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審決分類 審判 全部申し立て 1項1号公知  C08F
審判 全部申し立て 判示事項別分類コード:131  C08F
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08F
管理番号 1127315
異議申立番号 異議2003-72083  
総通号数 73 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-06-17 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-08-15 
確定日 2005-09-20 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3378582号「改善された特性の組合せを示すブロックコポリマー」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3378582号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
特許第3378582号の発明は、平成6年11月16日(優先日 1993年11月18日 オーストリア国)に特許出願されたものであって、平成14年12月6日に特許権の設定登録がなされ、その後、日本エラストマー株式会社(以下、「特許異議申立人」という。)より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成17年3月2日に特許異議意見書および訂正請求書が提出されたものである。

2.訂正の適否についての判断
2-1.訂正の要旨
全文訂正明細書の記載からみて、特許権者が求める訂正の内容は次のとおりのものと認められる。
訂正事項a
請求項1の
「(a)線状トリブロックコポリマーの主要部として、5,000〜25,000の範囲の実分子量を示す2つの末端の主成分としてのポリ(スチレン)ブロックと、1つの主成分としてのポリ(ブタジエン)中間ブロックとを含有し、該トリブロックコポリマーはブロックコポリマーの総重量に基づき10〜55重量%の範囲のスチレン含量を示し、見掛けの総分子量は15,000〜300,000の範囲であり、(b)トリブロックコポリマー成分のものに類似した、主成分としてのポリ(スチレン)ブロックおよび主成分としてのポリ(ブタジエン)ブロックとを含み、総ブロックコポリマー組成物重量に関して0〜40重量%の量のジブロックコポリマーを含有するブロックコポリマー組成物(ただし、該ジブロックコポリマーの主成分としてのポリ(ブタジエン)ブロックの分子量が該線状トリブロックコポリマーの主成分としてのポリ(ブタジエン)ブロックの分子量の1.5倍以上のものは除く)であって、該ブロックコポリマー組成物が多くとも7重量%の遊離ポリ(スチレン)含量を示し、ここでブロックコポリマー成分中のポリ(スチレン)末端ブロックは分子量分布Mw/Mn≦1.15を有し、さらにトリブロックコポリマーのポリ(スチレン)末端ブロック間の重量比が0.85〜1.15の範囲であるブロックコポリマー組成物。」を
「(a)線状トリブロックコポリマーの主要部として、5,000〜25,000の範囲の実分子量を示す2つの末端の主成分としてのポリ(スチレン)ブロックと、1つの主成分としてのポリ(ブタジエン)中間ブロックとを含有し、該トリブロックコポリマーはブロックコポリマーの総重量に基づき10〜55重量%の範囲のスチレン含量を示し、見掛けの総分子量は15,000〜300,000の範囲であり、(b)トリブロックコポリマー成分のものに類似した、主成分としてのポリ(スチレン)ブロックおよび主成分としてのポリ(ブタジエン)ブロックとを含み、総ブロックコポリマー組成物重量に関して0〜40重量%の量のジブロックコポリマーを含有するブロックコポリマー組成物(ただし、該ジブロックコポリマーの主成分としてのポリ(ブタジエン)ブロックの分子量が該線状トリブロックコポリマーの主成分としてのポリ(ブタジエン)ブロックの分子量の1.5倍以上のもの、及びカップリング反応により得られたものは除く)であって、該ブロックコポリマー組成物が多くとも7重量%の遊離ポリ(スチレン)含量を示し、ここでブロックコポリマー成分中のポリ(スチレン)末端ブロックは分子量分布Mw/Mn≦1.15を有し、さらにトリブロックコポリマーのポリ(スチレン)末端ブロック間の重量比が0.85〜1.15の範囲であるブロックコポリマー組成物。」と訂正する。

2-2.訂正の目的の適否、訂正の範囲の適否及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項aは、請求項1において、「ジブロックコポリマーを含有するブロックコポリマー組成物」に「カップリング反応により得られたものは除く」との限定を設けるものであり、これは、「請求項1に係る発明は、刊行物1又は2に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない」との取消理由を回避するために、刊行物1又は2に記載された発明との重複部分を除くための訂正であるから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内において、特許請求の範囲を減縮することを目的としてするものであり、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものでもない。

2-3.以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.本件発明
上記の結果、訂正後の本件請求項1〜5に係る発明(以下、「本件発明1」〜「本件発明5」という。)は、訂正された明細書(以下、「訂正明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された以下の事項によって特定されるとおりのものである。
「【請求項1】(a)線状トリブロックコポリマーの主要部として、5,000〜25,000の範囲の実分子量を示す2つの末端の主成分としてのポリ(スチレン)ブロックと、1つの主成分としてのポリ(ブタジエン)中間ブロックとを含有し、該トリブロックコポリマーはブロックコポリマーの総重量に基づき10〜55重量%の範囲のスチレン含量を示し、見掛けの総分子量は15,000〜300,000の範囲であり、(b)トリブロックコポリマー成分のものに類似した、主成分としてのポリ(スチレン)ブロックおよび主成分としてのポリ(ブタジエン)ブロックとを含み、総ブロックコポリマー組成物重量に関して0〜40重量%の量のジブロックコポリマーを含有するブロックコポリマー組成物(ただし、該ジブロックコポリマーの主成分としてのポリ(ブタジエン)ブロックの分子量が該線状トリブロックコポリマーの主成分としてのポリ(ブタジエン)ブロックの分子量の1.5倍以上のもの、及びカップリング反応により得られたものは除く)であって、該ブロックコポリマー組成物が多くとも7重量%の遊離ポリ(スチレン)含量を示し、ここでブロックコポリマー成分中のポリ(スチレン)末端ブロックは分子量分布Mw/Mn≦1.15を有し、さらにトリブロックコポリマーのポリ(スチレン)末端ブロック間の重量比が0.85〜1.15の範囲であるブロックコポリマー組成物。
【請求項2】請求項1に記載のブロックコポリマー組成物の製造方法であって、
(1)モノマー(類)の変換が実質的に完了するまで、不活性炭化水素溶媒中、一価のオルガノリチウム開始剤の存在下で、所望により微量の他のコモノマーと混合した主成分としてのスチレンを重合させる段階;
(2)所望により微量の他のコモノマーと混合された主成分としての1,3-ブタジエンを重合混合物に添加し、変換が実質的に完了するまで、上述の主成分としてのブタジエンモノマーを重合させる段階;
(3)一価のオルガノリチウム開始剤の2番目の部分を添加し、続いて主成分としてのブタジエンの2番目の部分を添加し、そして変換が実質的に完了するまで、前記モノマーを重合させる段階;
(4)ランダム化剤を添加する段階;
(5)主成分としてのスチレンモノマーの2番目の部分を添加し、そして変換が実質的に完了するまで、前記モノマーを重合させる段階;
(6)プロトン供与停止剤を添加する段階;および
(7)ブロックコポリマー組成物の回収段階;
を含む方法。
【請求項3】ジエトキシエタン、ジオキサン、オルソ-ジメトキシベンゼン、1,2-ジエトキシプロパン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジ-n-プロピルエーテルがランダム化剤として使用されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】請求項1に記載のブロックコポリマー組成物、さらにエクステンダー油、ファイバーおよび着色剤等の1つまたはそれ以上の助剤を含有する中間体組成物。
【請求項5】請求項4に記載の組成物から得られた履き物または造形変性エンジニアリング熱可塑性樹脂。」

4.特許異議の申立てについての判断
4-1.特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、甲第1〜8号証を提出して、概略、つぎの理由により訂正前の請求項1〜5に係る特許は取り消されるべきである旨、主張する。
(1)訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1号証の実験報告書によれば、本件出願前に市販された「Kraton D1101」によって公然知られた発明であるから、特許法第29条第1項第1号に該当し、特許を受けることができない。
(2)訂正前の請求項1に係る発明は、本件出願前に頒布された甲第2号証の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(3)訂正前の請求項4に係る発明は、甲第6号証の記載を参酌すれば、本件出願前に市販された「Kraton D1101」によって公然知られた発明であるから、特許法第29条第1項第1号に該当し、特許を受けることができない。
(4)訂正前の請求項5に係る発明は、甲第6号証及び甲第7号証の記載を参酌すれば、本件出願前に市販された「Kraton D1101」によって公然知られた発明であるから、特許法第29条第1項第1号に該当し、特許を受けることができない。
(5)訂正前の請求項2及び3に係る発明は、本件出願前に頒布された甲第4号証及び甲第5号証に記載された発明及び周知に技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反し、特許を受けることはできない。
(6)訂正前の請求項4及び5に係る発明は、「Kraton D1101」によって本件出願前に公然知られた発明又は甲第2号証に記載された発明と、甲第6号証及び甲第7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることはできない。

4-2.合議体の判断
4-2-1.取消理由
当審において通知した取消理由及び引用した刊行物等は以下のとおりである。
1.訂正前の請求項1に係る発明は、刊行物1又は2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.訂正前の請求項4及び5に係る発明は、刊行物3及び4に記載された周知事項を参酌すれば、本件出願前に頒布された刊行物1又は2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反し、特許を受けることができない。

<刊行物等>
刊行物1:L.J.FETTERS,B.H.MEYER,and D.McINTYRE”The Effect of Diblock and Homopolymer Impurities on the Morphology of Triblock Polymers”JOURNAL OF APPLEID POLYMER SCIENCE VOL.16,PP.2079-2089(1972)(特許異議申立人が提出した甲第2号証)
刊行物2:「KRATON thermoplastic rubber」,Shell Chemical Company,1985,p.4(同甲第3号証)
刊行物3:特公昭63-1980号公報(同甲第6号証)
刊行物4:「Versatile Kraton thermoplastic rubber」,Shell Chemical Company,02.1986,p.1、5、7(同甲第7号証)
実験証明書:日本エラストマー(株)大分工場 研究課 藤原 正裕が作成した平成15月8月1日付け実験証明書(同甲第1号証)

4-2-2.刊行物1ないし4の記載事項
刊行物1
(1-1)「ポリスチレンとポリジエンからなる市販のトリブロックポリマー(クレイトン)が、遊離ポリスチレン及びジブロック物質の量を決定するため、並びに、これらの重合不純物が溶剤注型サンプルのモルフォロジーに与える効果を明らかにするために、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー及び小角X線散乱によって特性を明らかにされた。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定により、クレイトンが80〜85%のトリブロック、15〜20%のジブロック、及び不純物量の遊離ポリスチレンからなっていることが分かった。」(第2079頁 「概要(Synopsis)」の項)

(1-2)「本報告はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)及び小角X線散乱(SAXS)によって、市販のクレイトン中のホモポリマー及びジブロックポリマーの量と効果を明らかにする。純トリブロック、不純物をドープしたトリブロック、市販クレイトン及び後重合反応で少しグレードの下がったクレイトンがSAXSによって比較された。」(第2080頁第11〜16行)

(1-3)「クレイトントリブロックポリマー(101,1101,102,1102,107,及び1107)は明らかに,2段階陰イオン重合とその後のトリブロックポリマーを得るためのカップリング反応によって合成されている。後で示すように、この合成方法により、所望のトリブロック物質に加えてカップリングしなかったジブロックポリマーを15〜20%含む生成物が得られる。」(第2080頁下から3行〜第2081頁第3行)

(1-4)「クレイトンの組成は、数平均分子量と共に表1に示した。容易に分かるように、タイプに関係なく、クレイトンは80〜85%のトリブロック鎖と15〜20%のジブロック物質を含んでいる。少量のポリスチレンがいくつかのサンプル中に見られるが、これは明らかにジエンモノマーの添加の間に起こる重合停止の結果である。ジブロックの存在はクレイトンの製造のための合成手順がポリジエニルリチウム鎖末端とアルキルジハライド種との間のカップリング反応を含むという指摘を裏付けている。図1で検出されたポリスチレンの分子量(Mw)は標準ポリスチレンサンプルから得られた較正曲線から、1.5×104 であると評価される。図4,5は低速でのSBS及びSISのGPC分析した図である。これらのブロックポリマーは非常に純粋なものである。いずれの図も、サンプル中にホモポリマー又はジブロックポリマーの存在を示していない。」(第2082頁第7〜21行)

(1-5)「

」(第2083頁 表1)

(1-6)図7には、SBS(13700-63400-13700)、K-101及びK-101-OHについてのX線散乱のグラフが示されている。(第2086頁)

(1-7)「SBS、K-101及びK-101-OH材料の主ピーク領域におけるX線散乱が図7で対比されている。SBSサンプル〔組成及び分子量においてKraton 101と同様(similar)である。〕は最も明瞭な鮮明さ、すなわち、全領域を通して、顕著な一連の小さなピークを示している。K-101サンプルはいくつかの領域で一連の鮮明さを欠くピークを示しており、同じ領域でいくつかのピークが消失している。-中略-図8は単粒子散乱の領域におけるジブロック不純物の重大な効果を示している。SBSについては図8では容易にわかる唯一のピークとショルダーらしいものがある。K-101ではショルダーと非常にブロードなピークが2500secの辺りにある。」(第2086頁第8〜20行)

(1-8)「Kratonには約20%のジブロックが存在することは確かである。幸いにも、ホモポリマー(ポリスチレン)の量は約1%以下である。」(第2087頁第2〜4行)

刊行物2
(2-1)表1には、Kraton D-1101(SBS)のスチレン/ゴム比が31/69であることが記載されている。(第2頁)

刊行物3
(3-1)「1 (A)1,2結合構造が70%以上、結晶化度が5〜35重量%、固有粘度〔η〕が0.7以上(30℃トルエン中)であるポリブタジエン20〜85重量%;
(B)芳香族ビニル化合物と共役ジオレフインとのブロツク共重合体10〜70重量%;
(C)1,4結合構造が80%以上のポリブタジエン5〜30重量%の各成分からなる組成物を主成分とする熱可塑性エラストマー組成物。
2 組成物総計100重量部に対し、
(D)プロセス油 ・・・0〜50重量部および
(E)無機質充填剤 ・・・0〜50重量部
を含有する特許請求の範囲第1項記載の組成物。」(特許請求の範囲の請求項1、2)

(3-2)「(B)成分であるTRとしては、常温で熱力学的にゴム状態のポリマーブロツク(ソフトセグメント)とガラス状態や結晶状態のポリマーブロツク(ハードセメント)からなり、加硫しなくても常温では従来の加硫ゴムと類似した物性を有し、しかも加工温度に於いては従来のプラスチツクと同様の塑性流動性を有するポリマーで、ハードセグメントとして結合芳香族ビニル化合物を10〜50重量%有する共役ジオレフインとのブロツク共重合体である。具体的には、ポリスチレンーポリブタジエンブロツク共重合体、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレンブロツク共重合体-中略-などの芳香族ビニル化合物と共役ジオレフインのブロツク共重合体及びこれらブロツク共重合体の水素化物である。」(第4欄第13〜32行)

(3-3)「(D)成分であるプロセス油としては粘度が30〜200SUS(at98.9℃)比重が0.85〜1.10(15/4℃)で表わされるゴム配合用プロセス油でその使用量は、(A)+(B)+(C)総計100重量部に対し0〜50重量部であるが力学的強度特性、流動性の点から好ましくは5〜30重量部である。
(E)成分である無機質充填剤としては、炭酸カルシウム,クレー,珪酸塩,炭酸マグネシウム,亜鉛華,チタンホワイト,カーボンブラック等でその使用量は(A)+(B)+(C)総計100重量部に対し0〜50重量部であるが柔軟性、流動性の点から好ましくは、2〜30重量部である。」(第5欄第2〜13行)

(3-4)「本発明組成物は柔軟でかつ耐摩耗性,力学特性,流動性を特に必要とする用途、例えば、靴底材,発泡サンダル,弱電部品,自動車部品,緩衝材,運動器具(ボール等)に有効である。さらに本発明組成物は、組成に応じて広い範囲の特性を有しており、各種成形方法に依り従来から使用されている各種熱可塑性エラストマーの用途にも広く利用できる。例えば、自動車機能部品,履物(インナーソール,アウトソール,ユニツトソール,キャンパスシユーズ,和ぞうり等)、-中略-その他種々の用途に使用することができる。」(第6欄第9〜16行)

(3-5)「(5)TR-2 シエル化学(株)製クレイトン1101(スチレン-ブタジエン-スチレンブロツク共重合体)」(第8欄28〜30行)

刊行物4
(4-1)「クレイトンゴムの性質は、種々のゴム、可塑剤、充填剤及び他の成分を添加することによって変えることが出来る。これらの成分は、処方の、粘性、硬さ、軟化温度又は引張り強さを変えることが出来る。クレイトンゴムの特性はこれらの添加物により変えることが出来る。」(第1頁右欄第15〜24行)

(4-2)「クレイトンD及びクレイトンG1000及び4000ポリマーは他の熱可塑性樹脂とブレンドして用いられる特性改善材として有効である。」(第1頁右欄第28〜31行)

(4-3)「クレイトンゴムはポリスチレン、ポリオレフィン及びエンジニアリング熱可塑性樹脂の性能を向上するための改質剤として用いることができる。これらの改質されたポリマーは、玩具、器具、TVケースとしての用途があり、他の典型的な用途としてはフルーツのパッケージ、フィルムカートリッジ、ミートトレイ、フラワーポット及び自動車のラジエータグリルがある。」(第5頁右欄第1〜11行)

(4-4)「射出成形」と題する写真に靴底様形状の金型が示されている。(第7頁右下写真4)

4-2-3.対比、判断
(1)本件発明1について
(1-1)本件発明1と刊行物1に記載された発明との対比
刊行物1には、「ポリスチレンとポリジエンからなる市販のトリブロックポリマー(クレイトン)」について、「ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定により、クレイトンが80〜85%のトリブロック、15〜20%のジブロック、及び不純物量の遊離ポリスチレンからなっていることが分かった」(摘示記載(1-1))と記載されている。
また、表1には、クレイトンブロックポリマーのサンプル101,1101,102,1102,107,1107などについて、「Mn×10-4,g/mol」、「ABA,wt-%」、「A(0.5B),wt-%」、「A,wt-%」及び「ポリスチレン,wt-%」の項目についての数値が記載されており(摘示記載(1-5))、例えばサンプル101(ロットNo.70903)については、Mn×10-4=10.0g/mol、ABA=80wt-%、A(0.5B)=19wt-%、A=1%及びポリスチレン=30wt-%であることが示されている。
そして、図7のグラフ中には「SBS(13700-63400-13700)」(摘示記載(1-6))との表記があり、SBSサンプルが組成及び分子量においてKraton 101と同様であること(摘示記載(1-7))が記載されているところから、表1におけるサンプル101の「ABA」は「SBS」即ちポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレンのトリブロックコポリマーに相当するものであり、略号の対応関係から、「A(0.5B)」はポリスチレン-ポリブタジエンのジブロックコポリマーを、「A」は遊離のポリスチレンをそれぞれ指しており、「ABA」の各ブロックの分子量は「SBS(13700-63400-13700)」の()内の数字と同様の値である、と解釈することができる。
このような視点からみれば、刊行物1の表1に記載されたクレイトンサンプル101は、80重量%のトリブロックコポリマーと19重量%のジブロックコポリマーと1重量%の遊離のポリスチレンを含有するブロックコポリマー組成物であって、トリブロックコポリマーが、分子量が約13,700の2つの末端ポリスチレンブロックとポリブタジエン中間ブロックとを含有し、総分子量は約90800(註:13700+63400+13700)であり、ブロックコポリマーの総重量に基づき約30重量%(註:13700×2/90800×100)のスチレン含量を有し、ポリスチレン末端ブロック間の重量比が約1(註:13700/13700)であるもの、ということができる。
しかしながら、本件発明1は、更に
(あ)「ポリ(スチレン)末端ブロックは分子量分布Mw/Mn≦1.15」を有する点及び
(い)「該ジブロックコポリマーの主成分としてのポリ(ブタジエン)ブロックの分子量が該線状トリブロックコポリマーの主成分としてのポリ(ブタジエン)ブロックの分子量の1.5倍以上のもの、及びカップリング反応により得られたものは除く」
との要件を備えたものであり、この内、(い)の「カップリング反応により得られたものは除く」という点について、刊行物1には「クレイトントリブロックポリマー(101,1101,102,1102,107,及び1107)は明らかに,2段階陰イオン重合とその後のトリブロックポリマーを得るためのカップリング反応によって合成されている」(摘示記載(1-3))と記載されており、クレイトントリブロックポリマー101はこの点だけをとっても、本件発明1とは明らかに相違するものである。
その上、ポリ(スチレン)末端ブロックの分子量分布Mw/Mnについては、刊行物1には全く開示するところがなく、実験報告書に示された、クレイトンD1101(1988年入手品)のポリ(スチレン)末端ブロックの分子量分布Mw/Mnが1.148であった、との実験結果が、別異の組成物であるクレイトン101についての分子量分布を教示するものということもできない。
そして、刊行物1の表1に示されたクレイトンの各サンプルの内、サンプル101以外のものも、全てカップリング反応によって合成されており、それぞれのブロックポリマーを構成する各ブロックの分子量については記載がなく、それを類推する合理的根拠も見出せないので、本件発明1が、刊行物1に記載された発明であるとすることはできない。

(1-2)本件発明1と刊行物2に記載された発明との対比
刊行物2の表1には、スチレン/ゴム比が31/69である「Kraton D-1101(SBS)」(摘示記載(2-1))と称する製品について記載されており、本件出願前の1988年に入手されたKraton D1101について分析したとされる実験証明書には、「トリブロック、ジブロック及びポリスチレンと考えられる3つのピークが認められ、そのトリブロック及びジブロックの分子量はそれぞれ181000と96000、トリブロックとジブロックの重量比は80.9/16.3、遊離ポリスチレンは2.8(wt%)、ポリスチレンブロックの分子量は19882、そのMw/Mnは1.148であり、スチレン含有量は30.6重量%である」との実験結果が示されている。
しかしながら、上記のように刊行物1の記載(摘示記載(1-3))からみてKraton D1101はカップリング反応によって合成されたものと考えられるから、Kraton D1101は「カップリング反応により得られたものは除く」との本件発明1の要件を満たしておらず、本件発明1が、刊行物2に記載された発明であるとすることはできない。

(2)本件発明4及び5について
本件発明4及び5は、本件発明1を直接的又は間接的に引用して、更に技術的限定を付したものであるが、上記のとおり、本件発明1が刊行物1又は2に記載された発明ではない以上、本件発明1を前提とする本件発明4及び5も同様の理由により、刊行物1又は2に記載された発明ではない。
また、刊行物1及び2に記載されたKratonのサンプル101及びD-1101はいずれもカップリング反応により得られたものである点で本件発明1とは相違するものであり、カップリング反応以外の方法で得られたブロックコポリマーが如何なる組成、構造、分子量等を有するのかについてこれらの刊行物には教示するところがないから、本件発明1が刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできず、同様の理由により、本件発明4及び5もまた、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(3)他の特許異議申立理由について
特許異議申立人は、上記取消理由以外に、以下の理由により訂正前の請求項1〜5に係る特許は取り消されるべきである旨、主張している。
(3-1)訂正前の請求項1、4及び5に係る発明は、本件出願前に市販された「Kraton D1101」によって公然知られた発明であるから、第29条第1項第1号に該当し、特許を受けることができない、及び
(3-2)訂正前の請求項2及び3に係る発明は、甲第4号証及び甲第5号証に記載された発明及び周知に技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反し、特許を受けることはできない

しかしながら、(3-1)の理由については、上記(1-2)に述べたとおり「Kraton D1101」は本件発明1の要件を満たしていないから、本件発明1がこれによって本件の出願前に公然知られた発明であるとすることはできない。
また、(3-2)の理由については、本件発明2及び3はいずれも本件発明1のブロックポリマー組成物の製造方法の発明であって、甲第4号証及び甲第5号証に記載されたいずれの製造方法によっても本件発明1のようなブロックポリマー組成物が得られるとすることはできず、また、そのようにすることを当業者が容易に想到し得たものと解すべき根拠もないから、本件発明2及び3が、甲第4号証及び甲第5号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立の理由及び証拠によっては、本件発明1〜5についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1〜5についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明1〜5についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
改善された特性の組合せを示すブロックコポリマー
(57)【特許請求の範囲】
1.(a)線状トリブロックコポリマーの主要部として、5,000〜25,000の範囲の実分子量を示す2つの末端の主成分としてのポリ(スチレン)ブロックと、1つの主成分としてのポリ(ブタジエン)中間ブロックとを含有し、該トリブロックコポリマーはブロックコポリマーの総重量に基づき10〜55重量%の範囲のスチレン含量を示し、見掛けの総分子量は15,000〜300,000の範囲であり、(b)トリブロックコポリマー成分のものに類似した、主成分としてのポリ(スチレン)ブロックおよび主成分としてのポリ(ブタジエン)ブロックとを含み、総ブロックコポリマー組成物重量に関して0〜40重量%の量のジブロックコポリマーを含有するブロックコポリマー組成物(ただし、該ジブロックコポリマーの主成分としてのポリ(ブタジエン)ブロックの分子量が該線状トリブロックコポリマーの主成分としてのポリ(ブタジエン)ブロックの分子量の1.5倍以上のもの、及びカップリング反応により得られたものは除く)であって、該ブロックコポリマー組成物が多くとも7重量%の遊離ポリ(スチレン)含量を示し、ここでブロックコポリマー成分中のポリ(スチレン)末端ブロックは分子量分布Mw/Mn≦1.15を有し、さらにトリブロックコポリマーのポリ(スチレン)末端ブロック間の重量比が0.85〜1.15の範囲であるブロックコポリマー組成物。
2.請求項1に記載のブロックコポリマー組成物の製造方法であって、
(1)モノマー(類)の変換が実質的に完了するまで、不活性炭化水素溶媒中、一価のオルガノリチウム開始剤の存在下で、所望により微量の他のコモノマーと混合した主成分としてのスチレンを重合させる段階;
(2)所望により微量の他のコモノマーと混合された主成分としての1,3-ブタジエンを重合混合物に添加し、変換が実質的に完了するまで、上述の主成分としてのブタジエンモノマーを重合させる段階;
(3)一価のオルガノリチウム開始剤の2番目の部分を添加し、続いて主成分としてのブタジエンの2番目の部分を添加し、そして変換が実質的に完了するまで、前記モノマーを重合させる段階;
(4)ランダム化剤を添加する段階;
(5)主成分としてのスチレンモノマーの2番目の部分を添加し、そして変換が実質的に完了するまで、前記モノマーを重合させる段階;
(6)プロトン供与停止剤を添加する段階;および
(7)ブロックコポリマー組成物の回収段階;
を含む方法。
3.ジエトキシエタン、ジオキサン、オルソ-ジメトキシベンゼン、1,2-ジエトキシプロパン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジ-n-プロピルエーテルがランダム化剤として使用されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
4.請求項1に記載のブロックコポリマー組成物、さらにエクステンダー油、ファイバーおよび着色剤等の1つまたはそれ以上の助剤を含有する中間体組成物。
5.請求項4に記載の組成物から得られた履き物または造形変性エンジニアリング熱可塑性樹脂。
【発明の詳細な説明】
本発明は、改善された特性の組合せを示すブロックコポリマー、その製造方法、および該ブロックコポリマーから得られる製品に関する。さらに詳細には、本発明は、最終製品に加工する間の色安定性、耐熱性、耐剪断性(shear resistance)、さらに一方では、耐磨耗性、他方では引張強さおよび/または硬さの、改善された組合せを示す線状ブロックコポリマーに関する。
スチレン-共役ジエンブロックコポリマーは、色安定性、耐熱性、耐剪断性、十分に高い耐磨耗性、引張強さおよび/または硬さが依然として強く要求される多種の用途のために現在のところ主要な基本的構成ブロックを形成する。
例えばエフ・シー・ジャギッシュ(Jagisch)およびティ・エム・タンクレド(Tancrede)のピースエスシーティ・セミナー・プロシーディングズ(PSCT Seminar Proceedings)、1990年5月の「ニュー・スチレン・ブロック・コポリマーズ・フォー・テープ・アンド・ラベル・ユース(New Styrene Block Copolymers for Tape and Label use)」から知られるとおり、一般に構造ABAまたは(AB)nXを示すスチレン-共役ジエンブロックコポリマー(以下SBC’s)が製造されることが一般に受け入れられ、ここでAはポリスチレンブロックを、そしてBはポリ(共役ジエン)、さらに好ましくはポリ(ブタジエン)、ポリ(イソプレン)、ポリ(ブタジエン/イソプレン)またはエチレン/ブチレン・ランダムコポリマーを表す。上述のSBC’sの3種の主な商業的な製造方法が開発された:
(a)スチレンの一官能価アニオン誘導による比較的低分子量のポリ(スチレン)ポリマーブロックの合成段階、1つ以上の共役ジエンを添加して「リビング」ポリ(スチレン-共役ジエン)セグメントまたはジブロックを形成する段階、およびこれらのアニオンリビングジブロックをカップリングして線状スチレン-共役ジエン-スチレンコポリマーを得るか、または多官能価カップリング剤を用いてマルチアームまたはラジアルコポリマー(multiarmed or radial copol ymers)を得る段階を包含する困襲的なカップリング法、または、
(b)二官能価開始剤を使用するジエン中間ブロックの初期合成(ここで、鎖は中央から両方の方向に外向きに成長する)、ジエニルアニオン鎖端と反応するスチレンの添加によるポリスチレン末端ブロックの形成、および適切なプロトン供与体による停止反応、による線状トリブロックコポリマーABAの逐次合成、および、
(c)一官能価開始剤によるリビングポリスチレンブロックの初期合成、共役ジエンの添加およびその重合の完了、第2のスチレンの添加およびその重合の完了、および適切なプロトン供与体による停止反応、による線状トリブロックコポリマーABAの逐次合成。
一方、カップリング工程は100パーセントの変換を提供せず、カップリング剤由来のハロゲン含有残渣および弱いカップリング部位の可能性により、加工の間にブロックコポリマーの制御されない分解を起こすので、製造方法(a)の固有の結果は、種々の量、通常15パーセントまたはそれ以上のカップリングされない末端ジブロックが存在することとなることが理解されるであろう。
上述のジブロックコポリマーは、各バッチの所望のトリブロックコポリマー中のジブロックコポリマーの含量が調整されるのが困難である一方で、これらのブロックコポリマーから製造されるべき製品中の最終特性における種々の程度の様々な影響、例えば機械的特性の薄弱化、を示すと思われてきた。
さらに、このようなジブロック成分は、溶融粘度の顕著な減少を起こすと思われるので、最終的に得られたトリブロックコポリマー組成物中のジブロックコポリマーのモル分率の「微調整(fine tuning)」方法により、最終的に製造されたブロックコポリマー中で予め決められた濃度で生じることが望まれた。
結果として、上述のジブロックコポリマーが存在すると、トリブロックコポリマー含有組成物の機械的特性に負の影響を及ぼすであろうことが理解されるであろう。
改善された色安定性、耐熱性および耐剪断性を有し、魅力的な加工性とともに引張強さおよび/または硬さおよび/または耐磨耗性のような魅力的な機械的特性も示すSBC’sの必要性がなお強く存在した。該SBC’sの先のポリマー鎖は重合の開始に由来する末端のアルカリ金属を含有する。
一般に、特定のハロゲン含有カップリング剤の使用、ブロックコポリマー加工段階中のポリ(共役ジエン)相を安定化するために特異的に選択された抗酸化添加剤の使用および/またはリビング末端アルカリ金属塩、特に開始に由来するリチウム塩の中和のために使用されるべき特別に選択された酸の使用を避ける方向で、SBC’sの色安定性、熱安定性および剪断安定性の問題を解決するために、多種の提案が最近の10年間に成された。
しかし、上述の色安定性、熱安定性、および剪断安定性に加えて、引張強さおよび/または硬さおよび/または耐磨耗性のようなさらに改善された機械的特性の必要性は、例えば高品質の靴の製造、ブレンド物中のエンジニアリング熱可塑性樹脂(thermoplasts)のエラストマー変性、エラストマービチューメン変性またはホットメルト接着剤およびシーラントのような特定の現代的用途に対してなお強く残っている。
このような意図されたSBC’sを提供することが本発明の目的である。上述のSBC’sを製造する経済的に魅力的な方法を提供することが本発明の別の目的である。
広範囲な研究および実験の結果として、上述の特定の組み合わされた特性を示すSBC’sおよびその効果的な製造方法が驚くべきことに見い出された。
したがって、本発明は、(a)線状トリブロックコポリマーの主要部として、5000〜25000の範囲の実分子量(real molecular weight)を示す2つの末端の主成分としてのポリ(スチレン)ブロックおよび1つの主成分としてのポリ(ブタジエン)中間ブロックを含有し、上述のトリブロックコポリマーは、ブロックコポリマーの総重量に基づき10〜55重量%、好ましくは15〜35重量%の範囲のスチレン含量を示し、15,000〜300,000、好ましくは100,000〜270,000の範囲の見掛けの総分子量(apparent total molecular weight)を示し、(b)トリブロックコポリマー成分のものに類似した主成分としてのポリ(スチレン)ブロックおよび主成分としてのポリ(ブタジエン)ブロックを含む総ブロックコポリマー組成物重量に関して0〜40重量%、好ましくは5重量%〜40重量%の量のジブロックコポリマーを含有するブロックコポリマー組成物に関する。該ブロックコポリマー組成物は、最大7重量%の遊離ポリ(スチレン)(free poly(styrene))含量を示し、ここでブロックコポリマー成分中のポリ(スチレン)末端ブロックは分子量分布Mw/Mn≦1.15を有し、そしてさらにトリブロックコポリマーのポリ(スチレン)末端ブロックの間の重量比は0.85〜1.15の範囲である。
さらに、製造方法(b)および(c)の場合に、ポリ(スチレン)ブロックまたは最終的なポリ(スチレン)ブロックは、それぞれ標準的に、方法(a)を介して特に、ポリ(ブタジエン)中間ブロックを扱う際に最初に得られたポリ(スチレン)ブロックに比べると魅力的でない分子量分布の増大を示す様に思われることも見い出された。分子量分布はMw/Mnとして定義され、さらにP(=多分散性ファクター)としてのこの明細書を通して記載され、特定の範囲内になければならないことがわかった。
「主成分としてのポリ(スチレン)ブロック」および「主成分としてのポリ(ブタジエン)ブロック」の用語は、本明細書を通して使用されるものとして、実質的に純粋なホモポリマーブロック、すなわち、1種の主要モノマー、すなわち少なくとも95重量%、好ましくは99重量%より多くの1種のモノマー、および微量の構造的に関連したコモノマーまたは最終的なブロックコポリマーに生じる微量の他の単数又は複数のコモノマーから誘導されるコポリマーブロックをそれぞれ意味し、特に主成分としてのスチレン中の微量のブタジエンまたは任意の他の共役ジエンは上述のブロックコポリマー中に存在し得る。
主成分としてのスチレンモノマーは、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、1,3-ジメチルスチレンまたはそれらの混合物から選択される微量(<5重量%)のモノマーと所望により混合し得る。
さらに好ましくは、スチレンの純粋なホモポリマーブロックは、本発明のブロックコポリマー組成物中に含まれる。
ポリ(ブタジエン)ブロックは、純粋なホモポリマーブロック、または、ブタジエンと、例えばイソプレン、2,3-ジメチル1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンまたは1,3-ヘキサジエンのような微量の他の構造的に関連する共役ジエンモノマー、あるいはコポリマーブロック中で生じる微量の他のコモノマー特にスチレンとからなるブロックであり得る。
特に本発明のトリブロックコポリマー成分の主成分としてのポリ(ブタジエン)ブロックは、5,000〜350,000の範囲、好ましくは10,000〜250,000の範囲、さらに好ましくは20,000〜200,000の範囲の実平均分子量(real average molecular weights)を示すのに対して、主成分としてのポリ(スチレン)ブロックは、5,000〜35,000、好ましくは7,000〜25,000、さらに好ましくは10,000〜20,000の範囲の平均GPC分子量を示す。
上述のポリ(ブタジエン)ブロックのビニル含量は、通常15重量%を越えず、さらに好ましくは約9重量%でなくてはならない。
「トリブロックコポリマーのものに類似する‥‥ブロックを含有するジブロックコポリマー類」の用語は、本明細書を通して使用するものとして、その中のポリ(スチレン)ブロックが、トリブロックコポリマーの最後に形成されたポリ(モノビニル芳香族)ブロックに実質的に同一であるジブロックコポリマーを意味する。
「実質的に同一」の用語は、この関連で使用するものとして、ジブロックのポリ(スチレン)ブロックおよびトリブロックコポリマー中で最後に形成されたポリ(スチレン)ブロックの間のモル重量分率(molar weight ratio)が0.95〜1.05、好ましくは0.99〜1.01の範囲にあり、そしてさらに好ましくは可能な限り1.00に近いことを意味する。
本明細書を通して使用するものとして「見掛けの分子量(apparent molecular weight)」の用語は、ASTM D-3536に記載されている様に、数種のポリ(スチレン)検量線標準を使用するゲル透過クロマトグラフィ(GPC)を用いて測定する場合のポリマーの分子量を意味する。
本明細書を通して使用するものとして「実分子量」の用語は、ASTM D-3536に記載されている様に、数種のポリ(スチレン)検量線標準を使用するGPCの手段で測定した単離ポリ(スチレン)ブロックの分子量を意味する。
上述のジブロックの総平均見掛け分子量(total average apparent molecular weight)は、50,000〜250,000、好ましくは70,000〜225,000の範囲である。さらに好ましくはジブロックコポリマーの分子量は、トリブロックの分子量の約半分である。
ブロックコポリマー組成物中のさらに好ましいジブロックコポリマー含量は、15〜30重量%の範囲にある。
最も好ましいブロックコポリマー組成物は、純粋なポリ(スチレン)および純粋なポリ(ブタジエン)ブロックを含む、トリブロックコポリマーおよびジブロックコポリマーを含む。
トリブロックコポリマーのスチレン含量は15〜35重量%の範囲であるこが好ましい。
トリブロックコポリマーの見掛けの総分子量は、100,000〜270,000の範囲であるのが好ましい。
ブロックコポリマー組成物中の遊離ポリ(スチレン)含量は、好ましくは4重量%より少なく、さらに好ましくは1重量%より少ない。
トリブロックコポリマーのポリ(スチレン)ブロックの重量比は、好ましくは0.90〜1.10の範囲にあり、さらに好ましくは0.99〜1.01、そして最も好ましくは1.00に可能な限り近い。
前述で特定したブロックコポリマー組成物は、改善された引張強さおよび/または硬さを示し、一方で、耐磨耗性、色安定性、熱安定性および剪断安定性のような他の特性を保持することが驚くべきことに見い出された。
前述で特定した本発明のブロックコポリマー組成物は:
(1)モノマー(類)の変換が実質的に完了するまで、不活性炭化水素溶媒中、一価のオルガノリチウム開始剤の存在下で、所望により微量の他のコモノマーと混合した、スチレンを重合させる段階;
(2)重合混合物に、所望により微量に他のコモノマーと混合された1,3-ブタジエン、好ましくは実質的に純粋な1,3-ブタジエンを添加し、変換が実質的に完了するまで、上述の主成分としてのブタジエンモノマーを重合させる段階;
(3)所望により一価のオルガノリチウム開始剤の2番目の部分を添加し、続いて主成分としてのブタジエンの2番目の部分を添加し、そして変換が実質的に完了するまで、前記モノマーを重合させる段階;
(4)ランダム化剤(randomizing agent)を添加する段階;
(5)スチレンの2番目の部分を添加し、そして変換が実質的に完了するまで、前記モノマーを重合させる段階;
(6)プロトン供与停止剤(proton donating terminating agent)を添加する段階;
(7)ブロックコポリマー組成物の回収段階;および
(8)所望により、純粋トリブロックコポリマーを予め決められた量のジブロックコポリマー、好ましくは実質的に同一のジブロックコポリマーと混合する段階を含む方法により得られる。
前述で特定した本発明のブロックコポリマー組成物は:
(1)モノマー(類)の変換が実質的に完了するまで、不活性炭化水素溶媒中、二価のオルガノリチウム開始剤の存在下で1,3-ブタジエンを重合させる段階;
(2)ランダム化剤を添加する段階;
(3)スチレンモノマーの一部を添加し、そして変換が実質的に完了するまで、上述のモノマーを重合させる段階;
(4)プロトン供与停止剤を添加する段階;
(5)ブロックコポリマー組成物の回収段階;および
(6)所望により、得られたトリブロックコポリマーを予め決められた量の実質的に同一のジブロックコポリマーと混合する段階
を含む別の方法の実施態様により得られうる。
上述で定義した方法の2つの実施態様は、本発明の別の態様を形成する。先に特定した方法の2つの実施態様にしたがって得られたブロックコポリマー組成物は、純粋トリブロックコポリマーおよび/または上述のトリブロックコポリマーとジブロックコポリマーとの混合物を包含し得、その後者の成分は、再開始により現場で形成され得るか、または後ほど予め決められた量でトリブロックコポリマーと混合され得ることが理解されるであろう。
好ましくは、ジブロックコポリマー成分のポリ(スチレン)ブロックは、トリブロックコポリマーの最後に形成されたポリ(スチレン)ブロックのものに実質的に同一である。したがって、組成物中のジブロック成分は、再開始し、モノマー量を適切に調節することにより現場で製造するのが好ましいであろう。
好ましい一価のオルガノリチウム開始剤は、sec-ブチルリチウムであるが、t-ブチルリチウムまたはn-ブチルリチウムも優れた成果で使用し得る。
適切な二価のオルガノリチウム開始剤は、1,4-ジリチオ-1,1,4,4-テトラフェニルブタン、1,3-ビス(1-リチオ-1,3-ジメチルペンチル)ベンゼン、1,3-ビス(1-リチオ-3-メチルペンチル)-ベンゼン、1,3-フェニレンビス(3-メチル-1-フェニルペンチリデン)ビス-(リチウム)、1,3-フェニレンビス(3-メチル-1-(4-メチルフェニル)-ペンチリデンビス(リチウム)から選ばれ得る。
好ましい二価の開始剤は、1,3-ビス(1-リチオ-1,3-ジメチルペンチル)ベンゼンまたは1,3-フェニレンビス(3-メチル-1-フェニルペンチリデン)ビス(リチウム)である。
1つまたはそれ以上の安定化化合物および/またはリチウムもしくは有機金属開始剤由来の他の金属残渣の溶解および抽出のために特に選択された酸は、最初に得られたブロックコポリマーに添加され得ることが理解されるであろう。
このような化合物は、リビングポリマーの停止反応の間または直前に添加してもよい。しかし、安定化剤は停止反応直後に添加するのが好ましいであろう。
さらに好ましい実施態様では、一価のオルガノリチウム開始剤を使用する方法の段階(6)後または後ほどに得られたブロックコポリマー組成物に、酸を添加することなしに予め決められた量の安定化剤またはこのような剤の組合せを添加し得る。使用されるべき安定化剤は、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(IONOL)、3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシベンゼンプロパン酸のオクタデシルエステル(IRGANOX1076)、2,4-ビス(n-オクチルチオ)6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5トリアジン(IRGANOX565)、2-t-ブチル-6(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニル アクリレート(SUMILIZER GM)およびそれらの組合せからなる群から通常選択され;および/またはホスフィト(phosphite)酸化防止剤は、トリス-(ノニルフェニル)ホスフィト(TNPP)、(POLYGARD HR)、トリス(混合モノ-およびジ-ノニルフェニル)ホスフィト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフィト、(ULTRANOX626)およびそれらの組合せから選択される。(IONOL,IRGANOX,POLYGARD,ULTRANOXおよびSUMILIZERは商標である。)好ましいホスフィト酸化防止剤はTNPPである。このような安定化剤は、重量で100部のブロックコポリマー組成物当たり、重量で0.1〜5部の量で、そして好ましくは重量で100部当たり、重量で0.2〜1部で添加し得るのに対して、ホスフィト安定化剤とUV安定化剤の相互重量比は、1〜20、そして好ましくは2〜10の範囲である。
最終的に得られたブロックコポリマー組成物は、トリブロックコポリマーおよびジブロックコポリマーを含有し、そしてその相互の重量比は、段階2および3で供給される、一価のオルガノリチウム開始剤の1番目の部分に関連するモノマー類および同開始剤の2番目の部分の特定量により決定されるであろうことは理解されるであろう。
本明細書を通して使用するものとして「ランダム化剤」の用語は、モノビニル芳香族モノマーおよび共役ジエンのランダムコポリマー、特にスチレンおよびブタジエンおよび/またはイソプレン混合物のランダムコポリマーを製造するための従来技術の重合方法によって使用された任意の好適な剤を意味する。
それらの特定例は、ジエトキシエタン、1,2-ジエトキシプロパン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールジ-t-ブチルエーテル、エチレングリコールn-ブチル,t-ブチルエーテル、エチレングリコールn-プロピルt-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジイソプロピルエーテル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテルおよびプロピレングリコールジイソプロピルエーテル、オルソ-ジメトキシベンゼン、ジオキサン、または式:

(式中、R1は2〜18個の炭素原子を有するアルキル基であり、R2およびR2は水素または1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり、R4は水素または1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、そしてR5は1〜18個の炭素原子を有するアルキル基であり、さらに式中好ましくはR1は3〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、R2およびR3は水素であり、R4およびR5は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり、そして最も好ましくはR1=n-ブチル、R2=R3=水素、R4=メチル、R5=イソブチルである。)で表される化合物がある。
これらのランダム化剤の内、ジエトキシエタン、ジオキサン、オルソ-ジメトキシベンゼン、1,2-ジエトキシプロパン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、およびエチレングリコールジ-n-プロピルエーテルが好ましく、一方ジエトキシエタンまたは1,2-ジエトキシプロパンがより好ましいことが見い出された。
プロトン供与停止剤の例は、水、アルコール特に低級アルカノール、水素、モノグリシジルエーテルであり、その内メタノールのようなアルカノールまたは水素が好ましい。
ブロックコポリマー(類)の製造に使用されるべき溶媒は、純粋シクロヘキサンもしくは純粋シクロペンタン、または主要溶媒としてこれらの溶媒の内の1つと、n-ヘキサン、イソペンタンもしくはn-ペンタンのような5〜7個の炭素原子を有する微量(<50重量%)の直鎖または分枝鎖アルカンとの混合物であるのが好ましい。
特に適切なのは、シクロヘキサン、シクロヘキサン/n-ヘキサン混合物、シクロヘキサン/イソペンタン/n-ヘキサン混合物、シクロペンタンまたはシクロペンタン/イソペンタン混合物である。
シクロヘキサン/イソペンタン混合物、実質的に純粋なシクロヘキサンまたはシクロペンタンが好ましく、そして実質的に純粋なシクロペンタンが最も好ましい。
所望により対応のジブロックコポリマーと混合され、再開始により得ることが可能なトリブロック成分の製造は、再循環コンデンサーを具備した1つの単一反応器かまたは二軸反応器(dual reactor)系中で行われ得ることが理解されるであろう。
粘着する水を最後の量まで取り除くためのブロックコポリマーの乾燥は、流動床乾燥機、熱床(hot belt)乾燥機でまたは密閉エバポレータ/乾燥機で行われ得、ここで回転シャフトには、固定された間仕切板にそって動く数個の加熱された自己清浄性の腕が備わっている。
モノビニル芳香族モノマーの重合の間、テトラヒドロフラン(THF)のようなエーテル化合物を存在させることは、例えば米国特許第4,163,764号および欧州特許出願番号第0242612号および第0242614号から知られていたことは真実である。
特に、例えば米国特許第4,163,764号のカラム2から、モノビニルアレーンの開始および重合を援助するためにスチレンのようなモノビニルアレーンのホモ重合において少量の極性有機化合物を含有させることが知られていた。このような極性有機化合物は、ヒドロカルビルエーテルおよび第3級アミンから選択され得、そして、0.001〜10、好ましくは0.01〜1phmの範囲の量で使用され得た。
しかし、上述の米国特許第4,163,764号は、初期ジブロックコポリマーの製法を実際に教示し、そのジブロックコポリマーはその後カップリングして線状またはラジアルブロックコポリマーとなり、接着剤組成物において増加した粘着性およびよりよい耐クリープ性を示すはずである。
欧州特許出願第0242612号および第0242614号は、末端樹脂状ブロックをともなう多形態(polymodal)の、ひび割れ抵抗性、色の弱い、透明な線状ブロックコポリマーの製造を開始し、そしてそれは、モノビニル芳香族モノマーの重合で開始する逐次チャージ(charge)重合方法を含む。
モノビニル芳香族モノマーの最初のチャージ(S1)の重合の間、主要溶媒(シクロヘキサン)中で表Iにより重量で0.01〜1.0ptsのTHFが存在した。
しかし、上述の刊行物から当業者といえども逐次的に製造されたブロックコポリマーの、その他の物理的特性を維持しながら、機械的特性、特に、引張強さおよび/または硬さを改善することができるという教示を得ることはできなかった。
本発明のブロックコポリマー組成物は、履き物またはエンジニアリング熱可塑性樹脂の変性またはビチューメン変性またはホットメルト接着剤またはシーラントに使用されるべきブレンド物に優秀な特性を提供することが理解されるであろう。
特定の最終用途の型により、純粋な逐次的に製造された、トリブロックコポリマーか、該トリブロックコポリマーおよび類似のジブロックコポリマーの混合物かのいずれかが製造され得る。
さらに上述のブロックコポリマー組成物は再開始が行われた場合にトリブロックおよびジブロックコポリマー成分の間の調整可能で予め決められたモル比を可能とする製造方法を用いることにより、目的にあった、高規格化品質の組成物として供給され得る。
本発明の別の態様は、履き物(footwear article)、ホットメルト接着剤、ビチューメン組成物、および変性エンジニアリング熱可塑性樹脂ブレンドに加工される中間体組成物によって形成され、該中間体組成物は、ブロックコポリマー組成物の他に、エキステンダー油、ファイバー、着色剤等のような1つまたはそれ以上の助剤を含有することは理解されるであろう。さらに本発明の別の態様は、履き物、またはそれらから得られた造形変性エンジニアリング熱可塑性樹脂(shaped modified engineeri ng thermoplasts)により形成される。
本発明は、以下の特定の具体例に本発明の範囲を限定されることなく、以下の実施例により更に例示される。
これらの実施例で、個々の製造されたブロックコポリマー成分の分子量は、ASTM-3536に記載された様にポリスチレン検量線標準を使用するゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により測定される。ブロックコポリマーのポリスチレン含量はASTM-3314で特定された方法にしたがって測定する。
これらの方法により得られたデータから、トリブロックおよびジブロックコポリマー中の個々のポリブタジエンブロックの分子量比、トリブロックおよびジブロックコポリマー中のポリ(スチレン)重量比のような他のデータが得られる。ポリ(モノビニル芳香族)ブロック中のMw/Mn=P(多分散性ファクター)はASTM-3536にしたがって測定され得る。
実施例I
スチレン-ブタジエン-スチレン トリブロックコポリマー(SBB’S’)およびスチレン-ブタジエン ジブロックコポリマー(S’B’)(構造中:a.両方のブロックコポリマーは30重量%の目標スチレン含量を有し、そして、b.トリブロック/ジブロックの目標重量比は85/15である。)を含有するブロックコポリマー組成物は、以下のように製造された。
60℃で、255gのスチレンを23リットルのシクロヘキサンに添加した後、23.2ミリモルsec-ブチルリチウム(s-BuLi)を添加した。20分後に、重合が完了した。反応混合物の温度を70℃に上げ、さらに595gのブタジエンを加えた。重合は30分間行わせた。2番目のs-BuLi(8.2ミリモル)を加え、続いて805gのブタジエンで加えた。重合は40分間行わせた(99.9%変換)。この後、3.0gのジエトキシプロパン(DEP)を加え、続いて345gの最終のスチレンを加え、さらに重合を10分間行わせた。停止剤として47Mmolのエタノールを添加してスチレン性アニオンをクエンチした。
120gのシクロヘキサン中に溶解させた12gのIonolを添加した後、蒸気ストリッピングを用いて生成物を単離して白色小片を得た。
実施例II
DEPが3.0gのジエトキシエタンに置換されることを除いては実施例Iと同様の方法にしたがいブロックコポリマー組成物を製造した。
比較例I
DEPの添加なしに、実施例Iと同様の方法にしたがいブロックコポリマー組成物を製造した。
比較例II
60℃で600gのスチレンを23リットルのシクロヘキサンに添加した後、54.55ミリモルのsec-ブチルリチウムを添加した。15分後、重合が完了した。反応混合物の温度を、70℃に上昇し、さらに1400gのブタジエンを加えた。重合は30分間行わせた。その後、5.1gのジブロモエタンを添加する。カップリング反応が30分後に完了した。ポリマーを安定化し、そして実施例Iに記載されたとおりに単離した。


MW(app):ASTM D-3536に従って、GPCにより測定された見かけの分子量。
カップリング効率は、トリブロック(SBB’S’)+ジブロック(B’S’)の総重量に対するトリブロック(SBB’S’)の重量比により定義される。カップリング剤を使用する場合、この定義はカップリング前に存在するSBジブロックの重量に対するカップリングしたポリマーの重量比になる。
Pはポリ(スチレン)ブロックの総量、すなわち、最初のポリ(スチレン)+最後のポリ(スチレン)ブロックに対して測定される多分散性ファクターである。これは、ASTM D-3314-92を適用して実施例IおよびII、および比較例IおよびIIについて測定し、それにより四酸化オスミウム処理後、ポリスチレンブロックを単離し、そしてその後ASTM D-3536で記載されたとおりGPCにより分析した。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-08-31 
出願番号 特願平7-514230
審決分類 P 1 651・ 131- YA (C08F)
P 1 651・ 121- YA (C08F)
P 1 651・ 111- YA (C08F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中島 庸子  
特許庁審判長 井出 隆一
特許庁審判官 船岡 嘉彦
佐野 整博
登録日 2002-12-06 
登録番号 特許第3378582号(P3378582)
権利者 クレイトン・ポリマーズ・リサーチ・ベー・ベー
発明の名称 改善された特性の組合せを示すブロックコポリマー  
代理人 船山 武  
代理人 川口 義雄  
代理人 伏見 直哉  
代理人 中村 至  
代理人 川口 義雄  
代理人 中村 至  
代理人 酒井 正己  
代理人 船山 武  
代理人 伏見 直哉  
代理人 小松 純  
代理人 加々美 紀雄  

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