• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A62B
管理番号 1127224
審判番号 不服2004-24131  
総通号数 73 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-05-18 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-11-25 
確定日 2005-12-01 
事件の表示 平成 9年特許願第292827号「粘着剤を利用したマスク」拒絶査定不服審判事件〔平成11年5月18日出願公開、特開平11-128378〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成9年10月24日の出願であって、その請求項1〜7に係る発明は、平成16年9月1日付けの手続補正書で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された事項により特定されるものと認められ、その請求項1に係る発明は次のとおりである。
「高粘弾性の粘着剤がマスクの基布の周辺部で顔に接する部分に設けられており、前記粘着剤が、吸湿性の高含水性のジェル、または吸湿剤を含んだ高含水性のジェルであることを特徴とするマスク。」
(以下「本願発明」という。)

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に国内において頒布されている刊行物である、
実願平1-135494号(実開平3-75758号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、「使い捨てマスク」に関して、
(イ)「所要の通気性を有する基布の一側面における周縁部に、接着剤を塗布した粘着部を有したマスクとしているので、マスクはワンタッチで顔面に隙間なく密着させることができ、ノーズフィット性がよく、隙間から外気が入ったり、息が漏れたりすることを完全に防止してマスクとしての機能を最大限に発揮することができる。そのため眼鏡をかけても曇ることがなく、更にかけひもがないので、耳に痛みを感じることもない。」(3頁20行〜4頁9行)、
(ロ)「第1図、第2図は本考案の一実施例であり、顔面に密着した際、息苦しさのないような所要の通気性を有するガーゼ又は伸縮性不織布等からなる基布1を、顔面の口腔、鼻部を覆って顔面にフィットしやすいような形状、寸法・・・に切断し、該基布1の一側面2の周縁部全周に接着剤を一様に塗布して粘着部3を形成する。」(4頁13〜20行)と記載されており、
顔面に密着する粘着部3を形成する接着剤は当然に高粘弾性であると解されるから、これらの記載および第1〜4図を参照すると、引用例には次の発明が記載されているものと認める。かっこ内は対応する引用例における構成・用語である。
「高粘弾性の粘着剤(粘着部を形成する接着剤)がマスクの基布(基布1)の周辺部(周縁部)で顔(顔面)に接する部分に設けられているマスク。」
(以下「引用発明」という。)

また、査定時に周知例として提示した、特開平6-98932号公報(以下、「周知例1」という。)には、「皮膚保護材組成物」に関して、
(ハ)「感圧粘着剤成分中に親水性成分と制菌性を与えるための有効量のリンゴ由来ペクチンとを含有することを特徴とする皮膚保護材組成物。」(【請求項1】)、
(ニ)「本発明は、医療用の皮膚保護材組成物、特に長期間皮膚に固定するテープ類に使用される・・・皮膚保護材組成物に関する。」(段落【0001】)、
(ホ)「親水性成分としては、天然、半合成、合成のいずれでもよく、例えば天然親水性成分としては・・・ゼラチン、・・等の天然水溶性高分子、・・・ポリアクリル酸ナトリウム・・・等の半合成及び合成の親水性ポリマー、アクリル酸とデンプン等のような合成ポリマーと天然ポリマーとを合成したものがある。」(段落【0009】)と記載されている。

同じく、査定時に周知例として提示した、特開昭61-187867号公報(以下、「周知例2」という。)には、「医療用粘着シートもしくはテープ」に関して、
(ヘ)「本発明は医療用粘着シートもしくはテープ、特に、親水性と抗菌性とを有するアクリル系粘着剤層を基材上に設けた医療用粘着シートもしくはテープに関する。」(2頁左上欄4〜7行)、
(ト)「アクリル系粘着剤に親水性を付与するため、(メタ)アクリル酸、アクリルアミド、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルなどの親水性単量体を共重合させることも行われている。」(2頁右下欄17〜20行)、
(チ)「外傷部手当て用のガーゼ、パッドなどを皮膚表面に貼付して固定するかまたはガーゼ付きの大型絆創膏(ドレッシング用テープ)として用いる。」(7頁左上欄19行〜右上欄1行)、
(リ)「シートもしくはテープに用いられる粘着剤は吸水性・・に優れ、」(7頁左下欄16、17行)と記載されている。

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、両者は、
「高粘弾性の粘着剤がマスクの基布の周辺部で顔に接する部分に設けられているマスク」の点で一致し、下記の点で相違している。

相違点:粘着剤が、本願発明では吸湿性の高含水性のジェルまたは吸湿剤を含んだ高含水性のジェルであるのに対し、引用発明では不明である点。

相違点について検討する。
皮膚に接する部分に設けられる粘着剤に親水性を付与したものは、上記周知例1、2にも記載されているように周知技術にすぎず、特に周知例1には、本願明細書の段落【0015】で「高含水性のジェル」として例示しているアクリル酸化合物やゼラチン等の水溶性高分子が記載されており、該粘着剤を、引用発明のマスクの基布の周辺部で顔に接する部分に設けられている粘着剤として用い、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得ることにすぎない。
そして、本願発明の有する効果も、当業者が引用発明及び周知技術から予測できる程度のものであって、格別顕著なものとはいえない。

4.むすび
以上、本願発明は、引用発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-09-28 
結審通知日 2005-10-04 
審決日 2005-10-18 
出願番号 特願平9-292827
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A62B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 出口 昌哉  
特許庁審判長 安藤 勝治
特許庁審判官 南澤 弘明
木原 裕
発明の名称 粘着剤を利用したマスク  
代理人 野▲崎▼ 照夫  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ