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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B
管理番号 1128036
審判番号 不服2004-19396  
総通号数 74 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-06-04 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-17 
確定日 2005-12-16 
事件の表示 特願2000-358647「ゴルフボール成形型及びゴルフボール」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 6月 4日出願公開、特開2002-159598〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年11月27日の出願であって、平成16年8月12日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、手続補正がなされたものである。

2.平成16年9月17日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年9月17日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の減縮を目的として請求項1は、
「そのキャビティ面にディンプル形成用の突起を多数備えた上型及び下型からなり、
この上型及び下型のそれぞれは、相手方との合わせ面が凹凸状となるように交互に配置された凸部及び凹部を備えており、
この凸部が赤道面よりも突出しており、この凹部が赤道面よりも窪んでおり、 この合わせ面が、凸部に存在する凸面、凹部に存在する凹面及び赤道面と交差する境界面よりなり、 上型の凸部、上型の凹部、下型の凸部及び下型の凹部の数はいずれも3個以上5個以下であり、
それぞれの凸部には、合わせ面から1列目の突起が2個以上8個以下存在しており、
それぞれの凸部において、合わせ面から1列目の突起のうちの少なくとも1個については、下記数式(I)が成立するように構成されたゴルフボール成形型。
R×1.0≦L≦R×1.2 ---(I)
(数式(I)においてRは当該突起の半径を表し、Lは当該突起の中心と合わせ面との鉛直方向直線距離を表す。)」
と補正された。
そこで、本願の補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(2)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、特開昭62-47379号公報(以下、「引用文献」という。)には、3頁左下欄20行〜右下欄1行に「大円はゴルフボール技術においてゴルフボールの「赤道」と呼ばれることがある。」、7頁左下欄4行〜右下欄3行に「特殊な金型32及び34はそれぞれキヤビテイ42の開口の輪郭を描くへり手段44をもつただいたい半円形の構成の内部キヤビテイ42を定める金型本体40を備えている。へり手段44はこの実施例においては胸壁状ぎざぎざのある、すなわちほぼ矩形波形として輪郭を描かれていてもよい波形形状のものである。すなわち、へり手段44は、ランド46とへこみまたはノツチ48が交互に連なつて設けられている。・・・金型32と34は、成形操作のために合わされて、すなわち閉じられて、金型32のランド46は、金型34のノツチ48の中に入れ子式に受けられ、同様に、金型34のランド46は、金型32のノツチ48の中に入れ子式に受けられ、この入れ子関係が第4図に示されている。金型32及び34のそれぞれは、また、それらのキヤビテイ42の中に伸び入つている一面に配列された突起50を備えており、・・・ランド46の内面は突起51を備えている。」、8頁左下欄16〜20行に「金型32及び34のランド46の内側表面は、突起51を設けられており、それらの突起は、ゴルフボールの融合接続部56(当審注:「融合接合部56」の誤記と認める。)に沿つてゴルフボールの輪郭を描く円形配置のディンプル60を作る。」、9頁右上欄8〜12行に「第7図は、ゴルフボールの・・・融合接合部をよりよく例示するために仮想格子線を設けてある。仮想線70は、いうまでもなくゴルフボールの融合接合部を示す。」、9頁右下欄14〜20行に「本発明のゴルフボールは、カバーの融合接合部の形状をゴルフボールの大円を中心とした波形にしたので接合強さを大きくするとともに、ディンプルの配置が接合部によつて制限されないようになつているので、ディンプル模様がボールの多数の大円に対して対称に作れ、飛行安定性を従来のボールより高めることができた。」と記載されており、図面を参照すると、金型32のランド46、金型32のノツチ48、金型34のランド46及び金型34のノツチ48の数はいずれも5個の例が、また、ランド46には、へり手段44から1列目の突起51が3個存在している例が記載されており、さらに、明記されてはいないが、第2図をみると、金型34のランド46の内面の突起は、ランド46の上面(へり手段44)との間に距離を有して配置されており、第3図の金型32の突起51、第5,7,8図の突起51によって形成されたディンプル60をみると、ランド46の内面の突起51は、ランド46の上面(へり手段44)との間に距離を有さずに接して配置されていることが明らかであるから、これらの記載を参照すると、引用文献には、「そのキヤビテイ面にデインプル形成用の突起を多数備えた金型32及び34からなり、この金型32及び34のそれぞれは、相手方とのへり手段44が波形形状となるように交互に配置されたランド46及びノツチ48を備えており、このランド46が赤道面よりも突出しており、このノツチ48が赤道面よりも窪んでおり、このへり手段が、ランド46に存在する上面、ノツチ48に存在する下面及び赤道面と交差する境界面よりなり、金型32のランド46、金型32のノツチ48、金型34のランド46及び金型34のノツチ48の数はいずれも5個であり、それぞれのランド46には、へり手段44から1列目の突起51が3個存在しており、それぞれのランド46において、へり手段44から1列目の突起51のうちの少なくとも1個については、ランド46の上面(へり手段44)との間に距離を有さずに接して配置されているか、ランド46の上面(へり手段44)との間に距離を有して配置されているように構成されたゴルフボール成形金型」という発明が記載されていると認めることができる。

(3)対比
補正発明と引用文献記載の発明とを比較すると、引用文献記載の発明の「金型32」、「金型34」、「へり手段44」、「波形形状」、「ランド46」、「ノツチ48」、「上面」、「下面」、「ゴルフボール成形金型」は、それぞれ、補正発明の「上型」、「下型」、「合わせ面」、「凹凸状」、「凸部」、「凹部」、「凸面」、「凹面」、「ゴルフボール成形型」に相当し、両者は、「そのキャビティ面にディンプル形成用の突起を多数備えた上型及び下型からなり、この上型及び下型のそれぞれは、相手方との合わせ面が凹凸状となるように交互に配置された凸部及び凹部を備えており、この凸部が赤道面よりも突出しており、この凹部が赤道面よりも窪んでおり、この合わせ面が、凸部に存在する凸面、凹部に存在する凹面及び赤道面と交差する境界面よりなり、上型の凸部、上型の凹部、下型の凸部及び下型の凹部の数はいずれも5個であり、それぞれの凸部には、合わせ面から1列目の突起が3個存在しており、それぞれの凸部において、合わせ面から1列目の突起のうちの少なくとも1個については、凸面(合わせ面)と接する位置(R×1.0=L)から、凸面(合わせ面)との間に鉛直方向直線距離を有する位置(R×1.0<L)の間に設けられているように構成されたゴルフボール成形型」の点で一致し、以下の点で相違している。
相違点:補正発明は、L≦R×1.2、すなわち、合わせ面から1列目の突起が、凸面(合わせ面)との間に鉛直方向直線距離を有する場合、その距離の上限がR×0.2であるのに対して、引用文献記載の発明では、その距離の上限が不明である点。

(4)判断
相違点について検討する。
本願明細書の段落【0024】の記載を参照すると、相違点における補正発明の限定事項は、「広面積な平滑部による空力特性の低下の抑制」のためと解されるが、本願明細書を参照しても上記上限を付したことによる臨界的意義は認められず、特に上記数値に限定する特別な技術的意味は不明であり、適宜設定しうる数値にすぎない。
したがって、補正発明は、引用文献記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成16年9月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1〜6に係る発明は、平成16年3月10日付けの手続補正によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「そのキャビティ面にディンプル形成用の突起を多数備えた上型及び下型からなり、
この上型及び下型のそれぞれは、相手方との合わせ面が凹凸状となるように交互に配置された凸部及び凹部を備えており、
上型の凸部、上型の凹部、下型の凸部及び下型の凹部の数はいずれも3個以上5個以下であり、
それぞれの凸部には、合わせ面から1列目の突起が2個以上8個以下存在しており、
それぞれの凸部において、合わせ面から1列目の突起のうちの少なくとも1個については、下記数式(I)が成立するように構成されたゴルフボール成形型。
R×0.8≦L≦R×1.2 ---(I)
(数式(I)においてRは当該突起の半径を表し、Lは当該突起の中心と合わせ面との鉛
直方向直線距離を表す。)
【請求項2】〜【請求項6】(記載を省略)」
(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

(1)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物の記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した補正発明を特定するために必要な事項である限定事項を削除したものであって、本願発明を特定するために必要な事項を全て含み、さらに他の限定事項を付加したものに相当する補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用文献記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。なお、L(突起の中心と合わせ面との鉛直方向直線距離)の下限値をR(突起の半径)×0.8としているが、本願明細書の段落【0024】の記載を参照すると、該限定事項は、ディンプルに欠落を生じさせてしまい、外観の低下をまねくものと解されるし、特に上記数値に限定する特別な技術的意味は不明であり、適宜設定しうる数値にすぎない。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項2〜6に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-10-03 
結審通知日 2005-10-11 
審決日 2005-10-25 
出願番号 特願2000-358647(P2000-358647)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63B)
P 1 8・ 575- Z (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小齊 信之土屋 保光  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 安藤 勝治
南澤 弘明
発明の名称 ゴルフボール成形型及びゴルフボール  
代理人 岡 憲吾  

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