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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H01M
管理番号 1127356
異議申立番号 異議2003-71724  
総通号数 73 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2006-01-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-07-07 
確定日 2005-09-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3363910号「非水系薄型電池」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3363910号の請求項1、2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3363910号の請求項1〜15に係る発明の出願は、1998年3月19日(優先権主張平成9年3月19日、平成9年4月14日、日本)を国際出願日とする出願であって、平成14年10月25日に、その発明について特許の設定登録がなされ、その後、請求項1、2に係る特許について松本初枝より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知(平成16年9月28日付け)がなされ、その指定期間内である平成16年12月6日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正請求の訂正の適否についての判断
2-1.訂正の内容
a.平成14年8月13日付け手続補正書により補正された明細書(以下、「特許明細書」という)の特許請求の範囲の請求項1の「(α)・・・中間金属箔層は、外装体の外縁部端面で、少なくとも端子取出し部位周辺の部分において、・・・欠損部を有している。(β)外装体の外縁部端面が、少なくとも端子取出し部位の周辺の部分において絶縁処理されている。」を、「(α)・・・中間金属箔層は、外装体の外縁部端面で、少なくとも端子取出し部位およびその周辺の部分において、・・・欠損部を有している。(β)外装体の外縁部端面が、少なくとも端子取出し部位およびその周辺の部分において、全厚さ方向に渡って絶縁処理されている。」に訂正する。
そして、上記訂正事項aは、以下のように整理される。
a-1.「端子取出し部位周辺の部分」及び「端子取出し部位の周辺の部分」を、「端子取出し部位およびその周辺の部分」に訂正する。
a-2.「絶縁処理されている」を、「全厚さ方向に渡って絶縁処理されている」に訂正する。
b.特許明細書の5頁6行(特許公報5欄31行)の「端子取出し部位の周辺部分」を、「端子取出し部位およびその周辺部分」に訂正する。
c.特許明細書の5頁12行(特許公報5欄39行)の「端子取出し部位周辺の部分」を、「端子取出し部位およびその周辺の部分」に訂正する。
d.特許明細書の5頁14、15行(特許公報5欄42、43行)、同7頁17、18行(特許公報7欄18、19行)、同8頁12、13行(特許公報7欄47、48行)の「端子取出し部位の周辺の部分において絶縁処理されている。」を、「端子取出し部位およびその周辺の部分において、全厚さ方向に渡って絶縁処理されている。」に訂正する。
e.特許明細書の7頁14行(特許公報7欄14、15行)、同8頁9行(特許公報7欄44行)の「端子取出し部位周辺の部分」を、「端子取出し部位およびその周辺の部分」に訂正する。
f.特許明細書の13頁8、9行(特許公報11欄38行)の「端子取出し部位の周辺」を、「端子取出し部位およびその周辺」に訂正する。
g.特許明細書の14頁25、26行(特許公報12欄50行〜13欄1行)の「端子取出し部位の周辺の部分において、絶縁処理されている」を、「端子取出し部位およびその周辺の部分において、全厚さ方向に渡って絶縁処理されている」に訂正する。
h.特許明細書の44頁13行(特許公報36欄22行)の「端子取出し部位周辺」を、「端子取出し部位およびその周辺」に訂正する。
2-2.訂正の目的の適否・新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項a-1は、特徴(α)における中間金属箔層が欠損部を有している部分である「端子取出し部位周辺の部分」、及び、特徴(β)における外装体の外縁部端面が絶縁処理がされている部分である「端子取出し部位の周辺の部分」を、共に「端子取出し部位およびその周辺の部分」に訂正するものである。
特徴(α)における中間金属箔層が欠損部を有している部分に係る訂正の根拠は、次のとおりである。すなわち、中間金属箔層が欠損部を有している部分が最も少ない態様である実施例1は、第1(a)図に外装体が、第1(c)図に電池が、それぞれ図示されているが、第1(a)図によると、外装体の中間金属箔層の欠損部の幅(外縁に平行な方向の寸法)が11mmであるのに対し、第1(c)図によると、電池の端子の幅は10mmであるから、中間金属箔層が欠損部を有している部分は、「端子取出し部位の部分」に対応する10mm、及び、「端子取出し部位の周辺の部分」に対応する1mmであることに基づくものである。
また、特徴(β)における外装体の外縁部端面が絶縁処理がされている部分に係る訂正の根拠は、次のとおりである。すなわち、実施例6は、「端子取出し部位において・・・絶縁処理部材(7)は幅(外縁に平行な寸法)15mm・・・の大きさで貼られている」(特許公報27欄4〜6行)ものであるが、第4(a)図には、絶縁処理部材7の幅は、端子9の幅よりも広く端子の両側に及んでいることが図示されているから、外装体の外縁部端面が絶縁処理がされている部分は、端子の幅に対応する「端子取出し部位の部分」、及び、端子の両側に及ぶ部分に対応する「端子取出し部位の周辺の部分」であることに基づくものである。
よって、訂正事項a-1は、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
訂正事項a-2は、特徴(β)における外装体の外縁部端面の絶縁処理が、「全厚さ方向に渡って」なされていることを限定するものであるが、この訂正は、第4(b)図に、積層体10からなる外装体の外縁部端面の全厚さ方向に渡って絶縁処理部材7が存在することが図示されていることに基づくものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
訂正事項b、c、e、f、hは、発明の詳細な説明の記載を訂正事項a-1と整合させるための訂正であるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
訂正事項d、gは、発明の詳細な説明の記載を訂正事項a-1、及び訂正事項a-2と整合させるための訂正であるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
2-3.むすび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立てについての判断
3-1.特許異議申立人の申立て理由の概要
特許異議申立人は、証拠方法として甲第1〜3号証を提出して、請求項1、2に係る発明は、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである旨主張している。

3-2.本件発明
上記訂正は、上記2で示したとおりこれを認めることができるから、請求項1、2に係る発明(以下、「本件発明1」、「本件発明2」という)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1には以下の事項が記載されている。
「【請求項1】正極、負極、及び正極と負極との間に挟まれて存在する非水系電解質を含む電池素子(a)と、この電池素子(a)を内部に含み且つ融着シールされた袋状外装体(b)と、正極及び負極に電気的に連結された少なくとも一対の端子(c)とを含む非水系薄型電池であって、袋状外装体は、内側熱可塑性樹脂層(1)、中間金属箔層(2)及び外側絶縁体層(3)の少なくとも3層からなる積層体から作られており、且つ、該袋状外装体の外縁部に沿って長形の熱融着領域を所定幅で有していて、該熱融着領域では該積層体の内側熱可塑性樹脂層(1)の相対向する面が互いに熱融着されていて、それにより袋状外装体の融着シール部が形成されており、端子は、外装体の上記融着シール部の端子取出し部位を通って外装体の外側に延びており、更に次の2つの特徴(α)及び(β)のいずれか1つ又は両方を満足する非水系薄型電池。
(α)中間金属箔層の上記袋状外装体の熱融着領域中に存在する部分の、前記熱融着領域の幅方向と同じ方向の寸法に相当する幅が、該熱融着領域中の内側熱可塑性樹脂層の厚みの少なくとも10倍であり、且つ、中間金属箔層は、外装体の外縁部端面側で、少なくとも端子取出し部位およびその周辺の部分において、前記熱融着領域の幅方向と同じ方向に、外装体の外縁から所定の奥行だけ欠損部を有している。
(β)外装体の外縁部端面が、少なくとも端子取出し部位およびその周辺の部分において、全厚さ方向に渡って絶縁処理されている。」

3-3.甲第1〜3に記載された事項
異議申立人が提出した本件出願前に頒布された刊行物である甲第1〜3号証には、次のとおりの事項が記載されている。
(1)甲第1号証:特開昭62-61268号公報
(摘示1-1)「1)・・・外被包材を用いて、電気化学反応要素を収納し、・・・端子材料をはさんで、外被包材同士をヒートシールして密封することにより、この端子材料の一部をヒートシール部から外部に引き出して外部端子とする偏平型電気化学セルにおいて、この端子材料のヒートシール部が・・・電気絶縁性の被覆材料で被覆されている・・・偏平型電気化学セル。」(特許請求の範囲第1項)
(摘示1-2)「電気化学セルが電池である場合の・・・断面図は第6図(イ)のようになる。・・・第6図(イ)の場合には、反応要素は正極合剤(21)、セパレータ(22)、負極(23)及びセパレータに含浸した電解液から成り、正極(21)には正極集電板(24)、負極(23)には負極集電板(25)が密着している。」( 第2頁右上欄第14行〜左下欄第2行)
(摘示1-3)「ヒートシール部(A)は一部に集電板(24)(25)の延長された一部(端子材料)をはさんでおり、こうして外部へ引き出された集電板(24)(25)は、外部端子(5)(6)となる。」(第2頁左下欄第5〜8行)
(摘示1-4)「特に、反応要素として・・・非水電解液を使用した系を用いる場合・・・」(第2頁左下欄第12〜15行)
(摘示1-5)「第1図は本発明の偏平型電気化学セルの斜視外観図である。また、第2図(イ)はこの電気化学セルが電池である場合の・・・断面図であり、端子材料(5)のヒートシール部に被覆材料(7)が被覆されている点を除けば、第6図(イ)と同様である。」(第3頁右下欄第18行〜第4頁左上欄第3行)
(摘示1-6)「これらの図において偏平型電気化学セルを構成する外被包材(1)は・・・耐熱性樹脂フィルム(11)と接着剤層(12)を介して貼り合わされた金属箔防湿層(13)と内面ヒートシール性樹脂層(14)とから構成されている」(第4頁左上欄第8〜12行)
(摘示1-7)「本発明を実施する場合・・・外被包材の所定の位置に正負の電極板又は集電板と外部端子を熱圧着により一体化させる。その後外被包材を袋状にして、反応要素を中に入れ、周縁ヒートシール部を、予め被覆された外部端子を挟む形で介在させてヒートシール密封する。」(第5頁右上欄第8〜14行)
(摘示1-8)第1図、第2図(イ)には、外被包材はその外縁部の対向する面がヒートシール部(A)で示される幅で融着され、端子材料(5)(6)が外被包材から外側に延びており、且つ、端子材料(5)(6)のヒートシール部に対応する部分が、端子材料(5)(6)の幅よりも広い被覆材料(7)によりヒートシール部外部に至るまで被覆されている偏平型電気化学セルが図示されている。
(摘示1-9)「被覆材料(7)は、ヒートシール部(A)のみならず・・・ヒートシール部外部に至るまで被覆しておくこともできる。・・・外部まで被覆するのは、外被包材(1)中の金属箔防湿層(13)の端部(c)との接触を防ぐためである。」(第4頁右下欄第8〜19行)

(2)甲第2号証:特開平8-287886号公報
(摘示2-1)「【請求項1】 電極端子挿入孔を設けた金属箔の・・・両面にポリオレフィン系樹脂をコーティングしたフィルムにより形成した袋状ケースと、有機溶媒より成る電解液が含浸された電極積層体とを有し、前記電極積層体を前記袋状ケースに封入すると共に前記電極積層体の電極端子を前記袋状ケースの・・・電極端子挿入孔に・・・固定するようにしたことを特徴とする非水電解液電池。」(特許請求の範囲の請求項1)
(摘示2-2)「【請求項2】 請求項1記載の非水電解液電池において、前記袋状ケースの電極端子挿入孔にポリオレフィン樹脂によりカラーを設けたことを特徴とする非水電解液電池。」(特許請求の範囲の請求項2)

(3)甲第3号証:特開昭60-86754号公報
(摘示3-1)「ポリエチレンをラミネートした金属箔を外装とするシートバッテリーにおいて、ポリエチレンの間に・・・絶縁物を配置し、ポリエチレンを融着させて密封した・・・シートバッテリー。」(特許請求の範囲の請求項1)
(摘示3-2)「実施例1 本実施例で、シートバッテリーに使用したテープの幅は12mm・・・厚さは・・・約120μmである。」(第3頁左上欄第3〜7行)

3-4.当審の判断
(1)本件発明1について
甲第1号証の(摘示1-1)には、「外被包材を用いて、電気化学反応要素を収納し、・・・端子材料をはさんで、外被包材同士をヒートシールして密封することにより、この端子材料の一部をヒートシール部から外部に引き出して外部端子とする偏平型電気化学セルにおいて、この端子材料のヒートシール部が・・・電気絶縁性の被覆材料で被覆されている・・・偏平型電気化学セル。」が記載されており、「電気化学セルが電池である場合」(摘示1-2)という記載、及び、「反応要素として・・・非水電解液を使用した系を用いる場合」(摘示1-4)という記載によると、上記「電気化学セル」は、非水系電池を包含するものである。そして、電池の電気化学反応要素に関して、「正極合剤(21)、セパレータ(22)、負極(23)及びセパレータに含浸した電解液から成り、正極(21)には正極集電板(24)、負極(23)には負極集電板(25)が密着している。」(摘示1-2)と記載されているから、非水系電池の電気化学反応要素は、「正極、負極、及び正極と負極との間に挟まれて存在する非水電解液を含む」ものであるといえるし、また、電池の電気化学反応要素は、一般に、電池素子といえるものである。
そうすると、甲第1号証には、「外被包材を用いて、正極、負極、及び正極と負極との間に挟まれて存在する非水電解液を含む電池素子を収納し、端子材料をはさんで、外被包材同士をヒートシールして密封することにより、この端子材料の一部をヒートシール部から外部に引き出して外部端子とする偏平型非水系電池において、この端子材料のヒートシール部が、電気絶縁性の被覆材料で被覆されている偏平型非水系電池」が記載されているといえる。
次に、上記記載事項における「端子材料」及び「外部端子」に関して、「ヒートシール部(A)は一部に集電板(24)(25)の延長された一部(端子材料)をはさんでおり、こうして外部へ引き出された集電板(24)(25)は、外部端子(5)(6)となる。」(摘示1-3)という記載によると、集電板が延長された部分が端子材料であり、この端子材料がヒートシール部から延長した部分が外部端子であるといえる。そうすると、端子材料と外部端子は、共に「端子」といえるものであるから、端子のヒートシール部が、電気絶縁性の被覆材料で被覆されている、すなわち、絶縁処理されているといえる。
また、上記記載事項における「外被包材」は、「耐熱性樹脂フィルム(11)と接着剤層(12)を介して貼り合わされた金属箔防湿層(13)と内面ヒートシール性樹脂層(14)とから構成されている」(摘示1-6)から、内面ヒートシール性樹脂層、中間金属箔防湿層及び外側耐熱性樹脂フィルムの少なくとも3層からなる積層体から作られているものである。そうすると、上記「外被包材同士」のヒートシールは、外被包材の内面ヒートシール性樹脂層の対向する面同士を熱融着するものであるといえるし、また、第1図及び第2図(イ)に図示されるように、外被包材の外縁部に沿って、ヒートシール部(A)で示される幅を有する長形のヒートシール領域になされるといえる(摘示1-5、1-8)。
さらに、「外被包材の所定の位置に正負の電極板又は集電板と外部端子を熱圧着により一体化させる。その後外被包材を袋状にして、反応要素(電池素子)を中に入れ、周縁ヒートシール部を、予め被覆された外部端子を挟む形で介在させてヒートシール密封する。」(摘示1-7)のであるから、端子(外部端子)は、所定の位置、すなわち、ヒートシール部の端子取出し部位から外部に出ているといえるし、また、電池素子は、ヒートシールされた袋状外被包材に密封されるといえる。
これらの事項を、本件発明1の記載ぶりに則して整理すると、甲第1号証には、「正極、負極、及び正極と負極との間に挟まれて存在する非水電解液を含む電池素子と、この電池素子を内部に含み且つヒートシールされた袋状外被包材と、正極及び負極に電気的に連結された少なくとも一対の端子とを含む偏平型非水系電池であって、袋状外被包材は、内面ヒートシール性樹脂層、中間金属箔防湿層及び外側耐熱性樹脂フィルムの少なくとも3層からなる積層体から作られており、且つ、該袋状外被包材の外縁部に沿って長形のヒートシール領域を所定幅で有していて、該ヒートシール領域では該積層体の内面ヒートシール性樹脂層の相対向する面が互いに熱融着されていて、それにより袋状外被包材のヒートシール部が形成されており、端子は、外被包材の上記ヒートシール部の端子取出し部位を通って外被包材の外側に延びており、更に次の特徴(β)を満足する偏平型非水系電池。
(β)端子のヒートシール部が、絶縁処理されている。」という発明(以下、「甲1発明」という)が記載されているといえる。
そこで、本件発明1と甲1発明を対比すると、甲1発明の「非水電解液」は本件発明1の「非水系電解質」に、甲1発明の「ヒートシール」は本件発明1の「融着シール」に、甲1発明の「外被包材」は本件発明1の「外装体」に、甲1発明の「偏平型非水系電池」は本件発明1の「非水系薄型電池」に、甲1発明の「内面ヒートシール性樹脂層」は本件発明1の「内側熱可塑性樹脂層」に、甲1発明の「中間金属箔防湿層」は本件発明1の「中間金属箔層」に、甲1発明の「外側耐熱性樹脂フィルム」は本件発明1の「外側絶縁体層」に、甲1発明の「ヒートシール領域」は本件発明1の「熱融着領域」に、甲1発明の「ヒートシール部」は本件発明1の「融着シール部」に、それぞれ相当する。さらに、特徴(β)に関して、甲1発明の「(β)端子のヒートシール部が、絶縁処理されている。」と、本件発明1の「(β)外装体の外縁部端面が、少なくとも端子取出し部位およびその周辺の部分において、全厚さ方向に渡って絶縁処理されている。」は、「(β)端子に関連する絶縁処理がされている。」という点で共通している。
そうすると、両発明は、「正極、負極、及び正極と負極との間に挟まれて存在する非水系電解質を含む電池素子(a)と、この電池素子(a)を内部に含み且つ融着シールされた袋状外装体(b)と、正極及び負極に電気的に連結された少なくとも一対の端子(c)とを含む非水系薄型電池であって、袋状外装体は、内側熱可塑性樹脂層(1)、中間金属箔層(2)及び外側絶縁体層(3)の少なくとも3層からなる積層体から作られており、且つ、該袋状外装体の外縁部に沿って長形の熱融着領域を所定幅で有していて、該熱融着領域では該積層体の内側熱可塑性樹脂層(1)の相対向する面が互いに熱融着されていて、それにより袋状外装体の融着シール部が形成されており、端子は、外装体の上記融着シール部の端子取出し部位を通って外装体の外側に延びており、更に次の特徴(β)を満足する非水系薄型電池。
(β)端子に関連する絶縁処理がされている。」という点で一致し、以下の点で相違する。

相違点:本件発明1は、特徴(β)が、「(β)外装体の外縁部端面が、少なくとも端子取出し部位およびその周辺の部分において、全厚さ方向に渡って絶縁処理されている。」というものであるのに対し、甲1発明は、(β)端子の融着シール部(ヒートシール部)が絶縁処理されているというものである点。

次に、上記相違点について検討する。
本件発明1が、上記相違点に係る発明特定事項を備えることの効果は、(i)「端子が折り曲がった場合に生じる端子と中間金属箔層との短絡を容易に防止すること」(訂正明細書第14頁第24〜26行)に加えて、(ii)「機器のリード線に電池の端子を接続した時に、リード線が電池の端子近傍の中間金属箔層の端面に接触することを防止」(異議意見書第3頁第3〜5行)することである。
上記(ii)の効果は、外装体の外縁部端面が、少なくとも端子取出し部位およびその周辺の部分において、全厚さ方向に渡って絶縁処理されていれば、当然に奏することが明らかな効果であって、「外装体の熱融着時に、電池素子を構成する電極の端部が、外装体の内側熱可塑性樹脂層を突き破り中間金属箔層と接触した状態になる場合がある。この状態になっていると、中間金属箔層が当該電極と同じ電池となるため、電池の端子を機器のリード線に接続する際に、リード線が外装体の中間金属箔層端面に接触することで短絡が生じる恐れがある。」(異議意見書第2頁第25行〜第3頁第1行)という課題に対応するものである。
これに対し、甲第1号証には、「被覆材料(7)は、ヒートシール部(A)のみならず・・・ヒートシール部外部に至るまで被覆しておくこともできる。・・・外部まで被覆するのは、外被包材(1)中の金属箔防湿層(13)の端部(c)との接触を防ぐためである。」(摘示1-9)と、端子と中間金属箔層(金属箔防湿層)との接触を防ぐことが記載されているから、甲1発明は、上記(i)の効果を奏するといえるが、外装体の中間金属箔層の端面が露出しているから、上記(ii)の効果を奏するということはできない。
また、甲第2号証には、電極積層体を、電極端子挿入孔を設けた金属箔(中間金属箔層)の両面にポリオレフィン系樹脂をコーティングしたフィルムにより形成した袋状ケースに封入すると共に、前記電極積層体の電極端子を前記袋状ケースの電極端子挿入孔に固定するようにした非水電解液電池において(摘示2-1)、前記袋状ケースの電極端子挿入孔にポリオレフィン樹脂によりカラーを設けたことが記載されているから(摘示2-2)、中間金属箔層の端面と端子(電極端子)が接触して短絡するのを防止するために、ポリオレフィン樹脂のカラーにより、電極挿入孔に面した外装体(ケース)の端面を「全厚さ方向に渡って」絶縁処理することが記載されているといえる。
しかしながら、甲第2号証に記載されるカラーによる絶縁処理は、電池を設計するに当たり、中間金属箔層の端面と端子(電極端子)が直接接触する場合には、当業者が当然なすべき絶縁処理であって、端子が折れ曲がった場合に生じる端子と中間金属箔層との短絡を防止したり、機器のリード線に電池の端子を接続した時に、リード線が電池の端子近傍の中間金属箔層の端面に接触することを防止することは想定されていない。そもそも、甲第2号証の電池は、端子取出し部位およびその周辺の部分において、外装体の外縁部端面が露出していないから、端子が折れ曲がっても端子と中間金属箔層とは接触することはなく、また、機器のリード線に電池の端子を接続する場合にも、機器のリード線と中間金属箔層の端面とは接触することがないものである。
そうすると、通常状態においては中間金属箔層の端面と端子が直接接触していない甲1発明において、端子のヒートシール部を絶縁処理することに代えて、甲第2号証に記載されるような外装体端面を「全厚さ方向に渡って」絶縁する絶縁処理を採用することの動機づけは見いだせない。
さらに、甲第3号証には、ポリエチレンをラミネートした金属箔を外装とするシートバッテリーにおいて、ポリエチレンの間に幅12mmの絶縁テープを配置し、ポリエチレンを融着させて密封すること、すなわち、融着部分の幅を12mm程度として密封することが記載されているが、本願発明1の上記相違点に係る発明特定事項に関する記載はない。
以上のとおり、本件発明1の上記相違点に係る発明特定事項は、甲第2、3号証に記載された事項からは導くことはできないから、本件発明1は、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1をさらに特定するものであるから、上記「(1)本件発明1について」に記載したと同様の理由により、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1、2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
非水系薄型電池
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】正極、負極、及び正極と負極との間に挾まれて存在する非水系電解質を含む電池素子(a)と、この電池素子(a)を内部に含み且つ融着シールされた袋状外装体(b)と、正極及び負極に電気的に連結された少なくとも一対の端子(c)とを含む非水系薄型電池であって、
袋状外装体は、内側熱可塑性樹脂層(1)、中間金属箔層(2)及び外側絶縁体層(3)の少なくとも3層からなる積層体から作られており、且つ、該袋状外装体の外縁部に沿って長形の熱融着領域を所定幅で有していて、該熱融着領域では該積層体の内側熱可塑性樹脂層(1)の相対向する面が互いに熱融着されていて、それにより袋状外装体の融着シール部が形成されており、
端子は、外装体の上記融着シール部の端子取出し部位を通って外装体の外側に延びており、
更に次の2つの特徴(α)及び(β)のいずれか1つ又は両方を満足する非水系薄型電池。
(α)中間金属箔層の上記袋状外装体の熱融着領域中に存在する部分の、前記熱融着領域の幅方向と同じ方向の寸法に相当する幅が、該熱融着領域中の内側熱可塑性樹脂層の厚みの少なくとも10倍であり、且つ、中間金属箔層は、外装体の外縁部端面側で、少なくとも端子取出し部位およびその周辺の部分において、前記熱融着領域の幅方向と同じ方向に、外装体の外縁から所定の奥行だけ欠損部を有している。
(β)外装体の外縁部端面が、少なくとも端子取出し部位およびその周辺の部分において、全厚さ方向に渡って絶縁処理されている。
【請求項2】前記熱融着領域の幅が、1mm〜50mmであることを特徴とする請求項1に記載の非水系薄型電池。
【請求項3】前記中間金属箔層の欠損部の奥行きが、0.1mm以上であり、かつ前記熱融着領域の幅の80%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の非水系薄型電池。
【請求項4】前記中間金属箔層の欠損部の奥行きが、0.5mm以上であり、かつ前記熱融着領域の幅の50%以下であることを特徴とする請求項3に記載の非水系薄型電池。
【請求項5】前記中間金属箔層の欠損部の前記外装体の外縁に平行な寸法に相当する幅が、端子取出し部位における端子の断面の外周の2分の1以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の非水系薄型電池。
【請求項6】前記外側絶縁体層が、260℃以上の融点を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の非水系薄型電池。
【請求項7】前記外側絶縁体層が、300kg/mm2以上の引っ張り弾性率及び50kg/mm2以上の圧縮弾性率のいずれか又は両方を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の非水系薄型電池。
【請求項8】前記内側熱可塑性樹脂層と中間金属箔層との間に少なくとも1層の中間絶縁体層を設けてなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の非水系薄型電池。
【請求項9】前記内側熱可塑性樹脂層と中間金属箔層との間に設けられた少なくとも1層の中間絶縁体層が、260℃以上の融点を有することを特徴とする請求項8に記載の非水系薄型電池。
【請求項10】前記内側熱可塑性樹脂層と中間金属箔層との間に設けられた少なくとも1層の中間絶縁体層が、300kg/mm2以上の引っ張り弾性率及び50kg/mm2以上の圧縮弾性率のいずれか又は両方を有することを特徴とする請求項8又は9に記載の非水系薄型電池。
【請求項11】前記熱可塑性樹脂層及び絶縁体層のうちの少なくとも1層が、ポリ塩化ビニリデン系樹脂からなるものであることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の非水系薄型電池。
【請求項12】前記端子が、アルミニウム又は銅から作られていることを特徴とする請求項1〜11に記載の非水系薄型電池。
【請求項13】前記端子が、その表面の少なくとも一部が粗面化されていることを特徴とする請求項12に記載の非水系薄型電池。
【請求項14】前記袋状外装体が膨張変形した 場合、前記端子の少なくとも一部を切断するように作動する手段を更に含むことを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の非水系薄型電池。
【請求項15】前記電池素子が、リチウムイオン二次電池素子であることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の非水系薄型電池。
【発明の詳細な説明】
<技術分野>
本発明は、新規な非水系薄型電池に関する。さらに詳しくは、本発明は、電池素子を内部に含み且つ融着シールされた袋状外装体と、電池素子の正極及び負極に電気的に連結された端子とを含む非水系薄型電池に関する。
<従来技術>
携帯機器などの電池応用機器の軽量化、薄型化に伴い、搭載する電池の軽量化、高容量化が図られてきた。例えば、非水系電解質を用いたリチウム電池、リチウムイオン二次電池は、リチウムの卑な酸化還元電位を利用した高容量の電池として数多く使用されている。従来、このような電池の外装体としては、金属板を用途に応じて円筒型、角型、コイン型などに成形した容器が用いられてきた。しかしながら、金属製の外装体を用いた電池の軽量化は難しく、且つ成形可能な電池形状が限られていた。
一方、金属箔と樹脂フィルムを主体とした積層体からなる電池用外装体を用いた電池は、上記の金属板を用いた電池に比べ軽量であり、かつ形状の自由度に優れ、薄型化が容易である。また、電池を製造する際の封止工程も容易である。上記のような積層体を用いた非水系一次電池としては、例えば、日本国特開昭60-100362号公報、日本国特開平1-112652号公報などに開示されており、固体電解質電池としては、例えば、日本国特開昭60-49568号公報、英国特許第8329116号公報などに開示されている。これらの電池はいずれも金属箔層/熱可塑性樹脂層の2層、あるいは、絶縁体層/金属箔層/熱可塑性樹脂層の3層からなる積層体を用いた外装体を有する。
このような電池において電池素子は、上記のような積層体からなる熱可塑性樹脂層を内側に有する袋状外装体で覆われており、相対向する内側の熱可塑性樹脂層が互いに熱融着されることによって封止されている。更に、SUSフィルム等から作られた端子が、熱融着されている相対向する2つの熱可塑性樹脂層の間から外部に出ている。
従来の電池用外装体において、外装体に用いられる積層体中の金属箔層は水蒸気を遮蔽し、絶縁体層は金属箔層を保護する効果がある。金属箔層にはアルミニウム等、熱可塑性樹脂層にはアイオノマー、ポリエチレン、ポリプロピレン等、また、絶縁体層には、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等が用いられている。
しかしながら、このような積層体を電池の外装体に用いた場合には、以下の問題が生じる。外装体を封止するための熱融着を行う際に、積層体中の金属箔層と端子が短絡し易い。また電池作成後、外装体の端面に露出している金属箔層と端子の接触によって生じる短絡頻度が高い。これらのことは、電池の製造時ならびに使用時の信頼性、安全性に関わる重大問題である。
熱融着時の短絡を防ぐ方法として、金属箔層と熱可塑性樹脂層の間に熱融着時に溶融しない絶縁体層を設ける方法(日本国特開昭60-86754号公報、日本国特開平4-58146号公報)が開示されている。しかし、いずれの電池においても、製造された電池の外装体の外縁部端面に露出している金属箔層と端子の接触によって生じる電池素子の電極間の短絡は解決されていない。
更に、端子と熱可塑性樹脂層の間に熱融着時に溶融しない絶縁体を配置する場合、熱融着時に、熱可塑性樹脂層と絶縁体の接着性が不十分となり、気密性、防湿性が低下する。また、製造工程も煩雑となる。
端子取出し部位周辺の部分の熱融着領域が金属箔層を欠損している外装体を用いる電池(日本国特開平第3-62447号公報、欧州公開第397、248号公報)も公知であるが、このような電池には、熱融着されておらず、且つ、金属箔層が欠損している外装体の部分が存在するため、二次電池のように長期に渡る作動安定性が求められる場合、水蒸気などの電池性能を低下させる物質の侵入、電解液溶媒分子などの飛散が問題となる。
また、電池作成後に熱硬化性樹脂で電池を覆う方法(日本国特開昭第60-49568号公報)も開示されているが、この方法は金属箔層と端子との短絡を防ぐことが可能であるが、硬化時の温度による電池素子への影響がある。
<発明の概要>
本発明者らは、上記の従来技術の困難な問題点がなく、金属箔層と端子との短絡を防ぎ、且つ、加工性、気密性、防湿性に優れた積層体からなる電池用外装体を用いた非水系薄型電池を開発すべく鋭意研究を行った。その結果、積層体を熱融着することによって作られ、且つ、端子取出し部位およびその周辺部分が次の2つの特徴(α)及び(β)のいずれか1つ又は両方を満足する袋状外装体を非水系薄型電池に用いることにより、上記問題点が克服されることを知見した。
(α)中間金属箔層の熱融着領域中に存在する部分の、前記熱融着領域の幅方向と同じ方向の寸法に相当する幅が、該熱融着領域中の内側熱可塑性樹脂層の厚みの少なくとも10倍であり、且つ、中間金属箔層は、外装体の外縁部端面側で、少なくとも端子取出し部位およびその周辺の部分において、前記熱融着領域の幅方向と同じ方向に、外装体の外縁から所定の奥行だけ欠損部を有している。
(β)外装体の外縁部端面が、少なくとも端子取出し部位およびその周辺の部分において、全厚さ方向に渡って絶縁処理されている。
このような特徴を満足する袋状外装体を非水系薄型電池に用いることにより、短絡頻度が極めて少なく、気密性、防湿性に優れ、容易に電池素子を封止できることを知見した。本発明は、この新しい知見に基づいて完成されたものである。
従って、本発明の主なる1つの目的は、短絡の危険がなく、気密性に優れ、信頼性および安全性の高い、軽量且つ薄型の非水系電池を提供することにある。
本発明の上記及びその他の諸目的、諸特徴ならびに諸利益は、添付の図面を参照しながら述べる次の詳細な説明および請求の範囲の記載から明らかになる。
<図面の簡単な説明>
図面において:
図1は、実施例1において作製した非水系薄型電池を模式的に示す説明図で、図1(a)は、中間金属箔層に一部欠損部を設けた積層体の平面図、図1(b)は、そのIb-Ib線断面図及び図1(c)は、非水系薄型電池の平面図をそれぞれ示す。
図2は、実施例2において作製した非水系薄型電池を模式的に示す説明図で、図2(a)は、中間金属箔層の外縁部端面側の全長に亙って欠損部を設けた積層体の平面図、図2(b)は、そのIIb-IIb線断面図及び図2(c)は、非水系薄型電池の平面図をそれぞれ示す。
図3は、実施例3において作製した非水系薄型電池を模式的に示す説明図で、図3(a)は、端子取出し部位の設置側と非設置側との両方の中間金属箔層の外縁の全長に亙って欠損部を設けた積層体の平面図、図3(b)は、そのIIIb-IIIb線断面図及び図3(c)は、非水系薄型電池の平面図をそれぞれ示す。
図4は、実施例6において作製した非水系薄型電池を模式的に示す説明図で、図4(a)は、外装体の端子取出し部位に絶縁処理を施した非水系薄型電池の一部切り欠き平面図、図4(b)は、そのIVb-IVb線断面図をそれぞれ示す。
符号の説明:
1:内側熱可塑性樹脂層
2:中間金属箔層
3:外側絶縁体層
4:熱融着領域
5:端子取出し部位
6:金属箔層欠損部
7:絶縁処理部材
9:端子
10:積層体
20:外装体
30:非水系薄型電池
l1、l2、l3:一枚の積層体から外装体を作製するための二つ折りの線
<発明の詳細な説明>
本発明によれば、正極、負極、及び正極と負極との間に挾まれて存在する非水系電解質を含む電池素子(a)と、この電池素子(a)を内部に含み且つ融着シールされた袋状外装体(b)と、正極及び負極に電気的に連結された少なくとも一対の端子(c)とを含む非水系薄型電池であって、袋状外装体は、内側熱可塑性樹脂層(1)、中間金属箔層(2)及び外側絶縁体層(3)の少なくとも3層からなる積層体から作られており、且つ、該袋状外装体の外縁部に沿って長形の熱融着領域を所定幅で有していて、該熱融着領域では該積層体の内側熱可塑性樹脂層(1)の相対向する面が互いに熱融着されていて、それにより袋状外装体の融着シール部が形成されており、
端子は、外装体の上記融着シール部の端子取出し部位を通って外装体の外側に延びており、
更に次の2つの特徴(α)及び(β)のいずれか1つ又は両方を満足する非水系薄型電池が提供される。
(α)中間金属箔層の上記袋状外装体の熱融着領域中に存在する部分の、前記熱融着領域の幅方向と同じ方向の寸法に相当する幅が、該熱融着領域中の内側熱可塑性樹脂層の厚みの少なくとも10倍であり、且つ、中間金属箔層は、外装体の外縁部端面側で、少なくとも端子取出し部位およびその周辺の部分において、前記熱融着領域の幅方向と同じ方向に、外装体の外縁から所定の奥行だけ欠損部を有している。
(β)外装体の外縁部端面が、少なくとも端子取出し部位およびその周辺の部分において、全厚さ方向に渡って絶縁処理されている。
次に、本発明の理解を容易にするために、まず本発明の基本的特徴及び諸態様を列挙する。
1.正極、負極、及び正極と負極との間に挾まれて存在する非水系電解質を含む電池素子(a)と、この電池素子(a)を内部に含み且つ融着シールされた袋状外装体(b)と、正極及び負極に電気的に連結された少なくとも一対の端子(c)とを含む非水系薄型電池であって、
袋状外装体は、内側熱可塑性樹脂層(1)、中間金属箔層(2)及び外側絶縁体層(3)の少なくとも3層からなる積層体から作られており、且つ、該袋状外装体の外縁部に沿って長形の熱融着領域を所定幅で有していて、該熱融着領域では該積層体の内側熱可塑性樹脂層(1)の相対向する面が互いに熱融着されていて、それにより袋状外装体の融着シール部が形成されており、
端子は、外装体の上記融着シール部の端子取出し部位を通って外装体の外側に延びており、
更に次の2つの特徴(α)及び(β)のいずれか1つ又は両方を満足する非水系薄型電池。
(α)中間金属箔層の上記袋状外装体の熱融着領域中に存在する部分の、前記熱融着領域の幅方向と同じ方向の寸法に相当する幅(以下、「中間金属箔層の熱融着領域中に存在する部分の幅」と称する。)が、該熱融着領域中の内側熱可塑性樹脂層の厚みの少なくとも10倍であり、且つ、中間金属箔層は、外装体の外縁部端面側で、少なくとも端子取出し部位およびその周辺の部分において、前記熱融着領域の幅方向と同じ方向に、外装体の外縁から所定の奥行だけ欠損部を有している。
(β)外装体の外縁部端面が、少なくとも端子取出し部位およびその周辺の部分において、全厚さ方向に渡って絶縁処理されている。
2.前記熱融着領域の幅が、1mm〜50mmであることを特徴とする前項1に記載の非水系薄型電池。
3.前記中間金属箔層の欠損部の奥行きが、0.1mm以上であり、かつ前記熱融着領域の幅の80%以下であることを特徴とする前項1又は2に記載の非水系薄型電池。
4.前記中間金属箔層の欠損部の奥行きが、0.5mm以上であり、かつ前記熱融着領域の幅の50%以下であることを特徴とする前項3に記載の非水系薄型電池。
5.前記中間金属箔層の欠損部の前記外装体の外縁に平行な寸法に相当する幅が、端子取出し部位における端子の断面の外周の2分の1以上であることを特徴とする前項1〜4のいずれかに記載の非水系薄型電池。
6.前記外側絶縁体層が、260℃以上の融点を有することを特徴とする前項1〜5のいずれかに記載の非水系薄型電池。
7.前記外側絶縁体層が、300kg/mm2以上の引っ張り弾性率及び50kg/mm2以上の圧縮弾性率のいずれか又は両方を有することを特徴とする前項1〜6のいずれかに記載の非水系薄型電池。
8.前記内側熱可塑性樹脂層と中間金属箔層との間に少なくとも1層の中間絶縁体層を設けてなることを特徴とする前項1〜7のいずれかに記載の非水系薄型電池。
9.前記内側熱可塑性樹脂層と中間金属箔層との間に設けられた少なくとも1層の中間絶縁体層が、260℃以上の融点を有することを特徴とする前項8に記載の非水系薄型電池。
10.前記内側熱可塑性樹脂層と中間金属箔層との間に設けられた少なくとも1層の中間絶縁体層が、300kg/mm2以上の引っ張り弾性率及び50kg/mm2以上の圧縮弾性率のいずれか又は両方を有することを特徴とする前項8又は9に記載の非水系薄型電池。
11.前記熱可塑性樹脂層及び絶縁体層のうちの少なくとも1層が、ポリ塩化ビニリデン系樹脂からなるものであることを特徴とする前項1〜10のいずれかに記載の非水系薄型電池。
12.前記端子が、アルミニウム又は銅から作られていることを特徴とする前項1〜11に記載の非水系薄型電池。
13.前記端子が、その表面の少なくとも一部が粗面化されていることを特徴とする前項12に記載の非水系薄型電池。
14.前記袋状外装体が膨張変形した場合、前記端子の少なくとも一部を切断するように作動する手段を更に含むことを特徴とする前項1〜13のいずれかに記載の非水系薄型電池。
15.前記電池素子が、リチウムイオン二次電池素子であることを特徴とする前項1〜14のいずれかに記載の非水系薄型電池。
本発明の非水系薄型電池は、上記したように、正極、負極、及び正極と負極との間に挾まれて存在する非水系電解質を含む電池素子(a)と、この電池素子(a)を内部に含み且つ融着シールされた袋状外装体(b)と、正極及び負極に電気的に連結された少なくとも一対の端子(c)とを含む非水系薄型電池である。袋状外装体は、内側熱可塑性樹脂層(1)、中間金属箔層(2)及び外側絶縁体層(3)の少なくとも3層からなる積層体から作られている。該袋状外装体の外縁部に沿って長形の熱融着領域を所定幅で有していて、該熱融着領域では該積層体の内側熱可塑性樹脂層(1)の相対向する面が互いに熱融着されていて、それにより袋状外装体の融着シール部が形成されている。端子は、外装体の上記融着シール部の端子取出し部位を通って外装体の外側に延びている。更に本発明の非水系薄型電池は、上記2つの特徴(α)及び(β)のいずれか1つ又は両方を満足する。
本発明に用いられる袋状外装体(b)は、上述のように、内側熱可塑性樹脂層(1)、中間金属箔層(2)、及び外側絶縁体層(3)の少なくとも3層からなる積層体から作られている。
外装体の最内層となる内側熱可塑性樹脂層(1)の相対向する面を、その外縁に沿って互いに熱融着することにより、袋状外装体の融着シール部を形成し、内部に収納した電池素子を封止して、外部と電池素子とを遮断し、外部から水蒸気等の汚染物が侵入すること及び内部電解液が漏れることを防止する。従って、内側熱可塑性樹脂層(1)に用いられる熱可塑性樹脂は、非水系薄型電池に用いられる電解液に対して非相溶性、非膨潤性であることが好ましい。
用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエステル、ポリエステルコポリマー、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ホルマール化ポリビニルアルコール、アクリル酸変性ポリエチレン、アクリル酸変性ポリプロピレン等が挙げられる。また、対向する層相互の、また端子との間の密着性を向上させるために、その表面に酸化処理やコーティングなどを施すこともできる。
内側熱可塑性樹脂層(1)の厚みは、熱融着時の強度と軽量化とのバランスに基づき決定することが好ましい。具体的には、10μm以上、100μm以下が好ましく、20μm以上、90μm以下が更に好ましく、30μm以上、80μm以下が最も好ましい。
袋状外装体において、中間金属箔層(2)は、空気、酸素、窒素、及び水、その他の外部から侵入しうる汚染物に対する透過遮蔽効果、および電池電解質に対する透過遮蔽効果を有し、電池性能の低下を抑制するものであることが好ましい。中間金属箔層(2)の材質としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、SUS、Ni、Cu等が挙げられる。耐腐食性からアルミニウム、アルミニウム合金またはSUSが好ましい。軽量かつ加工性に優れることからアルミニウムおよびアルミニウム合金が更に好ましい。また、積層体をなす他の層との接着強度を上げるために、金属表面を粗面化して用いてもよい。
中間金属箔層(2)の厚みは、水蒸気遮蔽効果と、軽量化及び易加工性とのバランスより決められることが好ましい。具体的には、3μm以上、80μm以下が好ましく、5μm以上、50μm以下が更に好ましく、7μm以上、30μm以下が最も好ましい。
袋状外装体の最外層となる外側絶縁体層(3)は、外部からの衝撃、突き刺しまたは薬品等から中間金属箔層(2)を保護し、また、中間金属箔層(2)を端子等から電気的に絶縁することにより不要な短絡を防止する。また、外側絶縁体層(3)に用いられる材質は、積層体に含まれる内側熱可塑性樹脂層(1)より融点が高く、熱融着時に溶融しないことが必要である。
外側絶縁体層(3)に用いる樹脂として、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ガラス繊維含有ナイロン、セロハン、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、芳香族ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリパラキシレン、ポリエーテルエーテルケトン、シンジオタクチックポリスチレン、液晶ポリマー、フッ素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。また、積層体中の内側熱可塑性樹脂層よりも融点の高い熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を必要に応じて組み合わせて用いてもよい。
外側絶縁体層の厚みは、機械的強度と軽量化とのバランスを考慮して決定することが好ましい。具体的には、1μm以上、100μm以下が好ましく、2μm以上80μm以下が更に好ましく、4μm以上50μm以下が最も好ましい。
積層体を製造する方法としては、ウェットラミネーション、押し出しコーティング、共押し出しラミネーション、ドライラミネーション、ホットメルトラミネーション、ヒートラミネーション等が挙げられる。これらの加工方法として、例えば、シート、フィルム又は箔同士を加熱ラミネートして融着する方法、ポリエチレン、ポリプロピレン等の低融点のフィルムを間に挟持する方法、湿気硬化型ウレタン化ポリエーテル、湿気硬化型ウレタン化ポリエステル、ウレタン化ポリエーテル、ウレタン化ポリエステル、ポリエステルポリオール、ポリイソシアネー卜等の接着剤、ホットメルト接着剤を間に挿入する方法、基材上にポリマー溶融体をキャストまたは押し出し成膜する方法、ポリマー溶液や液体状態のポリマー前駆体をキャストする方法が可能であり、積層する材料に応じて適宜選択して利用できる。この積層体は電池の外装体に必要な透水バリア性、端子との密着性、及び用いる封止方法等を考慮して形成することが好ましい。
熱融着領域を形成する方法としては、インパルスシール、スピンウェルドなどの摩擦熱による方法、ヒートシール、レーザー、赤外線、ホットジェットなどの外部加熱、高周波シール、超音波シールなどの内部加熱法が用いられる。熱融着領域において、外装体の最内層の内側熱可塑性樹脂層が溶融することにより端子と内側熱可塑性樹脂層、または相対向する内側熱可塑性樹脂層同士が接合し、内部に収納された電池素子を封止する。
また、接着強度を上げることを目的としてポリビニルアルコール系、オレフィン系、ゴム系、ポリアミド系などのホットメルト接着剤を内側熱可塑性樹脂層(1)と端子、または相対向する内側熱可塑性樹脂層同士の間に挟持させてもよい。熱融着領域の幅は、封止の確実性と電池の体積エネルギー密度の向上とバランスを考慮して決定することが好ましい。具体的には、本発明の効果を発現するために好ましい熱融着領域の幅は、外縁から1mm以上、50mm以下、更に好ましくは2mm以上、30mm以下、最も好ましくは2mm以上、20mm以下である。
また、熱融着領域を電池の中心方向に折り曲げて、電池の投影面積を調整することもできる。この場合、熱融着領域の幅は、前記の熱融着領域を折り曲げる前の幅として定義される。
本発明の非水系薄型電池は、積層体からなる袋状外装体の端子取出し部位を通って外側に延びている端子と、端子取出し部位の外縁部端面に露出した積層体中の中間金属箔層との接触により生じうる短絡を防止する手段を備えている。すなわち、本発明の2つの特徴のうちの1つである上記構成(α)により、短絡を有効に防止することができる。
「中間金属箔層の熱融着領域中に存在する部分の幅を、該熱融着領域中の内側熱可塑性樹脂層の厚みの少なくとも10倍以上」としたのは、通常、金属箔の透湿度は樹脂フィルムの透湿度の1/10以下であるため、熱融着領域中に中間金属箔層が内側熱可塑性樹脂層の厚みの10倍以上の幅で存在している場合、端面からの透湿度は厚み方向からの透湿度より小さくなり、外装体表面からの透湿性に対して端面からの透湿性を無視することができるからである。
外装体の熱融着領域に存在する中間金属箔層(2)の幅(すなわち、中間金属箔層の熱融着領域中に存在する部分の幅)は、少なくとも端子取り出し部位およびその周辺においては、端子と中間金属箔層(2)の短絡を防ぐ効果を発現するためには、熱融着領域の幅以下でなければならない。すなわち、熱融着領域中に存在する中間金属箔層の幅は、好ましくは内側熱可塑性樹脂層の厚みの10倍以上であって熱融着領域の幅以下、更に好ましくは内側熱可塑性樹脂層の厚みの20倍以上であって熱融着領域の幅以下、最も好ましくは内側熱可塑性樹脂層の厚みの40倍以上であって熱融着領域の幅以下である。
さらに、端子が露出した中間金属箔層と接触して短絡することを防ぐため、少なくとも端子取出し部位においては、この中間金属箔層(2)の欠損部の大きさは、絶縁状態を保持するために十分な大きさでなければならない。この欠損部の奥行(前記熱融着領域の幅方向と同じ方向での寸法)は、少なくとも0.1mm以上で熱融着領域幅の80%以下であることが好ましい。前記欠損部の奥行を0.1mm以上としたのは、内側熱可塑性樹脂層(1)と外側絶縁体層(3)の厚みの和が0.1mm程度であり、欠損部を形成することによって中間金属箔層(2)に生じた端面を覆うためには、前記欠損部の奥行が0.1mm以上必要となるからである。また、前記欠損部の奥行を熱融着領域幅の80%以下としたのは、前記欠損部の奥行が熱融着領域幅の80%以下であると、この欠損部に前記奥行方向で隣接する熱融着領域中に存在する中間金属箔層の幅が熱融着領域幅の20%以上となるため、この熱融着領域中に存在する中間金属箔層によって、十分に耐透湿性が保持されるからである。
従って、端子間の短絡を抑制し、耐透湿性を保持する本発明の効果を発現するためには、前記欠損部の奥行きの範囲を、好ましくは0.1mm以上であって熱融着領域幅の80%以下、更に好ましくは0.3mm以上であって熱融着領域幅の70%以下、最も好ましくは0.5mm以上であって熱融着領域幅の50%以下とする。
中間金属箔層(2)の欠損部の幅(外装体の外縁に平行な寸法)は、端子の断面の外周の2分の1以上(形状が短冊状の場合、端子の厚みと幅の和以上)の大きさであることが好ましく、端子の断面の外周の2分の1の1.5倍以上が更に好ましく、欠損部の幅が端子取出し部位の辺の長さと同じであることが最も好ましい。中間金属箔層の欠損部の幅を端子の断面の外周の2分の1以上(端子が短冊状の場合、端子の厚みと幅の長さの和以上)の大きさとしたのは、端子を折り曲げた時の接触可能な幅を考慮したためである。
中間金属箔層の欠損部の幅(以下、「欠損幅」と称する。)の測定は、1mmの目盛のついた定規を用いて、または光学顕微鏡と0.01mmの目盛のついたObjective Micrometerとを用いて、外装体の表面側あるいは断面を測定することにより容易に行うことができる。
中間金属箔層の欠損部を形成する方法としては、中間金属箔層(2)をパターニング形成する方法、積層後の金属露出断面より中間金属箔層(2)をエッチングする方法などが挙げられる。パターニング方法として、短冊状、帯状の金属箔を樹脂フィルムと積層する方法、蒸着法で中間金属箔層(2)を形成する際にマスクを設ける方法、中間金属箔層(2)を形成する基盤上にパターン形成した溶解除去可能な層を作成し、さらにその上に中間金属箔層(2)を形成させ、ついでリフトオフすることにより中間金属箔層(2)をパターニングする方法、中間金属箔層上(2)にレジスト層をパターン形成した後エッチンングして中間金属箔層(2)をパターン化する方法などを用いることが可能である。
本発明の2つの特徴のうちの他の1つである上記構成(β)は、外装体の外縁部端面が、少なくとも端子取出し部位およびその周辺の部分において、全厚さ方向に渡って絶縁処理されているというものである。これにより、端子が折れ曲がった場合に生じる端子と中間金属箔層との短絡を容易に防止することが可能である。
外装体の端面に行う絶縁処理としては、絶縁処理された部分の表面抵抗率が106Ω/□以上、好ましくは107Ω/□以上となることが好ましい。
また、外装体の絶縁処理されている部分は、端子位置の端面だけでなく、これに連続するその周囲の部分までなされていることが好ましい。その場合、端子の幅方向では、端子の両側にはみ出す位置まで絶縁処理がなされるが、例えば、端子の幅を越えた幅で絶縁処理されていることが好ましい。より好ましくは、端子の幅の1.1倍以上、さらに好ましくは1.2倍以上の幅で絶縁処理を行う。また、外装体の端子位置の端面から所定の奥行きで、外装体の裏表、または、外装体を構成する相対向する1組の積層体の裏表を連続的に絶縁処理することが好ましい。
外装体の絶縁処理方法としては、絶縁性材料からなるテープ、フィルム、またはシートを所定の大きさに切りだし、外装体の所定位置に接着剤を用いて貼り付ける方法、裏面に粘着剤があらかじめ付着してある絶縁テープ等を所定の大きさに切り出してそのまま貼り付ける方法、熱融着性の絶縁性フィルムを所定の大きさに切り出して熱融着により貼り付ける方法、絶縁性塗料を外装体の所定位置に塗布する方法等が挙げられる。また、ポリエチレン等の絶縁性樹脂を含む溶液を外装体の所定位置に塗布してもよい。
絶縁性材料としては、ガラス、マイカなどの無機系固体、パルプ、セルロース誘導体などの半合成高分子、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、フッ素樹脂などの熱可塑性樹脂、エポキシ、ポリアミド、ポリイミドなどの熱硬化性樹脂が挙げられる。
粘着剤付の絶縁テープとしては、電気絶縁用ポリ塩化ビニル粘着テープ、電気絶縁用ポリエステル粘着テープ、ポリアミド粘着テープ、シリコーン粘着テープ、テフロン粘着テープ、粘着紙テープ等が挙げられる。
絶縁性フィルムまたはシートとしては、電気絶縁用マイカ紙、アラミド・マイカ紙、アラミド紙、ポリイミドフィルムナイロンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、テフロンシート、セロハン等が挙げられる。これらを用いる場合は、接着剤として、セラック、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などの合成樹脂系接着剤、フタール酸レジンやシリコーンレジン、ポリエステルイミド系レジン、ポリイミド系レジンを用いて外装体に貼り付ける。
熱融着性フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン積層フィルム等のフィルムを熱融着する方法が挙げられる。
絶縁性塗料としては、ポリイミドワニス、ポリエステルワニス、ポリエステルイミドワニス、ポリアミドイミドワニスなどの、ポリイミド系、ポリウレタン系あるいは、不飽和ポリエステル系の絶縁塗料が用いられる。塗布方法としては、はけ等により直接塗布する方法、塗布する部分を直接塗料内に漬ける方法等が採用できる。塗布後は加熱又は放置により乾燥して溶剤を揮発させる。
絶縁処理工程は、熱融着工程の前後のいずれに行ってもよく、熱融着工程の前に行う場合には、先ず、外装体の端子取り出し部位に対して、上記いずれかの方法により絶縁処理を施す。次に、絶縁処理が施された外装体で、正極、セパレータまたは固体電解質及び負極からなる電池素子並びに端子の一部を覆い、絶縁処理された部分から端子を外装体の外側まで延ばす。この状態で、熱融着により外装体を封止(融着シール)する。
絶縁処理工程を熱融着工程の後で行う場合には、熱融着工程の際に、外装体の端子取出し部位およびその近傍の融着位置を外装体の端面から少し内側として、外装体の外縁部周辺に未融着領域を残しておくと、このような未融着領域がない場合と比較して絶縁処理を容易に行うことができる。
なお、このような外装体に対する絶縁処理に加えて、端子の外装体との境界部分を絶縁処理してもよい。このようにすると、端子の絶縁部分が外装体の端面に接触するため、端子の折れ曲がりに起因する短絡をより確実に防止することができる。
該外装体をなす積層体は、最内層としての内側熱可塑性樹脂層と最外層としての外側絶縁体層との間に中間金属箔層を有する構成を有するが、さらに、中間金属箔層と内側熱融着性樹脂層との間に少なくとも1層の中間絶縁体層を有することが好ましく、この中間絶縁体層は高い弾性率を有する材料が好ましい。中間金属箔層と内側熱可塑性樹脂層との間に設ける中間絶縁体層は、外装体を熱融着により封止する際に、金属端子の微小な突起あるいは凹凸が内側熱可塑性樹脂層を突き抜けて中間金属箔層に接触することによって生ずることのある、中間金属箔層を介した正極端子と負極端子の短絡を防止するために用いられる。短絡した場合、電池を充電する時に電位が上がらないこと、また、充電された状態の電池が衝撃等により短絡して発熱することなどの問題が生じる。
中間絶縁体層の材料(外側絶縁体層の材料も同様である)としては、260℃以上の融点を有するとともに、端子上に存在する突起が中間絶縁体層を突き抜けることや内部が損傷することを防止するために、高い引張り弾性率や圧縮弾性率を有する材料を用いることが望まれる。絶縁体層となるフィルムの引張り弾性率は、好ましくは300kg/mm2以上、さらに好ましくは400kg/mm2以上である。また、絶縁体層となるフィルムの圧縮弾性率は50kg/mm2以上、さらに好ましくは100kg/mm2以上である。中間絶縁体層(外側絶縁体層も同様である)としては、引張り弾性率あるいは圧縮弾性率のいずれか一方を満たしていれば良いが、両方満たすことが好ましい。
中間絶縁体層として用いられる材料の具体例としては、ポリイミド系樹脂フィルム、芳香族系ポリアミド樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、ガラス繊維含有ナイロン、セロハン、二軸延伸ポリビニルアルコールフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム等が挙げられる。また、これらの絶縁材料を他の絶縁材料と張り合わせた、複数層からなるフィルムなどを用いることも可能である。
ポリイミド系樹脂フィルムとしてはカプトン(商品名;日本国、東レ・デュポン社製)、芳香族ポリアミド系樹脂フィルムとしてはアラミカ(商品名;日本国、旭化成工業社製)等が挙げられる。アラミカは1000kg/mm2以上の引張り弾性率、100kg/mm2以上の圧縮弾性率を有し、機械的強度に非常に優れるので好ましい。ポリエステル系樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルムが400kg/mm2以上の引張り弾性率を有するので好ましい。さらに好ましくは、引張り弾性率が400kg/mm2のポリフェニレンサルファイドフィルムが用いられる。
前述のように、中間絶縁体層が260℃以上の融点を有することが好ましいが、外側絶縁体層における場合とは別に、中間絶縁体層がこのような融点を持つことの利点として、高温における短絡を低減でき、電池の安全性を高めることができることを挙げることができる。すなわち、端子に大電流が通電され、端子や電池内部が発熱した場合、あるいは外部加熱によって高温状態となった場合には、融点が260℃以上の中間絶縁体層は端子間の短絡を抑制する効果を発揮する。短絡防止によって、電池素子の温度上昇が止まらなくなり一挙に破裂や発火すること(熱暴走)を防ぐことができる。上記のことから、中間絶縁体層の融点は260℃以上であることが好ましく、融点265℃以上であることが更に好ましく、融点が270℃以上であることが最も好ましい。
また、外側絶縁体層が260℃以上の融点を有することが好ましいのは、外部からの加熱や異常時の内部発熱時に電池の構造を保持することが可能となるからである。
融点が260℃以上の絶縁体として、ポリイミド、ポリエーテルイミド、芳香族ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリパラキシレン、ポリエーテルエーテルケトン、シンジオタクチックポリスチレン、液晶ポリマー、ポリイミド、フッ素樹脂、フェノール樹脂等のプラスチック材料、シリカ、Si3N4、マグネシア、アルミナ、ムライト等のセラミック材料、セラミック材料とプラスチック材料の複合材料が挙げられる。
本発明において絶縁体層の融点はDSC法により求めた。具体的には、米国、PERKIN ELMER社製の示差走査カロリメータ“DSC7”を用いて5℃/minで昇温し、得られたDSC曲線の吸熱ピークより融点を求めた。
内側熱可塑性樹脂層と中間金属箔層との間に中間絶縁体層を設ける場合、その厚みは、外装体の強度と軽量性に基づき決定することが好ましい。具体的には、好ましくは、1μm以上、100μm以下、更に好ましくは2μm以上、80μm以下、最も好ましくは4μm以上、50μm以下である。
絶縁体層または内側熱可塑性樹脂層にポリ塩化ビニリデン系樹脂を用いることは、防湿性、難燃性に優れているため好ましい。また、ポリ塩化ビニリデン系樹脂を用いることによって、中間金属箔層のピンホールによる防湿性の低下を防ぐことが可能である。このため電池の信頼性、生産性が向上できるため工業上好ましいものとなる。
塩化ビニリデン系ポリマーとして、主成分の塩化ビニリデン成分が70〜98重量%と塩化ビニリデンと重合可能な単量体、例えば、塩化ビニル、アクリルニトリル、アクリル酸、メタクリル酸アルキル基の炭素数が1から18のアクリル酸アルキルエステル、無水マレイン酸、マレイン酸アルキルエステル、イタコン酸、イタコン酸アルキルエステル、酢酸ビニル等の不飽和単量体の少なくとも一種が30〜2重量%で、その重量平均分子量は7万〜15万の範囲の共重合体を挙げることができる。その中でも、シート形状に押出し成形する際の押出し加工性の観点から塩化ビニル、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートの中の1つを30〜2重量%と、塩化ビニリデン成分が70〜98重量%との共重合体が好ましく、さらに好ましくは、透水バリア性・ガスバリア性共に優れるメチルアクリレートが8〜2重量%と塩化ビニリデンが92〜98重量%との共重合体である。
また、シート形状においては、上記の塩化ビニリデン系ポリマーのエマルジョンをポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリプロピレンにコートした一般名称“Kコートフィルム”が利用できる。
本発明における端子とは、電池素子と該電池外装体の外部とを電気的に接続する導電性材料を意味し、該端子は封止される対向した熱可塑性樹脂層の間または積層体に設けられた穴(取り出し部位)から、該外装体の外部と該電池素子とを電気的に接続することが可能である。
本発明に用いられる端子の材料として、SUS、ニッケル、アルミニウム、銅、もしくは、ニッケルめっきしたSUS、鉄、銅/SUSクラッド材などの金属、または導電性フィルムなどが挙げられる。電気抵抗及び強度の点から、金属を用いることが好ましく、外部装置、回路との接続を容易にする上でニッケル、アルミニウムまたは銅から作られているものが好ましい。更に、好ましくは銅またはアルミニウムから作られているものである。特にリチウム電池の端子としては、陽極での酸化、陰極での還元に対して、アルミニウムと銅の端子をそれぞれ用いることが好ましい。
端子がアルミニウムまたは銅の場合、SUSのような硬い材料に比べ、使用上折り曲がりやすく、従来の外装体では短絡が発生し易かった。本発明に用いられる外装体は、短絡を防止することができるため、非常に有効である。また、端子を熱融着領域へと折り曲げることにより、電池の体積を有効に使い、エネルギー密度を向上することも可能である。
また、表面を粗面化した金属を端子に用いることにより、端子取り出し部位の融着シール強度が向上し、該電池の密封性、耐漏液性を大幅に向上させることができる。特に、外装体内において、電池素子の積層体の部分以外に電解液が存在する場合、端子と熱可塑性樹脂層の間に電解液が侵入し、界面の密着性が低下し、封止性が低下する問題が起こる。表面を粗面化した金属を端子に用いることは液漏れを防止する上で有効である。端子は内側熱可塑性樹脂層に接する表面の一部が粗面化されていることが好ましい。端子の内側熱可塑性樹脂層に接する表面部分が粗化されていることがさらに好ましく、生産性の点から、該端子の表面全体が粗面化されていてもよい。
端子の形状としては棒状、短冊状、帯状、平板状、コイル状、メッシュ状などの形態をとりうるが、特にこれらに限定されるものではなく、電池の形状、材質等により適切な形状をとることが可能である。
大きさは端子の抵抗、強度より決められることが好ましい。例えば、平板状端子の場合、端子の厚みは、好ましくは5μm以上、100μm以下、更に好ましくは6μm以上、80μm以下、最も好ましくは7μm以上、60μm以下である。また、端子の幅は、好ましくは2mm以上、30mm以下、更に好ましくは3mm以上25mm以下、最も好ましくは4mm以上、20mm以下である。ただし、電池の大きさ、外装体の材料、通電時の抵抗等により適宜大きさを選択して端子を用いればよく、特に上記の範囲に限定されるものではない。
端子の表面の粗面化の方法としては、化学的処理、機械的処理等が挙げられる。
化学的処理による表面の粗面化の方法としては、酸、アルカリ等の溶液によるエッチングが挙げられる。例えば、銅の場合、塩化第二鉄溶液、硝酸などによるエッチング、アルミニウムの場合は水酸化ナトリウム溶液、りん酸溶液などによるエッチング、SUSの場合は硫酸によるエッチングなどの方法が可能である。また、金属の酸化電位によっては電解液中での陽極酸化によって表面を粗化することが可能である。銅および、アルミなどは表面粗化を容易に行うことができるため好ましい。
機械的処理による表面の粗面化の方法としては、やすり、ビニル砥石、ベルトサンダー、スクラッチホイールなどにより金属表面を削る方法が挙げられる。
また、その他の粗面化の方法としてプラズマエッチングなどが挙げられる。金属表面の粗面化方法は上記の方法に限定されるものではなく、端子の材質などに応じて適切な方法を用いることが可能である。
金属表面の粗さの測定方法としては、触針式、光波干渉式測定機などが用いられるが、本発明においては、端子が平板状の場合は、1.5×4.5cmの試験片を作製して、触針式測定機(“alpha-step200”、米国、TENCOR INSTRUMENTS社製)を用い、スキャン幅0.4mm、スキャン速度1s/μmで測定した。また、端子が平板状以外の場合も光波干渉式測定機を用い、JIS B0652-1973に準じて測定することができる。
本発明において、端子表面が粗面化されている状態とは、平板状の端子の場合、上記の触針式測定機によって得られた中心線平均粗さ(Ra)が0.3μm以上又は総インジケータランアウト(TIR)が2μm以上であることを意味する。好ましくはRaが0.34μm以上であり、30μm以下である。好ましいTIRは2.5μm以上、30μm以下である。
また、端子が平板状以外の形状の場合は、端子表面が粗面化されている状態とは、最大中心線平均粗さ(Rmax)が2μm以上であることであり、Rmaxが2.5μm以上であることが好ましい。
一般に、非水系薄型電池に用いられる外装体の透水量はできる限り低いことが好ましく、本発明に用いられる外装体としては、1g/m2・24hr以下であることが好ましい。より好ましい透水量は0.2g/m2・24hr以下、さらに好ましくは0.1g/m2・24hr以下である。透水量が1g/m2・24hrを超える外装体を電池に用いると、外装体内部の電池素子が吸水により劣化し、電池容量の低下をともなうため好ましくない。また、この吸水によって内部の電解質材料が分解しガスの発生を伴うこともある。外装体の透水量は、外装体内部に無水塩化カルシウムなどの吸水材料を封入し、所定の雰囲気で保持した後、重量増加の計測より求めることができる。
また、本発明の電池を作製する際には、外装体の内部を大気圧以下にして熱融着による封止をすることも可能である。これにより、外装体と電池素子との密着性が高められ、電池素子を確実に固定することができ、かつ電池素子の放熱を高めることができる。封止方法として、封止直前にノズルにより外装体内部を脱気し、しかる後封止する方法、該電池を密閉室内に置き、室内を脱気した後、密閉室内で封止する方法等が挙げられる。
本発明の非水系薄型電池は、電池素子が、例えばリチウム電池素子やリチウムイオン電池素子、特にリチウムイオン電池素子の場合に有利である。リチウムイオン電池素子は、リチウムイオン移動可能なセパレータに接合された正極及び負極、電解質、端子および外装体から構成される。この電池は集電体に活物質が接合され、集電体と端子が接合された構造を有する(例えば、米国特許第4,997,732号参照)。
端子の集電体への接合方法には、超音波溶接、抵抗溶接、レーザー溶接等を用いることが可能である、また接合は電池素子を組み立てる前あるいは後のどちらでも可能である。本発明の電池において正極および負極のそれぞれの集電体に少なくとも1つの、あるいは複数の端子が接合された構造や、電池素子内部で正極/セパレータ/負極を単位として、この単位が複数、並列または直列に接続された後、集電体の一部に端子が接合された構造を含む。
また、本発明では、内圧上昇を抑制することを目的として、外装体内部に二酸化炭素吸収材を備えることも可能である。これにより、長期にわたり高い気密性を保持することが可能でる。
例えば、二酸化炭素吸収材としては以下のものが挙げられる。LiOH、NaOH、KOH、Ca(OH)2、Ba(OH)2、Li2O、CaO、アスカライト等のI族、II族の金属の水酸化物または酸化物、あるいは、モレキュラーシーブ4A、ゼオラムA-4、モレキュライトA-430などの合成ゼオライトのような分子ふるい作用を利用した二酸化炭素吸着材は二酸化炭素を効率よく吸収する上に、固体であるため取り扱いが容易である。これらを、ペレットまたは小粒子、あるいは粉末の状態で、ナフィオン、セロハン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン系ストレッチフィルムなど、ガス透過性の高い樹脂フィルムに入れて用いることができる。また、直接電解液中、固体電解質中あるいは電極活物質層中にに分散させることも可能である。
外装体内部の電池素子が過充電、大電流放電の場合や短絡により異常反応を起こした場合、電池素子内部の化学反応または異常な温度上昇によるガス発生を伴うことがある。本発明の電池は、この際、外装体の膨れによる変形を低減または抑制し、利用される搭載機器の損傷を低減するとともに、電池素子から外装体への熱伝導を促進することによって電池の暴走反応を抑制し電池を安全な状態にすることができる。
本発明の電池においては、内部の異常反応に伴うガス発生による内圧上昇を抑制するため、電池内部でのガスの発生により電池の内部圧力が外部圧力よりも高くなった場合、少なくともガスの1部を放出するように作動する手段を設けることができる。
このガス放出手段として、例えば安全弁を外装体の一部に設けることが有効である。該安全弁は外装体の内外と連通した構造を有し、該安全弁のホルダー部が外装体に固定され、該安全弁の開放孔がばねまたは磁気カップリングで封止される構造を有するものを挙げることができる。内部高圧時に開放孔が形成され、これにより外部にガスが放出される。また、この安全弁の開放手段によっては安全弁の開放圧が高温時に低下させることも可能である。安全弁の開閉手段として、ばね、押さえ板、磁気カップリングなどが利用できる。これらの開放手段を用いて開放孔の面積と印加する応力によって開放圧が設定できる。
また、他の方法として、熱融着領域において、内側熱可塑性樹脂層と接着強度の弱い、薄いフィルムを内側熱可塑性樹脂層の間に挾むことによって前記目的を達成することも可能である。
更に、本発明は、電池内圧の上昇および/または電池内温度の上昇に伴い生じる変化により、端子と電池素子との電気的接続を破断する手段、即ち、袋状外装体が膨張変形した場合、前記端子の一部を切断するように作動する手段によって通電を遮断することも可能である。この機構によって、電池異常作動時における発火、爆発、熱暴走が阻止でき、電池の安全性を高めることができる。
外装体の膨張変形により電流遮断する機構としては、例えば、(1)端子が剥離可能な2層以上の金属平板積層体からなり、金属平板積層体の最外層の一方は電池素子と接続され、もう一方は外装体の外部へと延びており、それぞれが外装体の対向する内側熱可塑性樹脂層のそれぞれの面に密着固定された構造、(2)端子の1部に破断強度の小さい領域を設け、この領域の両側がそれぞれ外装体の対向する内側熱可塑性樹脂層の上面および下面に密着固定された構造、(3)電池素子の正極及び負極からのびる端子がそれぞれ外装体の対向する内側熱可塑性樹脂層の上面および下面に密着固定された構造が挙げられる。
上記(1)の構造において、端子の金属積層領域の端子間接合は、超音波溶接、レーザー溶接、スポットベルダーなどの金属溶接や導電性塗料塗布接着で行い、接合材料や接合方法、接合面積により金属平板間の強度を調節することが可能である。また、(2)の構造において、切れ込み等の断面積の小さい領域を設けること、破断強度の小さい材料を間に挾むことによって電流遮断条件が調整できる。(3)の構造において、電極積層体の集電体または活物質層と端子の接合強度を調節して電流遮断条件が調節できる。
これらの構造において、端子切断部分の両側のいずれかを外装体の内側熱可塑性樹脂層の上面または下面に密着固定する際、未密着部分を設ける必要がある。この未密着部分は、例えば、未密着部表面に熱可塑性樹脂と密着しにくい材料、例えばテフロンなどフッ素樹脂をシート形状または粉末状態で付着させ、端子部分と内側熱可塑性樹脂層と密着工程を施すことにより密着固定部、未固定部を形成できる。端子の破断強度は電池容量、構造によって変化するので限定されないが、10g〜50kgの範囲である。
さらに、端子の一部に温度上昇により通電が遮断される素子(PTC素子)を接続することができる。この素子は導電性フィラーと絶縁性樹脂からなるコンパウンドからなり、導電性フィラーと樹脂の熱膨張係数の差を利用して高温時の抵抗を高め電流を遮断する機能を有する。この素子は通常平板状金属/導電性フィラー・樹脂コンパウンド/平板状金属からなるため、上記の端子の直列に電池外装体内部または外部に接続できる。
また、端子が2層以上の金属平板積層体からなり、平板の間を導電性接着剤、あるいは導電性テープなどの金属/導電性フィラー/樹脂の複合材料で接合することにより、上記PTC素子の効果を達成することができる。例えば、導電性材料に用いられる銀、銅などの金属粉とフェノール樹脂、エポキシ樹脂などの組成、混合比を変えること、テープまたは接着剤の面積を変えることにより、抵抗及び抵抗の急激に変わる温度を設定することができ、これにより電池の内部抵抗及び作動温度を調節することが可能である。また、異種の金属間の接合も容易であり、例えば、アルミニウムの端子に導電性テープでニッケル箔を接着した場合、はんだ付けが容易となり外部機器への接続が容易となる。また、前記の電流遮断部分の構造(1)の接合方法に代替して用いることもできる。
本発明をリチウム電池またはリチウムイオン電池に用いる場合、正極集電体としてはニッケルやアルミニウムが用いられ、負極集電体としては銅が用いられる。正極材に用いられる活物質として、LiCoO2等のアルカリ金属複合酸化物;MnO2などの他の金属の酸化物や水酸化物との複合酸化物;V2O5等のバナジウム酸化物;Cr2O5等のクロム酸化物;TiS2、MoS2、FeS2等の遷移金属ジカルコゲナイト;NbSe3等の遷移金属トリカルコゲナイト、シェブレル化合物(AxMo6Y8,A=Li,Cu,Y=S,Se);ポリピロール、ジスルフィド誘導体などの有機化合物、及びこれらの混合体等が用いられる。
負極材に用いる活物質としては、金属リチウム、リチウム合金、ニードルコークス、グラファイト等のリチウムを吸蔵することが可能な炭素材料;すず系複合酸化物などの金属酸化物のリチウム固溶体;リチウムをドープし、かつ脱ドープしうる導電性ポリマー等が用いられる。本発明の電池は正極と負極とがイオン移動可能なセパレータを介して接合され、このセパレータにイオン移動可能な材料が用いられる。
電極間のイオン移動媒体として液状電解質、ゲル系電解質、固体電解質を用いることができる。このうち、ゲル系電解質は、高分子マトリックス材料、有機溶媒、溶質からなり、高分子材料として、ポリ弗化ビニリデン系重合体、ポリアクリロニトリル系重合体等が用いられ、有機溶媒としてエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等が用いられ、溶質として、LiClO4、LiPF6、LiBF4等が用いられる。
<発明を実施するための最良の形態>
以下、実施例及び比較例によって、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
[実施例1]
コバルト酸リチウム(LiCoO2;平均粒径10μm)の粉末、カーボンブラック、およびバインダーとしてのポリビニリデンフルオライドを、コバルト酸リチウム、カーボンブラック、ポリビニリデンフルオライド(乾燥重量)の合計重量に対してそれぞれ85重量%、8重量%、7重量%となるように、ポリビニリデンフルオライドの5重量%N-メチルピロリドン(NMP)溶液に分散し、得られた混合物を厚さ15μmのアルミニウムシート上に塗布乾燥、加熱プレスして膜厚115μm、塗膜密度2.8g/cm3の正極塗膜を作製した。
一方、平均粒径12μmのニードルコークス(NC)粉末にポリビニリデンフルオライドの5重量%NMP溶液を均一混合してスラリーを得た。ニードルコークス、ポリマーの乾燥混合比はそれぞれ92重量%、8重量%であった。このスラリーを厚さ12μm金属銅シート上にドクターブレード法により塗布乾燥、加熱プレスして膜厚125μm、塗膜密度1.2g/cm3の負極塗膜を作製した。
ヘキサフルオロプロピレン-フッ化ビニリデン共重合体樹脂(ヘキサフルオロプロピレン含量5重量%)を押出ダイ温度230℃の押出成形機[日本国、東芝機械(株)社製]を用いた加熱押し出し成形によって、膜厚150μmのシートに成形した。架橋反応を行うために、得られたシートに照射量10Mradで電子線照射を行った後、60℃で真空乾燥して生成した弗化水素(HF)ガスを除去した。このシートに更に電子線を照射(照射量15Mrad)し、ついで密閉容器内でフロンHFC134aと水の混合物(重量比99/1)を、70℃、20kg/cm2の条件下で24時間含浸させた(含液量:6.5重量%)後取出して、ただちに210℃の加熱炉にて10秒間180℃に加熱して、膜厚270μmの白色発泡体(発泡倍率8倍)を得た。930型空気比較式比重計(日本国、東芝ベックマン社製)により測定した、独立気泡の発泡体全体に対する体積分率は87容量%であった。
この発泡体を、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF4)をエチレンカーボネート(EC)/プロピレンカーボネート(PC)/γ-ブチロラクトン(γ-BL)混合溶媒(EC/PC/γ-BL重量比:1/1/2)にLiBF4濃度1mol/lで溶解して得られる非水系電解質溶液に入れ、100℃で2時間含浸・膨潤させて、複合高分子固体電解質を作製した。膨潤後の膜厚は350μmであった。以下の操作は、露点-50℃以下の雰囲気下で行った。
6cm×50cmの正極塗膜、6.5cm×52cmの複合高分子固体電解質膜及び6cm×50cmの負極塗膜を塗膜面が対向する構造で積層した。正極には幅1cm、長さ10cm、厚み50μmの硬質アルミ箔(Ra=0.16μm、TIR=0.73μm)、負極には幅1cm、長さ10cm、厚さ50μmの硬質圧延銅箔(Ra=0.07μm、TIR=0.91μm)を端子として超音波金属溶接機[日本国、超音波工業(株)社製 USW-200Z38S]を用いて集電体表面に接合した。端子の取り付けた位置は6cmの辺において、端から2cmと4cmの位置に端子の中心線がくるようにした。50cmの長さの電極積層体を10cmごとに折り曲げ、5つ折りとして、電池素子を作製した。
図1(a)及び(b)に示すように、積層体を以下の要領で作製した。18cm×14cm、厚み15μmの延伸ナイロンフィルム[日本国、出光石油化学(株)社製 ユニロン]、18cm×14cm、厚み7μmのアルミニウム箔、18cm×14cm、厚み50μmのL-LDPEフィルム[日本国、出光石油化学(株)社製 LS-700C]をウレタン系2液混合接着剤を用いて接着した。前記アルミニウム箔は18cmの辺について端子取り出し部位に該当する部分を幅(外縁に平行な方向の寸法)11mm、奥行き0.5mmであらかじめ削除しておいた。
二つ折り線l1のところでフィルムを2つ折りにし、アルミニウム箔を削除していない9cmの辺と14cmの2辺との3辺の周辺を、それぞれ外縁から幅10mmで、140℃、6秒間、加熱することにより袋(外装体)を作製した。この袋に前述した電池素子を入れ、袋の口から端子を取り出して、1kg/cm2の圧力、120℃で6秒間加熱することにより封止した。
端子取出し部位において、熱融着領域は外縁から幅10mmで設けてあり、アルミニウム層は幅11mm、奥行き0.5mmで欠損している。欠損の奥行きの確認は光学顕微鏡[日本国、オリンパス工業(株)社製 システム金属顕微鏡BHT]、0.01mmの目盛のついたObjective Micrometer[日本国、オリンパス工業(株)社製]を用いて行った。
図1(c)に示す電池を5個作製した。電池充放電特性測定装置[日本国、北斗電工(株)社製 HJ-101SM6]を用いて充放電を行ったところ、すべて、正常に充放電し、得られた電池の平均放電容量は900mAhであった。4.2Vの充電状態において端子を折り曲げる操作をしても短絡による電圧の低下、発熱は生じなかった。また、液漏れも観察されなかた。
また、同じ外装体に電池素子の代わりに無水塩化カルシウム20gを入れ、60℃、90%RH(相対湿度)で3ヶ月放置したが、重量増加は1mg未満であった。
[実施例2]
図2(a)及び(b)に示すように、外装体を作製するための積層体を以下の要領で作製した。
18cm×14cm、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(日本国、アイ・シー・アイジャパン社製 メリネックスS)、18cm×13cm、厚み9μmのアルミニウム箔、18cm×14cm、厚み50μmのL-LDPEフィルム[日本国、出光石油化学(株)社製 LS-700C]をこの順に、ウレタン系2液混合接着剤を用いて積層した。
作製した積層体は、端の部分において、アルミニウム箔が幅18cm、奥行き10mmで欠損している。カッターナイフで熱可塑性樹脂層及び絶縁体層を一部切断することにより、欠損部の奥行きを0.2mmとした[従って、図2(a)に示すように積層体の寸法は18cm×13.02cmとなった]。l2でフィルムを2つ折りにし、アルミニウム箔の欠損していない9cmの辺と13.02cmの辺との周辺を、それぞれ外縁から幅10mmで、140℃、6秒間、加熱することにより袋を作製した。作製した袋に実施例1と同様に作製した電池素子を入れ、積層フィルムの袋の口よりこの端子を取出し、口を1kg/cm2の圧力、120℃、6秒加熱することにより封止した。
端子取出し部位において、熱融着領域の幅は3mmであり、アルミニウム層は幅9cm、奥行き0.2mmの大きさで欠損している。欠損の奥行きの確認は光学顕微鏡[日本国、オリンパス工業(株)社製 システム金属顕微鏡BHT]、0.01mmの目盛のついたObjective Micrometer[日本国、オリンパス工業(株)社製]を用いて行った。
図2(c)に示す電池を5個作製した。電池充放電特性測定装置[日本国、北斗電工(株)社製 HJ-101SM6]を用いて充放電を行ったところ、すべて、正常に充放電し、得られた電池の平均放電容量は900mAhであった。4.2Vの充電状態において端子を折り曲げる操作をしても短絡による電圧の低下、発熱は生じなかった。また、液漏れも観察されなかった。
また、同じ外装体に電池素子の代わりに無水塩化カルシウム20gを入れ、熱融着領域幅10mmで、140℃、6秒間、加熱して袋を封止した。60℃、90%RHで3ヶ月放置したが、重量増加は1mg未満であった。
[実施例3]
図3(a)及び(b)に示すように、18.9cm×14cm、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(日本国、アイ・シー・アイジャパン社製 メリネックスS)、17.9cm×13cm、厚み20μmのアルミニウム箔、18.9cm×14cm、厚み30μmのポリエチレン・ビニルアルコール[日本国、(株)クラレ社製 EF-HS]をウレタン系2液混合接着剤を用いて積層した。
作製した積層体の各辺において、アルミニウム箔が0.5mmの奥行きで欠損するように、熱可塑性樹脂層及び絶縁体層をカットした[従って、図3(a)に示すように積層体の寸法は18cm×13.1cmとなった]。l3でフィルムを2つ折りにし、片一方の9cmの辺と13.1cmの2辺との3辺を、幅10mmで、140℃、6秒間、加熱することにより袋を作製した。この袋に実施例1と同様に作製した電池素子を入れ、1kg/cm2、135℃で、5秒間加熱することにより封止した。
端子取出し口において、熱融着領域の幅は10mmであり、アルミニウム層は外縁の全長に亙って奥行き0.5mmの大きさで欠損している。欠損の奥行きの確認は光学顕微鏡[日本国、オリンパス工業(株)社製 システム金属顕微鏡BHT]、0.01mmの目盛のついたObjective Micrometer[日本国、オリンパス工業(株)社製]を用いて行った。
図3(c)電池を5個作製した。電池充放電特性測定装置[日本国、北斗電工(株)社製 HJ-101SM6]を用いて充放電を行ったところ、すべて、正常に充放電し、得られた電池の平均放電容量は900mAhであった。4.2Vの充電状態において端子を折り曲げる操作をしても短絡による電圧の低下、発熱は生じなかった。また、液漏れも観察されなかた。
また、同じ外装体に電池素子の代わりに無水塩化カルシウム20gを入れ、熱融着領域幅10mmで、140℃、6秒間、加熱して袋を封止した。60℃、90%RHで3ヶ月放置したが、重量増加は1mg未満であった。
[実施例4]
積層体を以下の要領で作製した。
18cm×14cm、厚み12.5μmのポリイミドフィルム(日本国、東レ・デュポン社製 カプトン)、18cm×13cm、厚み20μmのアルミニウム箔、18cm×14cm、厚み30μmの熱融着性ポリブチレンテレフタレート[日本国、積水化学工業(株)社製 エスティナ]をこの順に、ウレタン系2液混合接着剤を用いて積層した。DSC法による測定でポリイミドフィルムの融点は観察されなかった。
作製した積層体は、端の部分において幅18cm、奥行き10mmの大きさで、アルミニウム箔が欠損している。幅18cm辺でフィルムを2つ折りにし、アルミニウム箔の欠損していない辺を、外縁から幅10mmで、180℃、8秒間、加熱することにより袋を作製した。作製した袋に実施例1と同様に作製した電池素子を入れ、積層フィルムの袋の口より端子を取出し、口を185℃、5秒加熱することにより封止した。
端子取出し口において熱融着領域の幅は20mmであり、アルミニウム層は外縁部の全長に亙って奥行き10mmの大きさで欠損している。欠損の奥行きの確認は1mm目盛のついた定規を用いて行った。
この電池を5個作製した。すべて、正常に充放電し、得られた電池の平均放電容量は900mAhであった。4.2Vの充電状態において端子を折り曲げる操作をしても短絡による電圧の低下、発熱は生じなかった。また、液漏れも観察されなかった。905mAhの容量の電池を4.2Vの充電状態において250℃のオーブンに入れたところ、端子と積層フィルムの接着部よりガスが噴出したが、フィルムへの引火は起きなかった。また、850mAhの容量の電池を用い、1.8Aで定電流充電を行ったところ、ガスが噴出したが、フィルムへの引火は起きなかった。
[実施例5]
積層体を以下の要領で作製した。
18cm×14cm、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(日本国、アイ・シー・アイジャパン社製 メリネックスS)、18cm×13cm、厚み9μmのアルミニウム箔、18cm×14cm、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(日本国、アイ・シー・アイジャパン社製 メリネックスS)、18cm×14cm、厚み40μmのポリプロピレンフィルム[日本国、二村化学工業(株)社製 太閤FC]をこの順に、ウレタン系2液混合接着剤を用いて積層した。
作製した積層体は外縁において幅18cm、奥行き10mmの大きさで、アルミニウム箔が欠損している。幅18cm辺でフィルムを2つ折りにし、アルミニウム箔の欠損していない辺を、外縁から幅10mmで、180℃、8秒間、加熱することにより袋を作製した。作製した袋に実施例1と同様に作製した電池素子を入れ、積層フィルムの袋の口よりこの端子を取出し、口を180℃、8秒加熱することにより封止した。
端子取出し口において熱融着領域の幅は20mmであり、アルミニウム層は外縁全長に亙って奥行き10mmの大きさで欠損している。欠損幅の確認は1mmの目盛のついた定規を用いて行った。
この電池を10個作製した。電池充放電特性測定装置[日本国、北斗電工(株)社製 HJ-101SM6]を用いて充放電を行ったところ、すべて、正常に充放電し、得られた電池の平均放電容量は900mAhであった。4.2Vの充電状態において端子を折り曲げる操作をしても短絡による電圧の低下、発熱は生じなかった。また、液漏れも観察されなかった。
また、同じ外装体に電池素子の代わりに無水塩化カルシウム20gを入れ、熱融着領域幅20mmで、180℃、6秒間、加熱して袋を封止した。60℃、90%RHで3ヶ月放置したが、重量増加は1mg未満であった。
[実施例6]
積層体を以下の要領で作製した。
18cm×14cm、厚み12μmのポリエチレンテレフタレート(日本国、アイ・シー・アイジャパン社製 メリネックスS)、18cm×14cm、厚み9μmのアルミニウム箔、18cm×14cm、厚み25μmの芳香族ポリアミドフィルム[日本国、旭化成(株)社製 アラミカ]、18cm×14cm、厚み40μmのポリプロピレンフィルム[日本国、二村化学工業(株)社製 太閤FC]をこの順でウレタン系2液混合接着剤を用いて積層した。定速伸長型伸度測定器(日本国、島津製作所社製 DSS-500)を用いて芳香族ポリアミドフィルムの引張り弾性率を測定したところ、1500kg/mm2であった。また、圧縮弾性率は200kg/mm2であった。
得られた積層体を18cmの辺でフィルムを2つ折りにし、片方の9cmの辺と14cmの辺との2辺を、幅10mmで、180℃、6秒間、加熱することにより袋を作製した。この袋に実施例1と同様に作製した電池素子を入れ、180℃で6秒間加熱することにより封止した。
端子取り出し部位の外装体外縁部は、図4(a)及び(b)に示すように、幅5mm、厚さ15μmの芳香族ポリアミドフィルム[日本国、旭化成工業(株)社製 アラミカ]にエポキシ樹脂系接着剤[日本国、セメダイン(株)社製 セメダインEP-007]を塗布して、外装体外縁で半分に折り曲げて接着することにより、あらかじめ絶縁処理を施した。端子取出し部位において、熱融着領域の幅は10mmであり、絶縁処理部材(7)は幅(外縁に平行な寸法)15mm、奥行き2.5mmの大きさで貼られている。
この電池を5個作製した。電池充放電特性測定装置[日本国、北斗電工(株)社製 HJ-101SM6]を用いて充放電を行ったところ、正常に充放電し、得られた電池の平均放電容量は900mAhであった。4.2Vの充電状態において端子を折り曲げる操作をしても短絡による電圧の低下、発熱は生じなかった。また、液漏れも観察されなかた。
また、同じ外装体に電池素子の代わりに無水塩化カルシウム20gを入れ、60℃、90%RHで3ヶ月放置したが、重量増加は1mg未満であった。
[実施例7]
積層体を以下の要領で作製した。
18cm×14cm、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(日本国、アイ・シー・アイジャパン社製 メリネックスS)、18cm×14cm、厚み9μmのアルミニウムフォイル、18cm×14cm、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム[日本国、アイ・シー・アイジャパン社製 メリネックスS]、18cm×14cm、厚み40μmのポリプロピレンフィルム[日本国、二村化学工業(株)社製 太閤FC]をこの順に、ウレタン系2液混合接着剤を用いて積層した。定速伸長型伸度測定器(日本国、島津製作所社製 DSS-500)を用いてポリエチレンテレフタレートフィルムの引張り弾性率を測定したところ、400kg/mm2であった。
得られた積層体を18cmの辺でフィルムを2つ折りにし、片方の9cmの辺と14cmの辺との2辺を、幅10mmで、180℃、6秒間、加熱することにより袋を作製した。端子取り出し部の外装体端部はあらかじめアミドイミドエステル系ワニス[日本国、日東電工(株)社製 ニトロンV-800]に添付された硬化剤No.5を加えて塗布し、100℃で15分間静置することにより絶縁処理を施した。この袋に実施例1と同様に作製した電池素子を入れ、180℃で6秒間加熱することにより封止した。
端子取出し部位において、熱融着領域の幅は20mmであり、絶縁処理として、外縁の全長に亙って奥行き5mmの大きさで絶縁塗料が塗布されている。
この電池を5個作製した。封止時に短絡は生じなかった。電池充放電特性測定装置[日本国、北斗電工(株)社製 HJ-101SM6]を用いて充放電を行ったところ、正常に充放電し、得られた電池の平均放電容量は900mAhであった。4.2Vの充電状態において端子を折り曲げる操作をしても短絡による電圧の低下、発熱は生じなかった。また、液漏れも観察されなかた。
また、同じ外装体に電池素子の代わりに無水塩化カルシウム20gを入れ、60℃、90%RHで3ヶ月放置したが、重量増加は1mg未満であった。
[実施例8]
積層体を以下の要領で作製した。
18cm×14cm、厚み25μmの芳香族ポリアミドフィルム[日本国、旭化成(株)社製 アラミカ]、18cm×13cm、厚み25μmのアルミニウム箔、18cm×14cm、厚み25μmの芳香族ポリアミドフィルム[日本国、旭化成(株)社製 アラミカ]、18cm×14cm、厚み40μmのポリプロピレンフィルム[日本国、二村化学工業(株)社製 太閤FC]をこの順に、ウレタン系2液混合接着剤を用いて積層した。DSC法よる測定で芳香族ポリアミドフィルムの融点は観察されなかった。
作製した積層体は、外縁において幅18cm、奥行き10mmの大きさで、アルミニウム箔が欠損している。18cmの辺でフィルムを2つ折りにし、アルミニウム箔の欠損していない9cmの辺と14cmの辺との2辺を、幅10mmで、180℃、6秒間、加熱することにより袋を作製した。この袋に実施例1と同様に作製した電池素子を入れ、180℃で6秒間加熱することにより封止した。
端子取出し部位において、熱融着領域の幅は20mmであり、アルミニウム層は外縁の全長に亙って奥行き10mmの大きさで欠損している。欠損幅の確認は1mmの目盛のついた定規を用いて行った。
この電池を5個作製した。電池充放電特性測定装置[日本国、北斗電工(株)社製 HJ-101SM6]を用いて充放電を行ったところ、得られた電池の平均放電容量は900mAhであった。910mAhの容量の電池を4.2Vの充電状態において250℃のオーブンに入れたところ、端子と積層フィルムの接着部よりガスが噴出したが、フィルムへの引火は起きなかった。また、880mAhの容量の電池を1.8Aで定電流充電したところ、ガスが噴出したが、フィルムへの引火は起きなかった。
[実施例9]
積層体を以下の要領で作製した。
18cm×14cm、厚み25μmのポリフェニレンサルファイドフィルム[日本国、東レ(株)社製 トレリナ]、18cm×14cm、厚み25μmのアルミニウム箔、18cm×14cm、厚み25μmのポリフェニレンサルファイドフィルム、18cm×14cm、厚み20μmのポリエチレン・ビニルアルコールフィルム[日本国、(株)クラレ社製 エバール]をこの順に、ウレタン系2液混合接着剤を用いて積層した。
DSC法より求めたポリフェニレンサルファイドフィルムの融点は285℃であった。18cmの辺でフィルムを2つ折りにし、外縁から幅10mmで、180℃、6秒間、加熱することにより袋を作製した。作製した袋に実施例1と同様に作製した電池素子を入れ、積層フィルムの袋の口より端子を取出し、口を180℃、6秒加熱することにより封止した。封止後に端子取出し部位の積層フィルムの外縁に、絶縁処理として、カプトン粘着テープ[日本国、(株)寺岡製作所社製]を貼った。
端子取出し口において、熱融着領域の幅は10mmであり、絶縁体(前記カプトン粘着テープ)は幅40mm、奥行き2.5mmの大きさで貼られている。
この電池を10個作製した。電池充放電特性測定装置[日本国、北斗電工(株)社製 HJ-101SM6]を用いて充放電を行ったところ、すべて、正常に充放電し、得られた電池の平均放電容量は900mAhであった。4.2Vの充電状態において端子を折り曲げる操作をしても短絡による電圧の低下、発熱は生じなかった。また、液漏れも観察されなかった。
また、同じ外装体に電池素子の代わりに無水塩化カルシウム20gを入れ、60℃、90%RHで3ヶ月放置したが、重量増加は1mg未満であった。
890mAhの容量の電池を4.2Vの充電状態において250℃のオーブンに入れたところ、端子と積層フィルムの接着部よりガスが噴出したが、フィルムへの引火は起きなかった。また、900mAhの容量の電池を1.8Aで定電流充電したところ、ガスが噴出したが、フィルムへの引火は起きなかった。
[実施例10]
積層体を以下の要領で作製した。
18cm×14cm、厚み25μmのポリビニルアルコールフィルム[日本国、(株)クラレ社製 クラレビニロンフィルム]、18cm×13cm、厚み25μmのアルミニウム箔、18cm×14cm、厚み25μmのポリエーテルエーテルケトンフィルム[日本国、三井東圧(株)社製 TALPA-2000]、18cm×14cm、厚み40μmのポリプロピレンフィルム[日本国、二村化学工業(株)製 太閤FC]をこの順に、ウレタン系2液混合接着剤を用いて積層した。DSC法より求めたポリエーテルエーテルケトンフィルムの融点は334℃、ポリビニルアルコールフィルムの融点は230℃であった。
作製した積層体は外縁において、幅18cm、奥行き10mmの大きさで、アルミニウム箔が欠損している。18cmの辺でフィルムを2つ折りにし、アルミニウム箔の欠損していない辺を、外縁から幅10mmで、180℃、6秒間、加熱することにより袋を作製した。作製した袋に実施例1と同様に作製した電池素子を入れ、積層フィルムの袋の口より端子を取出し、口を180℃、6秒加熱することにより封止した。
端子取出し口において、熱融着領域の幅は20mmであり、アルミニウム層は外縁の全長に亙って奥行き10mmの大きさで欠損している。欠損の奥行きの確認は1mmの目盛のついた定規を用いて行った。
この電池を5個作製した。電池充放電特性測定装置[日本国、北斗電工(株)社製 HJ-101SM6]を用いて充放電を行ったところ、すべて、正常に充放電し、得られた電池の平均放電容量は900mAhであった。4.2Vの充電状態において端子を折り曲げる操作をしても短絡による電圧の低下、発熱は生じなかった。また、液漏れも観察されなかった。
また、同じ外装体に電池素子の代わりに無水塩化カルシウム20gを入れ、60℃、90%RHで3ヶ月放置したが、重量増加は1mg未満であった。4.2Vの充電状態において250℃のオーブンに入れたところ、端子と積層フィルムの接着部よりガスが噴出したが、フィルムへの引火は起きなかった。
[実施例11]
積層体を、18cm×14cm、厚み12.5μmのポリイミドフィルム(日本国、東レ・デュポン社製 カプトン)、18cm×13cm、厚み20μmのアルミニウム箔、18cm×14cm、厚み25μmのポリフェニレンサルファイドフィルム、18cm×14cm、厚み60μmのポリプロピレンフィルム[日本国、二村化学工業(株)社製 太閤FC]をこの順に、ウレタン系2液混合接着剤を用いて積層したもの(DSC法による測定でポリイミドフィルムの融点は観察されなかった)に変えたこと以外は、実施例8と同様にして電池を作製した。その結果、実施例8と同様の特性、性能を有する電池が得られた。
[実施例12]
実施例1と同様に作製した6cm×50cmの正極塗膜、7cm×54cmのポリエチレンセパレータ[日本国、旭化成工業(株)社製 ハイポアU-2]、実施例1と同様に作成した6.5cm×51cmの負極塗膜を積層し、1.5MのLiBF4/エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトンの1:1:2混合溶液に浸漬した。正極には長さ10cm、幅1cm、厚み50μmのアルミニウム箔を粗面化したもの(Ra=0.4μm、TIR=2.8μm)を、負極には長さ10cm、幅1cm、厚み35μmの銅箔を粗面化したもの(Ra=1.2μm、TIR=6.5μm)をそれぞれ、集電体との接合部を端から長さ1cmとし、この集電体の短切片側に超音波溶接により接合した。この電極積層体を5つ折りとした。
実施例5と同様の積層体を用いて電池を作製した。作製した電池は液漏れが起きなかった。電池充放電特性測定装置[日本国、北斗電工(株)社製 HJ-101SM6]を用いて充放電を行ったところ、得られた電池の放電は容量は900mAhであった。この電池を95℃の高温に48時間放置したところ、封止部からの液漏れは観察されなかった。また、1ヶ月以上の室温での長期保存においても漏液はみられなかった。
[実施例13]
実施例11と同様にして積層体を作製した。
作製した積層体は外縁において幅18cm、奥行き10mmの大きさで、アルミニウム箔が欠損している。18cmの辺でフィルムを2つ折りにし、アルミニウム箔の欠損していない辺を、外縁から幅10mmで、180℃、6秒間、加熱することにより袋を作製した。この時、一ヶ所、幅5mm長さ15mm、厚さ10μmのSUS箔を熱可塑性樹脂層の間に挟んで熱融着した。
実施例1において端子を以下のものに変えたこと以外は実施例1と同様にして電池素子を作製した。すなわち、正極には、幅10mm、厚み50μmのアルミニウム箔を粗面化したもの(Ra=0.4μm、TIR=2.8μm)を2枚用い(長さ8cmの箔と長さ3cmの箔)、その長さ8cmの箔と長さ3cmの箔とを端から1cmの長さで重なるように、1cm角の導電性両面テープ[日本国、(株)寺岡製作所社製 WMFT]を用いて接着し、さらに185℃、5秒間加熱圧着することにより長さ10cm(端子の両端の抵抗は10mΩであった)としたものを、また、負極には、長さ10cm、幅1cm、厚み35μmの銅箔を粗面化したもの(Ra=1.2μm、TIR=6.5μm)をそれぞれ、集電体との接合部を外端から長さ1cmとし、この集電体の短切片側に超音波金属溶接機[日本国、超音波工業(株)社製USW-200Z38S]を用いて接合したこと以外は実施例1と同様にして電池素子を作製した。
先に作製した袋にこの電池素子を入れ、積層フィルムの袋の口より端子を取出し、口を180℃、6秒加熱することにより封止した。このようにして電池を5個作製した。
端子取出し部位において、熱融着領域の幅は20mmであり、アルミニウム層は外縁の全長に亙って奥行き10mmの大きさで欠損している。欠損部奥行きの確認は光学顕微鏡[日本国、オリンパス工業(株)社製 システム金属顕微鏡BHT]、0.01mmの目盛のついたObjective Micrometer[日本国、オリンパス工業(株)社製]を用いて行った。
この電池ではSUSとポリプロピレンの接着強度が弱く、安全弁として作動する。電池充放電特性測定装置[日本国、北斗電工(株)社製 HJ-101SM6]を用いて充放電を行ったところ、すべて、正常に充放電し、得られた電池の平均放電量は900mAhであった。900mAで定電流充電を行ったところ、3時間充電したところで、電池の厚みは1.5倍までしか膨らまず、破裂、発火は起きなかった。
[実施例14]
実施例5と同様にして積層体を作製した。
18cmの辺で2つ折りにし、積層体の中心線(二つ折線)から2cmの位置に、幅1cm、長さ4cm、厚み35μmの銅箔を粗面化したもの(Ra=1.2μm、TIR=6.5μm)を長さ2.5cmの部分が外装体と重なる様にして、外装体の熱可塑性樹脂層に180℃で6秒間加熱することにより接着した。更に幅1cmのカプトン粘着テープ[日本国、(株)寺岡製作所社製]を、前記積層体の中心線(二つ折り線)を基点として外装体のアルミニウム箔の欠損した辺に平行に、かつそのテープの外縁を外装体の外縁から1.5cm離して、端子を融着した面に貼り付けた。ただし、端子と重なる部分ならびに中心線から最も遠い外縁から1cmの部分はテープを削除した。
実施例1と同様にして電池素子を作製した。負極集電体にも厚み35μmの銅箔を粗面化したもの(Ra=1.2μm、TIR=6.5μm)を用いた。負極集電体に接合した端子を1.5cmの長さだけ電極積層体より出るようにして切り落とした。
この電池素子の負極から出た端子と熱可塑性樹脂層に取り付けた端子を1cmの幅で重なるように電池素子を置き、銅端子を超音波金属溶接機[日本国、超音波工業(株)社製 USW-200Z38S]を用い、2.5mmx5mmの面積を加重3kgで0.1秒溶接した。積層体を折り曲げた後、端子取り出し部位以外は幅10mmで、端子取り出し口は幅25mmで180℃、6秒加熱することにより熱融着した。このようにして電池を5個作製した。この状態においてカプトンテープとポリプロピレンは融着せず、電池素子側に取り付けた端子は外装体の面の一部に融着され、熱可塑性樹脂層にあらかじめ取り付けた端子は、電池素子側の端子に融着された外装体の面と対向する面に融着された状態となっている。
電池充放電特性測定装置[日本国、北斗電工(株)社製 HJ-101SM6]を用いて充放電を行ったところ、得られた電池の平均放電容量は900mAhであった。900mAで定電流充電を行ったところ、2.5時間充電したところで、外装体が膨らみ、電池の厚みが2倍となり、電流が流れなくなった。これ以上は充電されず、破裂、発火は起きなかった。
[比較例1]
積層体を以下の要領で作製した。
18cm×14cm、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(日本国、アイ・シー・アイジャパン社製 メリネックスS)、18cm×14cm、厚み9μmのアルミニウム箔、18cm×14cm、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(日本国、アイ・シー・アイジャパン社製 メリネックスS)、18cm×14cm、厚み40μmのポリプロピレンフィルム[日本国、二村化学工業(株)製 太閤FC]をこの順に、ウレタン系2液混合接着剤を用いて積層した。
作製した積層体の外縁はアルミニウム層が露出している。18cm辺でフィルムを2つ折りにし、外縁から幅10mmで、180℃、6秒間、加熱することにより袋を作製した。袋の口を1mmの幅で切り、端面を揃え、金属層と熱融着層、絶縁体層の幅を同一にした。作製した袋に実施例1と同様にして作製した電池素子を入れ、積層フィルムの袋の口より端子を取出し、口を180℃、6秒加熱することにより封止した。このようにして、電池を5個作製した。
端子取出し口において熱融着領域の幅は20mmであった。端子と外装体の境界を光学顕微鏡[日本国、オリンパス工業(株)社製 システム金属顕微鏡BHT]、0.01mmの目盛のついたObjective Micrometer[日本国、オリンパス工業(株)社製]観察したところ、ポリプロピレンが幅0.05mmで溶出しているのが観測された。端子が折れ曲がらないように注意して、電池充放電特性測定装置[日本国、北斗電工(株)社製 HJ-101SM6]を用いて充電を行ったところ、正常に充電したが、4.2Vの充電状態において端子を折り曲げる操作をしたところ短絡による電圧の低下、発熱が生じた。折り曲げた端子間の抵抗は2MΩであった。
また、同じ外装体に電池素子の代わりに無水塩化カルシウム20gを入れ、幅10mmで、140℃、6秒間、加熱して袋を封止した。60℃、90%RHで3ヶ月放置したが、重量増加は1mg未満であった。
[比較例2]
積層体を以下の要領で作製した。
18cm×14cm、厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(日本国、アイ・シー・アイジャパン社製 メリネックスS)、18cm×14cm、厚み12μmのアルミニウム箔、18cm×14cm、厚み15μmの延伸ナイロンフィルム[日本国、出光石油化学(株)社製 ユニロン]、18cm×13cm、厚み50μmのL-LDPEフィルム[日本国、出光石油化学(株)社製 LS-700C]をこの順に、ウレタン系2液混合接着剤を用いて積層した。
作製した積層体の外縁はアルミニウム層が露出している。18cm辺でフィルムを2つ折りにし、外縁から幅10mmで、140℃、6秒間、加熱することにより袋を作製した。袋の口を1mmの幅で切り、端面を揃え、金属層と熱融着層、絶縁体層の幅を同一にした。作製した袋に実施例1と同様にして作製した電池素子を入れ、積層フィルムの袋の口より端子を取出し、口を120℃、6秒加熱することにより封止した。端子取出し部位において熱融着領域の幅は20mmであった。
この電池を5個作製した。端子と外装体の境界を光学顕微鏡[日本国、オリンパス工業(株)社製 システム金属顕微鏡BHT]、0.01mmの目盛のついたObjective Micrometer[日本国、オリンパス工業(株)社製]観察したところ、L-LDPE樹脂が幅0.07mmで溶出しているのが観測された。端子が折れ曲がらないように注意して、電池充放電特性測定装置[日本国、北斗電工(株)社製 HJ-101SM6]を用いて充電を行ったところ、正常に充電したが、4.2Vの充電状態において端子を折り曲げる操作をしたところ短絡による電圧の低下、発熱が生じた。折り曲げた端子間の抵抗は100MΩであった。
また、同じ外装体に電池素子の代わりに無水塩化カルシウム20gを入れ、幅10mmで、140℃、6秒間、加熱して袋を封止した。60℃、90%RHで3ヶ月放置したが、重量増加は1mg未満であった。
[比較例3]
積層体を以下の要領で作製した。
18cm×14cm、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(日本国、アイ・シー・アイジャパン社製 メリネックスS)、18cm×11.8cm、厚み9μmのアルミニウム箔、18cm×14cm、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(日本国、アイ・シー・アイジャパン社製 メリネックスS)、18cm×14cm、厚み40μmのポリプロピレンフィルム[日本国、二村化学工業(株)社製 太閤FC]をこの順に、ウレタン系2液混合接着剤を用いて積層した。18cmの辺でフィルムを2つ折りにし、アルミニウム箔の欠損していない辺を、外縁から幅10mmで、180℃、6秒間、加熱することにより袋を作製した。
端子取出し口において、熱融着領域の幅は20mmであり、アルミニウム層は外縁の全長に亙って奥行き22mmの大きさで欠損している。
欠損部の奥行きの確認は光学顕微鏡[日本国、オリンパス工業(株)社製 システム金属顕微鏡BHT]、0.01mmの目盛のついたObjective Micrometer[日本国、オリンパス工業(株)社製]を用いて行った。袋の中に無水塩化カルシウム20gを入れ、幅20mmで、140℃、6秒間、加熱して袋を封止した。60℃、90%RHで3ヶ月放置したところ、640mgの重量増加が見られた。
このようにして作製した袋(外装体)に実施例1と同様にして作製した電池素子を入れ900mAhの電池を作製した。4.2V充電状態で3ヶ月間放置したところ、この電池の容量は、実施例5の電池の容量の80%に低下した。
[実施例15]
LiCoO2電極(平均粒径5μmのLiCoO2を100重量部、バインダーにポリフッ化ビニリデン3重量部およびアセチレンブラック3重量部をN-メチルピロリドンに分散、15μmアルミ集電体上に塗工、加熱プレスした膜厚110μm片面塗工シート)を正極として幅29mm、長さ110mmに切断後、長さ方向に幅10mmで電極活物質を剥離してアルミ集電体を露出させた。
グラファイト電極(平均粒径10μmのグラファイトMCMB(日本国、大阪ガス(株)製)100重量部、スチレン-ブタジエンラテックスの水分散スラリーを固形分換算で2重量部、およびカルボキシメチルセルロース0.8重量部を溶かした水溶液を混ぜ合わせて得られた、水に均一分散したスラリーを12μmの銅集電体上に塗布、加熱プレスした膜厚85μm片面塗工シート)を幅30mm、長さ110mmで切断し、長さ方向に幅9mmで活物質層を剥離して銅集電体を露出させた。
ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(ヘキサフルオロプロピレン含量3重量%、米国、エルフアトケム社製カイナール2850)のバルクシート(膜厚50μm)に電子線照射(照射量10Mrad)を行い架橋処理した後、フロン(HFC-134a)を7重量部含浸、加熱延伸処理して得られた発泡体シート(発泡倍率4倍、膜厚60μm)に、電解液としてエチレンカーボネート、γ-ブチロラクトンを体積比1:1で混合した液にLiBF4を溶解して得られた1.5モル/リットル溶液を含浸させて固体電解質(電解液含量75重量%、平均膜厚幅65μm、幅102mmの長尺シート)を得、セパレータとした。このセパレータを幅32mmで切断して短冊状とした後、電極の表面に上記の電解液をロールコーターで塗布した。塗布量は正極30g/m2、負極40g/m2とした。
上記の正極、セパレータ、負極をこの順に、負極活物質層から正極活物質層がはみださないようにセパレータを介して活物質層を対向させ、さらにアルミ集電体がはみ出した側と反対側に銅集電体をはみ出させる構成で積層し、加熱ロールのラミネータ(ロール温度130℃、ロール速度600mm/min)で積層一体化させた。このようにして、8枚の電極積層体を作製した。
この8枚の電極積層体を正極/負極/負極/正極/正極/負極・・・・の順に、アルミ集電体のみがはみ出た側と銅集電体のみがはみ出た側が形成されるように重ね合わせ、それぞれの集電体の重ね合わせた部分の中央部を3mm角で超音波溶接して接合し電極積層体を束ねた。次いで、幅10mm、長さ30mmの銅およびアルミシート(厚さ30μm)を端子として用い、上記超音波溶接部分に超音波溶接固定(溶接部は3mm角)した。
ポリマーシート(ポリエチレンテレフタレート25μm、ポリ塩化ビニリデンシート25μm、金属アルミニウムシート12μm、ポリプロピレン50μmを順次積層したシート)を袋状に加工した外装体(幅40mm筒状、長さ110mmの側面を幅3mmで融着)に、得られた電極積層体を挿入してアルミおよび銅の端子を外部にはみ出させてから、該アルミおよび銅の端子面を、それぞれ袋状外装体内面の上面および下面のポリプロピレン樹脂層に熱融着固定した後、真空引きを行いながら開口部分を熱融着して封止(封止幅3mm)し、なお、端子取り出し部位の外装体端部は実施例7で使用したアミドイミドエステル系ワニスと硬化剤によりあらかじめ絶縁処理して、電池を作製した。
端子を充放電機に接続して充放電試験(230mA定電流、4.2V定電位充電、230mA定電流放電をおこなった結果、初回放電量730mAh、平均電圧3.7V(2.7Wh)であり繰り返し充放電が可能であった。
充電状態の該電池の外装体表面中心部および端子が熱融着された外装体封止部表面に熱電対を貼付け、該電池の端子を充放電機に接続、2880mAの電流で定電流定電圧充電(電圧15V)で過充電を行なった結果、約19分で外装体が膨れだし、さらに15秒後電極端子が切断され通電できなくり電池の温度が低下した。この際の電池の端子付近の最大温度は38℃、電池外装体中心部の最大温度は42℃であった。
<産業上の利用可能性>
本発明の非水系薄型電池は、その特定の構造により、軽量で薄く且つ形状の自由度に優れるのみならず、防湿性及び気密性に優れ、しかも端子取出し部位およびその周辺での短絡の危険がない。従って、本発明の非水系薄型電池は、高容量であり且つ信頼性と安全性の高い小型軽量電池(例えば携帯機器用の電池)として特に有利に用いることができる。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-09-08 
出願番号 特願平10-540372
審決分類 P 1 652・ 121- YA (H01M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 高木 正博  
特許庁審判長 中村 朝幸
特許庁審判官 酒井 美知子
吉水 純子
登録日 2002-10-25 
登録番号 特許第3363910号(P3363910)
権利者 旭化成エレクトロニクス株式会社
発明の名称 非水系薄型電池  
代理人 内藤 嘉昭  
代理人 崔 秀▲てつ▼  
代理人 森 哲也  
代理人 内藤 嘉昭  
代理人 崔 秀▲てつ▼  
代理人 森 哲也  

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