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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1127028
審判番号 不服2003-464  
総通号数 73 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-01-09 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-01-09 
確定日 2005-11-24 
事件の表示 平成6年特許願第162865号「医療診断装置」拒絶査定不服審判事件〔平成8年1月9日出願公開、特開平8-607〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成6年6月20日の出願であって、平成14年12月10日に拒絶の査定がなされ、これに対し、平成15年1月9日に不服の審判の請求がなされたものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、出願当初の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。

「【請求項1】被検体を検査する診断装置本体と、被検体を載置して前記診断装置本体に対して進退移動させる寝台とを備え、前記診断装置本体と前記寝台が設置された検査室とは別の操作室で前記診断装置本体と前記寝台とが遠隔操作される医療診断装置において、
検査終了後に前記診断装置本体と前記寝台とを初期状態に復帰させる終了作業を制御する制御手段と、前記制御手段を起動させる検査終了スイッチとを備え、前記検査終了スイッチを前記操作室に設けたことを特徴とする医療診断装置。」

2.刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-193267号公報(以下「引用例1」という。)には「被検体載置装置」に関し、次の事項が図面とともに記載されている。

(記載事項a)
「(従来の技術)
X線CT装置あるいは磁気共鳴装置などで用いられている被検体載置台に患者を乗せる場合には、被検体載置台を患者が乗れる高さに一旦移動させてから乗せている。その後、この載置台を診断可能な高さに移動させ、ガントリの被検体挿入口へ挿入して診断を実行している。
診断が終了すると、載置台を挿入口から引き出し、患者を乗せた高さに再び移動させている。
このような、載置台の高さの移動や、挿入口からの引き出し操作は、オペレータがコンソールなどからマニュアル操作によって毎回行っている。
(発明が解決しようとする課題)
しかしながら、載置台の移動や、挿入口からの引き出し操作を毎回マニュアル操作で行うのは、オペレータにとって煩わしい作業である。特に、診断終了後、載置台を挿入口から引き出し、患者を乗せた時と同じ高さに、再びマニュアルで移動させるのは無駄な操作である。
そこでこの発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、診断終了後などにおいて、載置台を挿入口から引き出し、患者を乗せた時と同じ高さに移動させる操作を自動で行えるようにし、オペレータの作業負担を軽減することができる被検体載置装置を提供することにある。」(1頁左下欄19行ないし2頁左上欄4行)

(記載事項b)
「第1図は、この発明の被検体載置装置に係わる一実施例を示す概念図である。
同図において、被検体載置台1は、その上面の天板3に被検体(・・・)を載置し、移動機構2によって上下移動するものであり、天板3がガントリ(・・・)の挿入口へ水平移動することにより、被検体を挿入口へ挿入するものである。・・・」(2頁右上欄6ないし15行)

(記載事項c)
「第1図に戻り、CPU11は、この発明の被検体載置装置全体を制御するものであり・・・後述する引き出しSW15から与えられる指示により、挿入口に挿入されている天板3を引き出し、メモリ13に記憶させている高さ情報で設定される高さに、被検体載置台1を移動させるよう移動機構2に命令するものである。
メモリ13は、CPU11の制御により、被検体載置台1の高さ情報を記憶するものである。
引き出しSW15は、コンソール(・・・)などに設けられており、診断終了後、押下されることによって天板3を挿入口から引き出し、被検体載置台1をメモリ13に記憶させている高さ情報で設定される高さに移動させるようCPU11へ指示を与えるものである。」(2頁左下欄6行ないし右下欄4行)

(記載事項d)
「この後、患者を天板3へ載置し、従来どおり、天板3を診断可能な高さへ移動させ、挿入口へ挿入して診断を行う。
診断が終了すると、引き出しSW15を押下する。これにより、CPU11へ被検体載置台1の移動指示が出力される。
この移動指示を入力したCPU11から、被検体載置台1を移動させるよう移動命令が移動機構2へ出力される。
CPU11から命令を受けた移動機構2により、天板3が挿入口から引き出され、さらに、被検体載置台1が患者を乗せた高さに近付くように移動される。」(2頁右下欄19行ないし3頁左上欄11行)

(記載事項e)
「このように、患者を乗せたときの高さをメモリ13に記憶させることにより、診断終了後、被検体載置台1を再度患者を乗せたときの高さに移動させたい場合には、引き出しSW15を押下するだけて、自動的にその高さへ被検体載置台1を移動させることができる。
なお、引き出しSW15は、コンソールあるいは被検体載置台1など、好みのところに設ければよく、設定箇所に限定されるものではない。
[発明の効果]
以上説明してきたように、この発明による被検体載置装置であれば、挿入口に挿入されている被検体載置台を引き出し、患者を乗せた時と同じ高さに移動させる操作を、容易な操作で、しかも自動で行えるようにした。これにより、オペレータの作業負担を軽減させるることができる。」(3頁左上欄20行ないし右上欄15行)

刊行物1における上記記載事項aないしe並びに第1図及び第2図の記載によれば、刊行物1には次の発明が記載されているものと認められる(以下「刊行物1記載の発明」という。)。

(刊行物1記載の発明)
「患者を診断するX線CT装置あるいは磁気共鳴装置(以下「X線CT装置等」という。)本体と、患者を載置して前記X線CT装置等の挿入口へ水平移動させる被検体載置台1とを備え、前記X線CT装置等本体と前記被検体載置台1とが操作される医療診断装置において、
診断終了後、前記被検体載置台1を挿入口から引き出し、さらに、患者を乗せた高さに近付くように移動させるべく移動機構2を制御するCPU11と、押下されることにより前記CPU11に対し前記被検体載置台1の移動指示を出力する引き出しSW15とを備え、前記引き出しSW15をコンソールに設けたことを特徴とする医療診断装置。」

3.対比・判断
刊行物1記載の発明における「患者」「X線CT装置等」「被検体載置台1」が、本願発明における『被検体』『診断装置』『寝台』に相当することは明らかであり、
刊行物1記載の発明における「被検体載置台1を挿入口から引き出し、さらに、患者を乗せた高さに近付くように移動させ」た状態は、本願発明における『寝台の初期状態』に相当し、この状態を実現すべく移動機構2を制御する「CPU11」を含む部分は、本願発明における『制御手段』に相当するということができ、
刊行物1記載の発明における「引き出しSW15」は、前記「CPU11」に対し、診断終了後の被検体載置台1の移動指示を出力するから、本願発明における『検査終了スイッチ』に相当する。

してみると、本願発明と刊行物1記載の発明とは、

(一致点)
「被検体を検査する診断装置本体と、被検体を載置して前記診断装置本体に対して進退移動させる寝台とを備え、前記診断装置本体と前記寝台とが操作される医療診断装置において、
検査終了後に前記寝台を初期状態に復帰させる終了作業を制御する制御手段と、前記制御手段を起動させる検査終了スイッチとを備えたことを特徴とする医療診断装置。」

である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点1>
本願発明では、『診断装置本体と寝台』とが、両者が設置された『検査室とは別の操作室』から『遠隔』操作され、制御手段を起動させる『検査終了スイッチ』も前記『操作室』に設けられるのに対し、
刊行物1記載の発明では、『診断装置本体と寝台』とが如何なる室から操作され、『検査終了スイッチ』が如何なる室に設けられるのかが明らかでない点。

<相違点2>
検査終了スイッチにより起動される『終了作業を制御する制御手段』により、本願発明では、『寝台』と『診断装置本体』の両者を初期状態へ復帰させるのに対し、刊行物1記載の発明では『診断装置本体』を復帰させる点については記載がない点。

上記相違点1について検討する。
CT装置の架台(診断装置本体)及び寝台の操作を、両者が設置されたスキャナ室(検査室)とは別の操作室から遠隔操作により行うことは、特開昭61-122848号公報にも記載されるように周知であるから、刊行物1記載の発明において、『診断装置本体と寝台』の操作を『検査室とは別の操作室』から『遠隔』操作により行うようにしたり、制御手段を起動させる『検査終了スイッチ』を前記『操作室』に設けることは、当該診断装置による操作者の被爆の危険性や当該診断装置が対象とする被検査者が如何なる者であるのか等を考慮して当業者が当然に決定し得べき事項である。

上記相違点2について検討する。
画像診断装置本体について、1被検者の検査終了時に当該被験者に係る検査条件の解除処理等を行う必要があることは、特開平4-200449号公報〔2頁左上欄1ないし10行〕に従来技術として記載されているように自明であり、機器の共用化によるコスト削減や一連の作業の自動化による操作者の負担軽減は、機器・システム構築における常套手段であるから、刊行物1記載の発明において、『終了作業を制御する制御手段』により『診断装置本体』と『寝台』の両者を初期状態に復帰させるよう制御するものとし、刊行物1記載の発明の『検査終了スイッチ』により起動させるものとすることは、検査プロセスの自動化により操作者にもたらされる利便性と被検査者に負担を与えたり危険に晒す可能性等を比較考慮して当業者が適宜になし得べき事項である。

そして、本願発明が奏する効果も、刊行物1に記載された事項及び本件出願時に周知の技術的事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。

なお、請求人は、審判請求書において、刊行物1には「操作室に検査終了スイッチを設ける」構成を示唆する記載はないという旨主張しているが、刊行物1には「診断が終了すると、引き出しSW15を押下する。これにより、CPU11へ被検体載置台1の移動指示が出力される。」(記載事項d参照)との記載があり、「引き出しSW15」が『検査終了スイッチ』に相当することは明らかであり、刊行物1には「なお、引き出しSW15は、コンソールあるいは被検体載置台1など、好みのところに設ければよく、設定箇所に限定されるものではない。」(記載事項e参照)との記載があり、「引き出しSW15」を『操作室』に設けることが示唆されているから、かかる主張には理由がない。

また、請求人は、本願発明は、被検体が自分で歩行、寝台への乗り降りが可能な場合において、術者は操作室にいながらにして被検体を入れ替えることができ、術者の労力軽減及び被検体の入れ換え時間の低減を可能にするという作用効果を奏すると主張しているが、刊行物1にも、診断終了後における寝台の復帰動作の自動化により、オペレータの作業負担を軽減できることが記載(記載事項a参照)されているように、労力軽減及び時間短縮は機器の操作の自動化による一般的な効果にすぎない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-09-22 
結審通知日 2005-09-27 
審決日 2005-10-13 
出願番号 特願平6-162865
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小田倉 直人  
特許庁審判長 高橋 泰史
特許庁審判官 水垣 親房
長井 真一
発明の名称 医療診断装置  
代理人 喜多 俊文  
代理人 江口 裕之  

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