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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F02F
管理番号 1127266
審判番号 不服2003-4463  
総通号数 73 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-03-19 
確定日 2005-12-01 
事件の表示 平成11年特許願第 23908号「トランクピストン形ディーゼル機関」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 9月28日出願公開、特開平11-264342〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本件出願は、平成3年8月29日に出願した特願平3-218587号の一部を平成11年2月1日に新たな特許出願としたものであって、その請求項1に係る発明は、平成17年8月19日付けの手続補正書によって補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものであると認められる。(以下、「本願発明」という。)

「【請求項1】 圧縮リングと油掻きリングのある上部ピストン部下端に、下部ピストン部を少なくともシリンダ径以上の長さにわたって延設するとともに、この延設した部分にピストンピンを配設して連接棒と連結し、
且つ、シリンダ部分を少なくとも上記下部ピストン部の長さ分だけ寸法的に長く延設し、このシリンダ部分に上記上部ピストン部と下部ピストン部を往復動可能に配置し、
上記シリンダ部分の下部の、下部ピストン部が爆発行程においてシリンダ部分に作用する側圧力が顕著に低下する領域に相当する部位に、少なくとも上記連接棒の厚み以上の幅の干渉防止用の凹部を形成し、
上記シリンダ部分を上記上部ピストン部と下部ピストン部が行程的に重複して往復動するよう構成されていることを特徴とする4サイクルトランクピストン形ディーゼル機関。」

2.引用文献記載の技術思想
(1)当審において平成17年6月20日付けで通知した拒絶の理由に引用された特開昭54-35509号公報(以下、「引用文献」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

ア.「クランク軸とピストンとを連動する接合棒の傾斜動作に当接しないようにシリンダスカート部の両側をコ形に切り欠くとともに、該シリンダスカート部の切り欠かない外周部を取り囲む円筒部と接合棒の傾斜動作に当接しないように前記切り欠き部分を覆って前記円筒部の両側に張り出した突出部とからなる押え金具を設けて、これをシリンダスカート部に嵌め込み強固に固定してなることを特徴とする低速4サイクルトランクピストン形長行程内燃機関。」(特許請求の範囲。「コ形」のコは、原文では下に開放したコである。)

イ.「4サイクル機関は吸気と排気とが別の行程で行われるため、2サイクル機関に比して吸排気効率が高く、長行程にすればこの利点はさらに高められる。
また4サイクル機関は、長行程に設計して低い回転数を選ぶことにより燃焼効率がよくなり、特に船用主機関として用いるときはプロペラ効率のよい状態で作動することになり、総合効率が大いによくなる。
そこで舶用機関としては長行程のものが求められるが、トランクピストン形の機関では、ピストン直径に対する行程長さの比が2倍を越すようになると、その構造上からクランク軸とピストンとを連動する接合棒の傾斜動作によつて、接合棒がシリンダ(シリンダライナー)のスカート部に喰い込むことになる。
すなわち第1図において、シリンダ(シリンダライナー)1はシリンダ外筒2の中に圧入嵌合し、シリンダ外筒2は架構3に取付けられ、接合棒4の一端はシリンダ1内を往復するピストン5に連動し、他端はクランク軸6のクランクピン6aに連動する構造になつているが、図に示すように上死点にあるピストン(ピストンピン)の位置5aが下死点の位置5bに至るような長行程の構造になると、接合棒4の傾斜動作によつて接合棒4の中央部4aが当接しないように、シリンダ1のスカー卜部1aをコ形に切り欠かねばならない。その切り欠き部分1bの幅は第2図に示すように接合棒4の中央部4aの厚さよりやや大きい寸法になる。」(1頁右下欄2行から2頁左上欄11行、「コ形」のコは、原文では下に開放したコである。)

ウ.「本発明はピストン直径に対する行程長さの比を2倍以上3倍にも達する長行程にして、しかも上記のような不具合が生じないように構成したものであつて、次にその内容を第3図以下の図面に示す実施例によつて説明する。
第3図においてシリンダ(シリンダライナー)7はシリンダ外筒8の中に圧入嵌合し、シリンダ外筒8は架構9に取付けられる。そして接合棒4の傾斜動作によつてその中央部4aが当接しないように、シリンダ7のスカート部7aには切り欠き部分7bを設ける。そして本発明においてはシリンダ7のスカート部7aの外周に頑丈な押え金具10を嵌め込み強固に固定するように構成してある。
押え金具10は円筒部10aと突出部10bとからなり、これらを一体にして形成してある。円筒部10aは接合棒4の中央部4aが当接しないように両側にコ形の切り欠き部分10cが設けてあり、円筒部10aの上端部の外周10dがシリンダ外筒8の下端部に印籠嵌合になつており、ボルト11で押え金具10とシリンダ外筒8とを強固に取付ける。円筒部10aの内孔は架構9から下方につき出したシリンダ7のスカート部7aの外周に極めて密に嵌合する。
押え金具10の突出部10bは、接合棒4の傾斜動作によってその中央部4aが当接しないようにコ形断面をなし、シリンダ7の切り欠き部分7bを覆うようにして円筒部10aの両側に張り出して設けられる。
このように押え金具10は円筒部10aと両側に張り出した突出部10bとからなり、連続壁面を形成して一体に設けられるが、機関が長行程になつてシリンダ7のスカート部7aが架構9から下方に非常に大きくつき出す場合には、前記のいろいろな欠点に対応してスカー卜部7aを強固に固定するために、第4図に示すように突出部10bの両側と架構9との間に、フイクサー金具12をそれぞれかけ渡すようにすれば有効である。
すなわち第5図に示す実施例では、押え金具10の突出部10bに設けたねじ孔10eにフイクサー金具12の一端をねじ込み、ナツト13をかけて固定する。また架構9の嵌入孔9aにフイクサー金具12の他端を挿嵌し、ナツト14、15をかけて固定するようになっている。」(2頁右上欄5行から2頁右下8行。「コ形の切り欠き部」のコは、原文では下に開放したコである。)

エ.「本発明はこのように架構の中につき出したシリンダスカー卜部を、接合棒の傾斜動作に当接しないように切り欠くとともに、このシリンダスカー卜部に押え金具を嵌め込み強固に固定してなるものであるから、ピストン直径に対する行程長さの比が2倍以上に及ぶ場合にも、下死点におけるピストンの反転時に生じる摩耗などの損傷を防ぎ、且つシリンダスカート部の切り欠き部分を強固に補強したので、さらに行程長さの比を3倍程度の長行程のものに構成すればますます低速機関になり、船用機関として効率のよいものが得られるという特長がある。」(2頁右下欄15行から3頁左上欄6行)

(2)ここで、上記記載事項ア.ないしエ.及び第1ないし5図から、次のことがわかる。
本発明は、クランク軸6とピストン5とを連動する接合棒4の傾斜動作に当接しないようにシリンダスカート部7aの両側をコ形に切り欠くとともに、該シリンダスカート部7aの切り欠かない外周部を取り囲む円筒部10aと接合棒4の傾斜動作に当接しないように前記切り欠き部分7bを覆って前記円筒部10aの両側に張り出した突出部10bとからなる押え金具10を設けて、これをシリンダスカート部7aに嵌め込み強固に固定してなることを特徴とする低速4サイクルトランクピストン形長行程内燃機関である。
第3図の本発明の実施例においても、第1図のものと同様に、接合棒4の一端はシリンダ7内を往復するピストン5に連動し、他端はクランク軸6のクランクピン6aに連動する構造になつており、切り欠き部分7bの幅は接合棒4の中央部4aの厚さよりやや大きい寸法になっている。第3図の本発明の実施例において、シリンダ7はシリンダ外筒8の中に圧入嵌合し、シリンダ外筒8は架構9に取付けられる。そして接合棒4の傾斜動作によつてその中央部4aが当接しないように、シリンダ7のスカート部7aには切り欠き部分7bを設け、シリンダ7のスカート部7aの外周に頑丈な押え金具10を嵌め込み強固に固定するように構成してある。押え金具10は円筒部10aと両側に張り出した突出部10bとからなり、連続壁面を形成して一体に設けられるが、機関が長行程になつてシリンダ7のスカート部7aが架構9から下方に非常に大きくつき出す場合には、フイクサー金具12によりスカー卜部7aを強固に固定している。通常、ピストン上部にはピストンリングが必ず装着されている。

(3)引用文献記載の技術思想
上記記載事項(2)より、引用文献には次の技術思想が記載されていると認められる。

「ピストンリングのあるピストン5を有し、シリンダ7を長く延設し、このシリンダ7に上記ピストンを往復動可能に配置し、上記シリンダ7のスカート部7aに、少なくとも接合棒4の厚み以上の幅の切り欠き部分7bを形成した低速4サイクルトランクピストン形長行程内燃機関。」(以下、「引用文献記載の技術思想」という。)

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用文献記載の技術思想を対比するに、引用文献記載の技術思想における「シリンダ7」、「スカート部7a」、「接合棒4」、「切り欠き部分7b」、「低速4サイクルトランクピストン形長行程内燃機関」は、本願発明における「シリンダ部分」、「シリンダ部分の下部」、「連接棒」、「干渉防止用の凹部」、「4サイクルトランクピストン形ディーゼル機関」にそれぞれ相当する。引用文献記載の技術思想の「ピストン」は、本願発明における上部ピストン部と下部ピストン部に相当するものといえる。

したがって、本願発明と、引用文献記載の技術思想は、
「上部ピストン部と下部ピストン部を有し、シリンダ部分を長く延設し、このシリンダ部分に上記上部ピストン部と下部ピストン部を往復動可能に配置し、上記シリンダ部分の下部に、少なくとも連接棒の厚み以上の幅の干渉防止用の凹部を形成した4サイクルトランクピストン形ディーゼル機関」である点で一致し、次の相違点で相違している。

(1)相違点1
本願発明においては、「圧縮リングと油掻きリングのある上部ピストン部下端に、下部ピストン部を少なくともシリンダ径以上の長さにわたって延設するとともに、この延設した部分にピストンピンを配設して連接棒と連結し、且つ、シリンダ部分を少なくとも上記下部ピストン部の長さ分だけ寸法的に長く延設し」、「上記シリンダ部分を上記上部ピストン部と下部ピストン部が行程的に重複して往復動するよう構成されている」に対し、引用文献記載の技術思想では、「ピストンリングのあるピストン5を有し、シリンダ7を長く延設し」た点。

(2)相違点2
本願発明では、「下部ピストン部が爆発行程においてシリンダ部分に作用する側圧力が顕著に低下する領域に相当する部位に、少なくとも上記連接棒の厚み以上の幅の干渉防止用の凹部を形成し」たのに対して、引用文献記載の技術思想では、シリンダ7のスカート部7aに少なくとも連接棒の厚み以上の幅の干渉防止用の凹部を形成した点。

4.判断
上記相違点について検討する。
(1)相違点1
圧縮リングと油掻きリングのある上部ピストン部下端に、下部ピストン部を延設したピストンは周知技術(特開昭48-82212号公報。日本機械学会内燃機関部門委員会著「機械工学講座内燃機関(上巻)」、第2版、日本機械学会、昭和33年2月1日、146、148頁。)である。
また、ピストン下部を長くすることも周知技術(特開昭48-82212号公報の第3図ハの1/5〜1/7なる指示部と4/5〜6/7なる指示部等。特開昭55-128622号公報の1頁右下欄1〜6行等。日本機械学会内燃機関部門委員会著「機械工学講座内燃機関(上巻)」、第2版、日本機械学会、昭和33年2月1日、143〜153頁、特に151頁の27行。)であり、ピストン長が長ければ、ピストンの単位面積当たりの側圧力が低減することは当然予測されることであり、下部ピストン部をシリンダ径以上の長さとしたことによる格別の臨界的効果も認められない。さらに、下部ピストン部にピストンピンを配設して連接棒と連結することは周知技術(特開昭51-41118号公報、実願昭57-4619号(実開昭58-108252号)のマイクロフィルム、特開昭48-82212号公報の第1、10図の丸部)である。
そして、本願発明の「シリンダ部分を少なくとも上記下部ピストン部の長さ分だけ寸法的に長く」とは、何に対して下部ピストン部の長さ分だけ寸法的に長くするとは記載されていないから、この構成は単に下部ピストン部の長さ分に応じてシリンダ部分を寸法的に長くしたことにすぎない。また、シリンダ長さやシリンダの下部に設けた凹部を、ピストンが下死点に来てもピストンリングのシール作用を阻害しないようにすることは、当業者が当然行うべき設計的事項(特開昭62-82261号公報2頁右上欄7行〜左下欄1行等参照)にすぎない。
よって、シリンダ部分を少なくとも下部ピストン部の長さ分だけ寸法的に長く延設し、シリンダ部分を上部ピストン部と下部ピストン部が行程的に重複して往復動するよう構成するとともに、4サイクルトランクピストン形ディーゼル機関として不都合が生じないように機関寸法を実施可能に適宜設定することは、引用文献記載の技術思想より当業者が容易になし得たことにすぎない。
したがって、引用文献記載の技術思想に、上記周知技術を適用して、上記相違点1に係る本願発明のような構成とすることは、当業者が容易に想到しうる程度のものと認められる。

(2)相違点2
爆発行程において、シリンダ部分に作用する側圧力は、上死点直後の極大値を超えた後下死点近くでは低下していることは通常知られており(特開昭63-45425号公報、特開昭55-32981号公報)、引用文献記載の技術思想のシリンダ部分のスカート部7aは、爆発行程においてシリンダ部分に作用する側圧力が顕著に低下する領域に相当する部位といえるものである。また、側圧力に関して不利な状態の出現を招かないようにすることは技術常識であるから、上記相違点2に係る本願発明の構成のように、引用文献記載の技術思想を、下部ピストン部が爆発行程においてシリンダ部分に作用する側圧力が顕著に低下する領域に相当する部位に、少なくとも連接棒の厚み以上の幅の干渉防止用の凹部を形成するように構成することは、当業者が容易になし得る程度の事項にすぎない。

以上のように、本願発明は、引用文献記載の技術思想、上記周知技術に基づいて、当業者が容易に想到することができたものと認められ、しかも、本願発明は、全体構成でみても、引用文献記載の技術思想、上記周知技術から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとも認められない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用文献記載の技術思想、上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-09-28 
結審通知日 2005-10-04 
審決日 2005-10-17 
出願番号 特願平11-23908
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 正和村上 哲八板 直人  
特許庁審判長 大橋 康史
特許庁審判官 関 義彦
清田 栄章
発明の名称 トランクピストン形ディーゼル機関  
代理人 古川 安航  
代理人 西谷 俊男  
代理人 角田 嘉宏  
代理人 高石 ▲さとる▼  

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