメージ処理システムが前記装置の前記共通作業空間メモリをアクセスできるように制御され、また、前記装置は、前記イメージ処理システムが該装置の前記個人作業空間メモリをアクセスできないように制御され、前記装置の個人作業空間メモリが、前記イメージ処理システムでは見ることができないが前記装置によって見ることがことができる1つ以上の個人的イメージを含む、前記の制御ユニットと、
を備え、
前記装置の前記中央処理ユニットの制御の下で、前記装置は、前記装置および前記イメージ処理システムにおける共通表示のために前記ネットワークに通信される共通イメージ情報を表示するように制御され、前記共通イメージは、前記装置によって編集され、該編集された共通イメージ情報は、前記装置および前記イメージ処理システムにおいて共通表示のために前記ネットワークに通信され、
また、前記装置が、電源の供給を受けて動作状態となる装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
本願発明では、「複数」の「共通および個人的なイメージ」をそれぞれ「記憶」するための「共通作業空間メモリ」と「個人作業空間メモリ」とで「メモリ・システム」が構成されているのに対して、引用例1記載発明では、「コモンディスプレイ用画像メモリ(18)」と「ワークディスプレイ用画像メモリ(19)」とに「記憶」される「共通および個人的な静止画像」が複数であるか否か明記されていない点。
[相違点2]
本願発明では、「制御ユニット」に結合されている「電源」が「低電力モード」で動作することができる「電源」であって、「通信ユニット」は、該「電源」が「低電力モード」で動作している間、「ネットワーク」上の「通信」を「モニタ」しまた「遠隔のシステム」に対し通信できるようになっているにのに対して、引用例1記載発明では、画像処理システムの電源が低電力モードで動作することについて明記されていない点。

4.相違点についての当審の判断
まず、上記相違点1について検討すると、メモリシステムを、複数の共通および個人的なイメージをそれぞれ記憶するための共通作業空間メモリと個人作業空間メモリとで構成することは、当業者がその必要に応じて適宜為し得る程度のものと認められるから、引用例1記載発明の「メモリシステム」を、複数の共通および個人的なイメージをそれぞれ記憶するための共通作業空間メモリと個人作業空間メモリとで構成して本願発明のように構成することは当業者が容易に想到し得る程度のものと認められる。
よって、上記相違点1を格別なものとは認めることはできない。

次に、上記相違点2について検討すると、データ伝送装置の節電を図るために、スタンバイ時(待ち受け受信時)には、呼出信号検出回路にのみ電源を供給して伝送路上に遠隔システムから自局を呼び出す呼出信号が送信されたか否かをモニターし、呼出信号を受信したときには、主電源をオン状態にして、データ通信に必要な各回路部に電源を供給して上記遠隔システムとの通信を可能にするデータ伝送装置は、引用例2に記載されているように従来周知の技術事項であり、また、このようなスタンバイ時(待ち受け受信時)に自局に呼出信号を送信した遠隔システムに対して必要最小限の電力で応答(例えば、ACK応答)を返すように構成することは当業者がその必要に応じて適宜為し得る事項に過ぎないものと認められるから、引用例1記載発明に、呼出信号検出回路を設け、スタンバイ時には、該呼出信号検出回路及び応答(例えば、ACK応答)を返すために必要最小限の回路部にのみ電源を供給しておき、呼出信号が検出されたら必要最小限の電力で応答(例えば、ACK応答)を返すようにして、本願発明のように構成することは、当業者が容易に想到し得る程度のものと認められる。
なお、審判請求人は、意見書において、「つまり、最も基本的な相違点は、本願発明では、電源が低電力モードで動作している間において、通信がネットワーク上で生起することができる点であります。」と述べているが、そもそも低電力モードでは、電源の消費電力を減らすことを目的としているので、通常のデータを送信できないことは技術常識であって、本願明細書をみても、それを可能とする構成は何ら開示されていないので、本願発明の「通信」は、通常のデータのやり取りを行う通信とは認められない。
よって、上記相違点2を格別なものとは認めることはできない。

5.結び
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例1記載発明及び引用例2に記載された発明から当業者が容易に想到し得たものと認められるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-06-08 
結審通知日 2004-06-11 
審決日 2004-06-25 
出願番号 特願平11-204569
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮司 卓佳  
特許庁審判長 徳永 民雄
特許庁審判官 久保田 健
須原 宏光
発明の名称 一体化したマルチ・ディスプレイ型のオーバーレイ制御式通信ワークステーション  
代理人 小林 泰  
代理人 増井 忠弐  
代理人 社本 一夫  
代理人 中西 基晴  
代理人 千葉 昭男  
代理人 富田 博行  

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