• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B27K
管理番号 1127381
異議申立番号 異議2003-72599  
総通号数 73 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2001-07-10 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-10-23 
確定日 2005-11-16 
異議申立件数
事件の表示 特許第3400985号「合成木質建材のアルデヒド類除去方法、及びアルデヒド類低放出化合成木質建材」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3400985号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
特許第3400985号の請求項1ないし3に係る発明についての出願は、平成12年11月2日(特許公報の分割の表示及び出願日は、誤載である。)に特許出願され、平成15年2月21日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、その特許について、平成15年10月23日に花田扶弘美より、平成15年10月27日に山本紀子より、平成15年10月28日に中川信雄より、同日に青木隆明より特許異議の申立てがなされ、その後、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成17年8月8日に意見書が提出されたものである。

2.本件請求項1ないし3に係る発明
特許第3400985号の請求項1ないし3に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項によって特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】 アルデヒド類を放出しうる合成木質建材のうち、アンモニウム化合物を含有する合成木質建材に対し、ヒドラジド類、アゾール類及びアジン類から選ばれる少なくとも1種を処理することを特徴とする合成木質建材のアルデヒド類除去方法。
【請求項2】 アルデヒド類を放出しうる合成木質建材のうち、アンモニウム化合物を含有する合成木質建材に対し、ヒドラジド類から選ばれる少なくとも1種を処理することを特徴とする合成木質建材のアルデヒド類除去方法。
【請求項3】 ホルムアルデヒド及びアンモニウム化合物を含有する接着剤を用いて製造された合成木質建材に、ヒドラジド類、アゾール類及びアジン類から選ばれる少なくとも1種が塗布又は含浸されていることを特徴とするアルデヒド類低放出化合成木質建材。」
(以下、それぞれを「本件発明1」「本件発明2」「本件発明3」という。)

3.取消理由の概要
当審で通知した取消理由の概要は、下記の刊行物を引用し、本件請求項1ないし3に係る発明は、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1ないし3に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり取り消すべきものと認められる、というものである。

刊行物1:特開平11-48214号公報
(異議申立人青木隆明提出の甲第1号証、中川信雄提出の
甲第1号証、花田扶弘美提出の甲第6号証)
刊行物2:半井勇三著「実用木材加工全書3 木材の接着と接着剤」
昭和36年10月30日 森北出版株式会社 p.71-77
(同上甲第3号証、異議申立人中川信雄提出の甲第5号証)
刊行物3:林業試験場監修「改訂3版 木材工業ハンドブック」昭和57年
6月30日 丸善株式会社 p.523-525
(同上甲第4号証)
刊行物4:日本接着協会編「接着ハンドブック」昭和46年5月30日
日刊工業新聞社 p.244
(同上甲第5号証)
刊行物5:特公昭59-15049号公報
(異議申立人中川信雄提出の甲第8号証)

4.刊行物に記載の事項
(1)刊行物1(特開平11-48214号公報)
(1-a)段落【0017】には、以下の事項が記載されている。
「実施例1
木質系パネルとして、ユリア樹脂を用いて接着された長さ15cm、幅5cm、厚さ2.5cmの合板を用い、下記処方1の処理液を、合板の全面に刷毛によって10g塗布後乾燥した。乾燥後、150℃で3分間熱処理して本発明のホルムアルデヒド放散低減加工合板を得た。
処方1
アジピン酸ジヒドラジド 3重量%
ジエチレングリコールジグリシジルエーテル 3重量%
水 94重量%
本発明との比較のために、処方1による処理を行わない未加工合板を比較例1とした。次に本発明との比較のために、本実施例において処方1に代えて下記処方2および処方3を用い、乾燥後の熱処理を省く他は、本実施例と同一の方法によって従来法による比較例2および比較例3の加工合板を得た。
処方2
アジピン酸ジヒドラジド 3重量%
水 97重量%
処方3
アジピン酸ジヒドラジド 3重量%
アクリル酸ジヒドラジド 3重量%
水 94重量%
本発明および比較用の合板の性能を測定し、その結果を合わせて表1に示した。」
(1-b)上記(1-a)の記載からみて、刊行物1には、
「ユリア樹脂を用いて接着された合板の全面に、アジピン酸ジヒドラジド3重量%を含む処理液を塗布後乾燥する方法。」の発明(以下、「引用発明A」という。)
及び、
「ユリア樹脂を用いて接着された合板の全面に、アジピン酸ジヒドラジド3重量%を含む処理液を塗布後乾燥して得た、加工合板。」の発明(以下、「引用発明B」という。)が記載されていると認められる。
(1-c)段落【0017】【0019】の記載を参酌すると、表1には、ユリア樹脂を用いて接着された合板にアジピン酸ジヒドラジド3重量%を含む処理液を塗布後乾燥して得た合板(実施例1、比較例2、3)は、同じくユリア樹脂を用いて接着された合板に処理を行わない未加工合板(比較例1)より、加工上り及び水をスプレーした後のいずれも、総じてホルムアルデヒド放散量が少なくホルムアルデヒド吸収率が多くなることが記載され、アジピン酸ジヒドラジドはヒドラジド類の1種であるから、刊行物1には以下の事項が記載されているといえる。
「ユリア樹脂を用いて接着された合板をヒドラジド類で処理すると、処理しないものより、ホルムアルデヒド放散量が少なくなり、ホルムアルデヒド吸収率が多くなる。」
(2)刊行物2 (「実用木材加工全書3 木材の接着と接着剤」)
71頁「1.硬化剤との関係」の項の1-4行に、「尿素樹脂接着剤は,硬化剤として,一般に塩化アンモニウムの10〜20%水溶液を樹脂液に対して10%添加し(塩化アンモニウム粉末を使用する場合は1〜2%),よく攪拌混合して使用する.冷圧法あるいは熱圧法いずれでもよい.合板製造にはほとんど熱圧法が採用されている.」と、
77頁5-7行に、「要するに,尿素樹脂接着剤の硬化剤には,一般に塩化アンモンが使用されるが,接着時の温度,圧締条件(熱圧あるいは冷圧)などによって適当な促進剤あるいは抑制剤を併用するがよい。」と記載されている。
(3)刊行物3 (「改訂3版 木材工業ハンドブック」)
524頁3-8行に、「a.ユリア樹脂接着剤 水溶性で作業性がよく,安価のために最も多く使用されている.しかし,老化性があるために,その改良にフェノール,クレゾール,レゾルシン,チオユリア,メラミンなどと共縮合させ,また,酢酸ビニル樹脂を混合した種々の変性ユリア樹脂接着剤が作られている.樹脂の硬化を早めかつ完全にするために,硬化剤が用いられる.硬化剤としては塩化アンモニウムが最も普通であるが,リン酸アンモニウム,酢酸アンモニウムなどもある.」と記載されている。
(4)刊行物4(「接着ハンドブック」)
244頁「4・2・3 尿素樹脂の硬化」の項の9、10行に、「塩化アンモニウムは常温と高い温度において,接着剤中のホルムアルデヒドと反応して,次式のように塩酸とヘキサミンと水に変化し,酸性を与える.」と記載されている。
(5)刊行物5(特公昭59-15049号公報)
1頁1欄34行-2欄2行に、「このホルムアルデヒド樹脂には遊離ホルムアルデヒドを含有しているが、硬化剤として使用される塩化アンモニウムによつてヘキサメチレンテトラミンと塩酸とを生成し、pHを低下せしめ樹脂は縮合硬化し遊離ホルムアルデヒドの一部は消費され、」 と記載されている。

5.対比・判断
5-1.本件発明1について
5-1-1.本件発明1と引用発明Aとの対比
本件発明1と引用発明Aとを対比すると、
引用発明Aにおける「ユリア樹脂を用いて接着された合板」と、本件発明1における「アルデヒド類を放出しうる合成木質建材のうち、アンモニウム化合物を含有する合成木質建材」とは、いずれも「アルデヒド類を放出しうる合成木質建材」である点で共通し、
引用発明Aにおける「処理液」のアジピン酸ジヒドラジドはヒドラジド類の1種であるから、引用発明Aにおける「合板の全面に、アジピン酸ジヒドラジド3重量%を含む処理液を塗布後乾燥し」は、本件発明1における「合成木質建材に対し、ヒドラジド類、アゾール類及びアジン類から選ばれる少なくとも1種を処理する」に対応する。
したがって、本件発明1と引用発明Aとの一致点及び相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
「アルデヒド類を放出しうる合成木質建材に対し、ヒドラジド類、アゾール類及びアジン類から選ばれる少なくとも1種を処理する方法。」
<相違点>
アルデヒド類を放出しうる合成木質建材が、本件発明1では、「アンモニウム化合物を含有する」ものであるのに対して、引用発明Aでは、アンモニウム化合物を含有するかどうか不明であり、本件発明1は、「合成木質建材のアルデヒド類除去方法」であるのに対して、引用発明Aは、合成木質建材のアルデヒド類を除去するかどうか不明である点。

5-1-2.相違点の検討
i.本件明細書に「ホルムアルデヒドを吸着除去する手段として、従来、ヒドラジド類、・・・などの消臭剤を合成木質建材に処理することが知られている」と記載されているように、ヒドラジド類が、合成木質建材からのホルムアルデヒドの放出を抑制することは、周知(上記刊行物1の(1-c)、下記周知例1、2参照。)であるから、ヒドラジド類で処理する引用発明Aは、合成木質建材からのホルムアルデヒドの放出を抑制しているといえ、引用発明Aにおける「加工合板を得る方法」は、本件発明1における「合成木質建材のアルデヒド類除去方法」と実質的に対応している。
ii.合成木質建材に使用されるユリア樹脂接着剤には硬化剤としてアンモニウム化合物である塩化アンモニウムが使用されることは、周知技術(上記刊行物2〜4及び下記周知例3、4参照。)である。また、上記刊行物5には、硬化剤として使用される塩化アンモニウムによって、ホルムアルデヒド樹脂に含有されている遊離ホルムアルデヒドの一部は消費されること、が記載されており、この記載は、硬化剤として使用される塩化アンモニウムは、ホルムアルデヒド樹脂に含有されているホルムアルデヒドの放出を抑制することを示唆しているといえる。
iii.してみると、引用発明Aにおいて、ホルムアルデヒドの放出を抑制しようとして、処理対象である合成木質建材を、塩化アンモニウムを硬化剤としてユリア樹脂で接着したものにして、上記相違点に係る本件発明1の特定事項を想到することは当業者にとって格別困難性はない。

《周知例》
(1)周知例1:特開平10-36681号公報
周知例1には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】 合成樹脂100重量部及びヒドラジド化合物0.2〜20重量部を含有する消臭性樹脂組成物。」
「【請求項3】 ヒドラジド化合物が、ジヒドラジド化合物及びポリヒドラジド化合物から選ばれる少なくとも1種である請求項1・・・に記載の消臭性樹脂組成物。」
「【0001】・・・本発明は、長期間に亘って優れた消臭効果を維持することができ、例えばコーティング材等として有用な消臭性樹脂組成物に関する。」
「【0002】・・・最近の新築住宅においては、ホルムアルデヒド等の化学物質を含浸又は塗布した新建材が多用され、該化学物質が大量に気化分散して悪臭となり、生活環境を悪化させ、更に居住者の健康をも損なうことが大きな問題となっている。」
「【0011】本発明の消臭性樹脂組成物は、・・・新建材から分散気化するホルムアルデヒド等のアルデヒド類の消臭に顕著な効果を有し、しかも優れた消臭効果が長期間に亘って持続するという好ましい特性を有している。」
「【0013】本発明の消臭性樹脂組成物が、このような顕著な効果を示すのは、ヒドラジド化合物中のヒドラジド基が・・・ホルムアルデヒド等と容易に結合することによる。更に前記の結合が水との反応で加水分解され、・・・ホルムアルデヒド等が再放出されるという性質を有していることから、一旦吸着された・・・ホルムアルデヒド等の悪臭成分が空気中の微量な水分によって、人に嗅覚に感じない程度の濃度で徐々に再放出され、再びフリーになったヒドラジド基が新たな悪臭成分等を結合吸着することも寄与しているものと考えられる。」
(2)周知例2:「木材工業」Vol.46,No.8,1991
(特許権者提出の乙第3号証)
周知例2には、以下の事項が記載されている。
「ポリヒドラジドによるユリア樹脂接着剤の新しい硬化」(355頁1-2行)
「2.3 放散ホルムアルデヒド
合板によって硬化樹脂から放散するF量をデシケーター法によって調べた結果が第8図である。
-中略-
PMAHによる硬化法は,少ない添加量でも塩化アンモニウムによる硬化法より放散F量が少なく、放散Fの低下に効果がある。また,添加量を増加すると,放散F量は著しく減少する。このことから,ポリヒドラジド化合物は,硬化剤ばかりではなくホルムアルデヒド捕捉剤としても働くものと思われる。」(358頁右欄13行-下から3行)なお、上記記載中、「PMAH」、「F」は、それぞれ、「ポリメタクリル酸ヒドラジド」、「ホルムアルデヒド」を示している。
(3)周知例3:特開平11-172219号公報
(異議申立人中川信雄提出の甲第6号証)
周知例3には、以下の事項が記載されている。
「【0002】【従来の技術】従来、木質繊維板等を接着成型する場合、尿素樹脂、メラミン樹脂、尿素-メラミン共縮合樹脂等のアミノ樹脂、またはフェノール樹脂を主成分とし、硬化促進剤としてアンモニウム塩を加え接着剤としたバインダーを木質繊維に塗布して使用するのが一般的である。」
(4)周知例4:「接着の技術」Vol.16 No.4(1997)
通巻45号 p.20-27
(異議申立人花田扶弘美提出の甲第6号証)
周知例4の「3.1.1ユリア樹脂木材用接着剤」の項には、以下の事項が記載されている。
「ユリア樹脂接着剤の使用条件を・・・示す。・・・硬化剤としては,塩化アンモニウム,硫酸アンモニウム・・・などがあるが,通常,塩化アンモニウムが使用される。」(21頁右欄下から10-2行)

5-1-3.本件発明1の効果について
引用発明Aは、アルデヒド類を放出しうる合成木質建材に対し、ホルムアルデヒドの放出を抑制するヒドラジド類を処理する方法であるから、引用発明Aにおいて、ヒドラジド類の処理対象である合成木質建材を、同じくホルムアルデヒドの放出を抑制する塩化アンモニウムをユリア樹脂の硬化剤に使用して接着したものとすれば、さらにホルムアルデヒドの放出を抑制することができるであろうことは、当業者であれば容易に予測し得ることである。
そして、本件明細書の【表1】に示される実施例1及び比較例1〜3のホルムアルデヒド放出量の試験結果及び該試験結果から算出した除去率は、予測した効果を確認するためのものにすぎない。

5-1-4.まとめ
したがって、本件発明1は、上記刊行物1に記載された発明及び上記刊行物5に記載された事項並びに上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5-2.本件発明2について
5-2-1.本件発明2と引用発明Aとの対比
上記「5-1-1.」に記載の理由と同様の理由により、本件発明2と引用発明Aとの一致点及び相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
「アルデヒド類を放出しうる合成木質建材に対し、ヒドラジド類から選ばれる少なくとも1種を処理する方法。」
<相違点>
アルデヒド類を放出しうる合成木質建材が、本件発明2では、「アンモニウム化合物を含有する」ものであるのに対して、引用発明Aでは、アンモニウム化合物を含有するかどうか不明であり、本件発明2は、「合成木質建材のアルデヒド類除去方法」であるのに対して、引用発明Aは、合成木質建材のアルデヒド類を除去するかどうか不明である点。

5-2-2.相違点の検討
本件発明2と引用発明Aとの相違点は、本件発明1と引用発明Aとの相違点と同じであるから、相違点の検討は上記「5-1-2.」に記載したのと同様である。

5-2-3.本件発明2の効果について
本件発明2は、本件発明1と同じ効果を奏するから、本件発明2の効果については上記「5-1-3.」に記載したのと同様である。

5-2-4.まとめ
したがって、本件発明2は、上記刊行物1に記載された発明及び上記刊行物5に記載された事項並びに上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5-3.本件発明3について
5-3-1.本件発明3と引用発明Bとの対比
本件発明3と引用発明Bとを対比すると、
引用発明Bにおける「ユリア樹脂を用いて接着された合板」と、本件発明3における「ホルムアルデヒド及びアンモニウム化合物を含有する接着剤を用いて製造された合成木質建材」とは、いずれも「ホルムアルデヒドを含有する接着剤を用いて製造された合成木質建材」である点で共通し、
引用発明Bにおける「処理液」のアジピン酸ジヒドラジドはヒドラジド類の1種であるから、引用発明Bにおける「合板の全面に、アジピン酸ジヒドラジド3重量%を含む処理液を塗布後乾燥して得た」は、本件発明3における「合成木質建材に、ヒドラジド類、アゾール類及びアジン類から選ばれる少なくとも1種が塗布又は含浸されている」に対応する。
したがって、本件発明3と引用発明Bとの一致点及び相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
「ホルムアルデヒドを含有する接着剤を用いて製造された合成木質建材に、ヒドラジド類、アゾール類及びアジン類から選ばれる少なくとも1種が塗布又は含浸されている合成木質建材。」
<相違点>
ホルムアルデヒドを含有する接着剤が、本件発明3では、「アンモニウム化合物を含有する」のに対して、引用発明Bでは、アンモニウム化合物を含有するかどうか不明であり、本件発明3は、「アルデヒド類低放出化合成木質建材」であるのに対して、引用発明Bは、アルデヒド類の放出が抑制されているかどうか不明である点。

5-3-2.相違点の検討
i.本件明細書に「ホルムアルデヒドを吸着除去する手段として、従来、ヒドラジド類、・・・などの消臭剤を合成木質建材に処理することが知られている」と記載されているように、ヒドラジド類が、合成木質建材からのホルムアルデヒドの放出を抑制することは、周知(上記刊行物1の(1-c)、下記周知例1、2参照。)であるから、ヒドラジド類が塗布されている引用発明Bにおける「加工合板」は、アルデヒド類の放出が抑制されているといえ、本件発明3における「アルデヒド類低放出化合成木質建材」と実質的に対応している。
ii.合成木質建材に使用されるユリア樹脂接着剤には硬化剤としてアンモニウム化合物である塩化アンモニウムが使用されることは、周知技術(上記刊行物2〜4及び下記周知例3、4参照。)である。また、上記刊行物5には、硬化剤として使用される塩化アンモニウムによって、ホルムアルデヒド樹脂に含有されている遊離ホルムアルデヒドの一部は消費されること、が記載されており、この記載は、硬化剤として使用される塩化アンモニウムは、ホルムアルデヒド樹脂に含有されているホルムアルデヒドの放出を抑制することを示唆しているといえる。
iii.してみると、引用発明Bにおいて、ホルムアルデヒドの放出を抑制しようとして、処理対象である合成木質建材の接着剤であるユリア樹脂に、塩化アンモニウムを硬化剤として含有させて、上記相違点に係る本件発明3の特定事項を想到することは当業者にとって格別困難性はない。

5-3-3.本件発明3の効果について
引用発明Bは、ホルムアルデヒドを含有する接着剤を用いて製造された合成木質建材に、ホルムアルデヒドの放出を抑制するヒドラジド類が塗布されている合成木質建材であるから、引用発明Bにおいて、同じくホルムアルデヒドの放出を抑制する塩化アンモニウムを、ヒドラジド類を塗布する対象である合成木質建材の接着剤に硬化剤として含有させれば、さらにホルムアルデヒドの放出を抑制することができるであろうことは、当業者であれば容易に予測し得ることである。
そして、本件明細書の【表1】に示される実施例1及び比較例1〜3のホルムアルデヒド放出量の試験結果及び該試験結果から算出した除去率は、予測した効果を確認するためのものにすぎない。

5-3-4.まとめ
したがって、本件発明3は、上記刊行物1に記載された発明及び上記刊行物5に記載された事項並びに上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本件発明1ないし3は、上記刊行物1に記載された発明及び上記刊行物5に記載された事項並びに上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1ないし3についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2005-09-28 
出願番号 特願2000-336403(P2000-336403)
審決分類 P 1 651・ 121- Z (B27K)
最終処分 取消  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 白樫 泰子
渡部 葉子
登録日 2003-02-21 
登録番号 特許第3400985号(P3400985)
権利者 大塚化学ホールディングス株式会社
発明の名称 合成木質建材のアルデヒド類除去方法、及びアルデヒド類低放出化合成木質建材  
代理人 山本 拓也  
代理人 藤本 昇  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ