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審決分類 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する F04B
管理番号 1127873
審判番号 訂正2005-39051  
総通号数 74 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1986-08-02 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2005-03-24 
確定日 2005-05-10 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第1520505号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第1520505号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 第1.請求の要旨
本件審判の請求の要旨は、特許第1520505号発明(昭和60年1月25日出願、平成1年9月29日設定登録)の願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)を、本件審判請求書に添付した訂正明細書(以下、「訂正明細書」という。)の記載のとおり、すなわち、以下の1.ないし3.のとおり訂正することを求めるものである。

1.訂正事項1
特許明細書特許請求の範囲の「1. クランク室と、該クランク室に配置された斜板と、シャフト軸の回転によって前記斜板が回転すると往復運動を行う複数のピストンと、該ピストンを前記斜板の円周に沿って摺動可能に前記斜板に連結するための連結機構と、前記斜板の傾斜角が予め定められた範囲で変化できるように前記斜板を前記シャフト軸に支持するためのヒンジ機構と、前記クランク室内の圧力を調整するための調整手段とを有し、前記斜板の両面に球面を有するスライディングシューをその球面を外側にして該斜板の円周に沿って摺動可能な状態に、しかも該一対のスライデイングシューが実質的に球体を形成するように前記斜板両面に当接しており、前記ピストンの一端が前記一対のスライデイングシューを挟持するように配置されることによって前記連結機構が構成され、前記クランク室の圧力を調整することによって前記斜板の角度を変化させ、これによって圧縮容量を変化させるようにしたことを特徴とする容量可変型斜板式圧縮機。」なる記載を、

「1 クランク室と、該クランク室に配置された斜板と、該斜板が軸方向に滑動可能に、且つ、軸方向に対して傾斜可能に設けられ、当該斜板を回転させるシャフト軸と、該シャフト軸の回転によつて前記斜板が回転すると往復運動を行う複数のピストンと、該ピストンを前記斜板の円周に沿つて摺動可能に前記斜板に連結するための連結機構と、前記複数のピストンによるガス圧縮の反作用の合力によつて斜板の傾斜角を大にする方向にモーメント(M1)を発生させる半径方向位置にヒンジ部を有し、該ヒンジ部を介して、前記斜板の傾斜角が予め定められた範囲で変化できるように前記斜板を前記シャフト軸に支持し、前記シャフト軸の回転力を斜板に伝達して当該斜板を回転させるヒンジ機構と、前記シャフト軸上に設けられ、前記斜板に作用して前記ヒンジ部廻りに前記斜板の傾斜角を小にする方向にモーメント(M2)を発生させるスプリングと、前記クランク室内の圧力を調整するための調整手段とを有し、前記斜板の両面に球面を有するスライデイングシユーをその球面を外側にして該斜板の円周に沿つて摺動可能な状態に、しかも該一対のスライデイングシユーが実質的に球体を形成するように前記斜板両面に当接しており、前記ピストンの一端が前記一対のスライデイングシユーを挟持するように配置されることによつて前記連結機構が構成され、前記調整手段によつて前記クランク室の圧力を調整することによつて前記斜板の角度を変化させ、これによつて圧縮容量を変化させるようにしたことを特徴とする容量可変型斜板式圧縮機。」と訂正する。

2.訂正事項2
特許明細書第4頁第14行ないし第5頁第12行(特公昭64-1668号公報第2頁第3欄第11行ないし第29行)の「本発明は、クランク室と、このクランク室に配置された斜板と、シャフト軸の回転によって斜板が回転すると、往復運動を行う複数のピストンと、このピストンを斜板の円周に沿って摺動可能に斜板に連結するための連結機構と、斜板の傾斜角が予め定められた範囲で変化できるように斜板をシャフト軸に支持するためのヒンジ機構と、クランク室内の圧力を調整するための調整手段とを有し、上記の斜板の両面に、球面を有するスライディングシューをその救面を外側にして斜板の円周に沿って摺動可能な状態に、しかも一対のスライデイングシューが実質的に球体を形成するように斜板両面に当接しており、ピストンの一端がこの一対のスライデイングシューを挟持するように配置されることによって上記の連結機構が構成され、クランク室の圧力を調整することによって斜板の角度を変化させ、これによって圧縮容量を変化させるようにしたことを特徴とする容量可変型斜板式圧縮機である。」を、

「本発明は、クランク室と、このクランク室に配置された斜板と、該斜板が軸方向に滑動可能に、且つ、軸方向に対して傾斜可能に設けられ、当該斜板を回転させるシャフト軸と、このシャフト軸の回転によつて斜板が回転すると、往復運動を行う複数のピストンと、このピストンを斜板の円周に沿つて揺動可能に斜板に連結するための連結機構と、前記複数のピストンによるガス圧縮の反作用の合力によつて斜板の傾斜角を大にする方向にモーメント(M1)を発生させる半径方向位置にヒンジ部を有し、該ヒンジ部を介して、前記斜板の傾斜角が予め定められた範囲で変化できるように前記斜板をシャフト軸に支持し、前記シャフト軸の回転力を斜板に伝達して当該斜板を回転させるヒンジ機構と、前記シャフト軸上に設けられ、斜板に作用して前記ヒンジ部廻りに斜板の傾斜角を小にする方向にモーメント(M2)を発生させるスプリングと、クランク室内の圧力を調整するための調整手段とを有し、上記の斜板の両面に、球面を有するスライデイングシユーをその球面を外側にして斜板の円周に沿つて摺動可能な状態に、しかも一対のスライデイングシユーが実質的に球体を形成するように斜板両面に当接しており、ピストンの一端がこの一対のスライデイングシユーを挟持するように配置されることによつて上記の連結機構が構成され、調整手段によつてクランク室の圧力を調整することによつて斜板の角度を変化させ、これによつて圧縮容量を変化させるようにしたことを特徴とする容量可変型斜板式圧縮機である。」と訂正する。
なお、訂正請求書の「複数のピストンによるガス圧縮の反作用の合力によつて斜板の傾斜角を大にする方向にモーメント(M1)を発生させる半径方向位置にヒンジ部を有し、該ヒンジ部を介して、斜板の傾斜角が予め定められた範囲で変化できるように斜板をシャフト軸に支持し、シャフト軸の回転力を斜板に伝達して斜板を回転させるヒンジ機構と、シャフト軸上に設けられ、斜板に作用してヒンジ部廻りに・・・圧縮機である」は、訂正明細書の「前記複数のピストンによる・・・前記斜板の傾斜角・・・前記斜板をシャフト軸に支持し、前記シャフト軸・・・当該斜板を回転させる・・・前記シャフト軸上に・・・前記ヒンジ部廻りに・・・。」の形式的誤記である。

3.訂正事項3
特許明細書第16頁第5行ないし第12行の「以上説明したように、本発明によれば、ピストンが斜板円周に沿って実質的に摺動可能としたことによって、従来必要とされていた揺動板を必要としないばかりでなく、複雑な構造の回転(自転)阻止機構も必要とせず、さらにロータと斜板とをヒンジ機構によって連結しているため、予め定められた範囲で斜板の傾斜角を変化することができ、圧縮機の圧縮容量を簡単に制御することができる。」(特公昭64-1668号公報第4頁第8欄第22行ないし第30行においては、「・・・従来必要とされたいた揺動板・・・」と記載されている。)を、

「以上説明したように、本発明によれば、ピストンが斜板円周に沿って実質的に摺動可能としたことによって、従来必要とされていた揺動板を必要としないばかりでなく、複雑な構造の回転(自転)阻止機構も必要とせず、さらにロータと斜板とをヒンジ機構によって連結しているため、予め定められた範囲の斜板の傾斜角を変化することができ、圧縮機の圧縮容量を簡単に制御することができる。」と訂正する。

第2.当審の判断
訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び拡張・変更の存否について検討する。
1.訂正事項1について
訂正事項1は、
ア.斜板とシャフト軸の関係を、「該斜板が軸方向に滑動可能に、且つ、軸方向に対して傾斜可能に設けられ、当該斜板を回転させるシャフト軸」なる構成に限定して減縮するものであり、
イ.「前記斜板の傾斜角が予め定められた範囲で変化できるように前記斜板を前記シャフト軸に支持するためのヒンジ機構と、」を、「前記複数のピストンによるガス圧縮の反作用の合力によつて斜板の傾斜角を大にする方向にモーメント(M1)を発生させる半径方向位置にヒンジ部を有し、該ヒンジ部を介して、前記斜板の傾斜角が予め定められた範囲で変化できるように前記斜板を前記シャフト軸に支持し、前記シャフト軸の回転力を斜板に伝達して当該斜板を回転させるヒンジ機構と、前記シャフト軸上に設けられ、前記斜板に作用して前記ヒンジ部廻りに前記斜板の傾斜角を小にする方向にモーメント(M2)を発生させるスプリングと、」なる構成に限定し、斜板の傾斜角が予め定められた範囲で変化できるようにした構成に関し減縮するものであり、
ウ.「前記クランク室の圧力を調整する」を、「前記調整手段によつて前記クランク室の圧力を調整する」とするもので、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

上記ア.の点については、「シャフト軸4には、ロータ8と間隔を置いて、球面ブッシュ9がシャフト軸4上に滑動可能に配置されており、球面ブッシュ9の球面上には円板形状の斜板10が球面上を滑動可能に設けられている。」(特許明細書第6頁第18行ないし第7頁第2行、又は特公昭64-1668号公報第2頁第4欄第11行ないし第15行)、「シャフト軸の回転によって前記斜板が回転すると」(特許明細書特許請求の範囲)なる記載に基づくものである。

上記イ.の点については、「さらに斜板10の一端面上にはロータ8の耳部8aに向かって、耳状に形成された耳部10aが設けられており、長孔8bに対応して孔10bを有している。そしてこの長孔8b、孔10bを通してピン状部材11が長孔内を滑動可能に挿入されていわゆるヒンジ機構を構成している。またロータ8と球面ブッシュ9はシャフト軸4と平行に配置されたスプリング12によって連結されている。」(特許明細書第7頁第2行ないし第10行、又は特公昭64-1668号公報第2頁第4欄第15行ないし第23行)、「シャフト軸4に回転力を与えると、この回転力はロータ8、上述したヒンジ部を至て斜板10へ伝達され、斜板10が回転する。」(特許明細書第10頁第11行ないし第13行、又は特公昭64-1668号公報第3頁第5欄第40行ないし第42行)、「一方、斜板10上に等角度間隔で配置されたピストンによって圧縮行程中に、ガス圧縮の反作用が斜板10に加わっている。そして、この反作用の合力は上述したヒンジ部で受け止められることになる。各ピストンに作用する反力によるヒンジ部回りのモーメントは、第1図中の斜板10の下端に位置するピストン(図示せず)によるモーメントの方が大きいから、結局斜板10を第1図の平面内において、右方向へ回転させるモーメント(M1)がヒンジ部に作用することになる。ここで、スプリング12によってヒンジ部に生じるモーメントをM2(この場合は図中左方向へ作用する。)、また、クランク室1aと吸入室27間の圧力差によってヒンジ部に生じるモーメントをM3とすれば、上述の場合においては、吸入室27の圧力とクランク室1aの圧力がほぼ等しくなっているため、M1と反対向きのモーメントはM2のみである。したがって予めM1>M2となるようにスプリング12の弾性力を定めておけば、ヒンジ部を中心とする右回りモーメントによって斜板10の傾斜角が大きくなる。そして、斜板10の傾斜角はヒンジ部のピン11が長孔8bの上端に移動するまで傾斜し、斜板10の傾斜角はシャフト軸4に対して最大となる。(斜板とシャフト軸が直角の場合を基準とする。)」(特許明細書第12頁第4行ないし第13頁第8行、又は特公昭64-1668号公報第3頁第6欄第29行ないし第4頁第9行)なる記載に基づくものである。

上記ウ.の点については、「クランク室内の圧力を調整するための調整手段とを有し」(特許明細書特許請求の範囲)なる記載、特許権の設定の登録時の明細書第13頁第11行ないし第14頁第12行(特公昭64-1668号公報第4頁第7欄第12行ないし第33行)の記載に基づくものである。

そして、上記ア.ないしウ.の訂正事項は、訂正事項1全体としてみても何れも実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮、又は明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

2.訂正事項2について
訂正事項2は、訂正事項1に伴って発明の詳細な説明の記載との整合を図るための明りょうでない記載の釈明と認められ、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3.訂正事項3について
訂正事項3は、特許明細書第16頁第5行ないし第12行の記載と比較すれば、特許明細書を実質的に何ら訂正していない。(特公昭64-1668号公報第4頁第8欄第24行の「従来必要とされたいた揺動板」は単なる公報の誤記にすぎない。)

以上の通り、訂正事項1ないし3は、特許請求の範囲の減縮、又は明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。また、訂正明細書の特許請求の範囲に記載された発明について、特許出願の際独立して特許を受けることができない発明であるとする理由も発見しない。

第3.むすび
以上のとおりであるから、本件審判の請求は、平成6年改正前特許法第126条第1項ないし3項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
容量可変型斜板式圧縮機
(57)【特許請求の範囲】
1 クランク室と、該クランク室に配置された斜板と、該斜板が軸方向に滑動可能に、且つ、軸方向に対して傾斜可能に設けられ、当該斜板を回転させるシャフト軸と、該シャフト軸の回転によつて前記斜板が回転すると往復運動を行う複数のピストンと、該ピストンを前記斜板の円周に沿つて摺動可能に前記斜板に連結するための連結機構と、前記複数のピストンによるガス圧縮の反作用の合力によつて斜板の傾斜角を大にする方向にモーメント(M1)を発生させる半径方向位置にヒンジ部を有し、該ヒンジ部を介して、前記斜板の傾斜角が予め定められた範囲で変化できるように前記斜板を前記シャフト軸に支持し、前記シャフト軸の回転力を斜板に伝達して当該斜板を回転させるヒンジ機構と、前記シャフト軸上に設けられ、前記斜板に作用して前記ヒンジ部廻りに前記斜板の傾斜角を小にする方向にモーメント(M2)を発生させるスプリングと、前記クランク室内の圧力を調整するための調整手段とを有し、前記斜板の両面に球面を有するスライデイングシユーをその球面を外側にして該斜板の円周に沿つて摺動可能な状態に、しかも該一対のスライデイングシユーが実質的に球体を形成するように前記斜板両面に当接しており、前記ピストンの一端が前記一対のスライデイングシユーを挟持するように配置されることによつて前記連結機構が構成され、前記調整手段によつて前記クランク室の圧力を調整することによつて前記斜板の角度を変化させ、これによつて圧縮容量を変化させるようにしたことを特徴とする容量可変型斜板式圧縮機。
【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
本発明は冷凍機などに用いられる斜板式の圧縮機、特に、容量可変型の圧縮機に関する。
(従来の技術)
従来から斜板の回転運動をピストンの往復動に変換し、流体(冷媒)を圧縮する圧縮機が知られており、さらには、上記の斜板の傾斜角を変化させて、斜板に取り付けられているピストンのストローク量を変化させて、これによつて圧縮容量(圧縮比)を変化させる圧縮機がある。
上述の容量可変型の圧縮機では、一般に、シヤフト軸に取り付けられた角度可変のカムロータと、このカムロータに追従して揺動するとともに、カムロータの角度の変化に従つて角度が変化する揺動板とによつて実質的に上述の斜板が形成され、これらカムロータ及び揺動板がクランク室内に配置されて、さらに上記の揺動板とコネクテイングロツドを介して連結されたピストンが揺動板の傾斜角の変化に伴なつてストローク量を変化させて、これによつて圧縮容量を変化させていた。
(発明が解決しようとする問題点)
しかしながら、この圧縮機においては、カムロータに揺動板を支持するための構造及びカムロータの角度を変化させるための軸受構造が複雑であつて、さらには、揺動板の回転運動を阻止するための回転阻止機構を備えていなければならなかつた。
また、この回転阻止機構は、揺動板の傾斜角が変化しても、適切に機能しなければならないので、定容量圧縮機に用いられているかさ歯車を組み合わせた構造の回転阻止機構が使用できず、したがつて、容量可変型圧縮機の回転阻止機構としては、揺動板の外周から径方向に突出したいわゆるスライド棒と、クランク室ハウジングに、シヤフト軸の軸方向に設けられたガイド溝とを有し、上記のスライド棒がガイド溝中を滑動することによつて揺動板の回転運動を阻止する構造であつた。ところが、この回転阻止機構は、摺動部分における耐久性の問題、またシヤフト軸に対する揺動板の傾斜角が大きいときは、伝達される揺動角速度が一定とならず、振動が発生するという問題点もあつた。
本発明の目的は、構造が簡単でしかも信頼性の高い回転阻止機能を備えた容量可変型の圧縮機を提供することである。
(発明の構成)
本発明は、クランク室と、このクランク室に配置された斜板と、該斜板が軸方向に滑動可能に、且つ、軸方向に対して傾斜可能に設けられ、当該斜板を回転させるシャフト軸と、このシャフト軸の回転によつて斜板が回転すると、往復運動を行う複数のピストンと、このピストンを斜板の円周に沿つて摺動可能に斜板に連結するための連結機構と、前記複数のピストンによるガス圧縮の反作用の合力によつて斜板の傾斜角を大にする方向にモーメント(M1)を発生させる半径方向位置にヒンジ部を有し、該ヒンジ部を介して、前記斜板の傾斜角が予め定められた範囲で変化できるように前記斜板を前記シャフト軸に支持し、前記シャフト軸の回転力を斜板に伝達して当該斜板を回転させるヒンジ機構と、前記シャフト軸上に設けられ、斜板に作用して前記ヒンジ部廻りに斜板の傾斜角を小にする方向にモーメント(M2)を発生させるスプリングと、クランク室内の圧力を調整するための調整手段とを有し、上記の斜板の両面に、球面を有するスライデイングシユーをその球面を外側にして斜板の円周に沿つて摺動可能な状態に、しかも一対のスライデイングシユーが実質的に球体を形成するように斜板両面に当接しており、ピストンの一端がこの一対のスライデイングシユーを挟持するように配置されることによつて上記の連結機構が構成され、調整手段によつてクランク室の圧力を調整することによつて斜板の角度を変化させ、これによつて圧縮容量を変化させるようにしたことを特徴とする容量可変型斜板式圧縮機である。
(実施例)
以下、本発明について図面に示す実施例によつて説明する。
まず、第1図を参照して本発明に係る容量可変型圧縮機の構造について説明する。
シリンダーケーシング1の一端にはシリンダーボア2aが形成されたシリンダーブロック2が形成され、他端の開口部には、中央部にシヤフト軸4を挿入するための貫通孔3aが穿設され、この貫通孔3aには、シヤフト軸4を回転可能に支持するためのラジアルベアリング5が圧入されたフロントハウジング3が配置、固着されている。
フロントハウジング3の貫通孔3aの外端部にはシヤフト軸4を内包するように突出するシヤフト軸導出筒3bが設けられ、シヤフト軸4とシヤフト軸導出筒3bの内壁によつて形成される空間をシール室6としてメカニカルシール7が配置されている。またフロントハウジング3の内壁とシリンダーブロツク2の一端面間には、クランク室1aが形成され、クランク室1a内のシヤフト軸4の側端部には、ロータ8が嵌着されている。ロータ8の一端部は、シヤフト軸4の方向に折り曲げられ、耳状に形成された耳部8aを有している。そしてこの耳部8aには長孔8bが設けられている。
シヤフト軸4には、ロータ8と間隔を置いて、球面ブツシユ9がシヤフト軸4上に滑動可能に配置されており、球面ブツシユ9の球面上には円板形状の斜板10が球面上を滑動可能に設けられている。さらに斜板10の一端面上にはロータ8の耳部8aに向つて、耳状に形成された耳部10aが設けられており、長孔8bに対応して孔10bを有している。そしてこの長孔8b、孔10bを通してピン状部材11が長孔内を滑動可能に挿入されていわゆるヒンジ機構を構成している。またロータ8と球面ブツシユ9はシヤフト軸4と平行に配置されたスプリング12によつて連結されている。なお、フロントハウジング3の内壁面とロータ8間にはスラストレース13が配置され、このスラストレース13間にはスラストニードルベアリング14が挟持されている。
シヤフト軸4の他方端はシリンダーブロツク2において、ラジアルベアリング15に回転可能に支持され、さらにシヤフト軸4の端面に配置されたスラストニードルベアリング16及び板バネ17を介して、アジヤストスクリユー18で回転可能に支持されている。
斜板10の両面には斜板10を挟むようにして球面が形成されたスライデイングシユー19が球面を外側にして、当接している。このスライデイングシユー19は斜板10の円周に沿つて摺動可能になつている。また、図示のように一対のスライデイングシユー19は例えば半径Rの実質的に球体を形成するように配設されている。このスライデイングシユー19には図示のように、一端部が2叉に形成されたピストンロツド20がスライデイングシユー19を挟持するように配設されており、ピストンロツド20はスライデイングシユー19上を摺動可能な状態となつている。ピストンロツド20の他端部にはシリンダーボア2a内で滑動可能にピストン21が設けられている。なお、斜板10上には上述した構造のピストンが複数本設けられている。
シリンダーボア2aの一端面には流体を吸入するための吸入孔22と流体を吐出するための吐出孔23が穿設され、吸入孔22、吐出孔23への流体の流通を制御するように吸入弁及び吐出弁が連接されている弁板24をガスケツト25を介してシリンダーブロツク2へ接続し、隔壁26aを有するシリンダーヘツド26によつて吸入室27及び吐出室28が形成されるように、シリンダーヘツド26をガスケツト29を介して、弁板24の一端面に配置し、弁板24及びシリンダーヘツド26をシリンダーブロツク2上に固定し、シリンダーケーシング1を閉塞する。なお吸入室27には吸入ポート27aが連結され、吐出室28には吐出ロ28aが設けられている。
さらに、吸入室27とクランク室1aを連結するため、シリンダーケーシング1に形成されたシリンダブロツク2を通して、連通孔30が設けられている。この連通孔30は弁板24及びガスケツト25,29を貫通する導入孔30a、さらに後述するベローズを配置するための連通孔部30bによつて構成されている。
連通孔部30bのクランク室1a側には通過孔31a及び弁座31bが設けられたカツプリング31が嵌入され、その端部にはガス漏れを防ぐため、O-リング32が挿入されている。さらに、連通孔部30bには、上面両端に貫通孔33aの設けられた台座33が固定され、この台座33の上面には先端にニードル34aを有する一定の圧力でガスが封入されたべローズ34が配置され、ニードル34aの先端が通過孔31aに挿入されると、台座31bとニードル34aによつて通過孔31aが閉塞される。
次に第1図及び第2図を参照して上述した構造の圧縮機の動作を冷凍システムに用いた場合について説明する。
シヤフト軸4に回転力を与えると、この回転力はロータ8、上述したヒンジ部を至て斜板10へ伝達され、斜板10が回転する。斜板10の回転に伴なつてスライデイングシユー19が斜板10の円周上を摺動するから、スライデイングシユー19に連結しているピストンロツド20には回転力が伝達されることはない。すなわちピストン21は実質的に図中上下方向への移動がない。したがつて斜板10の回転力はピストン21の往復運動(図中左右方向)に変換される。そしてピストン21の往復運動によつて、吸入孔22からシリンダボア2aに吸入された流体(冷媒)は圧縮されたのち吐出孔23を通つて吐出室28に吐出される。
さらにこの圧縮機の圧縮容量を変化させる場合について説明すると、この冷凍システムにおいて熱負荷が予じめ定められた設定温度よりも高く、さらに冷凍能力が不足しているとすると、この場合には、冷媒の吸入圧力が高くなつて、吸入室27の圧力が高くなる。したがつて吸入室27と連通している連通孔部30bの圧力も高くなる。
連通孔部30bに配置されているベローズ34には、冷凍システムで予じめ定められ設定温度に対応する吸入圧力よりも若干圧力が高くなるようにガスが封入されている。したがつて、熱負荷が設定温度よりも高いと、ベローズ34は第1図に示すように右方へ収縮し、その結果ニードル34aが通過孔31aに設けられた弁座31bから離れて、吸入室27とクランク室1aは連通する。
圧縮機の動作によつてシリンダボア室2aからクランク室1aに漏れたブローバイガスは吸入室27へ逃げるため、クランク室1a内の圧力は低下し、吸入室27の圧力とほぼ等しくなる。
一方、斜板10上に等角度間隔で配置されたピストンによつて圧縮行程中に、ガス圧縮の反作用が斜板10に加わつている。そして、この反作用の合力は上述したヒンジ部で受け止められることになる。各ピストンに作用する反力によるヒンジ部回りのモーメントは、第1図中の斜板10の下端に位置するピストン(図示せず)によるモーメントのほうが大きいから、結局斜板10を第1図の平面内において、右方向へ回転させるモーメントM1がヒンジ部に作用することになる。
ここで、スプリング12によつてヒンジ部に生じるモーメントをM2(この場合は図中左方向へ作用する。)、またクランク室1aと吸入室27間の圧力差によつてヒンジ部に生じるモーメントをM2とすれば、上述の場合において、吸入室27の圧力とクランク室1aの圧力がほぼ等しくなつているため、M1と反対向きのモーメントはM2のみである。したがつて予じめM1>M2となるようにスプリング12の弾性力を定めておけば、ヒンジ部を中心とする右回りモーメントによつて斜板10の傾斜角が大きくなる。そして、斜板10の傾斜角はヒンジ部のピン11が長孔8bの上端に移動するまで傾斜し、斜板10の傾斜角はシヤフト軸4に対して最大となる。(斜板とシヤフト軸が直角の場合を基準とする。)この結果ピストン21のストローク量が大きくなつて圧縮機の容量が増加する。
次に、熱負荷が低くなり、あるいは、圧縮が高速域で使用されることにより、圧縮機の容量が過剰になると、冷媒の吸入圧力が低下し、吸入室27の圧力が低くなる。よつて吸入室27と連通している連通孔部30bの圧力も序々に低くなる。したがつて、ベローズ34は第2図に示すように収縮が弱まり、左方へ移動する。その結果ニードル34aの先端が通過孔31a内に挿入され、弁座31bとニードル34aによつて、通過孔31aが閉塞され、吸入室27とクランク室1aは遮断される。
圧縮機の動作によつてシリンダボア室2aからクランク室1aへ漏れたブローバイガスによつてクランク室1a内の圧力は上昇する。したがつてモーメントM3はヒンジ部を中心として、左方向に作用し、ある時点で、M1<M2+M3となつて、斜板10はヒンジ部を中心として、左方向のモーメントが作用し、斜板10の傾斜角は序々に小さくなる。そして、斜板10の傾斜角はヒンジ部のピン11が長孔8bの下端に移動するまで小さくなる。この結果ピストン27のストローク量が小さくなつて圧縮機の容量が滅少する。
なお、ヒンジ部の長孔8bの長さは、最小圧縮容量が最大圧縮容量の20〜30%となるように定められる。
第3図aに示すように、半球体形状のスライデイングシユー19(半径をBとする)を斜板10(この時の斜板の厚さをtとする。)の両面に配置した場合、一対のスライデイングシユー19の球面間の距離Aは次の第(1)式で示される。

ただし、αは垂直軸線と斜板10の中心軸線とがなす角である。
前述のように、斜板10の傾斜角度は変化するから、第(1)式で示した球面間距離Aは斜板10の傾斜角度に従つて変化することになる。よつてピストンロツド20がスライデイングシユー19を挟持する間隔は予め定められているから、第3図bに示すようにスライデイングシユー19と斜板10との間にすきまが生ずることがあり、ピストンの円滑な動作がさまたげられる場合もある。
一方、第4図に示すように一面が球面を有するスライデイングシユー19を斜板10の両面に配設し、しかもこの一対のスライデイングシユー19が斜板10の中心軸線の一点を中心とする実質的に球体(半径をRとする)を形成するように配置されていれば、球面間距離A’はA’=2R、で示される。従つてこの場合球面間距離A’は斜板10の傾斜角αに関係なく常に一定である。よつて、スライデイングシユー19と斜板10との間にすきまが生ずることはなく、常にピストンは円滑な動作を行うことができる。
(発明の効果)
以上説明したように、本発明によれば、ピストンが斜板円周に沿つて実質的に摺動可能としたことによつて、従来必要とされていた揺動板を必要としないばかりでなく、複雑な構造の回転(自転)阻止機構も必要とせず、さらにロータと斜板とをヒンジ機構によつて連結しているため、予め定められた範囲の斜板の傾斜角を変化することができ、圧縮機の圧縮容量を簡単に制御することができる。
また、斜板の両面に当接配置されたスライデイングシユーは対で実質的に球体を形成しており、斜板とピストンとはこの一対のスライデイングシユーによつて連結されているから、斜板の傾斜角が変化してもスライデイングシユーと斜板との問にすきまが生ずることがなく、ピストンの円滑な動作を保証できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明による容量可変型圧縮機を斜板の傾斜角が最大の状態で示す断面図、第2図は本発明による容量可変型圧縮機を斜板の傾斜角が最小の状態で示す断面図、第3図aは従来のピストンと斜板との連結機構を示すための図、第3図bは第3図aに示す連結機構において、斜板の傾斜角の変化によつて斜板とスライデイングシユーとの間にすきまができた状態を示す図、第4図は本発明によるピストンと斜板との連結機構を示すための図である。
1……シリンダーケーシング、2……シリンダーブロツク、3……フロントハウジング、4……シヤフト軸、5……ラジアルベアリング、6……シール室、7……メカニカルシール、8……ロータ、9……球面ブツシユ、10……斜板、11……ピン状部材、12……スプリング、13……スラストレース、14……ニードルベアリング、15……ラジアルベアリング、16……スラストニードルベアリング、17……板バネ、18……アジヤストスクリユー、19……スライデイングシユー、20……ピストンロツド、21……ピストン、22……吸入孔、23……吐出孔、24……弁板、25,29……ガスケツト、26……シリンダーヘツド、27……吸入室、28……吐出室、30……連通孔、31……カツプリング、32……O-リング、33……台座、34……ベローズ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2005-04-22 
出願番号 特願昭60-10992
審決分類 P 1 41・ 851- Y (F04B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 石橋 和夫  
特許庁審判長 大橋 康史
特許庁審判官 関 義彦
飯塚 直樹
登録日 1989-09-29 
登録番号 特許第1520505号(P1520505)
発明の名称 容量可変型斜板式圧縮機  
代理人 山中 純一  
代理人 長門 侃二  
代理人 山中 純一  
代理人 長門 侃二  
代理人 坪井 健児  
代理人 坪井 健児  

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