ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61M |
---|---|
管理番号 | 1126957 |
審判番号 | 不服2002-10353 |
総通号数 | 73 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1993-10-14 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-06-10 |
確定日 | 2005-11-17 |
事件の表示 | 平成3年特許願第509878号「取外し自在流体インターフェース付き弁装置」拒絶査定不服審判事件〔平成3年11月28日国際公開、WO91/17780、平成5年10月14日国内公表、特表平5-507015号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は1991年5月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1990年5月15日、米国)を国際出願日とする出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。 )は、平成17年5月9日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「液体を輸送するライン内に弁を設けるシステムであって、 a)第1凹所が位置する表面を有する使い捨てユニットを備え、この使い捨てユニットは、 i)前記表面上に配設された第1可撓性薄膜であり、前記表面に対面する内側と前記表面に背を向ける外側とを有することにより、第1の凹所と前記第1可撓性薄膜との間に第1の弁室を画成する第1可撓性薄膜と、 ii)前記第1の弁室と前記ラインの間の流体連通を与えるように、前記使い捨てユニットへの入力である第1のポートから前記第1の弁室を通って、前記使い捨てユニットからの出力である第2ポートに向けて前記使い捨てユニットを通過し、第1及び第2の口から前記第1の弁室に入る流体通路にして、前記第1の弁室内側の前記口の少なくとも1個は前記第1の凹所から前記第1可撓性薄膜に向かって突出している前記流体通路とを含み、前記システムは更に、 b)前記使い捨てユニットに着脱自在に接続される受承ユニットを備え、この受承ユニットは、(i)前記第1可撓性薄膜を前記突出している口に押し付けるように、前記第1可撓性薄膜の外側に流体圧力をかけること、および(ii)前記第1の弁室を通る前記流体通路を通して流体流を流すように、前記第1可撓性薄膜の外側の流体圧力を減じること、を交互に行うために、前記受承ユニットに配設される第1圧力装置とを含むシステム。」 2.引用例 これに対して、当審において平成16年11月4日付けで通知した拒絶の理由に引用した刊行物である特開平1-188776号公報(以下、「引用例」という。)には図面と共に、 「従来、実開昭62-158264号公報で開示された第2図に示すごとく、ダイヤフラムの下面で弁口を直接開閉するダイヤフラムシ-ル弁のダイヤフラムの上面に空気圧を直接作用させてダイヤフラムの弾性力と空気圧による押圧力とによってダイヤフラムを上下に駆動して弁口を開閉するダイヤフラムシ-ル弁を本出願人は考案した。」(1頁右欄11〜17行)、 「本発明の一実施例を図面を参照して説明する。 第1図は全開状態を示す断面図で、弁箱本体1は左側に流入口11,右側に流出口12を有し、中央部で流入出口11,12と連通する上向き流路13,14が設けられ、上向き流路13は本体1の中央部に、上向き流路14はその側部に設けられて本体の上面に形成された浅窪状の栓室15内に開放されている。 そして本体1の中央部に設けられた上向き流路13の上面には弁座16が形成され合成樹脂製のシ-トが嵌着してある。栓室15の外周部に段差部17が設けてあり、この段差部17の上面にはステンレス製薄板のダイヤフラム2を装着してある。このダイヤフラム2は段差部17の上面に接する外周部21が平面で中央部は大きな曲率半径からなる上部に膨んだ部分球殻形状22で、通常2枚乃至5枚のステンレス製薄板を重ね合せて形成してあり、重ね合せた薄板の最下面と最上面の外周部22には金属メッキを施してシール性を良好にしてある。そして本体1の上面には磁性体金属のフタ3が上記ダイヤフラム2の外周部21の上面を本体の段差部17の上面との間で挟着し、密封状態で本体1とボルト4で固定してある。フタ3の下面はダイヤフラム2との間で液体室31を形成し中央部はフタ3の上面に貫通する小径の貫通孔32を形成している。貫通孔32の内径は液体室31の内径に比べて約1/3〜1/4の径で充分小さく精密に仕上げてあり、この油室31と貫通孔32内に油5を充満して、フタ3の上面に装着されたプランジャー6のピストン61が貫通孔32の内面と密封状態で挿入される。プランジャー6は磁性体金属で形成され、その上面および外周部を非磁性の筒体8で上下に摺動可能にガイドされている。そして下部にはフタ3の上面との間でバネ7を介装して常時はプランジャー6を筒体8の上部側に位置している。筒体8の外周にはソレノイドコイル9とソレノイドコイル9の上部に磁性体の金属環91を装着しである。そしてこれらの外周に非磁性のカバ一体10を下部でフタ3と固定してあり、ソレノイドコイル9,金属環91,筒体8をフタ3の上面に装着固定してアクチェータ部を形成している。今、ソレノイドコイル9に電流を印加するとコイル9の上端に装着した金属環91および下端のフタ3が磁性体であるから磁化され、内部の筒体8内に装着されたプランジャー6はフタ3の磁化による磁力によってバネ7の反発力に抗して吸着され下方に押下げられる。プランジャー6の下方への摺動によってプランジャー下部のピストン61の下面は貫通孔32内で油5の上面を押圧し、液体室81内の油は圧縮されるのでダイヤフラム2の上面に油圧が作用する。これによってダイヤフラム2は自身の持つ上部側に膨んでいる弾性力に抗して下方に押下げられダイヤフラム2の下面は本体栓室15の上面に設けた弁座16に当接して上向き流路13が閉塞されるので弁は閉止される。 次にソレノイドコイル9に加えている電流を切ると磁力線はなくなるのでプランジャー6はバネ7の反発力によって上方に戻り、液体室31内の油圧は開放されてダイヤフラム2は自身のもつ上部側に膨んだ初期の状態に戻ろうとする弾性復元力によって上方に変位し、弁座l6から離れて上向き流路13と14は連通し、弁は開の状態となる。」(2頁右下欄5行〜3頁左下欄5行)と記載されており、 第1図には、上向き流路13の弁座16が本体栓室15の下面から突出して設けられている様子が図示されている。 上記記載及び図示内容から、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「左側に流入口11,右側に流出口12を有し、中央部で流入出口11,12と連通する上向き流路13,14が設けられ、上向き流路13は本体1の中央部に栓室15の下面から突出して、上向き流路14はその側部に設けられて本体の上面に形成された浅窪状の栓室15内に開放されている弁箱本体1と、栓室15の外周部に設けた段差部17の上面に装着されるステンレス製薄板のダイヤフラム2と、上記ダイヤフラム2の外周部21の上面を本体の段差部17の上面との間で挟着し、密封状態で本体1とボルト4で固定される磁性体金属のフタ3を備え、該フタ3の下面はダイヤフラム2との間で液体室31を及び小径の貫通孔32を形成していて、この貫通孔32の内面と密封状態でプランジャー6のピストン61が挿入され、ソレノイドコイル9に電流を印加するとプランジャー6は下方に押下げられダイヤフラム2を上向き流路13の上面に設けた弁座l6に当接させて弁を閉じ、ソレノイドコイル9に加えている電流を切るとダイヤフラム2が弁座l6から離れるダイヤフラムシール弁。」 3.対比・判断 本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「ダイヤフラム2」、「流入口11」、「上向き流路13」、「流出口12」、「上向き流路14」、「栓室15」、「本体の上面に形成された浅窪状の栓室15内に開放されている弁箱本体1」、「フタ3」はその機能ないし構造からみて、それぞれ前者の「第1可撓性薄膜」、「第1のポート」、「第1可撓性薄膜に向かって突出している前記流体通路」、「第2ポート」、「第2の口から前記第1の弁室に入る流体通路」、「第1の弁室」、「第1凹所が位置する表面を有するユニット」、「受承ユニット」に相当する。 そして、後者の「ソレノイドコイル9」と「プランジャー6」は「ピストン61」を上下に往復動させることにより、(i)ダイヤフラム2を上向き流路13の口に押し付けるように、栓室15の外側に流体圧力をかけること、および(ii)栓室15を通る前記流体通路13,14を通して流体流を流すように、前記ダイヤフラム2の外側の流体圧力を減じること、を交互に行うものであり、また、弁を液体を輸送するライン内に設けてシステムとすることは通常のことであるから両者は、 「液体を輸送するライン内に弁を設けるシステムであって、 a)第1凹所が位置する表面を有するユニットを備え、このユニットは、 i)前記表面上に配設された第1可撓性薄膜であり、前記表面に対面する内側と前記表面に背を向ける外側とを有することにより、第1の凹所と前記第1可撓性薄膜との間に第1の弁室を画成する第1可撓性薄膜と、 ii)前記第1の弁室と前記ラインの間の流体連通を与えるように、前記ユニットへの入力である第1のポートから前記第1の弁室を通って、前記ユニットからの出力である第2ポートに向けて前記ユニットを通過し、第1及び第2の口から前記第1の弁室に入る流体通路にして、前記第1の弁室内側の前記口の少なくとも1個は前記第1の凹所から前記第1可撓性薄膜に向かって突出している前記流体通路とを含み、前記システムは更に、 b)前記ユニットに着脱自在に接続される受承ユニットを備え、この受承ユニットは、(i)前記第1可撓性薄膜を前記突出している口に押し付けるように、前記第1可撓性薄膜の外側に流体圧力をかけること、および(ii)前記第1の弁室を通る前記流体通路を通して流体流を流すように、前記第1可撓性薄膜の外側の流体圧力を減じること、を交互に行うために、前記受承ユニットに配設される第1圧力装置とを含むシステム。」である点で一致しており、次の点で相違する。 相違点:前者における「第1凹所が位置する表面を有するユニット」が「使い捨て」であるのに対し、後者のそれは、「使い捨て」とは規定されていない点。 上記相違点について検討すると、引用発明においても、「第1凹所が位置する表面を有するユニット」に相当する「弁箱本体1」は、「受承ユニット」に相当する「フタ3」にボルトで着脱自在に固定されているから、弁箱本体1を使い捨てとすることは可能である。しかも、本願発明は、「第1凹所が位置する表面を有するユニット」を使い捨てにするための特段の構成を備えている訳でもないから、使い捨てにするか否かは単に使用上の問題にすぎないといえ、上記相違点は当業者が適宜選択できる設計的事項にすぎない。 なお、本願発明が、第1可撓性薄膜の外側の流体として空気等の気体を用いるものと仮定して、更に検討する。 引用例には、「ダイヤフラムシ-ル弁のダイヤフラムの上面に空気圧を直接作用させてダイヤフラムの弾性力と空気圧による押圧力とによってダイヤフラムを上下に駆動して弁口を開閉する」ことが従来技術として併せて記載されているように、ダイヤフラムシ-ル弁のダイヤフラムの上面に空気圧を直接作用させることは従来より周知の技術手段である。引用発明は、空気圧による押圧では、迅速な作動、細かい調整が困難であることから液体を使用する手段を採用しているが、空気圧を直接ダイヤフラムに作用させる手段で行うことが不可能な訳ではないから、この技術手段を採用して、第1可撓性薄膜の外側の流体として空気等の気体を用いる構成とすることも当業者が容易に想到し得ることである。 4.むすび したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-06-02 |
結審通知日 | 2005-06-07 |
審決日 | 2005-06-27 |
出願番号 | 特願平3-509878 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A61M)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中田 誠二郎 |
特許庁審判長 |
大元 修二 |
特許庁審判官 |
一色 貞好 川本 真裕 |
発明の名称 | 取外し自在流体インターフェース付き弁装置 |
代理人 | 山崎 行造 |