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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60K
管理番号 1126874
審判番号 不服2002-16057  
総通号数 73 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-05-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-08-22 
確定日 2005-11-18 
事件の表示 平成11年特許願第301567号「紐付きキャップ」拒絶査定不服審判事件〔平成13年5月8日出願公開、特開2001-121978〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本特許出願は、平成11年10月22日の出願であって、平成14年7月12日付けで、拒絶をすべき旨の査定がされたところ、同査定に対して平成14年8月22日付けで審判が請求され、それに伴い、同日付けで手続補正書(以下、この手続補正書を「請求時補正書」という。)が提出された。

2.本願発明について
(1)請求時補正書による補正
請求時補正書による補正は、平成14年改正前特許法第17条の2第1項第3号に掲げる場合にされたものであると認められ、同項ただし書きの要件を満たすものである。
そして、請求時補正書の特許請求の範囲の補正は、その補正前の請求項2、3、6、8乃至11、及び13乃至15を削除し、補正前の請求項1、4、5、7、及び12を、新たに、それぞれ請求項1乃至5としたものであって、請求項の削除に相当し、同法第17条の2第4項第1号に掲げる事項を目的とするものである。
よって、請求時補正書による特許請求の範囲の補正は、特許法第17条の2第4項に規定する要件に適合するものであり、また、同条第5項適用の対象とならない。
そして、発明の詳細な説明に関する補正、さらには、請求時補正を総合的に検討しても、特許法第17条の2第3項に違反する旨の事実は認められない。
以上により、平成14年改正前特許法第159条で読み替えて準用する特許法第53条第1項に関し、同法第17条の2第1項第3号に掲げる場合において、願書に添付した明細書又は図面についてした補正が、同条第3項乃至第5項までの規定に違反している旨の事実は認められない。

(2)本願発明
したがって、本特許出願の請求項1乃至5に係る発明は、平成13年12月4日付け、平成14年6月17日付け、及び平成14年8月22日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至5に記載されている次の事項により特定されるとおりのものと認められる。(以下、請求項1に係る発明を、「本願発明」という。)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 第一の導電性樹脂より形成されるキャッピング部材と、第二の導電性樹脂により形成されて、可撓性を有し、一端が前記キャッピング部材に連結される長尺状の連結部材とからなり、該連結部材の他端を車両に連結して使用される紐付きキャップにおいて、
前記第一の導電性樹脂と前記第二の導電性樹脂は、前記キャッピング部材から、前記車両に至るまでの表面抵抗が1×1012Ω以上、5.30×1012Ω以下になるように構成されていることを特徴とする紐付きキャップ。
【請求項2】 第一の導電性樹脂より形成され、その外周に環状溝を有するキャッピング部材と、可撓性を有する第二の導電性樹脂により形成され、その一端に一体形成されたリング部を有する長尺状の連結部材とからなり、前記リング部の内周に一体形成される嵌合部が、前記キャッピング部材の前記環状溝に回動自在に嵌合され、前記連結部材の他端を車両に連結して使用される紐付きキャップにおいて、
前記第一の導電性樹脂および前記第二の導電性樹脂は、前記キャッピング部材から前記車両に至るまでの表面抵抗が1×1012Ω以上、5.30×1012Ω以下になるように構成されていることを特徴とする紐付きキャップ。
【請求項3】 前記すべての導電性樹脂は、絶縁性のポリマーと、炭素粉末、炭素繊維または金属繊維のうちの一つとの混合から構成されることを特徴とする請求項1または2記載の紐付きキャップ。
【請求項4】 前記キャッピング部材を構成する第一の導電性樹脂と前記連結部材を構成する第二の導電性樹脂は、絶縁性ポリマーと炭素粉末の混合体で構成され、
炭素粉末の含有量は、前記第一の導電性樹脂では重量比として4%から9%、前記第二の導電性樹脂では重量比として3%から5%の範囲内とし、かつ前記第一の導電性樹脂での含有量が9%、前記第二の導電性樹脂での含有量が5%の組み合わせおよび、前記第一の導電性樹脂での含有量が4から5%、前記第二の導電性樹脂での含有量が3%から4%の範囲内の組み合わせを含まないようにしたことを特徴とする請求項3記載の紐付きキャップ。
【請求項5】 第一の導電性樹脂より形成されるキャッピング部材と、第二の導電性樹脂により形成されて、可撓性を有し、一端が前記キャッピング部材に連結される長尺状の連結部材とからなり、該連結部材の他端を車両に連結して使用される紐付きキャップにおいて、
前記第一の導電性樹脂と前記第二の導電性樹脂は、絶縁性ポリマーと炭素粉末との混合体で構成され、炭素粉末の含有量は、前記第一の導電性樹脂では重量比として4%から9%、前記第二の導電性樹脂では重量比として3%から5%の範囲内とし、かつ前記第一の導電性樹脂の含有量が9%、前記第二の導電性樹脂の含有量が5%の組み合わせおよび、前記第一の導電性樹脂の含有量が4から5%、前記第二の導電性樹脂の含有量が3%から4%の範囲内の組み合わせを含まないようにしたことを特徴とする紐付きキャップ。」

3.引用刊行物等及びその記載事項
刊行物1:特開平10-211821号公報
技術例1:特開平8-134335号公報
技術例2:特開平11-246725号公報
技術例3:実願平4-16801号(実開平5-79900号)のCD-ROM
技術例4:特開平2-68897号公報

(1)刊行物1の記載事項
刊行物1には、【図1】〜【図19】とともに、以下の事項が記載されている。

(a1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 長尺状の連結部材(23,31,41)の一端をキャップ(21)に連結してなる紐付きキャップにおいて、
前記連結部材(23,31,41)を可撓性を有する導電性樹脂により形成してなることを特徴とする紐付きキャップ。
【請求項2】 長尺状の連結部材(53)の一端を、締結部材(55,51e)を介してキャップ(51)に締結してなる紐付きキャップにおいて、
前記連結部材(53)を可撓性を有する導電性樹脂により形成するとともに、前記締結部材(55,51e)を導電性樹脂により形成してなることを特徴とする紐付きキャップ。
【請求項3】 長尺状の連結部材(53)の一端を、締結部材(61,59c)を介してリング部材(59)に締結し、前記リング部材(59)をキャップ(57)の外周に嵌合してなる紐付きキャップにおいて、
前記連結部材(53)を可撓性を有する導電性樹脂により形成するとともに、前記締結部材(61,59c)およびリング部材(59)を導電性樹脂により形成してなることを特徴とする紐付きキャップ。
【請求項4】 長尺状の連結部材(23,31,41)の一端をキャップ(21)に連結してなる紐付きキャップにおいて、
前記連結部材(23,31,41)を可撓性を有する導電性樹脂により形成するとともに、一端にリング部(23a,31a,41a)を一体形成し、前記リング部(23a,31a,41a)の内周に一体形成される嵌合部(23b,31b,41c)を、前記キャップ(21)の外周に形成される環状溝(21d)に回動自在に嵌合してなることを特徴とする紐付きキャップ。
【請求項5】 請求項1ないし4のいずれか1項記載の紐付きキャップにおいて、
前記導電性樹脂は、絶縁性のポリマーに炭素繊維または金属繊維を混入してなることを特徴とする紐付きキャップ。」
(a2)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、長尺状の連結部材の一端をキャップに連結してなる紐付きキャップに関する。」
(a3)「【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような紐付きキャップでは、キャップ11に形成される環状溝11dに連結部材13のリング部13aを嵌挿しているため、キャップ11と連結部材13との接触による摩擦によりキャップ11および連結部材13に静電気が発生し、この静電気がキャップ11および連結部材13に帯電し、給油時にキャップ11または連結部材13に手等が接触すると火花放電が生じる虞があるという問題があった。
【0007】本発明は、かかる従来の問題を解決するためになされたもので、キャップおよび連結部材に静電気が帯電することを容易,確実に防止することができる紐付きキャップを提供することを目的とする。」
(a4)「【0017】図1および図2は、本発明の紐付きキャップの第1の実施形態を示すもので、図において符号21は、自動車の燃料タンク用のキャップを示している。このキャップ21は、導電性樹脂からなり、キャップ本体21aの一側にハンドル部21bが、他側に螺子部21cが形成されている。キャップ本体21aの外周には、環状溝21dが形成されている。
【0018】符号23は、可撓性を有する導電性樹脂からなる長尺状の連結部材を示している。この実施形態では、キャップ21および連結部材23は、例えば、66ナイロン等の可撓性を有する絶縁性のポリマーに炭素繊維を混入して形成されている。この連結部材23の一端には、円環状のリング部23aが一体形成されている。
【0019】このリング部23aは、図3に示すように、その横断面形状が逆V字状とされ、内周側が嵌合部23bとされている。この嵌合部23bは、キャップ本体21aの外周に形成される環状溝21dに回動自在に嵌合されている。なお、連結部材23の他端には、三角状の取付部23cが一体形成され、この取付部23cには、取付穴23dが形成されている。
【0020】上述した紐付きキャップでは、連結部材23のリング部23aにキャップ本体21aを挿入すると、リング部23aの内周の嵌合部23bが弾性的に拡径変形され、この状態でキャップ本体21aを環状溝21dまで挿入すると、嵌合部23bが元の状態に復元し、環状溝21dに嵌合される。
【0021】そして、上述した紐付きキャップは、例えば、図4に示すように、自動車25の燃料タンク27に、連結部材23の他端に形成される取付部23cを、ピン29により回動自在に固定されて使用される。以上のように構成された紐付きキャップでは、キャップ21および連結部材23を可撓性を有する導電性樹脂により形成したので、キャップ21および連結部材23に発生した静電気が連結部材23を通り車体側に徐々に逃がされ、これによりキャップ21および連結部材23に静電気が帯電することを容易,確実に防止することができ、また、人体に帯電している静電気を、給油時にキャップ21に触れることで車体側へ逃がすことが可能である。
【0022】なお、本発明者の実験によれば、上述した導電性樹脂における炭素繊維の含有率が10重量%以上になると、キャップ21および連結部材23の表面抵抗が少なくなり、キャップ21および連結部材23に充分な導電性を付与できることが確認された。また、上述した紐付きキャップでは、キャップ本体21aに形成される環状溝21dに連結部材23のリング部23aを嵌挿するようにしたので、ハンドル部21bを摘んでのキャップ21の回動時に連結部材23が邪魔になることがなくなる。
【0023】さらに、連結部材23のリング部23aにキャップ本体21aを挿入すると、リング部23aの内周の嵌合部23bが弾性的に変形され、この状態でキャップ本体21aを環状溝21dまで挿入すると、嵌合部23bが元の状態に復元し、環状溝21dに嵌合されるため、組立工数を従来より大幅に低減することができる。
【0024】また、上述した紐付きキャップでは、リング部23aの断面をV字状にし、内周を嵌合部23bとしたので、嵌合部23bの弾性変形を容易,確実に行わせることができる。」

したがって、刊行物1には、
「導電性樹脂より形成されるキャップ21、導電性樹脂により形成されて、可撓性を有し、一端が前記キャップ21に連結される長尺状の連結部材23とからなり、該連結部材の他端を自動車25に連結して使用される紐付きキャップ」が、記載されている。

4.当審の判断
(1)本願発明1と刊行物1記載の発明との対比
刊行物1記載の発明の「キャップ21」、及び「自動車25」は、本願発明の「キャッピング部材」、及び「車体」に相当する。
したがって、本願発明と刊行物1記載の発明の一致点及び相違点は、それぞれ、ア.及びイ.のとおりである。

ア.一致点
「導電性樹脂より形成されるキャッピング部材、導電性樹脂により形成されて、可撓性を有し、一端が前記キャッピング部材に連結される長尺状の連結部材とからなり、該連結部材の他端を車体に連結して使用される紐付きキャップ」である点。

イ.相違点
(A)本願発明においては、キャッピング部材が「第一の導電性樹脂」、連結部材が「第二の導電性樹脂」により形成されることが、特定されているのに対し、刊行物1記載の発明においては、キャッピング部材及び連結部材を形成する導電性樹脂に関して、特段の区別はされていない点。
(B)本願発明においては、第一の導電性樹脂と第二の導電性樹脂は、キャッピング部材から、車両に至るまでの表面抵抗が「1×1012Ω以上、5.30×1012Ω以下」になることが、特定されているのに対して、刊行物1記載の発明における導電性樹脂に関しては、表面抵抗の値に関して、数値的な特定はされていない点。

(2)判断
ア.相違点(A)
刊行物1記載の発明において、キャッピング部材と連結部材に、同じ導電性樹脂を用いなければならない特段の事情は認められず、各々を形成する導電性樹脂は、当業者が設計的条件に合わせて、適宜選択しうるものであるし、また、本願発明において、その構成の主要部である相違点(B)に係る第一の導電性樹脂及び第二の導電性樹脂の表面抵抗値は、両方の導電性樹脂の表面抵抗値を合成した値であり、キャッピング部材と連結部材を構成する導電性樹脂の各々の抵抗値には技術的な意義がないことが明らかであるから、キャッピング部材と連結部材を、異なる導電性樹脂により形成することに、格段の創意は存在しない。
なお、本願発明の導電性樹脂の成分について、請求項1の記載では、具体的に特定されていないが、念のため、明細書の実施例のレベルでみても、同様の成分が技術例1に開示(【特許請求の範囲】の記載等を参照。)されており、その刊行物1記載の発明への適用に、困難性は認められない。

イ.相違点(B)
部品設計において、帯電の防止という観点から、その構成材料を選択する際に、帯電した静電気を、衝撃を生じない程度に充分に放電されるよう考慮することは、当業者にとっては、常識的な課題である。
すなわち、材料の物質の抵抗値が大きいほど、放電は緩やかに行われる一方、放電自体の効果は抑制される傾向があり、抵抗値が小さいほど、放電は速やかに行われる一方で、人体に対して大きな衝撃を与える傾向があるという事象を基に、物質の抵抗値を決定することは、自動車部品の分野において周知技術(必要であれば、技術例2(段落【0023】等の記載)、技術例3(段落【0008】等の記載)、及び技術例4(第2頁左上欄第10-17行「漏洩抵抗は、・・・効果が不足する。」等の記載)を参照。)である。
そして、上記刊行物1及び技術例1〜4において、本願発明に係る表面抵抗値について、該当する数値を開示されていないが、審査基準においては、「数値限定を伴った発明の進歩性の考え方」について、以下のとおり示されている。

発明の構成に欠くことのできない事項を、数値を特定することにより数量的に表現した、いわゆる数値限定の発明については、
(1)実験的に数値範囲を最適化又は好適化することは、当業者の通常の創作能力の発揮であって、通常はここに進歩性はないものと考えられる。しかし、
(2)限定された数値の範囲内で、請求項に係る発明が、引用文献に記載されていない有利な効果であって、引用文献に記載された発明が有する効果とは異質な効果、または同質の効果であるが際立って優れた効果を有し、これらが技術水準から当業者が予測できたものでないときは、進歩性を有する。
なお、効果の顕著性は、数値限定の範囲内のすべての部分で満たされる必要がある。
さらに、いわゆる数値限定の臨界的意義について、次の点に留意する。
(3)請求項に係る発明が引用発明の延長上にあるとき、すなわち、両者の相違が数値限定の有無のみで、課題が共通する場合は、その数値限定の範囲の内と外で効果上顕著な差異があることが要求される。しかし、
(4)課題が異なり、効果が異質の場合は、数値限定を除いて両者が同じ構成を有していたとしても、数値限定に臨界的意義を要しない。

本願発明に係る数値限定について検討すると、刊行物1記載の発明は、「キャップおよび連結部材に静電気が帯電することを容易,確実に防止することができる紐付きキャップを提供すること」を課題とし、「人体に衝撃を与えることなく静電気の放電が行え、かつ2次火花放電の発生を確実に防止する紐付きキャップを提供すること」を課題とする本願発明とは、自動車の燃料タンクの紐付きキャップの静電気の帯電に対する対策を講じるという共通の課題を有するが、本願発明は、帯電した静電気を衝撃なく放電するために、導電性樹脂の表面抵抗値に、上限及び下限を設けたものである。
そして、本願発明に係る導電性樹脂の表面抵抗値の下限を、1×1012Ωに設定する点については、発明の詳細な説明において、官能評価を行った結果に基づくものとされているが、この官能評価は、衝撃を感じないA(○)、小さく感じるB(△)、強く感じるC(×)の3レベルを、108Ω、1012Ωで区分した大まかのものであって、人体の感覚の個体差や紐付きキャップの使用状況等を考慮した厳密なものとはいえないし、当該数値を境に、効果上顕著な差異があるものとも、認められない。
次に、本願発明に係る導電性樹脂の表面抵抗値の上限を5.3×1012Ωに設定することについては、火花放電の限界電圧が2kvであることを根拠とされているが、一般的には、こうした電圧が数kvのオーダーであることは知られているものの、周囲の諸条件によって、変化し、一定値ではないのであって、したがって、残留帯電量の安定値を2.0kvとするように、導電性樹脂の表面抵抗値を設定することは、火花放電を防ぎ得る範囲の値から、諸条件を考慮しながら、好適のものを適宜選択することに過ぎないのであって、臨界的な意義は認められない。
また、帯電に対する対策として、物質の表面抵抗を設定するに際しては、対象となる物体の周囲の条件、許容される衝撃の強さ等を含めて、検討するものであるから、拒絶理由通知書、拒絶査定書の備考欄、あるいは本審決で列挙された刊行物及び(周知)技術例等でも示されているように、実験的に多様な値が求められているのであって、本願発明の紐付きキャップに関して、車体に取り付けるという条件等を勘案しつつ、実験的に相違点(B)に表れている数値を求め、採用することに、格別の困難性は認められない。
そして、本特許出願の明細書の段落【0052】に記載された、「キャッピング部材を車体と同電位に保つことができるとともに、キャッピング部材に触れたとき、衝撃を感じずに人体に帯電した静電気が連結部材を通り車体側に逃がされる。また残留帯電量による2次火花放電の発生も防止することができる。」と効果自体も、技術例2〜4に記載された衝撃を防ぎつつ充分に静電気を放電できるという効果と同質のものであるし、当業者が予測し得ないほどの際だって優れた効果であるとも認められない。
したがって、本願発明の相違点(B)に係る表面抵抗値の特定については、当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎないものと認められる。

ウ.小括
さらに、上記相違点によって奏される効果は、当業者が予測できる範囲のもので、格別のものではなく、請求人の主張を総合的に検討しても、本願発明は、刊行物1及び周知技術等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認める。

5.むすび
したがって、本特許出願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項について検討するまでもなく、本特許出願についての拒絶をすべき旨の査定を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-09-08 
結審通知日 2005-09-13 
審決日 2005-09-27 
出願番号 特願平11-301567
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川本 真裕出口 昌哉  
特許庁審判長 大野 覚美
特許庁審判官 田々井 正吾
柴沼 雅樹
発明の名称 紐付きキャップ  
代理人 牧 哲郎  
代理人 牧 レイ子  
代理人 菊谷 公男  

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