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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02G
管理番号 1127004
審判番号 不服2002-10082  
総通号数 73 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-08-10 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-06-06 
確定日 2005-11-24 
事件の表示 平成10年特許願第19454号「電気接続箱のバスバー構造」拒絶査定不服審判事件〔平成11年8月10日出願公開、特開平11-220823〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成10年1月30日の出願であって、平成14年4月26日付けで拒絶査定がなされ、平成14年6月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月3日付けで手続補正がなされたものである。

II.平成14年7月3日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年7月3日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正は、明細書の特許請求の範囲において、(i)補正前(出願当初明細書)の請求項1を削除し、(ii)補正前の請求項2及び請求項3を、請求項1を引用する記載形式のものから独立した形式として新たな請求項1及び請求項2とするとともに、被覆電線の両芯線端部を「被覆電線の両端から被覆をそれぞれ剥離して両芯線端部を露出させる」ものに限定するものであるから、請求項の削除ならびに特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そして、本件補正後の特許請求の範囲に記載されている発明は、次のとおりのものである。
「【請求項1】電気接続箱に収容され、所定のパターン部同士を電気的にジャンパー線で接続したバスバー構造であって、
上記ジャンパー線を被覆電線で構成して、この被覆電線の両端から被覆をそれぞれ剥離して両芯線端部を露出させるとともに、上記バスバーの所定のパターン部同士に、上記被覆電線の両芯線端部をそれぞれ挿入する挿入穴を形成して、この挿入穴に挿入した芯線端部を挿入穴の内縁部にレーザ溶接したことを特徴とする電気接続箱のバスバー構造。
【請求項2】電気接続箱に収容され、所定のパターン部同士を電気的にジャンパー線で接続したバスバー構造であって、
上記ジャンパー線を被覆電線で構成して、この被覆電線の両端から被覆をそれぞれ剥離して両芯線端部を露出させるとともに、上記被覆電線の両芯線端部の外周面に偏平な面をそれぞれ形成して、この両芯線端部の偏平な面を上記バスバーの所定のパターン部同士の上面にそれぞれ当てがって、この芯線端部をパターン部の上面にレーザ溶接したことを特徴とする電気接続箱のバスバー構造。」
(以下、それぞれ「補正発明1」、「補正発明2」という。)

2.独立特許要件の検討
そこで、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物は次のものである。
1.実願平4-53470号(実開平6-9063号)の CD-ROM
2.実願昭54-40363号(実開昭55-140271号)のマイクロフィルム
3.特開平5-208287号公報
4.特開平8-227738号公報
5.特開昭51-37054号公報
6.特開平8-150488号公報

(2)各引用刊行物の記載事項
(2-1)刊行物1
刊行物1には、自動車用電気接続箱内における導電体の接続構造に関して以下の記載がある。
(1a)「【請求項1】電気接続箱内に絶縁板を介して多層に配置された導電体が相互に接続されている電気接続箱内導電体の接続構造において、同一層内、または異なる層内の導電体が超音波溶接により相互に接続されていることを特徴とする電気接続箱内導電体の接続構造。
【請求項2】電気接続箱内に絶縁板を介して多層に配置された導電体が相互に接続されている電気接続箱内導電体の接続構造において、同一層内、または異なる層内の導電体がボンディングワイヤーにより相互に接続されていることを特徴とする電気接続箱内導電体の接続構造。」(実用新案登録請求の範囲)
(1b)課題を解決するための手段と作用について、「本考案は上記問題点を解決した電気接続箱内導電体の接続構造を提供するもので、電気接続箱内に絶縁板を介して多層に配置された導電体が相互に接続されている電気接続箱内導電体の接続構造において、同一層内、または異なる層内の導電体が超音波溶接により相互に接続されていることを第1考案とし、同一層内、または異なる層内の導電体がボンディングワイヤーにより相互に接続されていることを第2考案とするものである。上述のように、導電体相互を超音波溶接により、または超音波溶接されたボンディングワイヤーを介して接続すると、同一層内または異なる層内の導電体の接続作業を効率良く行うことができ、また、電気的信頼性が高くなるため、導電体の設計パターンを合理化して電気接続箱を小型化することができる。」(段落【0004】)
(1c)実施例3として、「図3(a)、(b)は更なる他の実施例の部分斜視図と断面図である。本実施例では、導電体を構成するバスバー31a、31b、31cは同一層内にあり、バスバー31dは絶縁板34を介してバスバー31a、31b、31cに隣接した層内にある。絶縁板34には穴37を設け、この穴37に銅からなるボンディングワイヤー38を通し、ボンディングワイヤー38の両端をバスバー31b、31dに接続する。」(段落【0004】、図3)

(2-2)刊行物2
刊行物2には、自動車等で用いられているワイヤーハーネス用配線分岐箱に関して以下の記載がある。
(2a)「(1)箱本体内に複数の内部配線板が重ね合わされず平面的に配設され、前記内部配線板に対する絶縁電線の接続は直接接続部によりコネクタを介さないで接続されていることを特徴とするワイヤーハーネス用配線分岐箱。
(2)前記直接接続部における前記絶縁電線は切断されずに前記内部配線板に接続されている実用新案登録請求の範囲第1項に記載のワイヤーハーネス用配線分岐箱。」(実用新案登録請求の範囲)
(2b)従来の技術とその問題点について、「自動車用ワイヤーハーネスにおいては、ワイヤーハーネス中の絶縁電線(自動車用低圧ビニル電線)の途中で、分岐線(自動車用低圧ビニル電線)を接続して分岐させる必要のあることが多い。・・・このため、最近、配線分岐箱と称するものが採用されつつある。このものは、箱の内部で前述したようなジョイントを回路板で行うものである。回路板は黄銅板の打抜き加工等で形成されている。・・・しかしながら、従来の配線分岐箱は、一枚毎に異った形状のかなり複雑形状の回路板を多数(通常20〜40個)作製する必要があり、打抜用金型の製作費が高価となり、コストアップする欠点がある。また、多数の回路板は層にして重ね、層間には絶縁板を介在させているので、全体の形状が大型化する欠点がある。」(明細書第1頁下から4行〜2第頁16行)、
(2c)実施例として、「第1図及び第2図に示すように本実施例のワイヤーハーネス用配線分岐箱は、ポリプロピレン等の如き硬質プラスチックよりなる箱本体1の内部に、コネクタハウジング2,2’、2”及びヒューズやリレー等の配線器具3が同時射出成型又は後からの取付けにより配設されている。また、箱本体1内には本考案の要部をなす内部配線板4がコネクタハウジング2,2’、2”や配線器具3等の寸法形状等に応じて整形されて重ね合せることなく位置を異にして平面的に配置されている。・・・このような内部配線板4は、銅合金等の電気伝導体よりなる板金を打抜き・整形加工して形成されている。複数の絶縁電線5よりなるハーネス幹線6,6’は、箱本体1にクランプ7,7’で固定されている。箱本体1内に入った各絶縁電線5の或るものは先端に接触子8を圧着してコネクタハウジング2,2”に接続され、また他の或るものは配線器具3の電極3Aに溶接等による直接接続部9で接続し、更に或るものは内部配線板4に溶接等による直接接続部10で接続されている。内部配線板4に対する絶縁電線5の接続は、第2図に示すように、絶縁電線5の途中で絶縁被覆5aを一部除去して芯線導体5bを露出させ、この露出した芯線導体5bを切断せずに内部配線板4に溶接等による直接接続部10で接続するか、或は絶縁電線5の先端の絶縁被覆5aを一部除去して芯線導体5bを露出させ、この露出した芯線導体5bの先端を溶接等による直接接続部10で内部配線板4に接続する。」(明細書第2頁下末行〜第4頁9行、第1図、第2図)。

(2-3)刊行物3
刊行物3には、レーザによる電気接続部の溶着構造について、以下の記載がある。
(3a)「【請求項1】電線や薄型のフレキシブルプリント回路等の導電接続部材を、対向する導電金属部材で挟持させ、該導電金属部材の上から該導電接続部材に向けてレーザを照射して、該導電接続部材と該対向する導電金属部材とを相互に溶着させてなることを特徴とするレーザによる電気接続部の溶着構造」(特許請求の範囲【請求項1】
)
(3b)産業上の利用分野について、「本発明は、レーザを用いて細径の被覆単線や薄型のフレキシブルプリント回路等の導電接続部材を端子やブスバー等の導電金属部材に強固に且つ電気的に溶着接続させた構造に関するものである。」(段落【0001】)
(3c)従来技術について、「図21は、従来のレーザによる電気接続部の溶着構造を示すものである。この構造は、端子やブスバー等の導電金属板80の表面上に被覆電線81の導体部(素線束)82を載置させ、該導体部82に対して上方から垂直にレーザ83を照射させて、該導体部82と導電金属板80とを溶着接続させるものである。」(段落【0002】、第21図)
(3d)第4実施例として、「図9〜11は、第四実施例として、縦ブスバーに被覆電線を溶着接続させる構造を示すものである。この構造は、電気接続箱等の絶縁樹脂基台39に縦ブスバー40を植設し、該縦ブスバー40の露出した上端面41と両側面42にかけて被覆電線43の導体部(素線束)44をほぐして均一に配置させ、その上から逆凹字形状の導電金属カバー45を圧入気味に覆設し、該導電金属カバー45の上壁46の上から被覆電線43の導体部44に向けてレーザ47を照射させ、該導電金属カバー45と電線導体部44と縦ブスバー40とを相互に溶着接続させるものである。(段落【0016】、第9〜11図)

(2-4)刊行物4
刊行物4には、電気接続箱の接続構造について、以下の記載がある。
「【請求項1】電気接続箱の内部回路を構成する導体と、ワイヤハーネスを構成している外部回路の電線との接続構造であって、外部回路の電線を電気接続箱のケースに開口した電線挿通口よりケース内部へ挿入し、該外部回路の電線の芯線と内部回路の導体とを溶接あるいは圧接端子を介して接続している電気接続箱の接続構造。
【請求項2】上記電気接続箱の内部回路を構成する導体が電線で、圧接端子を介して、外部回路の電線と接続している請求項1に記載の電気接続箱の接続構造。
【請求項3】上記電気接続箱の内部回路を構成する導体が電線で、該内部回路の電線と上記外部回路の電線との両方の端末より露出させた芯線同士を溶接して接続している請求項1に記載の電気接続箱の接続構造。
【請求項4】上記電気接続箱の内部回路を構成する導体がバスバーで、端末より露出された外部回路の電線の芯線と溶接して接続している請求項1に記載の電気接続箱の接続構造。
【請求項5】上記電気接続箱の内部回路を構成する導体がバスバーで、該バスバーに形成した圧接刃を有する外部端子部に、上記外部回路の電線を圧接して接続している請求項1に記載の電気接続箱の接続構造。
【請求項6】電気接続箱の内部回路を構成する電線を、該電気接続箱のケースに設けた電線挿通口より外部へと引き出し、他の電気接続箱のケースに設けた電線挿通口よりケース内部に挿入し、該他の電気接続箱の内部回路を構成する電線あるいはバスバーと圧接端子あるいは溶接で接続している電気接続箱の接続構造。
【請求項7】上記外部回路の電線は、ワイヤハーネスの幹線の電線群からなり、これら電線群の各電線を、上記電気接続箱に並設した電線挿通口より挿入して所要の内部回路の導体と接続している請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の電気接続箱の接続構造。」

(2-5)刊行物5
刊行物5には、細線のレーザ溶接方法について、以下の記載がある。
(5a)「あらかじめ端子側に細線が通過できる孔、あるいは細線が中に入るが通過できない貫通孔、あるいは細線の先端部を入れ込むことのできる凹部等の細線位置決め継手を用いることを特徴とする細線のレーザ溶接方法。」(特許請求の範囲)
(5b)細線及び溶接場所について、「本発明は芯径0.1mm以下の被覆線あるいは裸線などの腰の弱い細線を端子に迅速にかつ再現性よくレーザ溶接する際の端子の継手加工方法に関する。」(1頁左下欄10行〜13行)、及び、「被覆細線の溶接において安定した溶接部を得るには被覆のない線の端近傍を溶接すればよい。」(公報第1頁右下欄14行〜15行に)
(5c)レーザ溶接について、「これらの事を同時に可能にするのが、細線を溶接すべき端子の位置に、前もって、例えばエッチングあるいはレーザ等によって孔あるいは凹みを作っておくことである。そしてその孔に細線を通すか、細線をそのばね性を利用して凹みに押しつけるかしながら孔あるいは凹みの周辺部縁と細線の接触部近傍をレーザー光で溶かせばよい。」(公報2頁左上欄4行〜10行))
(5d)実施例について、「第1図は細線2が通過できる径をもつ孔6をエッチングにより作成した場合、第2図は細線2を位置決めできる程度の凹み7を同じくエッチングにより作成した場合、第3図は表面径が細線径2より大きく、裏面径が細線径より小さい孔8をレーザ加工により作成した場合を示す。厚さ0.01mm程度のポリウレタン4が被覆してある芯径0.04mmのCu被覆細線2を第1図に示すように孔6の中を通して厚さ0.087mm幅0.3mmのBe-Cuばね3の裏側にわずかに出すように位置決めするか、第2図および第3図に示すように凹み7あるいは孔8の中に細線2のばねを利用してわずかに押しつけるように位置決めする。このようにした後、Arなどのシールドガスを用いながら細線2とばね3の接触部近傍にレーザ光1があたるように照射すると良好な溶接部が得られる。」(公報第2頁左上欄13行〜右上欄9行、第1図〜第3図)

(2-6)刊行物6
刊行物6には、線材の溶接方法について、以下の記載がある。
(6a)「【請求項1】線材に高エネルギビームを照射して溶接を行うに際し、該線材の一部を圧延して板状部を形成した後、該板状部を被溶接材に重ね合わせて高エネルギビームを照射することを特徴とする線材の溶接方法。
・・・・・
【請求項3】被溶接材が、電気部品を構成する端子金具である請求項1または請求項2記載の線材の溶接方法。
・・・・・」(特許請求の範囲)
(6b)発明の作用について、「本発明によれば、溶接する線材に対し、あらかじめ圧延加工を施して板状部を形成し、この板状部を被溶接材に重ね合わせてレーザ光等の高エネルギビームを照射するようにしている。板状部は線材の直径に比較して厚みが薄いため、高エネルギビームの照射による溶融部の径を小さくして溶接することが可能となり、溶融部が溶け落ちて線材の溶断が発生することがなく、安定した溶接が実施できる。」(段落【0008】)
(6c)実施例について、「図12は、本発明の他の実施例に係わるもので、被溶接材として、電気部品を構成する板状の端子金具11と線材8とを溶接した状態を示している。本発明は、上記の例の他にも、種々の金属板や構造体等に細線を溶接する際に適用することができる。」(段落【0015】)

(3)補正発明と刊行物1記載の発明との対比・検討
(3-1)補正発明1について
(イ)刊行物1記載の発明
刊行物1の特許請求の範囲請求項2に記載された発明は、電気接続箱内に絶縁板を介して多層に配置された導電体が、同一層内、または異なる層内でボンディングワイヤーにより相互に接続されている接続構造に係るものであり(上記記載(1a)参照)、導電体はバスバー、ボンディングワイヤーはジャンパー線に相当するものであって、そのボンディングワイヤーは銅からなり(上記記載(1c)参照)、その接続方法は超音波溶接である(前記記載(1b)参照)ことから、刊行物1には、電気接続箱に収容され、所定のパターン部同士を電気的にジャンパー線で接続したバスバー構造であって、上記ジャンパー線を銅からなるボンディングワイヤーで構成して、上記バスバーの所定のパターン部同士に超音波溶接した電気接続箱のバスバー構造に係る発明が記載されている。

(ロ)一致点、相違点
そこで、補正発明1と上記刊行物1記載の発明とを比較すると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。

(一致点)
「電気接続箱に収容され、所定のパターン部同士を電気的にジャンパー線で接続したバスバー構造であって、上記ジャンパー線を、上記バスバーの所定のパターン部同士に溶接したことを特徴とする電気接続箱のバスバー構造。」

(相違点1)
補正発明1では、上記ジャンパー線を「被覆電線」で構成するのに対して、刊行物1記載の発明では、銅からなるボンディングワイヤーで構成する点。

(相違点2)
補正発明1では、ジャンパー線の溶接が「被覆電線の両端から被覆をそれぞれ剥離して両芯線端部を露出させるとともに、上記バスバーの所定のパターン部同士に、上記被覆電線の両芯線端部をそれぞれ挿入する挿入穴を形成して、この挿入穴に挿入した芯線端部を挿入穴の内縁部にレーザ溶接した」ものであるのに対し、刊行物1記載の発明では、超音波溶接するもので、バスバーの所定のパターン部同士に溶接のための工夫をすることは記載されていない点。

(ハ)相違点についての検討
刊行物2には、第2図に図示されているように、電気接続箱内に配置されたバスバー(内部配線板4)に溶接等で接続され、次いで該電気接続箱内の他の配線用部品に接続される電線として、被覆電線を使用することが記載されている(上記記載(2b)、(2c)参照)から、電気接続箱内であるバスバーの所定のパターン部と他のバスバーの所定のパターン部とを電気的に接続するためのジャンパー線として被覆電線を用いること、すなわち上記相違点1に挙げられた構成を採用することは、当業者であれば容易になし得ることである。
そして、被覆電線の溶接に際して、被覆電線の端部から被覆を剥離して芯線端部を露出させることは刊行物2(上記記載(2c)参照)、刊行物3(上記記載(3c)(3d)参照)にも記載されているように常套手段として知られ、また、レーザ溶接も刊行物3、刊行物5及び刊行物6に記載されているように溶接手段としてこの出願前広く知られているものであり、さらに、溶接される板状の端子に被覆電線の芯線端部を挿入する挿入穴を形成して、この挿入穴に挿入した芯線端部を穴の内縁部にレーザ溶接することも刊行物5に記載されている(上記記載(5b)〜(5d)参照)ことから、被覆電線を溶接してバスバーの所定のパターン部同士を電気的に接続する際に、被覆電線の両端から被覆をそれぞれ剥離して両芯線端部を露出させるとともに、バスバーの所定のパターン部同士に、上記被覆電線の両芯線端部をそれぞれ挿入する挿入穴を形成して、この挿入穴に挿入した芯線端部を挿入穴の内縁部にレーザ溶接すること、すなわち上記相違点2に挙げられた構成を採用することは、当業者であれば容易になし得ることである。
さらに、上記相違点に挙げられた構成を採用した効果についてみても、予測された範囲内のものであって格別のものではない。
したがって、補正発明1は、本願出願前に頒布された上記刊行物1〜3、5、6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3-2)補正発明2について
(イ)刊行物1記載の発明
刊行物1には、前記(3-1)(イ)で述べた点に加え、2つのバスバーの上面にボンディングワイヤーがそれぞれ当てがわれて溶接されていることが記載されている(図3(a)、(b)参照)から、刊行物1には、電気接続箱に収容され、所定のパターン部同士を電気的にジャンパー線で接続したバスバー構造であって、上記ジャンパー線を銅からなるボンディングワイヤーで構成して、このボンディングワイヤーの端部を上記バスバーの所定のパターン部同士の上面にそれぞれ当てがって、該端部をパターン部の上面に超音波溶接した電気接続箱のバスバー構造が記載されている。

(ロ)補正発明2と刊行物1記載の発明との対比
そこで、補正発明2と上記刊行物1記載の発明を比較すると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。

(一致点)
「電気接続箱に収容され、所定のパターン部同士を電気的にジャンパー線で接続したバスバー構造であって、上記ジャンパー線の端部を、上記バスバーの所定のパターン部同士の上面にそれぞれ当てがって、該端部をパターン部の上面に溶接したことを特徴とする電気接続箱のバスバー構造。」

(相違点1)
上記ジャンパー線を、補正発明2では「被覆電線」で構成するのに対して、刊行物1記載の発明では、銅からなるボンディングワイヤーで構成する点。
(相違点2)
ジャンパー線の溶接が、補正発明2では、「被覆電線の両端から被覆をそれぞれ剥離して両芯線端部を露出させるとともに、上記被覆電線の両芯線端部の外周面に偏平な面をそれぞれ形成して、この両芯線端部の偏平な面を上記バスバーの所定のパターン部同士の上面にそれぞれ当てがって、この芯線端部をパターン部の上面にレーザ溶接した」ものであるのに対し、刊行物1記載の発明では、超音波溶接するもので、ボンディングワイヤーにも溶接のための工夫をすることは記載されていない点。

(ハ)相違点についての検討
相違点1については、補正発明1について上記(3-1)(ハ)で検討したとおり、当業者であれば容易に想到し得る事項である。
そして、被覆電線の溶接に際して、被覆電線の端部から被覆を剥離して芯線端部を露出させることは刊行物2(上記記載(2c)参照)、刊行物3(上記記載(3c)(3d)参照)にも記載されているように常套手段として知られ、また、レーザ溶接も刊行物3、刊行物5及び刊行物6に記載されているように溶接手段としてこの出願前広く知られているものであり、さらに、レーザ溶接する細線の端部の外周面に偏平な面を形成して、この細線端部の偏平な面を溶接される板状の端子の上面に当てがって、細線端部を端子の上面にレーザ溶接することが、刊行物6に記載されていることから、被覆電線を溶接してバスバーの所定のパターン部同士を電気的に接続する際に、被覆電線の両端から被覆をそれぞれ剥離して両芯線端部を露出させるとともに、上記被覆電線の両芯線端部の外周面に偏平な面をそれぞれ形成して、この両芯線端部の偏平な面を上記バスバーの所定のパターン部同士の上面にそれぞれ当てがって、この芯線端部をパターン部の上面にレーザ溶接すること、すなわち上記相違点2に挙げられた構成を採用することは、当業者であれば容易になし得ることである。
さらに、上記相違点に挙げられた構成を採用した効果についてみても、予測された範囲内のものであって格別のものではない。
したがって、補正発明2は、本願出願前に頒布された上記刊行物1〜3、5、6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである

III.本願発明について
1.本願発明
平成14年7月3日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、出願当初の明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明2」、「本願発明3」という。)

「【請求項1】電気接続箱に収容され、所定のパターン部同士を電気的にジャンパー線で接続したバスバー構造であって、上記ジャンパー線を被覆電線で構成して、この被覆電線の両端から被覆をそれぞれ剥離した両芯線端部を上記バスバーの所定のパターン部にそれぞれ溶接したことを特徴とする電気接続箱のバスバー構造。
【請求項2】上記バスバーの所定のパターン部同士に、上記被覆電線の両芯線端部をそれぞれ挿入する挿入穴を形成して、この挿入穴に挿入した芯線端部を挿入穴の内縁部にレーザ溶接した請求項1に記載の電気接続箱のバスバー構造。
【請求項3】上記被覆電線の両芯線端部の外周面に偏平な面をそれぞれ形成して、この両芯線端部の偏平な面を上記バスバーの所定のパターン部同士の上面にそれぞれ当てがって、この芯線端部をパターン部の上面にレーザ溶接した請求項1に記載の電気接続箱のバスバー構造。」

2.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、およびその記載事項は、前記II.2.(2)に記載したとおりである。

3.本願発明1について
(イ)本願発明1と刊行物1記載の発明との対比
刊行物1には、前記II.2.(3)(3-1)(イ)に記載したとおりの発明が記載されているから、本願発明1と刊行物1記載の発明を比較すると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。

(一致点)
「電気接続箱に収容され、所定のパターン部同士を電気的にジャンパー線で接続したバスバー構造であって、上記ジャンパー線を、上記バスバーの所定のパターン部にそれぞれ溶接したことを特徴とする電気接続箱のバスバー構造。」

(相違点1)
上記ジャンパー線を、本願発明1では「被覆電線」で構成するのに対して、刊行物1記載の発明では、銅からなるボンディングワイヤーで構成する点。

(相違点2)
ジャンパー線の溶接が、本願発明1では、「被覆電線の両端から被覆をそれぞれ剥離した両芯線端部を上記バスバーの所定のパターン部に溶接した」ものであるのに対し、刊行物1記載の発明では、ボンディングワイヤーを溶接するので、被覆の剥離を行うことは記載されていない点。

(ロ)相違点についての検討
相違点1については、前記II.3.(3-1)(ハ)で検討したとおり、当業者であれば容易に想到し得る事項である。
また、被覆電線の溶接に際して、被覆電線の両端から被覆をそれぞれ剥離した両芯線端部を溶接することを含む相違点2の構成を採用することも、前記II.3.(3-1)(ハ)で検討したとおり何ら困難性は認められず、またその効果も格別のものでない。
したがって、本願発明1は、本願出願前に頒布された上記刊行物1〜3、5、6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.本願発明2、3について
本願発明2は、被覆電線の両端から被覆をそれぞれ剥離した両芯線端部が露出させられることが限定されていないだけで、補正発明1と実質的に同じものであるので、前記II.2.(3)(3-1)で補正発明1について検討したとおり、本願出願前に頒布された上記刊行物1〜3、5、6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本願発明3も、同様に、被覆電線の両端から被覆をそれぞれ剥離した両芯線端部が露出させられることが限定されていないだけで、補正発明2と実質的に同じものであるので、前記II.2.(3)(3-2)で補正発明2について検討したとおり、本願出願前に頒布された上記刊行物1〜3、5、6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明1〜3は、上記刊行物1〜3、5、6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-09-22 
結審通知日 2005-09-27 
審決日 2005-10-13 
出願番号 特願平10-19454
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02G)
P 1 8・ 575- Z (H02G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清田 健一  
特許庁審判長 鐘尾 みや子
特許庁審判官 長井 真一
菊井 広行
発明の名称 電気接続箱のバスバー構造  
代理人 麻野 義夫  
代理人 小谷 悦司  
代理人 麻野 義夫  
代理人 植木 久一  
代理人 植木 久一  
代理人 麻野 義夫  
代理人 小谷 悦司  
代理人 植木 久一  
代理人 小谷 悦司  

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