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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G03G
管理番号 1127382
異議申立番号 異議2003-72940  
総通号数 73 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2001-06-08 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-03 
確定日 2005-11-16 
異議申立件数
事件の表示 特許第3412612号「非磁性一成分トナー」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3412612号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3412612号の請求項1ないし3に係る発明は、平成4年2月14日に出願した特願平4-28492号出願の一部を新たな特許出願として出願され、平成15年3月28日にその発明について特許の設定登録がなされた。
本件特許公報が、平成15年6月3日に発行されたところ、本件の請求項1ないし3に係る特許に対して、佐藤正より特許異議の申立があり、取消理由通知がなされ、その指定期間内の平成17年6月21日付で意見書が提出された。

第2 本件発明
本件の請求項1ないし3に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された以下のとおりのものである。(以下、「本件発明1」ないし「本件発明3」という。)。
「【請求項1】 薄層化させたトナーを有機光導電体からなる潜像担持体に接触せしめて供給して潜像を反転現像法により現像する画像形成方法において使用する非磁性一成分トナーであって、該トナーは少なくとも着色剤、負帯電性の帯電制御剤及びポリエステル樹脂を含有し、該ポリエステル樹脂は、多価アルコ-ルと芳香族の多塩基酸とを重合することより得られたものであり、そのガラス転移温度(Tg)をx軸の変数とし、軟化点(Sp)をy軸の変数としてxy座標にプロットした時、下記の式(1)〜(4)で表される直線で囲まれる範囲内の物性を有するものであって、さらに該トナーの粒子の表面に少なくとも1種の微粒子添加剤を含有して成ることを特徴とする非磁性一成分トナー。ただし、該ポリエステル樹脂がポリイソシアネート類によりウレタン結合を形成することにより鎖伸長されたポリエステル樹脂である場合を除く。
式(1) Sp=4Tg-110
式(2) Sp=4Tg-170
式(3) Sp=90
式(4) Sp=120
【請求項2】 薄層化させたトナーを有機光導電体からなる潜像担持体に接触せしめて供給して潜像を反転現像法により現像する画像形成方法において使用する非磁性一成分トナーであって、該トナーは少なくとも着色剤、負帯電性の帯電制御剤及びポリエステル樹脂を含有し、該ポリエステル樹脂は、多価アルコ-ルと芳香族の多塩基酸のみを重合することより得られたものであり、そのガラス転移温度(Tg)をx軸の変数とし、軟化点(Sp)をy軸の変数としてxy座標にプロットした時、下記の式(1)〜(4)で表される直線で囲まれる範囲内の物性を有するものであって、さらに該トナーの粒子の表面に少なくとも1種の微粒子添加剤を含有して成ることを特徴とする非磁性一成分トナー。
式(1) Sp=4Tg-110
式(2) Sp=4Tg-170
式(3) Sp=90
式(4) Sp=120
【請求項3】 芳香族の多塩基酸が、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸及びこれらの無水物並びに低級アルキルエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の非磁性一成分トナー。」

第3 取消理由の概要
平成17年4月13日付けで通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
理 由
本件の請求項1ないし3に係る発明は、下記のとおり、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物1ないし3に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件の請求項1ないし請求項3に係る特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものである。

刊行物1:特開平1-284863号公報(異議申立人が提出した甲第1号証)
刊行物2:特開平2-166462号公報(同じく甲第2号証)
刊行物3:ソフト技研出版部編「最近の電子写真プロセス技術と装置の最適設計・応用開発」平成元年6月30日発行、第540〜545頁、第630〜633頁(同じく甲第3号証)

第4 各刊行物の記載事項
(1) 刊行物1には、次の事項が記載されている。
(1a)「少なくとも熱可塑性樹脂、ワックスおよび着色剤からなるトナーにおいて、・・・・からなることを特徴とするトナー。」(特許請求の範囲)
(1b)「本発明に適する熱可塑性樹脂の軟化点は、本発明の効果を損なわない限りは現像スピード、システムの機構上、低い軟化点を有する熱可塑性樹脂がよく、たとえば・・・・ビスフェノール型ジオール、・・・・から選ばれた少なくとも1つのジオール成分と、・・・・テレフタル酸、・・・・から選ばれた少なくとも一種のジカルボン酸と、トリメリット酸から合成されるポリエステル樹脂などがあげられる。」(第2頁左下欄第7〜20行)
(1c)「本発明のトナーは例えば適当なキャリアと配合して2成分系現像材とされ得る。・・・・また、本発明のトナー自体を絶縁性磁性トナーとして製造し、これを1成分現像剤として用いて磁気ブラシ現像方式を実施してもよい。さらに、インプレション現像方式やタッチダウン現像方式を実施する場合のトナーとして使用してもよい。」(第4頁右下欄第15行〜第5頁左上欄第7行)
(1d)「以下、実施例を挙げて具体的に説明する。
トナー1〜5の調製
・熱可塑性スチレンアクリル系樹脂 100重量部
・・・・
・オフセット防止用添加剤 4重量部
低分子量ポリプロピレン(ポリプロピレンの熱分解生成物)・・・・
・カーボンブラック 8重量部
MA#100(:三菱加成工業社製)
・ボントロンN-01 4重量部
(オリエント化学工業社製:ニグロシン系染料)
以上を10lヘンシェルミキサーに入れ、2000rpmで2分間混合したあとPCM30(l/d:32.5)で連続押出混練をした。
次に、冷却したあと2mmメッシュのフェザーミルで粗粉砕したあと、ジェット粉砕機で微粉砕し、気流式分級機で粗粉・微粉のカットをして、平均径11.2μmの粒子径を有するトナーを得た。
このトナーの表面に疎水性シリカ(R-974、日本アエロジル株式会社製)を0.2%処理する。
このようにして得られたトナーをトナー1とした。」(第5頁左上欄第8行〜右上欄第11行)
(1e)「トナー6の調製
・熱可塑性ポリエステル樹脂 100重量部
・・・・
軟化点:109℃ Tg:64℃
・オフセット防止用添加剤 5重量部
酸化型低分子量ポリプロピレン
(ポリプロピレンの熱分解生成物)・・・・
・カーボンブラック 7重量部
(#44:三菱化成工業(株))
・ボントロンS-34 3重量部
(オリエント化学工業社製:Cr含金油溶性染料)
以上をトナー1の調製と同様な方法で平均径10.4μmのトナーを得た。得られたトナーをトナー6とした。
なお、上記熱可塑性樹脂はビスフェノールA・エチレンオキサイド付加物550g、ビスフェノールA・プロピレンオキサイド付加物550g、テレフタル酸410g、無水トリメリット酸45g、キシレン50gを3lの4つ口フラスコに入れ窒素気流中240℃で5時間反応させ、次に、270℃に昇温して、8時間反応させて得られた。このとき、副生成した水は、留去した。」(第5頁右上欄第17行〜左下欄第21行)
(1f)「トナーの評価
トナー1〜9、およびキャリアIまたはIIを組み合わせて現像剤を調製し、以下に記載した評価を行った。結果は表1に示した。」(第6頁左下欄第6〜9行)
(1g)「(3)耐熱テスト
ガラスサンプル瓶(50cc)の中にトナー5gを入れ50℃±0.5℃のオーブン中に24時間放置した後・・・・逆に倒立させ、トナーが落下するかどうかを調べた。 ランクA 0〜5秒の間に落下し、凝集なし。B ・・・・」(第6頁右下欄第3〜9行)
(1h)「(5)画像テスト
キャリアIIとトナー6を7wt%のトナー濃度になるように1lのポリ瓶に入れ、ボールミル架台にのせ10時間、120rpmで現像剤を調整する。この現像剤をミノルタカメラ社製EP870に入れ10K枚の耐刷テストをし、カブリの有無を、評価し、以下のようにランク付けした。・・・・
(6)感光体上へのトナーのフィルミングについて
・・・・フィルミングの程度をミノルタカメラ社製EP870(複写速度35.0cm/s)を使用し、10K枚の耐刷テストをした後の感光体の表面を評価し、下記の様にランク付けした。 ◎:全くフィルミングなし。○:・・・・」(第7頁右上欄第19行〜右下欄第4行)
(1i)トナー6について、「耐熱性テスト」の評価が「A」、「感光体上のフィルミング」の評価が「◎」であること、(第8頁、表1)
(1j)「発明の効果
本発明のトナーは帯電の立ち上がりおよびその安定性に優れ、カブリおよび濃度に優れた良好な画像を提供でき、特に高速現像システムにおいて、転写紙への定着性、定着ローラーからの分離性に優れ、オフセット等のない良好な画像を提供できる。」(第8頁左下欄第1〜7行)

(2) 刊行物2には、次の事項が記載されている。
(2a)「(1)少なくともトナー搬送部材、トナー層厚規制部材、およびトナー搬送部材に接触しつつ自在に回転可能に支持されており、トナーを前記搬送部材に供給するトナー供給部材を有する静電記録装置を用いる画像形成方法において、少なくとも、結着樹脂と着色剤および帯電制御剤からなる磁性を有さないトナーであって、前記結着樹脂として少なくともポリエステル樹脂とスチレン-アクリル酸メチルエステル共重合体を含有し、前記帯電制御剤として少なくともサリチル酸の金属塩および/またはサリチル酸誘導体の金属塩を含有するトナーからなる現像剤を用いることを特徴とする一成分現像方法。
(2)トナー粒子に、高疎水化処理した無機酸化物粉末を添加混合した現像剤を用いることを特徴とする上記請求項(1)記載の一成分現像方法。」(特許請求の範囲)
(2b)「本発明の現像方法について説明すると、図面に示すように、・・・・トナーはトナー供給部材4に供給される。そして、トナー供給部材4に取り込まれたトナーは・・・・トナー搬送部材2に運ばれ、摩擦され、静電的あるいは物理的に吸着し、トナー搬送部材2が矢印方向に強く回転し、トナー層厚規制部材3により均一なトナー薄層が形成されると共に摩擦帯電する。その後トナー搬送部材2と接触もしくは近接している静電潜像担持体1の表面に運ばれ、潜像が現像される。」(第4頁右下欄第17行〜第5頁左上欄第11行)
(2c)「実施例1
トナーとして
ポリオキシエチレン化ビスフェノールAとテレフタル酸より成る重量平均分子量10000のポリエステル樹脂 50部
スチレンモノマーとアクリル酸メチルエステルモノマーに過酸化ベンゾイルとジビニルベンゼンを加え懸濁重合法により重量平均分子量35万、Tg55℃のスチレン-アクリル酸メチルエステル共重合体(St/MA)
50部
カーボンブラック 10部
3,5-ジターシャリーブチルサリチル酸亜鉛 4部
を熱ロールミルで溶融混練し、・・・・微粉砕した。得られた微粒子を分級し5〜20μmの粒径にした。更に本微粉末100部にコロイダルシリカ0.5部を混合して現像剤とした。
この現像剤を用いてタッチダウン現像方式を採用した電子写真複写機(リコー製反転現像機マイリコピーM-5)で画像出しを行ったところ、現像スリーブ上の現像剤の帯電量は-11.0μc/gで、カブリのない鮮明な画像が得られた。更に、50000枚連続複写を行っても異常はなく鮮明な画像が維持された。なお、現像剤の現像スリーブ上の帯電量は-10.2μc/gであった。」(第5頁左上欄第15行〜左上欄第2行)
(2d)「図面は本発明の一成分現像方法を実施するのに適する一装置の説明図である。
1…静電潜像坦持体、2…トナー搬送部材、3…トナー層厚規制部材、4…トナー補給部材、5…攪拌羽根、6…トナー、7…トナータンク」(第6頁左上欄第17行〜右上欄第1行)
(2e)

(3) 刊行物3には、次の事項が記載されている。
(3a)表7-16に、一成分現像法が分類され、非磁性現像法として「Impression法」、「Touchdown法」があること(第541頁)(3b)「2)インプレッション現像法
図7-152に示すように,トナーの搬送ドラム上にホッパーからトナーを供給し,テフロン製のブレードで摩擦帯電させると同時に,均一なトナー層をドラム上に作る。・・・・潜像を持った感光体と接触させることにより,現像が行われる。」
2)タッチダウン法
・・・・非磁性トナーを用いた現像方式はXeroxとIBMによって研究された。原理的には,弾性体上に静電気的,機械的あるいは粘着的に摩擦帯電されたトナーを保持させ,これを感光体に圧接し現像を行うものである。」(第542頁第15〜27行)
(3c)「4)最近の非磁性1成分現像法
・・・・図7-159は、リコー社M-5に用いられている非磁性現像器の例である。(フィード現象) これはトナー補給ローラー(2)によりトナーを現像ローラーにこすりつけて搬送する。」(544頁4〜14行)
(3d) 図7-159には、感光体としてOPC、すなわち有機感光体を使用する現像器の図が記載されている。

第5 対比と判断
1 本件発明1について
(1) 刊行物1記載の発明
刊行物1には、潜像担持体に供給され潜像を現像し画像形成するトナーが記載され、トナー6として、カーボンブラック、帯電制御剤としてCr含金油溶性染料であるボントロンS-34、及びポリエステル樹脂を含有し、該ポリエステル樹脂は、原料モノマー成分として、「ビスフェノールA・エチレンオキサイド付加物」、「ビスフェノールA・プロピレンオキサイド付加物」、「テレフタル酸」及び「無水トリメリット酸」からなり、そのガラス転移温度(Tg)が64℃、軟化点(Sp)が109℃であるトナー6(摘記事項(1e)参照)が記載されている。以下、「刊行物1記載のトナー」という。

(2) 対比
そこで、本件発明1と、刊行物1記載のトナーに係る発明とを対比する。
「刊行物1記載のトナー」を構成するポリエステル樹脂は、「ビスフェノールA・エチレンオキサイド付加物」、「ビスフェノールA・プロピレンオキサイド付加物」、「テレフタル酸」及び「無水トリメリット酸」のみから重合されるものであるから、本件発明1と同様に、「多価アルコールと芳香族の多塩基酸を重合することにより得られたもの」であって、ポリイソシアネート類によりウレタン結合を形成することにより鎖伸長されたポリエステル樹脂には該当しない。
また、「刊行物1記載のトナー」を構成するポリエステル樹脂のTg64℃とSp109℃は、xy座標(但し、Tgをx軸の変数、Spをy軸の変数とする)にプロットした時、式(1)Sp=4Tg-110、式(2)Sp=4Tg-170、式(3)Sp=90、式(4)Sp=120で表される直線で囲まれる範囲内に入るものである。
さらに、「刊行物1記載のトナー」には、磁性材料が含まれておらず、帯電制御剤として用いている「Cr含金油溶性染料ボントロンS-34」は、負帯電性の帯電制御剤であることは、当業者に周知である。
よって、両者は、
「トナーを潜像担持体に供給して潜像を現像する画像形成方法において使用するトナーであって、該トナーは少なくとも着色剤、負帯電性の帯電制御剤及びポリエステル樹脂を含有し、該ポリエステル樹脂は、多価アルコールと芳香族の多塩基酸を重合することにより得られたものであり、そのガラス転移温度(Tg)をx軸の変数とし、軟化点(Sp)をy軸の変数としてxy座標にプロットした時、下記の式(1)〜(4)で表される直線で囲まれる範囲内の物性を有する非磁性トナー。
式(1) Sp=4Tg-110
式(2) Sp=4Tg-170
式(3) Sp=90
式(4) Sp=120 」
である点で一致するが、次の点で相違している。
相違点a:
本件発明1では、トナーが、「薄層化させたトナーを有機光導電体からなる潜像担持体に接触せしめて供給して潜像を反転現像法により現像する画像形成方法において使用する一成分トナー」であることを規定するのに対して、刊行物1記載の発明では、そのような特定の画像形成方法において使用する一成分トナーである点については明記されていない点。
相違点b:
本件発明1では、トナー粒子の表面に少なくとも1種の微粒子添加剤を含有することを規定するのに対して、刊行物1記載のトナーは、微粒子添加物を含有することが明らかでない点。

(3) 相違点についての判断
まず、相違点aについて検討する。
刊行物1の実施例には、トナーをキャリアと共に用いる2成分現像剤として使用することしか具体的に記載されていないが、刊行物1には、同じ組成のトナーを、キャリアと共に用いる2成分現像剤としてばかりでなく、インプレッション現像方式、タッチダウン現像方式を実施する場合のトナーとしても使用できることが記載されている(摘記事項(1c))。
ここで、インプレッション現像方式及びタッチダウン現像方式は、刊行物3によれば、非磁性一成分現像剤の現像方法であり、弾性体上に静電気的、機械的あるいは粘着的に摩擦帯電されたトナーを保持させ、これを感光体に圧接し現像を行うものである(摘記事項(3a)、(3b)参照)。
してみれば、Sp及びTgが、本件発明1で規定する関係式(1)ないし(4)で表わされる直線により囲繞される範囲内にあることが明らかな刊行物1記載のトナーを、非磁性一成分現像剤に適用することは、当業者であれば、刊行物1の記載に基づいて容易に想到し得たことである。
そして、感光体として有機感光体を使用することは、当業界の趨勢であり、有機感光体を反転現像方式に使用することは、刊行物2、3にも記載されているとおり本件特許の出願前より周知である(必要ならば、特開昭60-136747号、特開昭61-238060号、特開昭63-27852号、特開平3-107860号各公報等参照のこと)。さらに、現像極性として、正規現像方式と反転現像方式の2通りしかないこと、特にレーザープリンタータイプの画像形成装置においては、反転現像方式が主流であることから、反転現像方式を選択することも、当業者にとってごく容易に想到し得たことである。

次に、相違点bについて検討する。
非磁性一成分現像剤において、外添剤、すなわち微粒子添加剤を添加することは、特許権者も認めるとおり、現像剤粒子の帯電性及び流動性の調節上、必須のことであるから、刊行物1に非磁性一成分現像剤としての使用が開示されている以上、刊行物1記載のトナーを、非磁性一成分現像剤として使用する場合には、当然に微粒子添加剤を添加することが予定されているものである。

刊行物1には、「刊行物1記載のトナー」は、「耐熱性テスト」で凝集しない(ランクA)こと、10,000枚の耐刷テスト後感光体上のフィルミングが全くないこと(◎)が記載されているから(摘記事項(1g)〜(1i)参照)、「刊行物1記載のトナー」を一成分トナーとし、刊行物2に記載の画像形成方法に使用した場合においても、凝集や融着等が防止できることは当業者が予測し得ることと認められる。

特許権者は、意見書において、刊行物1に記載された発明の評価に関して、そこで行われている「耐熱テスト」は、静止状態にあるカートリッジ内の凝集を評価するものであり、本件発明の評価のような、連続使用時などにおいて発生する摩擦熱による凝集・融着の評価とは異なる旨主張するが、熱による凝集・融着という点では、原因は同じであるから、静的な状態での熱凝集・融着による評価結果が、流動状態における熱凝集・融着に対する効果の予測に全く参考にならないというものではない。

したがって、本件発明1は、刊行物1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 本件発明2について
本件発明1では、「該ポリエステル樹脂は、多価アルコールと芳香族の多塩基酸を重合することにより得られたものであり、・・・ただし、該ポリエステル樹脂がポリイソシアネート類によりウレタン結合を形成することにより鎖伸長されたポリエステル樹脂である場合を除く。」としているのに対して、本件発明2は、「該ポリエステル樹脂は、多価アルコ-ルと芳香族の多塩基酸のみを重合することにより得られたものであり、・・・」とするものである点で相違するものである。
よって、本件発明2も、本件発明1と同じ理由によリ、刊行物1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 本件発明3について
本件発明3では、「芳香族の多塩基酸」が、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸及びこれらの無水物並びに低級アルキルエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であるというものであるが、「刊行物1記載のトナー」は、ポリエステル樹脂を構成する芳香族の多塩基酸として、テレフタル酸を含有するものであるから(摘記事項(1e)参照)、本件発明3についても、本件発明1と同じ理由により、刊行物1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本件発明1ないし本件発明3は、刊行物1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条の規定により特許を受けることができないものであるから、本件の請求項1ないし3についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認められる。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第1項及び第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2005-09-28 
出願番号 特願2000-320315(P2000-320315)
審決分類 P 1 651・ 121- Z (G03G)
最終処分 取消  
前審関与審査官 菅野 芳男磯貝 香苗  
特許庁審判長 江藤 保子
特許庁審判官 秋月 美紀子
阿久津 弘
登録日 2003-03-28 
登録番号 特許第3412612号(P3412612)
権利者 三菱化学株式会社
発明の名称 非磁性一成分トナー  
代理人 長谷川 曉司  

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