• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特174条1項  B41N
審判 全部申し立て 2項進歩性  B41N
審判 全部申し立て 発明同一  B41N
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  B41N
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B41N
管理番号 1127305
異議申立番号 異議2003-73359  
総通号数 73 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-10-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-22 
確定日 2005-09-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3461377号「画像記録材料」の請求項1ないし8に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3461377号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3462377号に係る手続の経緯の概要は、以下のとおりである。
平成6年4月18日 特許出願
平成15年8月15日 特許権の設定の登録
平成15年10月27日 特許掲載公報の発行
平成15年12月22日 コダック ポリクロームグラフィックス株式 会社より特許異議の申立て
平成17年4月13日付 取消理由の通知
平成17年6月21日 意見書及び訂正請求書の提出
平成17年8月12日付 訂正拒絶理由
平成16年8月23日 手続補正書(訂正請求書)

第2 訂正の適否
1 訂正請求書の補正について
上記手続補正は、訂正請求書の「(3)訂正事項」欄に記載された訂正事項e〜h及び、「(4)請求の原因」欄に記載された、訂正事項a〜rについての説明のうちの、訂正事項e〜hに関する記載を削除し、併せて、訂正事項の項記号及び請求の原因の項番号を整理するものであるから、これらの補正は、訂正請求書に記載された訂正事項の削除に該当するものであって、その要旨を変更するものではない。

2 訂正の内容
前述のとおり、訂正請求書の補正は認められるので、本件訂正請求は、本件明細書を、補正後の訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は、次のとおりである。
(1) 訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1に「アルカリ可溶性結着剤と」とあるのを、「アルカリ可溶性結着剤としてアクリル樹脂又はウレタン樹脂を含み、かつ」と訂正する。
(2) 訂正事項b
特許請求の範囲の請求項1に「近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源で露光し」とあるのを、「、ディジタルデータから直接製版する際の露光光源として近赤外から赤外領域に発光波長を持つレーザ光を用いて露光し、」と訂正する。
(3) 訂正事項c
特許請求の範囲の請求項1に「該アルカリ可溶性結着剤のアルカリ溶解性を実質的に低下させる物質」とあるのを、「、熱分解性でありかつ分解しない状態では該アルカリ可溶性結着剤のアルカリ溶解性を実質的に低下させる物質」と訂正する。
(4) 訂正事項d
特許請求の範囲の請求項3に「アルカリ可溶性の高分子化合物を2種以上組み合わせて」とあるのを、「ノボラック樹脂とアクリル樹脂又はウレタン樹脂とを少なくとも組み合わせて」と訂正する。
(5) 訂正事項e
特許請求の範囲の請求項8に「結着剤」とあるのを、「アルカリ可溶性結着剤」と訂正する。
(6) 訂正事項f
特許請求の範囲の請求項8に「光を吸収し」とあるのを、「赤外光又は近赤外光を吸収し」と訂正する。
(7) 訂正事項g
特許請求の範囲の請求項8に「物質を」とあるのを、「物質としてジアゾニウム塩とを」と訂正する。
(8) 訂正事項h
特許請求の範囲の請求項8に「含む」とあるのを、「含み、且つレゾール樹脂を含有しない」と訂正する。
(9) 訂正事項i
特許請求の範囲の請求項8に「ポジ型画像記録材料」とあるのを、「、赤外又は近赤外しーザ光による直接製版用ポジ型画像記録材料」と訂正する。
(10) 訂正事項j
段落【0006】に「上記本発明の目的は・・・アルミ板を用いる上記(2)に記載の画像記録材料。」とあるのを、「上記本発明の目的は、下記の構成(1)〜(12)により達成することができる。
(1)アルカリ可溶性結着剤と、赤外光又は近赤外光を吸収し熱を発生する物質と、熱分解性でありかつ分解しない状態では該結着剤の溶解性を実質的に低下させる物質としてジアゾニウム塩とを含み、且つレゾール樹脂を含有しないことを特徴とする、赤外又は近赤外しーザ光による直接製版用ポジ型画像記録材料。
(2)結着剤としてフェノール樹脂を含む上記(1)に記載の画像記録材料。
(3)結着剤としてアクリル樹脂を含む上記(1)に記載の画像記録材料。
(4)結着剤としてポリウレタン樹脂を含む上記(1)記載の画像記録材料。
(5)赤外光もしくは近赤外光を吸収し熱を発生する物質として染料を用いる上記(1)に記載の画像記録材料。
(6)赤外光もしくは近赤外光を吸収し熱を発生する物質として顔料を用いる上記(1)に記載の画像記録材料。
(7)赤外光もしくは近赤外光を吸収し熱を発生する物質としてカーボンブラックを用いる上記(1)に記載の画像記録材料。
(8)熱分解性でありかつ分解しない状態では該結着剤の溶解性を実質的に低下させる物質としてオニウム塩を含む上記(1)に記載の画像記録材料。
(9)熱分解性でありかつ分解しない状態では結着剤の溶解性を実質的に低下させる物質としてジアゾニウム塩を含む上記(1)に記載の画像記録材料。
(10)熱分解性でありかつ分解しない状態では該結着剤の溶解性を実質的に低下させる物質としてキノンジアジド化合物を含む上記(1)に記載の画像記録材料。
(11)支持体としてポリエステルフィルムを用いる上記(1)に記載の画像記録材料。
(12)支持体としてアルミ板を用いる上記(1)に記載の画像記録材料。」と訂正する。
(11) 訂正事項k
段落【0015】に「顔料としては、・・・含有させることが好ましい。」とあるのを削除する。
(12) 訂正事項l
段落【0016】〜【0018】の記載を削除する。
(13) 訂正事項m
段落【0019】に「染料としては、・・・などの染料が挙げられる。」とあるのを削除する。
(14) 訂正事項n
段落【0020】に「特開昭59-84356号、特開昭59-202829号、」とあるのを削除する。

3 新規事項の有無、訂正の目的の適否、及び拡張・変更の存否
(1) 訂正事項aについて
訂正事項aは、願書に添付した明細書の【0008】、【0023】等の記載、及び実施例2、3、5、6の記載に基づき、請求項1に記載の「アルカリ可溶性結着剤」を、「アクリル樹脂又はウレタン樹脂を含む」ものに限定するものである。
したがって、該訂正は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内の訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(2) 訂正事項bについて
訂正事項bは、願書に添付した明細書の【0004】の記載に基づき、請求項1に記載の「光源」を、「ディジタルデータから直接製版する際の露光光源として近赤外から赤外領域に発光波長を持つレーザ光」に限定するものである。
したがって、この訂正は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内の訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(3) 訂正事項cについて
訂正事項cは、願書に添付した明細書の【0006】、【0007】等のの記載に基づき、請求項1に記載の「該アルカリ可溶性結着剤のアルカリ溶解性を実質的に低下させる物質」を、「熱分解性でありかつ分解しない状態では該アルカリ可溶性結着剤のアルカリ溶解性を実質的に低下させる物質」と限定するものである。
したがって、この訂正は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内の訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(4) 訂正事項dについて
訂正事項dは、願書に添付した明細書の実施例2及び実施例6の記載に基づき、請求項3に記載の「2種以上組み合わせて」を、「ノボラック樹脂とアクリル樹脂又はウレタン樹脂とを少なくとも組み合わせて」と限定するものである。
したがって、この訂正は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内の訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(5) 訂正事項eについて
訂正事項eは、願書に添付した明細書の【0023】の記載に基づき、請求項8に記載の「結着剤」を、「アルカリ可溶性結着剤」に限定するものである。
したがって、この訂正は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内の訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(6) 訂正事項fについて
訂正事項fは、願書に添付した明細書の【0019】の記載に基づき、請求項8に記載の「光」を、「赤外光又は近赤外光」に限定するものである。
したがって、この訂正は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内の訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(7) 訂正事項gについて
訂正事項gは、願書に添付した明細書の【0010】等の記載に基づき、請求項8に記載の「物質」を、「ジアゾニウム塩」に限定するものである。
したがって、この訂正は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内の訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(8) 訂正事項hについて
訂正事項っは、請求項8に記載のアルカリ可溶性樹脂に関し、「且つ、レゾール樹脂を含有しない」と限定するものである。
該限定をする根拠については願書に添付した明細書には記載されていないが、該限定は、取消理由に引用された先願明細書(特開平7-20629号公報参照)に記載された発明との重複部分を除くことを目的とするものである。
したがって、この訂正は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内の訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(9) 訂正事項iについて
訂正事項iは、願書に添付された明細書の【0004】、【0005】等の記載に基づき、請求項8に記載の「ポジ型画像記録材料」を、「赤外又は近赤外レーザ光による直接製版用」に限定するものである。
したがって、この訂正は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内の訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(10) 訂正事項jないしnについて
訂正事項jないしnは、訂正事項aないしiによって訂正された特許請求の範囲の記載に対して、発明の詳細な説明における記載の整合を図るものである。
したがって、これらの訂正は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内の訂正であって、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

4 訂正の適否についてのまとめ
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
上記のとおり、本件訂正は認められるから、本件の請求項1ないし8に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明8」という。)は、補正後の訂正請求書に添付された全文訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 アルカリ可溶性結着剤としてアクリル樹脂又はウレタン樹脂を含み、かつ赤外光又は近赤外光を吸収し熱を発生する物質を含むポジ型画像記録材料をディジタルデータから直接製版する際の露光光源として近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源で露光しアルカリ水溶液で現像する方法において、上記ポジ型画像記録材料にさらに熱分解性でありかつ熱分解しない状態では該アルカリ可溶性結着剤のアルカリ溶解性を実質的に低下させる物質を添加することにより、上記ポジ型画像記録材料の非露光部における画像部の画像強度を向上させる方法。
【請求項2】 アルカリ可溶性結着剤として、スルホンアミド基を有するアクリル系樹脂を含有する請求項1記載の方法。
【請求項3】 アルカリ可溶性結着剤として、ノボラック樹脂とアクリル樹脂又はウレタン樹脂とを少なくとも組み合わせて使用する請求項1記載の方法。【請求項4】 ポジ型画像形成材料が更に環状酸無水物類を含有する請求項1記載の方法。
【請求項5】 ポジ型画像形成材料が更にフッ素系界面活性剤を含有する請求項1記載の方法。
【請求項6】 ポジ型画像形成材料がその表面にマット層を有する請求項1記載の方法。
【請求項7】 請求項1記載のポジ型画像記録材料を請求項1記載の現像をした後、更にバーニング処理するポジ型画像記録方法。
【請求項8】 アルカリ可溶性結着剤と、赤外光又は近赤外光を吸収し熱を発生する物質と、熱分解性でありかつ分解しない状態では該結着剤の溶解性を実質的に低下させる物質としてジアゾニウム塩とを含み、且つレゾール樹脂を含有しないことを特徴とする赤外又は近赤外レーザ光による直接製版用ポジ型画像記録材料。」
2 特許異議の申立ての理由の概要
特許異議申立人は、甲第1号証ないし甲第14号証及び参考資料1〜3を提出して、
(1)本件発明1は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明であり、同じく本件発明8は、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当すること、
(2)本件発明1ないし本件発明8は、参考資料1〜3を参照すると、甲第1号証ないし甲第11号証に記載された発明に基づいて特許出願前にその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に規定する発明に該当すること、
(3)本件発明1及び本件発明8は、その出願の日前の出願であって、その出願後に出願公開された出願である甲第12号証の願書に最初に添付した明細書に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願に係る上記の発明をしたものであるとも、またこの出願の時において、その出願人がその出願前の出願に係る上記特許出願の出願人と同一であるとも認められないので、特許法第29条の2第1項に規定する発明に該当すること、
(4)本件特許出願に対する平成11年8月27日付の手続補正は、新規事項の追加を含むものであるから、特許法第17条の2の規定に違反すること、及び、
(5)本件特許明細書には、記載上の不備があるため、特許法第36条第4項又は第6項の規定に違反すること、
により拒絶の査定をしなければならない特許出願に対して特許されたものであるから、その特許を取り消すべき旨主張する。

甲第1号証:米国特許第4708925号明細書
甲第2号証:特開平2-187762号公報
甲第3号証:特開昭63-179348号公報
甲第4号証:特開平2-244145号公報
甲第5号証:特公昭46-27919号公報
甲第6号証:特開平2-866号公報
甲第7号証:日本印刷学会誌第29巻第2号(1992年3月発行)、第1 28〜130頁
甲第8号証:特開昭64-52139号公報
甲第9号証:米澤輝彦「PS版概論」(株)印刷学会出版部(平成5年8月 31日発行)第36、66〜75、106〜109頁
甲第10号証:3M社カタログ「フロラード フッ素系界面活性剤 FC- 430,431」第1〜5頁
甲第11号証:ポジタイプPS版に関する富士写真フイルム社カタログ
甲第12号証:特願平6-102377号出願の願書に最初に添付された明 細書(特開平7-20629号公報をもって代える)
甲第13号証:本件出願の願書に最初に添付された明細書の写し
甲第14号証:本件出願の平成11年8月27日付手続補正書の写し
参考資料1:本件特許第3461377号公報
参考資料2:特開平11-506550号公報
参考資料3:本件出願の平成11年8月27日付手続補正書とともに提出さ れた上申書の写し

3 甲号各証に記載された事項
(1) 甲第1号証には、
(1a) 「キノンジアジド及びジアゾニウム塩が弱い感度しか与えないのに対して、オニウム塩は多種類の組成物に容易に可視から赤外域の広範な電磁スペクトルにわたって感光性を賦与できる。」(第1欄第49〜53行)
(1b) 「オニウム塩はUVから可視光そして赤外に至るまでの電磁スペクトルの広範囲に亘って感光性とすることができる」(第2欄第16〜18行)
(1c) 「オニウム塩がアルカリ可溶性フェノール樹脂と混合されると、水性アルカリ溶媒に対する当該樹脂に耐溶媒性が付与されることが見出された。この耐溶媒性は、露光により減少するので、フェノール樹脂/オニウム塩組成物の露光部、非露光部に溶解性の差が生ずる。フェノール樹脂/オニウム塩組成物のそのような光溶解性によって、例えば印刷版の製版のような画像形成システムを供給することが可能である。」(第2欄第38〜47行)
(1d) 「アルカリ可溶性樹脂及び光溶解化剤を含む組成物は当初はアルカリ不溶性であるが、露光によりオニウム塩が分解し、当該樹脂の元々の溶解性が回復して当該組成物がアルカリ可溶性となる」(第3欄第12〜16行)
(1e) この発明には、ノボラック型及びレゾール型のフェノール樹脂が共に使用可能である。この発明に使用されるフェノール樹脂の例として、レーゾル型であるBakelite Xylonite社製のBKR2620、及びAshland Chemical社製のアロフェン24780、ノボラック型であるSchenectaday Chemical社製のCRJ406、及びReichhold Chemical社製のライヒホールド29802が挙げられる。」(第3欄第58〜64行)
(1f) 「好適なスペクトル感光剤は当該技術分野で周知であり、UVから赤外までの全範囲(280〜1100nm)をカバーする」(第7欄第32〜34行)
(1g) 「本発明の感光性エレメントは、当該エレメントを化学作用光線に画像様露光し、その後、適当な現像液で現像して被照射領域の組成物を除去して上記画像を形成することによって、ポジ型のリソグラフ画像を生成するために使用可能である。」(第10欄第12〜17行)
と記載され、
(1h) 実施例1〜56として、レゾール型またはノボラック型のフェノール樹脂とオニウム塩とを含有する感光性組成物を作成したこと、
(1i) 実施例35〜38に、アロフェン24780樹脂、ヘキサフルオロリン酸ジフェニルヨードオニウム塩及びヘプタメチンシアニン染料(最大吸収波長791nm及び794nm)を含む感光性組成物を、アルミニウム板に塗布して乾燥した表面を、レーザーダイオードの812nm光で露光し、アルカリ水溶液現像剤で現像してポジ型印刷版としたこと(第19欄第13行〜第20欄第2行)
が記載されている。

(2) 甲第2号証には、
(2a) 「(a)芳香族ジアゾ化合物、(b)陽イオン染料/ボレート陰イオン染料錯体を含む感光性組成物」(特許請求の範囲参照)に関し、
(2b) 「陽イオン染料/ボレート陰イオン錨体からなる光重合開始剤がある。この系は青色光〜赤外領域まで自由に分光増感ができ、」(第2頁右上欄第19行〜左下欄第1行)と記載され、
(2c) 実施例2には、アルミニウム板上に、「フェノール樹脂」、「1,2-ナフトキノン(2)ジアジド-4-スルフオン酸-p-t-オクチルフェニルエステル」と「No.8Eのシアニンボレート」を含む感光液を塗布・乾燥して作成した感光性材料に、ジェットライト2000でSC-52フィルターを使用し、500nm以下の光をカットしてパターン露光し、次いで、富士フイルム(株)製PS版用現像液DP-4を30倍に希釈して現像しポジ画像を得、この画像を印刷版として用いたところ、10,000枚印刷することができたこと(第7頁右上欄第7行〜左下欄第9行)
(2d) 「本発明に有用な陽イオン染料/ボレート陰イオン錯体の特定例を、そのλmax と共に下記に示す。」として、化学構造式とそのλmax 値(最大吸収波長)が記載され(第4頁左下欄〜第5頁左下欄)、波長の短いもので428nm、長いもので740nmの範囲の化合物であること
(2e) 特に、No.8のシアニンボレートのλmax は、550nmであること(第5頁左上欄)
が記載されている。

(3) 甲第3号証には、
アルカリ可溶性樹脂、1,2-キノンジアジド化合物及び色素(ピリリウム系色素、ピリジニウム系色素又はチオピリリウム系色素)の3成分を含むポジ型感光性樹脂組成物(特許請求の範囲)が記載されている。

(4) 甲第4号証には、
(4a) 比較例3として、アルカリ可溶性ノボラック型フェノール樹脂、オルトナフトキノンジアジド4スルホン酸ノボラック型フェノール樹脂エステル化物及びカーボンブラックの3成分を含む感光性樹脂組成物(第8頁右下欄第9行〜第9頁左上欄第9行)
(4b) 露光・現像処理によりポジティブ着色レリーフ画像が得られること(第9頁左上欄第10〜14行)
が記載されている。

(5) 甲第5号証には、
(5a) 実施例22に、ポリビニルアルコール、ナフトキノン-(1,2)-ジアジド-(2)-5-スルフオライド、炭素分散液を含む感熱性材料からなる感熱性記録層を形成し、実施例1に記載したように露光し、エタノールで洗浄して現像して黒色ポジプリントを得たこと(第20欄第34行〜第21欄第7行)、
(5b) 実施例1では、「フラッシュランプで露光し」(第13欄第11〜12行)、「記録層の露光された物分のみを洗い流した」(第13欄第15〜16行)
(5c) 実施例29には、ポリアクリル酸、カーボンブラック、クリスタルバイオレット、ポリ(1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチルキノリン)を含む感熱性記録層をポリエチレンテレフタレートフィルム上に形成し、フラッシュランプで露光し、露光した部分を水で含浸下した芯糸の詰め物でこすり取って、ポジ像を得たこと(第23欄第4〜25行)
(5d) 「かかる加熱は、例えば原画を赤外幅射線に対し露光する・・・・ことによって行うことができる。」(第9欄第16〜21行)
と記載されている。

(6) 甲第6号証には、
(6a) 「スルホンアミド基を有し、水不溶かつアルカリ性水溶液に可溶な高分子化合物と、ポジ型に作用する感光性化合物を含有する事を特徴とする感光性組成物」(特許請求の範囲参照)
(6b) 「本発明の高分子化合物は単独で用いても混合して用いてもよい」(第9頁左上欄第4〜5行)
と記載されている。

(7) 甲第7号証には、
「一方,ポジPS版はナフトキノンジアジド化合物とクレゾールノボラック樹脂からなる感光層が用いられている.最近ノボラック樹脂の一部を、耐溶剤性のあるアルカリ水可溶バインダー,例えば,N-(4-ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド共重合体やN-(P-アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド共重合体に置換することによって,UVインキ適性のある版材が開発された.この版材の出現で,バーニングという高温後処理が不要となり,UVインキでのカラー化が促進されてきている.」(第128頁右欄下から第10行〜最下行)
と記載されている。

(8) 甲第8号証には、アルカリ可溶性である「ノボラック樹脂」と「フェノール性水酸基を有する構造単位を分子構造中に有するビニル系共重合体」を共に含む感光性組成物(特許請求の範囲)が記載されている。

(9) 甲第9号証には、
(9a) 「感光層表面をマット化することにより(図12),このようなトラブルが解消することが富士写真フィルムにより見いだされた。 マット材は塗布、印刷、熱着または静電方式などで付着される。」(第36頁16〜19行)
(9b) 感光性樹脂組成物に配合される成分として「環式酸無水物」及び「界面活性剤」があり、当該界面活性剤として、3MのFC-430がよく使われていること(第74頁18行〜第75頁第9行)
(9c) 「NQD系PS版を現像処理後バーニングすると耐刷力が飛躍的に向上する。」(第107頁第9〜10行)
と記載されている。

(10) 甲第10号証には、FC-430がフッ素系界面活性剤であることが説明されている。

(11) 甲第11号証には、ポジ型画像記録材料であるポジ型PS版の表面にマット層である「SVコート」を形成した製品ラインナップが記載されている。

(12) 甲第12号証には、
(12a)「支持体、ならびに、紫外線および赤外線の両方に感受性を有し、ポジ型もしくはネガ型方法のいずれにも機能を果たすことができる画像生成層であってし水性アルカリ性現像液中の前記画像生成層の溶解性が、活性放射線に対する様様露光の工程および加熱工程により、露光済領域では減少し未露光領域では増加する、画像生成層を含んでなる平板印刷版であって、前記画像生成層が、(1)レゾール樹脂、(2)ノボラック樹脂、(3)潜伏性ブロンステッド酸、および(4)赤外吸収剤を含んでなる平板印刷版。」(特許請求の範囲)
(12b)「本発明の平板印刷版をポジ型版として使用するためには、それを活性放射線に対して像様に露光し、それにより露光済み領域をアルカリ可溶性にし、そして、水性アルカリ性現像液と接触させて、露光済み領域を除去することが必要である。」(段落【0011】)
(12c)「本発明の放射線感受性組成物は、レゾール樹脂およびノボラック樹脂の両方を含有しなければならない。レゾール樹脂が除かれると、水性アルカリ性現像液と接触させても、未露光領域から塗膜を除去せず、この方法で処理された印刷版は有用でないので・・・・・」(段落【0017】)
と記載されている。

(13) 甲第13号証は、本件特許の出願当初明細書の写しであり、特許請求の範囲に、「熱分解性でありかつ分解しない状態では該結着剤の溶解性を実質的に低下させる物質」を含む画像記録材料が記載されている。

(14) 甲第14号証は、本件特許の審査過程において平成11年8月27日に提出された手続補正書の写しであり、特許請求の範囲に、「アルカリ可溶性結着剤のアルカリ溶解性を実質的に低下させる物質」を含む画像記録材料が記載されている。

4 対比・判断
(1) 理由(1)について
ア 本件発明1と甲第1号証に記載された発明との対比
本件発明1と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、両者は、
「アルカリ可溶性結着剤を含み、かつ赤外光又は近赤外光を吸収し熱を発生する物質を含むポジ型画像記録材料を露光光源として近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源で露光しアルカリ水溶液で現像する方法において、上記ポジ型画像記録材料にさらに熱分解性でありかつ熱分解しない状態では該アルカリ可溶性結着剤のアルカリ溶解性を実質的に低下させる物質を添加することにより、上記ポジ型画像記録材料の非露光部における画像部の画像強度を向上させる方法。」
である点では一致するものの、以下の点で相違している。
相違点a:
本件発明1が、アルカリ可溶性樹脂としてアクリル樹脂又はウレタン樹脂を含むことを規定するのに対して、甲第1号証のものは、フェノール樹脂のみしか含有していない点。
相違点b:
本件発明1が、ディジタルデータから直接製版する際の露光光源として近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源で露光することを規定するのに対して、甲第1号証のものは、ディジタルデータからの直接製版について記載していない点。
したがって、両発明を同一であるとすることはできないから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明ではない。

イ 本件発明1と甲第2号証に記載された発明との対比
本件発明1と甲第2号証に記載された発明とを対比すると、両者は、
「アルカリ可溶性結着剤を含むポジ型画像記録材料にさらに光分解性である物質を添加したポジ型画像記録材料を露光しアルカリ水溶液で現像する方法」
である点では一致するものの、甲第2号証に記載の感光性組成物は、アルカリ可溶性結着剤としてアクリル樹脂又はウレタン樹脂を使用していないし、赤外光又は近赤外光を吸収し熱を発生する物質も、熱分解性でありかつ熱分解しない状態では該アルカリ可溶性結着剤のアルカリ溶解性を実質的に低下させる物質も含んでいない。さらに、甲第2号証に記載の感光性組成物を、ディジタルデータから直接製版する際の露光光源として近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源で露光することも記載されておらず、上記ポジ型画像記録材料の非露光部における画像部の画像強度を向上させることの認識もない。
したがって、本件請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明と同一であるとすることはできない。

ウ 本件発明8と甲第1号証に記載された発明との対比
本件発明8と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、両者は、
「アルカリ可溶性結着剤と、赤外光又は近赤外光を吸収し熱を発生する物質と、熱分解性でありかつ分解しない状態では該結着剤の溶解性を実質的に低下させる物質とを含み、且つレゾール樹脂を含有しないことを特徴とする赤外又は近赤外レーザ光によるポジ型画像記録材料。」
である点で一致し、以下の点で相違している。
相違点c:
本件発明8が、「熱分解性でありかつ分解しない状態では該結着剤の溶解性を実質的に低下させる物質」として「ジアゾニウム塩」を使用することを規定するのに対して、甲第1号証においては、「オニウム塩」を使用することを特徴とする点。
相違点d:
本件発明8が、「直接製版用」であることを規定するのに対して、甲第1号証のものは、特に規定しない点。
したがって、両発明を同一であるとすることはできないから、本件発明8は、甲第1号証に記載された発明ではない。

エ 本件発明8と甲第2号証に記載された発明との対比
本件発明8と甲第2号証に記載された発明とを対比すると、甲第2号には、請求項8に係る発明の構成のうち、「赤外光又は近赤外光を吸収し熱を発生する物質」、「熱分解性でありかつ分解しない状態では該結着剤の溶解性を実質的に低下させる物質」、及び、「赤外又は近赤外レーザ光による直接製版用ポジ型画像記録材料」について記載されていない。
したがって、本件発明8は、甲第2号証に記載された発明と同一であるとすることはできない。

オ 甲第3号証ないし甲第5号証に記載された発明との対比
甲第3号証ないし甲第5号証に記載された発明については、近赤外から赤外領域の光により露光することを全く認識していないから、本件発明1及び本件発明8と同一の発明が記載されているとは認められない。

カ まとめ
以上により、本件請求項1及び請求項8に係る発明は、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当しない。

(2) 理由(2)について
ア 本件発明1について
本件発明1と、甲第1号証に記載された発明とを対比すると、上記の相違点a、bに示す点で相違する。
まず相違点bについて検討する。
甲第2号証ないし甲第8号証には、いずれも紫外光あるいは可視光で露光する感光性組成物を使用した印刷版等の記録材料と、それを露光・現像する方法が記載されているのみであり、また甲第9号証ないし甲第11号証には、そのような印刷版すら記載されていないから、これらの甲号証からは、相違点bに係る構成を導き出すことができない。
したがって、相違点aについて検討するまでもなく、本館発明1に係る発明は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、甲第1号証ないし甲第11号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとすることはできない。

イ 本件発明2ないし本件発明7について
本件発明2ないし本件発明7は、本件発明1の構成を全て引用して、さらに技術的限定を加えるものであるから、本件発明1と同じ理由で、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、甲第1号証ないし甲第11号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとすることはできない。

ウ 本件発明8について
本件発明8に係る発明についても、本件発明1と同様の理由で、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、甲第1号証ないし甲第11号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(3) 理由(3)について
ア 本件発明1について
本件発明1は、アルカリ可溶性樹脂としてアクリル樹脂又はウレタン樹脂を含むことが限定された。
それに対して甲第12号証に記載された画像形成方法においては、フェノール系の樹脂のみしか使用していない(摘示事項(12a)、(12c)参照)。
したがって、アルカリ可溶性樹脂の構成において、本件発明1は、甲第12号証に記載された発明と同一ではない。

イ 本件発明8について
本件発明8は、上記の訂正によりレゾール樹脂を含有しない直接製版用ポジ型画像記録材料に限定された。
これに対し、甲第12号証に記載された発明は、ノボラック樹脂だけでなく、レゾール樹脂をも併用することを必須の要件とする(摘示事項(12a)、(12c)参照)点で、本件請求項8にかかる発明の構成とは明確に相違するものである。
したがって、本件請求項8に係る発明は、甲第12号証に記載された発明と同一ではない。

(4) 理由(4)について
特許異議申立人が、新規事項の追加であるとする具体的理由は、平成11年8月27日付け手続補正書(甲第14号証)によって、出願当初の明細書に記載されていた「熱分解性」である点が削除されたことにより、熱分解性でないものを含むようにされた点にある。
しかしながら、上記の訂正によって、特許明細書の請求項1において、「アルカリ可溶性結着剤のアルカリ溶解性を実質的に低下させる物質」と記載されていた部分を、「熱分解性でありかつ分解しない状態では該アルカリ可溶性結着剤のアルカリ溶解性を実質的に低下させる物質」に訂正したことにより、理由(4)の理由は解消された。

(5) 理由(5)について
特許異議申立人が、本件特許明細書の記載不備を主張する概要は、「アルカリ可溶性結着剤のアルカリ溶解性を実質的に低下させる物質」及び「赤外光又は近赤外光を吸収し熱を発生する物質」として、具体例において具体的に示してるのは、「ナフトキノン-1,2-ジアジド-5-スルホニルクロリドと、ピロガロール-アセトン樹脂とのエステル化物」及び「カーボンブラック」の組合せただ1例のみであり、それ以外の化合物、物質の組合せについて効果が明らかでないため、特許請求の範囲の構成にまで一般化することはできない。そのため、本件特許発明は、本件特許明細書に十分に記載されたものでないから、特許法第36条第4項又は第5項及び第6項の規定に違背するというものである。
しかしながら、本件明細書に記載された実施例では、特許異議申立人が指摘する2つの化合物だけでなく、それ以外に、「熱分解性でありかつ分解しない状態では該結着剤の溶解性を実質的に低下させる物質」として、「2,5-ジブトキシ-4-モルホリノ-ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロホスフェート」(実施例4)、「2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノンとナフトキノン-1,2-ジアジドスルホニルクロリドとのエステル化物」(実施例6)が、「赤外光又は近赤外光を吸収し熱を発生する物質」として、「チオピリリウム染料」(実施例5)が記載されており、決して、ただ2つの化合物による1種類の組合せの例だけではない。
さらに、本件特許明細書には、「熱分解性でありかつ分解しない状態では該結着剤の溶解性を実質的に低下させる物質」の例が、段落【0010】〜段落【0014】に、また、「赤外光又は近赤外光を吸収し熱を発生する物質」の例が、段落【0015】〜段落【0022】に記載されており、これらは、具体例に示す物質と同様の効果を奏するものであることが推定される。
したがて、実施例が不足とする特許異議申立人の主張は、理由がない。

5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては本件請求項1ないし8に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし8に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件請求項1ないし8に係る発明の特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対して付与されたものと認めないから、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
画像記録材料
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】アルカリ可溶性結着剤としてアクリル樹脂又はウレタン樹脂を含み、かつ赤外光又は近赤外光を吸収し熱を発生する物質を含むポジ型画像記録材料を、ディジタルデータから直接製版する際の露光光源として近赤外から赤外領域に発光波長を持つレーザ光を用いて露光し、アルカリ水溶液で現像する方法において、上記ポジ型画像記録材料にさらに、熱分解性でありかつ分解しない状態では該アルカリ可溶性結着剤のアルカリ溶解性を実質的に低下させる物質を添加することにより、上記ポジ型画像記録材料の非露光部における画像部の画像強度を向上させる方法。
【請求項2】アルカリ可溶性結着剤として、スルホンアミド基を有するアクリル系樹脂を含有する請求項1記載の方法。
【請求項3】アルカリ可溶性結着剤として、ノボラック樹脂とアクリル樹脂又はウレタン樹脂とを少なくとも組み合わせて使用する請求項1記載の方法。
【請求項4】ポジ型画像形成材料が更に環状酸無水物類を含有する請求項1記載の方法。
【請求項5】ポジ型画像形成材料が更にフッ素系界面活性剤を含有する請求項1記載の方法。
【請求項6】ポジ型画像形成材料がその表面にマット層を有する請求項1記載の方法。
【請求項7】請求項1記載のポジ型画像記録材料を請求項1記載の現像をした後、更にバーニング処理するポジ型画像記録方法。
【請求項8】アルカリ可溶性結着剤と、赤外光又は近赤外光を吸収し熱を発生する物質と、熱分解性でありかつ分解しない状態では該結着剤の溶解性を実質的に低下させる物質としてジアゾニウム塩とを含み、且つレゾール樹脂を含有しないことを特徴とする、赤外又は近赤外レーザ光による直接製版用ポジ型画像記録材料。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はオフセット印刷マスターとして使用できる画像記録材料に関するものであり、特にコンピュータ等のディジタル信号から直接製版できるいわゆるダイレクト製版用のポジ型の感光性平版印刷版に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、コンピュータのディジタルデータから直接製版するシステムとしては、▲1▼電子写真法によるもの、▲2▼Arレーザによる露光と後加熱の組み合わせによる光重合系、▲3▼感光性樹脂上に銀塩感材を積層したもの、▲4▼シルバーマスタータイプのもの、▲5▼放電破壊やレーザ光によりシリコーンゴム層を破壊することによるもの等が知られている。
【0003】
しかしながら▲1▼の電子写真法を用いるものは、帯電、露光、現像等処理が煩雑であり、装置が複雑で大がかりなものになる。▲2▼の方法では後加熱工程を要するほか、高感度な版材を要し、明室での取扱いが難しくなる。▲3▼、▲4▼の方法では銀塩を使用するため処理が煩雑になり、コストが高くなる欠点がある。
また▲5▼の方法は比較的完成度の高い方法であるが、版面に残るシリコーン滓の除去に問題点を残している。
一方、近年におけるレーザの発展は目ざましく、特に近赤外から赤外に発光領域を持つ固体レーザ・半導体レーザは高出力かつ小型の物が容易に入手できる様になっている。コンピュータ等のディジタルデータから直接製版する際の露光光源として、これらのレーザは非常に有用である。
【0004】
従来の画像記録材料として、特公昭46-27919号公報には、加熱する前は不溶性もしくは僅かに可溶性であり、熱の影響下に溶媒中でより可溶性になし得る重合体化合物または組成物を混入した記録層を含む記録材料を情報に従って加熱し、画像形成する方法が記載されている。また、特開昭56-69192号公報にはノボラック型フェノール樹脂とカーボンブラックを含有する感熱層を有する感熱記録材料が開示されている。
しかしながら、これらは、レーザ光を用いずに画像を記録した場合の実施例しか開示されておらず、コンピュータ等のディジタルデータから直接製版する際の露光光源として、上記の近赤外から赤外に発光領域を持つレーザを用いて画像を記録した場合には、地汚れや耐刷力の低下などで必ずしも良好な印刷物を得ることができなかった。良好な印刷物を得るためには、露光後アルカリ現像処理される際に、光の照射された部分(非画像部)が容易に溶解され、光の当たらなかった部分(画像部)が残存し更にこの残存した画像部の耐久性が良好である必要がある。
即ち、上記公知技術では、レーザ光を用いた場合、画像の記録性が良好でないため、非画像部が溶解しにくく、また画像部が溶解され易くなっていると考えられる。
従って、レーザ光による画像の記録性が良く良好な印刷物が得られる画像記録材料が望まれる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来の処理装置や印刷装置をそのまま利用できる、コンピュータ等のディジタルデータから直接製版可能な記録性及び耐刷性の良い画像記録材料を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記本発明の目的は、下記の構成(1)〜(12)により達成することができる。
(1)アルカリ可溶性結着剤と、赤外光又は近赤外光を吸収し熱を発生する物質と、熱分解性でありかつ分解しない状態では該結着剤の溶解性を実質的に低下させる物質としてジアゾニウム塩とを含み、且つレゾール樹脂を含有しないことを特徴とする、赤外又は近赤外レーザ光による直接製版用ポジ型画像記録材料。
(2)結着剤としてフェノール樹脂を含む上記(1)に記載の画像記録材料。
(3)結着剤としてアクリル樹脂を含む上記(1)に記載の画像記録材料。
(4)結着剤としてポリウレタン樹脂を含む上記(1)記載の画像記録材料。
(5)赤外光もしくは近赤外光を吸収し熱を発生する物質として染料を用いる上記(1)に記載の画像記録材料。
(6)赤外光もしくは近赤外光を吸収し熱を発生する物質として顔料を用いる上記(1)に記載の画像記録材料。
(7)赤外光もしくは近赤外光を吸収し熱を発生する物質としてカーボンブラックを用いる上記(1)に記載の画像記録材料。
(8)熱分解性でありかつ分解しない状態では該結着剤の溶解性を実質的に低下させる物質としてオニウム塩を含む上記(1)に記載の画像記録材料。
(9)熱分解性でありかつ分解しない状態では結着剤の溶解性を実質的に低下させる物質としてジアゾニウム塩を含む上記(1)に記載の画像記録材料。
(10)熱分解性でありかつ分解しない状態では該結着剤の溶解性を実質的に低下させる物質としてキノンジアジド化合物を含む上記(1)に記載の画像記録材料。
(11)支持体としてポリエステルフィルムを用いる上記(1)に記載の画像記録材料。
(12)支持体としてアルミ板を用いる上記(1)に記載の画像記録材料。
【0007】
本発明の画像記録材料は支持体上に結着剤と、光を吸収し熱を発生する物質と、熱分解性でありかつ分解しない状態では該結着剤の溶解性を実質的に低下させる物質(以下、本発明の添加剤ということもある。)を少なくとも含有するポジ型感光性組成物からなる記録層(感光性層)を設けてなっている。
本発明の添加剤を含有させると画像部の画像強度が向上し、非画像部との差を大きくすることができる。つまり、本発明の添加剤は画像を形成する結着樹脂の非画像部の溶解性と画像部の非溶解性を良好にするものである。
【0008】
本発明において、結着剤がアルカリ可溶性の樹脂であるとアルカリ現像により容易に画像形成できる点で好ましく、結着剤がフェノール樹脂であると本発明の添加剤により容易に不溶化される点で好ましく、結着剤がアクリル樹脂であると皮膜性が良く耐久性のある画像が得られる点で好ましく、また結着剤がポリウレタン樹脂であると画像強度の強い耐久性のある画像が得られる点で好ましい。
本発明において、赤外光もしくは近赤外光を吸収し熱を発生する物質として染料を用いると均一な皮膜が得られる点で好ましく、赤外光もしくは近赤外光を吸収し熱を発生する物質として顔料を用いると熱を発生する効率が高い点で好ましく、また、赤外光もしくは近赤外光を吸収し熱を発生する物質としてカーボンブラックを用いると熱発生効率が高く安価な点で好ましい。
本発明において、熱分解性でありかつ分解しない状態では該結着剤の溶解性を実質的に低下させる物質としてオニウム塩を用いると結着剤不溶化効率が高い点で好ましく、また、ジアゾニウム塩を用いると結着剤不溶化効率が高く、化合物の安全性が高い点で好ましく、更にまた、キノンジアジド化合物を用いると結着剤不溶化効率が高く、熱分解後に結着剤の溶解を助ける効果が高い点で好ましい。
本発明において、支持体としてポリエステルフィルムを用いると安価であり、画像記録材料の生産性に優れる点で好ましく、また、支持体としてアルミ板を用いると画像記録材料の耐久性が高く、寸度安定性に優れる点で好ましい。
【0009】
結着剤は、容易ではないがアルカリ現像液に一応溶解するポリマーであり、印刷インクに対する親和性を有するものが好ましい。また、光を吸収し熱を発生する物質は、レーザー光を吸収し熱を発生し、その熱により、熱分解性且つ分解しない状態では結着剤の溶解性を実質的に低下させる物質を分解し画像を形成させるものが好ましい。また、熱分解性且つ分解しない状態では結着剤の溶解性を実質的に低下させる物質は、露光部では熱分解し結着剤の溶解を助け、非露光部では結着剤の溶解性を下げ耐久性を上げるものが好ましい。
【0010】
前記従来技術には、熱分解前に結着剤の溶解性を実質的に低下させる物質を添加することについての明確な記載はなく、特に本発明で好ましく用いられるアルカリ可溶性のフェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂等の結着剤を実質的に不溶化させる添加物をそこから類推するのは困難であった。
本発明者らは鋭意研究を進めた結果、熱分解性でありかつ分解しない状態では該結着剤の溶解性を実質的に低下させる物質として種々のオニウム塩、キノンジアジド化合物類等が、結着剤の溶解性を低下させることに優れており、好適に用いられることを見いだし、本発明に到達した。
【0011】
以下本発明を詳細に説明する。
オニウム塩としてはジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等を挙げる事ができる。
本発明において用いられるオニウム塩として、好適なものとしては、例えばS.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)、特開平5-158230号公報に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号、同Re27,992号、特願平3-140140号の明細書に記載のアンモニウム塩、D.C.Necker et al,Macromolecules,17,2468(1984)、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478Tokyo,Oct(1988)、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号に記載のホスホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、Chem.& Eng.News,Nov.28,p31(1988)、欧州特許第104,143号、米国特許第339,049号、同第410,201号、特開平2-150848号、特開平2-296514号に記載のヨードニウム塩、J.V.Crivello et al,Polymer J.17,73(1985)、J.V.Crivelloet al.J.Org.Chem.,43,3055(1978)、W.R.Watt et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,22,1789(1984)、J.V.Crivello et al,Polymer Bull.,14,279(1985)、J.V.Crivello et al,Macromorecules,14(5),1141(1981)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,2877(1979)、欧州特許第370,693号,同3,902,114号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同161,811号、同410,201号、同339,049号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号に記載のスルホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello etal,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩等があげられる。
【0012】
本発明において、ジアゾニウム塩が特に好ましい。また、特に好適なジアゾニウム塩としては特開平5-158230号公報記載のものがあげられる。好適なキノンジアジド類としてはo-キノンジアジド化合物を挙げることができる。
本発明に用いられるo-キノンジアジド化合物は、少なくとも1個のo-キノンジアジド基を有する化合物で、熱分解によりアルカリ可溶性を増すものであり、種々の構造の化合物を用いることができる。つまり、o-キノンジアジドは熱分解により結着剤の溶解抑制能を失うことと、o-キノンジアジド自身がアルカリ可溶性の物質に変化することの両方の効果により感材系の溶解性を助ける。本発明に用いられるo-キノンジアジド化合物としては、例えば、J.コーサー著「ライト-センシティブ・システムズ」(John Wiley & Sons.Inc.)第339〜352頁に記載の化合物が使用できるが、特に種々の芳香族ポリヒドロキシ化合物あるいは芳香族アミノ化合物と反応させたo-キノンジアジドのスルホン酸エステルまたはスルホン酸アミドが好適である。また、特公昭43-28403号公報に記載されているようなベンゾキノン(1,2)-ジアジドスルホン酸クロライドまたはナフトキノン-(1,2)-ジアジド-5-スルホン酸クロライドとピロガロール-アセトン樹脂とのエステル、米国特許第3,046,120号および同第3,188,210号に記載されているベンゾキノン-(1,2)-ジアジドスルホン酸クロライドまたはナフトキノン-(1,2)-ジアジド-5-スルホン酸クロライドとフェノール-ホルムアルデヒド樹脂とのエステルも好適に使用される。
【0013】
さらにナフトキノン-(1,2)-ジアジド-4-スルホン酸クロライドとフェノールホルムアルデヒド樹脂あるいはクレゾール-ホルムアルデヒド樹脂とのエステル、ナフトキノン-(1,2)-ジアジド-4-スルホン酸クロライドとピロガロール-アセトン樹脂とのエステルも同様に好適に使用される。その他の有用なo-キノンジアジド化合物としては、数多くの特許に報告され知られている。例えば特開昭47-5303号、特開昭48-63802号、特開昭48-63803号、特開昭48-96575号、特開昭49-38701号、特開昭48-13354号、特公昭41-11222号、特公昭45-9610号、特公昭49-17481号、米国特許第2,797,213号、同第3,454,400号、同第3,544,323号、同第3,573,917号、同第3,674,495号、同第3,785,825号、英国特許第1,227,602号、同第1,251,345号、同第1,267,005号、同第1,329,888号、同第1,330,932号、ドイツ特許第854,890号などの各明細書中に記載されているものをあげることができる。
本発明で使用されるo-キノンジアジド化合物の添加量は好ましくは感光性組成物全固形分に対し、1〜50重量%、更に好ましくは5〜30重量%、特に好ましくは10〜30重量%の範囲である。これらの化合物は単一で使用できるが、数種の混合物として使用してもよい。o-キノンジアジド化合物の添加量が、1重量%未満だと画像の記録性が悪化し、また、50重量%を越えると画像部の耐久性が劣化したり感度が低下したりする。
【0014】
オニウム塩の対イオンとしては、四フッ化ホウ酸、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、5-ニトロ-o-トルエンスルホン酸、5-スルホサリチル酸、2,5-ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4,6-トリメチルベンゼンスルホン酸、2-ニトロベンゼンスルホン酸、3-クロロベンゼンスルホン酸、3-ブロモベンゼンスルホン酸、2-フルオロカプリルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、1-ナフトール-5-スルホン酸、2-メトキシ-4-ヒドロキシ-5-ベンゾイル-ベンゼンスルホン酸、及びパラトルエンスルホン酸等を挙げることができる。これらの中でも特に六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸や2,5-ジメチルベンゼンスルホン酸のごときアルキル芳香族スルホン酸が好適である。
o-キノンジアジド化合物以外の本発明の添加剤の添加量は、好ましくは1〜50重量%、更に好ましくは5〜30重量%、特に好ましくは10〜30重量%である。本発明の添加剤と結着剤は、同一層へ含有させることが好ましい。
【0015】
本発明において、光を吸収し熱を発生する物質としては種々の顔料もしくは染料を用いる事ができる。
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
本発明において、これらの顔料、もしくは染料のうち赤外光、もしくは近赤外光を吸収するものが、赤外光もしくは近赤外光を発光するレーザでの利用に適する点で特に好ましい。
【0020】
そのような赤外光、もしくは近赤外光を吸収する顔料としてはカーボンブラックが好適に用いられる。また、赤外光、もしくは近赤外光を吸収する染料としては例えば特開昭58-125246号、特開昭60-78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58-173696号、特開昭58-181690号、特開昭58-194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58-112793号、特開昭58-224793号、特開昭59-48187号、特開昭59-73996号、特開昭60-52940号、特開昭60-63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58-112792号等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0021】
また、染料として米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57-142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58-181051号、同58-220143号、同59-41363号、同59-84248号、同59-84249号、同59-146063号、同59-146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59-216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5-13514号、同5-19702号公報に開示されているピリリウム化合物は特に好ましく用いられる。
【0022】
また、染料として特に好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
これらの顔料もしくは染料は、感光性組成物全固形分に対し0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜10重量%、染料の場合特に好ましくは0.5〜10重量%、顔料の場合特に好ましくは3.1〜10重量%の割合で感光性組成物中に添加することができる。顔料もしくは染料の添加量が0.01重量%未満であると感度が低くなり、また50重量%を越えると感光層の均一性が失われ、記録層の耐久性が悪くなる。
これらの染料もしくは顔料は他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。別の層とする場合、本発明の熱分解性でありかつ分解しない状態では該結着剤の溶解性を実質的に低下させる物質を含む層に隣接する層へ添加するのが望ましい。また、染料もしくは顔料と結着樹脂は同一の層が好ましいが、別の層でも構わない。
【0023】
本発明に用いられる結着剤としては水不溶かつアルカリ水可溶性の樹脂が好ましい。この性質を有する種々の樹脂を使用することができるが、好ましい樹脂としては下記ノボラック樹脂を挙げることができる。
例えばフェノールホルムアルデヒド樹脂、m-クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p-クレゾールホルムアルデヒド樹脂、o-クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m-/p-混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m-,p-,o-またはm-/p-,m-/o-,o-/p-混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂などのクレゾールホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。
その他レゾール型のフェノール樹脂類も好適に用いられ、フェノール/クレゾール(m-,p-,o-またはm-/p-,m-/o-,o-/p-混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂が、好ましく、特に特開昭61-217034号公報に記載されているフェノール樹脂類が好ましい。
またフェノール変性キシレン樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリハロゲン化ヒドロキシスチレン、特開昭51-34711号公報に開示されているようなフェノール性水酸基を含有するアクリル系樹脂、特開平2-866号に記載のスルホンアミド基を有するアクリル系樹脂や、ウレタン系の樹脂等、種々のアルカリ可溶性の高分子化合物も用いることができる。
スルホンアミド基を有するアクリル系樹脂が特に好ましい。
ウレタン系の樹脂としては、特開昭63-124047号、同63-261350号、同63-287942号、同63-287943号、同63-287944号、同63-287946号、同63-287947号、同63-287948号、同63-287949号、特開平1-134354号、同1-255854号の各公報に開示されているものが好ましく用いられる。
これらのアルカリ可溶性高分子化合物は、重量平均分子量が500〜200,000で数平均分子量が200〜60,000のものが好ましい。
かかるアルカリ可溶性の高分子化合物は1種類あるいは2種類以上を組み合わせて使用してもよく、全感光性組成物固形分中、5〜99重量%、好ましくは10〜90重量%、特に好ましくは20〜80重量%の添加量で用いられる。アルカリ可溶性の高分子化合物の添加量が5重量%未満であると記録層の耐久性が悪化し、また、99重量%を越えると感度、耐久性の両面で好ましくない。
【0024】
本発明のポジ型感光性組成物には更に必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。
例えばオクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂の様な炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドの縮合物を併用することは、画像の感脂性を向上させる上で好ましい。
又更に感度を向上させる目的で、環状酸無水物類、フェノール類、有機酸類を併用することもできる。環状酸無水物としては米国特許第4,115,128号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6-エンドオキシ-Δ4-テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α-フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸などが使用できる。フェノール類としては、ビスフェノールA、p-ニトロフェノール、p-エトキシフェノール、2,4,4′-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシベンゾフェノン、4,4′,4″-トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4′,3″,4″-テトラヒドロキシ-3,5,3′,5′-テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。更に、有機酸類としては、特開昭60-88942号、特開平2-96755号公報などに記載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、リン酸エステル類およびカルボン酸類などがあり、具体的には、p-トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p-トルイル酸、3,4-ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n-ウンデカン酸、アスコルビン酸などが挙げられる。
上記の環状酸無水物、フェノール類および有機酸類の感光性組成物中に占める割合は、0.05〜20重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜15重量%、特に好ましくは0.1〜10重量%である。
【0025】
また、本発明における感光性組成物中には、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62-251740号公報や特開平3-208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59-121044号公報、特開平4-13149号公報に記載されているような両性界面活性剤を添加することができる。
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。両面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2-アルキル-N-カルボキシエチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN-テトラデシル-N,N-ベタイン型(例えば、商品名アモーゲンK、第一工業(株)製)等が挙げられる。
上記非イオン界面活性剤および両性界面活性剤の感光性組成物中に占める割合は、0.05〜15重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量%である。
本発明における感光性組成物中には、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。
焼き出し剤としては、露光による加熱によって酸を放出する化合物(光酸放出剤)と塩を形成し得る有機染料の組合せを代表として挙げることができる。具体的には、特開昭50-36209号、同53-8128号の各公報に記載されているo-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料の組合せや、特開昭53-36223号、同54-74728号、同60-3626号、同61-143748号、同61-151644号および同63-58440号の各公報に記載されているトリハロメチル化合物と塩形成性有機染料の組合せを挙げることができる。かかるトリハロメチル化合物としては、オキサゾール系化合物とトリアジン系化合物とがあり、どちらも経時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。
【0026】
画像の着色剤としては、前述の塩形成性有機染料以外に他の染料を用いることができる。塩形成性有機染料を含めて、好適な染料として油溶性染料と塩基性染料をあげることができる。具体的にはオイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT-505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)などを挙げることができる。また、特開昭62-293247号公報に記載されている染料は特に好ましい。これらの染料は、感光性組成物全固形分に対し、0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜3重量%の割合で感光性組成物中に添加することができる。更に本発明の感光性組成物中には必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸またはメタアクリル酸のオリゴマーおよびポリマー等が用いられる。
【0027】
本発明の画像記録材料は、通常上記各成分を溶媒に溶かして、適当な支持体上に塗布することにより製造することができる。ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、2-メトキシエチルアセテート、1-メトキシ-2-プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、Y-ブチルラクトン、トルエン等をあげることができるがこれに限定されるものではない。これらの溶媒は単独あるいは混合して使用される。溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50重量%である。また塗布、乾燥後に得られる支持体上の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、感光性印刷版についていえば一般的に0.5〜5.0g/m2が好ましい。塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、感光膜の皮膜特性は低下する。
本発明における感光性層中には、塗布性を良化するための界面活性剤、例えば特開昭62-170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。好ましい添加量は、全感光性組成物の0.01〜1重量%さらに好ましくは0.05〜0.5重量%である。
【0028】
本発明に使用される支持体としては、寸度的に安定な板状物であり、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記のごとき金属がラミネート、もしくは蒸着された紙、もしくはプラスチックフィルム等が含まれる。
本発明の支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板およびアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネートもしくは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高々10重量%以下である。本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられるアルミニウム板の厚みはおよそ0.1mm〜0.6mm程度、好ましくは0.15mm〜0.4mm、特に好ましくは0.2mm〜0.3mmである。
【0029】
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤またはアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。
アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法および化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸または硝酸電解液中で交流または直流により行う方法がある。また、特開昭54-63902号に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。
この様に粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理および中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
【0030】
陽極酸化の処理条件は用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが一般的には電解質の濃度が1〜80重量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。
陽極酸化皮膜の量は1.0g/m2より少ないと耐刷性が不十分であったり、平版印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなる。
陽極酸化処理を施された後、アルミニウム表面は必要により親水化処理が施される。本発明に使用される親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、第3,280,734号および第3,902,734号に開示されているようなアルカリ金属シリケート(例えばケイ酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法においては、支持体がケイ酸ナトリウム水溶液で浸漬処理されるかまたは電解処理される。他に特公昭36-22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウムおよび米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号、同第4,689,272号に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法などが用いられる。
【0031】
本発明の画像記録材料は、支持体上にポジ型の感光性組成物を設けたものであるが、必要に応じてその間に下塗層を、感光性組成物層の上にマット層を設けることができる。
下塗層成分としては種々の有機化合物が用いられ、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガム、2-アミノエチルホスホン酸などのアミノ基を有するホスホン酸類、置換基を有してもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸およびエチレンジホスホン酸などの有機ホスホン酸、置換基を有してもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸およびグリセロリン酸などの有機リン酸、置換基を有してもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸およびグリセロホスフィン酸などの有機ホスフィン酸、グリシンやβ-アラニンなどのアミノ酸類、およびトリエタノールアミンの塩酸塩などのヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等から選ばれるが、2種以上混合して用いてもよい。
【0032】
この有機下塗層は次のような方法で設けることができる。即ち、水またはメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液をアルミニウム板上に塗布、乾燥して設ける方法と、水またはメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液に、アルミニウム板を浸漬して上記化合物を吸着させ、その後水などによって洗浄、乾燥して有機下塗層を設ける方法である。前者の方法では、上記の有機化合物の0.005〜10重量%の濃度の溶液を種々の方法で塗布できる。また後者の方法では、溶液の濃度は0.01〜20重量%、好ましくは0.05〜5重量%であり、浸漬温度は20〜90℃、好ましくは25〜50℃であり、浸漬時間は0.1秒〜20分、好ましくは2秒〜1分である。これに用いる溶液は、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウムなどの塩基性物質や、塩酸、リン酸などの酸性物質によりpH1〜12の範囲に調整することもできる。また、画像記録材料の調子再現性改良のために黄色染料を添加することもできる。
有機下塗層の被覆量は、2〜200mg/m2が適当であり、好ましくは5〜100mg/m2である。上記の被覆量が2mg/m2よりも少ないと十分な耐刷性能が得られない。また、200mg/m2より大きくても同様である。
【0033】
また、本発明のポジ型感光性組成物層の表面には、擦り傷や接着故障等を防ぐためにマット層を設けることができる。具体的には特開昭50-125805号、特公昭57-6582号、同61-28986号の各公報に記載されているようなマット層を設ける方法、特公昭62-62337号公報に記載されているような固体粉末を熱融着させる方法などが挙げられる。
本発明に用いられるマット層の平均径は100μm以下が好ましく、より好ましい範囲としては2〜8μmである。平均径が大きくなると、細線が付き難く、ハイライトドットも点減りし、調子再現上好ましくない。平均径が2μm以下では擦り傷等の点で好ましくない。マット層の塗布量は5〜200mg/m2が好ましく、更に好ましくは20〜150mg/m2である。塗布量がこの範囲より大きいと擦り傷の原因となり、これよりも小さいと接着故障の点で好ましくない。上記のようにして作成されたポジ型画像記録材料は、通常、像露光、現像処理を施される。
像露光に用いられる活性光線の光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯等がある。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。またg線、i線、Deep-UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。レーザービームとしてはヘリウム・ネオンレーザー、アルゴンレーザー、クリプトンレーザー、ヘリウム・カドミウムレーザー、KrFエキシマレーザー等が挙げられる。
本発明においては、近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源が好ましく、固体レーザ、半導体レーザが特に好ましい。
【0034】
本発明の画像記録材料の現像液および補充液としては従来より知られているアルカリ水溶液が使用できる。例えば、ケイ酸ナトリウム、同カリウム、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ほう酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウムおよび同リチウムなどの無機アルカリ塩が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n-ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤も用いられる。
これらのアルカリ剤は単独もしくは2種以上を組み合わせて用いられる。
これらのアルカリ剤の中で特に好ましい現像液は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸塩水溶液である。その理由はケイ酸塩の成分である酸化珪素SiO2とアルカリ金属酸化物M2Oの比率と濃度によって現像性の調節が可能となるためであり、例えば、特開昭54-62004号公報、特公昭57-7427号に記載されているようなアルカリ金属ケイ酸塩が有効に用いられる。
【0035】
更に自動現像機を用いて現像する場合には、現像液よりもアルカリ強度の高い水溶液(補充液)を現像液に加えることによって、長時間現像タンク中の現像液を交換する事なく、多量のPS版を処理できることが知られている。本発明においてもこの補充方式が好ましく適用される。
現像液および補充液には現像性の促進や抑制、現像カスの分散および印刷版画像部の親インキ性を高める目的で必要に応じて種々の界面活性剤や有機溶剤を添加できる。好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系および両性界面活性剤があげられる。
更に現像液および補充液には必要に応じて、ハイドロキノン、レゾルシン、亜硫酸、亜硫酸水素酸などの無機酸のナトリウム塩、カリウム塩等の還元剤、更に有機カルボン酸、消泡剤、硬水軟化剤を加えることもできる。
上記現像液および補充液を用いて現像処理された印刷版は水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。本発明の画像記録材料を印刷版として使用する場合の後処理としては、これらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
【0036】
近年、製版・印刷業界では製版作業の合理化および標準化のため、印刷版用の自動現像機が広く用いられている。この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、印刷版を搬送する装置と各処理液槽およびスプレー装置からなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロールなどによって印刷版を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じて補充液を補充しながら処理することができる。
また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。
本発明の画像記録材料を感光性平版印刷版として使用する場合について説明する。画像露光し、現像し、水洗及び/又はリンス及び/又はガム引きして得られた平版印刷版に不必要な画像部(例えば原画フィルムのフィルムエッジ跡など)がある場合には、その不必要な画像部の消去が行なわれる。このような消去は、例えば特公平2-13293号公報に記載されているような消去液を不必要画像部に塗布し、そのまま所定の時間放置したのちに水洗することにより行なう方法が好ましいが、特開平59-174842号公報に記載されているようなオプティカルファイバーで導かれた活性光線を不必要画像部に照射したのち現像する方法も利用できる。
【0037】
以上のようにして得られた平版印刷版は所望により不感脂化ガムを塗布したのち、印刷工程に供することができるが、より一層の高耐刷力の平版印刷版としたい場合にはバーニング処理が施される。
平版印刷版をバーニングする場合には、バーニング前に特公昭61-2518号、同55-28062号、特開昭62-31859号、同61-159655号の各公報に記載されているような整面液で処理することが好ましい。
その方法としては、該整面液を浸み込ませたスポンジや脱脂綿にて、平版印刷版上に塗布するか、整面液を満たしたバット中に印刷版を浸漬して塗布する方法や、自動コーターによる塗布などが適用される。また、塗布した後でスキージ、あるいは、スキージローラーで、その塗布量を均一にすることは、より好ましい結果を与える。
整面液の塗布量は一般に0.03〜0.8g/m2(乾燥重量)が適当である。整面液が塗布された平版印刷版は必要であれば乾燥された後、バーニングプロセッサー(たとえば富士写真フイルム(株)より販売されているバーニングプロセッサー:BP-1300)などで高温に加熱される。この場合の加熱温度及び時間は、画像を形成している成分の種類にもよるが、180〜300℃の範囲で1〜20分の範囲が好ましい。
バーニング処理された平版印刷版は、必要に応じて適宜、水洗、ガム引きなどの従来より行なわれている処理を施こすことができるが水溶性高分子化合物等を含有する整面液が使用された場合にはガム引きなどのいわゆる不感脂化処理を省略することができる。
この様な処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機等にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0038】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
(カーボンブラック分散液)
カーボンブラック 1重量部
ベンジルメタクリレートとメタクリル酸の共重合体(モル比72:28、平均分子量7万)
1.6重量部
シクロヘキサノン 1.6重量部
メトキシプロピルアセテート 3.8重量部
【0039】
前記重量比による組成物をガラスビーズにより10分間分散しカーボンブラック分散液を得た。
厚さ0.30mmのアルミニウム板(材質1050)をトリクロロエチレン洗浄して脱脂した後、ナイロンブラシと400メッシュのパミストン-水懸濁液を用いその表面を砂目立てし、よく水で洗浄した。この板を45℃の25%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い水洗後、更に2%HNO3に20秒間浸漬して水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/m2であった。次にこの板を7%H2SO4を電解液として電流密度15A/dm2で3g/m2の直流陽極酸化皮膜を設けた後、水洗乾燥した。次にこのアルミニウム板に下記下塗り液を塗布し、80℃,30秒乾燥した。乾燥後の被覆量は10mg/m2であった。
【0040】
(下塗り液)
β-アラニン 0.1g
フェニルスルホン酸 0.05g
メタノール 40g
純水 60g
更にこのアルミニウム板に下記感光液を塗布し、100℃で2分間乾燥してポジ型感光性平版印刷版を得た。乾燥後の重量は2.0g/m2であった。
【0041】
感光液
ナフトキノン-1,2-ジアジド-5-スルホニルクロリドとピロガロールーアセトン樹脂とのエステル化物(米国特許第3,635,709号明細書実施例1に記載されているもの)。
0.90g
クレゾールホルムアルデヒド-ノボラック樹脂(メタ:パラ比=6:4、重量平均分子量1800,未反応クレゾール0.5%含有)
2.00g
p-オクチルフェノール-ホルムアルデヒドノボラック 0.02g
ナフトキノン-1,2-ジアジド-4-スルホニルクロリド 0.01g
テトラヒドロ無水フタル酸 0.05g
4-(p-N,N-ビス(エトキシカルボニルメチル)-アミノフェニル)-2,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン
0.02g
4-(p-N-(p-ヒドロキシベンゾイル)アミノ-フェニル)-2,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン
0.02g
ビクトリアピュアブルーBOHの対イオンを1-ナフタレン-スルホン酸にした染料
0.03g
前記カーボンブラック分散液 1.02g
メガファックF-177(大日本インキ化学工業(株)製、フッ素系界面活性剤)
0.06g
メチルエチルケトン 20g
メチルアルコール 7g
【0042】
得られたポジ型感光性平版印刷版を版面出力2Wに調節したYAGレーザで露光した後、富士写真フイルム(株)製現像液、DP-4(1:8)、リンス液FR-3(1:7)を仕込んだ自動現像機を通して処理した。次いで富士写真フイルム(株)製ガムGU-7(1:1)で版面を処理し、1日放置後、ハイデルKOR-D機で印刷した。画像部の画像強度が上がり、非画像部の現像性が上がった結果、地汚れのない良好な印刷物が得られた。
【0043】
比較例1
実施例1において、ナフトキノン-1,2-ジアジド-5-スルホニルクロリドとピロガロール-アセトン樹脂とのエステル化物、及びナフトキノン-1,2-ジアジド-4-スルホニルクロリドを除いた他は同様にしてポジ型感光性平版印刷版を作成した。実施例1と同様の露光、現像処理を施したところ画像部と非画像部の濃度差の少ない弱々しい画像しか得られなかった。これを用いて実施例1と同様の印刷を行ったところ、地汚れのある印刷物しか得られなかった。
【0044】
実施例2
厚さ0.30mmのアルミニウム板をナイロンブラシと400メッシュのパミストンの水懸濁液を用いその表面を砂目立てした後、よく水で洗浄した。10%水酸化ナトリウムに70℃で60秒間浸漬してエッチングした後、流水で水洗後20%HNO3で中和洗浄、水洗した。これをVA=12.7Vの条件下で正弦波の交番波形電流を用いて1%硝酸水溶液中で160クーロン/dm2の陽極時電気量で電解粗面化処理を行った。その表面粗さを測定したところ、0.6μ(Ra表示)であった。ひきつづいて30%のH2SO4水溶液中に浸漬し55℃で2分間デスマットした後、20%H2SO4水溶液中、電流密度2A/dm2において厚さが2.7g/m2になるように陽極酸化した。
【0045】
次に下記感光液を調製し、この感光液を陽極酸化されたアルミニウム板上に塗布し、100℃で2分間乾燥して感光性平版印刷版を作成した。このときの塗布量は乾燥重量で2.5g/m2であった。
【0046】
感光液
ナフトキノン-1,2-ジアジド-5-スルホニルクロリドとピロガロールーアセトン樹脂とのエステル化物(米国特許第3,635,709号明細書実施例1に記載されているもの)。
0.45g
4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネートと2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸より合成したポリウレタン(特開昭63-124047号明細書合成例1に記載されているもの)。
0.30g
クレゾールホルムアルデヒド-ノボラック樹脂 0.80g
2-(p-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン
0.02g
オイルブルー#603(オリエント化学工業(株)製) 0.01g
前記カーボンブラック分散液 0.62g
メガファックF-177(大日本インキ化学工業(株)製、フッ素系界面活性剤)
0.06g
エチレンジクロリド 10g
メチルセロソルブ 10g
【0047】
得られたポジ型感光性平版印刷版を版面出力2Wに調節したYAGレーザで露光し、DP-4(商品名:富士写真フイルム(株)製)の8倍希釈水溶液で25℃において60秒間浸漬現像した。得られた平版印刷版を用いてハイデルベルグ社製KOR型印刷機で市販のインキにて上質紙に印刷した。画像部の耐久性が上がった結果、最終印刷枚数は65,000枚であり耐刷性に優れたものであった。
【0048】
比較例2
実施例2において、ナフトキノン-1,2-ジアジド-5-スルホニルクロリドとピロガロール-アセトン樹脂とのエステル化物を除いた他は同様にしてポジ型感光性平版印刷版を作成した。実施例2と同様の露光、現像処理を施したところ画像部と非画像部の濃度差の少ない弱々しい画像しか得られなかった。これを用いて実施例2と同様の印刷を行ったところ、地汚れのある印刷物がわずかしか得られなかった。
【0049】
実施例3
実施例2で使用した、陽極酸化されたアルミニウム板上に下記感光液を塗布し、100℃で2分間乾燥して感光性平版印刷版を作成した。このときの塗布量は乾燥重量で2.5g/m2であった。
【0050】
感光液
ナフトキノン-1,2-ジアジド-5-スルホニルクロリドとピロガロールーアセトン樹脂とのエステル化物(米国特許第3,635,709号明細書実施例1に記載されているもの)。
0.45g
N-(p-アミノスルフォニルフェニル)メタクリルアミドとメタクリル酸メチルの共重合体(ヨーロッパ特許第330,239(A2)号明細書の合成例1に記載されているもの)。
1.10g
2-(p-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン
0.02g
オイルブルー#603(オリエント化学工業(株)製) 0.01g
前記カーボンブラック分散液 0.62g
メガファックF-177(大日本インキ化学工業(株)製、フッ素系界面活性剤)
0.06g
メチルエチルケトン 10g
メチルセロソルブ 10g
【0051】
得られたポジ型感光性平版印刷版を版面出力2Wに調節したYAGレーザで露光し、DP-4(商品名:富士写真フイルム(株)製)の8倍希釈水溶液で25℃において60秒間浸漬現像した。得られた平版印刷版を用いてハイデルベルグ社製KOR型印刷機で市販のインキ及びUVインキを用いて上質紙に印刷した。最終印刷枚数を調べたところ、画像部の耐久性が良好になった結果、通常インキ使用時の印刷枚数60,000枚、UVインキ使用時の印刷枚数30,000枚と非常に優れた耐刷性をしめした。
【0052】
実施例4
厚さ0.24mmのJIS A 1050アルミニウム板を、平均粒径約21μのパミストンと水の懸濁液をアルミニウム表面に供給しながら、回転ナイロンブラシにより、ブラシグレイニング処理した後よく水で洗浄した。10%水酸化ナトリウム水溶液に50℃で10秒間浸漬してエッチングした後、流水で水洗後20%HNO3で中和洗浄、水洗した。これを電圧12.7Vの条件下で正弦波の交番波形電流を用いて1%HNO3水溶液中で160クーロン/dm2の陽極時電気量で電解粗面化処理を行った。その表面粗さを測定したところ、0.6μ(Ra表示)であった。引き続いて30%のH2SO4水溶液中に浸漬し、55℃で2分間デスマットした後、20%H2SO4水溶液中、電流密度2A/dm2において酸化皮膜の厚さが2.7g/m2になるように陽極酸化し、基板を調整した。
このように処理された基板の表面に下記組成の下塗り液を塗布し、80℃,30秒間乾燥した。乾燥後の被覆量は30mg/m2であった。
【0053】
(下塗り液)
アミノエチルホスホン酸 0.1g
β-アラニン 0.1g
フェニルホスホン酸 0.15g
メタノール 40g
純水 60g
更にこのアルミニウム板に下記感光液を塗布し、100℃で2分間乾燥をしてポジ型感光性平版印刷版を得た。乾燥後の重量は1.5g/m2であった。
【0054】
感光液
クレゾールホルムアルデヒド-ノボラック樹脂(メタ:パラ比=6:4、重量平均分子量1100,未反応クレゾール0.5%含有)
2.00g
2,5-ジブトキシ-4-モルホリノ-ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート
0.29g
テトラヒドロ無水フタル酸 0.05g
4-(p-N,N-ビス(エトキシカルボニルメチル)-アミノフェニル)-2,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン
0.02g
亜リン酸 0.01g
オイルブルー#603(オリエント化学工業(株)製) 0.01g
前記カーボンブラック分散液 0.62g
メガファックF-177(大日本インキ化学工業(株)製、フッ素系界面活性剤)
0.02g
メチルエチルケトン 15g
1-メトキシ-2-プロパノール 10g
【0055】
この様にして塗布された感光層の上に特公昭61-28986号公報実施例1に記載の方法に基づいて、(メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸ソーダ=68/20/12)の共重合体水溶液を静電スプレーすることによりマット層を設けた。得られたポジ型感光性平版印刷版を版面出力2Wに調節したYAGレーザで露光し、DP-4(商品名:富士写真フイルム(株)製)の8倍希釈水溶液で25℃において60秒間浸漬現像した。次に富士写真フイルム(株)製バーニング整面液BC-3で版面をふいた後、富士写真フイルム(株)製バーニング装置BP-1300で260℃で7分間加熱処理した。版が冷えた後、富士写真フイルム(株)製ガムGU-7を水で2倍に希釈した液で版面を処理した。この平版印刷版を1日放置後、印刷機ハイデルベルグKOR-Dにかけて印刷したところ、画像部の耐久性が上がった結果、印刷濃度の高い良好な印刷物が得られた。
【0056】
実施例5
実施例3で用いたカーボンブラック分散液のかわりに下記染料を用い、実施例3と同様の操作によりポジ型感光性平版印刷版を得た。
染料
2,6-ジ-t-ブチル-4-{5-(2,6-ジ-t-ブチル-4H-チオピラン-4-イリデン)-ペンタ-1,3-ジエニル}チオピリリウムテトラフルオロボレート(米国特許第4,283,475号明細書記載の化合物)
0.01422g
【0057】
得られたポジ型感光性平版印刷版を半導体レーザ(波長825nm,ビーム径:1/e2=11.9μ)を用い、線速度8m/secで版面出力110mWに調節し、露光した。
次に実施例3と同様の現像処理を行ったところ、線幅10μの細線が形成できた。次に、ビーム径を6μ(1/e2)に調整し同様にして4000dpiの書き込み解像度にて200lpiの網点画像を露光後、同様の処理を行い網点画像を形成した。
得られた平版印刷版を用いてハイデルベルグ社製KOR型印刷機で市販のインキ及びUVインキを用いて上質紙に印刷したところ、画像部の耐久性が良好になった結果、実施例3と同様な優れた耐刷性が得られた。
【0058】
実施例6
厚さ0.24mmのアルミニウム板をナイロンブラシと400メッシュのパミストン-水懸濁を用いその表面を砂目立てした後、よく水で洗浄して基板〔I〕を用意した。基板〔I〕を10%水酸化ナトリウムに70℃で20秒間浸漬してエッチングした後流水で水洗後、20%HNO3で中和洗浄、水洗し、12.7Vの条件下で正弦波の交番波形電流を用いて0.7%硝酸水溶液中で400クーロン/dm2の電気量で電解粗面化処理を行い、水洗して基板〔II〕を用意した。
この基板〔II〕を10%水酸化ナトリウム水溶液中で表面の溶解量が0.9g/m2になるように処理した。水洗後、20%硝酸溶液中で中和、洗浄してデスマットを行った後、18%硫酸水溶液中で、酸化皮膜量が3g/m2になるように陽極酸化した。
次に下記感光液を調製し、上記の陽極酸化されたアルミニウム板上に塗布し、100℃で2分間乾燥して感光性平版印刷版を作成した。この時の塗布量は乾燥重量で2.3g/m2であった。
【0059】
感光液
2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノンとナフトキノン-1,2-ジアジド-5-スルホニルクロリドとのエステル化物(エステル化率:90mol%)
0.45g
N-(p-アミノスルフォニルフェニル)メタクリルアミドとメタクリル酸メチルの共重合体(ヨーロッパ特許第330,239(A2)号明細書の実施例1に記載されているもの)。
1.70g
ナフタレン-2-スルホン酸 0.007g
クレゾール(メタ体60%、オルト体40%)-ホルムアルデヒド樹脂(重量平均分子量;4,000)
0.70g
2-(p-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン
0.02g
ナフトキノン-1,2-ジアジド-スルホニルクロリド 0.01g
ビクトリアピュアブルーBOH(保士谷化学(株)製の染料)
0.015g
前記カーボンブラック分散液 1.02g
メガファックF-177(大日本インキ化学工業(株)製フッ素系界面活性剤)
0.004g
ジメチルホルムアミド 4g
1-メトキシ-2-プロパノール 9g
メチルエチルケトン 7g
【0060】
得られたポジ型感光性平版印刷版を版面出力2Wに調整したYAGレーザで露光し、DP-4(商品名:富士写真フイルム(株)製)の8倍希釈水溶液で25℃において60秒間浸漬現像した。
得られた平版印刷版の消去スピードをPR-1(富士写真フイルム(株)製消去液)を用いて測定したところ、10秒と効率的なものであった。また、画像部の耐久性が良好になった結果、耐刷力はUVインキ使用時45,000枚、油性インキ使用時90,000枚と優れたものであった。またこの平版印刷版はUVインキ用洗浄液耐性に優れ、画像部と非画像部の現像性の差が拡大できた結果、活性度の落ちた疲労現像液での処理性にも優れたものであった。
【0061】
【本発明の効果】
本発明は、従来の処理装置や印刷装置をそのまま利用できる、コンピュータ等のディジタルデータから直接製版可能な記録性及び耐刷性の良い画像記録材料を提供することができる。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-09-09 
出願番号 特願平6-78888
審決分類 P 1 651・ 161- YA (B41N)
P 1 651・ 113- YA (B41N)
P 1 651・ 121- YA (B41N)
P 1 651・ 531- YA (B41N)
P 1 651・ 55- YA (B41N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中澤 俊彦  
特許庁審判長 江藤 保子
特許庁審判官 秋月 美紀子
阿久津 弘
登録日 2003-08-15 
登録番号 特許第3461377号(P3461377)
権利者 富士写真フイルム株式会社
発明の名称 画像記録材料  
代理人 濱田 百合子  
代理人 本多 弘徳  
代理人 高松 猛  
代理人 高橋 詔男  
代理人 高松 猛  
代理人 小栗 昌平  
代理人 濱田 百合子  
代理人 志賀 正武  
代理人 小栗 昌平  
代理人 市川 利光  
代理人 渡邊 隆  
代理人 本多 弘徳  
代理人 市川 利光  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ