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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E02F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E02F
管理番号 1128077
審判番号 不服2004-20741  
総通号数 74 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-07-06 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-10-07 
確定日 2005-12-15 
事件の表示 平成 9年特許願第355011号「作業機械」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 7月 6日出願公開、特開平11-181834〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年12月24日の出願であって、平成16年9月3日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年11月5日に手続補正がなされたものである。

2.平成16年11月5日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年11月5日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の減縮を目的として請求項1は、
「幅方向に延びるように横置き方式で配置されたエンジンを含む駆動機構の駆動によって走行および所定の作業を行う作業機械が垂直軸回りに旋回可能に設けられた上部旋回体を備えて構成され、この上部旋回体は、前方部分に設けられたキャブおよび作業用アームと、後方部分に上記キャブおよび作業用アームとの間の重量バランス用として重量設定されてなるカウンタウエイトとを備えて形成され、上記カウンタウエイトは、平面視で上記垂直軸の軸心を中心とした円弧状に形成されてその内面側に上記駆動機構を収納し得るように形状設定されているとともに、後方上縁部が下方に向かって切り欠かれて形成した後方切欠き窓と、両側縁部が後方に向かって切り欠かれて形成した幅方向一対の側部切欠き窓とを有し、上記後方切欠き窓は、上記各側部切欠き窓間の領域において、当該後方切欠き窓の下端が、各側部切欠き窓の上端より下方に位置する深さまで切り欠かれていることを特徴とする作業機械。」
と補正された。
そこで、本願の補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(2)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、特開平9-88125号公報(以下、「引用文献1」という。)には、段落【0044】に「本発明に係る建設機械のカウンタウェイトの実施例について、図面を参照して詳述する。図1は油圧ショベルの側面図であり、図2は図1のA-A矢視図である平面断面図である。ただし作業機および運転室の内部構成の図は省略してある。図1において下部走行体1には上部旋回体2が搭載されている。図1および図2に示すように上部旋回体2の前方左側には運転室3が設けられ、後方にはエンジン室を形成し、かつ、外形形状の一面(N)が外装となっているカウンタウェイト10が設けられている。カウンタウェイト10の内側にはエンジン4、ラジエータ5、油圧ポンプ6等の機械部品が装着されている。」、段落【0047】に「カウンタウェイト10Aの外周の端面は図2に示すように上部旋回体2の旋回中心Cから半径R1の距離にある。」、段落【0050】に「図1および図2に示すようにカウンタウェイト10Cの左右の側面にはエンジン4等の点検用の窓24、25が設けられている。」と記載されており、「エンジン4、ラジエータ5、油圧ポンプ6等」は、「エンジンを含む駆動機構」であり、油圧ショベルが提示されている建設機械は、該駆動機構の駆動によって走行および所定の作業を行い、省略されているが、上部旋回体の前方部分には作業用アームが当然設けられていることは明らかであり、また、図2をみると、エンジン4は幅方向に延びるように横置き方式で配置されていると解されるから、これらの記載および特に図1,2を参照すると、引用文献1には、「幅方向に延びるように横置き方式で配置されたエンジンを含む駆動機構の駆動によって走行および所定の作業を行う建設機械が旋回中心回りに旋回可能に設けられた上部旋回体を備えて構成され、この上部旋回体は、前方部分に設けられた運転室および作業用アームと、後方部分に上記運転室および作業用アームとの間の重量バランス用として重量設定されてなるカウンタウェイトとを備えて形成され、上記カウンタウェイトは、平面視で上記旋回中心を中心とした円弧状に形成されてその内面側に上記駆動機構を収納し得るように形状設定されているとともに、カウンタウェイトの左右の側面にはエンジン等の点検用の窓が設けられている建設機械」という発明が記載されていると認めることができる。

同、実願平5-58733号(実開平7-29052号)のCD-ROM(以下、「引用文献2」という。)には、パワーショベル等の作業機のバランス用ウェート部材構造に関し、段落【0007】に「図1は、本考案のバランス用ウェート部材構造が用いられた作業機の側面図を示し、1は走行装置、2は旋回可能な機体で、この機体2の前方には、ブーム3、アーム4及びバケット5からなる作業部6が設けられている。機体2上に設置された操縦部7の後方には、内蔵するエンジンをカバーするフード8が支点8bを中心に回動自在に取付けられ、このフード8の下方に隣接して、カウンタウェート(バランス用ウェート部材)9及びウェート部材を兼用したサイドバンパー10が取付けられている。」、段落【0008】に「カウンタウェート9の両端側は、図3に示すように、その上部をフード8側へ突出するように形成されている。サイドバンパー10は、・・・カウンタウェート9の両側にそれぞれボルト13を介してフード8のサイド側に沿う形状で一体的に固定されると共に、その上部がフード8側へ突出して、カウンタウェート9の突出した上部と繋がるようになっている(図1)。」と、特に図1,3,4とともに記載されている。

(3)対比
補正発明と引用文献1記載の発明とを比較すると、引用文献1記載の発明の「建設機械」、「旋回中心」、「運転室」は、それぞれ、補正発明の「作業機械」、「垂直軸(垂直軸の軸心)」、「キャブ」に相当し、引用文献1記載の発明の「左右の側面のエンジン等の点検用の窓」は、補正発明の「幅方向一対の側部切欠き窓」に対応するから、両者は、「幅方向に延びるように横置き方式で配置されたエンジンを含む駆動機構の駆動によって走行および所定の作業を行う作業機械が垂直軸回りに旋回可能に設けられた上部旋回体を備えて構成され、この上部旋回体は、前方部分に設けられたキャブおよび作業用アームと、後方部分に上記キャブおよび作業用アームとの間の重量バランス用として重量設定されてなるカウンタウエイトとを備えて形成され、上記カウンタウエイトは、平面視で上記垂直軸の軸心を中心とした円弧状に形成されてその内面側に上記駆動機構を収納し得るように形状設定されているとともに、幅方向一対の側部切欠き窓を有している作業機械」の点で一致し、以下の点で相違している。
相違点:カウンタウエイトにおいて、補正発明では、後方上縁部が下方に向かって切り欠かれて形成した後方切欠き窓と、両側縁部が後方に向かって切り欠かれて形成した幅方向一対の側部切欠き窓とを有し、上記後方切欠き窓は、上記各側部切欠き窓間の領域において、当該後方切欠き窓の下端が、各側部切欠き窓の上端より下方に位置する深さまで切り欠かれているのに対して、引用文献1記載の発明では、左右の側面に、側部切欠き窓に対応する、エンジン等の点検用の窓が設けられているだけである点。

(4)判断
引用文献1記載の発明の「エンジン等の点検用の窓」を、両側縁部を後方に向かって切り欠いて形成することは適宜なしうることにすぎず、また、相違点について検討するために、引用文献2をみると、引用文献2には、パワーショベル等の作業機のバランス用ウェート部材構造に関し、カウンタウェートの両端側が、その上部をフード側へ突出するように形成されていて、補正発明の「後方上縁部が下方に向かって切り欠かれて形成した後方切欠き窓」に相当するものが設けられていることが記載されており、該技術を引用文献1記載の発明のエンジン等の点検用の他の窓として採用することは、当業者が容易に想到しうる程度のことである。さらにその際、カウンタウェートのバランス等を考慮して点検しやすい大きさにすることは当然のことであり、各窓の切り込み深さをどの程度にするかは、設計的事項にすぎない。
したがって、補正発明は、引用文献1、2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成16年11月5日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1、2に係る発明は、平成16年1月9日付けの手続補正書で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】駆動機構の駆動によって走行および所定の作業を行う作業機械が垂直軸回りに旋回可能に設けられた上部旋回体を備えて構成され、この上部旋回体は、前方部分に設けられたキャブおよび作業用アームと、後方部分に上記キャブおよび作業用アームとの間の重量バランス用として重量設定されてなるカウンタウエイトとを備えて形成され、上記カウンタウエイトは、平面視で上記垂直軸の軸心を中心とした円弧状に形成されてその内面側に上記駆動機構を収納し得るように形状設定されているとともに、後方上縁部が下方に向かって切り欠かれて形成した後方切欠き窓と、両側縁部が後方に向かって切り欠かれて形成した幅方向一対の側部切欠き窓とを有し、上記後方切欠き窓は、上記各側部切欠き窓間の領域において、当該後方切欠き窓の下端が、各側部切欠き窓の上端より下方に位置する深さまで切り欠かれていることを特徴とする作業機械。【請求項2】(記載を省略)」
(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

(1)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物の記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した補正発明を特定するために必要な事項である限定事項を削除したものであって、本願発明を特定するために必要な事項を全て含み、さらに他の限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用文献1、2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献1、2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1、2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-10-12 
結審通知日 2005-10-18 
審決日 2005-10-31 
出願番号 特願平9-355011
審決分類 P 1 8・ 575- Z (E02F)
P 1 8・ 121- Z (E02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西田 秀彦須永 聡  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 安藤 勝治
▲高▼橋 祐介
発明の名称 作業機械  
代理人 小谷 悦司  
代理人 小谷 悦司  

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