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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B29C
管理番号 1126915
審判番号 不服2001-17370  
総通号数 73 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-11-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-09-27 
確定日 2005-11-21 
事件の表示 平成 9年特許願第114820号「木質様成形品の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年11月17日出願公開、特開平10-305470〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成9年5月2日の出願であって、その請求項1及び2に係る発明は、平成13年6月4日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
直径が1〜100μmの粒形状をなすセルロース系微粉粒の外周面に、該セルロース系微粉粒より小径でかつ硬い表面粒が固定されている表面粒付きセルロース系微粉粒、または直径が1〜100μmの粒形状をなすセルロース系微粉粒と樹脂と顔料とが混合されてペレット化された、複数種類の木質様形成材ペレットと、
直径が1〜100μmの粒形状をなすセルロース系微粉粒の外周面に、該セルロース系微粉粒より小径でかつ硬い表面粒が固定されている表面粒付きセルロース系微粉粒、または直径が1〜100μmの粒形状をなすセルロース系微粉粒と樹脂とが混合されてペレット化された、複数種類の生地材ペレットと、
樹脂と顔料とが混合されてペレット化された、複数種類の顔料ペレットとを用意し、
前記複数種類の木質様形成材ペレットと、複数種類の生地材ペレットと、複数種類の顔料ペレットとのうちの少なくとも二種類を、セルロース系微粉粒または表面粒付きセルロース系微粉粒を含むようにして混合し、
この混合材料を溶融させ、その後または溶融と同時に所望形状に成形することを特徴とする木質様製品の製造方法。」

2.引用例に記載の事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-232369号公報(以下、「引用例1」という。)及び特開平9-52229号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。

[引用例1]
ア.「【請求項1】 樹脂と第一の有色顔料とが混合されペレット化されてなる生地材ペレットと、磨砕処理が施され白色顔料が表面に担持されたセルロース系微粉粒と樹脂と、前記第一の配合の有色顔料とは異なる配合の第二の有色顔料とが混合されペレット化されてなる木質様形成材ペレットとを混合し、該ペレット混合物を押出成形する木質様成形品の製造方法であって、
押出成形機としてホッパとベント孔を有するベント式押出機を用い、該ベント式押出機のホッパに前記生地材ペレットと木質様形成材ペレットとのいずれか一方のペレットを、ベント孔に他方のペレットをそれぞれ供給して押出成形することを特徴とする木質様成形品の製造方法。」(請求項1)
イ.「【0019】生地材ペレットとしては、樹脂と第一の有色顔料と、・・・等が混合されペレット化されたものが用いられる。
【0020】このペレットの成分とされる樹脂としては、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、・・・等が用いられるが、中でも塩化ビニル樹脂がより好適に用いられる。第一の有色顔料としては、基本的にカドミウムイエローや酸化鉄、カーボンブラックなどの黄色、赤色、黒色の三色の無機顔料からなり、・・・その添加量としてはペレット全体の0.5〜5重量%程度とされる。
・・・ペレット化については、例えば混合粉を多孔円形ノズルからひも状に押し出し、これを切断するといった従来公知の手段によってなされる。」(段落【0019】〜【0022】)
ウ.「【0023】木質様形成材ペレットは、磨砕処理が施され白色顔料が表面に担持されたセルロース系微粉粒と、樹脂と、第二の有色顔料と、必要に応じ添加される各種の添加剤とが混合されペレット化されたものである。
【0024】・・・セルロース系微粉粒とは、木材の粗粉砕物・・・等の各種植物細胞体の原料材粗粉砕物を出発原料とし、これを磨砕処理し、さらに磨砕処理済微粒子に白色顔料を担持処理をすることによって得られたものである。・・・磨砕処理とは、粉砕処理と研磨処理とを併せ持つ処理を言うものであり、・・・粉砕処理と、・・・研磨処理とを併せた処理を指しているのである。
【0025】出発原料となる粗粉砕物を得るには、そのチップ等を機械的な衝撃破砕により粉砕して150メッシュ、好ましくは120メッシュよりも細かい粒径の粗粉砕粉を得る。・・・」(段落【0023】〜【0025】)
エ.「【0035】そして、このようにして得られたセルロース系微粉粒を分級し、所望する範囲の粒径(例えば1〜10μm、10〜20μm、20〜50μm、50〜100μm)に揃えることにより、白色顔料を担持するためのセルロース系微粉粒とする。」(段落【0035】)
オ.「【0038】そして、このようにして得られたセルロース系微粉粒についても、ボールミルによる場合と同様に分級され所望する範囲の粒径に揃えられることにより、白色顔料を担持するための本発明のセルロース系微粉粒となる。ここで、担持する白色顔料としては、酸化チタン、・・・等が使用可能であるが、特に酸化チタンが、後述するように熱的、化学的に安定であり、しかも着色力、隠蔽力にも優れていることから・・・好ましい。また、この白色無機顔料の粒径については、前記セルロース系微紛粒より十分に小さく調整されたものとされ、具体的には0.1μm程度のものが好適とされる。
【0039】また、白色顔料の前記セルロース系微粉粒(磨砕処理済微粉粒)への担持方法としては、・・・セルロース系微粉粒を母粒子とし、この母粒子の周面に白色顔料粒子を担持させるといった方法が採用される。・・・セルロース系微粉粒に比べ白色顔料粒子の方が硬いことを利用した方法であり、このような硬度の違いによって白色顔料粒子をセルロース系微粉粒の表面にめりこませ、あるいは喰い込ませた状態に担持せしめ得るのである。」(段落【0038】〜【0039】)
カ.「【0043】木質様ペレットの成分とされる樹脂としては、前記生地材ペレットに用いた樹脂、すなわち塩化ビニル樹脂・・・等が用いられ、中でも塩化ビニル樹脂が好適に用いられる。・・・
【0044】また、第二の有色顔料としては、生地材ペレットに用いられる第一の有色材料と同様、・・・黄色、赤色、黒色の三色の無機顔料からなり、・・・その添加量としてはペレット全体の0.5〜5重量%程度とされる。」(段落【0043】〜【0044】)
キ.「【0046】そして、本発明では、このような生地材ペレットと木質様形成ペレットとを図5に示すようなベント式押出機に供給して成形する。・・・
【0047】この押出機40には、ベント孔44に連通して第二のホッパ46が連結されており、この第二のホッパ46には前記生地材ペレットかあるいは木質様形成材ペレットの一方が供給され貯留される。また、前記第一のホッパ43には、第二のホッパ45に貯留されたペレットとは別のペレットが供給され貯留される。・・・
【0048】・・・押出機40の成形温度、すなわちペレットの加熱溶融温度としては、ペレットを形成する樹脂の種類によっても異なるものの、例えば塩化ビニルを用いた場合には180〜210℃程度とされる。
【0049】・・・これらペレットの混合比に基づき、配合比率の高い方を第一のホッパ43に、低い方を第二のホッパ45に供給するのが好ましい。・・・
【0050】・・・第一のホッパ43から供給されたペレットは、シリンダ41内に投入されここで加熱溶融されつつスクリュー42によって前方に押し出される。・・・第二のホッパ46からのペレットは、シリンダ41内にて加熱溶融されつつ、スクリュー42によって第一のホッパ43からのペレット溶融物に混合されて該ペレット溶融物とともに押し出される。そして、このようにして生地材ペレットと木質様形成材ペレットとは、溶融され混合されてダイ45から押し出され、所望する形状に成形された木質様成形品となる。」(段落【0046】〜【0050】)

[引用例2]
ク.「【請求項1】セルロース材を粉砕して得た粉砕粉を磨砕処理して嵩比重を高めた粉粒の外周面に、該粉粒よりも小径でかつ硬い表面粒を固定させて固定粒を形成し、その固定粒と顔料と樹脂とを組み合わせて形成できるペレット原料を混合し、溶融し、成形することによってペレット原料の組み合わせが異なる複数種類のペレットを製造し、それら複数種類のペレットを溶融させ、溶融の後または溶融と同時に、押出成形または射出成形により所望形状に成形する木質様製品の製造方法であって、複数種類のペレットのうち、少なくともひとつは固定粒を混合して形成するとともに、少なくともひとつは固定粒を混合せずに形成したことを特徴とする木質様製品の製造方法。」(請求項1)
ケ.「【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、天然の木の木目に近い模様を最終成形品の表面に現すには、・・・異なる顔料を含ませた二種類以上のペレットを用いるほうが、天然の木目に近い模様を簡単に現すことができることも判明してきた。加えて、異なる顔料を含ませた二種類以上のペレットを用いるほうが、それらの混合割合を変えるという手段が使えるので、色調の微妙な制御も行いやすい。」(段落【0007】)
コ.「 【0012】ここにいう「セルロース材」は、天然木材のほか、おがくず・・・などを含む。「樹脂」とは、硬質樹脂、軟質樹脂を含み、例えば塩化ビニル樹脂、・・・などである。
【0013】「表面粒」とは、酸化チタン、・・・・・・またはセラミック等の非金属材料である。「樹脂をペレットに形成」するための技術としては、・・・従来から公知の手段が用いられる。」(段落【0012】〜【0013】)
サ.「【0015】請求項1に記載された木質様製品の製造方法は、・・・セルロース材を粉砕して、・・・その粉粒に表面粒を固定させて固定粒を得る。次に、この固定粒と顔料と樹脂とを組み合わせてペレット原料とし、そのペレット原料を混合し、溶融し、成形することによってペレット原料の組み合わせが異なる複数種類のペレットを製造する。・・・
【0016】最後に、それら複数種類のペレットを溶融させ、溶融の後または溶融と同時に、押出成形または射出成形により所望形状に成形することによって、最終的な木質様製品を得る。・・・」(段落【0015】〜【0016】)
シ.「【0018】まず、複数種類の顔料グループを用いており、・・・天然の木目に近い模様を簡単に現すことができる。また、異なる顔料を含ませた二種類以上のペレットを用いるほうが、それらの混合割合を変えるという手段が使えるので、色調の微妙な制御も行いやすい。」(段落【0018】)
3.対比・判断
本願発明(前者)と引用例1に記載された発明(後者)とを対比する。
引用例1には、上記アより、「樹脂と第一の有色顔料とが混合されペレット化されてなる生地材ペレットと、磨砕処理が施され白色顔料が表面に担持されたセルロース系微粉粒と樹脂と、前記第一の配合の有色顔料とは異なる配合の第二の有色顔料とが混合されペレット化されてなる木質様形成材ペレットとを混合し、該ペレット混合物を押出成形する木質様成形品の製造方法」が記載され、セルロース系微粉粒の直径は1〜100μmであること(上記エ)、セルロース系微粉粒の表面に担持された白色顔料は、セルロース系微紛粒より十分に小さく硬いこと(上記オ)、また、生地材ペレットと木質様形成材ペレットとは、溶融され混合されて押し出され、所望する形状に成形された木質様成形品となること(上記キ)が記載されていると認められる。
してみると、引用例1には、「樹脂と第一の有色顔料とが混合されペレット化されてなる生地材ペレットと、直径が1〜100μmセルロース系微粉粒の表面に、該セルロース系微紛粒より十分に小さく硬い白色顔料が担持された、白色顔料が表面に担持されたセルロース系微粉粒と樹脂と第二の有色顔料とが混合されペレット化されてなる木質様形成材ペレットとを混合し、該ペレット混合物を溶融し、所望形状に成形する木質様成形品の製造方法」の発明が記載されているといえる。
そして、後者における「生地材ペレット」、「白色顔料」、「担持」は、それぞれ前者における「顔料ペレット」、「表面粒」、「固定」に相当することは明らかであり、また、後者において、ペレット混合物には、白色顔料が表面に担持されたセルロース系微粉粒が含まれているから、両者は、

「直径が1〜100μmの粒形状をなすセルロース系微粉粒の外周面に、該セルロース系微粉粒より小径でかつ硬い表面粒が固定されている表面粒付きセルロース系微粉粒と樹脂と顔料とが混合されてペレット化された、木質様形成材ペレットと、樹脂と顔料とが混合されてペレット化された、顔料ペレットとを、表面粒付きセルロース系微粉粒を含むようにして混合し、この混合材料を溶融させ、その後または溶融と同時に所望形状に成形することを特徴とする木質様製品の製造方法。」である点において一致するものの、次の点で相違するものと認められる。

(相違点1)木質様形成材ペレットに混合される微粉粒が、前者においては、「表面粒付きセルロース系微粉粒、またはセルロース系微粉粒」であるのに対し、後者においては、「表面粒付きセルロース系微粉粒」である点。

(相違点2)混合するペレットが、前者においては、「木質様形成材ペレットと生地材ペレットと顔料ペレットとのうちの少なくとも二種類」であるのに対し、後者においては、「木質様形成材ペレットと顔料ペレット」である点。

(相違点3)それぞれのペレットを、前者においては、複数種類のペレットを用意するのに対して、後者においては、複数種類のペレットを用意することを明記していない点。

以下、これら相違点について検討する。
(相違点1及び相違点2について)
相違点1及び相違点2の後者における発明特定事項は、前者における選択肢を有する発明特定事項の、当該選択肢のいずれか一方のみを発明特定事項としたものであるから、これら相違点は、実質的な差異ではない。

(相違点3について)
引用例2には、上記ク〜シより、本件発明の表面粒付きセルロース系微粉粒に相当する固定粒を形成し、その固定粒と顔料と樹脂とを組み合わせて形成できるペレット原料を混合し、溶融し、成形することによって木質様製品を製造するときに、ペレット原料の組み合わせが異なる複数種類のペレットを製造し、この複数種類のペレットを用いるほうが、天然の木目に近い模様を簡単に現すことができ、色調の微妙な制御も行いやすいことが記載されている。
してみると、引用例1のペレットにおいて、色調の微妙な制御を行う等の観点のため、引用例2の技術を適用し、該引用例1のペレットを使用するに際し、それぞれのペレットを複数種類用意するようにすることは、当業者が容易に想到し得ることであり、また、これによる効果も引用例2に記載のものから当然予想できる程度のものと認められる。

したがって、本願発明は、引用例1、2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、請求人は審判請求書において、「引用例1及び2に記載されたペレットは、何れも表面粒付きセルロース系微粉粒と樹脂とを混合したものであり、表面粒がないセルロース系微粉粒と樹脂とを混合してペレットを製造するという記載はなく、表面粒付きセルロース系微粉粒及び樹脂を混合したペレットと、表面粒がないセルロース系微粉粒及び樹脂を混合したペレットとを、組合せて複数種類を用意するという技術的思想については何ら開示されておらず、表面粒付きセルロース系微粉粒及び樹脂を混合したペレットと、表面粒がないセルロース系微粉粒及び樹脂を混合したペレットとを、組合せる構成自体記載されていない」旨主張している。

しかしながら、本件発明は、本件請求項1に記載のとおり、木質様形成材ペレットに混合されるのは、表面粒付きセルロース系微粉粒、またはセルロース系微粉粒であり、これら2つのセルロース系微粉粒を択一的に使用するものであるから、本件発明の発明特定事項は表面粒付きセルロース系微粉粒と表面粒がないセルロース系微粉粒とが必須のものとする旨の、上記請求人の主張は、特許請求の範囲の記載に基づかない主張であり、採用することはできない。

4.むすび
したがって、本願発明は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
以上のとおりであるから、本願出願は、請求項2に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-08-09 
結審通知日 2005-08-30 
審決日 2005-09-12 
出願番号 特願平9-114820
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B29C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 堀 洋樹大島 祥吾加藤 友也  
特許庁審判長 松井 佳章
特許庁審判官 石井 克彦
鴨野 研一
発明の名称 木質様成形品の製造方法  

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